説明

電動車両用の電源装置

【課題】2つの電池の直列接続と並列接続を切替える際の突入電流を抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する電源装置は、第1電池と、第1電池の電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、昇圧回路の出力に対して並列に接続されるコンデンサと、昇圧回路の出力に対して並列に接続される出力可変電池モジュールを備えている。出力可変電池モジュールは、第2電池と、第3電池と、第2電池と第3電池の接続状態を切替え可能な切替え装置と、逆電流の流入を防止するダイオードを備えている。その電源装置では、第2電池と第3電池の接続状態を切替える際に、1)出力可変電池モジュールの接続を切り離し、2)昇圧回路の出力を第2電池の電圧と第3電池の電圧の和より大きな電圧となるように調整し、切替え装置が第2電池と第3電池の接続状態を切替え、3)出力可変電池モジュールを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電動車両用の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両では、電源装置からモータへ電力を供給することで、車輪を回転させる。電動車両の電源装置において、2つの電池を搭載しておき、必要に応じて2つの電池の直列接続と並列接続を切替えて使用することがある。電動車両を加速させる場合など、大きなトルクが必要となる場合には、2つの電池を直列接続することで、モータに大電圧を供給することができる。また、電動車両が高速走行している場合など、それほど大きなトルクが必要ない場合には、2つの電池を並列接続することで、モータに供給する電圧を低下させる。モータを高効率で動作させつつ、それぞれの電池の消耗を抑制することができる。電動車両の電源装置において、2つの電池の直列接続と並列接続を切替える技術が、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−236608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つの電池の直列接続と並列接続を切替える際には、切替え前後の電圧差により生じる突入電流を抑制する必要がある。2つの電池の直列接続と並列接続を切替える際の突入電流を抑制することが可能な技術が期待されている。
【0005】
本明細書では、上記の課題を解決する技術を提供する。本明細書では、2つの電池の直列接続と並列接続を切替える際の突入電流を抑制することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、電動車両用の電源装置を開示する。その電源装置は、第1電池と、第1電池の電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、昇圧回路の出力に対して並列に接続されるコンデンサと、昇圧回路の出力に対して並列に接続される出力可変電池モジュールを備えている。その出力可変電池モジュールは、第2電池と、第3電池と、第2電池と第3電池の接続状態を、第2電池と第3電池が直列接続する状態と、第2電池と第3電池が並列接続する状態の間で切替え可能な切替え装置と、第2電池および第3電池への逆電流の流入を防止するダイオードを備えている。その電源装置では、切替え装置が第2電池と第3電池の接続状態を切替える際に、1)昇圧回路の出力に対する出力可変電池モジュールの接続を切り離し、2)昇圧回路の出力を第2電池の電圧と第3電池の電圧の和より大きな電圧となるように調整し、切替え装置が第2電池と第3電池の接続状態を切替え、3)昇圧回路の出力に対して出力可変電池モジュールを接続する。
【0007】
上記の電源装置では、第2電池と第3電池の接続状態を切替える際に、事前に昇圧回路の出力を第2電池の電圧と第3電池の電圧の和より大きな電圧としておく。これにより、コンデンサへのプリチャージが行われて、第2電池と第3電池の接続状態を切替えた際の、出力可変電池モジュールからコンデンサへ流出する突入電流を抑制することができる。また、出力可変電池モジュールが第2電池および第3電池への逆電流の流入を防止するダイオードを備えているので、コンデンサから出力可変電池モジュールへ流入する突入電流も抑制することができる。上記の電源装置によれば、第2電池と第3電池の接続状態を、第2電池と第3電池が直列接続する状態と、第2電池と第3電池が並列接続する状態の間で切替える際の突入電流を抑制することができる。
【0008】
上記の電動車両用の電源装置では、第1電池と昇圧回路の間に、電流制限抵抗を有するプリチャージ回路が設けられていることが好ましい。
【0009】
上記の電源装置では、出力可変電池モジュールを接続する前に、第1電池を接続することで、コンデンサにプリチャージが行われる。この際の突入電流の大きさは、第1電池と昇圧回路の間のプリチャージ回路により、抑制されている。その後、昇圧回路の出力を昇圧することで、コンデンサにさらなるプリチャージが行われる。その後に出力可変電池モジュールを接続する際には、すでにコンデンサにプリチャージが行われているので、大きな突入電流が生じない。上記の電源装置によれば、出力可変電池モジュールにプリチャージ回路を設けることなく、出力可変電池モジュールを接続する際の突入電流を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書が開示する技術によれば、2つの電池の直列接続と並列接続を切替える際の突入電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電動車両10の電気系統を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施例の電動車両10の電気系統を示している。電動車両10は、メイン電池パック12と、システムメインリレー(SMR)14と、コンバータ回路16と、サブ電池パック18と、平滑コンデンサ20と、三相インバータ回路22と、モータ24と、制御装置25を備えている。電動車両10は、メイン電池パック12およびサブ電池パック18からの電力を利用してモータ24を駆動する。また、電動車両10の減速時に、モータ24での回生発電により発生した電力を、メイン電池パック12に充電することもできる。モータ24は車輪の駆動軸を回転させる三相交流モータである。電動車両10は、車輪の駆動軸を回転させるエンジンを備えるハイブリッド自動車であってもよいし、エンジンを備えていない電池式電気自動車であってもよい。本実施例では、メイン電池パック12と、SMR14と、コンバータ回路16と、サブ電池パック18と、平滑コンデンサ20と、制御装置25によって、電動車両10の電源装置を構成している。
【0013】
メイン電池パック12は、第1電池26を備えている。第1電池26は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池である。
【0014】
SMR14は、メイン電池パック12とコンバータ回路16の間に設けられている。SMR14は、スイッチ28、30および32と、電流制限抵抗34を備えている。スイッチ28と電流制限抵抗34は直列に接続されており、それらは、スイッチ32に対して並列に接続されている。SMR14は、プリチャージ回路を構成している。
【0015】
コンバータ回路16は、メイン電池パック12から供給される電力の電圧を、必要に応じてモータ24への供給に適した電圧まで昇圧するDC/DCコンバータである。また、コンバータ回路16は、モータ24が回生発電した電力の電圧を、メイン電池パック12と同じ電圧まで降圧することもできる。コンバータ回路16は、昇圧回路ということもできるし、降圧回路ということもできる。コンバータ回路16は、リアクトル36と、上アームスイッチ38と、下アームスイッチ40を備えている。上アームスイッチ38は、スイッチング素子であるIGBT38aと、還流ダイオード38bを備える逆導通型スイッチである。下アームスイッチ40は、スイッチング素子であるIGBT40aと、還流ダイオード40bを備える逆導通型スイッチである。上アームスイッチ38と下アームスイッチ40は、互いに相補的にオン/オフが切替えられる。
【0016】
モータ24が力行動作する際には、メイン電池パック12からモータ24へ電力が供給される。この場合、コンバータ回路16は、メイン電池パック12から入力される低電圧の直流電力を、三相インバータ回路22へ出力する高電圧の直流電力に変換する。この際には、リアクトル36、下アームスイッチ40のIGBT40aおよび上アームスイッチ38の還流ダイオード38bによって、コンバータ回路16は昇圧チョッパ回路として機能する。この際の高圧側電圧VHと低圧側電圧VLの比は、下アームスイッチ40のオン/オフのデューティ比に応じたものとなる。下アームスイッチ40のデューティ比を適切に設定することで、目標とする高圧側電圧VHを実現することができる。
【0017】
モータ24が回生動作する際には、モータ24からメイン電池パック12へ電力が供給される。この場合、コンバータ回路16は、三相インバータ回路22から入力される高電圧の直流電力を、メイン電池パック12へ出力する低電圧の直流電力に変換する。この際には、リアクトル36、上アームスイッチ38のIGBT38aおよび下アームスイッチ40の還流ダイオード40bによって、コンバータ回路16は降圧チョッパ回路として機能する。この際の高圧側電圧VHと低圧側電圧VLの比は、上アームスイッチ38のオン/オフのデューティ比に応じたものとなる。上アームスイッチ38のデューティ比を適切に設定することで、目標とする高圧側電圧VHを実現することができる。
【0018】
以下では、コンバータ回路16から見た三相インバータ回路22側の電圧を、システム電圧と表現する。上述のように、システム電圧の大きさは、コンバータ回路16でのスイッチング動作によって調整される。
【0019】
サブ電池パック18は、コンバータ回路16と三相インバータ回路22の間に設けられている。サブ電池パック18は、モータ24を駆動するための電力を三相インバータ回路22に供給する。サブ電池パック18は、第2電池42と、第3電池44と、スイッチ46,48,50,52,54と、ダイオード56を備えている。第2電池42および第3電池44は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池であってもよいし、燃料電池等の一次電池であってもよい。サブ電池パック18では、スイッチ50,52および54を切替えることで、第2電池42と第3電池44を直列接続とするか、並列接続とするかを切替えることができる。スイッチ50および52を導通させて、スイッチ54を非導通とすると、第2電池42と第3電池44は並列接続となる。スイッチ54を導通させて、スイッチ50および52を非導通とすると、第2電池42と第3電池44は直列接続となる。ダイオード56は、第2電池42および第3電池44への逆電流の流入を防止するために設けられている。ダイオード56によって、モータ24が回生発電した電力が第2電池42および第3電池44へ供給されることが阻止される。サブ電池パック18は、出力電圧を変えることができるので、出力可変電池モジュールということもできる。
【0020】
平滑コンデンサ20は、コンバータ回路16と三相インバータ回路22の間に設けられており、システム電圧を平滑化する。
【0021】
三相インバータ回路22は、メイン電池パック12やサブ電池パック18から供給される直流電力を、モータ24の駆動のための三相交流電力に変換する。また、三相インバータ回路22は、電動車両10の減速時にモータ24が回生発電した三相交流電力を、メイン電池パック12へ供給するための直流電力に変換することもできる。
【0022】
制御装置25は、コンバータ回路16の上アームスイッチ38および下アームスイッチ40のオン/オフ動作を制御する。また、制御装置25は、三相インバータ回路22のスイッチング素子のオン/オフ動作を制御する。さらに、制御装置25は、SMR14の各スイッチのオン/オフ動作と、サブ電池パック18の各スイッチのオン/オフ動作を制御する。
【0023】
メイン電池パック12およびサブ電池パック18を電動車両10の電力系統に接続する際や、サブ電池パック18において第2電池42と第3電池44の並列接続と直列接続を切替える際には、電圧差に起因して平滑コンデンサ20への充放電が生じ、これによる突入電流が発生する。大きな突入電流が発生すると、電動車両10の電力系統を構成する部品が過熱により損傷するおそれがある。このため、メイン電池パック12およびサブ電池パック18を電力系統に接続する際や、サブ電池パック18において第2電池42と第3電池44の並列接続と直列接続を切替える際の、突入電流を抑制する必要がある。
【0024】
メイン電池パック12とサブ電池パック18の双方が電力系統に接続されていない場合には、まずメイン電池パック12から接続する。SMR14のスイッチ28、30,32が全て非導通の状態から、メイン電池パック12を接続する際には、まずスイッチ28を導通させて、その後にスイッチ30を導通させる。これにより、メイン電池パック12が電力系統に接続されて、メイン電池パック12の電圧まで平滑コンデンサ20がプリチャージされる。この際には、SMR14の電流制限抵抗34により、突入電流の大きさが抑制されている。平滑コンデンサ20へのプリチャージが終了した後、スイッチ32を導通させて、その後にスイッチ28を非導通とすることで、メイン電池パック12の接続が完了する。
【0025】
メイン電池パック12が電力系統に接続された後、コンバータ回路16により、システム電圧の昇圧を行う。これによって、平滑コンデンサ20は昇圧後のシステム電圧までプリチャージされる。この際のシステム電圧としては、サブ電池パック18の第2電池42と第3電池44を直列接続した場合の電圧(すなわち第2電池42の電圧と第3電池44の電圧の和)よりも高い電圧となるように調整される。その後、スイッチ46とスイッチ48を導通させることで、サブ電池パック18が電力系統に接続される。平滑コンデンサ20はサブ電池パック18よりも高い電圧までプリチャージされているから、サブ電池パック18から大きな突入電流が流出することがない。また、サブ電池パック18にはダイオード56が設けられているから、サブ電池パック18に大きな突入電流が流入することもない。本実施例によれば、サブ電池パック18に電流制限抵抗を有するプリチャージ回路を設けることなく、サブ電池パック18を接続する際の突入電流を抑制することができる。
【0026】
サブ電池パック18を接続した後は、サブ電池パック18の電圧に応じて、システム電圧を調整する。すなわち、第2電池42と第3電池44が直列接続している場合には、両者を直列接続したときのサブ電池パック18の電圧と一致するように、コンバータ回路16がシステム電圧を調整する。また、第2電池42と第3電池44が並列接続している場合には、両者を並列接続したときのサブ電池パック18の電圧と一致するように、コンバータ回路16がシステム電圧を調整する。
【0027】
電動車両10の動作中に、第2電池42と第3電池44を直列接続から並列接続に切替えたり、並列接続から直列接続に切替えたりする場合がある。この場合、スイッチ46とスイッチ48を非導通として、サブ電池パック18を電力系統から切り離した状態で、スイッチ50、52、54の切り替えを行う。その後、サブ電池パック18を再び接続する際には、上記と同様に、コンバータ回路16によりシステム電圧をサブ電池パック18よりも高い電圧まで昇圧させた状態で、スイッチ46とスイッチ48を導通させる。これにより、第2電池42と第3電池44の直列接続と並列接続を切替える際の突入電流を抑制することができる。
【0028】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0029】
10 電動車両
12 メイン電池パック
14 システムメインリレー
16 コンバータ回路
18 サブ電池パック
20 平滑コンデンサ
22 三相インバータ回路
24 モータ
25 制御装置
26 第1電池
28,30,32 スイッチ
34 電流制限抵抗
36 リアクトル
38 上アームスイッチ
38a IGBT
38b 還流ダイオード
40 下アームスイッチ
40a IGBT
40b 還流ダイオード
42 第2電池
44 第3電池
46,48,50,52,54 スイッチ
56 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両用の電源装置であって、
第1電池と、
第1電池の電圧を昇圧して出力する昇圧回路と、
昇圧回路の出力に対して並列に接続されるコンデンサと、
昇圧回路の出力に対して並列に接続される出力可変電池モジュールを備えており、
出力可変電池モジュールは、
第2電池と、
第3電池と、
第2電池と第3電池の接続状態を、第2電池と第3電池が直列接続する状態と、第2電池と第3電池が並列接続する状態の間で切替え可能な切替え装置と、
第2電池および第3電池への逆電流の流入を防止するダイオードを備えており、
切替え装置が第2電池と第3電池の接続状態を切替える際に、
1)昇圧回路の出力に対する出力可変電池モジュールの接続を切り離し、
2)昇圧回路の出力を第2電池の電圧と第3電池の電圧の和より大きな電圧となるように調整し、切替え装置が第2電池と第3電池の接続状態を切替え、
3)昇圧回路の出力に対して出力可変電池モジュールを接続する、電動車両用の電源装置。
【請求項2】
第1電池と昇圧回路の間に、電流制限抵抗を有するプリチャージ回路が設けられている、請求項1の電動車両用の電源装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−106474(P2013−106474A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250038(P2011−250038)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】