説明

電動機制御方法

【目的】 本発明は、特別な操作を用いずに短時間で確実にモータを始動させ、ブラシレスモータ特有の現象である脱調を防ぐ。
【構成】 本発明は、複数相の固定子巻線から成る固定子と、複数極の永久磁石から成る回転子とを有するブラシレスモータを前記の回転子位置を検出するセンサを用いずに駆動制御する電動機制御方法において、上記ブラシレスモータを起動する際、予め設定された運転周波数まで加減速する時間を任意の関係により決定し、この決定した加減速時間を基に、前記ブラシレスモータを制御する。

【発明の詳細な説明】
[発明の目的]
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、回転子位置を検出するための特別なセンサ(ホール素子など)を用いずにブラシレスモータを駆動制御する電動機制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にブラシレスモータは永久磁石回転子の磁極位置をホール素子などの磁極位置検出センサを用いて検出し、その位置に従い、固定子巻線の通電切替を行なっている。しかし、近年、信頼性や使用環境,組み立て性などの点から前記センサを取り除く試みが行なわれ、ブラシレスモータのセンサレス化が盛んになってきた。上記センサレス化の方法として、様々な方法が提案されている。
【0003】例えば、特公昭59−36519号公報に記載されているように、120°通電制御における60°休止期間に、モータ端子に生じる誘起電圧を利用し、磁極位置を検出する方法がある。又、インバータ主回路の直流リンク部電流波形から力率を検出し、電圧が制御する方法もある。
【0004】しかしながら、いずれの場合もブラシレスモータがある設定値以上回転しなければ制御することができない欠点がある。すなわち、停止状態からある回転数までは強制的に固定子巻線の通電切替を行なう必要がある。この始動から、ある回転数まで運転する方法として例えば特開平1−308192号公報に示されるような方法がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の電動機制御方法では、上記したように、ブラシレスモータを停止状態から始動させ、回転を得るまでに、直流電圧を印加して回転子を初期位置まで移動させるための時間が必要となる。
【0006】これは、一般の誘導電動機を可変速制御する制御方法と比べ、特別な設定が必要となる事になる。すなわち、これまでは始動させる時は、あらかじめ定められた加速時間により、モータを加速していき、設定された周波数まで除々に回転速度が上昇していく動作であったものが、この加速する前段階に回転子を移動させる操作が必要となる。
【0007】以上のように、従来の電動機制御方法では、回転子を移動させる特別な操作が必要となるほか、モータを回転させるまでの始動時間が長くなるという問題点があった。
【0008】そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、特別な操作を用いずに短時間で確実にモータを始動させ、ブラシレスモータ特有の現象である脱調を防ぐことのできる電動機制御方法を提供することを目的とする。
[発明の構成]
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、複数相の固定子巻線から成る固定子と、複数極の永久磁石から成る回転子とを有するブラシレスモータを前記の回転子位置を検出するセンサを用いずに駆動制御する電動機制御方法において、上記ブラシレスモータを起動する際、予め設定された運転周波数まで加減速する時間を任意の関係により決定し、この決定した加減速時間を基に、前記ブラシレスモータを制御する電動機制御方法を提供する。
【0010】
【作用】以上のように構成された本発明の電動機制御方法においては、ブラシレスモータを停止状態から始動させた運転周波数まで加速させる加速時間に任意の関数を設け、確実に同期に引き入れながら始動させる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は、横軸に運転周波数(Hz),縦軸に加速時間(sec)をとった加速時間の関数を示している。
【0012】点線は、一般の誘導電動機を可変速制御するのに使われているインバータの加速時間設定の値で、あらかじめ外部より任意の値(t2 )が設定され、運転周波数に関係なく一定の値となっている。
【0013】これに対し、本実施例は、実線で示すように停止時から運転を始める際には設定値t2 より長い時間で、ゆっくりモータを回転させ、確実にブラシレスモータを同期に引き入れながら加速していき、モータの回転数が上昇していくに従い、この加速時間を短くして、あらかじめ設定された運転周波数に到達するようにした。
【0014】これにより、ブラシレスモータ特有の脱調現象が生じやすい同期引き入れ時、すなわち、停止からモータが回り始める領域において、ゆっくり加速しているために確実にモータを始動させることができる。又、減速時間においても同様に、運転周波数が減っていくに従い、減速時間を長くすることにより、脱調させることなく確実に停止できるように回転子を所定のところに停止させることもできる。従って、再びモータを始動させる場合には回転子が所定の適切な位置にあるため、始動に関してより一層確実に行なえる。なお、本実施例に限らず、図2(a)乃至(f)に示した関数パターンで、加速時間を設定してもよい。
【0015】図2(a)は、運転周波数に対し、比例的に加速時間が短くなっていく例、図2(b)は、0Hzからf1 Hzまで加速時間が長く、f1 Hzからは比例的に短くなっていく例、図2(c)は、0Hzからゆっくり加速時間が短くなり、途中早く短くなり再びゆっくり短くなる例、図2(d)は、0Hz〜f1 Hzから除々に短くなっていく例、図2(e)は、加速時間が途中かなり早くなる例、図2(f)は、加速時間が速くなったりゆっくりになったりする例である。これは、減速時間についても同様の事である。又、上記では、横軸に運転周波数をとっているが、動作時間を横軸にとって運転周波数に関係なく加減速時間を動作時間に比例させても勿論問題はない。
【0016】さらに、上記同様V/fパターンにおいても、始動(0Hz)から制御に入るまでの強制転流させる期間、電圧にもV/f一定でなく、任意の関数をもたせたV/fパターンにすることにより、より確実な始動を実現することができる。なお、上記実施例は、ソフトウェアでもハードウェアでも実現できる。
【0017】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、加速時間設定を任意の関数にすることにより、ブラシレスモータ特有の脱調現象が生じやすい停止からモータが回り始める領域において、ゆっくり加速させ確実に同期に引き入れながら加速していき、任意の関数に従い、加速時間を運転周波数によって変化させることにより、確実にしかも短時間で、あらかじめ設定された運転周波数に到達することができ、脱調現象を防止できる。
【0018】又、従来のように、固定子巻線に所定時間直流電圧を印加し、回転子を移動させるような一般のインバータにはない特別な操作をする必要もないので制御アルゴリズムの簡素化を図ることもできる。
【0019】さらに、減速時間にも同様の任意の関数をもたせることにより、より確実にモータを停止させることができるとともに再始動する時に、より確実な始動を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における運転周波数に対する加速時間の関数を示すグラフ。
【図2】本発明の他の実施例における運転周波数に対する加速時間の関数を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数相の固定子巻線から成る固定子と、複数極の永久磁石から成る回転子とを有するブラシレスモータを前記回転子の位置を検出するセンサを用いずに駆動制御する電動機制御方法において、前記ブラシレスモータを起動する際、予め設定された運転周波数まで加減速する時間を任意の関数により決定し、この決定した加減速時間を基に、前記ブラシレスモータを制御することを特徴とする電動機制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平5−68394
【公開日】平成5年(1993)3月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−227648
【出願日】平成3年(1991)9月9日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)