説明

電動歯ブラシ

【課題】ブラシを口腔に向けた開口から出入りさせる形式で、本体部を軽くてコンパクトに設計でき、不便なく歯磨き効果とマッサージ効果を高めることができる電動歯ブラシを提供することである。
【解決手段】本体部空間2とブラシ案内路6との間に、往復運動するブラシ9の基体10と一緒に変位する可撓性の隔膜13を設け、ブラシ案内路6の途中に、内向きのみに開く開閉弁14を有する空気導入孔15を設けて、基体2の往復運動に伴って、隔膜13が本体部空間2側へ変位するときに、空気導入孔15から負圧となるブラシ案内路6へ空気を導入し、隔膜13がブラシ案内路6側へ変位するときに、この導入された空気を圧縮して、その先端の開口6aから噴出させることにより、本体部を軽くてコンパクトに設計でき、不便なく歯磨き効果とマッサージ効果を高めることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛毛束で形成されたブラシの先端部が口腔に向けた開口から出入りするように、ブラシを植設した基体を往復運動させる電動歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
電動歯ブラシには種々の形態のものがあるが、往復運動源を配設した本体部空間から一端側に延びるブラシ案内路を設けたケーシング内で、ブラシ案内路でその先端側へ向けた剛毛束で形成したブラシを植設した基体を往復運動源に連結して、基体をブラシ案内路の方向へ往復運動させ、ブラシの先端部がブラシ案内路の先端に設けた開口から出入りするようにして、この口腔に向けられる開口から出入りするブラシで歯磨きをするとともに、歯茎のマッサージもできるようにした電動歯ブラシがある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたものでは、洗浄液を貯留する洗浄液タンクを設け、この洗浄液タンク内の洗浄液を電動または手動のポンプで吐出して、ブラシが出入りする開口から噴出させ、歯磨き効果とマッサージ効果を高めるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−322823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したブラシを口腔に向けた開口から出入りさせる形式で、この開口から洗浄液を噴出させる電動歯ブラシは、ブラシの基体を往復運動させる往復運動源のほかに、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出するポンプを必要とするので、本体部が重くて大きなものになる問題がある。
【0006】
また、この電動歯ブラシは、洗面所や風呂場等で使用するときは、口腔内に噴出される洗浄液を洗面台等の排水場所に排出できるが、居間等の排水場所のない処で使用する場合は、口腔内から洗浄液を排出できず、不便な問題もある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ブラシを口腔に向けた開口から出入りさせる形式で、本体部を軽くてコンパクトに設計でき、不便なく歯磨き効果とマッサージ効果を高めることができる電動歯ブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、往復運動源を配設した本体部空間の一端側から延びるブラシ案内路を設けたケーシング内で、前記ブラシ案内路でその先端側へ向けた剛毛束で形成したブラシを植設した基体を前記往復運動源に連結して、前記ブラシの先端部がブラシ案内路の先端に設けた開口から出入りするように、前記基体をブラシ案内路の方向へ往復運動させる電動歯ブラシにおいて、前記本体部空間と前記ブラシ案内路との間に、前記往復運動する基体と一緒に変位する可撓性の隔膜を設け、前記ブラシ案内路の途中に、内向きのみに開く開閉弁を有する空気導入孔を設けて、前記基体の往復運動に伴って、前記隔膜が前記本体部空間側へ変位するときに、この空気導入孔から負圧となる前記ブラシ案内路へ空気を導入し、前記隔膜が前記ブラシ案内路側へ変位するときに、このブラシ案内路へ導入した空気を圧縮して、その先端に設けた前記開口から噴出させる構成を採用した。
【0009】
すなわち、本体部空間とブラシ案内路との間に、往復運動する基体と一緒に変位する可撓性の隔膜を設け、ブラシ案内路の途中に、内向きのみに開く開閉弁を有する空気導入孔を設けて、基体の往復運動に伴って、隔膜が本体部空間側へ変位するときに、この空気導入孔から負圧となるブラシ案内路へ空気を導入し、隔膜がブラシ案内路側へ変位するときに、このブラシ案内路へ導入した空気を圧縮して、その先端に設けた前記開口から噴出させることにより、別途のポンプを設けることなく空気を口腔内に噴出可能として、本体部を軽くてコンパクトに設計でき、排水場所のない処で使用しても、不便なく歯磨き効果とマッサージ効果を高めることができるようにした。
【0010】
前記本体部空間に洗浄液を貯留する洗浄液タンクを配設し、この洗浄液タンク内の洗浄液を前記ブラシ案内路に吐出する手段を設けることにより、ブラシ案内路に吐出した洗浄液を空気と一緒にブラシ案内路の先端に設けた開口から噴出させ、歯磨き効果とマッサージ効果をより高めることができる。
【0011】
前記洗浄液を前記ブラシ案内路の先端部近傍に吐出することにより、ブラシ案内路の先端に設けた開口からの洗浄液の噴出力を高めることができる。
【0012】
前記洗浄液タンク内の洗浄液を吐出する手段として、前記隔膜がブラシ案内路側へ変位するときに圧縮されるブラシ案内路の空気を前記洗浄液タンク内へ導入して、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出する方法を採用することにより、別途のポンプを設けることなく、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出することができる。
【0013】
前記洗浄液タンク内の洗浄液を吐出する手段として、前記洗浄液タンク内の洗浄液をブラシ案内路内に吐出する手段が、前記本体部空間を密封して、本体部空間を形成する壁に内向きのみに開く開閉弁を有する空気導入孔を設け、前記隔膜が前記ブラシ案内路側へ変位するときに、この空気導入孔から負圧となる前記本体部空間へ空気を導入して、前記隔膜が前記本体部空間側へ変位するときに、この本体部空間へ導入した空気を圧縮し、この圧縮した空気を前記洗浄液タンク内へ導入して、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出する方法を採用することによっても、別途のポンプを設けることなく、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動歯ブラシは、本体部空間とブラシ案内路との間に、往復運動する基体と一緒に変位する可撓性の隔膜を設け、ブラシ案内路の途中に、内向きのみに開く開閉弁を有する空気導入孔を設けて、基体の往復運動に伴って、隔膜が本体部空間側へ変位するときに、この空気導入孔から負圧となるブラシ案内路へ空気を導入し、隔膜がブラシ案内路側へ変位するときに、このブラシ案内路へ導入した空気を圧縮して、その先端に設けた前記開口から噴出させるようにしたので、別途のポンプを設けることなく空気を口腔内に噴出可能として、本体部を軽くてコンパクトに設計でき、かつ、排水場所のない処で使用しても、不便なく歯磨き効果とマッサージ効果を高めることができる。
【0015】
前記本体部空間に洗浄液を貯留する洗浄液タンクを配設し、この洗浄液タンク内の洗浄液をブラシ案内路に吐出する手段を設けることにより、ブラシ案内路に吐出した洗浄液を空気と一緒にブラシ案内路の先端に設けた開口から噴出させ、歯磨き効果とマッサージ効果をより高めることができる。
【0016】
前記洗浄液をブラシ案内路の先端部近傍に吐出することにより、ブラシ案内路の先端に設けた開口からの洗浄液の噴出力を高めることができる。
【0017】
前記洗浄液タンク内の洗浄液を吐出する手段として、前記隔膜がブラシ案内路側へ変位するときに圧縮されるブラシ案内路の空気を洗浄液タンク内へ導入して、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出する方法を採用することにより、別途のポンプを設けることなく、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出することができる。
【0018】
前記洗浄液タンク内の洗浄液を吐出する手段として、前記本体部空間を密封して、本体部空間を形成する壁に内向きのみに開く開閉弁を有する空気導入孔を設け、前記隔膜がブラシ案内路側へ変位するときに、この空気導入孔から負圧となる本体部空間へ空気を導入して、隔膜が本体部空間側へ変位するときに、この本体部空間へ導入した空気を圧縮し、この圧縮した空気を洗浄液タンク内へ導入して、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出する方法を採用することによっても、別途のポンプを設けることなく、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。図1乃至図3は、第1の実施形態を示す。この電動歯ブラシは、図1に示すように、ケーシング1の本体部空間2に、往復運動源としてのモータ3およびその出力軸に設けたクランクシャフト4と、洗浄液が貯留された洗浄液タンク5とが配設され、本体部空間2の一端側から延びて先端に開口6aが設けられたブラシ案内路6と、ブラシ案内路6に沿って延び、その先端部近傍に開口する洗浄液通路7とが設けられた筒先部材8がケーシング1に取り付けられて、ブラシ案内路6でその先端側へ向けた剛毛束で形成したブラシ9を植設された基体10が、クランクシャフト4に取り付けられたアーム部材11に連結部材12を介して連結されている。したがって、モータ3を回転駆動することにより、基体10がブラシ案内路6の方向へ往復運動し、ブラシ9の先端部が開口6aから出入りする。
【0020】
前記連結部材12には、本体部空間2とブラシ案内路6との間を隔てる可撓性の隔膜13が取り付けられ、ブラシ案内路6の途中には、内向きのみに開く舌状の開閉弁14が取り付けられた空気導入孔15が設けられている。隔膜13の外周は、ケーシング1の内壁と本体部空間2の内方に張り出す洗浄液タンク5の取り付け壁16に取り付けられている。
【0021】
したがって、図1に示したように、前記往復運動する基体10が後退したときは隔膜13が本体部空間2側へ変位し、空気導入孔15から負圧となるブラシ案内路6へ空気が導入される。つぎに、図2に示すように、基体10が前進したときは隔膜13がブラシ案内路6側へ変位し、ブラシ案内路6へ導入された空気が圧縮されて、開口6aから噴出する。
【0022】
図3に示すように、前記洗浄液タンク5の内側には、柔軟性のある内袋17が納められ、この内袋17の中に洗浄液が充填されている。内袋17の口は、取り付け壁16に設けられた通液孔18を介して、筒先部材8の洗浄液通路7に連なるようになっている。また、取り付け壁16には、隔膜13のブラシ案内路6側に通気する通気孔19が設けられ、この通気孔19が内袋17の外側で洗浄液タンク5の内部に連通している。
【0023】
したがって、図2に示したように、隔膜13がブラシ案内路6側へ変位してブラシ案内路6へ導入された空気が圧縮されると、この圧縮された空気が通気孔19を通して洗浄液タンク5の内部に導入され、内袋17内の洗浄液が通液孔18と洗浄液通路7を通して、ブラシ案内路6の先端部近傍に吐出される。吐出された洗浄液は、前記圧縮された空気と一緒に開口6aから噴出する。
【0024】
図4乃至図6は、第2の実施形態を示す。この電動歯ブラシは基本的な構成は第1の実施形態のものと同じであり、図4に示すように、前記取り付け壁16の通気孔19の替りに、本体部空間2を形成するケーシング1の壁に、内向きのみに開く舌状の開閉弁20が取り付けられた空気導入孔21が設けられ、図示は省略するが、本体部空間2の後端側が密封されている点が異なる。また、この洗浄液タンク5は、図6に示すように、先端が液底近くに開口し、取り付け壁16の通液孔18に連なる注液管22が設けられ、内部が通気孔23によって本体部空間2に連通している。その他の部分は、第1の実施形態のものと同じである。
【0025】
したがって、この実施形態では、図5に示すように、前記基体10が前進して隔膜13がブラシ案内路6側へ変位したときに、空気導入孔21から負圧となる本体部空間2に空気が導入される。つぎに、図4に示したように、基体10が後退して隔膜13が本体部空間2側へ変位すると、導入された空気が圧縮されて、圧縮された空気が通気孔23を通して洗浄液タンク5の内部に導入され、洗浄液タンク5の内部が加圧されて、貯留された洗浄液が注液管22から通液孔18と洗浄液通路7を通して、ブラシ案内路6の先端部近傍に吐出される。吐出された洗浄液は、第1の実施形態のものと同様に、圧縮された空気と一緒に開口6aから噴出する。
【0026】
上述した各実施形態では、モータの出力軸にクランクシャフトを設けたものをブラシの基体の往復運動源としたが、この往復運動源は実施形態のものに限定されることはなく、基体に往復運動を付与する任意の駆動源を採用することができる。
【0027】
また、上述した各実施形態では、本体部空間が形成されたケーシングとブラシ案内路が設けられた筒先部材とを別体のものとしたが、筒先部はケーシングと一体のものとしてもよく、これらのケーシングと筒先部の形状は、実施形態のものに限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態の電動歯ブラシを示す一部省略縦断面図
【図2】図1の基体が前進した状態を示す一部省略縦断面図
【図3】図1の洗浄液タンクとその取り付け部を拡大して示す縦断面図
【図4】第2の実施形態の電動歯ブラシを示す一部省略縦断面図
【図5】図4の基体が前進した状態を示す一部省略縦断面図
【図6】図4の洗浄液タンクとその取り付け部を拡大して示す縦断面図
【符号の説明】
【0029】
1 ケーシング
2 本体部空間
3 モータ
4 クランクシャフト
5 洗浄液タンク
6 ブラシ案内路
6a 開口
7 洗浄液通路
8 筒先部材
9 ブラシ
10 基体
11 アーム部材
12 連結部材
13 隔膜
14 開閉弁
15 空気導入孔
16 取り付け壁
17 内袋
18 通液孔
19 通気孔
20 開閉弁
21 空気導入孔
22 注液管
23 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動源を配設した本体部空間の一端側から延びるブラシ案内路を設けたケーシング内で、前記ブラシ案内路でその先端側へ向けた剛毛束で形成したブラシを植設した基体を前記往復運動源に連結して、前記ブラシの先端部がブラシ案内路の先端に設けた開口から出入りするように、前記基体をブラシ案内路の方向へ往復運動させる電動歯ブラシにおいて、前記本体部空間と前記ブラシ案内路との間に、前記往復運動する基体と一緒に変位する可撓性の隔膜を設け、前記ブラシ案内路の途中に、内向きのみに開く開閉弁を有する空気導入孔を設けて、前記基体の往復運動に伴って、前記隔膜が前記本体部空間側へ変位するときに、この空気導入孔から負圧となる前記ブラシ案内路へ空気を導入し、前記隔膜が前記ブラシ案内路側へ変位するときに、このブラシ案内路へ導入した空気を圧縮して、その先端に設けた前記開口から噴出させるようにしたことを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記ケーシング内に洗浄液を貯留する洗浄液タンクを配設し、この洗浄液タンク内の洗浄液を前記ブラシ案内路に吐出する手段を設けた請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記洗浄液を前記ブラシ案内路の先端部近傍に吐出するようにした請求項2に記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
前記洗浄液タンク内の洗浄液を吐出する手段が、前記隔膜がブラシ案内路側へ変位するときに圧縮されるブラシ案内路の空気を前記洗浄液タンクへ導入して、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出するものである請求項2または3に記載の電動歯ブラシ。
【請求項5】
前記洗浄液タンク内の洗浄液を吐出する手段が、前記本体部空間を密封して、本体部空間を形成する壁に内向きのみに開く開閉弁を有する空気導入孔を設け、前記隔膜が前記ブラシ案内路側へ変位するときに、この空気導入孔から負圧となる前記本体部空間へ空気を導入して、前記隔膜が前記本体部空間側へ変位するときに、この本体部空間へ導入した空気を圧縮し、この圧縮した空気を前記洗浄液タンク内へ導入して、洗浄液タンク内の洗浄液を吐出するものである請求項2または3に記載の電動歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−110066(P2006−110066A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300236(P2004−300236)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(500208003)
【Fターム(参考)】