説明

電動車両の制御装置

【課題】車載主機としての回転機12と、バッテリ14と、車載補機としての回転機16と、エンジン18と、触媒46とを備えるレンジエクステンダ電動車両において、エンジン18の駆動によるエミッションを低減すべく、エンジン18の駆動又は停止を適切に指示することのできる電動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】バッテリ14の蓄電量が第1の規定量未満になると判断された場合、バッテリ14に充電すべくエンジン18を駆動させる発電モード処理を行う。また、触媒46の温度が活性温度よりも高い暖機準備温度未満になると判断されて且つ、バッテリ14の蓄電量が第1の規定量よりも高い第2の規定量未満になると判断された場合、触媒46への排気熱の供給を優先すべく、エンジン18を駆動させる触媒暖機モード処理を行う。ここでは、第2の規定量を触媒46の温度が低いほど高く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となるエンジンと、該エンジンの排気通路上に設けられる排気浄化用触媒とを備える電動車両に適用される電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両としては、下記特許文献1に見られるように、車載主機としてエンジン及び回転機を備えるハイブリッド車両が知られている。詳しくは、この車両では、郊外を走行中の場合、市街地を走行する場合と比較して、バッテリの充放電を行うための充電量の制御中心値を高く設定する処理が行われている。これにより、エンジンの駆動に伴い発生するエミッションの低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−279989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エミッションの更なる低減及び車両の走行可能距離の拡大を目的として、車載主機として車載バッテリを電力供給源として駆動される回転機のみを備えて且つ、バッテリを充電する発電機と、この発電機の動力供給源となるエンジンと、エンジンの排気通路上に設けられる排気浄化用触媒とを備える電動車両であるいわゆるレンジエクステンダ車両(シリーズハイブリッド車両ともいう)の開発が進められている。
【0005】
詳しくは、この車両は、基本的にはエンジンを駆動させずに回転機を走行動力源として走行する。一方、回転機を駆動したり、バッテリを電力供給源とした車載機器(例えば車載空気調節装置)を駆動したりすることによってバッテリの蓄電量が低下する場合、発電機によってバッテリを充電すべく、エンジンを駆動させる。
【0006】
ここで、上記車両においては、エミッションを低減させる観点から、バッテリ充電のためにエンジンを駆動させる頻度を極力低くすることが要求される。しかしながら、エンジンを駆動させる頻度が低くなると、触媒に排気熱が供給される頻度の低下によって触媒温度が低くなる傾向にあり、触媒の排気浄化能力を高く維持することが困難となり得る。この場合、エンジンが駆動されると、大気中に放出されるエミッションが増大する懸念がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、レンジエクステンダ電動車両において、エミッションの増大を抑制することのできる電動車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となるエンジンと、該エンジンの排気通路上に設けられる排気浄化用触媒とを備える電動車両に適用され、前記触媒の温度、及びユーザによって操作される指示手段を介して設定された目的地に関する情報のうち少なくとも1つに基づき前記エンジンを駆動させて前記補機回転機に発電させる発電モード処理の実行要求を予測し、該予測された実行要求の生じる以前に、前記補機回転機に伝達される前記エンジンの出力軸の回転エネルギを前記発電モード処理の実行時よりも小さくした状態で、前記エンジンの駆動によって前記触媒を暖機させる触媒暖機モード処理を実行する制御手段を備えることを特徴とする。
【0010】
エンジンを駆動させて前記補機回転機に発電させる発電モード処理の実行時において、触媒の温度が低いと、触媒の排気浄化能力が低くなるため、エンジンの駆動に伴って大気中に放出されるエミッションが増大する懸念がある。
【0011】
この点、上記発明では、触媒の温度及び車両の目的地に関する情報のうち少なくとも1つに基づき、発電モード処理の実行要求を予測する。すなわち、触媒の排気浄化能力や、目的地に到達するまでに車両の走行に要求されるバッテリの蓄電量を把握しつつ、発電モード処理の実行要求や、発電モード処理の実行要求が生じるに先立って触媒暖機モード処理を終了できる極力遅いタイミングを予測する。これにより、予測された実行要求の生じる以前に、補機回転機に伝達されるエンジンの出力軸の回転エネルギを発電モード処理の実行時よりも小さくした状態でエンジンを駆動させて触媒を暖機させる触媒暖機モード処理を実行することができる。
【0012】
こうした構成によれば、補機回転機を駆動させるための燃料量を低減可能なことから、エンジンの駆動に要する燃料量を低減させることができる。このため、触媒の暖機中のエンジンの駆動によるエミッションの増大を抑制することができる。そしてその後、発電モード処理の実行時において排気浄化能力が低くなる事態の発生を抑制することもできる。したがって、上記発明によれば、エミッションの増大を抑制することができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記制御手段は、前記バッテリの蓄電量が第1の規定量未満になると判断された場合、前記発電モード処理を実行するものであり、前記触媒暖機モード処理は、前記バッテリの蓄電量が、前記第1の規定量以上であって且つ該第1の規定量よりも高い第2の規定量未満であると判断されて且つ、前記触媒の温度が規定温度未満になると判断された場合、前記エンジンを駆動させる処理であることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、バッテリの蓄電量が過度に不足する事態を回避すべく、バッテリの蓄電量が第1の規定量未満になると判断された場合、発電モード処理を実行する。ここで、主機回転機を駆動させる状況下、エンジンを駆動させない場合には、バッテリの蓄電量が漸減するとともに、触媒の温度が漸減する等、触媒の温度が上昇しないこととなる。こうした蓄電量及び触媒の温度の推移に鑑みると、バッテリの蓄電量が第1の規定量以上となる状況であっても、触媒の温度が低下して規定温度未満になると判断されたとき、近い将来、バッテリの蓄電量が第1の規定量未満になることで発電モード処理の実行要求が生じると予測することが可能であると考えられる。
【0015】
この点に鑑み、上記発明では、バッテリの蓄電量が第1の規定量以上であって且つ上記第2の規定量未満であると判断されて且つ、触媒の温度が規定温度未満になると判断された場合、近い将来、発電モード処理の実行要求が生じると予測し、発電モード処理の実行に先立って触媒暖機モード処理を実行する。こうした上記発明によれば、触媒暖機モード処理を適切なタイミングで実行することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記規定温度は、前記触媒の活性温度以上の暖機準備温度であることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、触媒の温度が活性温度を過度に下回る以前に、触媒暖機モード処理の実行によって触媒に排気熱を供給するため、触媒の温度を高く維持し、触媒の排気浄化能力を高く維持することができる。これにより、発電モード処理の実行時においてエミッションの増大を好適に抑制することができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記規定温度は、前記触媒の活性温度以上の暖機準備温度であり、前記第2の規定量は、前記触媒の温度が低いほど高く設定されることを特徴とする。
【0019】
触媒の温度が低いほど、排気熱の供給によって触媒の温度を所定温度まで上昇させるために要する時間が長くなる。この点に鑑み、上記発明では、触媒の温度が暖機準備温度未満になると判断される状況下、蓄電量が上記第2の規定量未満になると判断された場合に触媒暖機モード処理を行う。ここでは、第2の規定量を、触媒温度が低いほど高く設定する。
【0020】
こうした設定によれば、触媒暖機モード処理の完了時点においてバッテリの蓄電量が第1の規定量未満にならないと想定される極力遅いタイミング(発電モード処理の実行要求が生じるに先立って触媒暖機モード処理を終了できる極力遅いタイミング)を予測することができ、触媒の温度を上昇させるための時間を適切に確保可能なように触媒暖機モード処理を開始させることができる。これにより、バッテリの蓄電量が過度に低下することを回避しつつ、触媒の排気浄化能力を高く維持することができる。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記エンジンは、該エンジンの燃焼室に放電火花を発生させる点火プラグを備える火花点火式のものであり、前記触媒暖機モード処理は、前記点火プラグによる点火タイミングを前記発電モード処理の実行時よりも遅らせるものであることを特徴とする。
【0022】
上記発明では、点火タイミングを遅らせる(遅角させる)ことによって排気温度を適切に上昇させることができ、触媒の温度を速やかに上昇させることができる。これにより、触媒暖機モード処理及び発電モード処理の実行時におけるエミッションの増大をいっそう好適に抑制することができる。
【0023】
請求項6記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記制御手段は、前記バッテリの蓄電量が第1の規定量未満になると判断された場合、前記発電モード処理を実行するものであり、前記触媒暖機モード処理は、前記バッテリの蓄電量が、前記第1の規定量以上であって且つ該第1の規定量よりも高い第2の規定量未満であると判断されて且つ、前記触媒の温度が、該触媒の活性温度以上の暖機準備温度未満になると判断された場合、前記エンジンを駆動させる処理であり、前記制御手段は、前記触媒の温度が、前記暖機準備温度よりも高い暖機判定温度に到達するまで前記触媒暖機モード処理の実行を継続し、その後前記発電モード処理に移行させることを特徴とする。
【0024】
上記発明では、上記態様にて触媒暖機モード処理から発電モード処理へと移行させる。このため、発電モード処理の実行時において触媒の温度を活性温度よりも十分高い状態とすることができ、エミッションの増大を好適に抑制することができる。
【0025】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記制御手段は、前記バッテリの蓄電量が第1の規定量未満になると判断された場合、前記発電モード処理を実行するものであって且つ、前記指示手段を介して設定された目的地に前記車両が到達した時に想定される前記バッテリの蓄電量が、前記第1の規定量未満の所定の閾値以上になる場合、前記発電モード処理の実行を禁止する処理を実行することを特徴とする。
【0026】
車両が目的地に到達するまでに要求されるバッテリの蓄電量が十分である場合、エミッションの増大を抑制する観点から、発電モード処理を極力実行しないことが望ましい。
【0027】
この点、上記発明では、車両が目的地に到達した時に想定されるバッテリの蓄電量が、第1の規定量未満の所定の閾値以上になる場合、発電モード処理の実行を禁止する処理を実行する。これにより、エンジンを駆動させることなく車両を走行させることができ、ひいてはエミッションの増大を好適に抑制することができる。
【0028】
請求項8記載の発明は、請求項7のいずれか1項に記載の発明において、前記指示手段を介して設定された目的地に関する情報に基づき、前記設定された目的地に到達するまでに前記車両に要する電力量を算出する要求電力量算出手段と、前記要求電力量算出手段によって算出された電力量と、前記バッテリの蓄電量とに基づき、前記発電モード処理を実行することなく、前記設定された目的地に前記車両が到達可能か否かを判断する判断手段とを更に備え、前記禁止する処理は、前記指示する処理として、前記判断手段によって到達可能であると判断された場合、前記発電モード処理の実行を禁止する処理であることを特徴とする。
【0029】
上記発明では、目的地に到達するまでに車両が要する電力量(要求電力量)と、バッテリの蓄電量とに基づき、発電モード処理を実行することなく車両が目的地に到達可能であるか否かを判断する。そして、到達可能であると判断された場合、発電モード処理の実行を禁止することができる。
【0030】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、前記指示手段は、前記車両の現在位置を把握する機能及びユーザによって該車両の目的地を設定可能な機能を有する車載ナビゲーション装置であり、前記要求電力量算出手段は、前記ナビゲーション装置によって把握された現在位置から前記設定された目的地までの走行経路に基づき、前記車両が要する電力量を算出することを特徴とする。
【0031】
上記発明では、要求電力量の算出に、車両の現在位置から目的地までの走行経路を用いることで、要求電力量の算出精度を向上させることができる。
【0032】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記ナビゲーション装置には、前記バッテリの充電場所に関する情報が記憶されており、前記記憶された充電場所に関する情報に基づき、前記設定された目的地に前記充電場所がないと判断された場合、または前記設定された目的地に前記充電場所があるか不明であると判断された場合、前記発電モード処理の実行の禁止を解除する解除手段を更に備えることを特徴とする。
【0033】
上記発明では、目的地にバッテリの充電場所がなかったり、バッテリの充電場所があるか不明だったりする場合に、発電モード処理の実行の禁止を解除する。このため、禁止処理によってバッテリの充電が制限されることで、バッテリの蓄電量が過度に不足する事態を回避することができる。
【0034】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記車両には、前記エンジンから排出される排気熱を回収する回収手段が備えられ、車室内の暖房要求があると判断された場合、前記エンジンを駆動させ、前記回収手段によって回収された排気熱を用いて暖房する暖房手段を更に備えることを特徴とする。
【0035】
上記発明では、排気熱を用いて車室内を適切に暖房することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】一実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】一実施形態にかかる触媒暖機モード処理及び発電モード処理の手順を示すフローチャート。
【図3】一実施形態にかかる触媒暖機モード処理及び発電モード処理の一例を示すタイムチャート。
【図4】一実施形態にかかる触媒暖機モード処理及び発電モード処理の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明にかかる制御装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0038】
図1に本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0039】
図示される車両10は、車載主機として回転機12(以下、主機モータジェネレータMG1)のみを備えるレンジエクステンダ電動車両である。この車両10には、他に、主機モータジェネレータMG1の電力供給源となるバッテリ14、車載補機としての回転機16(以下、補機モータジェネレータMG2)、エンジン18、及び空気調節装置(エアコン装置20)が備えられている。
【0040】
バッテリ14は、図示しないインバータを介して主機モータジェネレータMG1及び補機モータジェネレータMG2に接続されており、これらモータジェネレータを駆動するための蓄電エネルギを蓄えるものである。また、バッテリ14は、補機モータジェネレータMG2の発電や、バッテリ14等に備えられるプラグPGを介した外部の充電設備(例えば急速充電器や家庭用電源)によって充電される。なお、バッテリ14は、図示しないDC−DCコンバータを介して図示しない低圧バッテリ(例えば12Vの補機バッテリ)に電力を供給する。
【0041】
主機モータジェネレータMG1は、バッテリ14の蓄電エネルギが供給されることで駆動される。主機モータジェネレータMG1によって生成された駆動エネルギは、減速機構22等を介して駆動輪24へと伝達される。なお、主機モータジェネレータMG1は、バッテリ14に充電すべく車両10の減速時に回生発電する機能を有している。
【0042】
エンジン18のシリンダヘッドには、図示しない車載燃料タンクから供給された燃料を燃焼室26に直接噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁28(筒内噴射弁)が設けられている。また、上記シリンダヘッドには、点火プラグ30が設けられており、点火プラグ30先端に備えられた中心電極及び接地電極は、燃焼室26に突出している。
【0043】
なお、燃料噴射弁28としては、筒内噴射弁に限らず、例えば、エンジン18の吸気通路32に燃料を噴射供給するポート噴射弁であってもよい。
【0044】
また、本実施形態では、エンジン18として単気筒のものを想定している。これは、エンジン18の構造を簡素化してコストを低減させること、エンジン18を軽量化して車両の走行距離を拡大すること、及び排気量を小さくしてエンジン18で発生する騒音を小さくすること等を目的とするものである。
【0045】
上記吸気通路32には、この通路を流れる吸気の圧力を検出する吸気圧センサ34が設けられている。また、吸気通路32の下流側は、エンジン18の燃焼室26と接続されている。そしてエンジン18の吸気ポート及び排気ポートのそれぞれは、吸気バルブ36及び排気バルブ38のそれぞれによって開閉される。
【0046】
こうした構成において、吸気バルブ36の開弁によって吸気通路32から燃焼室26に導入される吸気と、燃料噴射弁28により噴射供給される燃料との混合気が、点火プラグ30の放電火花によって着火され燃焼に供される。燃焼によって発生したエネルギは、ピストン40を介して、クランク軸42の回転エネルギとして取り出される。そして、燃焼に供された混合気は、排気バルブ38の開弁によって排気として排気通路44に排出される。
【0047】
なお、本実施形態では、車載機器の数を低減してコスト低減を図る観点から、クランク軸42付近には、クランク軸42の回転角度位置を直接検出するクランク角度センサ(例えば、電磁ピックアップ式センサ:MPUセンサ、磁気抵抗素子式センサ:MREセンサ)が設けられていない。
【0048】
排気通路44には、上流側から順に、排気中の有害成分を浄化する排気浄化用触媒(以下、触媒46)と、排気熱を回収するための熱回収装置48の蒸発部48aとが設けられている。
【0049】
詳しくは、触媒46は、その温度が活性温度以上となることで排気浄化能力を高く維持可能なものである。なお、触媒46としては、例えば、排気中のNOx、HC及びCOを浄化する三元触媒が挙げられる。また、触媒46には、触媒温度を検出する触媒温度センサ50が設けられている。
【0050】
熱回収装置48は、図示しないポンプの駆動によって作動流体(例えば、アンモニア、水)が循環する流体通路としての循環通路48bを備えている。循環通路48bの途中位置には、吸熱部としての上記蒸発部48aと、放熱部としての凝縮部48cとが設けられている。詳しくは、循環通路48bを流れる作動流体は、蒸発部48aを通る間に排気との熱交換によって排気から吸熱した後、凝縮部48cにおいてエンジン18の冷却水に対して放熱する。これにより、冷却水の温度を上昇させることができ、後述するヒータコア52によって冷却水の熱を車室内の暖房に用いることが可能となる。
【0051】
上記エアコン装置20は、車室内に温風等を供給する空気通路54と、この通路に空気流を生じさせる送風機56(例えば、ファン、ブロワ)と、空気通路54を流れる空気を暖めるためのヒータコア52とを備えて構成されている。詳しくは、ヒータコア52は、エンジン18の冷却水を熱源として空気を加熱する部材である。なお、上記送風機56は、上記補機バッテリに接続され、同バッテリを電力供給源として駆動される。
【0052】
こうした構成において、送風機56により送風された空気は、ヒータコア52を通過して所望の温度となるよう熱交換される。そして熱交換された空気が空気通路54に形成された図示しない吹出口から車室内へと供給されることで、車室内を暖房する。
【0053】
補機モータジェネレータMG2は、クランク軸42の回転エネルギによって駆動されることで発電してバッテリ14を充電したり、クランク軸42に初期回転を付与(モータリング)したりする機能を有する。
【0054】
詳しくは、まず、充電機能について説明すると、クランク軸42と補機モータジェネレータMG2との間の動力を伝達状態(ON状態)又は遮断状態(OFF状態)とする電磁駆動式のクラッチ58を備え、このクラッチ58がON状態とされる状況下、補機モータジェネレータMG2の発電エネルギによってバッテリ14が充電される。次に、モータリング機能について説明すると、補機モータジェネレータMG2は、バッテリ14からの蓄電エネルギの供給によって駆動されることで、クラッチ58がON状態とされる状況下においてモータリングを行う。
【0055】
上記車両10には、ナビゲーション装置60が備えられている。ナビゲーション装置60は、GPS信号等によって車両10の現在位置を把握する機能を有し、地図情報等を表示する表示部60aと、ユーザによって操作されるユーザインターフェース60bと、地図情報、バッテリ14の充電場所及び上記車載燃料タンクへの燃料の補給場所等に関する情報が記憶される記憶部60c(メモリ)とを備えて構成されている。なお、記憶部60cに記憶されている情報は、外部との通信によって適宜更新される。
【0056】
電子制御装置(以下、ECU62)は、主機モータジェネレータMG1、補機モータジェネレータMG2、エンジン18、及びエアコン装置20等のそれぞれを操作対象とし、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されるものである。ECU62には、エアコン装置20による空調を指示すべくユーザによって操作される空調スイッチ64や、バッテリ14の電圧及び入出力電流を検出するバッテリセンサ66や、吸気圧センサ34、更には触媒温度センサ50等の出力信号が入力される。
【0057】
また、ECU62とナビゲーション装置60とは、情報のやり取りを行う。詳しくは、ECU62には、ユーザインターフェース60bを介したユーザの入力情報や、車両10の現在位置情報等が入力される。一方、ナビゲーション装置60には、ECU62の行う処理の結果に関する情報等が入力される。
【0058】
ECU62は、上記入力に応じて、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、主機モータジェネレータMG1の駆動制御処理や、燃料噴射弁28による燃料噴射制御処理、更にはエアコン装置20による空調制御処理等を行う。
【0059】
上記燃料噴射制御処理について説明すると、まず、吸気圧センサ34によって検出される吸気圧と、クランク軸42の回転速度(エンジン回転速度)とから算出される吸気量に基づき、燃料噴射弁28からの燃料噴射量の指令値を設定する。より詳しくは、吸気量が多いほど、上記指令値を多く設定する。そして、設定された指令値に基づき、燃料噴射弁28を通電操作する。これにより、上記指令値に応じた燃料が燃料噴射弁28から噴射される。
【0060】
なお、モータジェネレータ、エンジン18及びエアコン装置20等のそれぞれは、実際には各別の電子制御装置のそれぞれによって操作されるが、ここではこれらの電子制御装置をECU62と表記している。
【0061】
特に、ECU62は、発電モード処理、触媒暖機モード処理及び暖房モード処理を行う。
【0062】
発電モード処理は、バッテリセンサ66の出力値から算出されるバッテリ14の蓄電量(バッテリ14に蓄えられている電力量、以下SOC)が、SOCの下限値S0よりも高い第1の規定量S1未満になると判断された場合、バッテリ14を充電すべく補機モータジェネレータMG2を駆動させる処理である。詳しくは、エンジン18を駆動させるとともにクラッチ58をON状態とさせることで、クランク軸42の回転エネルギが補機モータジェネレータMG2に伝達されてこれが駆動される。これにより、補機モータジェネレータMG2の発電によってバッテリ14が充電される。なお、上記下限値S0は、バッテリ14の信頼性を維持可能なSOCの最小値である。
【0063】
また、触媒暖機モード処理は、発電モード処理の実行に先立ち、触媒温度センサ50の出力値から算出される触媒温度が、活性温度よりも高い暖機準備温度T2未満になると判断された場合、補機モータジェネレータMG2に伝達されるクランク軸42の回転エネルギを発電モード処理の実行時よりも小さくした状態(換言すれば、補機モータジェネレータMG2の駆動トルクを低下させることで、補機モータジェネレータMG2の発電電力を発電モード処理の実行時よりも低下させた状態)で、エンジン18を駆動させる処理である。この処理は、触媒46の暖機を促進させ、発電モード処理の実行時にエミッションが増大することを抑制するための処理である。
【0064】
更に、本実施形態では、触媒暖機モード処理として、点火プラグ30による点火タイミングを発電モード処理の実行時よりも遅らせる(遅角させる)処理も行う。
【0065】
上記触媒暖機モード処理において、補機モータジェネレータMG2に伝達されるクランク軸42の回転エネルギを小さくするとの要件は、触媒暖機中におけるエミッションの増大を抑制するためのものである。つまり、補機モータジェネレータMG2に供給すべきクランク軸42の回転エネルギが小さくなることから、触媒暖機中においてエンジン18の駆動に要求される燃料噴射弁28からの燃料噴射量を低減できる。すなわち、触媒暖機モード処理の実行時における燃料噴射弁28からの燃料噴射量を、発電モード処理の実行時における燃料噴射量よりも低減できる。このため、触媒暖機中におけるエミッションの増大が抑制される。
【0066】
また、点火タイミングを遅角させるとの要件は、排気温度を上昇させて触媒温度の上昇を促進させ、エミッションの増大をさらに抑制するためのものである。ここで、点火タイミングの遅角によって触媒温度の上昇が促進されるのは、クランク軸42を回転させるために奪われるエネルギが減少すること、及び燃料の燃焼が開始されてから排気バルブ38が開弁するまでの時間が短くなり、燃焼によって発生する熱エネルギのうちエンジン18のシリンダブロック等に奪われる熱エネルギが減少すること等によるものである。
【0067】
こうした触媒暖機モード処理によれば、触媒46の暖機が開始されてから触媒温度が活性温度以上となるまでの期間を短くすることと、触媒暖機中における燃料噴射量を減少させることとを実現することができ、エミッションの増大を抑制することが可能となる。
【0068】
さらに、上記暖房モード処理は、エンジン18を駆動させて熱回収装置48によって回収された排気熱を用いて暖房すべく、エアコン装置20を操作する処理である。ここで、暖房モード処理としては、例えば、排気温度を上昇させるべく触媒暖機モード処理と同様の処理を行ってもよい。
【0069】
なお、発電モード処理、触媒暖機モード処理及び暖房モード処理のそれぞれにおいてエンジン18が駆動される場合、エンジン回転速度を目標回転速度に制御しつつ、エンジン回転速度が定常状態となるように、燃焼制御(燃料噴射弁28による燃料噴射制御及び点火プラグ30による点火制御)を行う。ここで、エンジン回転速度が定常状態となるように燃焼制御を行うとは、エンジン回転速度が一定となるように燃焼制御を行うこと、又はエンジン回転速度の変動量の絶対値が所定値以下となるように燃焼制御を行うことをいう。より具体的には、エンジン回転速度と目標回転速度とが一致すること、又はエンジン回転速度と目標回転速度との差分である上記変動量の絶対値が所定値以下となるように燃焼制御を行うことをいう。
【0070】
ちなみに、エンジン回転速度を定常状態としてエンジン18を駆動可能なのは、エンジン18が車載主機として用いられないことから、エンジン18の駆動状態の設定の制約が少ないことによるものである。
【0071】
また、エンジン回転速度は、吸気圧センサ34によって検出された吸気圧が規定圧以下になると判断されたタイミング間の時間に基づき算出すればよい。より具体的には、上記タイミング間の時間で1燃焼周期(720℃A)を除算することで算出すればよい。この算出手法は、吸気圧が規定圧以下となるタイミングが1燃焼周期において1回出現することに鑑みたものである。
【0072】
次に、図2を用いて、本実施形態にかかる発電モード処理及び触媒暖機モード処理を含むエンジン駆動制御処理の手順を説明する。この処理は、ECU62によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0073】
この一連の処理では、まずステップS10において、ユーザインターフェース60bを介してナビゲーション装置60に目的地が既に設定されているか否かを判断する。
【0074】
ステップS10において目的地が既に設定されていると判断された場合には、ステップS12に進み、設定された目的地に、バッテリ14の充電設備があるか否かを判断する。なお、バッテリ14の充電設備があるか否かは、ナビゲーション装置60の記憶部60cに記憶されているバッテリ14の充電場所に関する情報に基づき判断すればよい。
【0075】
ステップS12においてバッテリ14の充電設備があると判断された場合には、ステップS14に進み、ナビゲーション装置60によって把握された現在位置から目的地までの走行経路に基づき、目的地に到達するまでに車両が要する電力量(要求電力量PW)を算出する。ここで、要求電力量PWには、主機モータジェネレータMG1の駆動によって消費される電力量、及びエアコン装置20等の車載電気負荷の駆動によって消費される電力量が含まれる。なお、上記走行経路中の道路勾配や渋滞情報を加味して要求電力量PWを算出してもよい。
【0076】
続くステップS16では、バッテリ14のSOCから下限値S0を減算した値よりも要求電力量PWが小さいか否かを判断する。この処理は、車両が目的地に到達するまでに発電モード処理の実行要求が生じると予測されるか否かを判断するための処理である。すなわち、発電モード処理を実行することなく車両が目的地まで到達可能か否かを判断するための処理である。
【0077】
一方、ナビゲーション装置60に目的地が設定されていないと判断された場合(上記ステップS10で否定判断された場合)や、設定された目的地にバッテリ14の充電設備がない又は充電設備があるか不明であると判断された場合(上記ステップS12で否定判断された場合)には、ステップS18に進む。また、発電モード処理を実行することなく車両が目的地に到達できないと判断された場合(ステップS16において否定判断された場合)にも、発電モード処理の実行を許可(発電モード処理の実行の禁止を解除)すべく、ステップS18に進む。このステップS18では、バッテリ14のSOCが上記第1の規定量S1未満であるか否かを判断する。この処理は、発電モード処理の実行要求があるか否かを判断するためのものである。
【0078】
ステップS18において肯定判断された場合には、ステップS20に進み、発電モード処理を実行する。
【0079】
一方、上記ステップS18において否定判断された場合には、ステップS22に進み、触媒温度Tctが上記暖機準備温度T2未満であるか否かを判断する。
【0080】
ステップS22において触媒温度Tctが暖機準備温度T2未満であると判断された場合には、ステップS24に進み、第1の規定量S1よりも高い第2の規定量S2を、触媒温度Tctが低いほど高く設定する。ここで、触媒温度Tctが低いほど第2の規定量S2を高く設定するのは、後述する暖機判定温度T3まで触媒温度Tctを上昇させるための時間を確保可能なように、後述するステップS34における触媒暖機モード処理を開始させるためである。
【0081】
つまり、触媒温度Tctが低いほど、排気熱の供給によって触媒温度Tctを暖機判定温度T3まで上昇させるために要する時間が長くなる。このため、上記態様にて第2の規定量S2を設定することで、触媒温度Tctを暖機判定温度T3まで上昇させた時点でバッテリのSOCが第1の規定量S1未満にならないと想定される極力遅いタイミングを予測することができる。これにより、その後触媒暖機モード処理を適切なタイミングで開始させることが可能となる。
【0082】
続くステップS26では、バッテリ14のSOCが第2の規定量S2未満であるか否かを判断する。
【0083】
上記ステップS16において肯定判断された場合や、上記ステップS22、S26において否定判断された場合には、ステップS28に進み、暖房要求がないか否かを判断する。ここで、暖房要求がないか否かは、例えば、空調スイッチ64の出力値に基づきユーザによって暖房が指示されていないか否かで判断すればよい。
【0084】
ステップS28において肯定判断された場合には、エンジン18を駆動させる必要がない状況であると判断し、ステップS30においてエンジン18を停止させる処理を実行する。具体的には、燃料噴射弁28からの燃料噴射及び点火プラグ30による点火を停止させる処理を実行する。
【0085】
一方、上記ステップS26において肯定判断された場合や、上記ステップS28において否定判断された場合には、ステップS32に進み、触媒暖機モード処理又は暖房モード処理を実行する。
【0086】
詳しくは、バッテリ14のSOCが第2の規定量S2未満であると判断される状況下において、触媒温度Tctが暖機判定温度T3未満になると判断された場合、触媒温度Tctが暖機判定温度T3に到達するまで触媒暖機モード処理を実行する。一方、暖房要求があると判断された場合、暖房モード処理を実行する。
【0087】
なお、ステップS20、S30、S32の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0088】
ちなみに、触媒温度Tctが暖機判定温度T3に到達するまで触媒暖機モード処理が継続された後、続けて発電モード処理に移行する処理が実行される。すなわち、触媒温度Tctが活性温度T1よりも十分に高い状態で発電モード処理が実行される。
【0089】
図3に、本実施形態にかかる触媒暖機モード処理及び発電モード処理の一例を示す。詳しくは、図3(a)に、エンジン回転速度NEの推移を示し、図3(b)に、触媒温度Tctの推移を示し、図3(c)に、バッテリ14のSOCの推移を示し、図3(d)に、点火時期の推移を示す。なお、図3(d)において、「進角」は、発電モード処理が実行されることを示し、「遅角」は、触媒暖機モード処理が実行されることを示す。
【0090】
図示される例では、時刻t1において、発電モード処理が停止され、エンジン18が停止された状態で主機モータジェネレータMG1によって車両10を走行させるEV走行が開始される。その後、触媒温度Tctが漸減し、時刻t2において触媒温度Tctが暖機準備温度T2まで低下することで、触媒暖機モード処理が開始される。これにより、その後触媒温度Tctが暖機判定温度T3に到達する時刻t3まで触媒暖機モード処理が継続される。そしてその後、触媒暖機モード処理から発電モード処理へと移行される。これにより、発電モード処理の実行に先立ち触媒暖機モード処理が実行されない制御ロジックを採用する場合と比較して(図中点線にて併記)、発電モード処理の開始時において触媒46の排気浄化能力を十分高い状態とすることができる。
【0091】
次に、図4に、本実施形態にかかる要求電力量PWに基づく触媒暖機モード処理及び発電モード処理の一例を示す。詳しくは、図4(a)〜図4(c)は、先の図3(a)〜図3(c)に対応している。なお、図4(b)には、要求電力量PWの推移を併記している。
【0092】
図示される例は、エンジン18がある程度の時間停止されている等、触媒温度Tctが過度に低い場合を示している。このような状況下、時刻t1においてナビゲーション装置60に目的地が設定されることで、要求電力量PWを都度算出する処理が開始される。そしてその後、バッテリ14のSOCから下限値S0を減算した値が要求電力量PW以下になる時刻t2において、発電モード処理の実行に先立ち、触媒暖機モード処理が開始される(先の図2において、S16:NO→S18:NO→S22:YES→S24→S26:YES→S32)。その後、触媒暖機モード処理によって触媒温度Tctが暖機判定温度T3に到達したと判断された時刻t3において、発電モード処理に移行される。
【0093】
このように、本実施形態では、触媒暖機モード処理、発電モード処理及びエンジン停止処理を触媒温度Tct及び要求電力量PWに応じて適宜選択して実行することで、排気特性の悪化を回避するためにエンジン18の駆動又は停止を適切に指示することができる。
【0094】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0095】
(1)触媒温度Tctが暖機準備温度T2未満になると判断されて且つ、バッテリ14のSOCが第2の規定量S2未満になると判断された場合、触媒暖機モード処理を実行した。ここでは、第2の規定量S2を、触媒温度Tctが低いほど高く設定した。このため、触媒暖機モード処理によって触媒温度Tctを上昇させるための時間を確保することができる。これにより、バッテリ14のSOCが過度に不足する事態の発生を回避しつつ、触媒の排気浄化能力を高く維持することができる。したがって、エミッションの増大を好適に抑制することができる。
【0096】
(2)触媒暖機モード処理として、補機モータジェネレータMG2に伝達されるクランク軸42の回転エネルギを発電モード処理の実行時よりも小さくする処理、及び点火プラグ30による点火タイミングを発電モード処理の実行時よりも遅角させる処理を行った。これにより、触媒暖機中におけるエミッションの増大をより好適に抑制することができる。
【0097】
(3)触媒暖機モード処理が開始された後、触媒温度Tctが暖機判定温度T3に到達するまで触媒暖機モード処理を継続した。そしてその後、続けて発電モード処理に移行した。これにより、バッテリ14の充電時において触媒温度Tctを活性温度T1よりも十分高い状態とすることができ、エミッションの増大をいっそう好適に抑制することができる。
【0098】
(4)車両10の現在位置から目的地までの走行経路に基づき、要求電力量PWを都度算出した。そして、要求電力量PWが、バッテリ14のSOCから下限値S0を減算した値よりも小さいと判断された場合、発電モード処理の実行を禁止する処理(エンジン18を停止させる処理)を実行した。これにより、エンジン18を極力駆動させることなく車両10を走行させることができ、燃料消費量とともにエミッションの低減を図ることができる。
【0099】
(5)目的地にバッテリ14の充電場所がないと判断された場合、または目的地にバッテリ14の充電場所があるか不明であると判断された場合、発電モード処理の実行の禁止を解除した。これにより、バッテリ14のSOCが過度に不足する以前に、発電モード処理によってバッテリ14を充電することができる。
【0100】
(6)暖房要求があると判断された場合、暖房モード処理を行った。これにより、ユーザの要求に応じて車室内の暖房を適切に行うことができる。
【0101】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0102】
・上記実施形態では、発電モード処理を実行することなく車両10が目的地に到達可能であるか否かを、要求電力量PWが、バッテリ14のSOCから下限値S0を減算した値よりも小さいか否かに基づき判断したがこれに限らない。例えば、下限値S0に代えて、下限値S0よりも高くて且つ第1の規定量S1以下の値を用いて判断してもよい。
【0103】
・要求電力量PWの算出手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、走行経路に限らず、現在位置と目的地との距離に基づき算出してもよい。
【0104】
・目的地に関する情報を指示すべくユーザによって操作される指示手段としては、ナビゲーション装置60に限らない。例えば、ユーザが携帯可能な携帯機(例えば携帯電話)であってもよい。この場合であっても、携帯機を介して取得された車両の現在位置及び目的地をECU62に入力する構成を備えることで、携帯機を介した入力情報に基づき、要求電力量PWを算出することができる。
【0105】
・車両の目的地に関する情報としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、車両の予定走行距離であってもよい。この場合、例えば、設定された予定走行距離と、単位走行距離当たりに車両に要する想定電力量(例えば固定値)と、車載機器の消費電力量とに基づき要求電力量PWを算出すればよい。なお、この場合、ナビゲーション装置60を備えなくてもよく、予定走行距離のみ入力可能な簡素な構成の指示手段を採用することもできる。
【0106】
・エンジン回転速度の算出手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、上記クランク角度センサを備え、このセンサの出力値に基づきエンジン回転速度を算出してもよい。
【0107】
・上記実施形態では、触媒温度センサ50によって触媒温度Tctを検出したがこれに限らない。例えば、周知技術である触媒温度Tctを推定する処理によって触媒温度Tctを推定してもよい。詳しくは、触媒温度Tctを推定する処理は、例えば、排気通路44において触媒46の上流側の排気温度を検出する排気温センサや、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサを備え、排気温センサや水温センサの検出値に基づき触媒温度Tctを推定する処理が考えられる。より具体的には、まず、エンジンが駆動されない状況下において、外気と熱的な平衡状態となる場合におけるエンジン冷却水温に基づき触媒温度の初期値を算出する。そして、その後エンジンが駆動される状況下において、エンジン冷却水温の上昇度合いに基づき上記初期値からの触媒の温度上昇分を算出することで、触媒温度を推定すればよい。
【0108】
・上記実施形態では、触媒温度Tctが暖機判定温度T3まで上昇したと判断されるまで触媒暖機モード処理の実行を継続し、その後発電モード処理に移行させる制御ロジックを採用したがこれに限らない。例えば、触媒温度Tctが暖機判定温度T3まで上昇したと判断されて触媒暖機モード処理を完了した後、触媒温度Tctが活性温度T1まで低下するとの条件、及びバッテリ14のSOCが第1の規定量S1未満になるとの条件の論理和が真であるとの条件が成立した場合、発電モード処理を実行する制御ロジックを採用してもよい。この場合であっても、触媒46の排気浄化能力を極力高く維持しつつ、バッテリ14のSOCが過度に不足することを回避できる。
【0109】
・上記実施形態では、暖機準備温度T2を触媒46の活性温度よりも高い温度としたがこれに限らない。例えば、暖機準備温度T2を、活性温度と同じ温度に設定してもよい。また、例えば、暖機準備温度T2を活性温度よりも低い温度に設定してもよい。この場合であっても、発電モード処理の実行開始時において、触媒46の排気浄化能力を高くすることができるため、エミッションの増大を抑制することはできる。
【0110】
・上記実施形態において、ステップS16で否定判断された後、ステップS26に移行する制御ロジックを採用してもよい。この場合、第2の規定量S2を第1の規定量S1よりもやや大きい固定値として設定すればよい。これにより、発電モード処理の実行要求の生じる以前に触媒暖機モード処理を実行することができる。
【0111】
・触媒暖機モード処理としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、クラッチ58をOFF状態(エンジン18を無負荷状態)としてエンジン18を駆動させる処理としてもよい。これにより、補機モータジェネレータMG2の駆動用の燃料が不要となることから、エミッションの増大をいっそう好適に抑制することができる。
【0112】
・エンジン18の燃焼制御手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、互いに相違する複数の回転速度のうち1つを選択することで目標回転速度を可変設定する処理を実行してもよい。具体的には例えば、発電モード処理においてバッテリ14のSOCが低かったり、触媒暖機モード処理において触媒温度が低かったりするほど、目標回転速度を高く設定すればよい。
【0113】
・上記実施形態では、熱回収装置48によって回収された排気熱がエンジン冷却水を介してヒータコア52に供給される構成としたがこれに限らない。例えば、エンジン冷却水を介さず、熱回収装置48によって回収された排気熱をヒータコア52に直接供給する構成を採用してもよい。
【0114】
・エンジン18としては、単気筒のものに限らず、例えば複数気筒のものであってもよい。また、エンジン18としては、ガソリンエンジン等の火花点火式内燃機関に限らず、例えば圧縮点火式内燃機関であってもよい。ここで圧縮点火式内燃機関としては、例えば、燃料(ガソリン)と吸気とを予め混合したもの(予混合気)を、燃焼室26での圧縮によって自着火(予混合圧縮自着火、Homogeneous Charge Compression Ignition)燃焼させるHCCI燃焼が可能なものが挙げられる。
【符号の説明】
【0115】
12…主機モータジェネレータ、14…バッテリ、16…補機モータジェネレータ、18…エンジン、32…吸気通路、44…排気通路、46…触媒、48…熱回収装置、60…ナビゲーション装置、62…ECU(電動車両の制御装置の一実施形態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載主機として主機回転機のみを備えて且つ、該主機回転機の電力供給源となるバッテリと、該バッテリを充電する補機回転機と、該補機回転機の動力供給源となるエンジンと、該エンジンの排気通路上に設けられる排気浄化用触媒とを備える電動車両に適用され、
前記触媒の温度、及びユーザによって操作される指示手段を介して設定された目的地に関する情報のうち少なくとも1つに基づき前記エンジンを駆動させて前記補機回転機に発電させる発電モード処理の実行要求を予測し、該予測された実行要求の生じる以前に、前記補機回転機に伝達される前記エンジンの出力軸の回転エネルギを前記発電モード処理の実行時よりも小さくした状態で、前記エンジンの駆動によって前記触媒を暖機させる触媒暖機モード処理を実行する制御手段を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記バッテリの蓄電量が第1の規定量未満になると判断された場合、前記発電モード処理を実行するものであり、
前記触媒暖機モード処理は、前記バッテリの蓄電量が、前記第1の規定量以上であって且つ該第1の規定量よりも高い第2の規定量未満であると判断されて且つ、前記触媒の温度が規定温度未満になると判断された場合、前記エンジンを駆動させる処理であることを特徴とする請求項1記載の電動車両の制御装置。
【請求項3】
前記規定温度は、前記触媒の活性温度以上の暖機準備温度であることを特徴とする請求項2記載の電動車両の制御装置。
【請求項4】
前記規定温度は、前記触媒の活性温度以上の暖機準備温度であり、
前記第2の規定量は、前記触媒の温度が低いほど高く設定されることを特徴とする請求項2又は3記載の電動車両の制御装置。
【請求項5】
前記エンジンは、該エンジンの燃焼室に放電火花を発生させる点火プラグを備える火花点火式のものであり、
前記触媒暖機モード処理は、前記点火プラグによる点火タイミングを前記発電モード処理の実行時よりも遅らせるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記バッテリの蓄電量が第1の規定量未満になると判断された場合、前記発電モード処理を実行するものであり、
前記触媒暖機モード処理は、前記バッテリの蓄電量が、前記第1の規定量以上であって且つ該第1の規定量よりも高い第2の規定量未満であると判断されて且つ、前記触媒の温度が、該触媒の活性温度以上の暖機準備温度未満になると判断された場合、前記エンジンを駆動させる処理であり、
前記制御手段は、前記触媒の温度が、前記暖機準備温度よりも高い暖機判定温度に到達するまで前記触媒暖機モード処理の実行を継続し、その後前記発電モード処理に移行させることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記バッテリの蓄電量が第1の規定量未満になると判断された場合、前記発電モード処理を実行するものであって且つ、前記指示手段を介して設定された目的地に前記車両が到達した時に想定される前記バッテリの蓄電量が、前記第1の規定量未満の所定の閾値以上になる場合、前記発電モード処理の実行を禁止する処理を実行することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項8】
前記指示手段を介して設定された目的地に関する情報に基づき、前記設定された目的地に到達するまでに前記車両に要する電力量を算出する要求電力量算出手段と、
前記要求電力量算出手段によって算出された電力量と、前記バッテリの蓄電量とに基づき、前記発電モード処理を実行することなく、前記設定された目的地に前記車両が到達可能か否かを判断する判断手段とを更に備え、
前記禁止する処理は、前記判断手段によって到達可能であると判断された場合、前記発電モード処理の実行を禁止する処理であることを特徴とする請求項7記載の電動車両の制御装置。
【請求項9】
前記指示手段は、前記車両の現在位置を把握する機能及びユーザによって該車両の目的地を設定可能な機能を有する車載ナビゲーション装置であり、
前記要求電力量算出手段は、前記ナビゲーション装置によって把握された現在位置から前記設定された目的地までの走行経路に基づき、前記車両が要する電力量を算出することを特徴とする請求項8記載の電動車両の制御装置。
【請求項10】
前記ナビゲーション装置には、前記バッテリの充電場所に関する情報が記憶されており、
前記記憶された充電場所に関する情報に基づき、前記設定された目的地に前記充電場所がないと判断された場合、または前記設定された目的地に前記充電場所があるか不明であると判断された場合、前記発電モード処理の実行の禁止を解除する解除手段を更に備えることを特徴とする請求項9記載の電動車両の制御装置。
【請求項11】
前記車両には、前記エンジンから排出される排気熱を回収する回収手段が備えられ、
車室内の暖房要求があると判断された場合、前記エンジンを駆動させ、前記回収手段によって回収された排気熱を用いて暖房する暖房手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−171520(P2012−171520A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36578(P2011−36578)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】