説明

電動駐車ブレーキ装置

【課題】パーキングレバーの回動をスムーズに行うことが可能な電動駐車ブレーキ装置を提供すること。
【解決手段】運動伝達部材23と介在部材24との当接部Pにおける運動伝達力の力線Fは、ネジ軸部材27とナット部材26との嵌合部の外周面Sよりも内側に位置している。これにより、ネジ軸部材27の直線運動によりパーキングレバーが回動したときに、嵌合部に浮きは発生せず、嵌合部の片当りを防止することができる。よって、パーキングレバー13をスムーズに回動させることができる。また、介在部材24と当接する運動伝達部材23の一面は、円周面23aに形成されている。これにより、ネジ軸部材27の直線運動によりパーキングレバー13が回動したときの動きのずれを抑えることができる。よって、運動伝達部材23による運動伝達力が偏荷重となることを防止することができ、パーキングレバー13をスムーズに回動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駐車ブレーキ装置に関し、特に、ブレーキシューのブレーキライニングをドラムに摩擦係合させるパーキングレバーをモータにより回動する電動駐車ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、以下の電動駐車ブレーキ装置が記載されている。この電動駐車ブレーキ装置は、モータと一端が一方のブレーキシューに回動可能に支承されたパーキングレバーとがギヤ機構、ボールねじ機構およびスライド軸を介して連結されている。そして、スライド軸は、一端がボールねじ機構のナットに固定され、他端がパーキングレバーの自由端に固定されている。この電動駐車ブレーキ装置では、モータの回転運動がボールねじ機構で直線運動に変換され、この直線運動によりスライド軸がスライドしてパーキングレバーが引っ張られる。これにより、パーキングレバーは、一端の回動支承部を中心に回動し、一対のブレーキシューをドラム側に拡開させて一対のブレーキライニングをドラムに摩擦係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−105680号公報(段落番号0015,0017,0018、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の電動駐車ブレーキ装置では、スライド軸の直線運動によりパーキングレバーが回動する。このため、スライド軸が固定されているボールねじ機構のナットとボールねじとの嵌合部に浮きが発生して片当りが起き、パーキングレバーの回動が阻害されるおそれがある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パーキングレバーの回動をスムーズに行うことが可能な電動駐車ブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、ドラムに摩擦係合可能なブレーキライニングを夫々有し、裏板に回動可能に支承された一対のブレーキシューと、一方の前記ブレーキシューに一端が回動可能に支承され、他方の前記ブレーキシューとの間に連結部材が介挿され、回動することにより前記一対のブレーキシューを前記ドラム側に拡開させて前記一対のブレーキライニングを前記ドラムに摩擦係合させるパーキングレバーと、前記裏板に固定されたモータと、互いに嵌合部で嵌合する回転部材および軸動部材を有し、前記軸動部材が回転を規制され前記回転部材が前記モータによって回転駆動されることにより回転運動を直線運動に変換する回転−直動変換機構と、前記軸動部材に連結され前記パーキングレバーの他端に当接し、前記回転−直動変換機構により変換される直線運動を前記パーキングレバーの他端に伝達する運動伝達部材と、を備えた電動駐車ブレーキ装置において、前記運動伝達部材と前記パーキングレバーの他端との当接部における運動伝達力の力線が、前記回転部材と前記軸動部材との嵌合部の外周面よりも内側に位置するように、前記運動伝達部材と前記パーキングレバーの他端との当接部が形成されていることである。
【0007】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、前記運動伝達部材と前記パーキングレバーの他端との当接部の少なくとも一方は、曲面に形成されていることである。
【0008】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または2において、前記軸動部材は、前記パーキングレバーの他端を相対回転を規制されて軸線方向に相対移動可能に貫通し、前記軸動部材の先端部には、前記運動伝達部材が一体的に設けられ、前記運動伝達部材と前記パーキングレバーの他端との間には、前記軸動部材を傾動を許容して挿通させる貫通穴が形成された高硬度な介在部材が介挿されていることである。
【0009】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項3において、前記パーキングレバーの他端と前記介在部材との各当接部は、テーパ形状の凹部および該凹部に係合可能なテーパ形状の凸部に形成されていることである。
【0010】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4の何れか一項において、前記パーキングレバーの一端の回動支承部には、該パーキングレバーの傾動を許容する貫通穴が形成され、前記運動伝達部材における前記パーキングレバーの他端との当接部は、前記パーキングレバーの一端の回転軸線と直交するレバー軸線に対し両側に位置するように設けられていることである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、運動伝達部材とパーキングレバーの他端との当接部における運動伝達力の力線が、回転部材と軸動部材との嵌合部の外周面よりも内側に位置するように、上記当接部が形成されている。運動伝達力の力線が、回転部材と軸動部材との嵌合部の外周面よりも外側に位置している場合には、軸動部材には、回転部材との嵌合部に働く力の他に、軸動部材の軸線と直交する方向のモーメントが発生して軸動部材を回転させる。このため、回転部材と軸動部材との嵌合部が浮いて片当たりとなる場合がある。しかし、本発明の運動伝達力の力線は、回転部材と軸動部材との嵌合部の外周面よりも内側に位置している。この場合、軸動部材には、回転部材との嵌合部に働く力のみが発生し、上述の軸動部材を回転させるモーメントは発生しない。このため、回転部材と軸動部材との嵌合部に浮きは発生せず、嵌合部の片当たりを防止することができる。よって、パーキングレバーの回動をスムーズに行うことが可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、運動伝達部材とパーキングレバーの他端との当接部の少なくとも一方が曲面に形成されている。これにより、軸動部材の直線運動によりパーキングレバーが一端の回動支承部を中心に回動したときの動きのずれを抑えることができる。よって、運動伝達部材による運動伝達力が偏荷重となることを防止することができ、パーキングレバーをスムーズに回動させることができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、運動伝達部材とパーキングレバーの他端との間には、軸動部材を傾動を許容して挿通させる貫通穴が形成された高硬度な介在部材が介挿されている。これにより、運動伝達部材は高硬度な介在部材に当接してパーキングレバーには直接当接しないので、パーキングレバーの他端の変形を防止してパーキングレバーを確実に回動させることが可能となる。さらに、パーキングレバーを高硬度に形成しなくてもよく、加工コストが安価となる。また、軸動部材が軸線方向に相対移動してパーキングレバーが一端の回動支承部を中心に回動したとき、軸動部材と介在部材との干渉は発生せず、パーキングレバーの回動をスムーズに行うことが可能となる。また、軸動部材は、パーキングレバーの他端を相対回転を規制されて軸線方向に相対移動可能に貫通し、軸動部材の先端部には、運動伝達部材が一体的に設けられている。このため、回転部材の回転運動を軸動部材の直線運動に確実に変換することができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、パーキングレバーの他端と介在部材との各当接部は、テーパ形状の凹部および該溝部に係合可能なテーパ形状の凸部に形成されている。これにより、軸動部材が軸線方向に相対移動してパーキングレバーが一端の回動支承部を中心に回動したとき、介在部材がパーキングレバーの他端から離間していたとしても、介在部材をパーキングレバーの他端の所定位置に位置合わせすることができる。よって、パーキングレバーの回動をスムーズに行うことが可能となる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、パーキングレバーの一端の回動支承部には、該パーキングレバーの傾動を許容する貫通穴が形成されている。そして、運動伝達部材におけるパーキングレバーの他端との当接部は、パーキングレバーの一端の回動支承部の回動軸線と直交するレバー軸線に対し両側に位置するように設けられている。これにより、軸動部材が軸線方向に相対移動してパーキングレバーが一端の回動支承部を中心に回動したとき、運動伝達部材とパーキングレバーの他端との各当接部には、運動伝達力により互いに逆向きとなるレバー軸線回りのねじりトルクが発生することになる。よって、運動伝達部材に寸法バラツキが生じていても、運動伝達部材とパーキングレバーの他端とが片当たりになることを防止することができ、パーキングレバーの回動をスムーズに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電動駐車ブレーキ装置の一実施の形態をドラムの中心軸線方向から見た図である。
【図2】(A),(B)は、図1の電動駐車ブレーキ装置のパーキングレバーおよび電動アクチュエータをドラムの中心軸線に直交する方向から見た図およびドラムの中心軸線方向から見た図である。
【図3】(A),(B),(C)は、パーキングレバーの主要部および電動アクチュエータの詳細をドラムの中心軸線に直交する方向から見た図、ドラムの中心軸線方向から見た図および(B)のA−A線断面図である。
【図4】電動アクチュエータの運動伝達部材の作用を説明するための図である。
【図5】パーキングレバーの作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、電動駐車ブレーキ装置1は、駐車ブレーキ機構を備えたドラムブレーキ10と、後述するパーキングレバー13を回動する電動アクチュエータ20とで構成されている。
ドラムブレーキ10は、一対のブレーキシュー11a,11bと、一対のブレーキライニング12a,12bと、パーキングレバー13と、連結部材14と、裏板15とにより概略構成されている。
【0018】
一対のブレーキシュー11a,11bは、円弧状に形成され、外周側に一対のブレーキライニング12a,12bが夫々貼着されている。一対のブレーキシュー11a,11bは、ドラム16の中心に対し両側に、かつ一対のブレーキライニング12a,12bがドラム16の内周に対し接触離間可能なように、裏板15に回動可能に支承されている。
【0019】
パーキングレバー13は、一方(本例の場合、左側)のブレーキシュー11aに一端側が回動可能に支承され、ブレーキシュー11aに沿って配置されている。そして、パーキングレバー13は、他方のブレーキシュー11bとの間に連結部材14が介挿されている。パーキングレバー13の回動支承部13aには、該パーキングレバー13の傾動を許容する貫通穴13aaが形成されている。
【0020】
図2に示すように、パーキングレバー13の他端側は、一端側の回動支承部13aの回動軸線L1と直交するパーキングレバー13のレバー軸線L2に対し略対称の略逆J字状に折り曲げられている。
図3に示すように、このパーキングレバー13の折り曲げ部13bの内周側には、レバー軸線L2に略平行な対向面13c,13cが形成されている。この折り曲げ部13bの対向面13c,13cの間には、後述するネジ軸部材27の小径部分(図3(A),(B)において左端側)が貫通される。
【0021】
さらに、折り曲げ部13bのブレーキシュー11a側には、テーパ形状であってテーパ先端が回動支承部13aの回動軸線L1と略平行な凹部13d,13dが形成されている。この折り曲げ部13bのテーパ形状の凹部13d,13dには、後述する介在部材24の凸部24aが当接される。
【0022】
図3に示すように、電動アクチュエータ20は、モータ21と、回転−直動変換機構22と、運動伝達部材23と、介在部材24とにより概略構成されている。モータ21および回転−直動変換機構22は、裏板16に固定されているハウジング28内に設けられている。
回転−直動変換機構22は、ピニオン25と、ナット部材26(本発明の「回転部材」に相当する)と、ネジ軸部材27(本発明の「軸動部材」に相当する)とで構成されている。この回転−直動変換機構22は、ナット部材26の軸線回りの回転運動をネジ軸部材27の軸線方向の直線運動に変換する機構である。
【0023】
ピニオン25は、モータ21の回転軸21aに固定されている。ナット部材26は、ハウジング28内に回転可能に支承されている。このナット部材26は、外周にピニオン25と噛合可能なギヤ歯26aが設けられ、内周にネジ軸部材27のネジ山27aと螺合可能なネジ穴26bが設けられている。
ネジ軸部材27は、ハウジング28内に回転可能に支承されている。このネジ軸部材27は、一端側(図3(A),(B)において右端側)が他端側(図3(A),(B)において左端側)よりも大径となるように形成されている。そして、ネジ軸部材27の大径部分には、上述のようにナット部材26のネジ穴26bと螺合可能なネジ山27aが設けられている。また、ネジ軸部材27の小径部分には、パーキングレバー13の折り曲げ部13bの対向面13c,13c間の幅よりも小幅の2面取り27b,27bが形成されている。ネジ軸部材27の2面取り27b,27bは、ネジ軸部材27の軸線回りの回転を規制し軸線方向の移動を許容するために、パーキングレバー13の折り曲げ部13bの対向面13c,13c間に嵌め込まれている。
【0024】
運動伝達部材23は、一面が凸状の円周面23aに形成された略直方体状、所謂蒲鉾形に形成されている。この運動伝達部材23は、円周面23aの中心軸線がパーキングレバー13の回動支承部13aの回動軸線L1と平行になるようにして円周面23a側がネジ軸部材27の小径部分の先端に一体的に設けられている。運動伝達部材23は、ネジ軸部材27の軸線方向の直線運動による運動伝達力を後述する介在部材24に伝達する部材であり、運動伝達部材23の円周面23aは、介在部材24のブレーキシュー11a側の側面24bと当接部Pにおいて当接されている。
【0025】
介在部材24は、パーキングレバー13の折り曲げ部13bのテーパ形状の凹部13d,13dに係合可能なテーパ形状の凸部24aを有する略直方体状に形成されている。この介在部材24は、パーキングレバー13の材料よりも高硬度な材料により形成されている。この介在部材24には、凸部24aから反対側の側面24bに貫通する断面が矩形状の貫通穴24cが穿設されている。この貫通穴24cには、ネジ軸部材28の小径部分が傾動を許容して挿通されている。なお、貫通穴24cは、断面が長円状の長穴に形成してもよい。また、パーキングレバー13を高硬度に形成することにより、介在部材24を省略することができる。その場合、パーキングレバー13の折り曲げ部13bには、凹部13d,13dを設けなくてもよく、運動伝達部材23の円周面23aは、パーキングレバー13の折り曲げ部13bと当接部Pにおいて当接される。
【0026】
次に、この電動駐車ブレーキ装置1の動作について説明する。電動駐車ブレーキ装置1は、車両の後車輪に装着される。そして、車両の運転席には、両方の電動駐車ブレーキ装置1,1を夫々操作するため駐車ブレーキ用スイッチが設けられる。駐車ブレーキをかける場合、乗員は駐車ブレーキ用スイッチをオン方向に押す。すると、モータ21が回転し、この回転運動がピニオン25を介してナット部材26に伝達される。そして、伝達された回転運動はネジ軸部材27で図1において右方向の直動運動に変換される。これにより、パーキングレバー13は、図1において反時計回りに回転する。
【0027】
そして、パーキングレバー13は、ブレーキシュー11aをドラム16側に押動するとともに連結部材14を介してブレーキシュー11bをドラム16側に押動してブレーキライニング12a,12bをドラム16の内周に摩擦係合させる。以上により、駐車ブレーキがかけられる。このとき、モータ21に一定以上の電流が流れたらモータ21を停止させるようにする。これにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができる。一方、駐車ブレーキを解除する場合、乗員は駐車ブレーキ用スイッチをオフ方向に押す。すると、モータ21が先ほどとは逆方向に回転し、駐車ブレーキが解除される。このとき、無負荷電流になった時点でモータ21の電源を切るようにする。これにより、無駄なエネルギ消費を抑えることができる。
【0028】
以上のような構成の電動駐車ブレーキ装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、図4に示すように、ネジ軸部材27が右方向に直進運動してパーキングレバー13を反時計回りに回動したとき、運動伝達部材23と介在部材24との当接部Pにおける運動伝達力の力線Fは、ネジ軸部材27のネジ山27aとナット部材26のネジ穴26bとの嵌合部の外周面Sよりも内側に位置するように、介在部材24と当接する運動伝達部材23の一面が円周面23aに形成されている。
【0029】
ここで、運動伝達部材23と介在部材24との当接部における運動伝達力の力線が、ネジ軸部材27のネジ山27aとナット部材26のネジ穴26bとの嵌合部の外周面よりも外側に位置している場合を考える。この場合、ネジ軸部材27には、ネジ山27aとナット部材26のネジ穴26bとの嵌合部に働く力の他に、ネジ軸部材27の軸線と直交する方向のモーメントが発生してネジ軸部材27を回転させる。このため、ネジ軸部材27のネジ山27aとナット部材26のネジ穴26bとの嵌合部が浮いて片当りとなる。
【0030】
また、介在部材24と当接する運動伝達部材23の一面が円周面23aではなく平面に形成されていると、ネジ軸部材27の直線運動によりパーキングレバー13が回動支承部13aを中心に回動したときの動きに大きなずれが生じ、運動伝達部材23による運動伝達力が偏荷重となる。
【0031】
しかし、運動伝達部材23と介在部材24との当接部Pにおける運動伝達力の力線Fは、ネジ軸部材27のネジ山27aとナット部材26のネジ穴26bとの嵌合部の外周面Sよりも内側に位置している。この場合、ネジ軸部材27には、ネジ山27aとナット部材26のネジ穴26bとの嵌合部に働く力のみが発生し、上述のネジ軸部材27を回転させるモーメントは発生しない。このため、ネジ軸部材27のネジ山27aとナット部材26のネジ穴26bとの嵌合部に浮きは発生せず、嵌合部の片当りを防止することができる。よって、パーキングレバー13をスムーズに回動させることができる。運動伝達部材23と介在部材24との当接部Pにおける運動伝達力の力線Fは、図4に示す嵌合部の外周面Sの左端に位置しているときが限界点であり、図4に示す嵌合部の外周面Sの右端に位置していることが好ましい。
【0032】
また、介在部材24と当接する運動伝達部材23の一面は、円周面23aに形成されている。これにより、ネジ軸部材27の直線運動によりパーキングレバー13が回動支承部13aを中心に回動したときの動きのずれを抑えることができる。よって、運動伝達部材23による運動伝達力が偏荷重となることを防止することができ、パーキングレバー13をスムーズに回動させることができる。
【0033】
また、図3に示すように、ネジ軸部材27は、パーキングレバー13の他端を相対回転を規制されて軸線方向に相対移動可能に貫通し、ネジ軸部材27の先端部には、運動伝達部材23が一体的に設けられている。すなわち、ネジ軸部材27は、小径部分の2面取り27b,27bが、パーキングレバー13の折り曲げ部13bの対向面13c,13c間に嵌め込まれ、ネジ軸部材27の軸線回りの回転が規制され軸線方向の移動が許容されている。そして、運動伝達部材23は、ネジ軸部材27の小径部分の先端に一体的に設けられている。このため、ナット部材26の回転運動をネジ軸部材27の直線運動に確実に変換することができる。
【0034】
そして、運動伝達部材23とパーキングレバー13の他端との間には、ネジ軸部材27を傾動を許容して挿通させる貫通穴24cが形成された高硬度な介在部材24が介挿されている。これにより、運動伝達部材23は高硬度な介在部材24に当接してパーキングレバー13には直接当接しないので、パーキングレバー13の他端の変形を防止してパーキングレバー13を確実に回動させることが可能となる。さらに、パーキングレバー13を高硬度に形成しなくてもよく、加工コストが安価となる。また、ネジ軸部材27が軸線方向に移動してパーキングレバー13が一端の回動支承部13aを中心に回動したとき、ネジ軸部材27と介在部材24との干渉は発生せず、パーキングレバー13の回動をスムーズに行うことが可能となる。
【0035】
また、図3に示すように、パーキングレバー13の他端と介在部材24との各当接部は、テーパ形状の凹部および該凹部に係合可能なテーパ形状の凸部に形成されている。これにより、ネジ軸部材27が軸線方向に相対移動してパーキングレバー13が一端の回動支承部13aを中心に回動したとき、介在部材24がパーキングレバー13の他端から離間していたとしても、介在部材24をパーキングレバー13の他端の所定位置に位置合わせすることができる。よって、パーキングレバー13の回動をスムーズに行うことが可能となる。
【0036】
また、図5に示すように、パーキングレバー13の一端の回動支承部13aには、該パーキングレバー13の傾動を許容する貫通穴13aaが形成されている。そして、運動伝達部材23における介在部材24との当接部Pは、パーキングレバー13の一端の回動支承部13aの回動軸線L1と直交するレバー軸線L2に対し両側に位置するように設けられている。これにより、ネジ軸部材27が軸線方向に移動してパーキングレバー13が一端の回動支承部13aを中心に回動したとき、運動伝達部材23と介在部材24との各当接部Pには、運動伝達力により互いに逆向きとなるレバー軸線L2回りのねじりトルクが発生することになる。よって、運動伝達部材23に寸法バラツキが生じていても、運動伝達部材23と介在部材24とが片当たりになることを防止することができ、パーキングレバー13の回動をスムーズに行うことが可能となる。
【0037】
なお、上述の実施形態においては、運動伝達部材23における介在部材24との当接面に凸状の円周面23aを形成したが、介在部材24における運動伝達部材23との当接面に凸状の円周面を形成しても同様の効果を奏する。また、運動伝達部材23と介在部材24との当接面の一方に凸状の円周面を形成し、他方に該凸状の円周面の径と同一径もしくは大径の凹状の円周面を形成しても同様の効果を奏する。また、円周面に限定されるものではなく、例えば球面等の曲面を形成しても同様の効果を奏する。
【0038】
また、パーキングレバー13の折り曲げ部13bのテーパ形状の凹部13d,13dに係合可能なテーパ形状の凸部24aを有する略直方体状に介在部材24を形成した。しかし、テーパ形状に限定されるものではなく、介在部材24を直方体状に形成し、パーキングレバー13の折り曲げ部13bに該介在部材24を係合可能な直方体状の凹部を形成した構成としても同様の効果を奏する。
【0039】
また、回転−直動変換機構22は、ナット部材26の軸線回りの回転運動をネジ軸部材27の軸線方向の直線運動に変換する機構としたが、ネジ軸部材27の軸線回りの回転運動をナット部材26の軸線方向の直線運動に変換する機構としてもよい。この機構の場合、運動伝達部材23は、例えば、ナット部材26から軸線方向に突出形成した部材の先端に一体的に設けるようにする。また、回転−直動変換機構22として、ラックとピニオンの機構を用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1・・・電動駐車ブレーキ装置、10・・・ドラムブレーキ、11a,11b・・・ブレーキシュー、12a,12b・・・ブレーキライニング、13・・・パーキングレバー、13a・・・回動支承部、13b・・・折り曲げ部、13c・・・対向面、13d・・・凹部、14・・・連結部材、15・・・裏板、16・・・ドラム、20・・・電動アクチュエータ、21・・・モータ、22・・・回転−直動変換機構、23・・・運動伝達部材、23a・・・円周面、24・・・介在部材、24a・・・凸部、25・・・ピニオン、26・・・ナット部材、27・・・ネジ軸部材、27b・・・2面取り、L1・・・回動軸線、L2・・・レバー軸線、P・・・当接部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム(16)に摩擦係合可能なブレーキライニング(12a,12b)を夫々有し、裏板(15)に回動可能に支承された一対のブレーキシュー(11a,11b)と、
一方の前記ブレーキシュー(11a)に一端が回動可能に支承され、他方の前記ブレーキシュー(11b)との間に連結部材(14)が介挿され、回動することにより前記一対のブレーキシュー(11a,11b)を前記ドラム(16)側に拡開させて前記一対のブレーキライニング(12a,12b)を前記ドラム(16)に摩擦係合させるパーキングレバー(13)と、
前記裏板(15)に固定されたモータ(21)と、
互いに嵌合部で嵌合する回転部材(26)および軸動部材(27)を有し、前記軸動部材(27)が回転を規制され前記回転部材(26)が前記モータ(21)によって回転駆動されることにより回転運動を直線運動に変換する回転−直動変換機構(22)と、
前記軸動部材(27)に連結され前記パーキングレバー(13)の他端に当接し、前記回転−直動変換機構(22)により変換される直線運動を前記パーキングレバー(13)の他端に伝達する運動伝達部材(23)と、を備えた電動駐車ブレーキ装置(1)において、
前記運動伝達部材(23)と前記パーキングレバー(13)の他端との当接部(P)における運動伝達力の力線(F)が、前記回転部材(26)と前記軸動部材(27)との嵌合部の外周面(S)よりも内側に位置するように、前記運動伝達部材(23)と前記パーキングレバー(13)の他端との当接部(P)が形成されている電動駐車ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記運動伝達部材(23)と前記パーキングレバー(13)の他端との当接部の少なくとも一方は、曲面に形成されている電動駐車ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記軸動部材(27)は、前記パーキングレバー(13)の他端を相対回転を規制されて軸線方向に相対移動可能に貫通し、前記軸動部材(27)の先端部には、前記運動伝達部材(23)が一体的に設けられ、
前記運動伝達部材(23)と前記パーキングレバー(13)の他端との間には、前記軸動部材(27)を傾動を許容して挿通させる貫通穴(24c)が形成された高硬度な介在部材(24)が介挿されている電動駐車ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記パーキングレバー(13)の他端と前記介在部材(24)との各当接部は、テーパ形状の凹部(13d)および該凹部(13d)に係合可能なテーパ形状の凸部(24a)に形成されている電動駐車ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記パーキングレバー(13)の一端の回動支承部(13a)には、該パーキングレバー(13)の傾動を許容する貫通穴(13aa)が形成され、
前記運動伝達部材(23)における前記パーキングレバー(13)の他端との当接部(P)は、前記パーキングレバー(13)の一端の回転軸線(L1)と直交するレバー軸線(L2)に対し両側に位置するように設けられている電動駐車ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159164(P2012−159164A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20500(P2011−20500)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】