説明

電動駐車ブレーキ装置

【課題】パーキングレバーを回動するモータ等の駆動部のブレーキドラム内部への搭載性に優れた電動駐車ブレーキ装置を提供すること。
【解決手段】アンカーブロック17は、側面形状を略S字状とした板状部材で形成されている。これにより、両端部分の間において空間を確保することができる。よって、アンカーブロック17の一端部分をバックプレート15に固定する固定部17a、他端部分をブレーキシュー11a,11bを支承するアンカー部17b、両端部分を連結する中間部分を駆動部20が装着される連結部17cとして形成することができる。これにより、アンカーブロック17および駆動部20は、ブレーキドラム16の回転軸線R方向と直角な方向の配置スペースと比べて余裕があるブレーキドラム16の回転軸線R方向に重ねて配置されることになる。よって、ブレーキドラム16内部への搭載性に優れた駆動部20を構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駐車ブレーキ装置に関し、特に、ブレーキシューのブレーキライニングをブレーキドラムに摩擦係合させるパーキングレバーをモータにより回動する電動駐車ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、以下の電動駐車ブレーキ装置が記載されている。この電動駐車ブレーキ装置には、ブレーキシューを押してブレーキライニングをブレーキドラムに押付ける押付装置が、ブレーキシューの一端部を支承するアンカーブロックの近傍に設けられている。この押付装置は、モータ、ウォーム、ウォームホイール、ネジ部材およびシュー押付ロッドにより構成されている。モータは、モータの本体がバックプレート(バッキングプレート)に対し車両側に突出し、モータの出力軸がバックプレートに穿設された貫通穴を通ってブレーキドラム側に突出するように固定されている。ウォームは、モータの出力軸に嵌入されている。ウォームホイールの内周側には、ネジ部材がキーを介して一体的に保持されている。
【0003】
ネジ部材の内周側には、メネジが形成され、シュー押付ロッドの外周側には、ネジ部材のメネジに螺合可能なオネジが形成されている。そして、シュー押付ロッドは、ネジ部材に対し軸線方向に相対移動可能に保持されている。シュー押付ロッドの端部は、ブレーキシューに挟み込まれ、シュー押付ロッドの軸線回りの回転が阻止されている。ネジ部材は、ハウジングに対しベアリングを介して相対回転可能に保持されている。この電動駐車ブレーキ装置では、モータの回転運動が直線運動に変換されてシュー押付ロッドが軸線方向に移動し、ブレーキシューを押してブレーキライニングをブレーキドラムに摩擦係合させる。
【0004】
特許文献1に記載の電動駐車ブレーキ装置では、モータの本体がバックプレートに対し車両内側に突出するように固定されている。よって、モータは、ブレーキドラム外部に露出することになり、防水性や防塵性の観点からは好ましくない。そこで、例えば、特許文献2には、以下の電動駐車ブレーキ装置が記載されている。この電動駐車ブレーキ装置は、ブレーキシューを拡開してブレーキライニングをブレーキドラムに押付ける拡縮装置およびこの拡縮装置を駆動するモータ等を備えている。モータは、バックプレートに対し車両内側に突出するように固定され、カバーにより覆われている。これにより、モータの防水性や防塵性を担保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−92092号公報(段落番号0008,0009、図3,4)
【特許文献2】特開2011−99458号公報(段落番号0038、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載の電動駐車ブレーキ装置では、モータが、車両内側に大きく突出して固定されているため、車両側ハブ部品と干渉するおそれがある。この点を改善するには、モータをブレーキドラム内部に収納すればよい。しかし、モータとアンカーブロックや車両側ハブ部品との干渉を避ける必要があるため、ブレーキドラム内部のモータ収納スペースは制約されることになる。そして、車重に応じた出力を発揮するモータは大型化するため、ブレーキドラム内部に収納できない場合がある。ブレーキドラム自体を大型化すればモータをブレーキドラム内部に収納することはできるが、ブレーキドラムの取付けが可能な車種が限定されるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パーキングレバーを回動するモータ等の駆動部のブレーキドラム内部への搭載性に優れた電動駐車ブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明は、外面が車体側の取付部に固定されるバックプレートと、該バックプレートの内面の側にあって回転軸線回りに回転可能に配設されるブレーキドラムに摩擦係合可能なブレーキライニングを夫々有し、前記バックプレートに回動可能に支承される一対のブレーキシューと、前記バックプレートに固定される固定部と、前記一対のブレーキシューの一端部を支承するアンカー部とが設けられたアンカーブロックと、一方の前記ブレーキシューに一端が回動可能に支承され、他方の前記ブレーキシューとの間に連結部材が介挿され、回動することにより前記一対のブレーキシューを前記アンカーブロックに支承された一端部を支点として前記ブレーキドラム側に拡開させて前記一対のブレーキライニングを前記ブレーキドラムに摩擦係合させるパーキングレバーと、回転運動を直線運動に変換する変換機構を介して互いに嵌合する回転部材と軸動部材とがケースに支承され、前記軸動部材が回転を規制され前記パーキングレバーの他端に連結され、前記回転部材がモータによって回転駆動されることにより前記軸動部材が軸動して前記パーキングレバーを回動する駆動部と、を備えた電動駐車ブレーキ装置にして、前記アンカーブロックは、両端部分を逆方向に突設した板状部材で形成され、前記両端部分の一端部分が前記回転軸線と直角方向に延在して前記固定部をなし、他端部分が前記アンカー部をなし、前記両端部分を連結する中間部分が前記駆動部が装着される連結部として形成されていることである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記アンカー部には、前記駆動部を前記連結部に着脱するために前記駆動部の少なくとも一部の挿通を許容する切り欠き部が設けられていることである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、前記バックプレートには、前記外面側へ凹む第1凹部および該第1凹部よりも浅く前記外面側へ凹む第2凹部が設けられ、前記連結部に装着された前記駆動部の少なくとも一部が、前記第1凹部内に収容され、前記固定部が、前記第2凹部の底部に固定されることである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項において、前記駆動部のケースを着脱可能に装着する装着部が前記連結部に突設されていることである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項において、前記アンカーブロックは、前記板状部材をプレス成形することにより形成されることである。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5において、前記駆動部のケースを着脱可能に装着する装着部が前記連結部にプレス成形により一体で突設されていることである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、アンカーブロックは、両端部分を逆方向に突設した板状部材、すなわち側面形状を略S字状とした板状部材で形成されている。そして、アンカーブロックの一端部分は、バックプレートに固定される固定部として形成され、アンカーブロックの他端部分は、一対のブレーキシューの一端部を支承するアンカー部として形成されている。アンカーブロックの側面形状は、略S字状に形成されているので、固定部とアンカー部との間において空間を確保することができる。よって、この空間を駆動部の設置空間として利用し、アンカーブロックの両端部分を連結する中間部分を駆動部が装着される連結部として形成することができる。これにより、アンカーブロックおよび駆動部は、ブレーキドラムの回転軸線方向に重ねて配置されることになる。
【0015】
ここで、ブレーキドラム内においては、アンカーブロックや車両側ハブ部品等がブレーキドラムの回転軸線方向と直角な方向に配置されているため、ブレーキドラムの回転軸線方向の配置スペースはブレーキドラムの回転軸線方向と直角な方向の配置スペースと比べて余裕がある。これにより、アンカーブロックおよび駆動部をブレーキドラムの回転軸線方向に重ねて配置することにより、アンカーブロックおよび駆動部をブレーキドラム内部に配置することが可能となる。よって、ブレーキドラム内部への搭載性に優れた駆動部を構成することができる。
【0016】
また、駆動部をアンカーブロックを介してバックプレートに固定することにより、駆動部はバックプレートにより保護されることになる。よって、駆動部の防水性や防塵性を高めることができる。また、アンカーブロックと駆動部のケースとを別部材により構成することができるので、アンカーブロックおよび駆動部のケースの各機能毎に必要な材質を選定することが可能となり、軽量化および低コスト化を図ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、アンカー部には、連結部に支持された駆動部の少なくとも一部の挿通を許容する切り欠き部が設けられている。これにより、作業者は、切り欠き部を通して駆動部を連結部に対して着脱する作業を行うことができる。よって、ブレーキドラム内部への組付性に優れた駆動部を構成することができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、駆動部の少なくとも一部を収容する第1凹部が、バックプレートを車両側に凹ませることにより形成されている。これにより、駆動部の配置スペースを拡大することができる。よって、車重に応じた出力を発揮する種々の大きさの駆動部を、ブレーキドラム内部へ搭載することが可能となる。
【0019】
また、アンカーブロックの固定部を固定する第2凹部が、第1凹部よりも浅い凹みでバックプレートを車両側に凹ませることにより形成されている。これにより、第1凹部に固定部を固定する場合と比較して、固定部と駆動部との距離を小さくして固定部に掛かる駆動部の駆動時の力のモーメントを小さくすることができる。よって、アンカーブロックの固定部を固定したことによるバックプレートの強度面での安全性を向上させることができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、駆動部のケースを着脱可能に装着する装着部が、連結部に突設されている。これにより、駆動部を装着部に容易に装着することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、板状部材をプレス成形することによりアンカーブロックを形成している。これにより、アンカーブロックの製造コストを低減させることができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、駆動部のケースを着脱可能に装着する装着部が、連結部にプレス成形により一体で突設されている。これにより、装着部が設けられたアンカーブロックの製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る電動駐車ブレーキ装置の一実施の形態をブレーキドラム側から見た斜視図である。
【図2】図1の電動駐車ブレーキ装置を車体の取付部側から見た斜視図である。
【図3】図1の電動駐車ブレーキ装置をブレーキドラムの回転軸線方向から見た平面図である。
【図4】図3の電動駐車ブレーキ装置をブレーキドラムの回転軸線に直角な方向から見たA−A線断面図である。
【図5】(A),(B)は、電動駐車ブレーキ装置の駆動部とパーキングレバーとの連結状態をブレーキドラムの回転軸線方向から見た図および回転軸線に直角な方向から見た図である。
【図6】図4の電動駐車ブレーキ装置の駆動部のモータ、回転部材および軸動部材を示すB−B線断面図である。
【図7】電動駐車ブレーキ装置のアンカーブロックを示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4に示すように、電動駐車ブレーキ装置1は、駐車ブレーキ機構を備えたドラムブレーキ10と、駐車ブレーキ機構を駆動する駆動部20とで構成されている。
【0025】
図1および図3に示すように、ドラムブレーキ10は、一対のブレーキシュー11a,11bと、一対のブレーキライニング12a,12bと、パーキングレバー13と、連結部材14と、バックプレート15と、ブレーキドラム16(図3参照)と、アンカーブロック17とにより概略構成されている。
【0026】
一対のブレーキシュー11a,11bは、円弧状に形成され、外周側に一対のブレーキライニング12a,12bが夫々貼着されるライニング貼着部111a,111bが夫々設けられている。一対のブレーキシュー11a,11bは、ブレーキドラム16の中心に対し両側に拡開可能なように、且つ一対のブレーキライニング12a,12bがブレーキドラム16の内周に対し接触離間可能なように、バックプレート15の内面15cに回動可能に支承されていると共に、一端部112a,112bが、バックプレート15の内面15cに固定されているアンカーブロック17に支承されている。
【0027】
パーキングレバー13は、一方(本例の場合、図1の左側)のブレーキシュー11aに一端側の回動支承部13aが回動可能に支承され、ブレーキシュー11aに沿って配置されている。そして、パーキングレバー13は、他方のブレーキシュー11bとの間に連結部材14が介挿されている。
【0028】
図5に示すように、パーキングレバー13の回動支承部13aには、該パーキングレバー13の傾動を許容する貫通穴13aaが形成されている。パーキングレバー13の他端側は、一端側の回動支承部13aの回動軸線L1と直交するパーキングレバー13のレバー軸線L2に対し略対称の略逆J字状に折り曲げられている。このパーキングレバー13の折り曲げ部13bの内周側には、レバー軸線L2に略平行な対向面13c,13cが形成されている。この折り曲げ部13bの対向面13c,13cの間には、後述するネジ軸部材27の一端部(図3において左端側)が貫通される。
【0029】
図1および図3に示すように、バックプレート15は、円盤状に形成され、外面が車体側の取付部に固定される。すなわち、バックプレート15は、バックプレート15の中央部分のボルト孔15b(本例では4個)に挿通した不図示のボルトにより、バックプレート15より図1および図3の紙面奥側にある不図示の車体側の取付部(非回転体)に固定される。ブレーキドラム16は、バックプレート15の内面15cの側にあって、回転軸線R回りに回転可能に配設されている。
【0030】
また、図2に示すように、バックプレート15の内面15cにおける駆動部20が配置される部分には、後述する駆動部20のケース24の少なくとも一部を収容することが可能なように、外面15d側へ凹む第1凹部151aが設けられている。さらに、バックプレート15の内面15cにおけるアンカーブロック17が固定される部分には、後述するアンカーブロック17の固定部17aを固定することが可能なように、外面15d側へ凹む第1凹部151aよりも浅い凹みの第2凹部152aが設けられている。第1凹部151aおよび第2凹部152aは、連続して設けられている。第1凹部151aおよび第2凹部152aは、例えば、車体の取付部側から見た外面15dは逆に凸状となる深絞り加工により形成してもよいが、これに限定されるものではなく、例えば、内面15cのみが凹む(外面15dが凸にならない)ものも含まれる。
【0031】
図1および図3に示すように、駆動部20は、モータ21と、回転−直動変換機構22と、運動伝達部材23(図3参照)と、ケース24とにより概略構成されている。
【0032】
図6に示すように、モータ21の回転軸21a側の部分は、ケース24内に収容され固定されている。回転−直動変換機構22は、ピニオン25と、ナット部材26(本発明の「回転部材」に相当する)と、ネジ軸部材27(本発明の「軸動部材」に相当する)とで構成されている。この回転−直動変換機構22は、ナット部材26の軸線回りの回転運動をネジ軸部材27の軸線方向の直線運動に変換する機構である。
【0033】
ピニオン25は、平歯車もしくははすば歯車であり、モータ21の回転軸21aに固定され、ケース24内に回転可能に収容されている。ナット部材26は、外周にピニオン25と噛合可能なはすば26aが設けられ、内周にネジ軸部材27のネジ山27aと螺合可能なネジ穴26bが設けられている。ネジ軸部材27は、外周にナット部材26のネジ穴26bと螺合可能なネジ山27aが設けられている。ネジ軸部材27は、ケース24内に図略の軸受を介して回転可能に支承され、ナット部材26は、ネジ軸部材27に螺合されることによりケース24内に回転可能に支承されている。
【0034】
ネジ軸部材27の一端部(図6において左端側)には、パーキングレバー13の折り曲げ部13bの対向面13c,13c間の幅よりも小幅の2面取り27b,27b(図5参照)が形成されている。ネジ軸部材27の2面取り27b,27bは、ネジ軸部材27の軸線回りの回転を規制し軸線方向の移動を許容するために、パーキングレバー13の折り曲げ部13bの対向面13c,13c間に嵌め込まれている。
【0035】
運動伝達部材23は、一面が凸状の円周面23aに形成された略直方体状、所謂蒲鉾形に形成されている。この運動伝達部材23は、円周面23aの中心軸線L3がパーキングレバー13の回動支承部13aの回動軸線L1と平行になるようにして円周面23a側がネジ軸部材27の一端に一体的に設けられている(図5参照)。運動伝達部材23は、ネジ軸部材27の軸線方向の直線運動による運動伝達力をパーキングレバー13に伝達する部材であり、運動伝達部材23の円周面23aは、パーキングレバー13の折り曲げ部13bのブレーキシュー11a側の側面13dと当接されている。
【0036】
図1、図3、図4および図7に示すように、アンカーブロック17は、矩形状の板状部材をプレス成形により両端部分を逆方向に突設した形状、すなわち略S字状の側面形状(図4参照)となるように折り曲げ加工されている。アンカーブロック17の突設した一端部分は、バックプレート15の第2凹部152aの底部152bにボルト28を介して固定される固定部17aとして形成されている。アンカーブロック17の突設した他端部分は、一対のブレーキシュー11a,11bの一端部112a,112bを支承するアンカー部17bとして形成されている。そして、アンカーブロック17の両端部分を連結する中間部分は、駆動部20のケース24が装着される連結部17cとして形成されている。
【0037】
アンカー部17bには、連結部17cに装着された駆動部20のケース24の挿通を許容し、駆動部20のケース24の取付けや取外しを可能とする切り欠き部171bが設けられている。この切り欠き部171bは、矩形状のアンカー部17bの両側部分172b,173bを残し、両側部分172b,173bの間を矩形状に切り欠くように形成されている。アンカー部17bの両側部分172b,173bには、一対のブレーキシュー11a,11bの一端部112a,112bが支承される。
【0038】
連結部17cには、駆動部20のケース24をボルトにより着脱可能に装着する装着部171cが突設されている。この装着部171cは、アンカーブロック17をプレス成形するときに一体で折り曲げ加工される。なお、装着部171cをアンカーブロック17とは別体で製作しておき、連結部17cに溶接もしくはボルト締結するようにしてもよい。
【0039】
次に、この電動駐車ブレーキ装置1の動作について説明する。電動駐車ブレーキ装置1は、一般に車両の後車輪に装着される。そして、車両の運転席には、両方の電動駐車ブレーキ装置1,1を夫々操作するため駐車ブレーキ用スイッチが設けられる。駐車ブレーキをかける場合、乗員は駐車ブレーキ用スイッチをオン方向に押す。すると、モータ21が回転し、この回転運動がピニオン25を介してナット部材26に伝達される。そして、伝達された回転運動はネジ軸部材27で図1において右方向の直動運動に変換される。これにより、パーキングレバー13は、図1において反時計回りに回転する。
【0040】
このとき、アンカーブロック17の固定部17aは、第1凹部151aよりも浅い凹みの第2凹部152aの底部152bにボルト28を介して固定されている。よって、アンカーブロック17の固定部17aを第1凹部151aの底部151bにボルト28を介して固定する場合と比較して、固定部17aと駆動部20の回転−直動変換機構22との距離を小さくして固定部17aに掛かる駆動部20の駆動時の力のモーメントを小さくすることができる。よって、アンカーブロック17の固定部17aが固定されているバックプレート15の第2凹部152aの底部152bの強度面での安全性を向上させることができる。
【0041】
そして、パーキングレバー13は、ブレーキシュー11aをアンカーブロック17のアンカー部17bの側部172bに支承されている一端部112aを支点としてブレーキドラム16側に押動するとともに、連結部材14を介してブレーキシュー11bをアンカーブロック17のアンカー部17bの側部173bに支承されている一端部112bを支点としてブレーキドラム16側に押動する。
【0042】
そして、ブレーキライニング12a,12bをブレーキドラム16の内周に摩擦係合させる。以上により、駐車ブレーキがかけられる。このとき、モータ21に一定以上の電流が流れたらモータ21を停止させるようにする。これにより、常に一定の駐車ブレーキ力を得ることができる。一方、駐車ブレーキを解除する場合、乗員は駐車ブレーキ用スイッチをオフ方向に押す。すると、モータ21が先ほどとは逆方向に回転し、駐車ブレーキが解除される。このとき、無負荷電流になった時点でモータ21の電源を切るようにする。これにより、無駄なエネルギ消費を抑えることができる。
【0043】
以上のような構成の電動駐車ブレーキ装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。アンカーブロック17は、両端部分を逆方向に突設した板状部材、すなわち側面形状を略S字状とした板状部材で形成されている。これにより、両端部分の間において空間を確保することができる。よって、この空間を駆動部20の設置空間として利用することができる。すなわち、アンカーブロック17の一端部分をバックプレート15に固定する固定部17a、他端部分をブレーキシュー11a,11bを支承するアンカー部17b、両端部分を連結する中間部分を駆動部20が装着される連結部17cとして形成することができる。これにより、アンカーブロック17および駆動部20は、ブレーキドラム16の回転軸線R方向と直角な方向の配置スペースと比べて余裕があるブレーキドラム16の回転軸線R方向に重ねて配置されることになる。よって、ブレーキドラム16内部への搭載性に優れた駆動部20を構成することができる。
【0044】
また、駆動部20をアンカーブロック17を介してバックプレート15に固定することにより、駆動部20はバックプレート15により保護されることになり、駆動部20の防水性や防塵性を高めることができる。また、アンカーブロック17と駆動部20のケース24とを別部材により構成することができるので、アンカーブロック17および駆動部20のケース24の各機能毎に必要な材質を選定することが可能となり、軽量化および低コスト化を図ることができる。
【0045】
また、アンカー部17bには、連結部17cに支持された駆動部20のケース24の挿通を許容する切り欠き部171bが設けられている。これにより、作業者は、切り欠き部171bを通して駆動部20を連結部17cに対して着脱する作業を行うことができる。よって、ブレーキドラム16内部への組付性に優れた駆動部20を構成することができる。
【0046】
また、駆動部20のケース24等を収容する第1凹部151aが、バックプレート15を車両側に凹ませることにより形成されている。これにより、駆動部20の配置スペースを拡大することができ、車重に応じた出力を発揮する種々の大きさの駆動部20を、ブレーキドラム16内部へ搭載することが可能となる。また、アンカーブロック17の固定部17aを固定する第2凹部152aが、第1凹部151aよりも浅い凹みでバックプレート15を車両側に凹ませることにより形成されている。これにより、第1凹部151aに固定部17aを固定する場合と比較して、固定部17aと駆動部20との距離を小さくして固定部17aに掛かる駆動部20の駆動時の力のモーメントを小さくすることができる。よって、アンカーブロック17の固定部17cを固定したことによるバックプレート15の強度面での安全性を向上させることができる。
【0047】
また、駆動部20のケース24を着脱可能に装着する装着部171cが、連結部17cに突設されているので、駆動部20を装着部171cに容易に固定することができる。また、板状部材をプレス成形することにより装着部171cが一体となったアンカーブロック17を形成しているので、アンカーブロック17の製造コストを低減させることができる。
【0048】
また、パーキングレバー13のブレーキシュー11a側の側面13dと当接する運動伝達部材23の一面は、円周面23aに形成されている。これにより、ネジ軸部材27の直線運動によりパーキングレバー13が回動支承部13aを中心に回動したときの動きのずれを抑えることができる。よって、運動伝達部材23による運動伝達力が偏荷重となることを防止することができ、パーキングレバー13をスムーズに回動させることができる。
【0049】
また、ネジ軸部材27は、パーキングレバー13の他端を相対回転を規制されて軸線方向に相対移動可能に貫通し、ネジ軸部材27の先端部には、運動伝達部材23が一体的に設けられている。すなわち、ネジ軸部材27は、2面取り27b,27bが、パーキングレバー13の折り曲げ部13bの対向面13c,13c間に嵌め込まれ、ネジ軸部材27の軸線回りの回転が規制され軸線方向の移動が許容されている。そして、運動伝達部材23は、ネジ軸部材27の先端に一体的に設けられている。このため、ナット部材26の回転運動をネジ軸部材27の直線運動に確実に変換することができる。
【0050】
なお、上述の実施形態においては、アンカーブロック17には、駆動部20のケース24をボルトにより着脱可能に装着する装着部171cを設ける構成としたが、装着部171cを設けずに連結部17に駆動部20のケース24をボルトにより着脱可能に装着する構成としてもよい。
【0051】
また、運動伝達部材23におけるパーキングレバー13の側面13dとの当接面に凸状の円周面23aを形成したが、パーキングレバー13の側面13dにおける運動伝達部材23との当接面に凸状の円周面を形成しても同様の効果を奏する。また、運動伝達部材23とパーキングレバー13の側面13dとの当接面の一方に凸状の円周面を形成し、他方に該凸状の円周面の径と同一径もしくは大径の凹状の円周面を形成しても同様の効果を奏する。また、円周面に限定されるものではなく、例えば球面等の曲面を形成しても同様の効果を奏する。
【0052】
また、回転−直動変換機構22は、ナット部材26の軸線回りの回転運動をネジ軸部材27の軸線方向の直線運動に変換する機構としたが、ネジ軸部材27の軸線回りの回転運動をナット部材26の軸線方向の直線運動に変換する機構としてもよい。この機構の場合、運動伝達部材23は、例えば、ナット部材26から軸線方向に突出形成した部材の先端に一体的に設けるようにする。また、回転−直動変換機構22として、ラックとピニオンの機構を用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1・・・電動駐車ブレーキ装置、10・・・ドラムブレーキ、11a,11b・・・ブレーキシュー、12a,12b・・・ブレーキライニング、13・・・パーキングレバー、14・・・連結部材、15・・・バックプレート、151a・・・第1凹部、152a・・・第2凹部、152b・・・第2凹部の底部、16・・・ブレーキドラム、17・・・アンカーブロック、17a・・・固定部、17b・・・アンカー部、171b・・・切り欠き部、17c・・・連結部、171c・・・装着部、20・・・駆動部、21・・・モータ、22・・・回転−直動変換機構、23・・・運動伝達部材、24・・・ケース、26・・・ナット部材、27・・・ネジ軸部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面(15d)が車体側の取付部に固定されるバックプレート(15)と、
該バックプレート(15)の内面(15c)の側にあって回転軸線(R)回りに回転可能に配設されるブレーキドラム(16)に摩擦係合可能なブレーキライニング(12a,12b)を夫々有し、前記バックプレート(15)に回動可能に支承される一対のブレーキシュー(11a,11b)と、
前記バックプレート(15)に固定される固定部(17a)と、前記一対のブレーキシュー(11a,11b)の一端部を支承するアンカー部(17b)とが設けられたアンカーブロック(17)と、
一方の前記ブレーキシュー(11a)に一端が回動可能に支承され、他方の前記ブレーキシュー(11b)との間に連結部材(14)が介挿され、回動することにより前記一対のブレーキシュー(11a,11b)を前記アンカーブロック(17)に支承された一端部を支点として前記ブレーキドラム(16)側に拡開させて前記一対のブレーキライニング(12a,12b)を前記ブレーキドラム(16)に摩擦係合させるパーキングレバー(13)と、
回転運動を直線運動に変換する変換機構(22)を介して互いに嵌合する回転部材(26)と軸動部材(27)とがケース(24)に支承され、前記軸動部材(27)が回転を規制され前記パーキングレバー(13)の他端に連結され、前記回転部材(26)がモータ(21)によって回転駆動されることにより前記軸動部材(27)が軸動して前記パーキングレバー(13)を回動する駆動部(20)と、を備えた電動駐車ブレーキ装置(1)にして、
前記アンカーブロック(17)は、両端部分を逆方向に突設した板状部材で形成され、前記両端部分の一端部分が前記回転軸線(R)と直角方向に延在して前記固定部(17a)をなし、他端部分が前記アンカー部(17b)をなし、前記両端部分を連結する中間部分が前記駆動部(20)が装着される連結部(17c)として形成されている電動駐車ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記アンカー部(17b)には、前記駆動部(20)を前記連結部(17c)に着脱するために前記駆動部(20)の少なくとも一部の挿通を許容する切り欠き部(171b)が設けられている電動駐車ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記バックプレート(15)には、前記外面(15d)側へ凹む第1凹部(151a)および該第1凹部(151a)よりも浅く前記外面(15d)側へ凹む第2凹部(152a)が設けられ、
前記連結部(17c)に装着された前記駆動部(20)の少なくとも一部が、前記第1凹部(151a)内に収容され、前記固定部(17a)が、前記第2凹部(152a)の底部(152b)に固定される電動駐車ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記駆動部(20)のケース(24)を着脱可能に装着する装着部(171c)が前記連結部(17c)に突設されている電動駐車ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記アンカーブロック(17)は、前記板状部材をプレス成形することにより形成される電動駐車ブレーキ装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記駆動部(20)のケース(24)を着脱可能に装着する装着部(171c)が前記連結部(17c)にプレス成形により一体で突設されている電動駐車ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92186(P2013−92186A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233877(P2011−233877)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】