説明

電動車両の充電装置

【課題】簡素で信頼性の高い構造により、電動車両の受電部の汚損を防止し、安定した充電を行うことのできる電動車両の充電装置を提供する。
【解決手段】地上側に設置された送電部の上に電動車両を駐車させ、該電動車両の車体下面に設けられた受電部32を送電部の位置に整合させて、送電部から空中送電される電力エネルギを受電部32で受電し、前記電動車両側に搭載されたバッテリを非接触充電させる電動車両の充電装置1Aであって、受電部32の動作面32aを、送電および受電の作用を妨げずに外部に対して遮蔽する遮蔽手段を設けた。この遮蔽手段としてはロールスクリーン41が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上側に設置された送電部の上に電動車両を停車させ、電動車両側に搭載されたバッテリを非接触充電する電動車両の充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球環境保全のため、内燃機関の動力に加えて車載バッテリの電力により電動モータを駆動して走行するハイブリッド車両や、電動モータのみの駆動力で走行する電気自動車等の電動車両が急速に普及しつつある。これらの電動車両の車載バッテリを充電する際に、充電器と車体との間を充電ケーブルで接続する作業を省いて充電作業を簡易にするべく、特許文献1,2に開示されているような非接触式の電動車両の充電装置が発案されている。
【0003】
これらの充電装置は、駐車場の床等の地上側に送電部を設置する一方、電動車両の車体下面に受電部を設置し、車載バッテリの充電時には、地上側の送電部の真上に車体側の受電部が整合するように車体を駐車させ、送電部と受電部を接触させることなく電磁誘導により送電部から受電部に電力を供給して充電を行うようにしている。非接触により給電する方法としては、電磁誘導以外にも、マイクロ波、磁気共鳴といった手段を用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−253131号公報
【特許文献2】特開2009−106136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、受電部が電動車両の車体下面に設置された充電装置においては、車両の走行時に受電部に泥や塵埃等が付着して汚損しやすい。受電部が汚損したまま非接触充電を行うと充電エラーになる可能性が高いばかりか、例えばマイクロ波により非接触充電を行う場合には、付着している汚物が過熱されてしまい、汚物の成分によっては発煙、発火、固着等の虞がある。
【0006】
充電を開始する前に受電部に付着した汚物を除去するには、例えば送電部側に水ノズルを設け、この水ノズルから水や温水を受電部に向けて噴射して受電部を洗浄したり、送電部側に、上方に向かって出没可能な清掃ブラシを設け、この清掃ブラシによって受電部の汚物を下方から払い落したりする方法が考えられる。しかしながら、このように送電部側に水ノズルや清掃ブラシを装備するのは、送電側の設備が大掛りになり、コスト面や保守面において好ましくない。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、簡素で信頼性の高い構造により、電動車両側に設けられた受電部、もしくは地上側に設置された送電部の汚損を防止し、安定した充電を行うことのできる電動車両の充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
即ち、本発明に係る電動車両の充電装置の第1の態様は、地上側に設置された送電部の上に電動車両を駐車させ、該電動車両の車体下面に設けられた受電部を前記送電部の位置に整合させて、前記送電部から空中送電される電力エネルギを前記受電部で受電し、前記電動車両側に搭載されたバッテリを非接触充電させる電動車両の充電装置において、前記受電部および前記送電部の少なくとも一方の動作面を、前記送電および受電の作用を妨げずに外部に対して遮蔽する遮蔽手段を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、受電部または送電部の動作面が遮蔽手段により外部に対して遮蔽されて動作面の汚損が防止される。例えば、電動車両の車体下面に設置された受電部に遮蔽手段を付設すれば、電動車両の走行時に泥や塵埃等の付着による受電部の汚損が防止される。また、駐車場の床面に設置された送電部に遮蔽手段を付設すれば、落ち葉や昆虫等が送電部に堆積することが防止される。このため、安定した充電を行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る電動車両の充電装置の第2の態様は、前記第1の態様において、前記遮蔽手段は、前記動作面を覆うように設けられたロールスクリーンであることを特徴とする。本構成によれば、非常に簡素で信頼性の高い構成により、電動車両側に設けられた受電部、もしくは地上側に設置された送電部の汚損を防止することができる。
【0011】
また、本発明に係る電動車両の充電装置の第3の態様は、前記第2の態様において、前記ロールスクリーンは、巻き上げ機構を有して前記動作面を開閉可能に覆い、その開放時には前記動作面を外部に露出させることを特徴とする。
【0012】
上記構成において、例えば電動車両の車体下面に設置された受電部を上記ロールスクリーンで覆う場合、走行時にはロールスクリーンを閉じて受電部の汚損を防止し、充電時にはロールスクリーンを開いて充電を行うことができる。充電時には地上側の送電部と車体側の受電部との間にロールスクリーンが介在しないため、充電エラーを防止して確実な充電を行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る電動車両の充電装置の第4の態様は、前記第2の態様において、前記ロールスクリーンは、前記送電および受電の作用を妨げない材質で形成されて前記動作面を常時覆い、巻き上げ機構により前記動作面を覆っている範囲を置換させることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、地上側の送電部と車体側の受電部との間にロールスクリーンが介在していても、このロールスクリーンにより送電および受電の作用が妨げられないため、送電部または受電部を常にロールスクリーンで覆っておくことができ、送電部および受電部の汚損を確実に防止して安定した充電を行うことができる。
しかも、ロールスクリーンが汚れても、この汚れた面を巻き上げ機構により巻き上げて、常に汚れていない面を送電部と受電部との間に配置し、ロールスクリーンに付着した汚物の過熱等による悪影響を回避することができる。
【0015】
また、本発明に係る電動車両の充電装置の第5の態様は、前記第2〜4のいずれかの態様において、前記ロールスクリーンの表面に付着した汚物を、前記ロールスクリーンの開閉動作および巻き上げ動作とともに払拭する払拭手段を具備することを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、ロールスクリーンの開閉動作および巻き上げ動作の度に、払拭手段によってロールスクリーンの表面に付着した汚物が払拭されるので、ロールスクリーンの表面が常に綺麗に保たれる。このため、特にロールスクリーンが送電部または受電部を常に覆う充電装置の場合は、ロールスクリーンに付着した汚物が送電部と受電部との間に介在して悪影響を及ぼすことが防止され、安定した充電を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る電動車両の充電装置の第6の態様は、前記第1の態様において、前記遮蔽手段は、剛体で形成されたシャッター機構により前記動作面を開閉可能に覆う構成であることを特徴とする。本構成によれば、受電部または送電部の動作面がシャッター機構により外部に対して遮蔽されて動作面の汚損が防止され、安定した充電を行うことができる。シャッター機構は丈夫に構成できるため、信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る電動車両の充電装置によれば、簡素で信頼性の高い構造により、電動車両側に設けられた受電部の汚損を防止することのできる電動車両の充電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る電動車両の充電装置の概略的な全体構成を示す側面図である。
【図2】図1に示す充電装置の拡大側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示す充電装置(受電部)の側面図である。
【図4】(a)は受電部がロールスクリーンで覆われた非充電状態を示し、(b)は受電部が外部に露出した充電状態を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す充電装置(受電部)の側面図である。
【図6】図5に示すロールスクリーンの作動を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示す充電装置(受電部)の側面図である。
【図8】図7に示すロールスクリーンの作動を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態を示す充電装置(受電部)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電動車両の充電装置の複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る電動車両の充電装置の概略的な全体構成を示す側面図である。この充電装置1は、電動車両2を専用の駐車場に駐車させながら、電動車両2側に搭載されたモータ駆動用のバッテリを非接触充電するものであり、地上側に設置された送電系統3と、電動車両2の車体下面に設置された受電系統4とを備えて構成されている。非接触により給電する方法の一例として、ここではマイクロ波による電力変換方式が適用されている。
【0022】
送電系統3は、外部の電力線6(商用電源)から電力を取り入れ、この電力をマイクロ波への変換に適した電源に変換する電源供給部7と、この電源供給部7から供給された電力を例えば2.45GHzのマイクロ波に変換するマイクロ波変換部8と、電動車両2の駐車スペースの略中央部に設置された送電部10と、マイクロ波変換部8で変換されたマイクロ波を送電部10に送る送電用導体11と、水冷/給湯設備12とを備えて構成されている。また、図2に示すように、マイクロ波変換部8は、変換部筐体8aの内部に、複数のトランス14、整流器15、およびマグネトロン16が内蔵され、さらに電源供給部7へのインターフェース17と、水冷/給湯設備12へのインターフェース18と、制御部20および通信部21が設けられた構成である。
【0023】
マグネトロン16には、電源供給部7からインターフェース17を経て電力が供給され、この電力がマグネトロン16によってマイクロ波に変換されるが、供給された電力の一部は熱に変換されてマグネトロン16を発熱させるため、マグネトロン16にインターフェース18を介して水冷/給湯設備12から冷却水が供給されてマグネトロン16が冷却され、その長寿命化が図られる。マグネトロン16を冷却することにより加温された冷却水は、水冷/給湯設備12に還流され、ポンプで家屋内等の給湯設備に送られて温水として利用されることにより、電気エネルギが無駄なく回収される。
【0024】
送電部10は平面視で例えば矩形をなし、送電部筐体10aの上部に水平に設置されている。そして、送電部10の周囲を囲むように、例えばブラシでできた周壁状の遮蔽部材23が設けられている。この遮蔽部材23は、昇降機構24により上下に昇降することができる。また、送電部10には、導通センサ26、温度センサ27、位置センサ28等が付設されている。一方、送電用導体11は送電用筐体11aの内部に収容されてマイクロ波変換部8のマグネトロン16と送電部10との間を接続している。
【0025】
他方、電動車両2の車体下面に設置された受電系統4は、広い面積で板状に形成されて車体下面に固定された放熱体31と、この放熱体31の中央部下面に設置された受電部32とを備えている。放熱体31はアルミニウム等の良熱伝導材料により形成されて下方に突出する多数の放熱フィン31aが一体形成されており、放熱体31の内部には図示しない冷却空洞が形成されて、放熱体31の一端には冷却ファン33が設けられている。充電時に発熱する受電部32の熱は放熱体31に移行し、冷却ファン33が外気を放熱体31内部の冷却空洞に送気することによって放熱体31に移行した受電部32の熱が冷却される。また、放熱体31には制御部35や温度センサ36が設けられ、さらに、受電部32や各センサ類を車体側に接続するためのインターフェース37が設けられている。
【0026】
受電部32の形状は、平面視で矩形であり、その大きさは送電部10よりも一回り小さく設定されている。例えば送電部10の大きさが長さ40cm、幅30cmであるとするならば、受電部32の大きさは長さ30cm、幅20cm程度に設定される。なお、送受電性能に影響がなければ、送電部10と受電部32をより小型化してもよい。また、送電部10と受電部32の形状は矩形に限られず、円形や楕円形等、他の形状であってもよい。
【0027】
電動車両2を駐車させる時には、車体下面の受電部32が、駐車場の略中央部に設置された送電部10の位置に整合するように電動車両2を駐車させる。そして、例えば電動車両2のイグニッションキーが抜かれると、制御部35により自動的に車載バッテリの充電残量が確認され、満充電に満たない場合には充電が開始される。その際には、事前に位置センサ28により受電部32と送電部10の位置が規定範囲内に整合していることが確認され、著しくずれている場合には充電が開始されないように制御される。
【0028】
そして、受電部32と送電部10の相対位置が規定範囲内で整合していることが確認されると、送電部10の周囲を囲む遮蔽部材23が上昇して送電部10と受電部32の周囲が外部に対して遮蔽され、マイクロ波による影響が周囲に及ばないようにされるとともに、送電部10と受電部32との間に異物や昆虫等が入り込むことが防止される。こうして充電準備が整うと、マイクロ波変換部8にて電力エネルギから変換されたマイクロ波が送電用導体11を経て送電部10に送られ、さらに送電部10から受電部32に向けて空中送電され、これを受電部32が受電することにより車載バッテリが非接触充電される。充電が完了すると、遮蔽部材23が自動的に下降して送電部10の高さ程度まで下降する。なお、このようなマイクロ波による非接触充電方式では、送電部10と受電部32の相対位置が多少ずれていても問題なく充電が行えるため、電動車両2の駐車位置精度がさほど問われない。
【0029】
一方、電動車両2の走行時には、車体下面に設置された受電系統4の受電部32に泥や塵埃等が付着しやすいため、このような受電部32の汚損を防止するために、受電部32の動作面(下面)32aを、送電および受電の作用を妨げずに外部に対して遮蔽する遮蔽手段が設けられている。以下に、遮蔽手段の第1〜第4実施形態を個別に説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図3は、遮蔽手段を受電部32に備えた充電装置の第1実施形態を示す側面図である。この充電装置1Aでは、遮蔽手段として、受電部32の動作面を覆うロールスクリーン41が設置されている。このロールスクリーン41は、アラミド系の素材、例えばケブラー(デュポン社の登録商標:正式名称はポリパラフェニレンテレフタルアミド)のような強靭な膜材により形成され、図3および図4(a)に示すように、受電部32の動作面32aを覆ったカバー位置41aと、図4(b)に示すように、受電部32を外部に露出させた開放位置41bとの間を開閉動作するように構成されている。即ち、例えば受電系統4の基部である放熱体31の前後に、電動車両2の車幅方向に延びるローラ42,43が軸支されて巻き上げ機構44が構成されており、このローラ42,43間にロールスクリーン41が張られるようになっている。
【0031】
例えば車両進行方向前方に位置するローラ42は、常にロールスクリーン41を開放位置41b側に巻き取ろうとする回転方向Fに付勢されており、車両進行方向後方に位置するローラ43は、図示しない駆動モータ等の力で回転方向Rに回転することにより、ローラ42の付勢力に抗して、ローラ42に巻き取られているロールスクリーン41をカバー位置41aに引き出すことができる。図4(a)にも示すように、ロールスクリーン41がカバー位置41aに引き出されると、ロールスクリーン41は受電部32(動作面32a)から数mm乃至数cm下方の位置に水平に張られて受電部32をカバーする。
【0032】
図4(b)に示すように、例えばロールスクリーン41の端部とローラ43との間は左右一対の引出ワイヤ46によって連結されており、ローラ42が回転方向Fに回転することによってロールスクリーン41が完全に巻き取られると、ローラ42とローラ43との間には2本の引出ワイヤ46だけが張られた状態となり、その間に受電部32が露出する。2本の引出ワイヤ46の間隔(即ちロールスクリーン41の幅)は、送電部10の遮蔽部材23の幅よりも充分に広く設定され、引出ワイヤ46が充電時に送電部10および受電部32に干渉しないようにされている。
【0033】
ロールスクリーン41は、制御装置35により、電動車両2の走行時および非充電時にはカバー位置41aに引き出された状態に保たれ、電動車両2が定位置に駐車して充電が開始される直前に開放位置41bに巻き上げられるように制御される。
【0034】
このようなロールスクリーン41を設けたことによって、非常に簡素で信頼性の高い構成により、受電部32を外部に対して遮蔽し、電動車両2の走行時において受電部32の動作面32aが泥や塵埃等の付着により汚損されることを効果的に防止することができる。ロールスクリーン41は巻き上げ機構44を有して受電部32を開閉可能に覆い、その開放位置41bでは受電部32を外部に完全に露出させるため、電動車両2の走行時にはロールスクリーン41をカバー位置41aに閉じて受電部32の汚損を防止し、充電時にはロールスクリーン41を開放位置41bに開いて充電を行うことができる。そして、充電時には地上側の送電部10と車体側の受電部32との間にロールスクリーン41が介在しないため、充電エラーを防止して確実な充電を行うことができる。
【0035】
[第2実施形態]
図5および図6は、遮蔽手段を備えた充電装置の第2実施形態を示す側面図である。この充電装置1Bの基本構成は、遮蔽手段を除けば第1実施形態の充電装置1Aと同一であるため、各部に同一符号を付して説明を省略する。この充電装置1Bでも、受電部32の動作面32aを覆う遮蔽手段として、ロールスクリーン50が設けられている。このロールスクリーン50は、送電部10と受電部32との間の送電および受電の作用を妨げない材質で形成されている。その素材としては、マイクロ波を透過させるものがよく、例えば第1実施形態のロールスクリーン41と同様なアラミド系素材が好適である。
【0036】
このロールスクリーン50は、受電部32を常に覆うように構成されている。即ち、第1実施形態と同様に、受電系統4の基部である放熱体31の前後にローラ51,52が軸支されて巻き上げ機構53が構成され、ローラ51,52の間にロールスクリーン50が張られているが、ロールスクリーン50は巻き上げ機構53により受電部32を覆っている範囲が置き換えられるだけで、第1実施形態のように受電部32を露出させることはない。そして、ロールスクリーン50は、図6に示すように、所定の時間を経て常に一方の方向に繰り出されていく。
【0037】
ロールスクリーン50は、送電部10から受電部32に送られるマイクロ波を透過させる素材であるため、ロールスクリーン50が受電部32を覆っている状態のままでも充電を行うことができる。このため、受電部32を常にロールスクリーン50で覆っておくことができ、受電部32の汚損を確実に防止して安定した充電を行うことができる。しかも、ロールスクリーン50が汚れても、この汚れた面を巻き上げ機構53により巻き上げて、常に汚れていない面を送電部10と受電部32との間に配置し、ロールスクリーン50に付着した汚物の過熱等による悪影響を回避することができる。
【0038】
さらに、ロールスクリーン50の下方、かつ受電部32の前方および後方に位置するように、前後一対のスクレーパ55が図示しないステー部材等に支持されて設けられている。このスクレーパ55は、その上端のエッジ部が常にロールスクリーン50の下面に軽く当接しており、ロールスクリーン50が巻き上げ機構53により巻き上げられた際に、ロールスクリーン50の下面に付着している泥等の汚物を払拭する払拭手段として機能する。
【0039】
このような払拭手段を設けることにより、ロールスクリーン50の表面が常に綺麗に保たれる。このため、特にこの充電装置1Bのように、ロールスクリーン50が受電部32を常に覆う構成の場合は、ロールスクリーン50に付着した汚物が送電部10と受電部32との間に介在して悪影響を及ぼすことが防止され、これにより安定した充電を行うことができる。
【0040】
[第3実施形態]
図7および図8は、遮蔽手段を備えた充電装置の第3実施形態を示す側面図である。この充電装置1Cは、第2実施形態の充電装置1Bを変形させたものである。即ち、放熱体31の前後にローラ57,58が軸支されて巻き上げ機構59が構成されている点は充電装置1Bと同様であるが、ローラ57,58を取り巻くように設けられた環状のロールスクリーン60の内周側に放熱体31および受電部32が設置されており、この環状のロールスクリーン60によって受電系統4全体が取り巻かれた構成となっている。
【0041】
ロールスクリーン60の材質は、第2実施形態の充電装置1Bと同じく、マイクロ波を透過させるものとされる。そして、ロールスクリーン60の下面には、第2実施形態と同様に一対のスクレーパ55が払拭手段として設けられている。ロールスクリーン60は、図8に示すように、所定の時間をおいて常に一方の方向に繰り出され、その度にスクレーパ55によってロールスクリーン60の下面に付着した汚物が払拭される。
【0042】
上記構成によれば、受電部32(動作面32a)は勿論、受電系統4全体がロールスクリーン60によって取り巻かれる構成となるため、受電系統4の各部が汚損することを効果的に防止することができる。また、ロールスクリーン60の長さを短くするとともに、ローラ57,58の回転方向を一方向に限定して巻き上げ機構59の構造を簡素化し、故障等を防止して信頼性を高めることができる。
【0043】
[第4実施形態]
図9は、遮蔽手段を備えた充電装置の第4実施形態を示す斜視図である。この充電装置1Dでは、遮蔽手段として、ロールスクリーンではなく、金属や樹脂等の剛体で形成されたシャッター機構63により受電部32を開閉可能に覆う構成となっている。詳しくは、受電系統4全体が例えば樹脂製の防塵ボックス64の内部に収容され、この防塵ボックス64の下面には、受電部32に位置に合わせて広めの開口部64aが形成され、この開口部64aがシャッター機構63により開閉されるようになっている。開口部64aの大きさは遮蔽部材23の外形寸法よりも大きくして充電時に遮蔽部材23の先端が開口部64aの中に突入するようにすることが望ましい。
【0044】
この充電装置1Dにおいて、電動車両2の走行時および非充電時には、シャッター機構63が閉じられて受電系統4全体が汚損から守られ、充電時にのみシャッター機構63が開かれて受電部32が外部に露出し、送電部10との間で非接触充電が行われる。この構成によれば、受電部32がシャッター機構63により外部に対して遮蔽され、その汚損が防止されるため、安定した充電を行うことができる。また、シャッター機構63を丈夫に構成できるため、充電装置1Dの信頼性を高めることができる。
【0045】
なお、充電時に受電部32が発する熱を発散させる放熱体31(図2参照)も防塵ボックス64の内部に収容されてしまうため、放熱体31が外気に対して熱交換しやすいように、外気を冷却空気として防塵ボックス64内に取り込む冷却ファンを設けるのが好ましい。この場合、冷却ファンで外気を吸引してフィルター部材により除塵してから冷却空気として防塵ボックス64内に取り入れ、放熱体31の熱を奪って加温された冷却空気を開口部64aから排出するようにすれば、開口部64aから塵埃等の異物が防塵ボックス64内に侵入することを防止できる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は、上記の各実施形態の態様のみに限定されないことは言うまでもなく、例えば各実施形態の態様を組み合わせる等してもよい。また、第1〜第4実施形態に示すものと同様な遮蔽手段を、地上側の送電部10に付設してもよい。こうすれば、落ち葉や昆虫等が送電部10の動作面(上面)に堆積することを防止して安定した充電を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1,1A,1B,1C,1D 充電装置
2 電動車両
3 送電系統
4 受電系統
8 マイクロ波変換部
10 送電部
23 遮蔽部材
32 受電部
32a 動作面
41,50,60 ロールスクリーン(遮蔽手段)
44,53,59 巻き上げ機構
63 シャッター機構(遮蔽手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上側に設置された送電部の上に電動車両を駐車させ、該電動車両の車体下面に設けられた受電部を前記送電部の位置に整合させて、前記送電部から空中送電される電力エネルギを前記受電部で受電し、前記電動車両側に搭載されたバッテリを非接触充電させる電動車両の充電装置において、
前記受電部および前記送電部の少なくとも一方の動作面を、前記送電および受電の作用を妨げずに外部に対して遮蔽する遮蔽手段を有することを特徴とする電動車両の充電装置。
【請求項2】
前記遮蔽手段は、前記動作面を覆うように設けられたロールスクリーンであることを特徴とする請求項1に記載の電動車両の充電装置。
【請求項3】
前記ロールスクリーンは、巻き上げ機構を有して前記動作面を開閉可能に覆い、その開放時には前記動作面を外部に露出させることを特徴とする請求項2に記載の電動車両の充電装置。
【請求項4】
前記ロールスクリーンは、前記送電および受電の作用を妨げない材質で形成されて前記動作面を常時覆い、巻き上げ機構により前記動作面を覆っている範囲を置換させることを特徴とする請求項2に記載の電動車両の充電装置。
【請求項5】
前記ロールスクリーンの表面に付着した汚物を、前記ロールスクリーンの開閉動作および巻き上げ動作とともに払拭する払拭手段を具備することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の電動車両の充電装置。
【請求項6】
前記遮蔽手段は、剛体で形成されたシャッター機構により前記動作面を開閉可能に覆う構成であることを特徴とする請求項1に記載の電動車両の充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−147634(P2012−147634A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6023(P2011−6023)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】