説明

電動駐車ブレーキ装置

【課題】パーキングレバーを回動するモータ等の駆動部のブレーキドラム内部への搭載性に優れ、該駆動部の防水性や防塵性が高い電動駐車ブレーキ装置を提供すること。
【解決手段】アンカー部17およびケース24は、ブレーキドラム16の回転軸線R方向に重ねて一体的に形成され、ケース24が、バックプレート15に固定されている。ブレーキドラム16の回転軸線R方向の配置スペースはブレーキドラムの回転軸線Rと直角な方向の配置スペースと比べて余裕がある。これにより、アンカー部17およびケース24をブレーキドラム16の回転軸線R方向に重ねて一体的に配置することが可能となる。よって、ブレーキドラム16内部への搭載性に優れた駆動部20を構成できる。また、ケース24をバックプレート15に固定することにより、駆動部20はバックプレート15により保護されることになる。よって、駆動部20の防水性や防塵性を高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駐車ブレーキ装置に関し、特に、ブレーキシューのブレーキライニングをブレーキドラムに摩擦係合させるパーキングレバーをモータにより回動する電動駐車ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、以下の電動駐車ブレーキ装置が記載されている。この電動駐車ブレーキ装置は、ブレーキシューを押してブレーキライニングをブレーキドラムに押付ける押付装置が、ブレーキシューの一端部を支承するアンカー部の近傍に設けられている。この押付装置は、モータ、ウォーム、ウォームホイール、ネジ部材およびシュー押付ロッドにより構成されている。モータは、モータの本体がバックプレート(バッキングプレート)に対し車両側に突出し、モータの出力軸がバックプレートに穿設された貫通穴を通ってブレーキドラム側に突出するように固定されている。ウォームは、モータの出力軸に嵌入されている。ウォームホイールの内周側には、ネジ部材がキーを介して一体的に保持されている。
【0003】
ネジ部材の内周側には、メネジが形成され、シュー押付ロッドの外周側には、ネジ部材のメネジに螺合可能なオネジが形成されている。そして、シュー押付ロッドは、ネジ部材に対し軸線方向に相対移動可能に保持されている。シュー押付ロッドの端部は、ブレーキシューに挟み込まれ、シュー押付ロッドの軸線回りの回転が阻止されている。ネジ部材は、ハウジングに対しベアリングを介して相対回転可能に保持されている。この電動駐車ブレーキ装置では、モータの回転運動が直線運動に変換されてシュー押付ロッドが軸線方向に移動し、ブレーキシューを押してブレーキライニングをブレーキドラムに摩擦係合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−92092号公報(段落番号0008,0009、図3,4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の電動駐車ブレーキ装置では、モータの本体がバックプレートに対し車両側に突出するように固定されている。よって、モータは、ブレーキドラム外部に露出することになり、防水性や防塵性の観点からは好ましくない。この点を改善するには、モータをブレーキドラム内部に収納すればよい。しかし、モータとアンカー部や車両側ハブ部品との干渉を避ける必要があるため、ブレーキドラム内部のモータ収納スペースは制約されることになる。そして、車重に応じた出力を発揮するモータは大型化するため、ブレーキドラム内部に収納できない場合がある。ブレーキドラム自体を大型化すればモータをブレーキドラム内部に収納することはできるが、ブレーキドラムの取付けが可能な車種が限定されるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パーキングレバーを回動するモータ等の駆動部のブレーキドラム内部への搭載性に優れ、該駆動部の防水性や防塵性が高い電動駐車ブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明は、外面が車体側の取付部に固定されるバックプレートと、該バックプレートの内面の側にあって、回転軸線回りに回転可能に配設されるブレーキドラムと、前記ブレーキドラムに摩擦係合可能なブレーキライニングを夫々有し、前記バックプレートに回動可能に支承された一対のブレーキシューと、前記バックプレートに固定され、前記一対のブレーキシューの一端部を支承するアンカー部と、一方の前記ブレーキシューに一端が回動可能に支承され、他方の前記ブレーキシューとの間に連結部材が介挿され、回動することにより前記一対のブレーキシューを前記アンカー部に支承された一端部を支点として前記ブレーキドラム側に拡開させて前記一対のブレーキライニングを前記ブレーキドラムに摩擦係合させるパーキングレバーと、回転運動を直線運動に変換する変換機構を介して互いに嵌合する回転部材と軸動部材とがケースに支承され、前記軸動部材が回転を規制され前記パーキングレバーの他端に連結され、前記回転部材がモータによって回転駆動されることにより前記軸動部材が軸動して前記パーキングレバーを回動する駆動部と、を備えた電動駐車ブレーキ装置にして、前記アンカー部および前記ケースが前記回転軸線方向に重ねて一体的に形成され前記ケースが前記バックプレートに固定されていることである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記バックプレートの前記内面には、前記外面側へ凹む凹部が設けられ、前記ケースの少なくとも一部が、前記凹部内に収容されて固定されていることである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記ケースには、前記一対のブレーキシューの一部を前記回転軸線方向に受ける受け部が設けられていることである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項において、前記ケースは、前記回転軸線方向の前記バックプレート側の端部が前記バックプレートに固定され、前記回転軸線方向の反バックプレート側端部に前記アンカー部が一体に形成されることである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4において、前記ケースには、前記一対のブレーキシューが前記バックプレートから離間する方向に移動して前記ケースから離脱することを防止する離脱防止部が反バックプレート側端部側方から前記回転軸線と直角な方向に突設されていることである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、アンカー部およびケースがブレーキドラムの回転軸線方向に重ねて一体的に形成されケースがバックプレートに固定されている。ブレーキドラム内においては、アンカー部や車両側ハブ部品等がブレーキドラムの回転軸線方向と直角な方向に配置されているため、ブレーキドラムの回転軸線方向の配置スペースはブレーキドラムの回転軸線方向と直角な方向の配置スペースと比べて余裕がある。これにより、アンカー部およびケースをブレーキドラムの回転軸線方向に重ねて一体的に形成することにより、アンカー部およびケースをブレーキドラム内部に配置することが可能となる。よって、ブレーキドラム内部への搭載性に優れた駆動部を構成することができる。また、ケースをバックプレートに固定することにより、駆動部はバックプレートにより保護されることになる。よって、駆動部の防水性や防塵性を高めることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、ケースの少なくとも一部を収容・固定する凹部が、バックプレートを車両側に凹ませることにより形成されている。これにより、ケースの配置スペースを拡大することができる。よって、車重に応じた出力を発揮する種々の大きさの駆動部を、ブレーキドラム内部へ搭載することが可能となる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、一対のブレーキシューの一部をブレーキドラムの回転軸線方向に受けて一対のブレーキシューを支持する受け部をケースに設けている。従来は、該受け部をアンカー部近傍のバックプレートに設けていたが、アンカー部およびケースをブレーキドラムの回転軸線方向に重ねて一体的に形成し、ケースをバックプレートに固定しているため、受け部をバックプレートに設けることができない。よって、受け部をアンカー部近傍でケースに設けることができ、一対のブレーキシューを堅固に支持することができる。そして、一対のブレーキシューをブレーキドラムの回転軸線と直角な方向にスムーズに拡開させることができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、回転軸線方向のバックプレート側の端部がバックプレートに固定され、回転軸線方向の反バックプレート側端部にアンカー部が一体に形成されるケースを備えている。これにより、アンカー部およびケースをブレーキドラムの回転軸線方向に重ねて一体的に形成することが容易になる。よって、電動駐車ブレーキ装置の組立性を高めることができる。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、一対のブレーキシューがバックプレートから離間する方向に移動してケースから離脱することを防止する離脱防止部が、ケースの回転軸線方向の反バックプレート側端部側方からブレーキドラムの回転軸線と直角な方向に突設されている。一対のブレーキシューが拡開したとき、一対のブレーキシューはバックプレートから離間する方向に移動してブレーキシューの一端部がケースの回転軸線方向の反バックプレート側端部から離脱し易い。しかし、そのときに一対のブレーキシューの一端部は、ケースの回転軸線方向の反バックプレート側端部側方からブレーキドラムの回転軸線と直角な方向に突設されている離脱防止部に係止するので、ケースの回転軸線方向の反バックプレート側端部から外れることはなく、一対のブレーキシューを確実に拡開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る電動駐車ブレーキ装置の一実施の形態をブレーキドラム側から見た斜視図である。
【図2】図1の電動駐車ブレーキ装置を車体の取付部側から見た斜視図である。
【図3】図1の電動駐車ブレーキ装置をブレーキドラムの回転軸線方向から見た平面図である。
【図4】図3の電動駐車ブレーキ装置をブレーキドラムの回転軸線に直角な方向から見たA−A線断面図である。
【図5】図1の電動駐車ブレーキ装置の駆動部付近の拡大斜視図である。
【図6】(A),(B)は、電動駐車ブレーキ装置の駆動部とパーキングレバーとの連結状態をブレーキドラムの回転軸線方向から見た図および回転軸線に直角な方向から見た図である。
【図7】図4の電動駐車ブレーキ装置の駆動部のモータ、回転部材および軸動部材を示すB−B線断面図である。
【図8】図3の電動駐車ブレーキ装置の駆動部のケースを示すC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5に示すように、電動駐車ブレーキ装置1は、駐車ブレーキ機構を備えたドラムブレーキ10と、駐車ブレーキ機構を駆動する駆動部20とで構成されている。
【0019】
ドラムブレーキ10は、図1に示すように、一対のブレーキシュー11a,11bと、一対のブレーキライニング12a,12bと、パーキングレバー13と、連結部材14と、バックプレート15と、ブレーキドラム16(図3参照)と、アンカー部17とにより概略構成されている。
【0020】
一対のブレーキシュー11a,11bは、円弧状に形成され、外周側に一対のブレーキライニング12a,12bが夫々貼着されるライニング貼着部111a,111bが夫々設けられている。一対のブレーキシュー11a,11bは、ブレーキドラム16の中心に対し両側に拡開可能なように、且つ一対のブレーキライニング12a,12bがブレーキドラム16の内周に対し接触離間可能なように、バックプレート15の内面15cに回動可能に支承されていると共に、一端部112a,112bが、バックプレート15の内面15cに固定されているアンカー部17に支承されている。
【0021】
パーキングレバー13は、一方(本例の場合、図1の左側)のブレーキシュー11aに一端側の回動支承部13aが回動可能に支承され、ブレーキシュー11aに沿って配置されている。そして、パーキングレバー13は、他方のブレーキシュー11bとの間に連結部材14が介挿されている。
【0022】
図6に示すように、パーキングレバー13の回動支承部13aには、該パーキングレバー13の傾動を許容する貫通穴13aaが形成されている。パーキングレバー13の他端側は、一端側の回動支承部13aの回動軸線L1と直交するパーキングレバー13のレバー軸線L2に対し略対称の略逆J字状に折り曲げられている。このパーキングレバー13の折り曲げ部13bの内周側には、レバー軸線L2に略平行な対向面13c,13cが形成されている。この折り曲げ部13bの対向面13c,13cの間には、後述するネジ軸部材27の一端部(図3において左端側)が貫通される。
【0023】
バックプレート15は、円盤状に形成され、外面が車体側の取付部に固定される。すなわち、バックプレート15は、図1のバックプレート15の中央部分のボルト孔15b(図1の例では4個)に挿通した不図示のボルトにより、図1のバックプレート15より紙面奥側にある不図示の車体側の取付部(非回転体)に固定される。ブレーキドラム16は、バックプレート15の内面15cの側にあって、回転軸線R回りに回転可能に配設される。また、バックプレート15の内面15cにおける駆動部20が配置される部分には、後述する駆動部20のケース24の少なくとも一部を収容して固定することが可能なように、外面15d側へ凹む凹部15aが設けられている。この凹部15aは、例えば、図2に示すように、車体の取付部側から見た外面15dは逆に凸状となる深絞り加工により形成してもよいが、これに限定されるものではなく、例えば、内面15cのみが凹む(外面15dが凸にならない)ものも含まれる。
【0024】
駆動部20は、モータ21と、回転−直動変換機構22と、運動伝達部材23と、ケース24とにより概略構成されている。
【0025】
図7に示すように、モータ21の回転軸21a側の部分は、ケース24内に収容され固定されている。回転−直動変換機構22は、ピニオン25と、ナット部材26(本発明の「回転部材」に相当する)と、ネジ軸部材27(本発明の「軸動部材」に相当する)とで構成されている。この回転−直動変換機構22は、ナット部材26の軸線回りの回転運動をネジ軸部材27の軸線方向の直線運動に変換する機構である。
【0026】
ピニオン25は、平歯車もしくははすば歯車であり、モータ21の回転軸21aに固定され、ケース24内に回転可能に収容されている。ナット部材26は、外周にピニオン25と噛合可能なはすば26aが設けられ、内周にネジ軸部材27のネジ山27aと螺合可能なネジ穴26bが設けられている。ネジ軸部材27は、外周にナット部材26のネジ穴26bと螺合可能なネジ山27aが設けられている。ネジ軸部材27は、ケース24内に図略の軸受を介して回転可能に支承され、ナット部材26は、ネジ軸部材27に螺合されることによりケース24内に回転可能に支承されている。
【0027】
ネジ軸部材27の一端部(図7において左端側)には、パーキングレバー13の折り曲げ部13bの対向面13c,13c間の幅よりも小幅の2面取り27b,27b(図6参照)が形成されている。ネジ軸部材27の2面取り27b,27bは、ネジ軸部材27の軸線回りの回転を規制し軸線方向の移動を許容するために、パーキングレバー13の折り曲げ部13bの対向面13c,13c間に嵌め込まれている。
【0028】
運動伝達部材23は、一面が凸状の円周面23aに形成された略直方体状、所謂蒲鉾形に形成されている。この運動伝達部材23は、円周面23aの中心軸線L3がパーキングレバー13の回動支承部13aの回動軸線L1と平行になるようにして円周面23a側がネジ軸部材27の一端に一体的に設けられている(図6参照)。運動伝達部材23は、ネジ軸部材27の軸線方向の直線運動による運動伝達力をパーキングレバー13に伝達する部材であり、運動伝達部材23の円周面23aは、パーキングレバー13の折り曲げ部13bのブレーキシュー11a側の側面13dと当接されている。
【0029】
ケース24およびアンカー部17は、ブレーキドラム16の回転軸線R方向に重ねて一体的に形成されている。すなわち、図8に示すように、ケース24は、回転軸線R方向のバックプレート15側の端部がバックプレート15の凹部15aの底面にリベット28を介して固定されている。そして、回転軸線R方向の反バックプレート側端部、すなわちバックプレート15側とは反対側の端部にアンカー部17が一体に形成されている。
【0030】
ケース24には、一対のブレーキシュー11a,11bのライニング貼着部111a,111bの一部113a,113bをブレーキドラム16の回転軸線R方向に受けて、一対のブレーキシュー11a,11bを支持する受け部24a,24bが、ケース24の中央側方からブレーキドラム16の回転軸線Rと直角な方向に突設されている。
【0031】
また、ケース24には、一対のブレーキシュー11a,11bがバックプレート15から離間する方向に移動してケース24の回転軸線R方向の反バックプレート側端部から離脱することを防止する離脱防止部24c,24dが、ケース24の回転軸線R方向の反バックプレート側端部側方からブレーキドラム16の回転軸線Rと直角な方向に突設されている。
【0032】
次に、この電動駐車ブレーキ装置1の動作について説明する。電動駐車ブレーキ装置1は、一般に車両の後車輪に装着される。そして、車両の運転席には、両方の電動駐車ブレーキ装置1,1を夫々操作するため駐車ブレーキ用スイッチが設けられる。駐車ブレーキをかける場合、乗員は駐車ブレーキ用スイッチをオン方向に押す。すると、モータ21が回転し、この回転運動がピニオン25を介してナット部材26に伝達される。そして、伝達された回転運動はネジ軸部材27で図1において右方向の直動運動に変換される。これにより、パーキングレバー13は、図1において反時計回りに回転する。
【0033】
そして、パーキングレバー13は、ブレーキシュー11aをケース24のアンカー部17に支承されている一端部112aを支点としてブレーキドラム16側に押動するとともに、連結部材14を介してブレーキシュー11bをケース24のアンカー部17に支承されている一端部112bを支点としてブレーキドラム16側に押動する。このとき、一対のブレーキシュー11a,11bの一部113a,113bは、受け部24a,24bによりブレーキドラム16の回転軸線R方向に受けられて支持されているので、一対のブレーキシュー11a,11bは、ブレーキドラム16の回転軸線Rと直角な方向にスムーズに拡開する。また、一対のブレーキシュー11a,11bの一端部112a,112bは、離脱防止部24c,24dに係止されるので、ケース24の回転軸線R方向の反バックプレート側端部から外れることはなく、一対のブレーキシュー11a,11bは、ブレーキドラム16の回転軸線Rと直角な方向に確実に拡開する。
【0034】
そして、ブレーキライニング12a,12bをブレーキドラム16の内周に摩擦係合させる。以上により、駐車ブレーキがかけられる。このとき、モータ21に一定以上の電流が流れたらモータ21を停止させるようにする。これにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができる。一方、駐車ブレーキを解除する場合、乗員は駐車ブレーキ用スイッチをオフ方向に押す。すると、モータ21が先ほどとは逆方向に回転し、駐車ブレーキが解除される。このとき、無負荷電流になった時点でモータ21の電源を切るようにする。これにより、無駄なエネルギ消費を抑えることができる。
【0035】
以上のような構成の電動駐車ブレーキ装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。アンカー部17およびケース24は、ブレーキドラム16の回転軸線R方向に重ねて一体的に形成され、ケース24が、バックプレート15に固定されている。ブレーキドラム16内においては、車両側ハブ部品等がブレーキドラム16の回転軸線Rと直角な方向に配置されているため、ブレーキドラム16の回転軸線R方向の配置スペースはブレーキドラムの回転軸線Rと直角な方向の配置スペースと比べて余裕がある。これにより、アンカー部17およびケース24をブレーキドラム16の回転軸線R方向に重ねて一体的に配置することが可能となる。よって、ブレーキドラム16内部への搭載性に優れた駆動部20を構成することができる。また、ケース24をバックプレート15に固定することにより、駆動部20はバックプレート15により保護されることになる。よって、駆動部20の防水性や防塵性を高めることができる。
【0036】
また、ケース24の少なくとも一部を収容・固定する凹部15aが、バックプレート15を車両側に凹ませることにより形成されている。これにより、ケース24の配置スペースを拡大することができる。よって、車重に応じた出力を発揮する種々の大きさの駆動部20を、ブレーキドラム16内部へ搭載することが可能となる。
【0037】
また、一対のブレーキシュー11a,11bの一部をブレーキドラム16の回転軸線R方向に受けて一対のブレーキシュー11a,11bを支持する受け部24a,24bをケース24に設けている。従来は、該受け部をアンカー部近傍のバックプレートに設けていたが、アンカー部17およびケース24をブレーキドラム16の回転軸線R方向に重ねて一体的に形成し、ケース24をバックプレート15に固定しているため、受け部24a,24bをバックプレート15に設けることができない。よって、受け部24a,24bをケース24に設けることによりアンカー部17近傍に設けることができ、一対のブレーキシュー11a,11bを堅固に支持することができる。そして、一対のブレーキシュー11a,11bをブレーキドラム16の回転軸線Rと直角な方向にスムーズに拡開させることができる。
【0038】
また、回転軸線R方向のバックプレート15側の端部がバックプレート15に固定され、回転軸線R方向の反バックプレート側端部にアンカー部17が一体に形成されるケース24を備えている。これにより、アンカー部17およびケース24をブレーキドラム16の回転軸線R方向に重ねて一体的に形成することが容易となる。よって、電動駐車ブレーキ装置1の組立性を高めることができる。
【0039】
また、一対のブレーキシュー11a,11bがバックプレート15から離間する方向に移動してケース24から離脱することを防止する離脱防止部24c,24dを、ケース24の回転軸線R方向の反バックプレート側端部側方からブレーキドラム16の回転軸線Rと直角な方向に突設している。一対のブレーキシュー11a,11bが拡開したとき、一対のブレーキシュー11a,11bはバックプレート15から離間する方向に移動してブレーキシュー11a,11bの一端部112a,112bがケース24の回転軸線R方向の反バックプレート側端部から離脱し易い。しかし、そのときに一対のブレーキシュー11a,11bの一端部112a,112bは、ケース24の回転軸線R方向の反バックプレート側端部側方からブレーキドラム16の回転軸線Rと直角な方向に突設されている離脱防止部24c,24dに係止するので、ケース24の回転軸線R方向の反バックプレート側端部から外れることはなく、一対のブレーキシュー11a,11bを確実に拡開させることができる。
【0040】
また、パーキングレバー13のブレーキシュー11a側の側面13dと当接する運動伝達部材23の一面は、円周面23aに形成されている。これにより、ネジ軸部材27の直線運動によりパーキングレバー13が回動支承部13aを中心に回動したときの動きのずれを抑えることができる。よって、運動伝達部材23による運動伝達力が偏荷重となることを防止することができ、パーキングレバー13をスムーズに回動させることができる。
【0041】
また、ネジ軸部材27は、パーキングレバー13の他端を相対回転を規制されて軸線方向に相対移動可能に貫通し、ネジ軸部材27の先端部には、運動伝達部材23が一体的に設けられている。すなわち、ネジ軸部材27は、2面取り27b,27bが、パーキングレバー13の折り曲げ部13bの対向面13c,13c間に嵌め込まれ、ネジ軸部材27の軸線回りの回転が規制され軸線方向の移動が許容されている。そして、運動伝達部材23は、ネジ軸部材27の先端に一体的に設けられている。このため、ナット部材26の回転運動をネジ軸部材27の直線運動に確実に変換することができる。
【0042】
なお、上述の実施形態においては、運動伝達部材23におけるパーキングレバー13の側面13dとの当接面に凸状の円周面23aを形成したが、パーキングレバー13の側面13dにおける運動伝達部材23との当接面に凸状の円周面を形成しても同様の効果を奏する。また、運動伝達部材23とパーキングレバー13の側面13dとの当接面の一方に凸状の円周面を形成し、他方に該凸状の円周面の径と同一径もしくは大径の凹状の円周面を形成しても同様の効果を奏する。また、円周面に限定されるものではなく、例えば球面等の曲面を形成しても同様の効果を奏する。
【0043】
また、回転−直動変換機構22は、ナット部材26の軸線回りの回転運動をネジ軸部材27の軸線方向の直線運動に変換する機構としたが、ネジ軸部材27の軸線回りの回転運動をナット部材26の軸線方向の直線運動に変換する機構としてもよい。この機構の場合、運動伝達部材23は、例えば、ナット部材26から軸線方向に突出形成した部材の先端に一体的に設けるようにする。また、回転−直動変換機構22として、ラックとピニオンの機構を用いてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1・・・電動駐車ブレーキ装置、10・・・ドラムブレーキ、11a,11b・・・ブレーキシュー、12a,12b・・・ブレーキライニング、13・・・パーキングレバー、14・・・連結部材、15・・・バックプレート、15a・・・凹部、16・・・ブレーキドラム、17・・・アンカー部、20・・・駆動部、21・・・モータ、22・・・回転−直動変換機構、23・・・運動伝達部材、24・・・ケース、24a,24b・・・受け部、24c,24d・・・離脱防止部、26・・・ナット部材、27・・・ネジ軸部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面(15d)が車体側の取付部に固定されるバックプレート(15)と、
該バックプレート(15)の内面(15c)の側にあって、回転軸線(R)回りに回転可能に配設されるブレーキドラム(16)と、
前記ブレーキドラム(16)に摩擦係合可能なブレーキライニング(12a,12b)を夫々有し、前記バックプレート(15)に回動可能に支承された一対のブレーキシュー(11a,11b)と、
前記バックプレート(15)に固定され、前記一対のブレーキシュー(11a,11b)の一端部を支承するアンカー部(17)と、
一方の前記ブレーキシュー(11a)に一端が回動可能に支承され、他方の前記ブレーキシュー(11b)との間に連結部材(14)が介挿され、回動することにより前記一対のブレーキシュー(11a,11b)を前記アンカー部(17)に支承された一端部を支点として前記ブレーキドラム(16)側に拡開させて前記一対のブレーキライニングを前記ブレーキドラム(16)に摩擦係合させるパーキングレバー(13)と、
回転運動を直線運動に変換する変換機構(22)を介して互いに嵌合する回転部材(26)と軸動部材(27)とがケース(24)に支承され、前記軸動部材(27)が回転を規制され前記パーキングレバー(13)の他端に連結され、前記回転部材(26)がモータ(21)によって回転駆動されることにより前記軸動部材(27)が軸動して前記パーキングレバー(13)を回動する駆動部(20)と、を備えた電動駐車ブレーキ装置(1)にして、
前記アンカー部(17)および前記ケース(24)が前記回転軸線(R)方向に重ねて一体的に形成され前記ケース(24)が前記バックプレート(15)に固定されている電動駐車ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記バックプレート(15)の前記内面には、前記外面側へ凹む凹部(15a)が設けられ、
前記ケース(24)の少なくとも一部が、前記凹部(15a)内に収容されて固定されている電動駐車ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ケース(24)には、前記一対のブレーキシュー(11a,11b)の一部を前記回転軸線(R)方向に受ける受け部(24a,24b)が設けられている電動駐車ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記ケース(24)は、前記回転軸線(R)方向の前記バックプレート(15)側の端部が前記バックプレート(15)に固定され、前記回転軸線(R)方向の反バックプレート側端部に前記アンカー部(17)が一体に形成される電動駐車ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記ケース(24)には、前記一対のブレーキシュー(11a,11b)が前記バックプレート(15)から離間する方向に移動して前記ケース(24)から離脱することを防止する離脱防止部(24c,24d)が反バックプレート側端部側方から前記回転軸線(R)と直角な方向に突設されている電動駐車ブレーキ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−211647(P2012−211647A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77615(P2011−77615)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】