説明

電圧調整回路

【課題】トランジスタにおけるオフ電流を低減し、電圧調整回路における出力電圧の変換効率を向上させる。
【解決手段】ゲート、ソース、及びドレインを有し、ゲートがソース又はドレインに電気的に接続され、ソース及びドレインの一方に第1の信号が入力され、チャネル形成層としてキャリア濃度が5×1014/cm以下である酸化物半導体層を有するトランジスタと、第1の電極及び第2の電極を有し、第1の電極がトランジスタのソース及びドレインの他方に電気的に接続され、第2の電極にクロック信号である第2の信号が入力される容量素子と、を有し、第1の信号の電圧を昇圧又は降圧し、昇圧又は降圧した電圧である第3の信号を出力信号としてトランジスタのソース及びドレインの他方を介して出力する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、酸化物半導体を用いたトランジスタにより構成される電圧調整回路に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いて薄膜トランジスタ(TFT)を構成する技術が注目されている。薄膜トランジスタは液晶テレビに代表されるような表示装置に用いられている。薄膜トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が公知であるが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0003】
酸化物半導体の材料としては、酸化亜鉛又は酸化亜鉛を成分とするものが知られている。そして、電子キャリア濃度が1018/cm未満である非晶質酸化物(酸化物半導体)で形成された薄膜トランジスタが開示されている(特許文献1乃至3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−165527号公報
【特許文献2】特開2006−165528号公報
【特許文献3】特開2006−165529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、酸化物半導体は、薄膜形成工程において化学量論的組成からずれてしまう。例えば、酸素の過不足によって酸化物半導体の電気伝導度が変化してしまう。また、酸化物半導体の薄膜形成中に混入する水素が酸素(O)−水素(H)結合を形成して電子供与体となり、電気伝導度を変化させる要因となる。さらにO−Hは極性分子なので、酸化物半導体によって作製される薄膜トランジスタのような能動デバイスに対して特性の変動要因となる。
【0006】
電子キャリア濃度を1018/cm未満としても、酸化物半導体は、実質的にはn型であり、特許文献1乃至3に開示される薄膜トランジスタのオン・オフ比は10しか得られていない。このような薄膜トランジスタのオン・オフ比が低い理由はオフ電流が高いことによるものである。
【0007】
また、オフ電流の高いトランジスタを用いて例えば昇圧回路などの電圧調整回路を構成する場合、非動作時においてもトランジスタを介して電流が流れてしまうため、所望の電圧への変換効率が悪くなるなどの問題がある。
【0008】
このような問題に鑑み本発明の一態様は、安定した電気的特性(例えば、オフ電流がきわめて低減されている)を有する薄膜トランジスタを提供することを課題とする。また、電圧調整回路において所望の電圧への変換効率を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態は、電子供与体(ドナー)となる不純物を除去することにより高純度化させた、真性又は実質的に真性な半導体であり、シリコン半導体よりもエネルギーギャップが大きい酸化物半導体をチャネル形成層に有するトランジスタを用いて昇圧回路又は降圧回路などの電圧調整回路を構成するものである。これにより、トランジスタにおけるオフ状態のリーク電流(オフ電流)の低減を図り、さらにトランジスタにおけるオフ電流の低減により、所望の値の電圧への変換効率の向上を図る。
【0010】
酸化物半導体に含まれる水素濃度は、5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1017/cm以下である。また、酸化物半導体に含まれる水素若しくはOH結合は除去される。また、キャリア濃度は、5×1014/cm以下、好ましくは5×1012/cm以下である。
【0011】
エネルギーギャップは2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上として、ドナーを形成する水素等の不純物を極力低減し、キャリア濃度を1×1014/cm以下、好ましくは1×1012/cm以下となるようにする。
【0012】
さらに、上記酸化物半導体を有するトランジスタでは、チャネル幅1μmあたりのオフ電流を10aA/μm(1×10−17A/μm)以下、さらには1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、さらには10zA/μm(1×10−20A/μm)以下、好ましくは、1zA/μm(1×10−21A/μm)以下と、従来のシリコンを用いたトランジスタと比較しても非常に低くすることができる。さらに、トランジスタの温度が85℃の場合であってもチャネル幅1μmあたりのオフ電流を100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下と、従来のシリコンを用いたトランジスタと比較しても非常に低くすることができる。
【0013】
水素濃度が十分に低減されて高純度化された酸化物半導体層を用いたトランジスタを用いることにより、従来のシリコンを用いたトランジスタを用いる場合と比較してもリーク電流による消費電力の少ない電圧調整回路を実現できる。
【0014】
本発明の一態様は、ゲート、ソース、及びドレインを有し、ゲートがソース又はドレインに電気的に接続され、ソース及びドレインの一方に第1の信号が入力され、チャネル形成層として酸化物半導体層を有し、オフ電流が100zA/μm以下であるトランジスタと、第1の電極及び第2の電極を有し、第1の電極がトランジスタのソース及びドレインの他方に電気的に接続され、第2の電極にクロック信号である第2の信号が入力される容量素子と、を有し、第1の信号の電圧を昇圧又は降圧し、昇圧又は降圧した電圧である第3の信号を出力信号としてトランジスタのソース及びドレインの他方を介して出力する電圧調整回路である。
【0015】
本発明の一態様は、互いに直列接続で電気的に接続されたn段(nは2以上の自然数)の単位昇圧回路を有する電圧調整回路であって、2M−1段目(Mは1乃至n/2であり、2Mは自然数))の単位昇圧回路は、ゲート、ソース、及びドレインを有し、ゲートがソース及びドレインの一方に電気的に接続され、チャネル形成層として酸化物半導体層を有し、オフ電流が100zA/μm以下である第1のトランジスタと、第1の電極及び第2の電極を有し、第1の電極が第1のトランジスタのソース及びドレインの他方に電気的に接続され、第2の電極にクロック信号が入力される第1の容量素子と、を有し、2M段目の単位昇圧回路は、ゲート、ソース、及びドレインを有し、ゲートがソース及びドレインの一方に電気的に接続され、チャネル形成層として酸化物半導体層を有し、オフ電流が100zA/μm以下である第2のトランジスタと、第1の電極及び第2の電極を有し、第1の電極が第2のトランジスタのソース及びドレインの他方に電気的に接続され、第2の電極に反転クロック信号が入力される第2の容量素子と、を有する電圧調整回路である。
【0016】
本発明の一態様は、互いに直列接続で電気的に接続されたn段(nは2以上の自然数)の単位降圧回路を有する電圧調整回路であって、2M−1段目(Mは1乃至n/2であり、2Mは自然数)の単位降圧回路は、ゲート、ソース、及びドレインを有し、チャネル形成層として酸化物半導体層を有し、オフ電流が100zA/μm以下である第1のトランジスタと、第1の電極及び第2の電極を有し、第1の電極が第1のトランジスタのゲートに電気的に接続され、第2の電極にクロック信号が入力される第1の容量素子と、を有し、2M段目の単位降圧回路は、ゲート、ソース、及びドレインを有し、ソース及びドレインの一方が前記第1のトランジスタのゲート、及びソース又はドレインに電気的に接続され、チャネル形成層として酸化物半導体層を有し、オフ電流が100zA/μm以下である第2のトランジスタと、第1の電極及び第2の電極を有し、第1の電極が第2のトランジスタのゲート、並びにソース及びドレインの他方に電気的に接続され、第2の電極に反転クロック信号が入力される第2の容量素子と、を有する電圧調整回路である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様により、トランジスタのリーク電流を低減し、出力信号の電圧の低下を低減することができるため、所望の電圧への変換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電圧調整回路の構成の一例を示す回路図。
【図2】図1に示す電圧調整回路の動作の一例を説明するためのタイミングチャート。
【図3】電圧調整回路の構成の一例を示す回路図。
【図4】電圧調整回路の構成の一例を示す回路図
【図5】トランジスタを説明する図。
【図6】トランジスタの作製方法を説明する図。
【図7】トランジスタを説明する図。
【図8】トランジスタの作製方法を説明する図。
【図9】トランジスタを説明する図。
【図10】トランジスタの作製方法を説明する図。
【図11】酸化物半導体を用いた逆スタガ型の薄膜トランジスタの縦断面図。
【図12】図11に示すA−A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)。
【図13】(A)ゲート電極1001に正の電位(+VG)が印加された状態を示す図(B)ゲート電極1001に負の電位(−VG)が印加された状態を示す図。
【図14】真空準位と金属の仕事関数(φM)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係を示す図。
【図15】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性評価用回路図。
【図16】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性評価用タイミングチャート。
【図17】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図。
【図18】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図。
【図19】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図。
【図20】トランジスタの作製方法を説明する図。
【図21】トランジスタの作製方法を説明する図。
【図22】トランジスタの作製方法を説明する図。
【図23】トランジスタを説明する図。
【図24】電子機器を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではないとする。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である電圧調整回路について説明する。
【0021】
本実施の形態の電圧調整回路の構成の一例は、入力信号として信号S1及び信号S2が入力され、入力された信号S1を昇圧又は降圧し、信号S1の電圧を昇圧又は降圧した電圧である信号S3を出力信号として出力する機能を有する。さらに本実施の形態の電圧調整回路の構成の一例について図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態における電圧調整回路の構成の一例を示す回路図である。
【0022】
図1に示す電圧調整回路は、トランジスタ101と、容量素子102と、を有する。
【0023】
なお、本明細書において、トランジスタとして例えば電界効果トランジスタを用いることができる。
【0024】
また、本明細書において、電界効果トランジスタは、ゲート、ソース、及びドレインを少なくとも有する。電界効果トランジスタとしては、例えば薄膜トランジスタ(TFTともいう)を用いることができる。また、電界効果トランジスタとしては、例えばトップゲート型、又はボトムゲート型のトランジスタを用いることができる。また、電界効果トランジスタは、N型の導電型にすることができる。
【0025】
なお、ゲートとは、ゲート電極及びゲート配線の一部又は全部のことをいう。ゲート配線とは、少なくとも一つのトランジスタのゲート電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0026】
ソースとは、ソース領域、ソース電極、及びソース配線の一部又は全部のことをいう。ソース領域とは、半導体層のうち、抵抗値がチャネル形成層より低い領域のことをいう。ソース電極とは、ソース領域に接続される部分の導電層のことをいう。ソース配線とは、少なくとも一つのトランジスタのソース電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0027】
ドレインとは、ドレイン領域、ドレイン電極、及びドレイン配線の一部又は全部のことをいう。ドレイン領域とは、半導体層のうち、抵抗値がチャネル形成領域より低い領域のことをいう。ドレイン電極とは、ドレイン領域に接続される部分の導電層のことをいう。ドレイン配線とは、少なくとも一つのトランジスタのドレイン電極と、別の電極や別の配線とを電気的に接続させるための配線のことをいう。
【0028】
また、本明細書において、トランジスタのソースとドレインは、トランジスタの構造や動作条件などによって互いに入れ替わるため、いずれがソース又はドレインであるかを限定することが困難である。そこで、本書類(明細書、特許請求の範囲又は図面など)においては、ソース及びドレインのいずれか一方をソース及びドレインの一方と表記し、他方をソース及びドレインの他方と表記する。
【0029】
また、本明細書における電界効果トランジスタは、チャネル形成層としての機能を有する酸化物半導体層を有するトランジスタである。なお、チャネル形成層の水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。該水素濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)による値である。また、トランジスタのキャリア濃度は、1×1014/cm以下、好ましくは1×1012/cm以下とする。
【0030】
また、本明細書において、容量素子として例えば第1の電極と、第2の電極と、誘電体と、を有する構成の容量素子を用いることができる。
【0031】
トランジスタ101は、ゲートに信号S1又は信号S3が入力され、ソース及びドレインの一方に信号S1が入力され、ソース及びドレインの他方の電圧が信号S3の電圧となる。図1に示す電圧調整回路は、トランジスタ101のソース及びドレインの他方を介して信号S3を出力する。
【0032】
トランジスタ101では、ゲートに信号S1及び信号S3のいずれかの信号が入力されるかによって電圧調整動作が異なる。例えば、ゲートに信号S1が入力される場合には、信号S3の電圧を信号S1の電圧より高くすることができ、またゲートに信号S3が入力される場合には、信号S3の電圧を信号S1の電圧より低くすることができる。このとき、信号S3の電圧を信号S1の電圧より高くすることを昇圧ともいい、信号S3の電圧を信号S1の電圧より低くすることを降圧ともいう。
【0033】
なお、一般的に電圧とは、2点間における電位の差(電位差ともいう)のことをいう。しかし、電圧と電位の値は、回路図などにおいていずれもボルト(V)で表されることがあるため、区別が困難である。そこで、本明細書では、特に指定する場合を除き、ある一点の電位と基準となる電位(基準電位ともいう)との電位差を、該一点の電圧として用いる場合がある。
【0034】
なお、本明細書において、信号として例えば電圧などを用いたアナログ信号又はデジタル信号を用いることができる。例えば、電圧を用いた信号(電圧信号ともいう)としては、少なくとも第1の電圧状態及び第2の電圧状態を有する信号を用いることが好ましく、例えば第1の電圧状態としてハイレベルの電圧状態及び第2の電圧状態としてローレベルの電圧状態を有するデジタル信号などを用いることができる。なお、ハイレベルのときの電圧を電圧Vともいい、ローレベルの電圧を電圧Vともいう。また、第1の電圧状態の電圧及び第2の電圧状態の電圧は、各信号によって異なる場合があり、また、ノイズなどの影響があるため、第1の電圧状態の電圧及び第2の電圧状態の電圧は、一定値ではなく、それぞれ一定の範囲内の値であればよい。
【0035】
容量素子102は、第1の電極がトランジスタ101のソース及びドレインの他方に電気的に接続され、第2の電極に信号S2が入力される。なお、容量素子102の第1の電極と、トランジスタ101のソース及びドレインの他方との接続箇所をノードN111ともいう。
【0036】
信号S1は、電圧調整回路の第1の入力信号(信号INVC1ともいう)としての機能を有する。
【0037】
信号S2は、電圧調整回路の第2の入力信号(信号INVC2ともいう)としての機能を有する。信号S2としては、例えばクロック信号を用いることができる。クロック信号は、第1の電圧状態と第2の電圧状態とが周期的に繰り返される信号である。クロック信号における第1の電圧状態及び第2の電圧状態の値は、適宜設定することができる。
【0038】
信号S3は、電圧調整回路の出力信号(信号OUTVCともいう)としての機能を有する。
【0039】
次に、図1に示す電圧調整回路の動作(駆動方法ともいう)の一例について図2を用いて説明する。図2は、図1に示す電圧調整回路の動作の一例を説明するためのタイミングチャートであり、信号S1、信号S2、及び信号S3の電圧波形をそれぞれ示したものである。なお、図2を用いて説明する図1に示す電圧調整回路の動作の一例では、信号S1をハイレベルとローレベルの2値のデジタル信号とし、信号S2をハイレベルとローレベルが周期的に繰り返されるクロック信号とし、トランジスタ101をN型トランジスタとし、トランジスタ101のゲートに信号S1が入力されるとして説明する。
【0040】
図1に示す電圧調整回路の動作は、複数の期間に分けて説明することができる。各期間における動作について以下に説明する。
【0041】
期間151では、信号S1がハイレベルになり、信号S2がローレベルになる。
【0042】
このとき、トランジスタ101のソースとドレインの間が導通状態になり、ノードN111の電圧が上昇し始める。ノードN111の電圧は、V1まで上昇する。V1は、V−Vth101(トランジスタ101の閾値電圧)である。ノードN111の電圧が電圧V1になると、トランジスタ101のソースとドレインの間は非導通状態になり、ノードN111は浮遊状態になる。このとき、容量素子102の第1の電極と第2の電極の間に印加される電圧は、V1−Vであり、信号S3の電圧は、V1になる。
【0043】
次に、期間152では、信号S1がハイレベルのままであり、信号S2がハイレベルになる。
【0044】
このとき、トランジスタ101は非導通状態であり、ノードN111は、浮遊状態であり、さらに容量素子102の第2の電極に与えられる電圧が電圧Vから電圧Vに変化するため、容量素子102の第2の電極に合わせて容量素子102の第1の電極の電圧も変化し始める。ノードN111の電圧は、電圧V1よりもさらに大きい値、すなわちV2まで上昇する。電圧V2は、V−Vth101+Vである。このとき、容量素子102の第1の電極と第2の電極の間に印加される電圧は、V2−Vであり、信号S3の電圧は、V2になる。このように、期間152において、電圧調整回路の出力信号である信号S3の電圧は、電圧調整回路に入力される信号S1の電圧が昇圧された値となる。
【0045】
以上のように、本実施の形態の電圧調整回路では、入力された電圧信号を変化させ、入力された電圧信号よりも高い電圧又は低い電圧の信号を出力することができるため、消費電力を低減することができる。
【0046】
また、本実施の形態の電圧調整回路では、トランジスタとして、チャネル形成層としての機能を有する酸化物半導体層を含み、チャネル形成層の水素濃度が5×1019atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下であり、キャリア濃度が1×1014/cm以下、好ましくは1×1012/cm以下であるトランジスタを用いた構成である。該トランジスタはリーク電流が低いため、従来のトランジスタと比較して、容量素子に蓄積された電荷のリークが低減できるため、所望の値の電圧への到達速度を格段に向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態の電圧調整回路は、容量素子をトランジスタと同一工程により形成することができる。これにより、工程数の増加を低減することができる。
【0048】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である電圧調整回路の一例として昇圧回路について説明する。
【0049】
本実施の形態の電圧調整回路の回路構成の一例について図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態の電圧調整回路の回路構成の一例を示す回路図である。
【0050】
図3に示す電圧調整回路は、単位昇圧回路211_1乃至単位昇圧回路211_n(nは2以上の自然数)を有し、単位昇圧回路211_1乃至単位昇圧回路211_nのそれぞれが直列接続で電気的に接続されたn段の単位昇圧回路を用いて構成される。
【0051】
単位昇圧回路211_1乃至単位昇圧回路211_nのそれぞれは、トランジスタ201と、容量素子202と、を有する。
【0052】
トランジスタ201としては、チャネル形成層としての機能を有する酸化物半導体層を有するトランジスタを用いることができる。なお、チャネル形成層の水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。該水素濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)による値である。またトランジスタ201のキャリア濃度は、1×1014/cm以下、好ましくは1×1012/cm以下とする。
【0053】
また、単位昇圧回路211_1乃至単位昇圧回路211_nのそれぞれにおいて、トランジスタ201のゲートがトランジスタ201のソース及びドレインの一方に電気的に接続される。すなわち、トランジスタ201はダイオード接続される。また、容量素子202の第1の電極は、トランジスタ201のソース及びドレインの他方に電気的に接続される。
【0054】
さらに、K段目(Kは2乃至nの自然数)の単位昇圧回路は、トランジスタ201のソース及びドレインの一方がK−1段目の単位昇圧回路におけるトランジスタ201のソース及びドレインの他方に電気的に接続される。K−1段目の単位昇圧回路におけるトランジスタ201のソース及びドレインの他方と、K段目の単位昇圧回路におけるトランジスタ201のソース及びドレインの一方との接続箇所をノードN1_M(Mは1乃至n/2)という。
【0055】
さらに、2M−1段目(Mは1乃至n/2であり、2Mは自然数)の単位昇圧回路は、容量素子202の第2の電極がクロック信号線221に電気的に接続され、2M段目の単位昇圧回路は、容量素子202の第2の電極がクロック信号線222に電気的に接続される。クロック信号線221にはクロック信号CK1が入力され、クロック信号線222にはクロック信号CKB1が入力される。クロック信号CK1及びクロック信号CKB1は、位相が相反の関係であり、例えばクロック信号CK1がハイレベルのとき、クロック信号CKB1はローレベルである。クロック信号CKB1としては、例えばクロック信号CK1の反転信号を用いることができ、クロック信号CKB1は、例えばインバータなどのNOT回路を用いてクロック信号CK1の電圧状態を反転させることにより生成することができる。クロック信号CK1及びクロック信号CKB1におけるハイレベル及びローレベルの電圧の値は、適宜設定することができる。また、クロック信号CK1は、例えばリングオシレータなどの発振回路とバッファ回路を用いて生成することもできる。また、クロック信号CK1及びクロック信号CKB1のみに限定されず、3相以上のクロック信号を用いることもできる。
【0056】
さらに、初段の単位昇圧回路、すなわち単位昇圧回路211_1におけるトランジスタ201は、ソース及びドレインの一方に信号IN1が入力される。
【0057】
さらに、最終段の単位昇圧回路、すなわち単位昇圧回路211_nにおけるトランジスタ201のソース及びドレインの他方の電圧は、電圧調整回路の出力信号である信号OUT1の電圧となる。また、単位昇圧回路211_nにおける容量素子202は、第2の電極に電圧Vc1が与えられる。電圧Vc1は任意の値でよく、例えば電圧V又は電圧Vと同じ値の電圧を用いることができる。また、単位昇圧回路211_nにおける容量素子202の容量は、他の単位昇圧回路における容量素子202の容量より大きくすることが好ましい。これにより、単位昇圧回路211_nの出力信号、すなわち電圧調整回路の出力信号である信号OUT1の電圧状態をより安定させることができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態の電圧調整回路の一例は、n段の単位昇圧回路を有し、それぞれの単位昇圧回路は、ダイオード接続されたトランジスタと容量素子を有する構成である。ダイオード接続されたトランジスタとしては、チャネル形成層として高純度化された酸化物半導体層を有するトランジスタを用いる。これにより、各ノードの電圧の保持時間を長くすることができ、また、目的の電圧までの到達時間を短くすることができ、電圧変換効率を向上させることができる。
【0059】
次に、図3に示す電圧調整回路の動作の一例について説明する。
【0060】
図3に示す電圧調整回路の動作は、複数の期間に分けて説明することができる。各期間における動作について以下に説明する。なお、ここで説明する図3に示す電圧調整回路の動作の一例では、信号IN1としてハイレベルの信号が入力され、クロック信号CK1をハイレベル及びローレベルに周期的に変化するクロック信号とし、クロック信号CKB1をクロック信号CKの反転クロック信号とし、各単位昇圧回路におけるトランジスタ201をN型トランジスタとし、各単位昇圧回路におけるトランジスタ201の閾値電圧が同じ値であるとして説明する。
【0061】
まず、第1の期間では、クロック信号CK1がローレベルになり、クロック信号CKB1がハイレベルになる。
【0062】
このとき、単位昇圧回路211_1において、ダイオード接続されたトランジスタ201が導通状態になり、ノードN1_1の電圧が上昇し始める。ノードN1_1の電圧(電圧VN1ともいう)は、VIN1(信号IN1の電圧)−Vth201(トランジスタ201の閾値電圧)まで上昇する。ノードN1_1の電圧が電圧VIN1−Vth201になると、単位昇圧回路211_1におけるダイオード接続されたトランジスタ201が非導通状態になり、ノードN1_1は浮遊状態になる。
【0063】
次に、第2の期間では、クロック信号CK1がハイレベルになり、クロック信号CKB1がローレベルになる。
【0064】
このとき、単位昇圧回路211_1において、トランジスタ201は非導通状態に維持され、ノードN1_1は浮遊状態であり、さらに単位昇圧回路211_1における容量素子202の第2の電極に与えられる電圧がVに変化するため、容量素子202の第2の電極に合わせて容量素子202の第1の電極の電圧も変化し始める。ノードN1_1の電圧は、VIN1−Vth201+Vまで上昇する。このとき、容量素子202の第1の電極と第2の電極の間に印加される電圧は、VIN1−Vth201である。このように、第2の期間において、ノードN1_1の電圧は、第1の期間におけるノードN1_1の電圧が昇圧された値となる。
【0065】
さらに、ノードN1_1の電圧がVIN−Vth201+Vになることにより、単位昇圧回路211_2において、ダイオード接続されたトランジスタ201が導通状態になり、ノードN1_2の電圧が上昇し始める。ノードN1_2の電圧(VN2ともいう)は、VN1−Vth201まで上昇する。ノードN1_2の電圧がVN1−Vth201になると、単位昇圧回路211_2におけるダイオード接続されたトランジスタ201が非導通状態になり、ノードN1_2は浮遊状態になる。
【0066】
次に、第3の期間では、クロック信号CK1がローレベルになり、クロック信号CKB1がハイレベルになる。
【0067】
このとき、単位昇圧回路211_2において、トランジスタ201は非導通状態に維持され、ノードN1_2は浮遊状態であり、さらに単位昇圧回路211_2における容量素子202の第2の電極に与えられる電圧がVからVに変化するため、容量素子202の第2の電極に合わせて容量素子202の第1の電極の電圧も変化し始める。ノードN1_2の電圧は、VN1−Vth201+Vまで上昇する。このとき、容量素子202の第1の電極と第2の電極の間に印加される電圧は、VN1−Vth201である。このように、第3の期間において、ノードN1_2の電圧は、第2の期間におけるノードN1_2の電圧が昇圧された値となる。
【0068】
さらに、ノードN1_2の電圧がVN1−Vth201+Vになることにより、単位昇圧回路211_3において、ダイオード接続されたトランジスタ201が導通状態になり、ノードN1_3の電圧が上昇し始める。ノードN1_3の電圧(VN3ともいう)は、VN2−Vth201まで上昇する。ノードN1_3の電圧がVN2−Vth201になると、単位昇圧回路211_3におけるダイオード接続されたトランジスタ201が非導通状態になり、ノードN1_3は浮遊状態になる。
【0069】
さらに、3段目以降の各単位昇圧回路においてもクロック信号CK1又はクロック信号CKB1がハイレベル又はローレベルに周期的に変化するに従って上記単位昇圧回路と同様の動作が順次行われ、各ノードN1_Mの電圧は、クロック信号CK1又はクロック信号CKB1がハイレベル又はローレベルに周期的に変化する毎に徐々に昇圧され、最大でVIN1+M(V−Vth201)に昇圧される。また、信号OUT1の電圧は、クロック信号CK1又はクロック信号CKB1がハイレベル又はローレベルに周期的に変化する毎に徐々に昇圧され、最大でVIN1+n(V−Vth201)に昇圧される。このように、図3に示す電圧調整回路は、信号IN1の電圧を昇圧し、昇圧した電圧の信号OUT1を出力信号として出力する。
【0070】
以上のように、本実施の形態の電圧調整回路の一例では、各単位昇圧回路において昇圧動作を行うことにより、入力された信号の電圧より大きい電圧の信号を出力信号として出力することができる。
【0071】
また、本実施の形態の電圧調整回路の一例は、各単位昇圧回路においてダイオード接続されたトランジスタが、チャネル形成層として高純度化された酸化物半導体層を用いたトランジスタである構成である。これによりトランジスタのリーク電流を低減し、所望の電圧への変換効率を向上させることができ、各ノードの電圧の保持期間を長くすることができ、また昇圧動作により所望の電圧となるまでの到達速度を速くすることができる。
【0072】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0073】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である電圧調整回路の他の一例として降圧回路について説明する。なお本実施の形態において、実施の形態2に示す電圧調整回路と同じ部分については、説明を適宜援用する。
【0074】
本実施の形態の電圧調整回路の回路構成の一例について図4を用いて説明する。図4は、本実施の形態の電圧調整回路の回路構成の一例を示す回路図である。
【0075】
図4に示す電圧調整回路は、単位降圧回路511_1乃至単位降圧回路511_n(nは2以上の自然数)を有し、単位降圧回路511_1乃至単位降圧回路511_nのそれぞれが直列接続で電気的に接続されたn段の単位降圧回路により構成される。
【0076】
単位降圧回路511_1乃至単位降圧回路511_nのそれぞれは、トランジスタ501と、容量素子502と、を有する。
【0077】
トランジスタ501としては、チャネル形成層としての機能を有する酸化物半導体層を有するトランジスタを用いることができる。なお、チャネル形成層の水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。該水素濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)による値である。また、トランジスタ501のキャリア濃度は、1×1014/cm以下、好ましくは1×1012/cm以下とする。
【0078】
K段目(Kは2乃至nの自然数)の単位降圧回路は、トランジスタ501のソース及びドレインの一方がK−1段目の単位降圧回路におけるトランジスタ501のソース及びドレインの他方に電気的に接続される。K−1段目の単位降圧回路におけるトランジスタ501のソース及びドレインの他方と、K段目の単位降圧回路におけるトランジスタ501のソース及びドレインの一方との接続箇所をノードN2_Mという。
【0079】
また、単位降圧回路511_1乃至単位降圧回路511_nのそれぞれにおいて、トランジスタ501のゲートがトランジスタ501のソース及びドレインの他方に電気的に接続される。すなわちトランジスタ501はダイオード接続される。また、容量素子502の第1の電極は、トランジスタ501のソース及びドレインの他方に電気的に接続される。すなわち、図3に示す電圧調整回路におけるトランジスタ201は、ゲートと、ソース及びドレインの一方とが電気的に接続される構成であるのに対し、図4に示す電圧調整回路におけるトランジスタ501は、ゲートと、ソース及びドレインの他方とが電気的に接続される。
【0080】
さらに、2M−1段目の単位降圧回路は、容量素子502の第1の電極がトランジスタ501のゲートに電気的に接続され、第2の電極がクロック信号線521に電気的に接続され、2M段目の単位降圧回路は、トランジスタ501のソース及びドレインの一方が2M−1段目におけるトランジスタ501のゲート、及びソース又はドレインの電気的に接続され、容量素子502の第1の電極がトランジスタ501のゲート、並びにソース及びドレインの他方に電気的に接続され、第2の電極がクロック信号線522に電気的に接続される。クロック信号線521にはクロック信号CK2が入力され、クロック信号線522にはクロック信号CKB2が入力される。クロック信号CK2及びクロック信号CKB2は、位相が相反の関係であり、例えばクロック信号CK2がハイレベルのとき、クロック信号CKB2はローレベルである。クロック信号CKB2としては、例えばクロック信号CK2の反転信号を用いることができ、クロック信号CKB2は、例えばインバータなどのNOT回路を用いてクロック信号CK2の電圧状態を反転させることにより生成することができる。クロック信号CK2及びクロック信号CKB2におけるハイレベル及びローレベルの電圧の値は、適宜設定することができる。また、クロック信号CK2は、例えばリングオシレータなどの発振回路とバッファ回路を用いて生成することもできる。また、クロック信号CK2及びクロック信号CKB2のみに限定されず、3相以上のクロック信号を用いることもできる。
【0081】
さらに、初段の単位降圧回路、すなわち単位降圧回路511_1におけるトランジスタ501は、ソース及びドレインの一方に信号IN2が入力される。
【0082】
さらに、最終段の単位降圧回路、すなわち単位降圧回路511_nにおけるトランジスタ501のソース及びドレインの他方の電圧は、電圧調整回路の出力信号である信号OUT2の電圧となる。また、単位降圧回路511_nにおける容量素子502は、第2の電極に電圧Vc2が与えられる。電圧Vc2は任意の値でよく、例えば電圧V又は電圧Vと同じ値の電圧を用いることができる。また、単位降圧回路511_nにおける容量素子502の容量は、他の単位降圧回路における容量素子502の容量より大きくすることが好ましい。これにより、単位降圧回路511_nの出力信号、すなわち電圧調整回路の出力信号である信号OUT2の電圧状態をより安定させることができる。
【0083】
以上のように、本実施の形態の電圧調整回路の一例は、n段の単位降圧回路を有し、それぞれの単位降圧回路は、ダイオード接続されたトランジスタと容量素子を有する構成である。ダイオード接続されたトランジスタとしては、チャネル形成層として水素濃度を低減し、オフ電流を低減した酸化物半導体層を有するトランジスタを用いる。これにより、各ノードの電圧の保持時間を長くすることができ、また、目的の電圧までの到達時間を短くすることができ、電圧変換効率を向上させることができる。
【0084】
次に、図4に示す電圧調整回路の動作の一例について説明する。
【0085】
図4に示す電圧調整回路の動作は、複数の期間に分けて説明することができる。各期間における動作について以下に説明する。なお、ここで説明する図4に示す電圧調整回路の動作の一例では、信号IN2としてローレベルの信号が入力され、クロック信号CK2をハイレベル及びローレベルに周期的に変化するクロック信号とし、クロック信号CKB2をクロック信号CK2の反転クロック信号とし、各単位降圧回路におけるトランジスタ501をN型トランジスタとし、各単位降圧回路におけるトランジスタ501の閾値電圧は同じ値であるとして説明する。
【0086】
まず、第1の期間では、クロック信号CK2がハイレベルになり、クロック信号CKB2がローレベルになる。
【0087】
このとき、単位降圧回路511_1において、ダイオード接続されたトランジスタ501が導通状態になり、ノードN2_1の電圧が下降し始める。ノードN2_1の電圧(電圧VN2ともいう)は、VIN2(信号IN2の電圧)+Vth501(トランジスタ501の閾値電圧)まで下降する。ノードN2_1の電圧が電圧VIN2+Vth501になると、単位降圧回路511_1におけるダイオード接続されたトランジスタ501が非導通状態になり、ノードN2_1は浮遊状態になる。
【0088】
次に、第2の期間では、クロック信号CK2がローレベルになり、クロック信号CKB2がハイレベルになる。
【0089】
このとき、単位降圧回路511_1において、トランジスタ501は、非導通状態に維持され、ノードN2_1は浮遊状態であり、さらに単位降圧回路511_1における容量素子502の第2の電極に与えられる電圧がVに変化するため、容量素子502の第2の電極に合わせて容量素子502の第1の電極の電圧も変化し始める。ノードN2_1の電圧は、VIN2+Vth501−Vまで下降する。このとき、容量素子502の第1の電極と第2の電極の間に印加される電圧は、VIN2+Vth501である。このように、第2の期間において、ノードN2_1の電圧は、第1の期間におけるノードN2_1の電圧が降圧された値となる。
【0090】
さらに、ノードN2_1の電圧がVIN2+Vth501−Vになることにより、単位降圧回路511_2において、ダイオード接続されたトランジスタ501が導通状態になり、ノードN2_2の電圧が下降し始める。ノードN2_2の電圧(VN2ともいう)は、VN2+Vth501まで下降する。ノードN2_2の電圧がVN2+Vth501になると、単位降圧回路511_2におけるダイオード接続されたトランジスタ501が非導通状態になり、ノードN2_2は浮遊状態になる。
【0091】
次に、第3の期間では、クロック信号CK2がハイレベルになり、クロック信号CKB2がローレベルになる。
【0092】
このとき、単位降圧回路511_2において、トランジスタ501は非導通状態に維持され、ノードN2_2は浮遊状態であり、さらに単位降圧回路511_2における容量素子502の第2の電極に与えられる電圧がVに変化するため、容量素子502の第2の電極に合わせて容量素子502の第1の電極の電圧も変化し始める。ノードN2_2の電圧は、VN2+Vth501−Vまで下降する。このとき、容量素子502の第1の電極と第2の電極の間に印加される電圧は、VN2+Vth501である。このように、第3の期間において、ノードN2_2の電圧は、第2の期間におけるノードN2_2の電圧が降圧された値となる。
【0093】
さらに、ノードN2_2の電圧がVN2+Vth501−Vになることにより、単位降圧回路511_3において、ダイオード接続されたトランジスタ501が導通状態になり、ノードN2_3の電圧が下降し始める。ノードN2_3の電圧(VN3ともいう)は、VN2+Vth501まで下降する。ノードN2_3の電圧がVN2+Vth501になると、単位降圧回路511_3におけるダイオード接続されたトランジスタ501が非導通状態になり、ノードN2_3は浮遊状態になる。
【0094】
さらに、3段目以降の各単位降圧回路においてもクロック信号CK2又はクロック信号CKB2がハイレベル又はローレベルに周期的に変化するに従って上記単位降圧回路と同様の動作が順次行われ、各ノードN2_Mの電圧のそれぞれは、クロック信号CK2又はクロック信号CKB2がハイレベル又はローレベルに周期的に変化する毎に徐々に降圧され、最小でVIN2−M(V+Vth501)となる。また、信号OUT2の電圧は、クロック信号CK2又はクロック信号CKB2がハイレベル又はローレベルに周期的に変化する毎に徐々に降圧され、最小でVIN2−n(V+Vth501)となる。このように、図4に示す電圧調整回路は、信号IN2の電圧が降圧された電圧の信号OUT2を出力信号として出力する。
【0095】
以上のように、本実施の形態の電圧調整回路の一例は、各単位降圧回路において降圧動作を行うことにより、入力された信号の電圧より小さい電圧の信号を出力信号として出力することができる。
【0096】
また、本実施の形態の電圧調整回路の一例は、各単位降圧回路においてダイオード接続されたトランジスタが、チャネル形成層として高純度化された酸化物半導体層を用いたトランジスタである構成である。これにより、トランジスタのリーク電流を低減し、所望の電圧への変換効率を向上させることができ、各ノードの電圧の保持期間を長くすることができ、また降圧動作により所望の電圧となるまでの到達速度を速くすることができる。
【0097】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0098】
(実施の形態4)
本実施の形態は、本明細書で開示する電圧調整回路を構成するトランジスタに適用できる薄膜トランジスタの例を示す。
【0099】
本実施の形態のトランジスタ及びトランジスタの作製方法の一形態を、図5及び図6を用いて説明する。
【0100】
図5(A)(B)にトランジスタの平面及び断面構造の一例を示す。図5(A)(B)に示す薄膜トランジスタ410は、トップゲート構造の薄膜トランジスタの一つである。
【0101】
図5(A)はトップゲート構造の薄膜トランジスタ410の平面図であり、図5(B)は図5(A)の線C1−C2における断面図である。
【0102】
薄膜トランジスタ410は、絶縁表面を有する基板400上に、絶縁層407、酸化物半導体層412、ソース電極層又はドレイン電極層415a、及びソース電極層又はドレイン電極層415b、ゲート絶縁層402、ゲート電極層411を含み、ソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415bにそれぞれ配線層414a、配線層414bが接して設けられ電気的に接続している。
【0103】
また、薄膜トランジスタ410はシングルゲート構造の薄膜トランジスタを用いて説明するが、必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造の薄膜トランジスタも形成することができる。
【0104】
以下、図6(A)乃至(E)を用い、基板400上に薄膜トランジスタ410を作製する工程を説明する。
【0105】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板を用いることができる。
【0106】
また、ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。また、ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。なお、酸化ホウ素と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、BよりBaOを多く含むガラス基板を用いることが好ましい
【0107】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いても良い。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。また、プラスチック基板等も適宜用いることができる。また基板としてシリコンなどの半導体基板を用いることもできる。
【0108】
まず、絶縁表面を有する基板400上に下地膜となる絶縁層407を形成する。酸化物半導体層と接する絶縁層407は、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁層を用いると好ましい。絶縁層407の形成方法としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いることができるが、絶縁層407中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法で絶縁層407を成膜することが好ましい。
【0109】
本実施の形態では、絶縁層407として、スパッタリング法により酸化シリコン層を形成する。基板400を処理室へ搬送し、水素及び水分が除去された酸素を含む高純度スパッタガスを導入しシリコン半導体のターゲットを用いて、基板400に絶縁層407として、酸化シリコン層を成膜する。また基板400は室温でもよいし、加熱されていてもよい。
【0110】
例えば、石英(好ましくは合成石英)をターゲットとして用い、基板温度108℃、基板とターゲットの間との距離(T−S間距離)を60mm、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下でRFスパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する。膜厚は100nmとする。なお、石英(好ましくは合成石英)に代えてシリコンターゲットを酸化シリコン膜を成膜するためのターゲットとして用いることができる。なお、スパッタガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いる。
【0111】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層407を成膜することが好ましい。絶縁層407に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0112】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した絶縁層407に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0113】
絶縁層407を成膜する際に用いるスパッタガスは、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0114】
スパッタリング法としては、例えばスパッタ用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法、直流電源を用いるDCスパッタリング法、又はパルス的にバイアスを与えるパルスDCスパッタリング法などがある。RFスパッタリング法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、DCスパッタリング法は主に金属膜を成膜する場合に用いられる。
【0115】
また、材料の異なるターゲットを複数設置できる多元スパッタ装置もある。多元スパッタ装置は、同一チャンバーで異なる材料膜を積層成膜することも、同一チャンバーで複数種類の材料を同時に放電させて成膜することもできる。
【0116】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタリング法を用いるスパッタ装置や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECRスパッタリング法を用いるスパッタ装置がある。
【0117】
また、スパッタリング法を用いる成膜方法として、成膜中にターゲット物質とスパッタガス成分とを化学反応させてそれらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタリング法や、成膜中に基板にも電圧をかけるバイアススパッタリング法もある。
【0118】
また、絶縁層407は積層構造でもよく、例えば、基板400側から窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁層と、上記酸化物絶縁層との積層構造としてもよい。
【0119】
例えば、水素及び水分が除去された窒素を含む高純度のスパッタガスを導入しシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層と基板との間に窒化シリコン層を成膜する。この場合においても、酸化シリコン層と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ窒化シリコン層を成膜することが好ましい。
【0120】
窒化シリコン層を形成する場合も、成膜時に基板を加熱してもよい。
【0121】
絶縁層407として窒化シリコン層と酸化シリコン層とを積層する場合、窒化シリコン層と酸化シリコン層を同じ処理室において、共通のシリコンターゲットを用いて成膜することができる。先に窒素を含むスパッタガスを導入して、処理室内に装着されたシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を形成し、次にスパッタガスを酸素を含むスパッタガスに切り替えて同じシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層を成膜する。窒化シリコン層と酸化シリコン層とを大気に曝露せずに連続して形成することができるため、窒化シリコン層表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止することができる。
【0122】
次いで、絶縁層407上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜を形成する。
【0123】
また、酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁層407が形成された基板400を予備加熱し、基板400に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱は、後に形成するゲート絶縁層402の成膜前の基板400に行ってもよいし、後に形成するソース電極層又はドレイン電極層415a及びソース電極層又はドレイン電極層415bまで形成した基板400にも同様に行ってもよい。
【0124】
なお、酸化物半導体膜をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入し、プラズマを発生させて逆スパッタを行い、絶縁層407の表面に付着しているゴミを除去することが好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側に高周波電源を用いて電圧を印加してプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0125】
酸化物半導体膜はスパッタリング法により成膜する。酸化物半導体膜は、In−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、In−Sn−O系、Sn−O系、Zn−O系の酸化物半導体膜を用いる。本実施の形態では、酸化物半導体膜をIn−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。また、スパッタリング法を用いる場合、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて成膜を行ってもよい。
【0126】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0127】
酸化物半導体膜をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のターゲットの他の例としては、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比である金属酸化物ターゲットを用いることができる。また、上記に示すターゲットに限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比である金属酸化物ターゲットを用いてもよい。また、作製される金属酸化物ターゲットのうち、全体の体積に対して全体の体積から空隙などが占める空間を除いた部分の体積の割合(充填率ともいう)は、90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより形成した酸化物半導体膜は、緻密な膜となる。
【0128】
減圧状態に設定された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板400上に酸化物半導体膜を成膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、酸化物半導体膜成膜時に基板を加熱してもよい。
【0129】
成膜条件の一例としては、基板温度室温、基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量15sccm:アルゴン流量30sccm=1:2)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0130】
次いで、酸化物半導体膜を第1のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層412に加工する(図6(A)参照。)。また、島状の酸化物半導体層412を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0131】
なお、ここでの酸化物半導体膜のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0132】
ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)、塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。
【0133】
また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、弗化硫黄(SF)、弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0134】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0135】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0136】
また、ウェットエッチング後のエッチング液はエッチングされた材料とともに洗浄によって除去される。その除去された材料を含むエッチング液の廃液を精製し、含まれる材料を再利用してもよい。当該エッチング後の廃液から酸化物半導体層に含まれるインジウム等の材料を回収して再利用することにより、資源を有効活用し低コスト化することができる。
【0137】
所望の加工形状にエッチングできるように、材料に合わせてエッチング条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)を適宜調節する。
【0138】
本実施の形態では、エッチング液として燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液を用いたウェットエッチング法により、酸化物半導体膜を島状の酸化物半導体層412に加工する。
【0139】
本実施の形態では、酸化物半導体層412に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、酸化物半導体層への水や水素の混入を防ぎ、酸化物半導体層を得る。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層412の脱水化又は脱水素化を行うことができる。
【0140】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、又は窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0141】
例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0142】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0143】
また、第1の加熱処理の条件、又は酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体層412が結晶化し、微結晶膜又は多結晶膜となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上、又は80%以上の微結晶の酸化物半導体膜となる場合もある。また、第1の加熱処理の条件、又は酸化物半導体層の材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物半導体膜となる場合もある。また、非晶質の酸化物半導体の中に微結晶部(粒径1nm以上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体膜となる場合もある。
【0144】
また、第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層412に加工する前の酸化物半導体膜に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0145】
酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する加熱処理は、酸化物半導体層成膜後、酸化物半導体層上にソース電極層及びドレイン電極層を積層させた後、ソース電極層及びドレイン電極層上にゲート絶縁層を形成した後、のいずれで行っても良い。
【0146】
次いで、絶縁層407及び酸化物半導体層412上に、導電膜を形成する。例えばスパッタリング法や真空蒸着法で導電膜を形成すればよい。導電膜の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、イットリウムのいずれか一又は複数から選択された材料を用いてもよい。また、導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、Ti膜と、そのTi膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にTi膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Alに、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた膜、該元素を複数含む合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0147】
第2のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415bを形成した後、レジストマスクを除去する(図6(B)参照。)。なお、形成されたソース電極層、ドレイン電極層の端部はテーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。
【0148】
本実施の形態ではソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415bとしてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0149】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層412が除去されて、その下の絶縁層407が露出しないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0150】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用いて、酸化物半導体層412にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いて、エッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0151】
なお、第2のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層412は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0152】
第2のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いる。酸化物半導体層412上で隣り合うソース電極層の下端部とドレイン電極層の下端部との間隔幅によって後に形成される薄膜トランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第2のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光においては、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成される薄膜トランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さくすることができるため、低消費電力化も図ることができる。
【0153】
次いで、絶縁層407、酸化物半導体層412、ソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415b上にゲート絶縁層402を形成する(図6(C)参照。)。
【0154】
ゲート絶縁層402は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁層402中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法でゲート絶縁層402を成膜することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲット又は石英ターゲットを用い、スパッタガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いる。
【0155】
ゲート絶縁層402は、ソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415b側から酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の酸化シリコン層(SiOx(x>0))を形成し、第1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層としてスパッタリング法により膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン層(SiNy(y>0))を積層して、膜厚100nmのゲート絶縁層としてもよい。本実施の形態では、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下でRFスパッタリング法により膜厚100nmの酸化シリコン層を形成する。
【0156】
次いで、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってゲート絶縁層402の一部を除去して、ソース電極層又はドレイン電極層415a、ソース電極層又はドレイン電極層415bに達する開口421a、開口421bを形成する(図6(D)参照。)。
【0157】
次に、ゲート絶縁層402、及び開口421a、421b上に導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層411、配線層414a、414bを形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0158】
また、ゲート電極層411、配線層414a、414bを形成するための導電膜は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0159】
例えば、ゲート電極層411、配線層414a、414bの2層の積層構造としては、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された2層の積層構造、又は銅層上にモリブデン層を積層した2層構造、又は銅層上に窒化チタン層若しくは窒化タンタル層を積層した2層構造、窒化チタン層とモリブデン層とを積層した2層構造とすることが好ましい。3層の積層構造としては、タングステン層又は窒化タングステン層と、アルミニウムとシリコンの合金又はアルミニウムとチタンの合金の層と、窒化チタン層又はチタン層とを積層した積層とすることが好ましい。なお、透光性を有する導電膜を用いてゲート電極層を形成することもできる。透光性を有する導電膜としては、透光性導電性酸化物等をその例に挙げることができる。
【0160】
本実施の形態ではゲート電極層411、配線層414a、414bとしてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0161】
次いで、不活性ガス雰囲気下、又は酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。本実施の形態では、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。また、第2の加熱処理は、薄膜トランジスタ410上に保護絶縁層や平坦化絶縁層を形成してから行ってもよい。
【0162】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。
【0163】
以上の工程で、水素、水分、水素化物、水酸化物の濃度が低減された酸化物半導体層412を有する薄膜トランジスタ410を形成することができる(図6(E)参照。)。
【0164】
また、薄膜トランジスタ410上に保護絶縁層や、平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。例えば、保護絶縁層として酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。
【0165】
また、平坦化絶縁層としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁層を形成してもよい。
【0166】
なお、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いても良い。また、有機基はフルオロ基を有していても良い。
【0167】
平坦化絶縁層の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0168】
上記のように酸化物半導体膜を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度を低減することができる。それにより酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0169】
また、本実施の形態に示すトランジスタと同一工程で本発明の一態様の電圧調整回路における容量素子を形成することもできる。トランジスタ及び容量素子を同一工程で形成することにより、工程数の増加を低減することができる。
【0170】
上記構造のトランジスタにすることにより、安定な電気特性を有し信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、該トランジスタはリーク電流が低いため、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、所望の値の電圧への到達速度を格段に向上させることができる。また、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、安定な電気特性を有し信頼性の高い電圧調整回路を提供することができる。
【0171】
なお本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0172】
(実施の形態5)
本実施の形態は、本明細書で開示する電圧調整回路を構成するトランジスタに適用できる薄膜トランジスタの他の例を示す。なお、実施の形態4と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、実施の形態4と同様とすればよく、その繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明も省略する。
【0173】
本実施の形態のトランジスタ及びトランジスタの作製方法の一形態を、図7及び図8を用いて説明する。
【0174】
図7(A)(B)にトランジスタの平面及び断面構造の一例を示す。図7(A)(B)に示す薄膜トランジスタ460は、トップゲート構造の薄膜トランジスタの一つである。
【0175】
図7(A)はトップゲート構造の薄膜トランジスタ460の平面図であり、図7(B)は図7(A)の線D1−D2における断面図である。
【0176】
薄膜トランジスタ460は、絶縁表面を有する基板450上に、絶縁層457、ソース電極層又はドレイン電極層465a(465a1、465a2)、酸化物半導体層462、ソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468、ゲート絶縁層452、ゲート電極層461(461a、461b)を含み、ソース電極層又はドレイン電極層465a(465a1、465a2)は配線層468を介して配線層464と電気的に接続している。また、図示していないが、ソース電極層又はドレイン電極層465bもゲート絶縁層452に設けられた開口において他の配線層と電気的に接続する。
【0177】
以下、図8(A)乃至(E)を用い、基板450上に薄膜トランジスタ460を作製する工程を説明する。
【0178】
まず、絶縁表面を有する基板450上に下地膜となる絶縁層457を形成する。
【0179】
本実施の形態では、絶縁層457として、スパッタリング法により酸化シリコン層を形成する。基板450を処理室へ搬送し、水素及び水分が除去された酸素を含む高純度のスパッタガスを導入しシリコンターゲット又は石英(好ましくは合成石英)を用いて、基板450に絶縁層457として、酸化シリコン層を成膜する。なお、スパッタガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いる。
【0180】
例えば、純度が6Nである石英(好ましくは合成石英)をターゲットとして用い、基板温度108℃、基板とターゲットの間との距離(T−S間距離)を60mm、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下でRFスパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する。膜厚は100nmとする。なお、石英(好ましくは合成石英)に代えてシリコンターゲットを酸化シリコン膜を成膜するためのターゲットとして用いることができる。
【0181】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層457を成膜することが好ましい。絶縁層457に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した絶縁層457に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0182】
絶縁層457を成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0183】
また、絶縁層457は積層構造でもよく、例えば、基板450側から窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層などの窒化物絶縁層と、上記酸化物絶縁層との積層構造としてもよい。
【0184】
例えば、水素及び水分が除去された窒素を含む高純度のスパッタガスを導入しシリコンターゲットを用いて、酸化シリコン層と基板との間に窒化シリコン層を成膜する。この場合においても、酸化シリコン層と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ窒化シリコン層を成膜することが好ましい。
【0185】
次いで、絶縁層457上に、導電膜を形成し、第1のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2を形成した後、レジストマスクを除去する(図8(A)参照。)。ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2は断面図では分断されて示されているが、連続した膜である。なお、形成されたソース電極層、ドレイン電極層の端部はテーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。
【0186】
ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、イットリウムから選択されたいずれか一又は複数の材料を用いてもよい。また、金属導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、Ti膜と、そのTi膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にTi膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Alに、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた膜、合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0187】
本実施の形態ではソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2としてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0188】
次いで、絶縁層457上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜を形成する。
【0189】
次に、第2のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体膜を島状の酸化物半導体層462に加工する(図8(B)参照。)。本実施の形態では、In−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により酸化物半導体膜を成膜する。
【0190】
酸化物半導体膜は、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板450上に酸化物半導体膜を成膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、酸化物半導体膜成膜時に基板を加熱してもよい。
【0191】
酸化物半導体膜を成膜する際に用いるスパッタガスは、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0192】
成膜条件の一例としては、基板温度室温、基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量15sccm:アルゴン流量30sccm=1:2)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0193】
本実施の形態では、エッチング液として燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液を用いたウェットエッチング法により、酸化物半導体膜を島状の酸化物半導体層462に加工する。
【0194】
本実施の形態では、酸化物半導体層462に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、酸化物半導体層への水や水素の混入を防ぎ、酸化物半導体層を得る。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層462の脱水化又は脱水素化を行うことができる。
【0195】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0196】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0197】
また、第1の加熱処理の条件、又は酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体層462が結晶化し、微結晶膜又は多結晶膜となる場合もある。
【0198】
また、第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層462に加工する前の酸化物半導体膜に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0199】
酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する加熱処理は、酸化物半導体層成膜後、酸化物半導体層上にさらにソース電極及びドレイン電極を積層させた後、ソース電極及びドレイン電極上にゲート絶縁層を形成した後、のいずれで行っても良い。
【0200】
次いで、絶縁層457及び酸化物半導体層462上に、導電膜を形成し、第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468を形成した後、レジストマスクを除去する(図8(C)参照。)。ソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468はソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2と同様な材料及び工程で形成すればよい。
【0201】
本実施の形態では、ソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468としてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。本実施の形態は、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2とソース電極層又はドレイン電極層465bに同じチタン膜を用いる例のため、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2とソース電極層又はドレイン電極層465bとはエッチングにおいて選択比がとれない。よって、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2が、ソース電極層又はドレイン電極層465bのエッチング時にエッチングされないように、酸化物半導体層462に覆われないソース電極層又はドレイン電極層465a2上に配線層468を設けている。ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2とソース電極層又はドレイン電極層465bとにエッチング工程において高い選択比を有する異なる材料を用いる場合には、エッチング時にソース電極層又はドレイン電極層465a2を保護する配線層468は必ずしも設けなくてもよい。
【0202】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層462が除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0203】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用いて、酸化物半導体層462にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いて、エッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0204】
なお、第3のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層462は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層又はドレイン電極層465b、配線層468を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0205】
次いで、絶縁層457、酸化物半導体層462、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2、ソース電極層又はドレイン電極層465b、及び配線層468上にゲート絶縁層452を形成する。
【0206】
ゲート絶縁層452は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。なお、ゲート絶縁層452中に水素が多量に含まれないようにするためには、スパッタリング法でゲート絶縁層452を成膜することが好ましい。スパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲット又は石英ターゲットを用い、スパッタガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いる。
【0207】
ゲート絶縁層452は、ソース電極層又はドレイン電極層465a1、465a2、ソース電極層又はドレイン電極層465b側から酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。本実施の形態では、圧力0.4Pa、高周波電源1.5kW、酸素及びアルゴン(酸素流量25sccm:アルゴン流量25sccm=1:1)雰囲気下でRFスパッタリング法により膜厚100nmの酸化シリコン層を形成する。
【0208】
次いで、第4のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってゲート絶縁層452の一部を除去して、配線層468に達する開口423を形成する(図8(D)参照。)。図示しないが開口423の形成時にソース電極層又はドレイン電極層465bに達する開口を形成してもよい。本実施の形態では、ソース電極層又はドレイン電極層465bへの開口はさらに層間絶縁層を積層した後に形成し、電気的に接続する配線層を開口に形成する例とする。
【0209】
次に、ゲート絶縁層452、及び開口423上に導電膜を形成した後、第5のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層461(461a、461b)、配線層464を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0210】
また、ゲート電極層461(461a、461b)、配線層464を形成するための導電膜は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0211】
本実施の形態ではゲート電極層461(461a、461b)、配線層464としてスパッタリング法により膜厚150nmのチタン膜を形成する。
【0212】
次いで、不活性ガス雰囲気下、又は酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。本実施の形態では、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。また、第2の加熱処理は、薄膜トランジスタ460上に保護絶縁層や平坦化絶縁層を形成してから行ってもよい。
【0213】
さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。
【0214】
以上の工程で、水素、水分、水素化物、水酸化物の濃度が低減された酸化物半導体層462を有する薄膜トランジスタ460を形成することができる(図8(E)参照。)。
【0215】
また、薄膜トランジスタ460上に保護絶縁層や、平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。なお、図示しないが、ゲート絶縁層452、保護絶縁層や平坦化絶縁層にソース電極層又はドレイン電極層465bに達する開口を形成し、その開口に、ソース電極層又はドレイン電極層465bと電気的に接続する配線層を形成する。
【0216】
上記のように酸化物半導体膜を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度を低減することができる。それにより酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0217】
また、本実施の形態に示すトランジスタと同一工程で本発明の一態様の電圧調整回路における容量素子を形成することもできる。トランジスタ及び容量素子を同一工程で形成することにより、工程数の増加を低減することができる。
【0218】
上記構造のトランジスタにすることにより、安定な電気特性を有し信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、該トランジスタはリーク電流が低いため、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、所望の値の電圧への到達速度を格段に向上させることができる。また、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、安定な電気特性を有し信頼性の高い電圧調整回路を提供することができる。
【0219】
なお本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0220】
(実施の形態6)
本実施の形態は、本明細書で開示する電圧調整回路を構成するトランジスタに適用できる薄膜トランジスタの他の例を示す。なお、実施の形態4と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、実施の形態4と同様とすればよく、その繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明も省略する。本実施の形態で示す薄膜トランジスタ425、426は、実施の形態1乃至実施の形態3の電圧調整回路を構成する薄膜トランジスタとして用いることができる。
【0221】
本実施の形態の薄膜トランジスタを、図9を用いて説明する。
【0222】
図9(A)(B)に薄膜トランジスタの断面構造の一例を示す。図9(A)(B)に示す薄膜トランジスタ425、426は、酸化物半導体層を導電層とゲート電極層とで挟んだ構造の薄膜トランジスタの一つである。
【0223】
また、図9(A)(B)において、基板はシリコン基板を用いており、シリコン基板420上に設けられた絶縁層422上に薄膜トランジスタ425、426がそれぞれ設けられている。
【0224】
図9(A)において、シリコン基板420に設けられた絶縁層422と絶縁層407との間に少なくとも酸化物半導体層412全体と重なるように導電層427が設けられている。
【0225】
なお、図9(B)は、絶縁層422と絶縁層407との間の導電層が、導電層424のようにエッチングにより加工され、酸化物半導体層412の少なくともチャネル領域を含む一部と重なる例である。
【0226】
導電層427、424は後工程で行われる加熱処理温度に耐えられる金属材料であればよく、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜、又は上述した元素を成分とする窒化物などを用いることができる。また、単層構造でも積層構造でもよく、例えばタングステン層単層、又は窒化タングステン層とタングステン層との積層構造などを用いることができる。
【0227】
また、導電層427、424は、電位が薄膜トランジスタ425、426のゲート電極層411と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層427、424の電位がGND、0Vという固定電位であってもよい。
【0228】
導電層427、424によって、薄膜トランジスタ425、426の電気特性を制御することができる。
【0229】
また、導電層を設けることにより第2のゲート電極層を形成する構成に限定されず、例えば基板として半導体基板を用いる場合には該基板を熱酸化することにより該基板に形成された領域を第2のゲート電極層として機能させることもできる。
【0230】
また、本実施の形態に示すトランジスタと同一工程で本発明の一態様の電圧調整回路における容量素子を形成することもできる。トランジスタ及び容量素子を同一工程で形成することにより、工程数の増加を低減することができる。
【0231】
上記構造のトランジスタにすることにより、安定な電気特性を有し信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、該トランジスタはリーク電流が低いため、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、所望の値の電圧への到達速度を格段に向上させることができる。また、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、安定な電気特性を有し信頼性の高い電圧調整回路を提供することができる。
【0232】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0233】
(実施の形態7)
本実施の形態は、本明細書で開示する電圧調整回路を構成するトランジスタに適用できる薄膜トランジスタの例を示す。
【0234】
本実施の形態の薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタの作製方法の一形態を、図10を用いて説明する。
【0235】
図10(A)乃至(E)に薄膜トランジスタの作製方法の一例を示す。図10(A)乃至(E)に示す薄膜トランジスタ390は、ボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型薄膜トランジスタともいう。
【0236】
また、薄膜トランジスタ390は、シングルゲート構造の薄膜トランジスタを用いて説明するが、必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造の薄膜トランジスタも形成することができる。
【0237】
以下、図10(A)乃至(E)を用い、基板394上に薄膜トランジスタ390を作製する工程を説明する。
【0238】
まず、絶縁表面を有する基板394上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層391を形成する。形成されたゲート電極層の端部はテーパ形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被覆性が向上するため好ましい。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0239】
絶縁表面を有する基板394に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板を用いることができる。
【0240】
また、ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。また、ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。なお、酸化ホウ素(B)と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、BよりBaOを多く含むガラス基板を用いることが好ましい
【0241】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いても良い。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。また、プラスチック基板等も適宜用いることができる。また基板としてシリコンなどの半導体基板を用いることもできる。
【0242】
下地膜となる絶縁膜を基板394とゲート電極層391との間に設けてもよい。下地膜は、基板394からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0243】
また、ゲート電極層391を形成するための導電膜は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0244】
例えば、ゲート電極層391の2層の積層構造としては、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された2層の積層構造、銅層上にモリブデン層を積層した2層構造、銅層上に窒化チタン層若しくは窒化タンタル層を積層した2層構造、窒化チタン層とモリブデン層とを積層した2層構造、又は窒化タングステン層とタングステン層とを積層した2層構造とすることが好ましい。3層の積層構造としては、タングステン層又は窒化タングステン層と、アルミニウムとシリコンの合金の層又はアルミニウムとチタンの合金の層と、窒化チタン層又はチタン層とを積層した積層とすることが好ましい。なお、透光性を有する導電膜を用いてゲート電極層を形成することもできる。透光性を有する導電膜としては、透光性導電性酸化物等をその例に挙げることができる。
【0245】
次いで、ゲート電極層391上にゲート絶縁層397を形成する。
【0246】
ここで、不純物を除去することによりi型化又は実質的にi型化された酸化物半導体(高純度化された酸化物半導体)は界面準位、界面電荷に対して極めて敏感であるため、ゲート絶縁層との界面は重要である。そのため高純度化された酸化物半導体層に接するゲート絶縁層(GI)は、高品質化が要求される。
【0247】
例えば、μ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁膜を形成できるので好ましい。高純度化された酸化物半導体層と高品質ゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。ここで用いられる高密度プラズマ装置としては、1×1011/cm以上のプラズマ密度を達成できる装置を用いることができる。
【0248】
例えば、3kW〜6kWのマイクロ波電力を印加してプラズマを発生させて、絶縁膜の成膜を行う。チャンバーに材料ガスとしてモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)と希ガスを導入し、10Pa〜30Paの圧力下で高密度プラズマを発生させてガラス等の絶縁表面を有する基板上に絶縁膜を形成する。その後、モノシランガスの供給を停止し、大気に曝すことなく亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面にプラズマ処理を行ってもよい。少なくとも亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面に行われるプラズマ処理は、絶縁膜の成膜より後に行う。チャンバーに導入するモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)との流量比は、1:10から1:200の範囲とする。また、チャンバーに導入する希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどを用いることができるが、中でも安価であるアルゴンを用いることが好ましい。
【0249】
もちろん、ゲート絶縁層397として良質な絶縁膜を形成できるものであれば、スパッタリング法やプラズマCVD法など他の成膜方法を適用することができる。また、成膜後の熱処理によってゲート絶縁膜の膜質、酸化物半導体との界面特性が改質される絶縁膜であっても良い。いずれにしても、ゲート絶縁膜としての膜質が良好であることは勿論のこと、酸化物半導体との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるものであれば良い。
【0250】
さらに、85℃、2×10V/cm、12時間のゲートバイアス・熱ストレス試験(BT試験)においては、不純物が酸化物半導体に添加されていると、不純物と酸化物半導体の主成分との結合手が、強電界(B:バイアス)と高温(T:温度)により切断され、生成された未結合手がしきい値電圧(Vth)のドリフトを誘発することとなる。これに対して、本発明の一態様であるトランジスタは、酸化物半導体の不純物、特に水素や水等を極力除去し、上記のようにゲート絶縁層との界面特性を良好にすることにより、BT試験に対しても安定な薄膜トランジスタを得ることを可能としている。
【0251】
また、ゲート絶縁層397としては、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層(SiOとも呼ぶ、ただし、x>y>0)、窒化酸化シリコン層(SiNとも呼ぶ、ただし、x>y>0)、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。
【0252】
また、ゲート絶縁層397は、酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。本実施の形態では、一例として圧力30Pa、マイクロ波電力6kWで高密度プラズマCVD法により膜厚100nmの酸化窒化シリコン層を形成する。このときチャンバーに導入するモノシランガス(SiH)と亜酸素窒素(NO)との流量比は、1:10とする。
【0253】
また、ゲート絶縁層397、酸化物半導体膜393に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極層391が形成された基板394、又はゲート絶縁層397までが形成された基板394を予備加熱し、基板394に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度としては、100℃以上400℃以下好ましくは150℃以上300℃以下である。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱は、酸化物絶縁層396の成膜前に、ソース電極層又はドレイン電極層395a及びソース電極層又はドレイン電極層395bまで形成した基板394にも同様に行ってもよい。
【0254】
次いで、ゲート絶縁層397上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜393を形成する(図10(A)参照。)。
【0255】
なお、酸化物半導体膜393をスパッタリング法により成膜する前に、アルゴンガスを導入し、プラズマを発生させて逆スパッタを行い、ゲート絶縁層397の表面に付着しているゴミを除去することが好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0256】
酸化物半導体膜393はスパッタリング法により成膜する。酸化物半導体膜393は、In−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、In−Sn−O系、Sn−O系、Zn−O系の酸化物半導体膜を用いる。本実施の形態では、酸化物半導体膜393をIn−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜393は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。また、スパッタリング法を用いる場合、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて成膜を行ってもよい。
【0257】
酸化物半導体膜393をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のターゲットの他の例としては、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比である金属酸化物ターゲットを用いることができる。また、上記に示すターゲットに限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比である金属酸化物ターゲットを用いてもよい。また、作製される金属酸化物ターゲットの充填率は、90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより形成した酸化物半導体膜は、緻密な膜となる。
【0258】
減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板を室温又は400℃未満の温度に加熱する。そして、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板394上に酸化物半導体膜393を成膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、クライオポンプにより処理室内に残留する水分を除去しながらスパッタ成膜を行うことで、酸化物半導体膜393を成膜する際の基板温度は室温から400℃未満とすることができる。
【0259】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を60mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0260】
次いで、酸化物半導体膜を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層399に加工する(図10(B)参照。)。また、島状の酸化物半導体層399を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0261】
また、ゲート絶縁層397にコンタクトホールを形成する場合、その工程は酸化物半導体層399の形成時に行うことができる。
【0262】
なお、ここでの酸化物半導体膜393のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0263】
ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)、塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。
【0264】
また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、弗化硫黄(SF)、弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0265】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0266】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0267】
また、ウェットエッチング後のエッチング液はエッチングされた材料とともに洗浄によって除去される。その除去された材料を含むエッチング液の廃液を精製し、含まれる材料を再利用してもよい。当該エッチング後の廃液から酸化物半導体層に含まれるインジウム等の材料を回収して再利用することにより、資源を有効活用し低コスト化することができる。
【0268】
所望の加工形状にエッチングできるように、材料に合わせてエッチング条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)を適宜調節する。
【0269】
なお、次工程の導電膜を形成する前に逆スパッタを行い、酸化物半導体層399及びゲート絶縁層397の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0270】
次いで、ゲート絶縁層397、及び酸化物半導体層399上に、導電膜を形成する。例えばスパッタリング法や真空蒸着法で導電膜を形成すればよい。導電膜の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、イットリウムのいずれか一又は複数から選択された材料を用いてもよい。また、導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、Ti膜と、そのTi膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にTi膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Alに、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた膜、合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0271】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層又はドレイン電極層395a、ソース電極層又はドレイン電極層395bを形成した後、レジストマスクを除去する(図10(C)参照。)。
【0272】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いる。酸化物半導体層399上で隣り合うソース電極層の下端部とドレイン電極層の下端部との間隔幅によって後に形成される薄膜トランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光においては、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成される薄膜トランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化でき、さらに、オフ電流値を極めて小さくすることができるため、低消費電力化も図ることができる。
【0273】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層399は除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0274】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用いて、酸化物半導体層399にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いて、エッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0275】
なお、第3のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層399は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層又はドレイン電極層395a、ソース電極層又はドレイン電極層395bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0276】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0277】
O、N、又はArなどのガスを用いたプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去してもよい。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0278】
プラズマ処理を行った場合、大気に触れることなく、酸化物半導体層の一部に接する保護絶縁膜となる酸化物絶縁層として酸化物絶縁層396を形成する(図10(D)参照。)。本実施の形態では、酸化物半導体層399がソース電極層又はドレイン電極層395a、ソース電極層又はドレイン電極層395bと重ならない領域において、酸化物半導体層399と酸化物絶縁層396とが接するように形成する。
【0279】
本実施の形態では、島状の酸化物半導体層399、ソース電極層又はドレイン電極層395a、ソース電極層又はドレイン電極層395bまで形成された基板394を室温又は100℃未満の温度に加熱し、水素及び水分が除去された酸素を含む高純度のスパッタガスを導入しシリコン半導体のターゲットを用いて、酸化物絶縁層396として、欠陥を含む酸化シリコン層を成膜する。
【0280】
例えば、純度が6Nであり、ボロンがドープされたシリコンターゲット(抵抗率0.01Ωcm)を用い、基板とターゲットの間との距離(T−S間距離)を89mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源6kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下でパルスDCスパッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する。膜厚は300nmとする。なお、シリコンターゲットに代えて石英(好ましくは合成石英)を酸化シリコン膜を成膜するためのターゲットとして用いることができる。なお、スパッタガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いて行う。
【0281】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層396を成膜することが好ましい。酸化物半導体層399及び酸化物絶縁層396に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0282】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物絶縁層396に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0283】
なお、酸化物絶縁層396として、酸化シリコン層に代えて、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などを用いることもできる。
【0284】
さらに、酸化物絶縁層396と酸化物半導体層399とを接した状態で100℃乃至400℃で加熱処理を行ってもよい。本実施の形態における酸化物絶縁層396は欠陥を多く含むため、この加熱処理によって酸化物半導体層399中に含まれる水素、水分、水酸基又は水素化物などの不純物を酸化物絶縁層396に拡散させ、酸化物半導体層399中に含まれる該不純物をより低減させることができる。
【0285】
以上の工程で、水素、水分、水酸基又は水素化物の濃度が低減された酸化物半導体層392を有する薄膜トランジスタ390を形成することができる(図10(E)参照。)。
【0286】
上記のように酸化物半導体膜を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体膜中の水素及び水素化物の濃度を低減することができる。それにより酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。
【0287】
酸化物絶縁層上に保護絶縁層を設けてもよい。本実施の形態では、保護絶縁層398を酸化物絶縁層396上に形成する。保護絶縁層398としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いる。
【0288】
酸化物絶縁層396まで形成された基板394を100℃〜400℃の温度に加熱し、水素及び水分が除去された窒素を含む高純度のスパッタガスを導入しシリコン半導体のターゲットを用いて保護絶縁層398として、窒化シリコン膜を成膜する。この場合においても、酸化物絶縁層396と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層398を成膜することが好ましい。
【0289】
保護絶縁層398を形成する場合、保護絶縁層398の成膜時に100℃〜400℃に基板394を加熱することで、酸化物半導体層399中に含まれる水素若しくは水分を酸化物絶縁層396に拡散させることができる。この場合上記酸化物絶縁層396の形成後に加熱処理を行わなくてもよい。
【0290】
酸化物絶縁層396として酸化シリコン層を、保護絶縁層398として窒化シリコン層を積層する場合、酸化シリコン層と窒化シリコン層を同じ処理室において、共通のシリコンターゲットを用いて成膜することができる。先に酸素を含むスパッタガスを導入して、処理室内に装着されたシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層を形成し、次にスパッタガスを窒素を含むスパッタガスに切り替えて同じシリコンターゲットを用いて窒化シリコン層を成膜する。酸化シリコン層と窒化シリコン層とを大気に曝露せずに連続して形成することができるため、酸化シリコン層表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止することができる。この場合、酸化物絶縁層396として酸化シリコン層を形成し、保護絶縁層398として窒化シリコン層を積層した後、酸化物半導体層中に含まれる水素若しくは水分を酸化物絶縁層396に拡散させるための加熱処理(温度100℃乃至400℃)を行うとよい。
【0291】
保護絶縁層398の形成後、さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁層396の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、ノーマリーオフとなる薄膜トランジスタを得ることができる。よって薄膜トランジスタの信頼性を向上できる。
【0292】
また、ゲート絶縁層上にチャネル形成領域とする酸化物半導体層を成膜するに際し、反応雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体層中の水素及び水素化物の濃度を低減することができる。
【0293】
上記の工程は、400℃以下の温度で行われるため、厚さが1mm以下で、一辺が1mを超えるガラス基板を用いる製造工程にも適用することができる。また、400℃以下の処理温度で全ての工程を行うことができる。
【0294】
さらに、図11に酸化物半導体を用いた逆スタガ型の薄膜トランジスタの縦断面図を示す。ゲート電極1001上にゲート絶縁膜1002を介して酸化物半導体層1003が設けられ、その上にソース電極1004a及びドレイン電極1004bが設けられ、ソース電極1004a及びドレイン電極1004bの上に酸化物絶縁層1005が設けられ、酸化物絶縁層1005を挟んで酸化物半導体層1003の上に導電層1006が設けられる。
【0295】
図12は、図11に示すA−A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。図12(A)はソースとドレインの間の電圧を等電位(VD=0V)とした場合を示し、図12(B)はソースに対しドレインに正の電位(VD>0)を加えた場合を示す。
【0296】
図13は、図11におけるB−B’の断面におけるエネルギーバンド図(模式図)である。図13(A)はゲート(G1)に正の電位(+VG)が印加された状態であり、ソースとドレインの間にキャリア(電子)が流れるオン状態を示している。また、図13(B)は、ゲート(G1)に負の電位(−VG)が印加された状態であり、オフ状態(少数キャリアは流れない)である場合を示す。
【0297】
図14は、真空準位と金属の仕事関数(φM)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係を示す。
【0298】
金属は縮退しているため、伝導帯中にフェルミ準位が位置する。一方、従来の酸化物半導体は一般にn型であり、その場合のフェルミ準位(Ef)は、バンドギャップ中央に位置する真性フェルミ準位(Ei)から離れて、伝導帯寄りに位置している。なお、酸化物半導体において成膜方法にも依存するが、酸化物半導体層には多少の水素もしくは水が含有され、その一部が電子を供給するドナーとなり、n型化する一つの要因であることが知られている。
【0299】
これに対して本発明に係る酸化物半導体は、n型不純物である水素を酸化物半導体から除去し、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することにより真性(i型)、又は実質的に真性な半導体としたものである。すなわち、不純物を添加してi型化するのでなく、水素や水等の不純物を極力除去したことにより、高純度化されたi型(真性半導体)又はそれに近づけることを特徴としている。そうすることにより、フェルミ準位(Ef)は真性フェルミ準位(Ei)と同じレベルにまですることができる。
【0300】
酸化物半導体のバンドギャップ(Eg)が3.15eVである場合、電子親和力(χ)は4.3eVと言われている。ソース電極及びドレイン電極を構成するチタン(Ti)の仕事関数は、酸化物半導体の電子親和力(χ)とほぼ等しい。この場合、金属−酸化物半導体界面において、電子に対してショットキー型の障壁は形成されない。
【0301】
すなわち、金属の仕事関数(φM)と酸化物半導体の電子親和力(χ)が等しい場合、両者が接触すると図12(A)で示すようなエネルギーバンド図(模式図)が示される。
【0302】
図12(B)において黒丸(●)は電子を示し、ドレインに正の電位が印加されると、電子はバリア(h)をこえて酸化物半導体に注入され、ドレインに向かって流れる。この場合、バリア(h)の高さは、ゲート電圧とドレイン電圧に依存して変化するが、正のドレイン電圧が印加された場合には、電圧印加のない図12(A)のバリアの高さすなわちバンドギャップ(Eg)の1/2よりもバリアの高さ(h)は小さい値となる。
【0303】
このとき電子は、図13(A)で示すようにゲート絶縁膜と高純度化された酸化物半導体との界面における、酸化物半導体側のエネルギー的に安定な最低部を移動する。
【0304】
また、図13(B)において、ゲート電極1001に負の電位(逆バイアス)が印加されると、少数キャリアであるホールは実質的にゼロであるため、電流は限りなくゼロに近い値となる。
【0305】
例えば、薄膜トランジスタのチャネル幅Wが1×10μmでチャネル長が3μmの素子であっても、オフ電流が10−13A以下であり、サブスレッショルドスイング値(S値)が0.1V/dec.(ゲート絶縁膜厚100nm)である。
【0306】
さらに、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流をさらに正確に求めた結果について、以下に説明する。
【0307】
高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流は、上述したように、測定器の検出限界である1×10−13A以下である。そこで、特性評価用素子を作製し、より正確なオフ電流の値(上記測定における測定器の検出限界以下の値)を求めた結果について、以下に説明する。
【0308】
はじめに、電流測定方法に用いた特性評価用素子について、図15を参照して説明する。
【0309】
図15に示す特性評価用素子は、測定系800が3つ並列接続で電気的に接続される。測定系800は、容量素子802、トランジスタ804、トランジスタ805、トランジスタ806、及びトランジスタ808を有する。トランジスタ804、トランジスタ808には、一例として実施の形態4に従って作製したトランジスタを使用した。
【0310】
トランジスタ808は、ソース及びドレインの一方に電圧V11が入力され、ゲートに電位Vext_b1が入力される。電位Vext_b1は、トランジスタ808のオン状態又はオフ状態を制御する電位である。
【0311】
トランジスタ804は、ソース及びドレインの一方がトランジスタ808のソース及びドレインの他方に電気的に接続され、ソース及びドレインの他方に電圧V12が入力され、ゲートに電位Vext_b2が入力される。電位Vext_b2は、トランジスタ804のオン状態又はオフ状態を制御する電位である。
【0312】
容量素子802は、第1端子及び第2端子を有し、第1端子がトランジスタ804のソース及びドレインの一方に電気的に接続され、第2端子がトランジスタ804のソース及びドレインの他方に電気的に接続される。なお、容量素子802の第1端子と、トランジスタ808のソース及びドレインの他方、トランジスタ804のソース及びドレインの一方、及びトランジスタ805のゲートと、の接続箇所をノードAともいう。
【0313】
トランジスタ806は、ソース及びドレインの一方に電位V11が入力され、ゲートが自身のソース及びドレインの一方に電気的に接続される。
【0314】
トランジスタ805は、ソース及びドレインの一方がトランジスタ806のソース及びドレインの他方に電気的に接続され、ソース及びドレインの他方に電位V12が入力される。
【0315】
なお測定系800において、トランジスタ806のソース及びドレインの他方とトランジスタ805のソース及びドレインの一方との接続箇所が出力端子となっており、測定系800は、出力端子を介して電位Voutを出力する。
【0316】
次に、図15に示す測定系を用いた電流測定方法について説明する。
【0317】
まず、オフ電流を測定するために電位差を付与する初期期間の概略について説明する。初期期間においては、電位Vext_b1の値をトランジスタ808がオン状態になる値にし、トランジスタ808をオン状態にし、ノードAに電位V11を与える。ここで、電位V11は、例えば高電位とする。また、トランジスタ804をオフ状態にしておく。
【0318】
その後、電位Vext_b1をトランジスタ808がオフ状態になる値にし、トランジスタ808をオフ状態にする。さらにトランジスタ808をオフ状態にした後に、電位V11を低電位とする。ここでも、トランジスタ804はオフ状態にしておく。また、電位V12は電位V11と同じ電位とする。以上により、初期期間が終了する。初期期間が終了した状態では、ノードAとトランジスタ804のソース及びドレインの一方との間に電位差が生じ、また、ノードAとトランジスタ808のソース及びドレインの他方との間に電位差が生じることになるため、トランジスタ804及びトランジスタ808には僅かに電荷が流れる。つまり、オフ電流が発生する。
【0319】
次に、オフ電流の測定期間の概略について説明する。測定期間においては、トランジスタ804のソース又はドレインの一方の電位(つまり電位V12)、及び、トランジスタ808のソース又はドレインの他方の電位(つまり電位V11)は低電位に固定しておく。一方で、測定期間中は、上記ノードAの電位は固定しない(浮遊状態とする)。これにより、トランジスタ804に電荷が流れ、時間の経過と共にノードAに保持される電荷量が変動する。そして、ノードAに保持される電荷量の変動に伴って、ノードAの電位が変動する。つまり、出力端子の出力電位である電位Voutも変動する。
【0320】
上記電位差を付与する初期期間、及び、その後の測定期間における各電位の関係の詳細(タイミングチャート)を図16に示す。
【0321】
初期期間において、まず、電位Vext_b2を、トランジスタ804がオン状態になるような電位(高電位)とする。これによって、ノードAの電位はV12すなわち低電位(例えばVSS)となる。その後、電位Vext_b2を、トランジスタ804がオフ状態になるような電位(低電位)として、トランジスタ804をオフ状態とする。そして、次に、電位Vext_b1を、トランジスタ808がオン状態となるような電位(高電位)とする。これによって、ノードAの電位はV11、すなわち高電位(例えばVDD)となる。その後、Vext_b1を、トランジスタ808がオフ状態となるような電位とする。これによって、ノードAが浮遊状態となり、初期期間が終了する。
【0322】
その後の測定期間においては、電位V11及び電位V12を、ノードAに電荷が流れ込み、又はノードAから電荷が流れ出すような電位とする。ここでは、電位V11及び電位V12を低電位(VSS)とする。ただし、出力電位Voutを測定するタイミングにおいては、出力回路を動作させる必要が生じるため、一時的にV11を高電位(VDD)とすることがある。なお、V11を高電位(VDD)とする期間は、測定に影響を与えない程度の短期間とする。
【0323】
上述のようにして電位差を与え、測定期間が開始されると、時間の経過と共にノードAに保持される電荷量が変動し、これに従ってノードAの電位が変動する。これは、トランジスタ805のゲートの電位が変動することを意味するから、時間の経過と共に、出力端子の出力電位Voutの電位も変化する。
【0324】
得られた出力電位Voutから、オフ電流を算出する方法について、以下に説明する。
【0325】
オフ電流の算出の前に、ノードAの電位Vと、出力電位Voutとの関係を求めておく。これにより、出力電位VoutからノードAの電位Vを求めることができる。上述の関係から、ノードAの電位Vは、出力電位Voutの関数として次式のように表すことができる。
【0326】
【数1】

【0327】
また、ノードAの電荷Qは、ノードAの電位V、ノードAに接続される容量C、定数(const)を用いて、次式のように表される。ここで、ノードAに接続される容量Cは、容量素子802の容量と他の容量の和である。
【0328】
【数2】

【0329】
ノードAの電流Iは、ノードAに流れ込む電荷(又はノードAから流れ出る電荷)の時間微分であるから、ノードAの電流Iは次式のように表される。
【0330】
【数3】

【0331】
このように、ノードAに接続される容量Cと、出力端子の出力電位Voutから、ノードAの電流Iを求めることができる。
【0332】
以上に示す方法により、オフ状態においてトランジスタのソースとドレイン間を流れるリーク電流(オフ電流)を測定することができる。
【0333】
本実施の形態では、高純度化した酸化物半導体を用いてトランジスタ804、トランジスタ808を作製した。トランジスタのチャネル長(L)とチャネル幅(W)の比は、L/W=1/5とした。また、並列された各測定系800において、容量素子802の容量値をそれぞれ、100fF、1pF、3pFとした。
【0334】
なお、本実施の形態に係る測定では、VDD=5V、VSS=0Vとした。また、測定期間においては、電位V11を原則としてVSSとし、10〜300secごとに、100msecの期間だけVDDとしてVoutを測定した。また、素子に流れる電流Iの算出に用いられるΔtは、約30000secとした。
【0335】
図17に、上記電流測定に係る経過時間Timeと、出力電位Voutとの関係を示す。90時間程度から、電位変化の様子が確認できる。
【0336】
図18には、上記電流測定によって算出されたオフ電流を示す。なお、図18は、ソース−ドレイン電圧Vと、オフ電流Iとの関係を表すものである。図18から、ソース−ドレイン電圧が4Vの条件において、オフ電流は約40zA/μmであることが分かった。また、ソース−ドレイン電圧が3.1Vの条件において、オフ電流は10zA/μm以下であることが分かった。なお、1zAは10−21Aを表す。
【0337】
さらに、上記トランジスタの温度が85℃のときの上記電流測定によって算出されたオフ電流について図19に示す。図19は、85℃のときのソース−ドレイン電圧Vと、オフ電流Iとの関係を表すものである。図19から、ソース−ドレイン電圧が3.1Vの条件において、オフ電流は100zA/μm以下であることが分かった。
【0338】
以上、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタでは、オフ電流が十分に小さくなることが確認された。
【0339】
このように、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することにより、薄膜トランジスタの動作を良好なものとすることができる。
【0340】
また、本実施の形態に示すトランジスタと同一工程で本発明の一態様の電圧調整回路における容量素子を形成することもできる。トランジスタ及び容量素子を同一工程で形成することにより、工程数の増加を低減することができる。
【0341】
上記構造のトランジスタにすることにより、安定な電気特性を有し信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、該トランジスタはリーク電流が低いため、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、所望の値の電圧への到達速度を格段に向上させることができる。また、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、安定な電気特性を有し信頼性の高い電圧調整回路を提供することができる。
【0342】
なお本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0343】
(実施の形態8)
本実施の形態は、本明細書で開示する電圧調整回路を構成するトランジスタに適用できる薄膜トランジスタの他の例を示す。
【0344】
本実施の形態の薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタの作製方法の一形態を図20を用いて説明する。
【0345】
図20(A)乃至(E)に薄膜トランジスタの作製方法の一例を示す。図20(A)乃至(E)に示す薄膜トランジスタ310は、ボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型薄膜トランジスタともいう。
【0346】
また、薄膜トランジスタ310はシングルゲート構造の薄膜トランジスタを用いて説明するが、必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造の薄膜トランジスタも形成することができる。
【0347】
以下、図20(A)乃至(E)を用い、基板300上に薄膜トランジスタ310を作製する工程を説明する。
【0348】
まず、絶縁表面を有する基板300上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層311を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0349】
絶縁表面を有する基板300に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板を用いることができる。
【0350】
また、ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。また、ガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。なお、酸化ホウ素(B)と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、BよりBaOを多く含むガラス基板を用いることが好ましい
【0351】
なお、上記のガラス基板に代えて、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板を用いても良い。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。また基板としてシリコンなどの半導体基板を用いることもできる。
【0352】
下地膜となる絶縁膜を基板300とゲート電極層311との間に設けてもよい。下地膜は、基板300からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素膜、又は酸化窒化珪素膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0353】
また、ゲート電極層311を形成するための導電膜は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0354】
例えば、ゲート電極層311の2層の積層構造としては、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された2層の積層構造、銅層上にモリブデン層を積層した2層の積層構造、銅層上に窒化チタン層若しくは窒化タンタル層を積層した2層の積層構造、窒化チタン層とモリブデン層とを積層した2層の積層構造、又は窒化タングステン層とタングステン層との2層の積層構造とすることが好ましい。3層の積層構造としては、タングステン層又は窒化タングステン層と、アルミニウムと珪素の合金の層又はアルミニウムとチタンの合金の層と、窒化チタン層又はチタン層とを積層した積層とすることが好ましい。
【0355】
次いで、ゲート電極層311上にゲート絶縁層302を形成する。
【0356】
ここで、不純物を除去することによりi型化又は実質的にi型化された酸化物半導体(高純度化された酸化物半導体)は界面準位、界面電荷に対して極めて敏感であるため、ゲート絶縁層との界面は重要である。そのため高純度化された酸化物半導体層に接するゲート絶縁層(GI)は、高品質化が要求される。
【0357】
例えば、μ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁膜を形成できるので好ましい。高純度化された酸化物半導体層と高品質ゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。ここで用いられる高密度プラズマ装置としては、1×1011/cm以上のプラズマ密度を達成できる装置を用いることができる。
【0358】
例えば、3kW〜6kWのマイクロ波電力を印加してプラズマを発生させて、絶縁膜の成膜を行う。チャンバーに材料ガスとしてモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)と希ガスを導入し、10Pa〜30Paの圧力下で高密度プラズマを発生させてガラス等の絶縁表面を有する基板上に絶縁膜を形成する。その後、モノシランガスの供給を停止し、大気に曝すことなく亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面にプラズマ処理を行ってもよい。少なくとも亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面に行われるプラズマ処理は、絶縁膜の成膜より後に行う。チャンバーに導入するモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)との流量比は、1:10から1:200の範囲とする。また、チャンバーに導入する希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどを用いることができるが、中でも安価であるアルゴンを用いることが好ましい。
【0359】
もちろん、ゲート絶縁層302として良質な絶縁膜を形成できるものであれば、スパッタリング法やプラズマCVD法など他の成膜方法を適用することができる。また、成膜後の熱処理によってゲート絶縁膜の膜質、酸化物半導体との界面特性が改質される絶縁膜であっても良い。いずれにしても、ゲート絶縁膜としての膜質が良好であることは勿論のこと、酸化物半導体との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるものであれば良い。
【0360】
さらに、85℃、2×10V/cm、12時間のゲートバイアス・熱ストレス試験(BT試験)においては、不純物が酸化物半導体に添加されていると、不純物と酸化物半導体の主成分との結合手が、強電界(B:バイアス)と高温(T:温度)により切断され、生成された未結合手がしきい値電圧(Vth)のドリフトを誘発することとなる。これに対して、本発明の一態様であるトランジスタは、酸化物半導体の不純物、特に水素や水等を極力除去し、上記のようにゲート絶縁層との界面特性を良好にすることにより、BT試験に対しても安定な薄膜トランジスタを得ることを可能としている。
【0361】
また、ゲート絶縁層302としては、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層(SiOxNyとも呼ぶ、ただし、x>y>0)、窒化酸化シリコン層(SiNxOyとも呼ぶ、ただし、x>y>0)、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。
【0362】
また、ゲート絶縁層302は、酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。本実施の形態では、一例として圧力30Pa、マイクロ波電力6kWで高密度プラズマCVD法により膜厚100nmの酸化窒化シリコン層を形成する。このときチャンバーに導入するモノシランガス(SiH)と亜酸素窒素(NO)との流量比は、1:10とする。
【0363】
次いで、ゲート絶縁層302上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜330を形成する。
【0364】
なお、酸化物半導体膜330をスパッタ法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、ゲート絶縁層302の表面に付着しているゴミを除去することが好ましい。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。
【0365】
酸化物半導体膜330は、In−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系、In−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、In−O系、In−Sn−O系、Sn−O系、Zn−O系の酸化物半導体膜を用いる。本実施の形態では、酸化物半導体膜330としてIn−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用いてスパッタ法により成膜する。この段階での断面図が図20(A)に相当する。また、酸化物半導体膜330は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。また、スパッタリング法を用いる場合、SiOを2重量%以上10重量%以下含むターゲットを用いて成膜を行ってもよい。
【0366】
酸化物半導体膜330をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のターゲットの他の例としては、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の組成比である金属酸化物ターゲットを用いることができる。また、上記に示すターゲットに限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比である金属酸化物ターゲットを用いてもよい。また、作製される金属酸化物ターゲットの充填率は、90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより形成した酸化物半導体膜は、緻密な膜となる。
【0367】
酸化物半導体膜330を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0368】
減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板温度を100℃以上600℃以下好ましくは200℃以上400℃以下とする。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。そして、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして基板300上に酸化物半導体膜330を成膜する。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0369】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、ごみが軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0370】
次いで、酸化物半導体膜330を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層331に加工する。また、島状の酸化物半導体層331を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0371】
次いで、酸化物半導体層に第1の加熱処理を行う。この第1の加熱処理によって酸化物半導体層の脱水化又は脱水素化を行うことができる。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、酸化物半導体層への水や水素の混入を防ぎ、酸化物半導体層331を得る(図20(B)参照。)。
【0372】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、又は窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0373】
例えば、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0374】
なお、第1の加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0375】
また、第1の加熱処理の条件、又は酸化物半導体層の材料によっては、酸化物半導体層が結晶化し、微結晶膜又は多結晶膜となる場合もある。例えば、結晶化率が90%以上、又は80%以上の微結晶の酸化物半導体膜となる場合もある。また、第1の加熱処理の条件、又は酸化物半導体層の材料によっては、結晶成分を含まない非晶質の酸化物半導体膜となる場合もある。また、非晶質の酸化物半導体の中に微結晶部(粒径1nm以上20nm以下(代表的には2nm以上4nm以下))が混在する酸化物半導体膜となる場合もある。
【0376】
また、第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体膜330に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0377】
酸化物半導体層に対する脱水化、脱水素化の効果を奏する加熱処理は、酸化物半導体層成膜後、酸化物半導体層上にソース電極及びドレイン電極を積層させた後、ソース電極及びドレイン電極上に保護絶縁膜を形成した後、のいずれで行っても良い。
【0378】
また、ゲート絶縁層302にコンタクトホールを形成する場合、その工程は酸化物半導体層331に脱水化又は脱水素化処理を行う前でも行った後に行ってもよい。
【0379】
なお、ここでの酸化物半導体膜のエッチングは、ウェットエッチングに限定されずドライエッチングを用いてもよい。
【0380】
所望の加工形状にエッチングできるように、材料に合わせてエッチング条件(エッチング液、エッチング時間、温度等)を適宜調節する。
【0381】
次いで、ゲート絶縁層302、及び酸化物半導体層331上に、導電膜を形成する。例えばスパッタ法や真空蒸着法で導電膜を形成すればよい。導電膜の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、イットリウムのいずれか一又は複数から選択された材料を用いてもよい。また、導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、Ti膜と、そのTi膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にTi膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Alに、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた元素を単数、又は複数組み合わせた膜、合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0382】
導電膜成膜後に加熱処理を行う場合には、この加熱処理に耐える耐熱性を導電膜に持たせることが好ましい。
【0383】
第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層315a、ドレイン電極層315bを形成した後、レジストマスクを除去する(図20(C)参照。)。
【0384】
第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いる。酸化物半導体層331上で隣り合うソース電極層の下端部とドレイン電極層の下端部との間隔幅によって後に形成される薄膜トランジスタのチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第3のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成される薄膜トランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化でき、さらにオフ電流値が極めて小さいため、低消費電力化も図ることができる。
【0385】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層331は除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0386】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用いて、酸化物半導体層331にはIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体を用いて、エッチャントとしてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0387】
なお、第3のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層331は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、ソース電極層315a、ドレイン電極層315bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0388】
また、酸化物半導体層とソース電極層及びドレイン電極層の間に、酸化物導電層を形成してもよい。酸化物導電層とソース電極層及びドレイン電極層を形成するための金属層は、連続成膜が可能である。酸化物導電層はソース領域及びドレイン領域として機能しうる。
【0389】
ソース領域及びドレイン領域として、酸化物導電層を酸化物半導体層とソース電極層及びドレイン電極層との間に設けることで、ソース領域及びドレイン領域の低抵抗化を図ることができ、トランジスタの高速動作を達成することができる。
【0390】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0391】
次いで、NO、N、又はArなどのガスを用いたプラズマ処理を行う。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0392】
プラズマ処理を行った後、大気に触れることなく、酸化物半導体層の一部に接する保護絶縁膜となる酸化物絶縁層316を形成する。
【0393】
酸化物絶縁層316は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタ法など、酸化物絶縁層316に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。酸化物絶縁層316に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入、又は水素が酸化物半導体層中の酸素を引き抜き、が生じ酸化物半導体層のバックチャネルが低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、酸化物絶縁層316はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0394】
本実施の形態では、酸化物絶縁層316として膜厚200nmの酸化珪素膜をスパッタ法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタ法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲット又は珪素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び窒素雰囲気下でスパッタ法により酸化珪素膜を形成することができる。酸素欠乏状態となり低抵抗化、即ちN型化した酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁層316は、水分、水素イオン、OHなどの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、又は酸化窒化アルミニウム膜などを用いる。
【0395】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層316を成膜することが好ましい。酸化物半導体層331及び酸化物絶縁層316に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0396】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物絶縁層316に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0397】
酸化物絶縁層316を成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0398】
次いで、不活性ガス雰囲気下、又は酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が酸化物絶縁層316と接した状態で加熱される。
【0399】
以上の工程を経ることによって、成膜後の酸化物半導体膜に対して脱水化又は脱水素化のための加熱処理を行うことにより、酸化物半導体層を酸素欠乏状態として低抵抗化、即ちN型化した後、酸化物半導体層に接するように酸化物絶縁層を形成することにより酸化物半導体層の一部を選択的に酸素過剰な状態とする。その結果、ゲート電極層311と重なるチャネル形成領域313はI型となる。このとき、少なくともチャネル形成領域313に比べてキャリア濃度が高く、ソース電極層315aに重なる高抵抗ソース領域314aと、少なくともチャネル形成領域313に比べてキャリア濃度が高く、ドレイン電極層315bに重なる高抵抗ドレイン領域314bとが自己整合的に形成される。以上の工程で薄膜トランジスタ310が形成される(図20(D)参照。)。
【0400】
さらに、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁膜の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、ノーマリーオフとなる薄膜トランジスタを得ることができる。よって薄膜トランジスタの信頼性を向上できる。また、酸化物絶縁層に欠陥を多く含む酸化シリコン層を用いると、この加熱処理によって酸化物半導体層中に含まれる該不純物をより低減させる効果を奏する。
【0401】
なお、ドレイン電極層315b(及びソース電極層315a)と重畳した酸化物半導体層において高抵抗ドレイン領域314b(及び高抵抗ソース領域314a)を形成することにより、薄膜トランジスタの信頼性の向上を図ることができる。具体的には、高抵抗ドレイン領域314bを形成することで、ドレイン電極層315bから高抵抗ドレイン領域314b、チャネル形成領域313にかけて、導電性を段階的に変化させうるような構造とすることができる。そのため、ドレイン電極層315bに高電源電位VDDを供給する配線を接続して動作させる場合、ゲート電極層311とドレイン電極層315bとの間に高電界が印加されても高抵抗ドレイン領域314bがバッファとなり局所的な高電界が印加されず、トランジスタの耐圧を向上させた構成とすることができる。
【0402】
また、酸化物半導体層における高抵抗ソース領域又は高抵抗ドレイン領域は、酸化物半導体層の膜厚が15nm以下と薄い場合は膜厚方向全体にわたって形成されるが、酸化物半導体層の膜厚が30nm以上50nm以下とより厚い場合は、酸化物半導体層の一部、ソース電極層又はドレイン電極層と接する領域及びその近傍が低抵抗化し、酸化物半導体層においてゲート絶縁膜に近い領域はI型とすることもできる。
【0403】
酸化物絶縁層316上にさらに保護絶縁層を形成してもよい。例えば、RFスパッタ法を用いて窒化珪素膜を形成する。RFスパッタ法は、量産性がよいため、保護絶縁層の成膜方法として好ましい。保護絶縁層は、水分、水素イオン、OHなどの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などを用いる。本実施の形態では、保護絶縁層として保護絶縁層303を、窒化シリコン膜を用いて形成する(図20(E)参照。)。
【0404】
本実施の形態では、酸化物絶縁層316まで形成された基板300を100℃〜400℃の温度に加熱し、水素及び水分が除去された窒素を含む高純度スパッタガスを導入しシリコン半導体のターゲットを用いて、保護絶縁層303として、窒化シリコン膜を成膜する。この場合においても、酸化物絶縁層316と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層303を成膜することが好ましい。
【0405】
また、保護絶縁層303上に平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。
【0406】
また、保護絶縁層303の上(平坦化絶縁層を設ける場合には平坦化絶縁層の上)に酸化物半導体層と重なる導電層を設けてもよい。導電層は、電位が薄膜トランジスタ310のゲート電極層311と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、0Vという固定電位であってもよい。
【0407】
該導電層によって、薄膜トランジスタ310の電気特性を制御することができる。
【0408】
また、本実施の形態に示すトランジスタと同一工程で本発明の一態様の電圧調整回路における容量素子を形成することもできる。トランジスタ及び容量素子を同一工程で形成することにより、工程数を低減することができる。
【0409】
上記構造のトランジスタにすることにより、安定な電気特性を有し信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、該トランジスタはリーク電流が低いため、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、所望の値の電圧への到達速度を格段に向上させることができる。また、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、安定な電気特性を有し信頼性の高い電圧調整回路を提供することができる。
【0410】
なお本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0411】
(実施の形態9)
本実施の形態は、本明細書で開示する電圧調整回路を構成するトランジスタに適用できる薄膜トランジスタの他の例を示す。
【0412】
本実施の形態の薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタの作製方法の一形態を、図21を用いて説明する。
【0413】
図21(A)乃至(D)に薄膜トランジスタの作製方法の一例を示す。図21(A)乃至(D)に示す薄膜トランジスタ360は、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型薄膜トランジスタともいう。
【0414】
また、薄膜トランジスタ360はシングルゲート構造の薄膜トランジスタを用いて説明するが、必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造の薄膜トランジスタも形成することができる。
【0415】
以下、図21(A)乃至(D)を用い、基板320上に薄膜トランジスタ360を作製する工程を説明する。
【0416】
まず、絶縁表面を有する基板320上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層361を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0417】
また、ゲート電極層361を形成するための導電膜は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0418】
次いで、ゲート電極層361上にゲート絶縁層322を形成する。
【0419】
ここで、不純物を除去することによりi型化又は実質的にi型化された酸化物半導体(高純度化された酸化物半導体)は界面準位、界面電荷に対して極めて敏感であるため、ゲート絶縁層との界面は重要である。そのため高純度化された酸化物半導体層に接するゲート絶縁層(GI)は、高品質化が要求される。
【0420】
例えば、μ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁膜を形成できるので好ましい。高純度化された酸化物半導体層と高品質ゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。ここで用いられる高密度プラズマ装置としては、1×1011/cm以上のプラズマ密度を達成できる装置を用いることができる。
【0421】
例えば、3kW〜6kWのマイクロ波電力を印加してプラズマを発生させて、絶縁膜の成膜を行う。チャンバーに材料ガスとしてモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)と希ガスを導入し、10Pa〜30Paの圧力下で高密度プラズマを発生させてガラス等の絶縁表面を有する基板上に絶縁膜を形成する。その後、モノシランガスの供給を停止し、大気に曝すことなく亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面にプラズマ処理を行ってもよい。少なくとも亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面に行われるプラズマ処理は、絶縁膜の成膜より後に行う。チャンバーに導入するモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)との流量比は、1:10から1:200の範囲とする。また、チャンバーに導入する希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどを用いることができるが、中でも安価であるアルゴンを用いることが好ましい。
【0422】
もちろん、ゲート絶縁層322として良質な絶縁膜を形成できるものであれば、スパッタリング法やプラズマCVD法など他の成膜方法を適用することができる。また、成膜後の熱処理によってゲート絶縁膜の膜質、酸化物半導体との界面特性が改質される絶縁膜であっても良い。いずれにしても、ゲート絶縁膜としての膜質が良好であることは勿論のこと、酸化物半導体との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるものであれば良い。
【0423】
さらに、85℃、2×10V/cm、12時間のゲートバイアス・熱ストレス試験(BT試験)においては、不純物が酸化物半導体に添加されていると、不純物と酸化物半導体の主成分との結合手が、強電界(B:バイアス)と高温(T:温度)により切断され、生成された未結合手がしきい値電圧(Vth)のドリフトを誘発することとなる。これに対して、本発明の一態様であるトランジスタは、酸化物半導体の不純物、特に水素や水等を極力除去し、上記のようにゲート絶縁層との界面特性を良好にすることにより、BT試験に対しても安定な薄膜トランジスタを得ることを可能としている。
【0424】
また、ゲート絶縁層322としては、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層(SiOとも呼ぶ、ただし、x>y>0)、窒化酸化シリコン層(SiNとも呼ぶ、ただし、x>y>0)、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。
【0425】
また、ゲート絶縁層322は、酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。本実施の形態では、一例として圧力30Pa、マイクロ波電力6kWで高密度プラズマCVD法により膜厚100nmの酸化窒化シリコン層を形成する。このときチャンバーに導入するモノシランガス(SiH)と亜酸素窒素(NO)との流量比は、1:10とする。
【0426】
次いで、ゲート絶縁層322上に、膜厚2nm以上200nm以下の酸化物半導体膜を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。本実施の形態では、酸化物半導体膜をIn−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用いてスパッタ法により成膜する。
【0427】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物半導体膜を成膜することが好ましい。酸化物半導体膜に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0428】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0429】
酸化物半導体膜を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0430】
次いで、酸化物半導体層の脱水化又は脱水素化を行う。脱水化又は脱水素化を行う第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、酸化物半導体層への水や水素の混入を防ぎ、酸化物半導体層332を得る(図21(A)参照。)。
【0431】
次いで、NO、N、又はArなどのガスを用いたプラズマ処理を行う。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した吸着水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0432】
次いで、ゲート絶縁層322、及び酸化物半導体層332上に、酸化物絶縁層を形成した後、第3のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行って酸化物絶縁層366を形成した後、レジストマスクを除去する。
【0433】
本実施の形態では、酸化物絶縁層366として膜厚200nmの酸化珪素膜をスパッタ法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタ法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲット又は珪素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び窒素雰囲気下でスパッタ法により酸化珪素膜を形成することができる。酸素欠乏状態となり低抵抗化、即ちN型化した酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁層366は、水分、水素イオン、OHなどの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、又は酸化窒化アルミニウム膜などを用いる。
【0434】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層366を成膜することが好ましい。酸化物半導体層332及び酸化物絶縁層366に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0435】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物絶縁層366に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0436】
酸化物絶縁層366を成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0437】
次いで、不活性ガス雰囲気下、又は酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行ってもよい。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層の一部(チャネル形成領域)が酸化物絶縁層366と接した状態で加熱される。
【0438】
本実施の形態は、さらに酸化物絶縁層366が設けられ一部が露出している酸化物半導体層332を、窒素、不活性ガス雰囲気下、又は減圧下で加熱処理を行う。酸化物絶縁層366によって覆われていない露出された酸化物半導体層332の領域は、窒素、不活性ガス雰囲気下、又は減圧下で加熱処理を行うと、低抵抗化することができる。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。
【0439】
酸化物絶縁層366が設けられた酸化物半導体層332に対する窒素雰囲気下の加熱処理によって、酸化物半導体層332の露出領域は抵抵抗化し、抵抗の異なる領域(図21(B)においては斜線領域及び白地領域で示す)を有する酸化物半導体層362となる。
【0440】
次いで、ゲート絶縁層322、酸化物半導体層362、及び酸化物絶縁層366上に、導電膜を形成した後、第4のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層365a、ドレイン電極層365bを形成した後、レジストマスクを除去する(図21(C)参照。)。
【0441】
ソース電極層365a、ドレイン電極層365bの材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。
【0442】
以上のように、成膜後の酸化物半導体膜に対して脱水化又は脱水素化のための加熱処理を行うことにより、酸化物半導体層を酸素欠乏状態として低抵抗化、即ちN型化した後、酸化物半導体層に接するように酸化物絶縁層を形成し、酸化物半導体層の一部を選択的に酸素過剰な状態とする。その結果、ゲート電極層361と重なるチャネル形成領域363は、I型となる。このとき、少なくともチャネル形成領域363に比べてキャリア濃度が高く、ソース電極層365aに重なる高抵抗ソース領域364aと、チャネル形成領域363に比べてキャリア濃度が高く、ドレイン電極層365bに重なる高抵抗ドレイン領域364bとが自己整合的に形成される。以上の工程で薄膜トランジスタ360が形成される。
【0443】
さらに、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁膜の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、酸化物半導体層から酸化物絶縁層中に水素がとりこまれ、ノーマリーオフとなる薄膜トランジスタを得ることができる。よって薄膜トランジスタの信頼性を向上できる。
【0444】
なお、ドレイン電極層365b(及びソース電極層365a)と重畳した酸化物半導体層において高抵抗ドレイン領域364b(及び高抵抗ソース領域364a)を形成することにより、薄膜トランジスタの信頼性の向上を図ることができる。具体的には、高抵抗ドレイン領域364bを形成することで、ドレイン電極層365bから高抵抗ドレイン領域364b、チャネル形成領域363にかけて、導電性を段階的に変化させうるような構造とすることができる。そのため、ドレイン電極層365bに高電源電位VDDを供給する配線を接続して動作させる場合、ゲート電極層361とドレイン電極層365bとの間に高電界が印加されても高抵抗ドレイン領域364bがバッファとなり局所的な高電界が印加されず、トランジスタの耐圧を向上させた構成とすることができる。
【0445】
ソース電極層365a、ドレイン電極層365b、酸化物絶縁層366上に保護絶縁層323を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層323を、窒化珪素膜を用いて形成する(図21(D)参照。)。
【0446】
なお、ソース電極層365a、ドレイン電極層365b、酸化物絶縁層366上にさらに酸化物絶縁層を形成し、該酸化物絶縁層上に保護絶縁層323を積層してもよい。
【0447】
上記構造のトランジスタにすることにより、安定な電気特性を有し信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、該トランジスタはリーク電流が低いため、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、所望の値の電圧への到達速度を格段に向上させることができる。また、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、安定な電気特性を有し信頼性の高い電圧調整回路を提供することができる。
【0448】
また、本実施の形態に示すトランジスタと同一工程で本発明の一態様の電圧調整回路における容量素子を形成することもできる。トランジスタ及び容量素子を同一工程で形成することにより、工程数の増加を低減することができる。
【0449】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0450】
(実施の形態10)
本実施の形態は、本明細書で開示する電圧調整回路を構成するトランジスタに適用できる薄膜トランジスタの他の例を示す。
【0451】
本実施の形態の薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタの作製方法の一形態を、図22を用いて説明する。
【0452】
また、薄膜トランジスタ350はシングルゲート構造の薄膜トランジスタを用いて説明するが、必要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造の薄膜トランジスタも形成することができる。
【0453】
以下、図22(A)乃至(D)を用い、基板340上に薄膜トランジスタ350を作製する工程を説明する。
【0454】
まず、絶縁表面を有する基板340上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層351を形成する。本実施の形態では、ゲート電極層351として、膜厚150nmのタングステン膜を、スパッタ法を用いて形成する。
【0455】
次いで、ゲート電極層351上にゲート絶縁層342を形成する。
【0456】
ここで、不純物を除去することによりi型化又は実質的にi型化された酸化物半導体(高純度化された酸化物半導体)は界面準位、界面電荷に対して極めて敏感であるため、ゲート絶縁層との界面は重要である。そのため高純度化された酸化物半導体層に接するゲート絶縁層(GI)は、高品質化が要求される。
【0457】
例えば、μ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁膜を形成できるので好ましい。高純度化された酸化物半導体層と高品質ゲート絶縁層とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。ここで用いられる高密度プラズマ装置としては、1×1011/cm以上のプラズマ密度を達成できる装置を用いることができる。
【0458】
例えば、3kW〜6kWのマイクロ波電力を印加してプラズマを発生させて、絶縁膜の成膜を行う。チャンバーに材料ガスとしてモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)と希ガスを導入し、10Pa〜30Paの圧力下で高密度プラズマを発生させてガラス等の絶縁表面を有する基板上に絶縁膜を形成する。その後、モノシランガスの供給を停止し、大気に曝すことなく亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面にプラズマ処理を行ってもよい。少なくとも亜酸化窒素(NO)と希ガスとを導入して絶縁膜表面に行われるプラズマ処理は、絶縁膜の成膜より後に行う。チャンバーに導入するモノシランガス(SiH)と亜酸化窒素(NO)との流量比は、1:10から1:200の範囲とする。また、チャンバーに導入する希ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどを用いることができるが、中でも安価であるアルゴンを用いることが好ましい。
【0459】
もちろん、ゲート絶縁層342として良質な絶縁膜を形成できるものであれば、スパッタリング法やプラズマCVD法など他の成膜方法を適用することができる。また、成膜後の熱処理によってゲート絶縁膜の膜質、酸化物半導体との界面特性が改質される絶縁膜であっても良い。いずれにしても、ゲート絶縁膜としての膜質が良好であることは勿論のこと、酸化物半導体との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるものであれば良い。
【0460】
さらに、85℃、2×10V/cm、12時間のゲートバイアス・熱ストレス試験(BT試験)においては、不純物が酸化物半導体に添加されていると、不純物と酸化物半導体の主成分との結合手が、強電界(B:バイアス)と高温(T:温度)により切断され、生成された未結合手がしきい値電圧(Vth)のドリフトを誘発することとなる。これに対して、本発明の一態様であるトランジスタは、酸化物半導体の不純物、特に水素や水等を極力除去し、上記のようにゲート絶縁層との界面特性を良好にすることにより、BT試験に対しても安定な薄膜トランジスタを得ることを可能としている。
【0461】
また、ゲート絶縁層342としては、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層(SiOとも呼ぶ、ただし、x>y>0)、窒化酸化シリコン層(SiNとも呼ぶ、ただし、x>y>0)、又は酸化アルミニウム層を単層で又は積層して形成することができる。
【0462】
また、ゲート絶縁層342は、酸化シリコン層と窒化シリコン層を積層した構造とすることもできる。本実施の形態では、一例として圧力30Pa、マイクロ波電力6kWで高密度プラズマCVD法により膜厚100nmの酸化窒化シリコン層を形成する。このときチャンバーに導入するモノシランガス(SiH)と亜酸素窒素(NO)との流量比は、1:10とする。
【0463】
次いで、ゲート絶縁層342に、導電膜を形成し、第2のフォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層355a、ドレイン電極層355bを形成した後、レジストマスクを除去する(図22(A)参照。)。
【0464】
次に、酸化物半導体膜345を形成する(図22(B)参照。)。本実施の形態では、酸化物半導体膜345をIn−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用いてスパッタ法により成膜する。酸化物半導体膜345を第3のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。
【0465】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物半導体膜345を成膜することが好ましい。酸化物半導体膜345に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0466】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜345に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0467】
酸化物半導体膜345を成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0468】
次いで、酸化物半導体層の脱水化又は脱水素化を行う。脱水化又は脱水素化を行う第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満とする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行った後、酸化物半導体層への水や水素の混入を防ぎ、酸化物半導体層346を得る(図22(C)参照。)。
【0469】
また、第1の加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0470】
酸化物半導体層346に接する保護絶縁膜となる酸化物絶縁層356を形成する。
【0471】
酸化物絶縁層356は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタ法など、酸化物絶縁層356に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。酸化物絶縁層356に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体層への侵入、又は水素による酸化物半導体層中の酸素の引き抜き、が生じ酸化物半導体層のバックチャネルが低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、酸化物絶縁層356はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0472】
本実施の形態では、酸化物絶縁層356として膜厚200nmの酸化珪素膜をスパッタ法を用いて成膜する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。酸化珪素膜のスパッタ法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び酸素雰囲気下において行うことができる。また、ターゲットとして酸化珪素ターゲット又は珪素ターゲットを用いることができる。例えば、珪素ターゲットを用いて、酸素、及び窒素雰囲気下でスパッタ法により酸化珪素膜を形成することができる。酸素欠乏状態となり低抵抗化、即ちN型化した酸化物半導体層に接して形成する酸化物絶縁層356は、水分、水素イオン、OHなどの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする無機絶縁膜を用い、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、又は酸化窒化アルミニウム膜などを用いる。
【0473】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層356を成膜することが好ましい。酸化物半導体層346及び酸化物絶縁層356に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0474】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物絶縁層356に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0475】
酸化物絶縁層356を成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0476】
次いで、不活性ガス雰囲気下、又は酸素ガス雰囲気下で第2の加熱処理(好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下)を行う。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の第2の加熱処理を行う。第2の加熱処理を行うと、酸化物半導体層が酸化物絶縁層356と接した状態で加熱される。
【0477】
以上のように、脱水化又は脱水素化のための加熱処理を行うことにより、酸化物半導体層を酸素欠乏状態として低抵抗化、即ちN型化した後、酸化物半導体層に接するように酸化物絶縁層を形成することにより、酸化物半導体層を酸素過剰な状態とする。その結果、高抵抗なI型の酸化物半導体層352が形成される。以上の工程で薄膜トランジスタ350が形成される。
【0478】
さらに、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、酸化物半導体層から酸化物絶縁層中に水素がとりこまれ、ノーマリーオフとなる薄膜トランジスタを得ることができる。よって薄膜トランジスタの信頼性を向上できる。
【0479】
酸化物絶縁層356上にさらに保護絶縁層を形成してもよい。例えば、RFスパッタ法を用いて窒化珪素膜を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層として保護絶縁層343を、窒化珪素膜を用いて形成する(図22(D)参照。)。
【0480】
保護絶縁層343上に平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。
【0481】
上記構造のトランジスタにすることにより、安定な電気特性を有し信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、該トランジスタはリーク電流が低いため、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、所望の値の電圧への到達速度を格段に向上させることができる。また、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、安定な電気特性を有し信頼性の高い電圧調整回路を提供することができる。
【0482】
また、本実施の形態に示すトランジスタと同一工程で本発明の一態様の電圧調整回路における容量素子を形成することもできる。トランジスタ及び容量素子を同一工程で形成することにより、工程数の増加を低減することができる。
【0483】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0484】
(実施の形態11)
本実施の形態は、本明細書で開示する電圧調整回路を構成するトランジスタに適用できる薄膜トランジスタの他の例を示す。
【0485】
本実施の形態では、薄膜トランジスタの作製工程の一部が実施の形態8と異なる例を図23に示す。図23は、図20と工程が一部異なる点以外は同じであるため、同じ箇所には同じ符号を用い、同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0486】
まず、基板370上にゲート電極層381を形成し、第1のゲート絶縁層372a、第2のゲート絶縁層372bを積層する。本実施の形態では、ゲート絶縁層を2層構造とし、第1のゲート絶縁層372aに窒化物絶縁層を、第2のゲート絶縁層372bに酸化物絶縁層を用いる。
【0487】
酸化物絶縁層としては、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、又は酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などを用いることができる。また、窒化物絶縁層としては、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウム層などを用いることができる。
【0488】
本実施の形態では、ゲート電極層381側から窒化シリコン層と酸化シリコン層とを積層した構造とする。第1のゲート絶縁層372aとしてスパッタリング法により膜厚50nm以上200nm以下(本実施の形態では50nm)の窒化シリコン層(SiN(y>0))を形成し、第1のゲート絶縁層372a上に第2のゲート絶縁層372bとして膜厚5nm以上300nm以下(本実施の形態では100nm)の酸化シリコン層(SiO(x>0))を積層して、膜厚150nmのゲート絶縁層とする。
【0489】
次に、酸化物半導体膜の形成を行い、酸化物半導体膜をフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工する。本実施の形態では、酸化物半導体膜をIn−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲットを用いてスパッタ法により成膜する。
【0490】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物半導体膜を成膜することが好ましい。酸化物半導体膜に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0491】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0492】
酸化物半導体膜を成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0493】
次いで、酸化物半導体層の脱水化又は脱水素化を行う。脱水化又は脱水素化を行う第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは425℃以上750℃以下とする。なお、425℃以上であれば加熱処理時間は1時間以下でよいが、425℃未満であれば加熱処理時間は、1時間よりも長時間行うこととする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下において加熱処理を行った後、酸化物半導体層への水や水素の混入を防ぐ。その後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度のNOガス、又は超乾燥エア(露点が−40℃以下、好ましくは−60℃以下)を導入して冷却を行う。酸素ガス又はNOガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する酸素ガス又はNOガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素ガス又はNOガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0494】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。また、LRTA装置、ランプだけでなく、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。GRTAとは高温のガスを用いて加熱処理を行う方法である。ガスには、アルゴンなどの希ガス、又は窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。RTA法を用いて、600℃〜750℃で数分間加熱処理を行ってもよい。
【0495】
また、脱水化又は脱水素化を行う第1の加熱処理後に200℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上300℃以下の温度で酸素ガス又はNOガス雰囲気下での加熱処理を行ってもよい。
【0496】
また、酸化物半導体層の第1の加熱処理は、島状の酸化物半導体層に加工する前の酸化物半導体膜に行うこともできる。その場合には、第1の加熱処理後に、加熱装置から基板を取り出し、フォトリソグラフィ工程を行う。
【0497】
以上の工程を経ることによって酸化物半導体膜全体を酸素過剰な状態とすることで、高抵抗化、即ちI型化させる。よって、全体がI型化した酸化物半導体層382を得る。
【0498】
次いで、酸化物半導体層382上に導電膜を形成し、フォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層385a、ドレイン電極層385bを形成し、スパッタ法で酸化物絶縁層386を形成する。
【0499】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ酸化物絶縁層386を成膜することが好ましい。酸化物半導体層382及び酸化物絶縁層386に水素、水酸基又は水分が含まれないようにするためである。
【0500】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(HO)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物絶縁層386に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0501】
酸化物絶縁層386を成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が、数濃度ppm程度、数濃度ppb程度まで除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0502】
以上の工程で、薄膜トランジスタ380を形成することができる。
【0503】
次いで、薄膜トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減するため、不活性ガス雰囲気下、又は窒素ガス雰囲気下で加熱処理(好ましくは150℃以上350℃未満)を行ってもよい。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。
【0504】
また、大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30時間以下での加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では150℃で10時間加熱処理を行う。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この加熱処理によって、酸化物半導体層から酸化物絶縁層中に水素がとりこまれ、ノーマリーオフとなる薄膜トランジスタを得ることができる。よって薄膜トランジスタの信頼性を向上できる。
【0505】
酸化物絶縁層386上に保護絶縁層373を形成する。本実施の形態では、保護絶縁層373として、スパッタリング法を用いて膜厚100nmの窒化珪素膜を形成する。
【0506】
窒化物絶縁層からなる保護絶縁層373及び第1のゲート絶縁層372aは、水分や、水素や、水素化物、水酸化物などの不純物を含まず、これらが外部から侵入することをブロックする効果がある。
【0507】
従って、保護絶縁層373形成後の製造プロセスにおいて、外部からの水分などの不純物の侵入を防ぐことができデバイスの長期信頼性を向上することができる。
【0508】
また、窒化物絶縁層からなる保護絶縁層373と、第1のゲート絶縁層372aとの間に設けられる絶縁層の一部を除去し、保護絶縁層373と、第1のゲート絶縁層372aとが接する構造としてもよい。
【0509】
従って、酸化物半導体層中の水分や、水素や、水素化物、水酸化物などの不純物を究極にまで低減し、かつ該不純物の混入を防止し、酸化物半導体層中の不純物濃度を低く維持することができる。
【0510】
また、保護絶縁層373上に平坦化のための平坦化絶縁層を設けてもよい。
【0511】
また、保護絶縁層373の上に酸化物半導体層と重なる導電層を設けてもよい。導電層は、電位が薄膜トランジスタ380のゲート電極層381と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、0Vという固定電位であってもよい。
【0512】
該導電層によって、薄膜トランジスタ380の電気特性を制御することができる。
【0513】
上記構造のトランジスタにすることにより、安定な電気特性を有し信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、該トランジスタはリーク電流が低いため、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、所望の値の電圧への到達速度を格段に向上させることができる。また、該トランジスタを用いて本発明の一態様である電圧調整回路を構成することにより、安定な電気特性を有し信頼性の高い電圧調整回路を提供することができる。
【0514】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0515】
(実施の形態12)
本実施の形態は、本発明の一態様である電圧調整回路を適用することができる電子機器の一例について図24を用いて説明する。
【0516】
図24(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。なお、図24(A)に示すノート型のパーソナルコンピュータに供給する電源電圧を生成するために実施の形態1乃至実施の形態3に示す電圧調整回路を適用することができる。
【0517】
図24(B)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯型情報端末の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801に内蔵されている。
【0518】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、図24(B)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、図24(B)に示す携帯電話は、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路(実施の形態1乃至実施の形態3に示した電圧調整回路)を実装している。
【0519】
以上のように、本発明の一態様である電圧調整回路は、様々な電子機器に適用することができ、また、効率よく電源電圧を電子機器に供給することができる。
【0520】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0521】
101 トランジスタ
102 容量素子
108 基板温度
151 期間
152 期間
201 トランジスタ
202 容量素子
211 単位昇圧回路
221 クロック信号線
222 クロック信号線
300 基板
302 ゲート絶縁層
303 保護絶縁層
310 薄膜トランジスタ
311 ゲート電極層
313 チャネル形成領域
314a 高抵抗ソース領域
314b 高抵抗ドレイン領域
315a ソース電極層
315b ドレイン電極層
316 酸化物絶縁層
320 基板
322 ゲート絶縁層
323 保護絶縁層
330 酸化物半導体膜
331 酸化物半導体層
332 酸化物半導体層
340 基板
342 ゲート絶縁層
343 保護絶縁層
345 酸化物半導体膜
346 酸化物半導体層
350 薄膜トランジスタ
351 ゲート電極層
352 酸化物半導体層
355a ソース電極層
355b ドレイン電極層
356 酸化物絶縁層
360 薄膜トランジスタ
361 ゲート電極層
362 酸化物半導体層
363 チャネル形成領域
364a 高抵抗ソース領域
364b 高抵抗ドレイン領域
365a ソース電極層
365b ドレイン電極層
366 酸化物絶縁層
370 基板
372a ゲート絶縁層
372b ゲート絶縁層
373 保護絶縁層
380 薄膜トランジスタ
381 ゲート電極層
382 酸化物半導体層
385a ソース電極層
385b ドレイン電極層
386 酸化物絶縁層
390 薄膜トランジスタ
391 ゲート電極層
392 酸化物半導体層
393 酸化物半導体膜
394 基板
395a ソース電極層又はドレイン電極層
395b ソース電極層又はドレイン電極層
396 酸化物絶縁層
397 ゲート絶縁層
398 保護絶縁層
399 酸化物半導体層
400 基板
402 ゲート絶縁層
407 絶縁層
410 薄膜トランジスタ
411 ゲート電極層
412 酸化物半導体層
414a 配線層
414b 配線層
415a ソース電極層又はドレイン電極層
415b ソース電極層又はドレイン電極層
420 シリコン基板
421a 開口
421b 開口
422 絶縁層
423 開口
424 導電層
425 薄膜トランジスタ
427 導電層
450 基板
452 ゲート絶縁層
457 絶縁層
460 薄膜トランジスタ
461 ゲート電極層
462 酸化物半導体層
464 配線層
465a1 ソース電極層又はドレイン電極層
465a2 ソース電極層又はドレイン電極層
465b ソース電極層又はドレイン電極層
468 配線層
501 トランジスタ
502 容量素子
511 単位降圧回路
521 クロック信号線
522 クロック信号線
800 測定系
802 容量素子
804 トランジスタ
805 トランジスタ
806 トランジスタ
808 トランジスタ
1001 ゲート電極
1002 ゲート絶縁膜
1003 酸化物半導体層
1004a ソース電極
1004b ドレイン電極
1005 酸化物絶縁層
1006 導電層
2800 筐体
2801 筐体
2802 表示パネル
2803 スピーカー
2804 マイクロフォン
2805 操作キー
2806 ポインティングデバイス
2807 カメラ用レンズ
2808 外部接続端子
2810 太陽電池セル
2811 外部メモリスロット
3001 本体
3002 筐体
3003 表示部
3004 キーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート、ソース、及びドレインを有し、前記ゲートが前記ソース又は前記ドレインに電気的に接続され、前記ソース及びドレインの一方に第1の信号が入力され、チャネル形成層として酸化物半導体層を有し、オフ電流が100zA/μm以下であるトランジスタと、
第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1の電極が前記トランジスタの前記ソース及び前記ドレインの他方に電気的に接続され、前記第2の電極にクロック信号である第2の信号が入力される容量素子と、を有し、
前記第1の信号の電圧を昇圧又は降圧し、前記昇圧又は前記降圧した電圧である第3の信号を出力信号として前記トランジスタのソース及びドレインの他方を介して出力する電圧調整回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記トランジスタのオフ電流は、10zA/μm以下である電圧調整回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記酸化物半導体層のキャリア濃度は、5×1014/cm以下である電圧調整回路。
【請求項4】
互いに直列接続で電気的に接続されたn段(nは2以上の自然数)の単位昇圧回路を有する電圧調整回路であって、
2M−1段目(Mは1乃至n/2であり、2Mは自然数)の単位昇圧回路は、
ゲート、ソース、及びドレインを有し、前記ゲートが前記ソース及び前記ドレインの一方に電気的に接続され、チャネル形成層として酸化物半導体層を有し、オフ電流が100zA/μm以下である第1のトランジスタと、
第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1の電極が前記第1のトランジスタの前記ソース及び前記ドレインの他方に電気的に接続され、前記第2の電極にクロック信号が入力される第1の容量素子と、を有し、
2M段目の単位昇圧回路は、
ゲート、ソース、及びドレインを有し、前記ゲートが前記ソース及び前記ドレインの一方に電気的に接続され、チャネル形成層として酸化物半導体層を有し、オフ電流が100zA/μm以下である第2のトランジスタと、
第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1の電極が前記第2のトランジスタの前記ソース及び前記ドレインの他方に電気的に接続され、前記第2の電極に反転クロック信号が入力される第2の容量素子と、を有する電圧調整回路。
【請求項5】
互いに直列接続で電気的に接続されたn段(nは2以上の自然数)の単位降圧回路を有する電圧調整回路であって、
2M−1段目(Mは1乃至n/2であり、2Mは自然数)の単位降圧回路は、
ゲート、ソース、及びドレインを有し、チャネル形成層として酸化物半導体層を有し、オフ電流が100zA/μm以下である第1のトランジスタと、
第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1の電極が前記第1のトランジスタの前記ゲートに電気的に接続され、前記第2の電極にクロック信号が入力される第1の容量素子と、を有し、
2M段目の単位降圧回路は、
ゲート、ソース、及びドレインを有し、ソース及びドレインの一方が前記第1のトランジスタの前記ゲート、及び前記ソース又は前記ドレインに電気的に接続され、チャネル形成層として酸化物半導体層を有し、オフ電流が100zA/μm以下である第2のトランジスタと、
第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1の電極が前記第2のトランジスタの前記ゲート、並びに前記ソース及び前記ドレインの他方に電気的に接続され、前記第2の電極に反転クロック信号が入力される第2の容量素子と、を有する電圧調整回路。
【請求項6】
請求項4又は請求項5において、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのそれぞれのオフ電流は、10zA/μm以下である電圧調整回路。
【請求項7】
請求項1又は請求項2において、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのそれぞれの前記酸化物半導体層のキャリア濃度は、5×1014/cm以下である電圧調整回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−171700(P2011−171700A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233517(P2010−233517)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】