説明

電圧機器用絶縁性粉体,絶縁処理方法,電圧機器

【課題】電圧機器の導電部位の絶縁処理において被覆工程,曲げ加工等の製造工程に起因する課題を解決し、地球環境保全に貢献すると共に該電圧機器の安全性,信頼性等を向上させる。
【解決手段】絶縁性高分子材料組成物を、目的とする被覆対象(電圧機器の絶縁性を要する導電部位)に被覆(流動浸漬法で被覆)できる程度に微紛化し、絶縁性粉体を得る。そして、流動浸漬法により、前記の被覆対象を予熱してから前記の絶縁性粉体中に浸漬し、該絶縁性粉体の溶融物を被覆対象に被覆する。前記の予熱温度は、絶縁性粉体の加工温度よりも20℃低い温度から、該絶縁性粉体が分解する温度までの範囲とする。前記の被覆物の厚さは、280μm〜450μm程度とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧機器用絶縁性粉体,絶縁処理方法,電圧機器に関するものであって、例えば筐体内に遮断器や断路器等の開閉機器を備えた電圧機器の絶縁処理に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば筐体内に遮断器や断路器等の開閉機器を備えた電圧機器(高電圧機器等)においては、社会の高度化・集中化に伴って大容量化,小型化が進み、安全性,信頼性(例えば、機械的物性(絶縁破壊電界特性等),電気的物性)等の向上も強く要求されている。例えば、電圧機器の導電部位においては、該電圧機器の小型化,安全性等の観点から、絶縁処理(絶縁材料による導電部位の被覆(モールド))が適宜施される。この絶縁処理としては、絶縁性高分子材料から成る熱収縮チューブ等の絶縁部材(チューブ状,シート状等の所望の形状に成形された絶縁体)で被覆する方法が知られている。
【0003】
前記の熱収縮チューブ等の絶縁部材による被覆方法においては、予め被覆対象(絶縁性を要する導電部位等)に曲げ加工が施されている場合、その後段の被覆工程が困難になってしまう恐れがある。また、該被覆工程の後段にて曲げ加工を施す場合、該絶縁部材の損傷を起こす恐れがある。したがって、前記の絶縁部材で被覆する方法を適用する場合には、前記の曲げ加工において少なからず制約されていた。
【0004】
絶縁性高分子材料としては、例えば使用目的に応じて熱可塑性樹脂(ポリエチレン等)や熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)等の石油由来物質を基材(出発物質)とするものが一般的に用いられてきたが、該石油由来物質を基材とする絶縁部材を処分する場合には地球環境保全の観点で種々の問題を引き起こす恐れがある。例えば、該絶縁部材を焼却処分する方法を適用すると種々の有害物質や二酸化炭素を大量に排出し、環境汚染,地球温暖化等の問題を引き起こす恐れがある点で懸念されている。一方、前記の絶縁部材を単に埋立て処理する方法を適用することもできるが、その埋立て処理に係る最終処分場は年々減少している傾向である。また、前記の絶縁部材を回収し再利用(リサイクル)する試みもあるが、多大な回収費用やエネルギー(再利用するための燃焼工程等のエネルギー)を要するため、十分には確立されておらず殆ど行われていない。例外的に、品質が比較的均一な絶縁部材(電圧機器に用いられているポリエチレンケーブル)のみを回収しサーマルエネルギーとして利用されているが、このサーマルエネルギーは燃焼処理工程を要するため、前記のように環境汚染,地球温暖化等の問題を招く恐れがある。
【0005】
近年においては、生物由来物質(生分解性樹脂等)を基材とする絶縁性高分子材料が注目され始めているが、比較的低温で溶融し易い物性であることから、所望の形状に固形化(シート状,ペレット状等に固形化)された組成物(以下、絶縁性高分子材料組成物と称する)が適用されている。例えば、前記の絶縁性高分子材料組成物を溶融し、目的とする被覆対象に応じた形状(シート状等)に成形(注型,加圧等により固形化)した絶縁部材(例えば、特許文献1,2)を適用する試みが種々行われている。しかしながら、前記の石油由来物質の場合と同様に、被覆工程,曲げ加工等に起因する種々の問題がある。
【特許文献1】特開2002−53699号公報
【特許文献2】特開2002−358829号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上示したようなことから、電圧機器の導電部位の絶縁処理において被覆工程,曲げ加工等の製造工程に起因する課題を解決し、地球環境保全に貢献すると共に該電圧機器の安全性,信頼性(例えば、電気的物性)等を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題に基づいてなされたものであり、電圧機器の導電部位の絶縁処理において、前記のような予め所望の形状に成形されたチューブ状,シート状等の絶縁部材を用いる技術とは全く異なり、地球環境保全に貢献できると共に製造工程に起因する課題を解決でき、該電圧機器の安全性,信頼性(例えば、電気的物性)等を向上させることが可能な電圧機器用絶縁性粉体,電圧機器の導電部位の絶縁処理方法,電圧機器を提供することにある。
【0008】
具体的に、請求項1記載の発明は、電圧機器用絶縁性粉体に係るものであって、アセチル化セルロース,ポリ乳酸,ポリブチレンサクシネート,ポリトリメチレンテレフタレート,エステル化澱粉,澱粉基ポリマー,キトサン基ポリマーのうち何れか一つ以上のバイオベースポリマー組成物を微紛化して得られ、パウダーコーティング法によって、電圧機器の導電部材のうち被絶縁処理部位の絶縁処理に用いられることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、絶縁処理方法であって、アセチル化セルロース,ポリ乳酸,ポリブチレンサクシネート,ポリトリメチレンテレフタレート,エステル化澱粉,澱粉基ポリマー,キトサン基ポリマーのうち何れか一つ以上のバイオベースポリマー組成物を微紛化して得られる絶縁性粉体を用い、パウダーコーティング法により、電圧機器の導電部位の被絶縁処理部位表面を予熱し、前記絶縁性粉体の溶融物を前記被絶縁処理部位に対して付着させ、厚さ280μm〜450μmの被覆物を形成することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記のバイオベースポリマーとしてポリ乳酸を用い、前記の被絶縁処理部位表面の予熱温度を120℃〜270℃の範囲内としたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、導電部材に被絶縁処理部位を有する電圧機器であって、前記の被絶縁処理部位が、請求項2または3記載発明により絶縁処理されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、被覆工程,曲げ加工等の製造工程に起因する問題を引き起こすことなく絶縁処理でき、電圧機器の安全性,信頼性(例えば、電気的物性)等を向上させることができると共に、地球環境保全に貢献することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態における電圧機器用絶縁性粉体,絶縁処理方法,電圧機器を図面等に基づいて詳細に説明する。
【0014】
本実施形態は、例えば電圧機器の導電部材のうち被絶縁処理部位の絶縁処理に係るものであって、単に石油由来物質や生物由来物質を基材とする絶縁部材に係るものとは異なり(例えば絶縁性高分子材料組成物を溶融し、所望の形状に固形化してチューブ状,シート状等に成形された絶縁部材に係るものとは異なり)、該生物由来物質を基材とする絶縁性高分子材料組成物を微紛化して得られる絶縁性粉体に係るものであり、パウダーコーティング法により絶縁処理できるようにしたものである。
【0015】
[絶縁性高分子材料組成物]
本実施形態に用いられる絶縁性高分子材料組成物としては、生物由来物質の種類,生成プロセス等によって種々のものを適用でき、例えばアセチル化セルロース,ポリ乳酸,ポリブチレンサクシネート,ポリトリメチレンテレフタレート,エステル化澱粉,澱粉基ポリマー,キトサン基ポリマー等に区分されるバイオベースポリマー組成物が挙げられる。
【0016】
[絶縁性粉体]
絶縁性粉体としては、該絶縁性粉体を用いてパウダーコーティング法により目的とする被覆対象(導電部材のうち被絶縁処理部位)に被覆物を形成できる程度に、微紛化したものを適用する。例えば、平均粒径が30μm〜300μm程度、望ましくは50μm〜250μm程度に微紛化されたものが挙げられる。なお、例えば平均粒径が比較的大きいものについては、除外、あるいは再度微紛化(パウダーコーティング法により被絶縁処理部位に対して被覆物を形成できる程度に微紛化)を行ってから適用しても良い。また、微紛化によって得られる絶縁性粉体の粒径,粉体形状は、微紛化に用いる装置の種類(機種,型式等)や微紛化時間等によって変化するものの、前記のようにパウダーコーティング法により目的とする被絶縁処理部位に対して被覆物を形成できる程度の範囲であれば良い。
【0017】
[微紛化に用いる装置]
微紛化に用いる装置においては、種々のミル装置を適用することができ、例えば回転,衝撃,振動等による装置が挙げられる。なお、ミル装置による微紛化の際に少なからず熱が発生し、該熱によって目的とする絶縁性粉体自体が意図しない溶融(融着)や劣化する恐れがある。このような場合には、ミル装置全体や一部(微紛化に係る部分)を冷却することが好ましく、微紛化前に前記の絶縁性高分子材料組成物自体を予め冷却(冷蔵庫,冷凍庫,液体窒素等を用いて冷却)しても良い。
【0018】
また、前記の絶縁性粉体における粉体同士の融着(自己融着)や接着を防止する方法としては、絶縁性高分子材料組成物の他にシリカや炭酸カルシウム等の無機粉体を配合してから微紛化する方法も考えられる。前記の無機粉体においては、目的とする絶縁性粉体の特性を損わない程度であれば適宜用いることができ、例えば平均粒径0.1μm〜20μmのものを0.1wt%〜10wt%添加する。
【0019】
[被覆方法]
前記のパウダーコーティング法においては、例えば流動浸漬法,静電塗装法が挙げられる。これら流動浸漬法,静電塗装法は、それぞれのプロセスは異なるものの、その目的(被覆),結果(被覆される程度)は同様である。
【0020】
前記の流動浸漬法の場合は、目的とする導電部材の被絶縁処理部位の表面を予め加熱(予熱)しておき、絶縁性粉体が充填された流動浸漬槽内に前記の導電部材(少なくとも、被絶縁処理部位)を浸漬することにより、前記の予熱によって絶縁性粉体を溶融し、その溶融物を被絶縁処理部位に付着させることにより、該溶融物による被覆物を形成(予熱された表面に形成)させる方法である。前記の流動浸漬槽においては、絶縁性粉体の大きさ(熱硬化性樹脂の場合はBステージ)と同等程度、または該絶縁性粉体の大きさ以下の形状の孔が側壁(底壁等)に複数個穿設された多孔性型の構造のものが適用され、例えば焼結,繊維クロス,機械加工によって得られるものが挙げられる。
【0021】
前記のように側壁に穿設された各孔から流動浸漬槽内に対し、空気,乾燥空気,窒素,乾燥窒素等の不活性気体を均等に噴出(大気圧下で噴出)することにより、該流動浸漬槽内の絶縁性粉体を流動させることができる。そして、前記のように流動する絶縁性粉体に対し、前記のように加熱された被覆対象を接触(流動浸漬槽内に浸漬して接触)させることにより、絶縁性粉体の溶融物が被覆対象に付着し被覆される。
【0022】
前記の不活性気体の流量においては、目的とする絶縁性粉体の粒径,分布,形状,密度等に応じて適宜設定し、例えば気体流量(cm3/分)を有効面積(流動浸漬槽のうち不活性気体が均一に噴出される領域の有効面積(cm2))で除した値の線速(cm/分)に基づいて設定する。例えば、0.5cm/分〜50cm/分(より好ましくは1cm/分〜20cm/分)程度に設定する。
【0023】
[導電部材(被絶縁処理部位)]
被覆対象である導電部材は、前記の絶縁性粉体の溶融物が付着し被覆されるものであれば種々の材質(銅,鉄,アルミニウム等),形状(円柱状,角柱状,線状,平板状,編線状等)のものを適用でき、例えば銅ブスバー等が挙げられる。前記の被覆対象部位にエッジ部が存在していても大きな問題はないが、該エッジ部を面取り加工(C面加工,R面加工)した場合には、該エッジカバー率が改善され絶縁性粉体の溶融物による被覆物厚さ(例えば、被覆膜厚さ)が十分となり、応力による該被覆物の亀裂等の危険性を低減することができるため好ましい。例えば、導電部材(例えば、ブスバー)が引抜き成型等により形成される場合には、前記のエッジ部をR面にしておくことが好ましい。なお、前記の危険性の低減度合いは、前記の面取り加工の程度によって異なるが、前記のようにたとえエッジ部が存在していても大きな問題は無いため、該面取り加工はコスト等を考慮して適宜行えば良い。
【0024】
導電部材のうち、例えば導電性を必要とする箇所(例えば電気的接続され得る箇所)や作業上の保持,位置決め等に係る箇所(位置決め用の孔等)は絶縁処理を必要としないため、適宜マスキングを行うことが好ましい。
【0025】
被絶縁処理部位表面の予熱温度は、該皮絶縁処理部位を流動浸漬槽内に浸漬した際に絶縁性粉体の溶融物が付着し被覆される温度範囲とし、絶縁性粉体の加工温度(軟化温度,溶融点,ガラス転移温度等)、該被絶縁処理部位自体の熱容量(比熱,比重,形状等による熱容量),放熱(冷却)特性、目的とする被覆物厚さに応じて適宜設定できるものである。例えば、絶縁性粉体の加工温度よりも20℃低い温度から、該絶縁性粉体が分解する温度までの範囲とする。好ましくは、絶縁性粉体の加工温度から、該加工温度よりも50℃高い温度までの範囲とする。
【0026】
流動浸漬槽に対する被絶縁処理部位の浸漬時間,浸漬位置(浸漬中の空間的位置,方向)は、前記の溶融物による被覆物厚さ,被絶縁処理部位の予熱温度,形状等に応じて設定することができ、該浸漬を複数回繰り返して行っても良い。
【0027】
なお、被絶縁処理部位の浸漬開始から一定の浸漬時間までの間において、溶融物による被覆物厚さは時間経過と共に厚くなるものの、該一定の浸漬時間以降においては、該被覆物厚さは一定あるいは不均一(表面状態が粗)になり易くなる。例えば、被絶縁処理部位の形状によっては、被覆物が定着し難い場合(例えば、剥離する場合)や重力により垂れ下がる場合があり、厚さが不均一になり易くなる。このような傾向は、予熱温度が低過ぎたり高過ぎても起こり得るものと思われ、浸漬時間,浸漬回数,浸漬位置,被絶縁処理部位の予熱温度等を適宜調整することが好ましい。
【実施例】
【0028】
次に、本実施形態における電圧機器用絶縁材料,絶縁処理方法,電圧機器の実施例を説明する。本実施例では、矩形平板状(長さ1200mm,幅40mm,厚さ5mm)の銅ブスバーの両端部側(それぞれの端部から長手方向に100mmの領域)をマスキングし、その銅ブスバーの中央部(マスキング領域以外)に対し絶縁性粉体を用いて流動浸漬法により種々の条件で絶縁処理して、下記表1に示すように種々の試料(絶縁性粉体の溶融物が付着し被覆された試料)S1〜S60,P1を得、それら各試料の電気的特性を調べた。
【0029】
まず、ポリ乳酸(ユニチカ社製のテラマックTE−8300)をミル装置(スパイラルミル)により微紛化して平均粒径30〜300μmの絶縁性粉体を得、その絶縁性粉体を流動浸漬槽(仲田コーティング社製)に投入した。次に、前記の浸漬槽内に不活性気体(窒素ガス)を噴出(流速5cm/分で噴出)して絶縁性粉体を流動させ、前記のマスキングされた銅ブスバー表面を120〜270℃の温度範囲で予熱してから該絶縁性粉体中に1回または2回浸漬(各浸漬時間は1〜20秒間)することにより、該絶縁性粉体の溶融物が付着し被覆された試料S1〜S60を得た。また、絶縁性粉体においてポリ乳酸の替わりにポリエチレンを用い、ミル装置により微紛化して平均粒径200μmの絶縁性粉体を得、前記の試料S1〜S60と同様の工程を経ることにより試料Pを得た。
【0030】
そして、前記の各試料S1〜S60,P1において、交流電圧を印加(マスキングにより溶融物が被覆されなかった両端部に印加)した場合の短時間貫通破壊電圧値(BDV値)を測定し、その測定結果をそれぞれ下記表1に示した。なお、下記表1中の記号「△」は被覆膜の表面が平滑でなかった場合または変色,発泡,膨張等により計測できなかった場合を示し、記号「―」はBDV値が測定されなかった場合を示すものとする。
【0031】
【表1】

【0032】
前記表1に示す結果から、予熱温度が120℃〜270℃の範囲内であれば、浸漬時間,浸漬回数,浸漬位置等を適宜設定、例えば試料S6,S8,S9,S14〜S17,S19,S23〜S30,S32〜S48,S51〜S55のように設定(特に、予熱が比較的低い場合(120℃)または高い温度の場合(270℃))することにより、厚さ280μm〜450μm程度の被覆膜が形成され、試料Pと比較して同等以上のBDV値が得られる傾向があることを読み取れる。
【0033】
例えば、前記の予熱温度120℃〜270℃の範囲内のうち、比較的低い温度の場合には、試料S1〜S5,S7のように被覆膜厚さが十分になり難いものの、浸漬時間,浸漬回数を適宜多くすることにより該被覆膜厚さは十分となり、前記のように十分良好なBDV値が得られる傾向があることを読み取れる。また、比較的高い温度の場合には、試料S56〜S60のように被覆膜厚さが過剰となり厚さが不均一になり易いものの、浸漬時間,浸漬回数を適宜減らすことにより、前記のように十分良好なBDV値が得られる傾向があることを読み取れる。
【0034】
なお、前記の予熱温度120℃〜270℃の範囲外にて絶縁処理を試みたところ、該予熱温度が110℃以下の場合には絶縁性粉体の溶融物による被覆が観られず、該予熱温度が280℃以上の場合には被被覆膜において変色,発泡,膨張等が生じ易いことを確認できた。また、前記のように被覆膜厚さが十分であっても、試料S10のようにBDV値を測定できない場合が観られたが、浸漬位置等を適宜調整することにより、試料Pと比較して同等以上のBDV値が得られることを確認できた。
【0035】
したがって、前記のように流動浸漬法により、温度120℃〜270℃の範囲内で予熱された被覆対象に厚さ280μm〜450μm程度の被覆膜を形成することにより、被腹膜において十分良好な絶縁性を付与でき、工業材料として十分適用できることを確認できた。
【0036】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0037】
例えば、本実施例では高分子材料組成物としてポリ乳酸のみを適用したが、その他のバイオベースポリマーを適用したり、これらバイオベースポリマーのうち何れか一つ以上のものを用いた場合においても、同様の作用効果が得られること明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチル化セルロース,ポリ乳酸,ポリブチレンサクシネート,ポリトリメチレンテレフタレート,エステル化澱粉,澱粉基ポリマー,キトサン基ポリマーのうち何れか一つ以上のバイオベースポリマー組成物を微紛化して得られ、
パウダーコーティング法によって、電圧機器の導電部材のうち被絶縁処理部位の絶縁処理に用いられることを特徴とする電圧機器用絶縁性粉体。
【請求項2】
アセチル化セルロース,ポリ乳酸,ポリブチレンサクシネート,ポリトリメチレンテレフタレート,エステル化澱粉,澱粉基ポリマー,キトサン基ポリマーのうち何れか一つ以上のバイオベースポリマー組成物を微紛化して得られる絶縁性粉体を用い、
パウダーコーティング法により、電圧機器の導電部位の被絶縁処理部位表面を予熱し、前記絶縁性粉体の溶融物を前記被絶縁処理部位に対して付着させ、厚さ280μm〜450μmの被覆物を形成することを特徴とする絶縁処理方法。
【請求項3】
前記のバイオベースポリマーとしてポリ乳酸を用い、前記の被絶縁処理部位表面の予熱温度を120℃〜270℃の範囲内としたことを特徴とする請求項2記載の電圧機器の絶縁処理方法。
【請求項4】
導電部材に被絶縁処理部位を有する電圧機器であって、
前記の被絶縁処理部位が、請求項2または3記載の方法により絶縁処理されたことを特徴とする電圧機器。

【公開番号】特開2008−257975(P2008−257975A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98231(P2007−98231)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】