説明

電圧源回路

【課題】出力キャパシタを用いた電圧源回路において、出力キャパシタの端子電圧を常に一定時間で直線的にグランド電位まで降下させることができるようにする。
【解決手段】出力キャパシタC1に初期電圧値を与える基準電圧源1と同一特性を持つ第2の電圧源2及び第3の電圧源3、倍率回路4,5、基準抵抗R1、第2の電圧源2から駆動電流が供給されるトランジスタQ1、及びトランジスタQ1の駆動電流を制御するオペアンプ(演算増幅器)OP1により、基準電圧源1の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路を構成する。そして、出力キャパシタC1と並列にトランジスタQ1と同一のトランジスタQ2を接続し、上記定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で出力キャパシタC1を放電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力キャパシタを用いた電圧源回路に関し、特に出力キャパシタの端子電圧を一定時間で直線的にグランド電位まで降下させる電圧源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
基準電圧源により充電された出力キャパシタの端子電圧を時間とともにグランド電位(0V)まで降下させる場合、例えば図9に示すような電圧源回路が用いられる。図9は従来の電圧源回路の構成を示す図であり、この電圧源回路では、基準電圧源101によりスイッチSW101を介して出力キャパシタC101に電荷を蓄えておき、初期電圧値を与える。そして、スイッチSW101を切断して電荷の供給を遮断し、抵抗R101により出力キャパシタC101の電荷を放電させることによってその端子電圧を降下させる。
【0003】
ここで、出力キャパシタC101の容量値もC101(F)で表し、基準電圧源101の電圧値(初期電圧値)をV101(V)、抵抗R101に流れる電流値をI101(A)とすると、放電終了時間、すなわち出力キャパシタC101の端子電圧がグランド電位まで降下するまでの時間t101は、次式で表される。
【0004】
t101=C101×V101/I101……(1)
なお、出力キャパシタC101の放電回路には、抵抗R101に代えて定電流回路が用いられることもある。
【特許文献1】特開平10−322914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような従来の電圧源回路においては、出力キャパシタに蓄えられる初期電荷、つまり出力キャパシタの初期電圧値を決定する基準電圧源と、出力キャパシタの放電電流量を決定する抵抗(もしくは定電流回路)は、それぞれ異なる素子により構成されており、電源電圧の変化、温度変化、製造ばらつきなどによって各素子、回路の特性が変動した場合、それらの特性の変動の割合は互いに独立したものとなる。
【0006】
このため、例えば温度変化によって基準電圧源の電圧値、出力キャパシタの放電電流量及び容量値がそれぞれkv倍、ki倍、kc倍に変動した場合、上記(1)式から放電終了時間は(kc×kv/ki)倍になり、出力キャパシタの端子電圧の降下開始からグランド電位に達するまでの時間が変動するという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、基準電圧源、出力キャパシタ及びその放電系統を構成する各素子、回路の特性に変動があっても、出力キャパシタの端子電圧を常に一定時間で直線的にグランド電位まで降下させることができ、信頼性の高い電圧源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上記課題を解決するために、出力キャパシタを充電して初期電圧値を与える基準電圧源と、前記基準電圧源の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路と、前記出力キャパシタを前記定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で放電させる放電回路と、を備えたことを特徴とする電圧源回路が提供される。
【0009】
このような電圧源回路によれば、基準電圧源の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路を備え、この定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で出力キャパシタを放電させるので、基準電圧源、出力キャパシタ及びその放電系統を構成する各素子、回路の特性に変動があっても、出力キャパシタの端子電圧を常に一定時間で直線的にグランド電位まで降下させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電圧源回路は、基準電圧源の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路を備え、この定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で出力キャパシタを放電させるので、基準電圧源、出力キャパシタ及びその放電系統を構成する各素子、回路の特性に変動があっても、出力キャパシタの端子電圧を常に一定時間で直線的にグランド電位まで降下させることができ、信頼性が向上するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。この電圧源回路は、スイッチSW1を通して出力キャパシタC1を充電して初期電圧値を与える基準電圧源1と、基準電圧源1と同一特性を持つ二つの第2の電圧源2及び第3の電圧源3を備えており、第2の電圧源2及び第3の電圧源3、倍率回路4,5、基準抵抗R1、第2の電圧源2から倍率回路4及び基準抵抗R1を介して駆動電流が供給されるトランジスタ(MOSFET)Q1、及びトランジスタQ1の駆動電流を制御するオペアンプ(演算増幅器)OP1により、基準電圧源1の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路が構成されている。また、出力キャパシタC1と並列にトランジスタQ1と同一のトランジスタQ2が放電回路として接続され、上記定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で出力キャパシタC1が放電される。図1の回路では、定電流回路のトランジスタQ1と放電回路のトランジスタQ2によりカレントミラー回路が構成され、定電流回路に流れる電流値に比例した電流値で出力キャパシタC1が放電される。また、この電圧源回路は、1つの半導体基板上に集積して形成することができる。
【0012】
上記のように構成された電圧源回路においては、初期値決定用の基準電圧源1によって出力キャパシタC1に初期電荷が蓄えられ、放電電流決定用の第2の電圧源2の電圧値が基準抵抗R1及びオペアンプOP1を用いた回路によって定電流に変換され、その定電流で出力キャパシタC1に蓄えられた電荷が放電される。そして、出力キャパシタC1の端子電圧が出力端子Toから出力され、直線降下型の電圧源として使用される。
【0013】
詳細に説明すると、基準電圧源1で決定された初期電圧値に比例した電荷がスイッチSW1を介して出力キャパシタC1に蓄えられる。また、基準電圧源1と同一の回路構成の第2の電圧源2及び第3の電圧源3の電圧値が抵抗分圧などによる任意の倍率回路4,5で増倍あるいは減衰され、オペアンプOP1、基準抵抗R1及びトランジスタQ1とともに出力キャパシタC1の放電用の基準電流が作られる。
【0014】
そして、図1のc点の電圧値はオペアンプOP1−トランジスタQ1のフィードバックループによりb点の電圧値と等しくなるため、基準抵抗R1の両端に印加される電圧値はa点とb点の電圧値の差分と等しくなる。このとき、第2の電圧源2と第3の電圧源3は基準電圧源1と同一回路構成であるため、a点とb点の差分電圧値は基準電圧源1から出力されたd点の電圧値に比例し、互いの電圧値の変動割合にも相関が生じる。基準電圧源1と第2の電圧源2及び第3の電圧源3を基板上で近接して配置しておけば、それらの特性はより近づき、変動割合の相関を強めることができる。
【0015】
ここで、基準抵抗R1としてばらつき、温度依存性の小さい高濃度のN型Poly−Si抵抗などを使用し、抵抗値の変動分を十分小さく抑えることによって、基準抵抗R1とトランジスタQ1に、d点の電圧値に比例し、かつ変動割合にも相関のある電流を流すことが可能となる。また、トランジスタQ1とトランジスタQ2はカレントミラー構成になっているため、出力キャパシタC1を放電させるトランジスタQ2の電流値はトランジスタQ1の電流値に比例し、同様の特性を持つ。そこで、トランジスタQ1とトランジスタQ2のミラー比の調整により、トランジスタQ2のインピーダンスを十分高くしておくことによって、トランジスタQ2が与えるd点の電圧値への影響を十分小さくすることができる。
【0016】
上記の回路構成で、基準抵抗R1の抵抗値もR1と表し、d点の電圧値をVd、倍率回路4,5の倍率値をk1,k2、トランジスタQ1,Q2のミラー比をM1とすると、トランジスタQ2に流れる放電電流I1は、次式で表される。
【0017】
I1=M1×(k1−k2)×Vd/R1……(2)
そして、任意の時刻でスイッチSW1を切断することにより、出力キャパシタC1に供給される電荷が遮断され、トランジスタQ2による放電が始まるが、出力キャパシタC1の容量値もC1と表すと、式(2)により放電終了時間t1は、次式で表される。
【0018】
t1=C1×R1/(M1×(k1−k2))……(3)
式(3)により、電源電圧の変化、温度変化、製造ばらつきなどにより基準電圧源1により決定される初期電圧値が変動した場合でも、放電電流も同様に変動し、両特性の変動分は相殺され、放電電流終了時間には影響しない。このため、出力キャパシタC1の端子電圧は、倍率回路4,5の倍率値、基準抵抗R1の抵抗値、トランジスタQ1,Q2のミラー比、出力キャパシタC1の容量値で決定される時間で直線的にグランド電位まで降下する。そして、これらの特性変動分は小さいので、出力端子Toの電圧値は常に安定した時間で直線的にグランド電位まで降下する。
【0019】
図2は実施の形態の温度変化による出力キャパシタC1の放電時間を示す図である。初期電圧値であるd点の電圧値Vdが温度変化に伴って変動しても、放電電流を決定するためのa点とb点の間の差分電圧Va−Vcも温度特性が等しいので同様に変動し、出力キャパシタC1の放電時間はほぼ一定となる。このため、図3に示すように、出力端子Toの初期電圧値が異なっていても、電圧降下開始時刻よりグランド電位に到達するまでの時間は一定となる。図3は実施の形態の出力端子Toの電圧値がグランド電位まで降下する時間を示す図であり、温度が100℃のときと25℃のときの降下時間を示している。
【0020】
以上のように、第1の実施の形態では、初期電圧値決定用の基準電圧源1と特性変動に相関関係のある第2の電圧源2及び第3の電圧源3を用い、初期電圧値に比例し、かつその変動割合が初期電圧値と相関のある電流量を持つ定電流回路を構成し、その電流量に比例した電流量で出力キャパシタC1を放電させる。このため、電源電圧の変化、温度変化、製造ばらつきなどによって初期電圧値や放電電流量が変動した場合でも、その変動割合は相関を持っているので、前述の(3)式のようにそれらの変動分を相殺することができ、放電終了時間の変動は出力キャパシタC1の変動分のみに抑えることができる。
【0021】
一般的に、キャパシタの電源電圧、温度、製造ばらつきによる変動割合は小さいので、上記の構成により、基準電圧源1、出力キャパシタC1及びその放電系統を構成する各素子、回路の特性に変動があっても、常に一定時間で出力キャパシタC1の端子電圧をグランド電位まで直線的に降下させることができ、信頼性が向上したものとなる。
【0022】
図4は本発明の第2の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。第2の実施の形態では、図1に示す基準電圧源1が定電流回路の電圧源と共用になっており、基準電圧源1と第2の電圧源2を用いて定電流回路が構成されている。その他は図1の回路と同様の構成であり、基準電圧源1の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路を備え、この定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で出力キャパシタC1を放電させるので、出力キャパシタC1の端子電圧を常に一定時間で直線的にグランド電位まで降下させることができる。
【0023】
図5は本発明の第3の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。第3の実施の形態においても、図1に示す基準電圧源1が定電流回路の電圧源と共用になっており、基準電圧源1と第2の電圧源2を用いて定電流回路が構成されている。その他は図1の回路と同様の構成であり、基準電圧源1の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路を備え、この定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で出力キャパシタC1を放電させるので、出力キャパシタC1の端子電圧を常に一定時間で直線的にグランド電位まで降下させることができる。
【0024】
図6は本発明の第4の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。第4の実施の形態においても、図1に示す基準電圧源1が定電流回路の電圧源と共用になっており、一つの基準電圧源1を用いて定電流回路が構成されている。その他は図1の回路と同様の構成であり、基準電圧源1の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路を備え、この定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で出力キャパシタC1を放電させるので、出力キャパシタC1の端子電圧を常に一定時間で直線的にグランド電位まで降下させることができる。
【0025】
図7は本発明の第5の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。第5の実施の形態においても、図1に示す基準電圧源1が定電流回路の電圧源と共用になっており、一つの基準電圧源1を用いて定電流回路が構成されている。出力キャパシタC1には基準電圧源1からオペアンプOP2を介して初期電圧値が与えられ、また基準電圧源1の電圧が抵抗R2,R3によって分圧され、その分圧された電圧がオペアンプOP1の反転入力端子に入力される。その他は図6の回路と同様の構成であり、基準電圧源1の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路を備え、この定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で出力キャパシタC1を放電させるので、出力キャパシタC1の端子電圧を常に一定時間で直線的にグランド電位まで降下させることができる。
【0026】
図8は本発明の第6の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。第6の実施の形態では、図1に示す第2の電圧源2が第3の電圧源3と共用になっており、一つの第2の電圧源2を用いて定電流回路が構成されている。その他は図7の回路と同様の構成であり、基準電圧源1の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路を備え、この定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で出力キャパシタC1を放電させるので、出力キャパシタC1の端子電圧を常に一定時間で直線的にグランド電位まで降下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。
【図2】実施の形態の温度変化による出力キャパシタの放電時間を示す図である。
【図3】実施の形態の出力端子の電圧値がグランド電位まで降下する時間を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態の電圧源回路の構成を示す図である。
【図9】従来の電圧源回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 基準電圧源
2 第2の電圧源
3 第3の電圧源
4,5 倍率回路
C1 出力キャパシタ
OP1,OP2 オペアンプ
Q1,Q2 トランジスタ
R1 基準抵抗
R2,R3 抵抗
SW1 スイッチ
To 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力キャパシタを充電して初期電圧値を与える基準電圧源と、
前記基準電圧源の特性変動と相関関係を持つ特性変動を有する定電流回路と、
前記出力キャパシタを前記定電流回路に流れる電流値と相関のある電流値で放電させる放電回路と、を備えたことを特徴とする電圧源回路。
【請求項2】
前記定電流回路は、前記基準電圧源と同一特性を持つ第2の電圧源と、前記第2の電圧源から駆動電流が供給されるトランジスタと、前記トランジスタの駆動電流を制御する演算増幅器とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の電圧源回路。
【請求項3】
前記放電回路は、前記出力キャパシタと並列に接続されたトランジスタからなることを特徴とする請求項1記載の電圧源回路。
【請求項4】
前記定電流回路と前記放電回路は、カレントミラー回路を構成していることを特徴とする請求項1記載の電圧源回路。
【請求項5】
前記定電流回路は、前記基準電圧源及び前記第2の電圧源と同一特性を持つ第3の電圧源を有していることを特徴とする請求項2記載の電圧源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−71218(P2008−71218A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250288(P2006−250288)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】