電動移動棚装置の安全装置
【課題】低コストで、作業者に対する安全範囲を広くしながらも、荷物のオーバーハングによる移動棚の斜行、荷物の破損、積載量等を把握して設置床の撓みによる不具合を解消できる電動移動棚装置を提供する。
【解決手段】電動移動棚装置の安全装置は、通路形成方向と通路閉塞方向に移動可能な複数の移動棚11a〜11eを、各移動棚に対応する電動駆動源12a〜12eによって夫々移動可能とした電動移動棚装置10において、駆動源の直流モータと、直流モータに対する負荷情報を検出する負荷情報検出手段13eと、負荷情報検出手段の検出結果が、直流モータの起動時の適正負荷値あるいは移動棚の定常移動時における直流モータの適正負荷値を超える場合に過負荷状態と判定する過負荷判定手段14eと、過負荷状態の場合に、過負荷状態の移動棚を含む移動中の全ての移動棚の直流モータの作動を制御する制御手段20eとを有する。
【解決手段】電動移動棚装置の安全装置は、通路形成方向と通路閉塞方向に移動可能な複数の移動棚11a〜11eを、各移動棚に対応する電動駆動源12a〜12eによって夫々移動可能とした電動移動棚装置10において、駆動源の直流モータと、直流モータに対する負荷情報を検出する負荷情報検出手段13eと、負荷情報検出手段の検出結果が、直流モータの起動時の適正負荷値あるいは移動棚の定常移動時における直流モータの適正負荷値を超える場合に過負荷状態と判定する過負荷判定手段14eと、過負荷状態の場合に、過負荷状態の移動棚を含む移動中の全ての移動棚の直流モータの作動を制御する制御手段20eとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動移動棚装置の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
床に敷設された軌道上を電動駆動源となる駆動モータによって移動可能とされた複数の移動棚が並列された電動移動棚装置には、隣接する移動棚の間に形成される通路内での作業者の安全を図るための安全装置が装備されている。
【0003】
例えば、本出願人から出願されている特許文献1には、隣接する移動棚の間に形成される通路の閉塞を阻止するインターロックや、通路入り口側の所定領域内に人がいるか否かを検知する人感検知手段を安全装置として備えた電動移動棚装置が開示されている。これ以外にも、通路内に安全バーと称する可動式のレバーが設けられ、このレバーが押されるとスイッチが作動して駆動モータの作動を停止する安全装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−109929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、電動移動棚装置の安全対策として、人感検知手段(パッシブセンサ)を設けて通路内の状態を確認検知しているが、コストが高く、取付け調整が難しい、人が動いていないと検知しない場合や検知範囲に制限がある。このため、制限領域、すなわち死角をより少なくすることが要望されている。このようなセンサ類は外付タイプで、移動棚自体の状態を検知するものではないため、移動棚自体の可動状態の状況を細かく把握することが難しい。
【0006】
移動棚の駆動モータには耐久性の面から交流モータを用いることが多い。しかし、この交流モータは、初期トルクが小さいため、ギヤ比を大きくして回転数を減速し、移動棚を移動する際の初期トルクを確保しなければならない点や、移動棚の積載荷重重軽の影響が大きく、最大積載荷重にトルクを合わせる必要があり、可動状態の状況を細かく把握することが難しい。
【0007】
移動棚の荷物が移動棚本体から通路側にはみだした状態(オーバーハング)で収納されている場合、通路を閉じようとしたときに荷物が破損することがある。また、オーバーハングした荷物が移動棚の移動を妨げて移動棚本体が斜行するなど、故障の原因となりうる。荷物の収納状態はユーザー側の裁量によって決まるので、荷物のオーバーハングを防止する有効な対策はなかった。
【0008】
移動棚は、棚を設置する床の床耐荷重を考慮して最大積載荷重が決められているが、積載荷重を具体的に検知するものはなく、実際の使用に際しては、ユーザー側の裁量で荷物が移動棚に積載されるため、最大積載荷重オーバーになってしまうこともある。このような最大積載荷重オーバーは、床に撓みを発生させ、撓みによる軌道の傾斜によって移動棚が自走を起こしたり、床自体が抜けたりする不具合につながってしまう。
【0009】
移動棚には高さや奥行きがあり、収納されているものを取り出そうとしたときに、移動棚に登って取り出すという状況や、通路内に足継ぎや脚立を持ち込んで作業することを想定する必要がある。さらに、通路内で作業者が倒れた場合、センサなどで検知することは可能であるが、センサの検知エリアには制限があるので、死角を無くすためにセンサの数を増やす必要があり、コストアップになってしまう。
【0010】
本発明は、移動棚自体の可動状態を細かく把握することを可能とすることで、低コストで作業者に対する安全範囲を広くしながらも、荷物のオーバーハングによる移動棚の斜行や荷物の破損、積載量を把握して設置床の撓みによる不具合を解消できる電動移動棚装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、通路形成方向と通路閉塞方向に移動可能な複数の移動棚を、各移動棚に対応するの電動駆動源によってそれぞれ移動可能とした電動移動棚装置の安全装置であって、電動駆動源が直流モータであり、直流モータに対する負荷情報を検出する負荷情報検出手段と、負荷情報検出手段の検出結果が、直流モータの起動時の適正負荷値あるいは移動棚の定常移動時における直流モータの適正負荷値よりも大きい過負荷判定値の少なくとも一方の値を超える場合に過負荷状態と判定する過負荷判定手段と、過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、過負荷状態の移動棚を含む移動中の全ての移動棚の移動が停止するように、移動中の移動棚に対応する直流モータの作動を制御する制御手段を有することを特徴としている。
本発明に係る電動移動棚装置の安全装置において、直流モータと負荷情報検出手段と過負荷判定手段と制御手段が、各移動棚にそれぞれ設けられていることを特徴としている。 本発明に係る電動移動棚装置の安全装置において、通路形成方向と通路閉塞方向に移動しない固定棚あるいは複数の移動棚の1つを主棚としたとき、主棚に負荷判定手段と制御手段が設けられ、各移動棚に負荷情報検出手段がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る電動移動棚装置の安全装置において、各種情報を表示可能な表示手段を有し、制御手段は、過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、表示手段に警告内容を表示することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通路を形成するために移動棚を移動する電動駆動源を直流モータとし、直流モータに対する負荷情報を検出する負荷情報検出手段と、負荷情報検出手段の検出結果が直流モータの起動時の適正負荷値あるいは移動棚の定常移動時における直流モータの適正負荷値よりも大きい過負荷判定値の少なくとも一方の値を超える場合に過負荷状態と判定する過負荷判定手段と、過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、過負荷状態の移動棚を含む移動中の全ての移動棚の移動が停止するように、移動中の移動棚に対応する直流モータの作動を制御する制御手段を有するので、移動棚に対する積載量オーバーや通路内に作業者がいる場合や移動棚に収納された荷物がオーバーハングしている場合には移動棚が停止するので、作業者を検知するセンサを増設する必要なくなり、低コストで作業者に対する安全範囲を広くしながらも、荷物のオーバーハングによる荷物の破損や移動棚の斜行、また積載量を把握して設置床の撓みによる不具合を解消することができる。
【0014】
本発明によれば、制御手段は、過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、表示手段に警告内容を表示するので、使用者に起動時の過負荷と定常走行時の過負荷を認知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明にかかる電動移動棚装置の構成を示す平面図、(b)は電動移動棚装置の構成を示す正面図である。
【図2】(a)は通路が形成された状態を示す平面図、(b)は通路が形成された状態を示す正面図である。
【図3】適正負荷発生時と過負荷発生時のモータの出力特性を示す線図である。
【図4】直流モータと交流モータにおける負荷の変化特性を示す線図である。
【図5】本発明の主要部となる安全装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】制御手段による制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】移動棚の積載負荷と起動時の負荷特性を示す線図である。
【図8】負荷検知手段の検知特性を示す線図である。
【図9】(a)は収納部に収納されている荷物のオーバーハング状態を示す図、(b)は荷物がオーバーハング状態で通路を閉じたときの不具合を示す図である。
【図10】オーバーハングした荷物による不具合となる移動棚の斜行状態を示す平面図である。
【図11】本発明にかかる電動移動棚装置の別な構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1(a)、図1(b)において、符号10は本発明が適用される電動移動棚装置を示す。図1(a)は電動移動棚装置10の平面図、図1(b)は電動移動棚装置10の正面図である。本形態における電動移動棚装置10は、それぞれの移動棚において隣接する移動棚との相対位置を単独ですなわち個々の移動棚で独立して検出する独立認識タイプである。通路形成方向と通路閉塞方向に移動しない固定棚8と、通路形成方向と通路閉塞方向に移動可能な複数の移動棚11a〜11eと、各移動棚を通路形成方向と通路閉塞方向に移動させる電動駆動源となる駆動モータ12a〜12eと、各棚の間に通路を形成する際に用いる通路開閉ボタンSa〜Seと、制御手段20a〜20eを備えている。移動棚11a〜11eは、固定棚8を端に設置したときに、図1に示す順序に配列されていて、装置設置場所の床9に敷設された軌道7上を移動するように構成されている。本形態において、移動棚11a〜11eは図1の左右方向に移動可能とされており、この左右方向が通路形成方向と通路閉塞方向となる。
【0017】
固定棚8は移動棚11aと対向する片面に荷物の収納部を備え、移動棚11a〜eはその両面に荷物の収納部をそれぞれ備えている。固定棚8と移動棚11a、複数の移動棚のうち、互いに隣接する移動棚の間や図示しない建物の壁などの間には、作業者Hが希望する移動棚の収納部にアクセスするための通路1〜6が形成される。図1に示す状態においては、移動棚11eの左側に通路6を形成している。通路1は固定棚8と移動棚11aの間に、通路2〜5は移動棚11aから移動棚11eの間に形成され、通路6は移動棚11eの左側に形成される。
【0018】
本形態では、移動棚の移動により通路1〜6が形成されると、形成された通路が閉塞しないように、制御手段20a〜20eからの制御信号により駆動モータ12a〜12eの作動を制御する図示しないインターロック機能を備えている。また、通路内に面する各移動棚の間口面には、通路形成時に操作されるとスイッチが押され、通路形成時に移動する駆動モータの作動を停止する図示しない周知の安全バーが配置されている。
【0019】
駆動モータ12a〜12eは、移動棚11a〜11eの下部に位置する台車部にそれぞれ固定されている。駆動モータ12a〜12eは、各制御手段からの駆動信号により作動し、同台車に配設された図示しない車輪を駆動して各移動棚を移動するとともに、制御手段からの停止信号により作動を停止して各移動棚の移動を停止する。
【0020】
通路開閉ボタンSa〜Seは、各移動棚の正面パネル18に設けられていて、各制御手段と信号線を介して接続されている。各移動棚に設けられた通路開閉ボタンSa〜Seは、各移動棚を通路形成方向と通路閉塞方向に個別に移動できるように、1つの移動棚に2つずつ形成されている。これら通路開閉ボタンSa〜Seの数は1つであってもよい。
【0021】
固定棚8と各移動棚には、隣接する棚と対向する部分に通路内安全検知手段SNa、SNb、SNc、SNd、SNe、SNfが、各通路に対応して設けられている。通路内安全検知手段SNa〜SNfは、各通路内に作業者Hが進入したか否かを光学的に検知する通過センサである。通過センサは通路内に進入している作業者Hによって検知光線が遮られているときには、作業者Hが通路内にいることを知らせる作業者検知信号を出力するように構成されている。通路内安全検知手段としては、このような通過型のセンサに限定されるものではなく、光学的なエリアセンサを用いてもよい。
【0022】
これら通路内安全検知手段SNa〜SNf、図示しないインターロックや安全バーは従来から知られている安全装置に該当する。
【0023】
制御手段20a〜20eは、CPU、ROM、RAM、タイマーを備えた周知のコンピュータで構成されている。各制御手段の入力側には通路開閉ボタンSa〜Se、通路内安全検知手段SNb〜SNf、通路開閉ボタンSa〜Se、安全バーによって押される図示しないスイッチが、出力側端子には駆動モータ12a〜12eがそれぞれ信号線を介して接続されている。また、制御手段20aの入力側には、固定棚8に設けた通路内安全検知手段SNaが接続されている。
【0024】
各制御手段のROMには、本形態を例にすると、複数の移動棚が所定の距離を保って平行移動するときの「連動距離」、移動棚が隣接移動棚または壁やエンドストッパーなどの距離測定面に接近して移動限界近くに達し、移動棚の移動速度を遅くするために制動をかけ始めるときの距離である「制動距離」、移動棚の移動を停止させるときの「停止距離」をパラメータとして予め設定されている。これらパラメータは、移動棚の制御方法によって異なり、通路幅、移動時間など各種様々である。本形態では、通路開閉ボタンSa〜Sfが操作されると、操作されたスイッチが設けられている移動棚の駆動モータを作動させて、当該移動棚に隣接している移動棚との距離を図示しない距離センサにより計測し、この計測した距離が上記パラメータとして設定した距離に達したとき、移動棚の動作を制御し、最終的に通路を形成する。図2はこのような制御方法により移動棚11eが移動して通路5が形成された状態を示している。
【0025】
また、各制御手段は、上述で述べたインターロック機能や安全バー、通路内安全検知手段などの検知情報に基づき、駆動モータの作動を制御する。このような安全装置を備えることで、電動移動棚装置10は、各通路内での作業者Hの安全性が従来から確保されている。
【0026】
ところで、移動棚11a〜11eに収納部への荷物の出し入れは作業者Hが通路内に入っておこなうものであるが、図9(a)に示すように、荷物Mが収納部から通路側にはみだした状態(オーバーハング)で収納されている状態で通路を閉じてしまうと、図9(b)に示すようにオーバーハングしている荷物M同士が衝突して破損することがある。また、オーバーハングした荷物Mが移動棚の移動を妨げると、図10に示すように移動棚が斜行するなどの故障の原因となりうる。収納部への荷物Mの収納状態はユーザー側の裁量によって決まるので、荷物Mのオーバーハングを防止することが安全装置に要望されている。
【0027】
安全装置を構成する安全検知手段SNa〜SNfはセンサであるので、検知不良や作業者Hとの接触などにより破損する場合がある。作業者Hが通路内で作業する場合、足継ぎや脚立を通路内に設置して作業する場合があるが、作業者Hが足継ぎや脚立を通路内に残したまま通路から出ることがある。この場合、安全検知手段SNa〜SNfは作業者Hの通過を検知するので、各制御手段は移動棚の移動を可能にするため、足継ぎや脚立を移動棚の間に挟み込んでしまう。足継ぎや脚立の設置位置や通路内で作業者Hが倒れた場合、その場所によっては、安全バーが押されない状況が想定される。このような状況は作業者Hを検知するセンサの数を増設することで対応することは可能であるが、コストアップになってしまうとともにセンサの配線が煩雑になってしまう。
【0028】
電動移動棚装置10は、設置する床9の構造や収納する荷物量を考慮して各移動棚の最大積載量が設定されている。しかし、各移動棚にどれだけ荷物を収納するかはユーザーの裁量によって異なるので、最大積載量をオーバーすることが想定される。このような各移動棚に対する積載量オーバー(過積載)な状態は、床9や軌道(レール)7に対する負荷となり、軌道7や床9の撓みを生じさせ、移動棚の自走などの発生要因となってしまう。
【0029】
そこで本発明者らは、これら各移動棚への過積載や作業者Hの安全性の両方を解決することを精査検討し、過積載発生時や人やものが通路内にある場合に共通に発生する状況を考察したところ、駆動モータの負荷変化に着目した。
【0030】
駆動モータ12a〜12eの設定は、最大積載量を考慮して設定されている。駆動モータ12a〜12eへの負荷を測定したところ、図3に実線で示すように、移動棚が移動を開始するモータ起動時の起動範囲T1が高く、一旦移動した後の定常走行範囲T2においては一定している。そこで、本形態では、この起動範囲T1における駆動モータの適正負荷の値(適正負荷値)VT1よりも大きい過負荷判定値V1を制御手段に設定し、この過負荷判定値V1と駆動モータの負荷を比較することで、移動棚の最大積載量が許容範囲か否かを判定するようにした。
【0031】
また、図3に示すように、定常走行範囲T2における負荷は一定であるので、各駆動モータの適正負荷の値(適正負荷値)VT2よりも大きい過負荷判定値V2を設定し、この過負荷判定値V2と駆動モータの負荷を比較することで、通路内に人や荷物があるか否かを判定するようにした。
【0032】
図4は駆動モータの特性を示すもので、駆動モータ起動時の過渡電流(0.2秒間)の推移を交流駆動(系列2)と直流駆動駆動(系列1)とで比較したものである。図4から、交流駆動(系列2)は、ほとんど変化が見られないのに対し、直流駆動(系列1)は0.2秒間であってもリニアに変化していることが確認された。このことにより、直流駆動(系列1)は応答性が良く、微妙な変化も識別できることが判明した。
【0033】
本形態では、図1、図5に示すように、駆動モータ12a〜12eに直流モータを用い、直流モータに対する負荷情報を検出する負荷情報検出手段13a〜13eと、負荷情報検出手段13a〜13eの検出結果が、過負荷判定値V1と過負荷判定値V2よりも大きい過負荷判定値の少なくとも一方の値を超える場合に過負荷状態と判定する過負荷判定手段14a〜14eとを備え、過負荷判定手段14a〜14eによる決定結果が過負荷状態の場合に、過負荷状態の移動棚を含む移動中の移動棚の移動が停止するように、移動している移動棚に対応する直流モータの作動を各制御手段で制御する構成とした。つまり、本形態では、従来の安全装置に対して、負荷情報検出手段13a〜13eと過負荷判定手段14a〜14eと制御手段20a〜20eによって新たな安全装置19を構成している。
【0034】
本形態において、負荷情報検出手段13a〜13eと過負荷判定手段14a〜14eと駆動モータ12a〜12e、及び制御手段20a〜20eは、それぞれの移動棚に設けられている。つまり、駆動モータ12a、負荷情報検出手段13a、過負荷判定手段14a及び制御手段20aは移動棚11aに設けられ、駆動モータ12b、負荷情報検出手段13b、過負荷判定手段14b及び制御手段20bは移動棚11bに設けられている。駆動モータ12c、負荷情報検出手段13c、過負荷判定手段14c及び制御手段20cは移動棚11cに設けられ、駆動モータ12d、負荷情報検出手段13d、過負荷判定手段14d及び制御手段20dは移動棚11dに設けられ、駆動モータ12e、負荷情報検出手段13e、過負荷判定手段14e及び制御手段20eは移動棚11eに設けられている。負荷情報検出手段13a〜13eと過負荷判定手段14a〜14eはそれぞれ制御手段20a〜20eと接続されている。
【0035】
負荷情報検出手段13a〜13e、過負荷判定手段14a〜14e及び制御手段20a〜20eは、それぞれ同一の構成とされているので、ここでは代表して1つの構成について図5を用いて説明する。負荷情報検出手段13aは、電源21と駆動モータ12aの間の電源線上に配置されている。本形態では、負荷情報検出手段13aには負荷となる駆動モータに直結された超低抵抗器の両端から電圧降下値を検出するように、電源21と制御手段20aの一時側に配置されている。負荷情報検出手段13aは、駆動モータ12aに対する負荷電流と電圧値とから負荷情報(V)を検出するものである。本形態では、負荷情報検出手段13aを制御手段20aの基板一次側と接続するように設けたが、制御手段20aと駆動モータ12aとの間に設ける形態であってもよい。
【0036】
過負荷判定手段14aは、負荷情報検出手段13aと接続されていて、過負荷検出手段13aで検出されたI/V変換値(負荷情報V)が入力され、このI/V変換値(負荷情報V)が適正負荷によるものか、異常過負荷によるものかを判断する比較部と、異常過負荷と判断した時の停止信号を出力する操作部とをそれぞれ備えている。
【0037】
本形態において、各制御手段は、各過負荷判定手段から停止信号が出力されると、停止信号を出力した過負荷判定手段を備えた移動棚を移動させている駆動モータの作動を停止する。この場合の停止は、通常の停止の場合とは異なり緊急を要するため、各制御手段は通常の停止モードよりも早く制動を与える緊急停止モードを有していて、過負荷判定手段の停止信号を受けると、すなわち、過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、直ちに該当する駆動モータの作動を停止する。
【0038】
電動移動棚装置の安全装置19は、各種情報を表示可能なタッチパネルなどの表示手段16を備えている。本形態において、表示手段16は、図1に示すよう固定棚8の正面パネル18に配設されていて、棚の周囲にいる人から目視可能とされている。表示手段16は各制御手段の出力側に接続されている。
【0039】
制御手段20a〜20eは、過負荷判定手段14a〜14eによる決定結果がそれぞれ過負荷状態の場合に、表示手段16に警告内容を表示するそれぞれ機能を備えている。ここでは、負荷情報検出手段14a〜14eの検出結果が移動棚の起動時に対応する過負荷判定値V1を超える場合には、作業者Hに積載荷重の認識を促す警告内容を表示手段16に表示する。
【0040】
このような新たな安全装置19による制御内容を図6に示すフローチャートによって説明する。
図6において、各制御手段は、ステップST1において通路開閉ボタンがオンか否かを判定し、オンされている場合にはステップST2において各制御手段が備えている図示しないタイマーの初期化を行う。ステップST3では、通路開閉ボタンが押されて移動対象となる移動棚の駆動モータを作動し、ステップST4においてタイマーを作動して起動区間T1の時間計測を実行する。
【0041】
駆動モータが作動すると、ステップST5では各過負荷検出手段がI/V変換値(負荷情報V)を検出して出力する。ステップST6では、各過負荷判定手段がI/V変換値(負荷情報V)と過負荷判定値V1とを比較して負荷情報V>過負荷判定値V1か否かを判定する。ここで負荷情報V>過負荷判定値V1の場合には、移動している駆動モータに対する起動時の負荷が高く、積載量オーバーであるとみなし、ステップST7において駆動モータの作動を停止すべく停止信号を出力する。この停止信号を受けた制御手段は、ステップST8で過負荷を検出された駆動モータの作動と、これ以外で作動している駆動モータを停止するとともに、ステップST9で表示手段16に積載荷重の認識を促す警告内容を表示する。
【0042】
一方、ステップST6において負荷情報V>過負荷判定値V1でない場合には、駆動モータに対する起動時の負荷が適正な範囲であるものでとして、ステップST10に進んで駆動モータが起動範囲T1を移動したか否かを判定する。ここでは、タイマーの計測時間Taと予め設定した起動範囲T1に該当する移動時間Ta1とを比較し、計測時間Ta≧移動時間Ta1となると、ステップST11に進み、計測時間Ta≧移動時間Ta1でなければステップST4に戻る。
【0043】
ステップST11では、安定走行範囲T2に入ったものとして、各過負荷判定手段がI/V変換値(負荷情報V)と過負荷判定値V2とを比較して、負荷情報V>過負荷判定値V2か否かを判定する。ここで負荷情報V>過負荷判定値V2の場合には、ステップST12に進んで駆動モータに対する安定走行時の負荷が高く、通路内に作業者Hや脚立などがあるものとみなし、駆動モータの作動を停止すべくステップST12において停止信号を出力する。停止信号を受けた制御手段は、ステップST13において過負荷を検出された駆動モータと、作動している駆動モータの作動を停止するとともに、ステップST14において表示手段に過負荷を促す警告内容を表示する。
【0044】
ステップST11において、負荷情報V>過負荷判定値V2でない場合には、安定走行時の負荷は適正な範囲であるものとして、ステップST15に進んで移動している移動棚が、予め設定された移動量を完了したか否かを判定し、移動が完了して駆動モータが停止した場合には待機状態となる。
【0045】
図7は、積載荷重に対する起動電流を測定したもので、0kg〜500kg程度までは、起動電流に変化がなく、それ以降はリニアに変化していることが解る。図7において縦軸は駆動モータに対する負荷値となるI/V変換値(負荷情報V)を示し、横軸は荷重を示している。図7では、積載荷重500kg以上になると100Kg単位の検出を可能としている。負荷情報検出手段の設定により、10Kg単位の検出は容易に行うことが可能である。
【0046】
図8は、符号Aで示す交流駆動と符号Bで示す直流駆動の起動した瞬間から人が挟まれた時の電流変化を表した図である。図8において、縦軸はI/V変換値(負荷情報V)、横軸は時間を示す。本図を見ると交流駆動(A)は、人が移動棚に挟まれて移動棚に力(5kg〜10kg程度)を3回ほど掛けているが明確な変化が判別できない。また、起動時に大きな電流値になっている。この交流駆動の特異な特徴は、積載荷重の重軽に係わらず同様の波形を示す。このことから起動時の早い段階での異常な変化を検知することは不可能で、定常時の電圧変化と異常時の電圧変化に明確な差違を見いだせない。このため、本形態のような駆動モータの負荷変動に応じた安全対策をとることは困難であることが解る。
【0047】
一方、直流駆動(B)の場合、3回ほどの大きな波が明確に現れているのが解る。これは、人が移動棚に挟まれて棚に力(5kg〜10kg程度)を3回程度掛けた動作が現れたもので通常の電流変化とは明らかに異なる波形を示している。このことから、人や物が挟まれた瞬間から異常と認識でき素早く棚を停止させることができることを示している。
【0048】
このような構成の安全装置19によると、通路を形成するために移動棚を移動させる駆動モータ12a〜12eを直流モータとし、この直流モータに対する負荷情報を負荷情報検出手段13a〜13eで検出し、負荷情報検出手段の検出結果が直流モータの起動時の適正負荷値VT1や移動棚の定常移動時における直流モータの適正負荷値VT2よりも大きい過負荷判定値V1、V2超える場合には過負荷状態と過負荷判定手段14a〜14eでそれぞれ判定し、過負荷状態の場合には過負荷状態の移動棚の移動が停止するように、過負荷状態の移動棚を含む移動中の移動棚に対応した直流モータの作動を制御手段20a〜20eでそれぞれ停止する。このため、移動棚に対する積載量オーバー、通路内に作業者Hがいる場合や移動棚に収納された荷物Mがオーバーハングしている場合には移動棚が停止するので、作業者やオーバーハングした荷物Mを検知するセンサを増設する必要がなくなり、低コストで作業者に対する安全範囲を広くしながらも、オーバーハングによる荷物Mの破損や移動棚の斜行、また積載量を把握して設置床の撓みによる不具合を解消できる。
【0049】
つまり、既存の安全装置である安全バーに触れることができない場合に、移動棚が作動した時、作業者Hは無意識に棚を逆方向へ押すので、この時の異常な負荷を駆動モータの負荷として検知し、速やかに停止させることができる。また、通路内の作業者Hが移動棚の利用方法を理解せず、安全バーに触れることで停止することを知らない場合も、上記と同様、移動棚の移動を停止することができるので、安全性を確保することができる。
【0050】
さらに、足継ぎ脚立を使い通路内の高所で作業するような特殊な作業行為をする場合、移動棚から収納物が通路側に突出しているオーバーハング状態の場合、通路内で作業者Hが倒れている場合でも、これらの状況を駆動モータの負荷情報から判定して、駆動モータの作動を停止するので、安全性を確保することができる。
【0051】
本形態において、制御手段20a〜20eは、過負荷判定手段14a〜14eによる決定結果が過負荷状態の場合に、表示手段16に警告内容をそれぞれ表示するので、棚の周囲の人やユーザーに過負荷による異常状態を認知させることができる。
【0052】
本形態では、既存の安全検知手段SNa〜SNfが故障あるいは破損した場合でも、負荷情報検出手段13a〜13eと過負荷判定手段14a〜14eと制御手段20a〜20eが各移動棚に個別に配置されているので、移動棚の可動状態の把握が移動棚毎にでき、外力に強く万一破損した場合、システム自体が動かなくなるので、より安全性を確保することができる。
【0053】
上記形態では、負荷情報検出手段13a〜13eと過負荷判定手段14a〜14eと制御手段20a〜20eをそれぞれ移動棚11a〜11eに個別に設置する形態としたが、図11に示すような構成としてもよい。図11に示す構成は、移動棚11a〜11eに負荷情報検出手段13a〜13eだけをそれぞれ個別に設け、固定棚8に、1つの過負荷判定手段14と1つの制御手段20を設置している。違う点は、負荷情報検出手段13a〜13eから出力されたI/V変換値(負荷情報V)を1つの過負荷判定手段14で判定し、この判定結果に基づいて各駆動モータの作動を1つの制御手段20で制御する点にある。すなわち、この形態の電動移動棚装置10は、主棚となる固定棚8に全ての電動棚11a〜11eを管制制御する制御手段20を設けているため、固定棚8に過負荷判定手段14を設け、各電動棚には負荷情報検出手段13a〜13eのみを設けた。
【0054】
このように、各負荷情報検出手段13a〜13eから出力されたI/V変換値(負荷情報V)を1つの過負荷判定手段14で判定し、この判定結果に基づいて各駆動モータの作動を1つ制御手段20で制御することで部品点数を低減することができ、コスト低減を図ることができる。また、各移動棚には、既存構成である駆動モータ以外に、過負荷検出手段13a〜13eのみをそれぞれ設ければよいので、従来の移動棚の構成を大幅に変更することなく使用でき、コスト低減につながる。
【0055】
本発明にかかる安全装置19が適用される電動移動棚装置10としては、図1、図2、図11に示すように、固定棚8と移動棚11a〜11eの双方を備えた構成を例示したが、電動移動棚装置としては、固定棚8を備えていない全てが移動棚のものであってもよく、この場合、移動棚の1つを主棚とすればよい。また、表示手段16としては上述したタッチパネルなどに限定されるものではなく、例えば通路開閉スイッチや別途で表示灯を移動棚11a〜11eや固定棚8に付加しても良く、要は作業者が目視可能で判断できればどのような形態であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
8 固定棚
10 電動移動棚装置
11a〜11e 移動棚
12a〜12e 電動駆動源
13a〜13e 負荷情報検出手段
14、14a〜14e過負荷判定手段
16 表示手段
19 安全装置
20、20a〜20e制御手段
VT1 起動時の適正負荷値
VT2 定常移動時における適正負荷値
V1,V2 過負荷判定値
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動移動棚装置の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
床に敷設された軌道上を電動駆動源となる駆動モータによって移動可能とされた複数の移動棚が並列された電動移動棚装置には、隣接する移動棚の間に形成される通路内での作業者の安全を図るための安全装置が装備されている。
【0003】
例えば、本出願人から出願されている特許文献1には、隣接する移動棚の間に形成される通路の閉塞を阻止するインターロックや、通路入り口側の所定領域内に人がいるか否かを検知する人感検知手段を安全装置として備えた電動移動棚装置が開示されている。これ以外にも、通路内に安全バーと称する可動式のレバーが設けられ、このレバーが押されるとスイッチが作動して駆動モータの作動を停止する安全装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−109929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、電動移動棚装置の安全対策として、人感検知手段(パッシブセンサ)を設けて通路内の状態を確認検知しているが、コストが高く、取付け調整が難しい、人が動いていないと検知しない場合や検知範囲に制限がある。このため、制限領域、すなわち死角をより少なくすることが要望されている。このようなセンサ類は外付タイプで、移動棚自体の状態を検知するものではないため、移動棚自体の可動状態の状況を細かく把握することが難しい。
【0006】
移動棚の駆動モータには耐久性の面から交流モータを用いることが多い。しかし、この交流モータは、初期トルクが小さいため、ギヤ比を大きくして回転数を減速し、移動棚を移動する際の初期トルクを確保しなければならない点や、移動棚の積載荷重重軽の影響が大きく、最大積載荷重にトルクを合わせる必要があり、可動状態の状況を細かく把握することが難しい。
【0007】
移動棚の荷物が移動棚本体から通路側にはみだした状態(オーバーハング)で収納されている場合、通路を閉じようとしたときに荷物が破損することがある。また、オーバーハングした荷物が移動棚の移動を妨げて移動棚本体が斜行するなど、故障の原因となりうる。荷物の収納状態はユーザー側の裁量によって決まるので、荷物のオーバーハングを防止する有効な対策はなかった。
【0008】
移動棚は、棚を設置する床の床耐荷重を考慮して最大積載荷重が決められているが、積載荷重を具体的に検知するものはなく、実際の使用に際しては、ユーザー側の裁量で荷物が移動棚に積載されるため、最大積載荷重オーバーになってしまうこともある。このような最大積載荷重オーバーは、床に撓みを発生させ、撓みによる軌道の傾斜によって移動棚が自走を起こしたり、床自体が抜けたりする不具合につながってしまう。
【0009】
移動棚には高さや奥行きがあり、収納されているものを取り出そうとしたときに、移動棚に登って取り出すという状況や、通路内に足継ぎや脚立を持ち込んで作業することを想定する必要がある。さらに、通路内で作業者が倒れた場合、センサなどで検知することは可能であるが、センサの検知エリアには制限があるので、死角を無くすためにセンサの数を増やす必要があり、コストアップになってしまう。
【0010】
本発明は、移動棚自体の可動状態を細かく把握することを可能とすることで、低コストで作業者に対する安全範囲を広くしながらも、荷物のオーバーハングによる移動棚の斜行や荷物の破損、積載量を把握して設置床の撓みによる不具合を解消できる電動移動棚装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、通路形成方向と通路閉塞方向に移動可能な複数の移動棚を、各移動棚に対応するの電動駆動源によってそれぞれ移動可能とした電動移動棚装置の安全装置であって、電動駆動源が直流モータであり、直流モータに対する負荷情報を検出する負荷情報検出手段と、負荷情報検出手段の検出結果が、直流モータの起動時の適正負荷値あるいは移動棚の定常移動時における直流モータの適正負荷値よりも大きい過負荷判定値の少なくとも一方の値を超える場合に過負荷状態と判定する過負荷判定手段と、過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、過負荷状態の移動棚を含む移動中の全ての移動棚の移動が停止するように、移動中の移動棚に対応する直流モータの作動を制御する制御手段を有することを特徴としている。
本発明に係る電動移動棚装置の安全装置において、直流モータと負荷情報検出手段と過負荷判定手段と制御手段が、各移動棚にそれぞれ設けられていることを特徴としている。 本発明に係る電動移動棚装置の安全装置において、通路形成方向と通路閉塞方向に移動しない固定棚あるいは複数の移動棚の1つを主棚としたとき、主棚に負荷判定手段と制御手段が設けられ、各移動棚に負荷情報検出手段がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明に係る電動移動棚装置の安全装置において、各種情報を表示可能な表示手段を有し、制御手段は、過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、表示手段に警告内容を表示することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通路を形成するために移動棚を移動する電動駆動源を直流モータとし、直流モータに対する負荷情報を検出する負荷情報検出手段と、負荷情報検出手段の検出結果が直流モータの起動時の適正負荷値あるいは移動棚の定常移動時における直流モータの適正負荷値よりも大きい過負荷判定値の少なくとも一方の値を超える場合に過負荷状態と判定する過負荷判定手段と、過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、過負荷状態の移動棚を含む移動中の全ての移動棚の移動が停止するように、移動中の移動棚に対応する直流モータの作動を制御する制御手段を有するので、移動棚に対する積載量オーバーや通路内に作業者がいる場合や移動棚に収納された荷物がオーバーハングしている場合には移動棚が停止するので、作業者を検知するセンサを増設する必要なくなり、低コストで作業者に対する安全範囲を広くしながらも、荷物のオーバーハングによる荷物の破損や移動棚の斜行、また積載量を把握して設置床の撓みによる不具合を解消することができる。
【0014】
本発明によれば、制御手段は、過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、表示手段に警告内容を表示するので、使用者に起動時の過負荷と定常走行時の過負荷を認知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明にかかる電動移動棚装置の構成を示す平面図、(b)は電動移動棚装置の構成を示す正面図である。
【図2】(a)は通路が形成された状態を示す平面図、(b)は通路が形成された状態を示す正面図である。
【図3】適正負荷発生時と過負荷発生時のモータの出力特性を示す線図である。
【図4】直流モータと交流モータにおける負荷の変化特性を示す線図である。
【図5】本発明の主要部となる安全装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】制御手段による制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】移動棚の積載負荷と起動時の負荷特性を示す線図である。
【図8】負荷検知手段の検知特性を示す線図である。
【図9】(a)は収納部に収納されている荷物のオーバーハング状態を示す図、(b)は荷物がオーバーハング状態で通路を閉じたときの不具合を示す図である。
【図10】オーバーハングした荷物による不具合となる移動棚の斜行状態を示す平面図である。
【図11】本発明にかかる電動移動棚装置の別な構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1(a)、図1(b)において、符号10は本発明が適用される電動移動棚装置を示す。図1(a)は電動移動棚装置10の平面図、図1(b)は電動移動棚装置10の正面図である。本形態における電動移動棚装置10は、それぞれの移動棚において隣接する移動棚との相対位置を単独ですなわち個々の移動棚で独立して検出する独立認識タイプである。通路形成方向と通路閉塞方向に移動しない固定棚8と、通路形成方向と通路閉塞方向に移動可能な複数の移動棚11a〜11eと、各移動棚を通路形成方向と通路閉塞方向に移動させる電動駆動源となる駆動モータ12a〜12eと、各棚の間に通路を形成する際に用いる通路開閉ボタンSa〜Seと、制御手段20a〜20eを備えている。移動棚11a〜11eは、固定棚8を端に設置したときに、図1に示す順序に配列されていて、装置設置場所の床9に敷設された軌道7上を移動するように構成されている。本形態において、移動棚11a〜11eは図1の左右方向に移動可能とされており、この左右方向が通路形成方向と通路閉塞方向となる。
【0017】
固定棚8は移動棚11aと対向する片面に荷物の収納部を備え、移動棚11a〜eはその両面に荷物の収納部をそれぞれ備えている。固定棚8と移動棚11a、複数の移動棚のうち、互いに隣接する移動棚の間や図示しない建物の壁などの間には、作業者Hが希望する移動棚の収納部にアクセスするための通路1〜6が形成される。図1に示す状態においては、移動棚11eの左側に通路6を形成している。通路1は固定棚8と移動棚11aの間に、通路2〜5は移動棚11aから移動棚11eの間に形成され、通路6は移動棚11eの左側に形成される。
【0018】
本形態では、移動棚の移動により通路1〜6が形成されると、形成された通路が閉塞しないように、制御手段20a〜20eからの制御信号により駆動モータ12a〜12eの作動を制御する図示しないインターロック機能を備えている。また、通路内に面する各移動棚の間口面には、通路形成時に操作されるとスイッチが押され、通路形成時に移動する駆動モータの作動を停止する図示しない周知の安全バーが配置されている。
【0019】
駆動モータ12a〜12eは、移動棚11a〜11eの下部に位置する台車部にそれぞれ固定されている。駆動モータ12a〜12eは、各制御手段からの駆動信号により作動し、同台車に配設された図示しない車輪を駆動して各移動棚を移動するとともに、制御手段からの停止信号により作動を停止して各移動棚の移動を停止する。
【0020】
通路開閉ボタンSa〜Seは、各移動棚の正面パネル18に設けられていて、各制御手段と信号線を介して接続されている。各移動棚に設けられた通路開閉ボタンSa〜Seは、各移動棚を通路形成方向と通路閉塞方向に個別に移動できるように、1つの移動棚に2つずつ形成されている。これら通路開閉ボタンSa〜Seの数は1つであってもよい。
【0021】
固定棚8と各移動棚には、隣接する棚と対向する部分に通路内安全検知手段SNa、SNb、SNc、SNd、SNe、SNfが、各通路に対応して設けられている。通路内安全検知手段SNa〜SNfは、各通路内に作業者Hが進入したか否かを光学的に検知する通過センサである。通過センサは通路内に進入している作業者Hによって検知光線が遮られているときには、作業者Hが通路内にいることを知らせる作業者検知信号を出力するように構成されている。通路内安全検知手段としては、このような通過型のセンサに限定されるものではなく、光学的なエリアセンサを用いてもよい。
【0022】
これら通路内安全検知手段SNa〜SNf、図示しないインターロックや安全バーは従来から知られている安全装置に該当する。
【0023】
制御手段20a〜20eは、CPU、ROM、RAM、タイマーを備えた周知のコンピュータで構成されている。各制御手段の入力側には通路開閉ボタンSa〜Se、通路内安全検知手段SNb〜SNf、通路開閉ボタンSa〜Se、安全バーによって押される図示しないスイッチが、出力側端子には駆動モータ12a〜12eがそれぞれ信号線を介して接続されている。また、制御手段20aの入力側には、固定棚8に設けた通路内安全検知手段SNaが接続されている。
【0024】
各制御手段のROMには、本形態を例にすると、複数の移動棚が所定の距離を保って平行移動するときの「連動距離」、移動棚が隣接移動棚または壁やエンドストッパーなどの距離測定面に接近して移動限界近くに達し、移動棚の移動速度を遅くするために制動をかけ始めるときの距離である「制動距離」、移動棚の移動を停止させるときの「停止距離」をパラメータとして予め設定されている。これらパラメータは、移動棚の制御方法によって異なり、通路幅、移動時間など各種様々である。本形態では、通路開閉ボタンSa〜Sfが操作されると、操作されたスイッチが設けられている移動棚の駆動モータを作動させて、当該移動棚に隣接している移動棚との距離を図示しない距離センサにより計測し、この計測した距離が上記パラメータとして設定した距離に達したとき、移動棚の動作を制御し、最終的に通路を形成する。図2はこのような制御方法により移動棚11eが移動して通路5が形成された状態を示している。
【0025】
また、各制御手段は、上述で述べたインターロック機能や安全バー、通路内安全検知手段などの検知情報に基づき、駆動モータの作動を制御する。このような安全装置を備えることで、電動移動棚装置10は、各通路内での作業者Hの安全性が従来から確保されている。
【0026】
ところで、移動棚11a〜11eに収納部への荷物の出し入れは作業者Hが通路内に入っておこなうものであるが、図9(a)に示すように、荷物Mが収納部から通路側にはみだした状態(オーバーハング)で収納されている状態で通路を閉じてしまうと、図9(b)に示すようにオーバーハングしている荷物M同士が衝突して破損することがある。また、オーバーハングした荷物Mが移動棚の移動を妨げると、図10に示すように移動棚が斜行するなどの故障の原因となりうる。収納部への荷物Mの収納状態はユーザー側の裁量によって決まるので、荷物Mのオーバーハングを防止することが安全装置に要望されている。
【0027】
安全装置を構成する安全検知手段SNa〜SNfはセンサであるので、検知不良や作業者Hとの接触などにより破損する場合がある。作業者Hが通路内で作業する場合、足継ぎや脚立を通路内に設置して作業する場合があるが、作業者Hが足継ぎや脚立を通路内に残したまま通路から出ることがある。この場合、安全検知手段SNa〜SNfは作業者Hの通過を検知するので、各制御手段は移動棚の移動を可能にするため、足継ぎや脚立を移動棚の間に挟み込んでしまう。足継ぎや脚立の設置位置や通路内で作業者Hが倒れた場合、その場所によっては、安全バーが押されない状況が想定される。このような状況は作業者Hを検知するセンサの数を増設することで対応することは可能であるが、コストアップになってしまうとともにセンサの配線が煩雑になってしまう。
【0028】
電動移動棚装置10は、設置する床9の構造や収納する荷物量を考慮して各移動棚の最大積載量が設定されている。しかし、各移動棚にどれだけ荷物を収納するかはユーザーの裁量によって異なるので、最大積載量をオーバーすることが想定される。このような各移動棚に対する積載量オーバー(過積載)な状態は、床9や軌道(レール)7に対する負荷となり、軌道7や床9の撓みを生じさせ、移動棚の自走などの発生要因となってしまう。
【0029】
そこで本発明者らは、これら各移動棚への過積載や作業者Hの安全性の両方を解決することを精査検討し、過積載発生時や人やものが通路内にある場合に共通に発生する状況を考察したところ、駆動モータの負荷変化に着目した。
【0030】
駆動モータ12a〜12eの設定は、最大積載量を考慮して設定されている。駆動モータ12a〜12eへの負荷を測定したところ、図3に実線で示すように、移動棚が移動を開始するモータ起動時の起動範囲T1が高く、一旦移動した後の定常走行範囲T2においては一定している。そこで、本形態では、この起動範囲T1における駆動モータの適正負荷の値(適正負荷値)VT1よりも大きい過負荷判定値V1を制御手段に設定し、この過負荷判定値V1と駆動モータの負荷を比較することで、移動棚の最大積載量が許容範囲か否かを判定するようにした。
【0031】
また、図3に示すように、定常走行範囲T2における負荷は一定であるので、各駆動モータの適正負荷の値(適正負荷値)VT2よりも大きい過負荷判定値V2を設定し、この過負荷判定値V2と駆動モータの負荷を比較することで、通路内に人や荷物があるか否かを判定するようにした。
【0032】
図4は駆動モータの特性を示すもので、駆動モータ起動時の過渡電流(0.2秒間)の推移を交流駆動(系列2)と直流駆動駆動(系列1)とで比較したものである。図4から、交流駆動(系列2)は、ほとんど変化が見られないのに対し、直流駆動(系列1)は0.2秒間であってもリニアに変化していることが確認された。このことにより、直流駆動(系列1)は応答性が良く、微妙な変化も識別できることが判明した。
【0033】
本形態では、図1、図5に示すように、駆動モータ12a〜12eに直流モータを用い、直流モータに対する負荷情報を検出する負荷情報検出手段13a〜13eと、負荷情報検出手段13a〜13eの検出結果が、過負荷判定値V1と過負荷判定値V2よりも大きい過負荷判定値の少なくとも一方の値を超える場合に過負荷状態と判定する過負荷判定手段14a〜14eとを備え、過負荷判定手段14a〜14eによる決定結果が過負荷状態の場合に、過負荷状態の移動棚を含む移動中の移動棚の移動が停止するように、移動している移動棚に対応する直流モータの作動を各制御手段で制御する構成とした。つまり、本形態では、従来の安全装置に対して、負荷情報検出手段13a〜13eと過負荷判定手段14a〜14eと制御手段20a〜20eによって新たな安全装置19を構成している。
【0034】
本形態において、負荷情報検出手段13a〜13eと過負荷判定手段14a〜14eと駆動モータ12a〜12e、及び制御手段20a〜20eは、それぞれの移動棚に設けられている。つまり、駆動モータ12a、負荷情報検出手段13a、過負荷判定手段14a及び制御手段20aは移動棚11aに設けられ、駆動モータ12b、負荷情報検出手段13b、過負荷判定手段14b及び制御手段20bは移動棚11bに設けられている。駆動モータ12c、負荷情報検出手段13c、過負荷判定手段14c及び制御手段20cは移動棚11cに設けられ、駆動モータ12d、負荷情報検出手段13d、過負荷判定手段14d及び制御手段20dは移動棚11dに設けられ、駆動モータ12e、負荷情報検出手段13e、過負荷判定手段14e及び制御手段20eは移動棚11eに設けられている。負荷情報検出手段13a〜13eと過負荷判定手段14a〜14eはそれぞれ制御手段20a〜20eと接続されている。
【0035】
負荷情報検出手段13a〜13e、過負荷判定手段14a〜14e及び制御手段20a〜20eは、それぞれ同一の構成とされているので、ここでは代表して1つの構成について図5を用いて説明する。負荷情報検出手段13aは、電源21と駆動モータ12aの間の電源線上に配置されている。本形態では、負荷情報検出手段13aには負荷となる駆動モータに直結された超低抵抗器の両端から電圧降下値を検出するように、電源21と制御手段20aの一時側に配置されている。負荷情報検出手段13aは、駆動モータ12aに対する負荷電流と電圧値とから負荷情報(V)を検出するものである。本形態では、負荷情報検出手段13aを制御手段20aの基板一次側と接続するように設けたが、制御手段20aと駆動モータ12aとの間に設ける形態であってもよい。
【0036】
過負荷判定手段14aは、負荷情報検出手段13aと接続されていて、過負荷検出手段13aで検出されたI/V変換値(負荷情報V)が入力され、このI/V変換値(負荷情報V)が適正負荷によるものか、異常過負荷によるものかを判断する比較部と、異常過負荷と判断した時の停止信号を出力する操作部とをそれぞれ備えている。
【0037】
本形態において、各制御手段は、各過負荷判定手段から停止信号が出力されると、停止信号を出力した過負荷判定手段を備えた移動棚を移動させている駆動モータの作動を停止する。この場合の停止は、通常の停止の場合とは異なり緊急を要するため、各制御手段は通常の停止モードよりも早く制動を与える緊急停止モードを有していて、過負荷判定手段の停止信号を受けると、すなわち、過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、直ちに該当する駆動モータの作動を停止する。
【0038】
電動移動棚装置の安全装置19は、各種情報を表示可能なタッチパネルなどの表示手段16を備えている。本形態において、表示手段16は、図1に示すよう固定棚8の正面パネル18に配設されていて、棚の周囲にいる人から目視可能とされている。表示手段16は各制御手段の出力側に接続されている。
【0039】
制御手段20a〜20eは、過負荷判定手段14a〜14eによる決定結果がそれぞれ過負荷状態の場合に、表示手段16に警告内容を表示するそれぞれ機能を備えている。ここでは、負荷情報検出手段14a〜14eの検出結果が移動棚の起動時に対応する過負荷判定値V1を超える場合には、作業者Hに積載荷重の認識を促す警告内容を表示手段16に表示する。
【0040】
このような新たな安全装置19による制御内容を図6に示すフローチャートによって説明する。
図6において、各制御手段は、ステップST1において通路開閉ボタンがオンか否かを判定し、オンされている場合にはステップST2において各制御手段が備えている図示しないタイマーの初期化を行う。ステップST3では、通路開閉ボタンが押されて移動対象となる移動棚の駆動モータを作動し、ステップST4においてタイマーを作動して起動区間T1の時間計測を実行する。
【0041】
駆動モータが作動すると、ステップST5では各過負荷検出手段がI/V変換値(負荷情報V)を検出して出力する。ステップST6では、各過負荷判定手段がI/V変換値(負荷情報V)と過負荷判定値V1とを比較して負荷情報V>過負荷判定値V1か否かを判定する。ここで負荷情報V>過負荷判定値V1の場合には、移動している駆動モータに対する起動時の負荷が高く、積載量オーバーであるとみなし、ステップST7において駆動モータの作動を停止すべく停止信号を出力する。この停止信号を受けた制御手段は、ステップST8で過負荷を検出された駆動モータの作動と、これ以外で作動している駆動モータを停止するとともに、ステップST9で表示手段16に積載荷重の認識を促す警告内容を表示する。
【0042】
一方、ステップST6において負荷情報V>過負荷判定値V1でない場合には、駆動モータに対する起動時の負荷が適正な範囲であるものでとして、ステップST10に進んで駆動モータが起動範囲T1を移動したか否かを判定する。ここでは、タイマーの計測時間Taと予め設定した起動範囲T1に該当する移動時間Ta1とを比較し、計測時間Ta≧移動時間Ta1となると、ステップST11に進み、計測時間Ta≧移動時間Ta1でなければステップST4に戻る。
【0043】
ステップST11では、安定走行範囲T2に入ったものとして、各過負荷判定手段がI/V変換値(負荷情報V)と過負荷判定値V2とを比較して、負荷情報V>過負荷判定値V2か否かを判定する。ここで負荷情報V>過負荷判定値V2の場合には、ステップST12に進んで駆動モータに対する安定走行時の負荷が高く、通路内に作業者Hや脚立などがあるものとみなし、駆動モータの作動を停止すべくステップST12において停止信号を出力する。停止信号を受けた制御手段は、ステップST13において過負荷を検出された駆動モータと、作動している駆動モータの作動を停止するとともに、ステップST14において表示手段に過負荷を促す警告内容を表示する。
【0044】
ステップST11において、負荷情報V>過負荷判定値V2でない場合には、安定走行時の負荷は適正な範囲であるものとして、ステップST15に進んで移動している移動棚が、予め設定された移動量を完了したか否かを判定し、移動が完了して駆動モータが停止した場合には待機状態となる。
【0045】
図7は、積載荷重に対する起動電流を測定したもので、0kg〜500kg程度までは、起動電流に変化がなく、それ以降はリニアに変化していることが解る。図7において縦軸は駆動モータに対する負荷値となるI/V変換値(負荷情報V)を示し、横軸は荷重を示している。図7では、積載荷重500kg以上になると100Kg単位の検出を可能としている。負荷情報検出手段の設定により、10Kg単位の検出は容易に行うことが可能である。
【0046】
図8は、符号Aで示す交流駆動と符号Bで示す直流駆動の起動した瞬間から人が挟まれた時の電流変化を表した図である。図8において、縦軸はI/V変換値(負荷情報V)、横軸は時間を示す。本図を見ると交流駆動(A)は、人が移動棚に挟まれて移動棚に力(5kg〜10kg程度)を3回ほど掛けているが明確な変化が判別できない。また、起動時に大きな電流値になっている。この交流駆動の特異な特徴は、積載荷重の重軽に係わらず同様の波形を示す。このことから起動時の早い段階での異常な変化を検知することは不可能で、定常時の電圧変化と異常時の電圧変化に明確な差違を見いだせない。このため、本形態のような駆動モータの負荷変動に応じた安全対策をとることは困難であることが解る。
【0047】
一方、直流駆動(B)の場合、3回ほどの大きな波が明確に現れているのが解る。これは、人が移動棚に挟まれて棚に力(5kg〜10kg程度)を3回程度掛けた動作が現れたもので通常の電流変化とは明らかに異なる波形を示している。このことから、人や物が挟まれた瞬間から異常と認識でき素早く棚を停止させることができることを示している。
【0048】
このような構成の安全装置19によると、通路を形成するために移動棚を移動させる駆動モータ12a〜12eを直流モータとし、この直流モータに対する負荷情報を負荷情報検出手段13a〜13eで検出し、負荷情報検出手段の検出結果が直流モータの起動時の適正負荷値VT1や移動棚の定常移動時における直流モータの適正負荷値VT2よりも大きい過負荷判定値V1、V2超える場合には過負荷状態と過負荷判定手段14a〜14eでそれぞれ判定し、過負荷状態の場合には過負荷状態の移動棚の移動が停止するように、過負荷状態の移動棚を含む移動中の移動棚に対応した直流モータの作動を制御手段20a〜20eでそれぞれ停止する。このため、移動棚に対する積載量オーバー、通路内に作業者Hがいる場合や移動棚に収納された荷物Mがオーバーハングしている場合には移動棚が停止するので、作業者やオーバーハングした荷物Mを検知するセンサを増設する必要がなくなり、低コストで作業者に対する安全範囲を広くしながらも、オーバーハングによる荷物Mの破損や移動棚の斜行、また積載量を把握して設置床の撓みによる不具合を解消できる。
【0049】
つまり、既存の安全装置である安全バーに触れることができない場合に、移動棚が作動した時、作業者Hは無意識に棚を逆方向へ押すので、この時の異常な負荷を駆動モータの負荷として検知し、速やかに停止させることができる。また、通路内の作業者Hが移動棚の利用方法を理解せず、安全バーに触れることで停止することを知らない場合も、上記と同様、移動棚の移動を停止することができるので、安全性を確保することができる。
【0050】
さらに、足継ぎ脚立を使い通路内の高所で作業するような特殊な作業行為をする場合、移動棚から収納物が通路側に突出しているオーバーハング状態の場合、通路内で作業者Hが倒れている場合でも、これらの状況を駆動モータの負荷情報から判定して、駆動モータの作動を停止するので、安全性を確保することができる。
【0051】
本形態において、制御手段20a〜20eは、過負荷判定手段14a〜14eによる決定結果が過負荷状態の場合に、表示手段16に警告内容をそれぞれ表示するので、棚の周囲の人やユーザーに過負荷による異常状態を認知させることができる。
【0052】
本形態では、既存の安全検知手段SNa〜SNfが故障あるいは破損した場合でも、負荷情報検出手段13a〜13eと過負荷判定手段14a〜14eと制御手段20a〜20eが各移動棚に個別に配置されているので、移動棚の可動状態の把握が移動棚毎にでき、外力に強く万一破損した場合、システム自体が動かなくなるので、より安全性を確保することができる。
【0053】
上記形態では、負荷情報検出手段13a〜13eと過負荷判定手段14a〜14eと制御手段20a〜20eをそれぞれ移動棚11a〜11eに個別に設置する形態としたが、図11に示すような構成としてもよい。図11に示す構成は、移動棚11a〜11eに負荷情報検出手段13a〜13eだけをそれぞれ個別に設け、固定棚8に、1つの過負荷判定手段14と1つの制御手段20を設置している。違う点は、負荷情報検出手段13a〜13eから出力されたI/V変換値(負荷情報V)を1つの過負荷判定手段14で判定し、この判定結果に基づいて各駆動モータの作動を1つの制御手段20で制御する点にある。すなわち、この形態の電動移動棚装置10は、主棚となる固定棚8に全ての電動棚11a〜11eを管制制御する制御手段20を設けているため、固定棚8に過負荷判定手段14を設け、各電動棚には負荷情報検出手段13a〜13eのみを設けた。
【0054】
このように、各負荷情報検出手段13a〜13eから出力されたI/V変換値(負荷情報V)を1つの過負荷判定手段14で判定し、この判定結果に基づいて各駆動モータの作動を1つ制御手段20で制御することで部品点数を低減することができ、コスト低減を図ることができる。また、各移動棚には、既存構成である駆動モータ以外に、過負荷検出手段13a〜13eのみをそれぞれ設ければよいので、従来の移動棚の構成を大幅に変更することなく使用でき、コスト低減につながる。
【0055】
本発明にかかる安全装置19が適用される電動移動棚装置10としては、図1、図2、図11に示すように、固定棚8と移動棚11a〜11eの双方を備えた構成を例示したが、電動移動棚装置としては、固定棚8を備えていない全てが移動棚のものであってもよく、この場合、移動棚の1つを主棚とすればよい。また、表示手段16としては上述したタッチパネルなどに限定されるものではなく、例えば通路開閉スイッチや別途で表示灯を移動棚11a〜11eや固定棚8に付加しても良く、要は作業者が目視可能で判断できればどのような形態であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
8 固定棚
10 電動移動棚装置
11a〜11e 移動棚
12a〜12e 電動駆動源
13a〜13e 負荷情報検出手段
14、14a〜14e過負荷判定手段
16 表示手段
19 安全装置
20、20a〜20e制御手段
VT1 起動時の適正負荷値
VT2 定常移動時における適正負荷値
V1,V2 過負荷判定値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路形成方向と通路閉塞方向に移動可能な複数の移動棚を、各移動棚に対応する電動駆動源によってそれぞれ移動可能とした電動移動棚装置の安全装置であって、
前記電動駆動源が直流モータであり、
前記直流モータに対する負荷情報を検出する負荷情報検出手段と、
前記負荷情報検出手段の検出結果が、前記直流モータの起動時の適正負荷値あるいは前記移動棚の定常移動時における直流モータの適正負荷値よりも大きい過負荷判定値の少なくとも一方の値を超える場合に過負荷状態と判定する過負荷判定手段と、
前記過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、過負荷状態の移動棚を含む移動中の全ての移動棚の移動が停止するように、前記移動中の移動棚に対応する直流モータの作動を制御する制御手段を有することを特徴とする電動移動棚装置の安全装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動移動棚装置の安全装置において、
前記直流モータと前記負荷情報検出手段と前記過負荷判定手段と前記制御手段が、各移動棚にそれぞれ設けられていることを特徴とする電動移動棚装置の安全装置。
【請求項3】
請求項1記載の電動式移動棚装置の安全装置において、
前記通路形成方向と通路閉塞方向に移動しない固定棚あるいは前記複数の移動棚の1つを主棚としたとき、前記主棚に前記負荷判定手段と前記制御手段が設けられ、各移動棚に前記負荷情報検出手段がそれぞれ設けられていることを特徴とする電動式移動棚装置の安全装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の電動移動棚装置の安全装置において、
各種情報を表示可能な表示手段を有し、
前記制御手段は、前記過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、前記表示手段に警告内容を表示することを特徴とする電動移動棚装置の安全装置。
【請求項1】
通路形成方向と通路閉塞方向に移動可能な複数の移動棚を、各移動棚に対応する電動駆動源によってそれぞれ移動可能とした電動移動棚装置の安全装置であって、
前記電動駆動源が直流モータであり、
前記直流モータに対する負荷情報を検出する負荷情報検出手段と、
前記負荷情報検出手段の検出結果が、前記直流モータの起動時の適正負荷値あるいは前記移動棚の定常移動時における直流モータの適正負荷値よりも大きい過負荷判定値の少なくとも一方の値を超える場合に過負荷状態と判定する過負荷判定手段と、
前記過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、過負荷状態の移動棚を含む移動中の全ての移動棚の移動が停止するように、前記移動中の移動棚に対応する直流モータの作動を制御する制御手段を有することを特徴とする電動移動棚装置の安全装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動移動棚装置の安全装置において、
前記直流モータと前記負荷情報検出手段と前記過負荷判定手段と前記制御手段が、各移動棚にそれぞれ設けられていることを特徴とする電動移動棚装置の安全装置。
【請求項3】
請求項1記載の電動式移動棚装置の安全装置において、
前記通路形成方向と通路閉塞方向に移動しない固定棚あるいは前記複数の移動棚の1つを主棚としたとき、前記主棚に前記負荷判定手段と前記制御手段が設けられ、各移動棚に前記負荷情報検出手段がそれぞれ設けられていることを特徴とする電動式移動棚装置の安全装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の電動移動棚装置の安全装置において、
各種情報を表示可能な表示手段を有し、
前記制御手段は、前記過負荷判定手段による決定結果が過負荷状態の場合に、前記表示手段に警告内容を表示することを特徴とする電動移動棚装置の安全装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−57324(P2011−57324A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206342(P2009−206342)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000163833)金剛株式会社 (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000163833)金剛株式会社 (31)
【Fターム(参考)】
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