説明

電圧検知端子の接続構造

【課題】簡易な方法により接続可能な電圧検知端子の接続構造を提供する。
【解決手段】電極端子20に接続されて単電池11の電圧を検知する電圧検知端子の接続構造において、単電池群10には、単電池11の並び方向に沿って配置されるとともに、単電池11の並び方向に延びて配される導電路32Bが形成された本体部31を有するFPC30が配される。FPC30には、電圧検知端子38と、導電路32Bの一方の端末から連なり電圧検知端子38に接続される検知用導電路34とを有するとともに、本体部31から一体的に延出された延出片36が設けられている。延出片36は、単電池11の並び方向に延びる形状をなすとともに、電圧検知端子38が電極端子20と電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検知端子の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車用の電池モジュールでは、出力を大きくするために多数の単電池が横並びに接続されている。隣り合う単電池の電極端子間はバスバーなどの接続部材で接続することにより複数の単電池が直列や並列に接続されるようになっている。ここで、複数の単電池を直列や並列に接続する場合、単電池間において電池電圧などの電池特性が不均一であると、電池の劣化や破損を招くという問題がある。
【0003】
そこで、一般的な電池モジュールは、各単電池間の電圧に異常が生じる前に充電、放電を中止することができるように、単電池の電圧を検知するための構造(電圧検知構造)を備えている。電圧検知構造は、例えば、単電池の電極端子に接続される電圧検知端子と、電池ECUと、電圧検知端子とECUとを接続する電圧検知線などから構成される。各単電池の電圧は、ECUにより検知され、過放電、過充電状態になる前に充電、放電を中止するようにしている。
【0004】
このような電圧検知構造を備える電池モジュールとしては、例えば、特許文献1に記載のものなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−124176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には、電圧検知線の端末の露出導体を圧着により接続した電圧検知端子を単電池の電極端子に挿通させて、電極端子に接続部材とともにナットで共締めする構成が提案されている(特許文献1の図1を参照)。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電池モジュールにおいては、接続部材や電圧検知端子を接続ユニットに配置する作業、接続部材や電圧検知端子を配置した接続ユニットを複数連結する作業、ならびに、電圧検知端子を接続部材とともに電極端子にナット締めなどにより取り付ける作業を行う必要があり、電圧検知端子の接続作業に手間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、簡易な方法により接続可能な電圧検知端子の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、1つのフレキシブルプリント基板(以下、FPCともいう)に、複数の電圧検知用の導電路を形成して、単電池群を構成する単電池に接続することを検討した。
しかしながら、単電池群は多数の単電池を並べて構成され、単電池の電極端子間には製造公差等が設定されているため、複数の単電池を並べてなる電池モジュールにおいては隣り合う単電池に形成された電極端子間のピッチがずれる場合がある。また、充放電による単電池の膨張収縮によって単電池の厚みがばらついて電極端子間のピッチがずれる場合もある。このように電極端子間のピッチのずれが生じると、電圧検知のための部材と単電池との電気的な接続に支障が生じて電圧検知ができなくなることが懸念される。
【0010】
そこで、さらなる検討の結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、正極および負極の電極端子を有する複数の単電池を並べて接続してなる単電池群の、前記電極端子に接続されて前記単電池の電圧を検知する電圧検知端子の接続構造であって、前記単電池群には、前記単電池の並び方向に沿って配置されるとともに、前記単電池の並び方向に延びて配される導電路が形成された本体部を有するフレキシブルプリント基板が配され、前記フレキシブルプリント基板には、前記電圧検知端子と、前記導電路の一方の端末から連なり前記電圧検知端子に接続される検知用導電路とを有するとともに、前記本体部から一体的に延出された延出片が設けられ、前記延出片は、前記単電池の並び方向に延びる形状をなすとともに、前記電圧検知端子が前記電極端子と電気的に接続されているところに特徴を有する。
【0011】
本発明においては、導電路を形成した本体部と、導電路の一方の端末から連なる検知用導電路および電圧検知端子とを有する延出片と、を一体的に設けたフレキシブルプリント基板を、単電池群に配置して、延出片を単電池の電極端子に接続するだけで、単電池群に電圧検知端子を接続することができる。したがって、本発明によれば、簡易な方法により接続可能な電圧検知端子の接続構造を提供することができる。
【0012】
また、本発明では、延出片が単電池の並び方向に延びる形状をなしているので、電極端子間のピッチのずれが生じたとしても、延出片によりずれを吸収することができるので、電圧検知端子と単電池との電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0013】
本発明は、以下の構成であってもよい。
前記単電池には、前記フレキシブルプリント基板の前記延出片を載置する延出片載置部が設けられていてもよい。
延出片は単電池の並び方向に延びる形状をなしているので、途中で折れ曲がることがあり、このような場合には電極端子との接続に支障を生じることが懸念される。そこで、上記のような構成とすると、フレキシブルプリント基板の延出片を延出片載置部に載置することができるので、折れ曲るのを防止することができる。また、上記のような構成とすると、延出片を所定位置に載置することができるので、延出片の位置決めが容易となる。
【0014】
前記正極および負極の電極端子は、電池本体から突出形成されるとともに、前記単電池の並び方向に撓み変形可能な金属板材から形成され、一方の極性の前記電極端子の先端には、隣り合う前記単電池の他方の極性の前記電極端子に接触可能な接続片部が設けられる一方、前記他方の極性の電極端子には前記接続片部を受け入れて挟みつけるとともに、前記フレキシブルプリント基板の前記延出片を受け入れて挟みつけるバネ部材が設けられ、前記フレキシブルプリント基板の前記延出片を前記バネ部材に挟持させることで、前記電圧検知端子が前記電極端子と接続される構成としてもよい。
このような構成とすると単電池間の接続にバスバーなどの接続部材が不要となり、そのうえ、フレキシブルプリント基板の延出片を電極端子に設けたバネ部材に挟持させるだけで、電圧検知端子と電極端子とが接続されるので、部品点数を減らすことができるとともに作業効率に優れる。
【0015】
前記バネ部材には、前記接続片部を挟持する挟持バネ部と、前記延出片を挟持する補助バネ部とが一体的に設けられていてもよい。このような構成とすると、さらに部品点数を減らすことができる。
【0016】
前記補助バネ部には、前記延出片を前記単電池の並び方向に沿って挿入可能な延出片挿入口が形成されていてもよい。このような構成とすると延出片を延出片挿入口に挿入して補助バネ部に挟持させるだけで、電圧検知端子と電極端子とを接続することができるので、作業効率が向上する。
【0017】
前記フレキシブルプリント基板には、隣り合う前記単電池の間に導入される導入片が前記本体部と一体的に設けられるとともに、前記本体部には、前記検知用導電路に接続される導電路以外の第2導電路が前記単電池の並び方向に延びて形成され、前記導入片には、前記第2導電路の一方の端末から連なる導入線部と、前記導入線部に実装されたサーミスタとが設けられ、前記導入片を隣り合う前記単電池の間に挿入することにより、前記サーミスタが前記単電池群に取り付けられるようになっていてもよい。
このような構成とすると、1つのフレキシブルプリント基板を単電池群に取り付けるだけで、電圧検知回路と温度制御用の回路の双方を接続することができるので、接続作業を簡素化できるうえに、部品点数を少なくすることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な方法により接続可能な電圧検知端子の接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の電池モジュールの斜視図
【図2】電池モジュールの平面図
【図3】隣り合う単電池の電極端子の接続状態を示す一部断面図
【図4】図2のA−A線における一部断面図
【図5】図4の一部拡大断面図
【図6】電池モジュールの一部平面図
【図7】図2のB−B線における一部断面図
【図8】単電池の正極端子の正面図
【図9】単電池群にフレキシブルプリント基板を取り付ける様子を説明する斜視図
【図10】フレキシブルプリント基板の一部拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
本発明の一実施形態を、図1ないし図10を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電池モジュールMの斜視図である。本実施形態の電池モジュールMは、電気自動車又はハイブリッド自動車等に搭載され、駆動用の電源として使用される。図1に示されるように、電池モジュールMは、単電池群10と、フレキシブルプリント基板30(以下FPC30ともいう)とを備える。以下では、図7の上方を上方、下方を下方として説明する。
【0021】
本実施形態において、単電池群10は、複数個(本実施形態では24個)の単電池11を一列に並べて直列に接続したものである。詳しくは、単電池群10を構成する単電池11は、電極端子20の延出方向が互いに異なっている2種類の単電池11A,11Bからなり、これら二種類の単電池11A,11Bを交互に配置して接続することにより単電池群10が構成される。
【0022】
単電池11Aは、扁平な直方体状の電池本体12と、この電池本体12の上面から上方に向けて突出した正負一対の電極端子20(20A,20B)とを備える。
【0023】
電池本体12内には、例えば周知のリチウムイオン電池を構成する電池要素(図示せず)が収容されており、その電池要素の正極側が電極端子20A,負極側が電極端子20Bに連なっている。
【0024】
単電池11A(図1の左端から2番目の単電池11Aを参照)の一対の電極端子20のうち、図1の手前側にある一方の電極端子20Aが正極側の電極端子20A(正極端子20A)であり、奥側にある他方の電極端子20Bが負極側の電極端子20B(負極端子20B)である。
【0025】
正極端子20Aと、負極端子20Bとは、共に単電池11の並び方向に撓み変形可能な薄板状の金属板材料から形成されている。正極端子20Aは、図1および図3に示すように、電池本体12の上面から上方に突出する立ち上がり部21Aと、立ち上がり部21Aの上端からL字状に折れ曲がって手前側(図示左側)に向かう平坦面部22Aと、平端部22Aの先端で先上がりに傾斜する操作部23とを備える。
【0026】
負極端子20Bは、図1および図3に示すように、単電池11の電池本体12の上面から上方に突出する立ち上がり部21Bと、立ち上がり部の上端からL字状に折れ曲がって奥側(図示右側)に向かう平坦面部22Bとを備える。負極端子20Bの平坦面部22Bは、隣り合う単電池11の正極端子20Aと電気的に接続される部分である(接続片部の一例)。
【0027】
負極端子20Bにおいては、平坦面部22Bが、図3に示すように、正極端子20Aの平坦面部22Aの下側に配されるように、折り曲げ位置が設定されている。
【0028】
電池本体12の上面の負極端子20Bと隣り合う位置には、図1に示すように、絶縁隔壁15が立設されている。この絶縁隔壁15は、負極端子20Bの横幅よりも広く設定され、隣り合う単電池11の異極性の電極端子20A,20B間に導電製材料からなる工具や部材等が落ち込むことによる短絡の発生を防止している。
【0029】
正極端子20Aにおける平坦面部22Aには、バネ部材24が取り付けられている。バネ部材24は、図8に示すように、負極端子20Bの平坦面部22Bを受け入れて挟み付ける挟持バネ部25と、FPC30の延出片36(詳細は後述する)を受け入れて挟みつける補助バネ部26と、が一体に設けられた部材である。バネ部材24は、正極端子20Aとは別体の例えばステンレス鋼等のばね性に優れた金属板材をプレス加工することにより形成されている。
【0030】
挟持バネ部25は、金属板材の一端部に板幅方向に延びるスリット25Aを形成して、当該金属板材の他端部がスリット25A側に向かうように回曲させて形成したものである。挟持バネ部25のスリット25Aには、正極端子20Aの操作部23が貫通されており、正極端子20Aの平坦面部22Aと挟持バネ部25のスリット25Aの下側の内周縁との間に、単電池11の並び方向に沿って負極端子20Bの平坦面部22Bを受け入れる挿入口25Bが形成されている。挿入口25Bに負極端子20Bの平坦面部22Bが挿入されると、挟持バネ部25の弾発力により、正極端子20Aの平坦面部22Aが電池本体12側(下側)に押さえつけられ、負極端子20Bの平坦面部22Bの上面に圧接される。
【0031】
補助バネ部26は、図6に示すように、挟持バネ部25の構成を幅方向に小さくしたような構成をなし、具体的には、正極端子20Aの操作部23と並んで設けられた補助操作部27を、補助バネ部26に設けた補助スリット26Aに貫通させてなる。補助バネ部26には、正極端子20Aの補助操作部27と補助スリット26Aの下側の内周縁との間に、FPC30の延出片36を受け入れる延出片挿入口26Bが形成されている。
挟持バネ部25と補助バネ部26とは、延出片挿入口26Bが開くのに連動して挿入口25Bが開くことがないよう、また、逆に挿入口25Bが開くのに連動して延出片挿入口26Bが開くことがないよう、スリット25Aと補助スリット26Aとの間を切り欠くこと(切欠部28)により隔てられている。
【0032】
正負一対の電極端子20の間には、FPC30を載置する合成樹脂製の基板載置部16が上方に突出して設けられている。基板載置部16はFPC30の本体部31が載置される本体載置部16Aと、FPC30の延出片36が載置される延出片載置部16Bとからなる。本体載置部16Aおよび延出片載置部16Bの高さは、補助バネ部26の延出片挿入口26Bの高さと概ね同じ高さとなるように設定されており、FPC30の延出片36を屈曲させずに延出片挿入口26Bに挿入することができるようになっている(図4、図5および図7を参照)。
【0033】
単電池11Bの基本的な構成は、上述した単電池11Aと同様であり、電池本体12と、正負一対の電極端子20A,20Bとを備える。ただし、単電池11Bと、単電池11Aとでは、各電極端子20A、20Bの平坦面部22A,22BのL字状に折れ曲がる向きが、逆になっている。
【0034】
隣り合う単電池11Aと単電池11Bの間には、絶縁樹脂製のセパレータ17が配置されている。セパレータ17の略中央部には、図7に示すように、FPC30の導入片33を挿入可能な導入片受入孔18が設けられている。
【0035】
単電池群10に取り付けられているFPC30は、詳細は図示しないが、例えばポリイミドフィルムや液晶状フィルム等からなる絶縁性のベースフィルムの片面または両面にプリント配線技術により複数の導電路32を形成し(図6、図9および図10を参照)、その導電路32の表面を保護フィルム(例えば、ポリイミド製フィルム)で覆った構造とされる。なお、図6及び図10では電圧検知回路を構成する導電路32B(第1導電路ともいう)のみを示しており、図9では温度制御回路を構成する導電路32A(第2導電路の一例)のみを示し、その他の図では導電路32の図示を省略している。
【0036】
FPC30は帯状(長尺状)の本体部31(FPC本体部31という)と、FPC本体部31の幅方向の端部から延出されている複数の延出片36と、FPC本体部31の略中央に設けられている2本の導入片33とを備える。
【0037】
FPC本体部31は、図2に示すように、基板載置部16の本体載置部16Aの上に載置され、単電池11の並び方向に沿って配置されている。FPC本体部31には、複数の電圧検知回路用の導電路32Bと、2本の温度制御回路用の導電路32Aとが、単電池11の並び方向に延びて形成されている(図6、図9および図10を参照)。
【0038】
導入片33は、FPC本体部31の幅方向の略中央部に方形状の切り込みを形成することにより設けられており、長方形状をなしている。2本の導入片33には、それぞれ、第2導電路32Aの一方の端末から連なる導入線部34が設けられている。各導入線部34にはチップタイプのNTCサーミスタ35が実装されている。各導入片33は隣り合う単電池11A,11B間に挿入されるようになっており、本実施形態では8個の単電池11ごとに1本の導入片33が挿入されている。単電池11間に挿入された導入片33はセパレータ17に設けた導入片受入孔18に受け入れられて収容されている(図7を参照)。
【0039】
第2導電路32Aの他方の端末は、図示しないECUに接続されている。サーミスタ35で得られた温度に関する情報は、導入線部34及び第2導電路32Aを通じてECUに取り込まれ、各単電池11の温度が検知されるようになっている。
【0040】
ここで、ECUは、マイクロコンピュータ、素子等が搭載されたものであって、単電池11の電圧・電流・温度等の検知、各単電池11の充放電コントロール等を行うための機能を備えた周知の構成のものである。
【0041】
さて、延出片36はFPC本体部31の長手方向に沿って延出されており、導入片33よりも短い長方形状をなしている(単電池の並び方向に延びる形状の一例)。延出片36はFPC本体部31の幅方向の2つの端部から、交互に、長手方向においてずらした位置に延出されている。これにより、延出片を1つの端縁から延出する構成とするよりも、材料採りを向上させることができる。延出片36は基板載置部16の延出片載置部16Bに載置される。
【0042】
延出片36には、図10に示すように、第1導電路32Bの一方の端末から連なって延出片36の端部に延びる検知用導電路37が形成されており、延出片36における検知用導電路37の端部においては、検知用導電路37を覆うフィルムの除去により、検知用導電路37が露出している。この検知用導電路37の端部の露出部分が電圧検知端子38として機能する。
【0043】
延出片36の電圧検知端子38は、正極端子20Aに取り付けられている補助バネ部26に挟みつけられることにより、電気的に接続されている。第1導電路32Bの他方の端末には、例えばECUなどが接続されている。電圧検知端子38で得られた電圧に関する情報は、検知用導電路37及び第1導電路32Bを通じて図示しないECUなどに取り込まれ、各単電池11の電圧が検知されるようになっている。
【0044】
次に、電池モジュールMの組み付け方法について説明する。
まず、単電池群10とFPC30をそれぞれ作製する。導電路32(第1導電路32B、第2導電路32A)、検知用導電路37、電圧検知端子38、導入線部34、を形成するとともに、複数の延出片36および導入片33を形成した所定形状のFPC30に、サーミスタ35、電子部品などを実装・接続し、本実施形態のFPC30を作製する。
【0045】
次に、単電池群10の組み付け方法について説明する。単電池群10は、2種類の単電池11(11A,11B)を合計24個用いて、電極端子20A,20Bの極性を交互に逆にした状態で同一平面上に横並びにする。このとき、単電池11Aの電極端子20Aと、単電池11Bの電極端子20Bとが対向する状態となるようにし隣り合う単電池11A,11Bの間にセパレータ17を配置する。
【0046】
次に、単電池11Aと単電池11Bとを単電池11の並び方向に近づけると、負極端子20Bの平坦面部22Bと正極端子20Aの挿入口25Bとが対向する位置に配されて、平坦面部22Bは電極端子20Aの操作部23にガイドされて挿入口25Bに誘い込まれる。
【0047】
さらに、単電池11Aと単電池11Bとを近づけて、平坦面部22Bを挿入口32に挿入すると、バネ部材24が弾性復帰し、負極端子20Bの平坦面部22Bと正極端子20Aの平坦面部22Aとがバネ部材24の弾発力により圧接される(図3を参照)。これにより、正極端子20Aに設けられた挟持バネ部に負極端子20Bの平坦面部22Bが挟み付けられた状態となり、一対の単電池11A,11Bの組み付けが完了する。このような作業を繰り返し、24個の単電池11(11A,11B)を順次組み付けると、単電池群10の組み付けが完了し、各単電池11が導通可能に接続される。
【0048】
次に、単電池群10の上面に、FPC30を上方から組み付ける(図9を参照)。詳細には、図9における左から8個目の単電池11Aと左から9個目の単電池11Bとの間および、図9における右から8個目の単電池11Bと右から9個目の単電池11Aとの間に導入片33を導入すると、導入片33はセパレータ17に形成された導入片受入孔18に受け入れられ、これにより、サーミスタ35の取り付けが完了する。
【0049】
次に、FPC30の各延出片36を、それぞれ、補助バネ部26の延出片挿入口26Bに差し込むと、補助バネ部26が弾性変形して、延出片挿入口26Bが開き、FPC30の延出片36を受け入れ可能となる。さらに、FPC30の延出片36を延出片挿入口26Bに挿入すると、補助バネ部26が弾性復帰し、FPC30の延出片36と正極端子20Aの平坦面部22Aとがバネ部材24の弾発力により圧接される(図5を参照)。これにより、正極端子20Aに設けられた補助バネ部26にFPC30が挟み付けられた状態となり、延出片36に設けた電圧検知端子38と単電池11とが電気的に接続可能となる。FPC30の延出片36を全て補助バネ部26に挟みつけた状態とすると、電池モジュールMが完成する。
【0050】
本実施形態の作用および効果について説明する。
本実施形態においては、導電路32を形成したFPC本体部31と、導電路32Bの一方の端末から連なる検知用導電路34および電圧検知端子38を有する延出片36と、を一体的に設けたFPC30を、単電池群10に配置して、延出片36を単電池11の電極端子に接続するだけで、単電池群10に電圧検知端子38を接続することができる。したがって、実施形態によれば、簡易な方法により接続可能な電圧検知端子38の接続構造を提供することができる。
【0051】
ところで、複数の単電池11を並べてなる電池モジュールMにおいては、単電池11に設定されている製造公差や、充放電による単電池11の膨張収縮によって単電池11の厚みがばらついて電極端子20間のピッチのずれが発生する場合がある。しかしながら、本実施形態によれば、延出片36が単電池11の並び方向に延びる形状をなしているので、電極端子20間のピッチのずれが生じたとしても、延出片36によりずれを吸収することができ、電圧検知端子38と単電池11との電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、単電池11には、FPC30の延出片36を載置する延出片載置部16Bが設けられているから、延出片36を延出片載置部16Bに載置することができるので、折れ曲りを防止することができるうえに、延出片36を所定位置に載置することができるので、延出片36の位置決めが容易となる。
【0053】
また、本実施形態において、正極端子20Aおよび負極端子20Bは、電池本体12から突出形成されるとともに、単電池11の並び方向に撓み変形可能な金属板材から形成され、負極端子20Bの先端には、隣り合う単電池11の正極端子20Aに接触可能な平坦面部22B(接続片部)が設けられる一方、正極端子20Aには平坦面部22Bを受け入れて挟みつけるとともに、FPC30の延出片36を受け入れて挟みつけるバネ部材24が設けられ、延出片36をバネ部材24に挟持させることで、電圧検知端子38が電極端子20と接続される構成となっている。その結果、本実施形態によれば、単電池11間の接続にバスバーなどの接続部材が不要となり、そのうえ、FPC30の延出片36を、正極端子20Aに設けたバネ部材24に挟持させるだけで、電圧検知端子38と電極端子20とが接続されるので、部品点数を減らすことができるとともに作業効率に優れる。
【0054】
特に、本実施形態では、バネ部材24には、平坦面部22Bを挟持する挟持バネ部25と、延出片36を挟持する補助バネ部26とが一体的に設けられているから、さらに部品点数を減らすことができる。
【0055】
さらに、本実施形態によれば、補助バネ部26には、延出片36を単電池11の並び方向に沿って挿入可能な延出片挿入口26Bが形成されているから、延出片36を延出片挿入口26Bに挿入して補助バネ部26に挟持させるだけで、電圧検知端子38と電極端子20とを接続することができるので、作業効率が向上する。
【0056】
加えて、本実施形態においては、FPC30には、隣り合う単電池11の間に導入される導入片33がFPC本体部31と一体的に設けられるとともに、FPC本体部31には、第1導電路32B以外の第2導電路32Aが形成され、導入片33には、第2導電路32Aの一方の端末から連なる導入線部34と、導入線部34に実装されたサーミスタ35とが設けられ、導入片33を隣り合う単電池11の間に挿入することにより、サーミスタ35が単電池群10に取り付けられるようになっている。その結果、本実施形態によれば、1つのFPC30を単電池群10に取り付けるだけで、電圧検知回路と温度制御用の回路の双方を接続することができるので、接続作業を簡素化できるうえに、部品点数を少なくすることもできる。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、延出片載置部16Bを備える単電池11を示したが、延出片載置部16Bを備えないものであってもよい。
(2)上記実施形態では、バスバーなどの接続部材を用いずに電極端子20同士を直接接続するタイプの単電池11を示したが、本発明は、これに限定されない。例えばボルト状の電極端子を有する単電池の電極端子に、FPCの延出片に設けた電圧検知端子を挿通させて、接続してもよい。
(3)上記実施形態では、挟持バネ部25と補助バネ部26とが一体になったバネ部材24を備えるものを示したが、挟持バネ部と補助バネ部とは別体であってもよい。
(4)上記実施形態では、補助バネ部26に延出片挿入口26Bが形成されているものを示したが、挟持バネ部に延出片と接続片部とをともに挿通可能な挿通口を設けてもよい。
(5)上記実施形態では単電池11間にセパレータ17が配される構成のものを示したが、セパレータを備えないものであってもよい。
(6)上記実施形態では、電圧検知回路と温度制御回路とを備えるFPC30を示したが、電圧検知回路のみを備えるFPCであってもよい。
(7)上記実施形態では、電圧検知端子を検知用導電路37の端部において、検知用導電路37を露出させることにより設けたが、検知用導電路の端部に導電性の金具を接続して電圧検知端子を構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
M…電池モジュール
10…単電池群
11…単電池
11A…単電池
11B…単電池
12…電池本体
16…基板載置部
16A…本体載置部
16B…延出片載置部
20…電極端子
20A…正極の電極端子(正極端子)
20B…負極の電極端子(負極端子)
22A…(正極端子側の)平坦面部
22B…(負極端子側の)平坦面部(接続片部)
24…バネ部材
25…挟持バネ部
25B…挿入口
26…補助バネ部
26B…延出片挿入口
30…FPC(フレキシブルプリント基板)
31…FPC本体部(本体部)
32…導電路
32A…温度制御回路用の導電路(第2導電路)
32B…(電圧検知回路用の)導電路(第1導電路)
33…導入片
34…導入線部
35…サーミスタ
36…延出片
37…検知用導電路
38…電圧検知端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極の電極端子を有する複数の単電池を並べて接続してなる単電池群の、前記電極端子に接続されて前記単電池の電圧を検知する電圧検知端子の接続構造であって、
前記単電池群には、前記単電池の並び方向に沿って配置されるとともに、前記単電池の並び方向に延びて配される導電路が形成された本体部を有するフレキシブルプリント基板が配され、
前記フレキシブルプリント基板には、前記電圧検知端子と、前記導電路の一方の端末から連なり前記電圧検知端子に接続される検知用導電路とを有するとともに、前記本体部から一体的に延出された延出片が設けられ、
前記延出片は、前記単電池の並び方向に延びる形状をなすとともに、前記電圧検知端子が前記電極端子と電気的に接続されていることを特徴とする電圧検知端子の接続構造。
【請求項2】
前記単電池には、前記フレキシブルプリント基板の前記延出片を載置する延出片載置部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電圧検知端子の取付構造。
【請求項3】
前記正極および負極の電極端子は、電池本体から突出形成されるとともに、前記単電池の並び方向に撓み変形可能な金属板材から形成され、
一方の極性の前記電極端子の先端には、隣り合う前記単電池の他方の極性の前記電極端子に接触可能な接続片部が設けられる一方、前記他方の極性の電極端子には前記接続片部を受け入れて挟みつけるとともに、前記フレキシブルプリント基板の前記延出片を受け入れて挟みつけるバネ部材が設けられ、
前記フレキシブルプリント基板の前記延出片を前記バネ部材に挟持させることで、前記電圧検知端子が前記電極端子と接続されることを特徴とする請求項1に記載の電圧検知端子の接続構造。
【請求項4】
前記バネ部材には、前記接続片部を挟持する挟持バネ部と、前記延出片を挟持する補助バネ部とが一体的に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電圧検知端子の接続構造。
【請求項5】
前記補助バネ部には、前記延出片を前記単電池の並び方向に沿って挿入可能な延出片挿入口が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の電圧検知端子の接続構造。
【請求項6】
前記フレキシブルプリント基板には、隣り合う前記単電池の間に導入される導入片が前記本体部と一体的に設けられるとともに、前記本体部には、前記検知用導電路に接続される導電路以外の第2導電路が前記単電池の並び方向に延びて形成され、
前記導入片には、前記第2導電路の一方の端末から連なる導入線部と、前記導入線部に実装されたサーミスタとが設けられ、前記導入片を隣り合う前記単電池の間に挿入することにより、前記サーミスタが前記単電池群に取り付けられるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電圧検知端子の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−98032(P2013−98032A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240198(P2011−240198)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】