説明

電動車両

【課題】 ボデー部品交換の容易な電動車両を提供することを目的とする。
【解決手段】 電動車両1の前輪FWの上方を覆う左右一対のフェンダー9は、その取付フランジ93をフロアパネル4およびアウタカウル6の側端面44、61に当接させ、取付ピン10を双方に挿入することによって着脱可能に取り付けられている。フェンダー9の前輪FWとの対向面には、車両前方から見た時に取り付けピン10を視認不能にするように前輪FWに向けて突出したリブ94が立設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一人乗りの電動車両に関する従来技術として、運転者を乗載させるフロアパネルと一体に合成樹脂材料による左右一対のフェンダーを設け、これによって前輪を覆い隠しているものがあった(例えば、特許文献1参照。)。フェンダーによって前輪を覆ったものは、車輪による歩行者等の巻き込みを防ぎ安全性に優れている。
しかしながら、フェンダーは前輪を覆うために車両の前方に突出しており、道路上の建造物に接触して変形、破損等が発生することがあり、その修復のためにフェンダーの交換を行う場合、フロアパネルを含むボデー部品全体の交換が必要であった。
【特許文献1】特開2002−211467号公報(第3図および第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ボデー部品交換の容易な電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、左右の車輪によって支持され運転者を乗載させる車両ボデーを備えた電動車両において、前記車両ボデーに着脱可能に取り付けられ、前記車輪の上方を覆うフェンダーボードを備えたことを特徴とする電動車両とした。
【0005】
請求項2の発明は、前記フェンダーボードはその車両幅方向の内方に位置する端部に取付フランジを形成し、この取付フランジを前記車両ボデーの側端面に当接させた後、抜き差し可能な締結部材を双方に挿通させることにより前記車両ボデーに取り付けられることを特徴とする請求項1記載の電動車両とした。
【0006】
請求項3の発明は、前記フェンダーボードの前記車輪との対向面には、前記車輪に向けて突出して前記締結部材が少なくとも車両前後方向から視認不能になるように立設されたリブが形成されたことを特徴とする請求項2記載の電動車両とした。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1の発明>
車両ボデーに着脱可能に取り付けられ、車輪の上方を覆うフェンダーボードを備えた構成としたことにより、フェンダーボードの変形、破損等が発生しても、フェンダーボードだけを車両ボデーから取り外して交換することができるため、交換作業が容易となり、交換に要するコスト、時間を低減できる。
【0008】
<請求項2の発明>
フェンダーボードはその車両幅方向の内方に位置する端部に取付フランジを形成し、この取付フランジを車両ボデーの側端面に当接させた後、抜き差し可能な締結部材を双方に挿通させて車両ボデーに取り付けられる構成としたことにより、締結部材を抜き差しするだけでフェンダーボードの車両ボデーに対する着脱が行え、その作業性を向上させることができる。
【0009】
<請求項3の発明>
フェンダーボードの車輪との対向面には、車輪に向けて突出して締結部材が少なくとも車両前後方向から視認不能になるように立設されたリブが形成された構成としたことにより、外観上の見栄えを向上できるとともに、フェンダーボードの強度を向上させることができる。また、路面から小石等が跳ねても、リブによって締結部材が覆われているため、小石等が締結部材に衝突して破損させることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態を図1乃至図8によって説明する。説明において図1の左方を前方とする。本実施形態による電動車両1は、左右一対の前輪FWおよび後輪RWが支持する図示しない車両フレームの後方部上に、運転者シートSTが水平方向に回動可能に取り付けられている。車両フレームの後方部には合成樹脂材料にて形成されたリヤカウル2が車両フレームを覆うように取り付けられ、その前方にはリヤカウル2内に配設された図示しないバッテリー等を覆うように、やはり合成樹脂材料にて形成されたカバー3が着脱可能に取り付けられている。リヤカウル2の前端部には車両フレームを介して車輪FW、RWによって支持されたフロアパネル4が連結されている。図4に示すように、合成樹脂材料によって一体に形成されたフロアパネル4は運転者を乗載させるために水平方向に広がったステップ部41と、その前端部において屈曲して上方に延びた接続部42とを有している。更に、ステップ部41と接続部42との間には、前輪FWを回避するための左右一対のホイールハウス部43が設けられている(図4示)。
【0011】
インナカウル5は合成樹脂材料にて一体に形成され、その中央部には図示しないステアリングシャフトを回避するように上下方向に延びた逃し部51が設けられている(図4示)。インナカウル5は、その前方に取り付けられた合成樹脂材料製のアウタカウル6とともに、ステアリングシャフトを囲むように立設されており、その下端部はフロアパネル4の接続部42に連結されている。フロアパネル4、インナカウル5およびアウタカウル6は、本発明の車両ボデーを構成している。更に、インナカウル5の上方には、ステアリングシャフトに連結したステアリング7が配設されている。また、インナカウル5の後面には、やはり合成樹脂材料にて形成されたポケット8がインナカウル5とフロアパネル4との連結部を覆い隠すように取り付けられている。これにより、ポケット8とインナカウル5との間には収容空間が形成されている。
【0012】
前輪FWの上方に位置するフロアパネル4およびアウタカウル6の側端面44、61は平坦に形成され、そこにはそれぞれ一対のフェンダーボード9(以下、フェンダー9と呼ぶ)が着脱可能に取り付けられている(図7示)。フェンダー9は他の車両ボデー部品と同様に合成樹脂材料にて形成され、走行中に前輪FWが歩行者等を巻き込まないように前輪FWの上方を完全に覆っている(図2示)。図5乃至図7に示すように、フェンダー9は前輪FWの外周面FW1と対向するように曲面によって形成されたカバー部91と、その車両幅方向の外側に一体に形成され、前輪FWに被るように半径方向内方に延びた縁部92とを有している。また、各々のフェンダー9の車両幅方向の内端には、半径方向内方に延在した平坦な取付フランジ93が設けられ、そこには複数の取付孔93aが貫通している。また、フロアパネル4およびアウタカウル6の側端面44、61にも、それぞれ複数の挿入孔44a、61aが貫通している。
【0013】
各々のフェンダー9は、その取付フランジ93をフロアパネル4およびアウタカウル6の側端面44、61に当接させた後、抜き差し可能な取付ピン10(本発明の締結部材に該当する)をフロアパネル4およびアウタカウル6側から差し込んで、取付フランジ93に挿通させることによりフロアパネル4およびアウタカウル6に固定される(図6および図7示)。図8に示したように、取付ピン10は合成樹脂材料にて一体に形成され、円柱状の軸部101と、その一端部に接続され軸部101よりも大径に形成された頭部102と、軸部101の他端部に接続された可撓部103とにより構成されている。可撓部103は、その両端部が互いに連結されるとともに、その中央部が互いに離れるように拡開した複数の撓み片(符号なし)によって形成されている。
【0014】
フロアパネル4(以下フロアパネル4とフェンダー9との接合について説明するが、アウタカウル6についても同様である)の側端面44に形成された挿入孔44aの位置に、フェンダー9の取付孔93aの位置を合わせた後、取付ピン10の可撓部103をフロアパネル4側から挿入孔44aおよび取付孔93aに挿入する。可撓部103の複数の撓み片は、撓んで互いに接近しながら挿入孔44aおよび取付孔93aを通過し、通過後に再び拡開して挿入孔44aおよび取付孔93aからの抜け止めを行う。フロアパネル4とフェンダー9は、取付ピン10の頭部102と可撓部103とによって挟まれることにより互いに連結される。フェンダー9をフロアパネル4あるいはアウタカウル6から取り外す時は、取付ピン10を可撓部103を撓ませながら頭部102側へ引き抜くことにより行われる。
【0015】
フェンダー9のカバー部91の前輪FWとの対向面には、フェンダー9の後方に位置する2つの取付孔93aの直前に立設するように、前輪FWに向けて2つのリブ94が突出している(図5示)。図6および図8に示すように、各々のリブ94はフェンダー9に一体に形成され、取付ピン10および取付フランジ93に形成された取付孔93aを覆っており、フェンダー9の内周面を前方(図5において左方)より見た場合、取付ピン10の可撓部103(図8において破線にて示す)および取付孔93aを視認することができないように配設されている。リブ94が立設された位置よりも前方にある取付ピン10および取付孔93aは、フェンダー9自体の陰になり車両前方からは見えないので、本実施形態では敢えてその直前にリブを設けていない。
【0016】
本実施形態によれば、フロアパネル4およびアウタカウル6に着脱可能に取り付けられ、前輪FWの上方を覆うフェンダー9を備えた構成としたことにより、走行中の建造物等との接触によりフェンダー9の変形、破損等が発生しても、フェンダー9だけをフロアパネル4およびアウタカウル6から取り外して交換することができるため、交換作業が容易となり、交換に要するコスト、時間を低減できる。また、フェンダー9はその車両幅方向の内方に位置する端部に取付フランジ93を形成し、この取付フランジ93をフロアパネル4およびアウタカウル6の側端面44、61に当接させた後、抜き差し可能な取付ピン10を双方に挿通させることによりフロアパネル4およびアウタカウル6に取り付けられる構成としたことにより、取付ピン10を抜き差しするだけでフェンダー9のフロアパネル4およびアウタカウル6に対する着脱が行え、その作業性を向上させることができる。
【0017】
更に、フェンダー9の車輪との対向面には、前輪FWに向けて突出して取付ピン10が車両前方から視認不能になるように立設されたリブ94が形成された構成としたことにより、外観上の見栄えを向上できるとともに、フェンダー9の剛性を高め、強度を向上させることができる。また、路面から小石等が跳ねても、リブ94によって取付ピン10が覆われているため、小石等が取付ピン10に衝突して破損させることを防ぐことができる。
【0018】
<他の実施形態>
本発明は上述の記載および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、以下の記載のもの以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)本発明による着脱可能なフェンダーを車両の後輪用のフェンダーに適用し、フェンダーに設けたリブにより、車両後方から見た場合に取付ピンが見えないようにしてもよい。
(2)フロアパネルおよびアウタカウルとフェンダーとの連結方法は、取付ピンを使用する方法だけでなく締付ボルトを使用する方法、あるいははめ込み等でもよい。
(3)取付ピンはフェンダー側からフロアパネルあるいはアウタカウルに向けて抜き差しするようにしてもよい。
(4)フェンダーは破損防止のため、柔軟性の高い合成樹脂材料にて形成してもよい。また、キズ等を目立たなくするため、フェンダーの外観色を他のボデー部材と異なるものにしてもよい。
(5)本発明は一人乗りの四輪車両でなくともよく、複数人乗車できる車両、または三輪車等の車両にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態による電動車両の側面図である。
【図2】図1に示した電動車両の平面図である。
【図3】図1に示した電動車両の前方図である。
【図4】図1に示した電動車両のフロアパネルを後方から見た図である。
【図5】本実施形態によるフェンダーの外観図である。
【図6】図1に示した電動車両の要部拡大斜視図である。
【図7】図6のフェンダーを取り外したところを示す斜視図である。
【図8】図6の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1…電動車両
4…フロアパネル
6…アウタカウル
9…フェンダーボード
10…取付ピン
44、61…側端面
44a、61a…挿入孔
93…取付フランジ
93a…取付孔
94…リブ
FW…前輪
RW…後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車輪によって支持され運転者を乗載させる車両ボデーを備えた電動車両において、
前記車両ボデーに着脱可能に取り付けられ、前記車輪の上方を覆うフェンダーボードを備えたことを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記フェンダーボードはその車両幅方向の内方に位置する端部に取付フランジを形成し、この取付フランジを前記車両ボデーの側端面に当接させた後、抜き差し可能な締結部材を双方に挿通させることにより前記車両ボデーに取り付けられることを特徴とする請求項1記載の電動車両。
【請求項3】
前記フェンダーボードの前記車輪との対向面には、前記車輪に向けて突出して前記締結部材が少なくとも車両前後方向から視認不能になるように立設されたリブが形成されたことを特徴とする請求項2記載の電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−1293(P2006−1293A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176547(P2004−176547)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】