説明

電圧印加装置、超音波観測装置及び内視鏡処理装置

【課題】超音波内視鏡の静電容量型超音波トランスデューサに備えられた帯電部材の帯電量を、使用時において所定の値以上に保つための、電圧印加装置、超音波観測装置及び内視鏡処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の電圧印加装置は、超音波内視鏡の超音波振動子と電気的に接続可能に構成された接続部と、前記接続部に接続された前記超音波内視鏡の前記超音波振動子が、静電容量型超音波トランスデューサであるか否かを判定する判定部と、前記超音波振動子が静電容量型超音波トランスデューサである場合に、前記接続部を介して前記超音波振動子に直流電圧を印加する印加部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型超音波振動子を備える超音波内視鏡に着脱可能な電圧印加装置、超音波観測装置及び内視鏡処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体等の被検体内において超音波断層像を取得する超音波内視鏡に設けられる超音波振動子の一例として、静電容量型超音波トランスデューサ(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer;以下、c−MUTと記す)が知られている。c−MUTは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
c−MUTの動作にはDCバイアス電圧の印加が必要である。例えば特許文献1は、c−MUTに帯電可能な浮遊電極を設けることによって内部においてDCバイアス電圧を発生させ、外部からのDCバイアス電圧の印加を不要または低減する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−272824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような、DCバイアス電圧源として帯電部材を内包するc−MUTにおいては、帯電部材の帯電量の変化によってDCバイアス電圧が変化し、感度が変動する可能性がある。例えば、帯電部材の帯電量が低下すれば、c−MUTの感度が低下してしまう。したがって、帯電部材を備えるc−MUTを有する超音波内視鏡は、帯電部材の帯電量が所定の値以上に保たれた状態で使用されることが好ましい。
【0006】
本発明は、超音波内視鏡のc−MUTに備えられた帯電部材の帯電量を、使用時において所定の値以上に保つための、電圧印加装置、超音波観測装置及び内視鏡処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電圧印加装置は、超音波内視鏡の超音波振動子と電気的に接続可能に構成された接続部と、前記接続部に接続された前記超音波内視鏡の前記超音波振動子が、静電容量型超音波トランスデューサであるか否かを判定する判定部と、前記超音波振動子が静電容量型超音波トランスデューサである場合に、前記接続部を介して前記超音波振動子に直流電圧を印加する印加部と、前記印加部が前記超音波振動子に直流電圧を印加している状態であることを報知する報知部とを備える。また、本発明の内視鏡処理装置は、前記電圧印加装置を備える。
【0008】
また、本発明の超音波観測装置は、超音波内視鏡が着脱可能であって、前記超音波内視鏡の超音波振動子と電気的に接続可能に構成された接続部と、前記接続部を介して前記超音波振動子に駆動信号を送信する送信部と、前記接続部を介して前記超音波振動子から出力される受信信号を受信する受信部と、前記超音波振動子が、静電容量型超音波トランスデューサであるか否かを判定する判定部と、前記超音波振動子が静電容量型超音波トランスデューサである場合に、前記接続部を介して前記超音波振動子に直流電圧を印加する印加部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超音波内視鏡のc−MUTに備えられた帯電部材の帯電量を、使用時において所定の値以上に保つことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の電圧印加装置の構成を説明する図である。
【図2】静電容量型超音波トランスデューサの構成を説明する断面図である。
【図3】第1の実施形態の電圧印加装置のフローチャートである。
【図4】第2の実施形態の超音波観測装置の構成を説明する図である。
【図5】第2の実施形態の超音波観測装置における電圧印加処理のフローチャートである。
【図6】第3の実施形態の超音波観測装置における電圧印加処理のフローチャートである。
【図7】第4の実施形態の内視鏡処理装置の構成を説明する図である。
【図8】第5の実施形態の超音波振動子の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0012】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の実施形態の一例を説明する。図1は、本実施形態の電圧印加装置1の概略的な構成を示す図である。電圧印加装置1は、接続部2、判定部3、印加部4、報知部5及び制御部6を含んで構成されている。電圧印加装置1は、接続部2を介して、超音波内視鏡101と電気的に接続可能に構成されている。
【0013】
まず以下では、電圧印加装置1に電気的に接続可能な超音波内視鏡101の概略的な構成の一例を説明する。超音波内視鏡101は、人体等の被検体内に導入可能であって被検体内の所定の観察部位の超音波断層像を取得する構成を有する。なお、内視鏡101が導入される被検体は、人体に限らず、他の生体であってもよいし、機械や建造物等の人工物であってもよい。
【0014】
概略的には、超音波内視鏡101は、被検体の体内に導入される挿入部102と、挿入部102の基端に位置する操作部103と、操作部103の側部から延出するユニバーサルコード104とを具備して主に構成されている。
【0015】
挿入部102は、先端に配設される先端部120、先端部120の基端側に配設される湾曲自在な湾曲部108、及び湾曲部108の基端側に配設され操作部103の先端側に接続される可撓性を有する可撓管部109が連設されて構成されている。なお、超音波内視鏡101は、挿入部に可撓性を有する部位を具備しない、いわゆる硬性鏡と称される形態のものであってもよい。
【0016】
挿入部102の先端部120には、超音波振動子121が配設されている。超音波振動子121は、詳しくは後述するが、一般に静電容量型超音波トランスデューサ(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer;以下、c−MUTと記す)と称される形態を有している。
【0017】
また、挿入部102には、図示しないが、光学像を撮像するための撮像部や、撮像部の視野を照明するための照明光を出射する照明光出射部等が設けられている。操作部103には、湾曲部108の湾曲を操作するためのアングル操作ノブ111が設けられている。
【0018】
ユニバーサルコード104の基端部には図示しない外部装置である光源装置に接続される内視鏡コネクタ104aが設けられている。本実施形態の超音波内視鏡101は、ユニバーサルコード104、操作部103及び挿入部102に挿通された光ファイバーケーブルを具備しており、光源装置から発せられた照明光を、先端部120に設けられた照明光出射部から出射する。なお、超音波内視鏡101は、LED等の光源装置を先端部120に備える構成であってもよい。
【0019】
また、内視鏡コネクタ104aには、図示しない外部装置であるカメラ制御装置に接続されるビデオコネクタ104b、及び図示しない外部装置である超音波観測装置に接続される超音波コネクタ104cが設けられている。
【0020】
ビデオコネクタ104bは、先端部120に設けられた撮像部と、画像処理装置とを電気的に接続するためのものである。画像処理装置は、撮像部によって撮像された画像を画像表示装置に出力するための映像信号を生成する。
【0021】
超音波コネクタ104cは、先端部120に設けられた超音波振動子121と、超音波観測装置とを電気的に接続するためのものである。超音波コネクタ104cは、ユニバーサルコード104、操作部103及び挿入部102に挿通された電気ケーブル106を介して、超音波振動子121に電気的に接続されている。超音波観測装置は、超音波コネクタ104cを介して超音波振動子121に電気的に接続され、超音波振動子121を駆動する。
【0022】
なお、図1では、ビデオコネクタ104b及び超音波コネクタ104cは、内視鏡コネクタ104aから延出するケーブルの端部に設けられているが、ビデオコネクタ104b及び超音波コネクタ104cの少なくとも一方は、内視鏡コネクタ104aと一体に構成されていてもよい。例えば、内視鏡コネクタ104aと超音波コネクタ104cが一体に構成される場合には、超音波振動子121は、内視鏡コネクタ104aが接続された光源装置を介して超音波観測装置に電気的に接続される。
【0023】
超音波振動子121は、機械式走査または電子式走査により超音波ビームを送出し、かつ超音波を受信するためのものである。超音波振動子121による超音波ビームの走査の形態は、コンベックス走査、ラジアル走査、または3次元走査等が適用可能であり、特に限られるものではない。
【0024】
次に、c−MUTである超音波振動子121の構成について説明する。なお、c−MUTは公知の技術であるため、詳細な説明は省略するものとする。超音波振動子121は、1つ又は複数の超音波振動子セル130によって構成されている。図2は、超音波振動子121が、複数の超音波振動子セル130を有して構成されている場合の断面図である。
【0025】
本実施形態では一例として、超音波振動子セル130は、シリコン基板131上に配設された第1電極132と、第1電極132上に配設された第1絶縁膜136と、第1絶縁膜136上に所定の距離だけ離間して配設された第2絶縁膜137と、第2絶縁膜137上に配設された第2電極133と、を有して構成されている。言い換えれば、超音波振動子セル130は、空隙部134を挟んで第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137が配設されており、第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137のそれぞれの空隙部134とは反対側に、第1電極132及び第2電極133が配設されている。
【0026】
第1電極132及び第2電極133は、略平行に配設された金属等の導電性の材料からなる薄膜であり、例えばCu、Pt、Au、Ag、Ni、Ir、In、Ru、AlまたはTi等の金属またはこれらを含む合金、もしくは、MoまたはW等の高融点金属または高融点金属とシリコンの化合物である高融点金属シリサイドからなる。第1電極132及び第2電極133は、単一の材料からなる層によって構成される形態であってもよいし、複数の材料からなる層が積層される形態であってもよい。
【0027】
第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137は、酸化シリコンや窒化シリコン等の電気絶縁性の材料からなる。第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137は、同一の材料によって構成されるものであってもよいし、異なる材料によって構成されるものであってもよい。また、第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137は、それぞれが単層膜であってもよいし、多層膜であってもよい。本実施形態では一例として、第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137は、それぞれ、単層の窒化シリコン膜からなる。
【0028】
また、第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137は、それぞれの帯電容量が異なるように形成されている。第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電容量に差異を生じさせることは、例えば両者の厚さを異ならせる、両者の材料を異ならせる、もしくはこれらの組み合わせによって実現可能である。
【0029】
本実施形態では一例として、第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の厚さが異なっており、これにより第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電容量に差異が生じている。なお、第1絶縁膜136が第2絶縁膜137よりも厚い形態であってもよいし、第1絶縁膜136が第2絶縁膜137よりも薄い形態であってもよい。空隙部134は、犠牲層エッチングやウェハ接合等の公知の技術によって形成される。
【0030】
以上に説明した超音波振動子セル130においては、第2絶縁膜137及び第2電極133の空隙部134上に重なる領域が、振動膜140として機能する。また、第2電極133上には、電気絶縁性の保護膜138が配置されている。
【0031】
そして、超音波振動子セル130を有してなる超音波振動子121では、第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137がそれぞれ帯電している場合に、第1電極132及び第2電極133の間に電位差が生じる。すなわち、c−MUTである超音波振動子121は、帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137を備え、第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137は、双方が帯電している場合に、第1電極132及び第2電極133間にDCバイアス電圧を与える。
【0032】
このように、本実施形態のc−MUTである超音波振動子121は、DCバイアス電圧源となる帯電部材としての第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137を備えていることから、外部からのDCバイアス電圧の印加を不要とする、もしくは低減することができる。そして、帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137への帯電は、第1電極132及び第2電極133間に、所定の直流電圧を印加することにより実現可能である。
【0033】
本実施形態のように、外部からのDCバイアス電圧の印加を不要、もしくは低減することができる超音波振動子121は、駆動時の消費電力が低いため小型化が容易であり、超音波内視鏡101での使用に好適である。
【0034】
また、図示しないが、超音波内視鏡101に配設された超音波振動子121上には、被検体とのインピーダンスマッチングを行うための音響整合層や、超音波ビームを形成するための音響レンズが配設される。より詳細には、本実施形態のc−MUTである超音波振動子121は、直径が45nmの超音波振動子セル130を有して構成されている。本実施形態では、第1絶縁膜136は、LPCVD法によって成膜された厚さ100nmの窒化シリコン膜であり、第2絶縁膜137は、プラズマCVD法によって成膜された厚さ500nmの窒化シリコン膜である。第1電極132は、高温のプロセスに耐え得る厚さ500nmのモリブデン膜であり、第2電極133は、厚さ400nmのアルミニウム膜である。また、保護膜138は、LPCVD法によって成膜された厚さ1μmの窒化シリコン膜である。また、本実施形態の超音波振動子121の帯電部材としての第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137に帯電させる処理は、約150Vの直流電圧を数十秒間印加することで実施している。以上のような本実施形態の超音波振動子121は、図示しない音響レンズを付与した場合のエコー波形が、中心周波数7.5MHzを示した。
【0035】
また、超音波内視鏡101には、識別符号部105が配設されている。識別符号部105は、少なくとも、超音波内視鏡101が備える超音波振動子がc−MUTであるか否かを外部装置が判定可能とするための符号を、表示または送出するためのものである。前記符号とは、超音波振動子がc−MUTであるか否かを直接的に表す二値の情報であってもよいし、超音波内視鏡101の製品名、型式、または各個体に付加された一意の文字列等の、超音波振動子がc−MUTであるか否かを間接的に判定可能な情報であってもよい。
【0036】
また、識別符号部105が前記符号を表示または送出する形態は特に限られるものではない。例えば、識別符号部105は、印刷や刻印された文字列、バーコードまたは2次元コード等の、外部装置が光学的に認識可能な表示であってもよい。また、識別符号部105は、前記符号を記憶したROMを備え、無線通信手段によって前記符号を送出する、RFID(Radio Frequency IDentification)タグのような形態であってもよい。また、識別符号部105は、例えば超音波コネクタ104cに接続される外部機器に設けられた複数の電気接点間の短絡の有無によって前記符号を表す形態であってもよい。なお、識別符号105は、例示したような複数の形態のものが併設されていてもよい。
【0037】
本実施形態では一例として、識別符号部105は、RFIDタグの形態を有しており、少なくとも超音波内視鏡101の型式を表す符号を送出するように構成されている。このようなRFIDタグは、一般に、超音波内視鏡101の使用履歴やメンテナンス履歴等のトレーサビリティの実現のために用いられる。
【0038】
次に、電圧印加装置1の各部の詳細な構成について説明する。前述したように、電圧印加装置1は、接続部2、判定部3、印加部4、報知部5及び制御部6を含んで構成されている。また、図示しないが、電圧印加装置1には、電源部が配設されている。電源部は、電圧印加装置1の各構成に電力を供給する構成を有している。電源部は、商用電源から電力を得て電圧印加装置1の各構成に電力を供給する構成であってもよいし、一次電池、二次電池又は発電装置を備えてなり、電圧印加装置1の各構成に電力を供給する構成であってもよい。
【0039】
制御部6は、演算装置(CPU)、記憶装置(RAM)、補助記憶装置、入出力装置及び電力制御装置等を具備して構成されており、電圧印加装置1の後述する動作を、所定のプログラムに基づいて制御する構成を有している。
【0040】
接続部2は、超音波内視鏡101が具備する超音波振動子121と電気的に接続可能に構成されている。接続部2の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では、接続部2は、超音波内視鏡101の超音波コネクタ104cと接続可能なコネクタの形態を有している。
【0041】
判定部3は、接続部2に接続された超音波内視鏡101が備える超音波振動子121がc−MUTであるか否かを判定する構成を有している。具体的に、本実施形態の判定部3は、超音波内視鏡101に設けられた識別符号部105が表す符号を認識し、この符号に基づいて、超音波振動子121がc−MUTであるか否かを判定することが可能な構成を有している。
【0042】
本実施形態では、超音波内視鏡101が備える識別符号部105がRFIDタグであることから、判定部3は、このRFIDタグから送出される符号を読み取る受信部を備える。そして、判定部3は、符号に含まれる超音波内視鏡101の型式の情報と、予め記憶している情報とに基づいて、超音波振動子121がc−MUTであるか否かを判定する。
【0043】
なお、判定部3の形態は本実施形態に限られるものではなく、超音波内視鏡101に設けられた識別符号部105の形態に応じて適宜に定められるものである。例えば、識別符号部105が2次元コードであれば、判定部3は、2次元コードを判読可能な2次元コードリーダを備えて構成される。また、識別符号部105が、例えば超音波内視鏡101の型式を表す文字列の刻印であれば、判定部3は、使用者が文字列を入力するためのキーボード等を備えて構成される。また、判定部3は、超音波振動子121がc−MUTであるか否かの二値の情報を、使用者が直接入力するスイッチを備える形態であってもよい。
【0044】
印加部4は、接続部2を介して超音波振動子121に電気的に接続可能であり、超音波振動子121に、所定の電圧の直流電圧を所定の時間印加する構成を有している。印加部4が、超音波振動子121に印加する直流電圧の電圧値及び印加時間は、超音波振動子121の帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電量がいかなる状態であっても帯電容量の最大値に達するように設定されている。
【0045】
後述するが、印加部4は、接続部2に超音波内視鏡101が接続されており、かつ判定部3によって超音波振動子121がc−MUTであると判定されている場合にのみ、超音波振動子121の第1電極132及び第2電極133間に直流電圧を印加することが可能なように構成されている。
【0046】
報知部5は、印加部4が超音波振動子121に直流電圧を印加している場合に、印加部4が動作中であることを周囲に報知する構成を有している。報知部5による報知の形態は特に限られるものではなく、音声によるものや、光の明滅によるもの、及び振動によるもの等が適用され得る。本実施形態では一例として、報知部5は、スピーカーを備え、印加部4が動作中である場合に、警報音を発するように構成されている。
【0047】
以上に説明した構成を有する電圧印加装置1は、制御部6による制御によって、図3に示すフローチャートにしたがった動作を繰り返す。電圧印加装置1は、ステップS01に示すように、接続部2に超音波内視鏡101の超音波コネクタ104cが接続された場合に、ステップS02以降の動作を実行するように構成されている。
【0048】
接続部2に超音波コネクタ104cが接続された場合には、ステップS02において、制御部6は、判定部3による判定の結果を参照する。判定部3が、接続部2に接続されている超音波内視鏡101の超音波振動子121がc−MUTであると判定した場合には、ステップS03へ移行する。
【0049】
ステップS03では、報知部5による報知を開始する。本実施形態では、報知部5から警報音を発する。そして、ステップS04において、印加部4によって、超音波振動子121に、所定の電圧の直流電圧を所定の時間印加する。この直流電圧の印加によって、超音波振動子121の帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電量は最大となる。印加部4による超音波振動子121への直流電圧の印加が終了した後に、ステップS05において、報知部5による報知を停止する。
【0050】
一方、判定部3が、接続部2に接続されている超音波内視鏡101の超音波振動子121がc−MUTではないと判定した場合には、一旦動作を終了し、再びステップS01の動作を開始する。
【0051】
以上のように、本実施形態の電圧印加装置1は、c−MUTである超音波振動子121を備える超音波内視鏡101の接続を検知した場合に、超音波振動子121に備えられた帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電量が最大となるように、直流電圧を超音波振動子121に印加する。したがって、超音波内視鏡101を診断に使用する前、または後に電圧印加装置1に接続することによって、超音波振動子121の帯電部材の帯電量を所定の値以上とすることができる。また、本実施形態の電圧印加装置1では、電圧印加処理の実施中に報知部5による報知が行われることから、直流電圧を印加する電圧印加処理を、安全に実施することができる。
【0052】
なお、本実施形態の電圧印加装置1は、超音波内視鏡101の外部装置の形態を有しているが、電圧印加装置1は超音波内視鏡101内に配設される形態であってもよい。例えば、超音波内視鏡101が二次電池等の電源を内蔵する可搬型のものであれば、電圧印加装置1は、超音波内視鏡101に内蔵された電源から電力を得て、超音波振動子121の帯電部材を帯電させることが可能である。このように、超音波内視鏡101が電圧印加装置1を備える場合には、図3に示す動作は、超音波内視鏡101の電源投入時に行われ、診断や観察を開始する前に電圧印加処理は終了する。そのため、超音波内視鏡101を用いた診断や観察時における、DCバイアス電圧の印加を不要または低減することが可能となる。
【0053】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0054】
図4に示すように、本実施形態の超音波観測装置20は、電圧印加装置1a、送信部21、受信部22、信号処理部23及び映像信号生成部24を含んで構成されている。超音波観測装置20は、超音波内視鏡101の超音波振動子121を駆動し、超音波振動子121からの受信信号に基づいて、超音波断層像として表示するための映像信号を生成する装置である。
【0055】
超音波観測装置20における超音波振動子121を駆動するための構成や超音波断層像を生成するための構成は公知のものと同等であるため、その詳細な説明は省略するものとする。
【0056】
送信部21は、接続部2を介して超音波振動子121に電気的に接続可能であり、超音波振動子121によって超音波を送信するための所定の波形の送信信号を出力する構成を有している。送信部21による送信信号の出力タイミング、波形及び強度は、制御部6によって制御される。
【0057】
受信部22は、接続部2を介して超音波振動子121に電気的に接続可能であり、超音波振動子121が受信した超音波に応じて出力する受信信号を受信し増幅する構成を有している。信号処理部23及び映像信号生成部24は、受信部22によって受信された受信信号に所定の処理を施し、超音波断層像となる映像信号を生成し、映像信号を画像表示装置30または画像処理装置等に出力する。
【0058】
電圧印加部1aの構成は、第1の実施形態の電圧印加部1とほぼ同等であるが、制御部6による制御の詳細が異なる。以下に、制御部6によって制御される本実施形態の超音波観測装置20の動作について説明する。
【0059】
超音波観測装置20は、接続された超音波内視鏡101の超音波振動子121を駆動して超音波断層像を取得し生成する動作が主な動作である。この超音波断層像を取得し生成する動作に関しては、従来の超音波観測装置と同等であるので、説明は省略するものとする。
【0060】
超音波観測装置20は、さらに図5に示す電圧印加処理を実行する。電圧印加処理は、ステップS11に示すように、接続部2への超音波コネクタ104cの接続を検出した場合に、ステップS12以降の動作を1度実行する。すなわち、超音波観測装置20に超音波内視鏡101が接続された際に1度だけ電圧印加処理が行われるのであり、以降、超音波内視鏡101が超音波観測装置20から取り外されるまで電圧印加処理の実行は禁止される。超音波内視鏡101が超音波観測装置20から取り外されたことを検出した場合には、再び電圧印加処理の実行が可能となる。
【0061】
ステップS12では、制御部6は、判定部3による判定の結果を参照する。判定部3が、接続部2に接続されている超音波内視鏡101の超音波振動子121がc−MUTであると判定した場合には、ステップS13へ移行する。一方、判定部3が超音波振動子121はc−MUTではないと判定した場合には、電圧印加処理を終了する。
【0062】
ステップS13では、制御部6は、送信部21の動作を禁止する。このステップS13の実行によって、超音波振動子121への送信信号の出力が禁止されるため、超音波観測装置20に接続された超音波内視鏡101による超音波断層像を取得し生成する動作が禁止される。すなわち、超音波内視鏡101による診断が不可能となる。
【0063】
次に、ステップS14では、報知部5による報知を開始する。本実施形態では、報知部5から警報音を発する。そして、ステップS15において、印加部4によって、超音波振動子121に、所定の電圧の直流電圧を所定の時間印加する。この直流電圧の印加によって、超音波振動子121の帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電量は、c−MUTである超音波振動子121を駆動するためのDCバイアス電圧源として必要な値となる。
【0064】
印加部4による超音波振動子121への直流電圧の印加が終了した後に、ステップS16において、報知部5による報知を停止する。そして、ステップS17において、送信部21の動作禁止を解除する。ステップS17の実行によって、超音波振動子121への送信信号の出力が可能となり、超音波観測装置20に接続された超音波内視鏡101による超音波断層像を取得し生成する動作が可能となる。以上で、電圧印加処理は終了する。
【0065】
以上に説明したように、本実施形態の超音波観測装置20は、超音波内視鏡101の超音波コネクタ104cが接続部2に接続された時点で、超音波振動子121に備えられた帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電量が最大となるように、直流電圧を超音波振動子121に印加する。超音波内視鏡101を超音波観測装置20に接続するのは、超音波内視鏡101による診断を行う直前であることから、本実施形態の超音波観測装置20によれば、超音波内視鏡101による診断の開始時に、必ず超音波振動子121の帯電部材の帯電量を所定の値以上とすることができる。
【0066】
また、超音波内視鏡101を超音波観測装置20に接続する操作は、超音波内視鏡101の挿入部102を被検体内に導入する前に行われる操作である。そして、本実施形態においては、電圧印加処理は、超音波内視鏡101が超音波観測装置20から取り外されるまでの期間中に、1回のみの実行が許可されている。したがって、本実施形態の超音波観測装置20による電圧印加処理は、挿入部102及び超音波振動子121が被検体の外部にある状態で必ず行われる。言い換えれば、挿入部102及び超音波振動子121が被検体内に導入されている状態では、電圧印加処理は実行されない。よって、直流電圧を印加する電圧印加処理を、安全に実施することができる。
【0067】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態を説明する。以下では第2の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第2の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0068】
本実施形態の超音波観測装置20は、接続部2に接続されている超音波内視鏡101の超音波振動子121が有する帯電部材の帯電量を検知する検知部を有している。検知部の構成は、c−MUTである超音波振動子121の帯電部材の帯電量を定量的に検知可能な構成であれば、特に限定されるものではない。
【0069】
本実施形態では一例として、検知部は、超音波振動子121から所定の強度の超音波を送信し、超音波振動子121上に配置された音響レンズの表面によって反射されて受信した信号の強度に基づいて、帯電部材の帯電量を検知する。前述したように、電圧印加処理は、超音波内視鏡101の挿入部102を被検体内に導入する前に行われる。したがって、音響レンズの表面は、空気によって覆われている。音響レンズと空気との界面は、両者の音響インピーダンスの差が大きいことから、超音波の反射率が高いため、後述する帯電部材の帯電量の検知方法に用いやすい。
【0070】
具体的に、検知部は、所定の電圧及び所定のパルス幅の送信信号を送信部から出力し、超音波振動子121を駆動する。そして検知部は、この送信信号に応じて超音波振動子121から送信される超音波が音響レンズの表面によって反射されたことによる受信信号の強度を受信部22及び信号処理部23において検出し、受信信号の強度が所定の値未満であれば、超音波振動子121の帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電量が所定の値未満であると判定する。判定に用いる受信信号が音響レンズによって反射されたものであることは、超音波の送信から受信までの時間によって判断する。
【0071】
この検知部による判定方法は、c−MUTの受信感度が、DCバイアス電圧の値に応じて変化することを根拠としている。例えば、帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電量が低ければ、DCバイアス電圧の値も低なり超音波振動子121の受信感度は低下する。なお、超音波振動子121の帯電部材の帯電量が所定の値未満であると判定するための、受信信号の強度の閾値は、例えば予め実験を行うことにより決定可能である。なお、本実施形態では、検知部は、音響レンズの表面(音響レンズと空気との界面)によって反射された超音波の受信信号の強度を用いて超音波振動子121の帯電部材の帯電量を検知する構成としているが、音響レンズの表面以外の音響整合層や空気等の他の物質の界面において反射された超音波の受信信号の強度を用いて帯電量を検知する構成であってもよい。
【0072】
以上に説明した、本実施形態の超音波観測装置20の検知部は、超音波振動子を駆動するための送信部21、受信部22及び信号処理部23と、受信信号の強度を所定の値と比較するための制御部6によって構成される。すなわち、検知部は、従来の超音波観測装置が備える構成に、新たに制御部6による制御動作を加えることによって実現可能である。
【0073】
以下に、以上に説明した検知部を備える本実施形態の超音波観測装置20による電圧印加処理の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
本実施形態の超音波観測装置20は、第2の実施形態と同様に、接続部2への超音波コネクタ104cの接続を検出した場合(ステップS21のYES)に、ステップS22以降の動作を1度だけ実行する。そして、1度電圧印加処理を行った超音波内視鏡101が超音波観測装置20から取り外されるまで、電圧印加処理の実行が禁止される。超音波内視鏡101が超音波観測装置20から取り外されたことを検出した場合には、電圧印加処理の実行を許可する。
【0075】
ステップS22では、制御部6は、判定部3による判定の結果を参照する。判定部3が、接続部2に接続されている超音波内視鏡101の超音波振動子121がc−MUTであると判定した場合には、ステップS23へ移行する。一方、判定部3が超音波振動子121はc−MUTではないと判定した場合には、電圧印加処理を終了する。
【0076】
ステップS23では、制御部6は、検知部による超音波振動子121の帯電部材の帯電量の検知動作を実行する。そして、検知部によって検知された超音波振動子121の帯電部材の帯電量が、所定の値未満である場合(ステップS24のYES)には、ステップS25へ移行する。一方、検知部によって検知された超音波振動子121の帯電部材の帯電量が、所定の値以上である場合(ステップS24のNO)には、電圧印加処理を終了する。
【0077】
ステップS25では、制御部6は、送信部21の動作を禁止する。このステップS25の実行によって、超音波振動子121への送信信号の出力が禁止されるため、超音波観測装置20に接続された超音波内視鏡101による超音波断層像を取得し生成する動作が禁止される。すなわち、超音波内視鏡101による診断が不可能となる。
【0078】
次に、ステップS26では、報知部5による報知を開始する。本実施形態では、報知部5から警報音を発する。そして、ステップS27において、印加部4によって、超音波振動子121に、所定の電圧の直流電圧を所定の時間印加する。この直流電圧の印加によって、超音波振動子121の帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電量は最大となる。
【0079】
印加部4による超音波振動子121への直流電圧の印加が終了した後に、ステップS28において、報知部5による報知を停止する。そして、ステップS29において、送信部21の動作禁止を解除する。ステップS29の実行によって、超音波振動子121への送信信号の出力が可能となり、超音波観測装置20に接続された超音波内視鏡101による超音波断層像を取得し生成する動作が可能となる。以上で、電圧印加処理は終了する。
【0080】
以上に説明したように、本実施形態の超音波観測装置20は、超音波内視鏡101の超音波コネクタ104cが接続部2に接続された時点で、超音波振動子121に備えられた帯電部材である第1絶縁膜136及び第2絶縁膜137の帯電量を検知し、帯電量が所定の値未満である場合に、直流電圧を超音波振動子121に印加する。超音波内視鏡101を超音波観測装置20に接続するのは、超音波内視鏡101による診断を行う直前であることから、本実施形態の超音波観測装置20によれば、超音波内視鏡101による診断の開始時に、必ず超音波振動子121の帯電部材の帯電量を所定の値以上とすることができる。
【0081】
また、超音波内視鏡101を超音波観測装置20に接続する操作は、超音波内視鏡101の挿入部102を被検体内に導入する前に行われる操作である。そして、本実施形態においては、電圧印加処理は、超音波内視鏡101が超音波観測装置20から取り外されるまでの期間中に、1回のみの実行が許可されている。したがって、本実施形態の超音波観測装置20による電圧印加処理は、挿入部102及び超音波振動子121が被検体の外部にある状態で必ず行われる。言い換えれば、挿入部102及び超音波振動子121が被検体内に導入されている状態では、電圧印加処理は実行されない。よって、直流電圧を印加する電圧印加処理を、安全に実施することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、検知部によって検知された超音波振動子121の帯電部材の帯電量が所定の値未満である場合に自動的に直流電圧を超音波振動子121に印加する形態であるが、直流電圧の超音波振動子121への印加動作を使用者からの指示入力を待って実行する形態であってもよい。この場合、検知部によって検知された帯電部材の帯電量が所定の値未満である場合には、使用者に対して電圧印加を行うように促す警告を報知部5によって発する。
【0083】
(第4の実施形態)
以下に、本発明の第4の実施形態を説明する。以下では第1の実施形態との相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0084】
図7に示すように、本実施形態の内視鏡処理装置40は、電圧印加装置1bを有して構成されている。内視鏡処理装置40は、使用後の超音波内視鏡101に対して、洗浄処理、消毒処理、滅菌処理及びすすぎ処理のうちの1つまたは複数の処理を施す装置である。
【0085】
内視鏡処理装置40における、超音波内視鏡101に対する処理を実施するための構成は公知のものと同等であるため、その詳細な説明は省略するものとする。
【0086】
本実施形態では一例として、内視鏡処理装置40は、処理槽41、薬液貯留部43、及びポンプ44等を有して構成されている。処理槽41は、内部に超音波内視鏡101を収容可能である。本実施形態の内視鏡処理装置40は、処理槽41内において、薬液貯留部43に貯留されている薬液42や水道設備45から供給される水道水等の液体状の処理流体を用いて、超音波内視鏡101に対して洗浄処理、消毒処理、及びすすぎ処理を実施可能に構成されている。なお、薬液42は、処理の内容に応じて定められるものであり、例えば洗浄液及び消毒液のように、複数種類であってもよい。
【0087】
なお、内視鏡処理装置40が超音波内視鏡101に対して実施する処理の形態や、実施する処理の数は特に限られるものではない。内視鏡処理装置40は、超音波内視鏡に対して高温高圧の水蒸気を用いた滅菌処理を施す形態であってもよい。また、内視鏡処理装置40は、処理流体として気体及び液体を所定の比率で混合した気液二相流体を用いた洗浄処理を施す形態であってもよい。
【0088】
また、内視鏡処理装置40は、処理の実施中に超音波内視鏡101の内視鏡コネクタ104a、ビデオコネクタ104b及び超音波コネクタ104cに被せるためのコネクタキャップ46a、46b及び46cを備えている。コネクタキャップ46a、46b及び46cは、超音波内視鏡101への処理流体の浸入を防ぐために用いられる。
【0089】
内視鏡処理装置40が備える電圧印加部1bの構成は、第1の実施形態の電圧印加部1とほぼ同等であるが、接続部2が、超音波コネクタ104cに被せられるコネクタキャップ46cに設けられている点が異なる。
【0090】
コネクタキャップ46cに接続部2が設けられていることにより、内視鏡処理装置40を用いて超音波内視鏡101に対して処理を実施する際には、必ず接続部2が超音波コネクタ104cと電気的に接続される。超音波内視鏡101は、使用後に内視鏡処理装置40によって処理を施されるものであることから、本実施形態の内視鏡処理装置40を用いれば、使用後の超音波内視鏡101は必ず電圧印加装置1bに接続され、超音波振動子121の帯電部材の帯電量が所定の値以上となる。
【0091】
(第5の実施形態)
c−MUTである超音波振動子121を、半導体製造工程を用いて製造する場合、超音波振動子121を駆動するために必要な信号増幅回路等の電子回路の一部または全部を、超音波振動子121と同一の基板上に、同一の半導体製造工程を用いて形成すれば、製造コストを低減することができ、望ましい。
【0092】
そこで、図8に示すように、c−MUTである超音波振動子121とMOSFET150を、同一のシリコン基板131上に形成したものを、第5の実施形態として説明する。MOSFET150は、例えば超音波振動子121の受信信号を増幅する信号増幅回路の一部を構成する。
【0093】
MOSFET150は、シリコン基板131に形成されたソース拡散層151及びドレイン拡散層152と、これらに接続されたソース電極153及びドレイン電極154と、シリコン基板131上のゲート領域に形成されたゲート酸化膜155及びゲート電極156を含んで構成されている。
【0094】
一方、超音波振動子121を構成する複数の超音波振動子セル130は、シリコン基板131上に形成されたフィールド酸化膜160上に形成されている。本実施形態においては、絶縁膜135の膜厚は、MOSFET150のゲート酸化膜155の膜厚よりも厚い。
【0095】
超音波振動子セル130は、フィールド酸化膜135上に形成された第1電極132と、第1電極132上に形成され、内部に空隙部134を有する窒化シリコンからなる絶縁膜139と、絶縁膜139上に形成された第2電極133と、を含んで構成されている。絶縁膜139は、空隙部134を挟んで第1電極132側の領域が第1絶縁膜136であり、第2電極133側の部分が第2絶縁膜137となる。
【0096】
そして、本実施形態では、超音波振動子セル130の第1電極132と、MOSFETのゲート電極156が、モリブデンまたはタングステン等の高融点金属、もしくは高融点金属とシリコンの化合物である高融点金属シリサイドからなり、同一の工程で形成される。
【0097】
また、超音波振動子セル130の第2電極133と、MOSFET150のソース電極153及びドレイン電極154が、アルミニウム、アルミニウム化合物、もしくは銅からなり、同一の行程で形成される。
【0098】
本実施形態のように、同一のシリコン基板131上にc−MUTである超音波振動子121とMOSFET150を半導体製造工程によって形成し、これらを構成する薄膜の一部を同一の行程において形成するようにすれば、製造コストを低減することが可能である。
【0099】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電圧印加装置、超音波観測装置及び内視鏡処理装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0100】
上述のように、本発明は、c−MUTを備える超音波内視鏡と共に用いられる機器に対して好適である。
【符号の説明】
【0101】
1 電圧印加装置、
1a 電圧印加装置、
1b 電圧印加装置、
2 接続部、
3 判定部、
3 印加部、
4 印加部、
5 報知部、
6 制御部、
20 超音波観測装置、
21 送信部、
22 受信部、
23 信号処理部、
24 映像信号生成部、
30 画像表示装置、
40 内視鏡処理装置、
41 処理槽、
42 薬液、
43 薬液貯留部、
44 ポンプ、
45 水道設備、
101 超音波内視鏡、
102 挿入部、
103 操作部、
104 ユニバーサルコード、
104a 内視鏡コネクタ、
104b ビデオコネクタ、
104c 超音波コネクタ、
105 識別符号部、
106 電気ケーブル、
108 湾曲部、
109 可撓管部、
111 アングル操作ノブ、
120 先端部、
121 超音波振動子、
130 超音波振動子セル、
131 シリコン基板、
132 第1電極、
133 第2電極、
134 空隙部、
135 フィールド酸化膜、
136 第1絶縁膜、
137 第2絶縁膜、
138 保護膜、
139 絶縁膜、
140 振動膜、
150 MOSFET、
151 ソース拡散層、
152 ドレイン拡散層、
153 ソース電極、
154 ドレイン電極、
155 ゲート酸化膜、
156 ゲート電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波内視鏡の超音波振動子と電気的に接続可能に構成された接続部と、
前記接続部に接続された前記超音波内視鏡の前記超音波振動子が、静電容量型超音波トランスデューサであるか否かを判定する判定部と、
前記超音波振動子が静電容量型超音波トランスデューサである場合に、前記接続部を介して前記超音波振動子に直流電圧を印加する印加部と、
前記印加部が前記超音波振動子に直流電圧を印加している状態であることを報知する報知部と
を備えることを特徴とする電圧印加装置。
【請求項2】
前記接続部は、前記超音波内視鏡と着脱可能に構成されており、
前記判定部及び前記印加部は、前記接続部への前記超音波内視鏡の接続が検出された際に動作することを特徴とする請求項1に記載の電圧印加装置。
【請求項3】
前記超音波振動子が備える帯電部材の帯電量を検知する検知部を備え、
前記印加部は、前記帯電量が所定の値未満である場合に、前記超音波振動子に直流電圧を印加することを特徴とする請求項1または2に記載の電圧印加装置。
【請求項4】
前記検知部は、
前記接続部を介して前記超音波振動子に駆動信号を送信する送信部と、
前記接続部を介して前記超音波振動子から出力される受信信号を受信する受信部と、
を備え、
前記受信信号の強度に基づいて、前記超音波振動子の帯電量を検知することを特徴とする請求項3に記載の電圧印加装置。
【請求項5】
超音波内視鏡が着脱可能であって、前記超音波内視鏡の超音波振動子と電気的に接続可能に構成された接続部と、
前記接続部を介して前記超音波振動子に駆動信号を送信する送信部と、
前記接続部を介して前記超音波振動子から出力される受信信号を受信する受信部と、
前記超音波振動子が、静電容量型超音波トランスデューサであるか否かを判定する判定部と、
前記超音波振動子が静電容量型超音波トランスデューサである場合に、前記接続部を介して前記超音波振動子に直流電圧を印加する印加部と、
を備えることを特徴とする超音波観測装置。
【請求項6】
前記印加部が前記超音波振動子に直流電圧を印加している状態である場合に、前記送信部の駆動を禁止する制御部を備えることを特徴とする請求項5に記載の超音波観測装置。
【請求項7】
前記超音波振動子が備える帯電部材の帯電量を検知する検知部を備え、
前記印加部は、前記帯電量が所定の値未満である場合に、前記超音波振動子に直流電圧を印加することを特徴とする請求項5または6に記載の超音波観測装置。
【請求項8】
前記検知部は、
前記受信信号の強度に基づいて、前記超音波振動子の帯電量を検知することを特徴とする請求項7に記載の超音波観測装置。
【請求項9】
前記印加部が前記超音波振動子に直流電圧を印加している状態であることを報知する報知部を備えることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の超音波観測装置。
【請求項10】
請求項2から4のいずれか一項に記載の電圧印加装置を備える内視鏡処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−106789(P2013−106789A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254118(P2011−254118)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】