説明

電動歯ブラシ

【目的】 正逆切換え可能なモータにより、回動往復運動と直線往復運動の切換えができる電動歯ブラシを提供する。
【構成】 モータを正逆に切り換えることによって、正転時に一方向へ、逆転時に他方向へ90度回転する回転子と、この回転子の長円孔Aと係合する偏心体を有する減速ギアによって、回動往復運動と直線往復運動を行う。また、長円孔Bにより、回動往復運動時の直線往復運動及び直線往復運動時の回動往復運動を阻止することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、モータの回転方向に応じて回動往復運動(ローリング方式)および直線往復運動(バス方式)の切換えを可能にした電動歯ブラシに関する。
【0002】
【従来の技術】従来この種の電動歯ブラシとしては、特開昭63−77404号公報が提案されている。この電動歯ブラシは、駆動源の正逆転によりブラシ部の直線往復運動および回動往復運動を切り換え可能とし、直線往復運動の振動速度を回動往復運動の振動速度よりも遅くする切換手段を備えたものである。
【0003】これは、主として歯と歯肉との境目を磨くための直線往復運動は、歯肉を傷付けないように低速振動にして、一方、歯面や噛み合い面を磨くための回動往復運動は、高速振動することができるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の電動歯ブラシでは、直線往復運動と回動往復運動を切り換えるために、偏心カムが2つ以上必要である。さらに、第1の偏心カムによりバスとローリング方式の動きを規制するために、この第1の偏心カムが複雑な形状となり、加工しにくいという問題点がある。
【0005】また、直線往復運動と回動往復運動の切換において、直線往復運動時には、回動往復運動をしながら直線往復運動をしてしまい、一方、回動往復運動時には、直線往復運動をしながら回動往復運動をしてしまうといった問題点も生じる。
【0006】本発明は、上記のような問題点を解決するために、簡単な形状の長円孔を有する回転子を偏心体に係合することにより、直線往復運動と回動往復運動をすることができる。また、偏心体と係合する長円孔と直角の位置関係にある長円孔を有する回転子を用いることによって、直線往復運動時の回転運動及び回動往復運動時の直線運動を防止することができる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の電動歯ブラシは、正逆切換え可能なモータと、該モータと噛合い偏心体を有する減速ギアと、該偏心体と係合する長円孔Aを前面部に有すると共に、背面部にこの長円孔Aと直角方向の長円孔Bを有する回転子と、前記長円孔Bと係合するボス部と、前記回転子を回動自在に嵌合すると共にその回動範囲を90度に規制する部分を有するレバーを基端側に装着したブラシ接続杆とからなり、前記モータの正逆転によりブラシ接続杆の回動往復運動と直線往復運動を切換えることを特徴とするものである。
【0008】
【作用】モータが正回転している時は、偏心体と係合している回転子の長円孔Aが縦長になるまで回転し、レバーに設けてある凸部と回転子の突出部が係合することにより、この状態で回転子が固定される。したがって、この状態で偏心体が回転するとブラシ接続杆は回動往復運動をする。この時、モータ支持板の支軸固定用のボス部と係合する長円孔Bは横長の状態に保持され、ブラシ接続杆の直線往復運動を防止する。
【0009】一方、モータを逆回転すると、回転子も逆方向に回転してこんどは長円孔Aが横長の状態で固定される。そして、この状態で偏心体が回転するためブラシ接続杆は直線往復運動をする。この時には、長円孔Bは縦長の状態で保持されるのでブラシ接続杆の回動往復運動を防止する。
【0010】
【実施例】以下図面に基づいて説明すると、(1)は電動歯ブラシの本体ケースで、内部にモータ(2)、二次電池(3)及び充電用トランスの二次コイル(4)等を収納すると共に、側面先端部近傍にスイッチレバー(5)を設け、且つ先端より防水キャップ(6)を貫通してブラシ接続杆(7)を突出せしめている。(8)はモータ等の保持枠で、モータ(2)や二次電池(3)等を装着している。(9)は二次電池取付体で、下面にガス抜き弁(10)を装着すると共に、爪片(11)を前記保持枠(8)に係合することによって、前記二次電池(3)を保持枠(8)の下面に装着している。(12)は充電用トランス二次コイル(4)のボビン、(13)は磁気回路形成用の二次フレーム(14)を圧入固定した鉄心で、前記本体ケース(1)の下端開口部に装着して内部を密封する。なお前記鉄心(13)は貫通穴が開いており、充電時に二次電池(3)から発生したガスは、この貫通穴を通して外部に排出される。(44)は底ケースで本体ケース(1)と嵌合し内部を密封する。
【0011】又前記スイッチレバー(5)は、本体ケース(1)とスイッチ取付板(15)を貫通して、その先端に螺子(16)によってスイッチ作動片(17)が取付けられており、このスイッチ作動片(17)がスイッチ固定板(19)上を摺接して固定接点を切換えるようにしている。(20)は防水リングである。(21)は前記モータ(2)の回転軸に装着した駆動ギヤである。(22)はこの駆動ギヤ(21)に噛合っている減速ギヤで、モータ回転軸と直交する方向に設けた支軸(29)によって枢支され、偏心体(23)を有している。(24)はブラシ接続杆(7)にインサート成形したレバーで、中央部が穴になっており、凸部(46)を備えている。(25)は回転子である。この回転子(25)は突出部(50)を有し、該突出部(50)が前記凸部(46)と係合して、前記レバー(24)の穴内に90度の範囲で回動できるように回転子(25)が嵌合すると共に、回転子(25)の前面部(51)には長円孔A(45)を形成しており、背面部(47)には長円孔B(48)を形成している(図6)。前記長円孔B(48)はモータ支持板(27)の支軸(29)固定用ボス部(49)と係合している。また、回転子(25)の長円孔A(45)には前記減速ギア(22)の偏心体(23)が係合する。したがって、減速ギア(22)が回転することにより、偏心体(23)と係合する長円孔A(45)を有する回転子も回転する。
【0012】(26)は軸受けで、モータ支持板(27)に形成した円筒部(28)に嵌合しており、前記ブラシ接続杆(7)を支持している。(29)は支軸であり、前記モータ支持板(27)とスイッチ取付板(15)にそれぞれ設けた透孔(39),(40)により固定され、前記減速ギア(22)とボス部(49)を貫通して支持している。(41)はモータ(2)の回転数を切換えるためのリードスイッチ(42)を動作させる磁石(43)を装着したスイッチ摘みである。
【0013】以上の機構において、スイッチレバー(5)によってモータ(2)を正転させると、その回転は駆動ギア(21)から減速ギア(22)に伝わり、偏心体(23)が回転する。偏心体(23)が回転することにより、偏心体(23)と係合している長円孔A(45)を有する回転子(25)も回転することになる。しかしながら、レバー(24)に設けてある凸部(46)と回転子(25)の突出部(50)が係合することにより、回転子(25)の回転は規制され長円孔A(45)が縦長の状態で保持される。この時、長円孔B(48)は横長の状態に保持されている。長円孔A(45)がこの状態で保持されて長円孔A(45)と係合している偏心体(23)が回転するので(図4の状態)、一定角度の範囲でブラシ接続杆(7)は回動往復運動をする。モータ支持板(27)の支軸(29)固定用のボス部(49)と長円孔B(48)が係合しているので、長円孔B(48)が横長の状態で保持されていると、回動往復運動時に生じる直線往復運動をしながら回動往復運動をするといった現象を防止することができる。
【0014】一方、スイッチレバー(5)によってモータ(2)を逆転させると、その逆回転は駆動ギア(21)から減速ギア(22)に伝わり、偏心体(23)を逆転させる。偏心体(23)が逆回転することにより、長円孔A(45)が縦長の状態で保持された回転子も逆回転するが、レバー(24)に設けてある凸部(46)と回転子(25)の突出部(50)が係合するので90度回転して保持される。回転子(25)の長円孔A(45)が縦長の状態から90度回転すると、横長の状態に保持される。この時、長円孔B(48)は縦長の状態に保持されている。長円孔A(45)がこの状態で保持されて、長円孔A(45)と係合している偏心体(23)が回転するので(図3の状態)、一定距離の範囲でブラシ接続杆(7)は直線往復運動をする。この時、回転子の長円孔B(48)が縦長に状態で保持され、ボス部(49)と係合しているので、直線往復運動時に生じる回動往復運動をしながら直線往復運動をするといった現象を防止することができる。
【0015】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、モータの回転を駆動ギアから偏心体を有する減速ギアに伝え、偏心体と係合する長円孔Aを有する回転子の回動範囲を規制して、ブラシ接続杆の回動往復運動と直線往復運動を切換えることができる。さらに、長円孔Bにより、回動往復運動時の直線往復運動及び直線往復運動時の回動往復運動を防止することができる。
【0016】これにより、形状が簡単な長円孔を有する回転子を用いることによって、非常に使い易い電動歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電動歯ブラシの(a)正面外観図、(b)側面外観図
【図2】本発明の電動歯ブラシの分解斜視図
【図3】直線往復運動で使用中のI−I断面図
【図4】回動往復運動で使用中のI−I断面図
【図5】本発明の電動歯ブラシの(a)正面断面図、(b)側面断面図
【図6】ブラシ接続杆部の分解斜視図
【図7】回転子の分解斜視図
【符号の説明】
1・・・本体ケース
2・・・モータ
3・・・二次電池
4・・・二次コイル
5・・・スイッチレバー
7・・・ブラシ接続杆
15・・・スイッチ取付板
21・・・駆動ギア
22・・・減速ギア
24・・・レバー
25・・・回転子
26・・・軸受け
27・・・モータ支持板
29・・・支軸
45・・・長円孔A
46・・・凸部
47・・・背面部
48・・・長円孔B
49・・・ボス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 正逆切換え可能なモータと、該モータの駆動ギアと噛合い偏心体を有する減速ギアと、該偏心体と係合する長円孔Aを前面部に有すると共に、背面部にこの長円孔Aと直角方向の長円孔Bを有する回転子と、前記長円孔Bと係合するボス部と、前記回転子を回動自在に嵌合すると共にその回動範囲を90度に規制する部分を有するレバーを基端側に装着したブラシ接続杆とからなり、前記モータの正逆転によりブラシ接続杆の回動往復運動と直線往復運動を切換えることを特徴とする電動歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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