説明

電場応答性ナノ複合流体及び調光素子

【課題】液晶のような高価な成分を使用せず、粒子分散系流体に電場を印加することによって光の透過率が変化するという機能を付与した電場応答性ナノ複合流体及び調光素子を提供する。
【解決手段】ポリオルガノシロキサンの分散媒に強誘電性の酸化物粒子が分散した流体であって、前記酸化物粒子の粒径が2〜19nmであり、前記酸化物粒子とポリオルガノシロキサンとが化学結合している電場応答性ナノ複合流体及びそれを利用した調光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電場によって光の透過率が変化する電場応答性ナノ複合流体及び調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子を分散させ流体の中で電場に応答する機能(電場応答性)を有する粒子分散系流体の一つとして、電気粘性流体(電気レオロジー流体)が典型的な例として挙げられる(特許文献1〜5、非特許文献1〜2)。電気粘性流体は、電場を印加することで見かけの粘度が増大するという性質を有する。電気粘性流体の基本構成は、シリコーンオイル等の絶縁性溶媒に、有機高分子粒子や無機酸化物粒子などを分散したものである。前記粒子又は粒子の表面が外部電場による誘電分極し、該粒子が鎖構造を形成することで見かけの粘度が増大していると考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、有機高分子であるエラストマー粒子を電気絶縁性の優れた油状媒体に分散させた電気粘性流体が開示されている。また、前記エラストマー粒子の好ましい平均粒径は0.1〜100μmで、より好ましくは1〜50μmとしている。前記油状媒体の例示には、ポリジメチルシロキサン、フェニル変性シリコーンなどのシリコーン系オイルが含まれている。分散粒子を上記エラストマー粒子としたのは、無機系の粒子や炭素質粒子を用いた場合には、電場を印加して粒子が電極に接触した際に電極を摩耗するという問題を解決するためとしている。
【0004】
特許文献2では、電気絶縁性媒体に、非晶質アルカリ金属含有ケイ酸塩化合物の粒子を分散させた電気粘性流体が開示されている。このような構成にすることで、電圧印加時のせん断力抵抗が大きく、120℃の高温においても特性に変化がなく、長期にわたって特性が安定しており、更には電極を腐食させることがないとしている。また、前記電気絶縁性媒体をシリコーンオイルにすることも示されている。前記非晶質アルカリ金属含有ケイ酸塩は、平均粒子径が20〜30μmであるとしている。
【0005】
特許文献3では、固体粒子や液体媒質の中に極性分子や極性基を含み、該分散固体粒子の粒子サイズが10〜300nmである電気粘性流体が開示されている。このような構成にすることで、せん断強度が強く、抗沈降性がよく、漏れ電流が小さくなるとしている。また、前記固体粒子は、粒子サイズが10〜300nmであるが、好ましくは20〜100nmとし、誘電常数が50以上であるとしている。具体的には、二酸化チタン粒子、チタン酸カルシウム粒子、チタン酸リチウムランタン粒子、チタン酸ストロンチウム粒子が挙げられている。前記液体媒質の例示の中には、シリコーン油が含まれている。
【0006】
特許文献4では、電気絶縁性媒体中に誘電体粒子を分散した電気レオロジー流体が開示され、該電気絶縁性媒体はフッ素変性シリコーンであり、該誘電体粒子は有機高分子化合物からなる芯体と電気レオロジー効果を有する無機物からなる表層とによって形成される無機・有機複合粒子であるとしている。このような構成にすることで、優れた電気粘性効果を有するとともに保存安定性と耐久性に優れ、擦傷性が少なくなるとしている。前記無機・有機複合粒子の粒径は、0.1〜500μm程度であり、特に、5〜200μm程度とすることが好ましいとしている。
【0007】
特許文献5には、フッ素基含有芳香族化合物に、誘電体粒子を分散させた電気粘性流体が開示されている。このような構成にすることで、粒子分散安定性、電気粘性効果、潤滑性に優れるとしている。前記誘電体粒子は、電界の印加により、粒子の表面にイオンや電子の分極が生じる粒子であるとしている。具体的には、スルホン酸基含有カチオン交換樹脂粒子や合成ゼオライト粒子が示されている。また、前記誘電体粒子の粒径は、0.1〜100μm程度としている。
【0008】
非特許文献1では、ニオブ酸カリウムやチタン酸バリウムの強誘電体粒子を用いた粒子分散系エレクトロレオロジー(ER)流体を取り上げ、具体的には、粒径約760nmのチタン酸バリウムを分散粒子とし、分散媒にシリコーンオイルを用いたER流体に関して、ER挙動と系の誘電特性の関係が研究されている。
【0009】
電気粘性流体ではないが、粒子分散系流体に電場を印加して試料の表面を加工できる粒子分散系流体の例がある。特許文献6では、前記流体として、シリコーンオイル等の分散媒中に、粒子径0.1〜100μm以下の電気的誘電性を有する絶縁粒子を分散させたものであって、分散微粒子の比誘電率が分散媒の比誘電率よりもその差で1より大きい流体であるとしている。
【0010】
ところで、電場応答性を有する粒子分散系流体ではないが、微細な粒子を分散させることで機能を発現させた粒子分散系流体の例もある(特許文献7、8)。
【0011】
例えば、特許文献7には、一次粒径が100nm〜1μmのシリコーンレジン粉末とシリコーン媒体とを含むダイラタンシー性流体が開示されている。低いせん断力下では低い粘度を示すが、加えるせん断力を増加すると急激に高い粘性を示すというダイラタンシー性を発現させるために、上記微細な一次粒径にしているものである。
【0012】
また、特許文献8には、媒体油中に安定分散した無機微粒子を含む粒子分散流体が開示され、該無機微粒子がナノサイズ粒子であるとしている。前記無機微粒子をフェライト微粒子にして磁性流体を作製した例が示されている。また、前記フェライト微粒子が、十数nm以下の粒径であるとしている。
【0013】
一方、電場によって光学的性質が変化する流体としては、液晶が代表的である。電場を印加していない液晶に偏光を透過させると偏光面が回転するが、電場を印加した液晶では液晶分子が配向し、それによって透過した偏光は偏光面が回転しない。したがって、偏光板と組み合わせれば、光シャッターとすることができる。このように、通常の液晶では、電場は光の偏光面の回転に影響を及ぼすだけで、光は透過するものである。しかしながら、電場が光の透過率の影響を与えるような液晶組成物が、特許文献9、10に開示されている。前記液晶組成物は、構造の異なる液晶を混合してドメインを形成して光を散乱させるもので、電場を印加するとドメインが解消され光が透過するという機構を利用している。前記ドメインを有効に形成させるために、更に偏平形状の粒子を分散させている。前記粒子の粒径は、0.1〜20μm程度が適当であり、粒径がこの範囲より小さいと、液晶組成物中のドメインを有効に形成できないとしている。
【0014】
また、上記以外のメカニズムによる電場応答性の調光材料として、特許文献11では、光調整粒子が流動可能な状態で分散媒中に分散した液滴を、高分子フィルム等の媒体に含有させたものが開示されている。前記光調整粒子には、ポリ沃化物やポリハロゲン化物が用いられている。電場(電界)が印加されていない場合は、光調整粒子のブラウン運動により入射光は光調整粒子に吸収、散乱、反射され、透過できない。しかし、電界を印加すると、光調整粒子が印加された電界によって形成される電場と平行に配列するため、入射光は配列した光調整粒子間を通過するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10−219271号公報
【特許文献2】特開2006−342237号公報
【特許文献3】特表2009−540067号公報
【特許文献4】特開平8−48988号公報
【特許文献5】特開平6−313179号公報
【特許文献6】特開2000−343414号公報
【特許文献7】特開2006−2027号公報
【特許文献8】特開2004−223355号公報
【特許文献9】特開平8−302351号公報
【特許文献10】特開平7−278549号公報
【特許文献11】特開2008−158040号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】高野元峰、今野幹男、日本レオロジー学会誌 Vol.29,No.1, 15〜19(2001)
【非特許文献2】山本智、豊田中央研究所R&Dレビュー Vol.29, No.1,39〜47(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、電場応答性の粒子分散系流体としては、電気粘性流体が代表的であるが、電場によって光の透過率が変化する電場応答性の機能を有する粒子分散系流体は、数少ない。一方、電場によって光の透過率を変化させる流体としては液晶素子が挙げられるが、偏光板を利用して間接的に調光するものである。直接的に調光できる液晶組成物も、上述のように開発されているが、調光メカニズムに液晶のドメイン構造を利用しているので高価な液晶が必須となるものである。
【0018】
液晶を使用しない調光材料としては、光調整粒子が電場によって配列することを利用することが提案されているが、前記光調整粒子を分散した分散液は、液滴としてマトリックス高分子中に分散されて調光材料とするものであるので、光の透過率が本質的に低くなる。
【0019】
また、粒子分散系流体である特許文献1〜5や非特許文献1の電気粘性流体に電場を印加しても見かけ粘度は変化するものの光透過率は変化しない。これらの電気粘性流体は、分散されている粒子が大きいものが殆どであるので光が散乱されてしまい、そもそも光を透過しない流体である。分散させる粒子を微細化していくと光を透過するようになるが、単に微細な粒子を分散した流体では、電場を印加しても光透過率は変化しない。
【0020】
本発明では、上記問題点に鑑みてなされたものであり、液晶のような高価な成分を使用せず、粒子分散系流体に電場を印加することによって光の透過率が変化するという機能を付与した電場応答性ナノ複合流体及び調光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、ポリオリガノシロキサンの分散媒に強誘電性の酸化物粒子が分散した粒子分散系流体で、該酸化物粒子を特定のサイズに微細化することで前記流体を透光性にし、かつ、該ポリオルガノシロキサンと該酸化物粒子とが化学結合しているナノ複合流体が、電場を印加することによって光の透過率が変化するということを見出し、本発明を完成した。
【0022】
すなわち、本発明は、以下の要旨とするものである。
(1)ポリオルガノシロキサンの分散媒に強誘電性の酸化物粒子が分散された流体であって、前記酸化物粒子の粒径が2〜19nmであり、前記酸化物粒子とポリオルガノシロキサンとが化学結合していることを特徴とする電場応答性ナノ複合流体。
(2)前記化学結合が、M−O−R−Si結合(M:酸化物粒子を構成する金属イオンM、R:有機基)であることを特徴とする(1)記載の電場応答性ナノ複合流体。
(3)前記化学結合が、ポリオルガノシロキサンに有する水酸基が酸化物粒子と反応して形成されたものであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電場応答性ナノ複合流体。
(4)前記ポリオルガノシロキサンと酸化物粒子とが、ポリオルガノシロキサン/酸化物モル比で1.5以上15.0以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の電場応答性ナノ複合流体。
(5)前記酸化物粒子が、BaTiO3又はその固溶系酸化物の粒子を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の電場応答性ナノ複合流体。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の電場応答性ナノ複合流体を、2つの対向する透明電極間に配置し、前記電極間幅が5〜500μmであることを特徴とする調光素子。
(7)電場印加を停止した後に、前記電場応答性ナノ複合体に超音波を照射できる超音波照射機構を有することを特徴とする(6)に記載の調光素子。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、液晶のような高価な成分を使用しなくても、粒子分散系流体に電場を印加することによって光の透過率が変化するという機能、即ち、電場応答性の調光機能を有する電場応答性ナノ複合流体を提供することができる。
また、本発明の電場応答性ナノ複合流体を利用すれば、簡単な構成で安価な調光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1のX線回折図。(a)BaTiO3ナノ粒子、(b)BaTiO3ナノ複合流体、(c)ポリオルガノシロキサン
【図2】実施例1の赤外吸収スペクトル。(a)ポリオルガノシロキサン、(b)添加したポリオルガノシロキサンの量を、官能基である−OH基の量をBaTiO3に対して、1当量となるような量にした場合(減圧留去後にゲル状の固体)、(c)添加したポリオルガノシロキサンの量を、官能基である−OH基の量をBaTiO3に対して、3当量となるような量にした場合(BaTiO3ナノ複合流体)。
【図3】実施例1の1H−NMRスペクトル。(a)ポリオルガノシロキサン、(b)添加したポリオルガノシロキサンの量を、官能基である−OH基の量をBaTiO3に対して、3当量となるような量にした場合(BaTiO3ナノ複合流体)。
【図4】実施例1の13C−NMRスペクトル。(a)ポリオルガノシロキサン、(b)添加したポリオルガノシロキサンの量を、官能基である−OH基の量をBaTiO3に対して、3当量となるような量にした場合(BaTiO3ナノ複合流体)、(c)添加したポリオルガノシロキサンの量を、官能基である−OH基の量をBaTiO3に対して、1当量となるような量にした場合(減圧留去後にゲル状の固体)。
【図5】BaTiO3ナノ複合流体のTEM写真。(a)片末端にカルビノール基を有するポリジメチルシロキサン(Me2SiO)nR"OHを使用して作製したBaTiO3ナノ複合流体、(b)カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用して作製したBaTiO3ナノ複合流体。
【図6】電場応答性を評価するための調光素子とした構成図。
【図7】実施例1の電場応答性の結果を示す図。(a)片末端にカルビノール基を有するポリジメチルシロキサン(Me2SiO)nR"OHを使用して作製したBaTiO3ナノ複合流体、(b)カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用して作製したBaTiO3ナノ複合流体。
【図8】実施例1の波長589nmにおける光透過率の時間依存性を示す図。(a)カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]m、(b)カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用して作製したBaTiO3ナノ複合流体。
【図9】実施例1の誘電率の周波数依存性。(a)カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]m、(b)カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用して作製したBaTiO3ナノ複合流体。
【図10】実施例1の誘電損失の周波数依存性。(a)カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]m、(b)カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用して作製したBaTiO3ナノ複合流体。
【図11】比較例1のX線回折図。(a)比較例1、(b)アナターゼ(JCPDS No.21−1272)
【図12】比較例1の赤外吸収スペクトル。(a)アセチルアセトン、(b)TiO2ナノ粒子含有溶液から溶媒を除去したもの、(c)ポリジメチルシロキサン(Me2SiO)nR"OH、(d)TiO2ナノ複合流体。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の電場応答性ナノ複合流体は、ポリオルガノシロキサンの分散媒に強誘電性の酸化物粒子が分散された流体であって、前記酸化物粒子の粒径が2〜19nmであり、前記酸化物粒子とポリオルガノシロキサンとが化学結合している。このような構成にすることによって、前記ナノ複合流体に電場を印加することによって光の透過率が変化するという機能が発現するものである。
【0026】
本発明の電場応答性ナノ複合流体が電場を印加されると光の透過率が変化するというのは、次のようなメカニズムであると考えられる。本発明の電場応答性ナノ複合流体に分散された酸化物粒子は、上述のように、可視光の波長よりも遥かに小さいので光を散乱することはなく、透光性を有するものである。電場が印加された状態に前記流体が置かれると、該流体中の強誘電性酸化物粒子が分極して電極方向に引力を受け、該引力によって電極近傍で該酸化物粒子が凝集するようになる。即ち、上述のポリオルガノシロキサンと化学結合している酸化物粒子は、ポリオルガノシロキサン分子を引き連れて電極付近へ集中し、その結果、電極近傍の流体密度が高くなる。このような状態では、電極近傍で前記酸化物粒子の凝集体が一時的に形成され、光散乱が生じるようになり、その結果、光透過率が低下する。
【0027】
上記現象を確認するために、前記酸化物粒子を蛍光体で修飾して共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。本発明の電場応答性ナノ流体に電場を印加すると、電極近傍に白い層として観察される層が形成し始めているのが分かる。これは蛍光体で修飾した酸化物粒子が電極近傍に凝集し始めているのが観察されているものである。
【0028】
本発明の電場応答性ナノ複合流体のポリオルガノシロキサンは、ジオルガノシロキサン[−Si(R*2−O−]の単位を繰り返した骨格構造[−Si(R*2−O−]nを有するものである。ここで、R*は、有機基を示す。前記有機基R*としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。前記Siに結合した2つの有機基R*は同じ有機基でもよく、異なった有機基が1つのSiに結合していてもよい。また、前記有機基R*は、水酸基、エーテル基、エステル基、カルボキシル基、チオール基、エポキシ基、アミノ基等の官能基を有する有機基を含んでいてもよい。前記ポリオルガノシロキサンは、上述のようなジオルガノシロキサンの単位の繰り返した骨格構造の間に、Si−Hを含む[−Si(H)(R*)−O−]の単位が含まれていてもよい。
【0029】
前記ポリオルガノシロキサンの末端基は、上記と同じような有機基R*、水酸基(−OH)、又は、官能基を有する有機基である。具体的な例としては、−CH3、−C36OC24OH(カルビノール基)などが挙げられる。
【0030】
更に、本発明に係るポリオルガノシロキサンは、分散された酸化物粒子と化学結合している。このような化学結合をしていない単に酸化物粒子が分散している状態では、電場が印加されると強誘電性酸化物粒子は分極して粒子同士が連結し始めるだけに終わり、上述のように電極近傍に凝集し難い。しかしながら、ポリオルガノシロキサンと化学結合している酸化物粒子では、酸化物粒子の表面がポリオリガノシロキサンで覆われるようになるので、酸化物粒子が分極しても粒子同士が連結することが抑制され、電極近傍にポリオルガノシロキサンを伴って凝集することができる。即ち、上記のような化学結合していない場合は、電場を印加しても酸化物粒子は単に連結した配列となるので、光の透過率は殆ど変化しない。しかしながら、上記のような化学結合をしている場合は、電場を印加すると電極近傍に酸化物粒子が凝集するので、上述のように光の透過率が低下する。
【0031】
前記化学結合としては、配位結合や共有結合を意味するものである。前記化学結合の中で、特に共有結合を含むものが好ましい。前記化学結合は、ポリオルガノシロキサン鎖の末端部でも、分子鎖途中であってもよい。
【0032】
前記配位結合の例としては、−OH基が酸化物粒子を構成する金属イオンMに配位するもの、−NH2基が酸化物粒子を構成する金属イオンMに配位するもの、カルボキシル基(−COOH基)が解離して−COO-が酸化物粒子を構成する金属イオンMに配位するもの等が挙げられる。前記共有結合の例としては、Si−O−M結合、M−O−R−Si結合(M:酸化物粒子を構成する金属イオンM、R:有機基)が挙げられる。前記共有結合の中でも、M−O−R−Si結合であるのがより好ましい。前記結合を有すると、光の透過率をより大きく変化できる。また、前記M−O−R−Si結合の例としては、例えば、M−O−C36−Si結合、M−O−C24−Si結合、M−O−CH2−CH(OH)−CH2−O−C36−Si結合等が挙げられる。
【0033】
また、前記化学結合は、どのような方法で形成されてもよいが、ポリオルガノシロキサンに有する水酸基(−OH)が酸化物粒子と反応して形成されたものが好ましい。後述の製造方法で詳細な説明をするが、水酸基を有するポリオルガノシロキサンと酸化物粒子とを反応させて前記化学結合を形成することができる。このような化学結合を有する流体では、その理由は十分解明できていないが、電場応答性に優れており、電場を印加すると生ずる光遮断効果が効率よく現れる。前記のように形成される化学結合では、副反応や副生成物が少ないためではないかと推測している。
【0034】
本発明の電場応答性ナノ複合流体における強誘電性の酸化物粒子は、外部に電場がなくても電気双極子が整列しており、かつ双極子の方向が電場によって変化できるという強誘電性を有する酸化物の粒子である。即ち、電場を印加して電場−分極曲線でヒステリシス曲線を描く特性を有する酸化物の粒子である。
【0035】
前記酸化物としては、例えば、下記組成式1で表されるペロブスカイト型酸化物が挙げられる。
ABO3・・・式1
(式中、A:Aサイトの元素であり、Pb,Ba,Sr,Bi,Li,Na,Ca,Cd,Mg,K,及びランタニド元素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Mg,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe,Ni,Hf,及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、O:酸素元素、Aサイト元素とBサイト元素と酸素元素のモル比は1:1:3が標準であるが、これらのモル比はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で基準モル比からずれてもよい。)
【0036】
具体的な例を挙げれば、BaTiO3、SrBi2(TaxNb1-x29、Pb(ZrxTi1-x)O3、(BaxSr1-x)TiO3、(BixLa1-x4Ti312、Bi4Ti(BixTi3-x312などがある(ここで、xは、0≦x≦1である。)。
【0037】
また、PZT(Pb(Zr,Ti)O3)、SBT(SrBi2Ta29)、BTO(Bi4Ti312)、BLT((Bi,La)4Ti312)、BTO(BaTiO3)で表わされる酸化物の例も挙げられる。
【0038】
上記強誘電性酸化物の中でも、BaTiO3又はその固溶系酸化物が前記粒子に含まれるのがより好ましい。前記粒子が含まれると、電場印加による光遮断の特性に優れるものとなる。前記固溶系酸化物とは、Baの一部が他の金属イオンで置換されたもの、Tiの一部が他の金属イオンで置換されたもの、これらの両方であるものを意味する。例えば、Ba(Ti,Zn)O3、(Ba,Sr)TiO3が挙げられる。
【0039】
本発明の電場応答性ナノ複合流体では、前記酸化物粒子の粒径は2〜19nmである。透光性の流体とするために、光が散乱されないように微細な酸化物粒子とする。したがって、前記酸化物粒子の粒径は、流体の透光性を確保する上では小さいほど好ましい。前記19nmを超える粒径では、流体の透光性が十分得られなくなったり、電場を印加しても大きな粒子の移動となるので粒子の凝集が起こり難くなったりするので好ましくない。一方、前記酸化物粒子の粒径が、2nm未満になると、流体の透光性が良好であるが、電場を印加しても粒子の凝集が起こり難くなり十分な光遮断効果が得られない。これは、あまりにも小さな酸化物粒子では電場を印加しても分極が起こらないことによるものだと推測している。ここで、前記粒径は、X線回折の回折ピークからシェラー式を用いて計算される粒径、又は、透過電子顕微鏡(TEM)で観測して測定した数平均粒径である。本発明では、前記粒径のいずれか1つが、上記範囲内であれば、本発明の作用効果が得られる。
【0040】
本発明の電場応答性ナノ複合流体では、前記酸化物粒子は、上述のようにポリオルガノシロキサンと化学結合している。
【0041】
本発明の電場応答性ナノ複合流体では、ポリオルガノシロキサン/酸化物モル比が0.5以上25.0以下であるのが好ましい。酸化物粒子に対してポリオルガノシロキサンが多くなると電場応答性が十分でなくなってくる。したがって、ポリオルガノシロキサン/酸化物のモル比が、25.0を超えると十分な電場応答性が得られない。一方、ポリオルガノシロキサンに対して酸化物の割合が多くなってくると、電場応答性が明確になり、光遮断効果が顕著になってくる。しかしながら、酸化物の割合が多くなり過ぎると、酸化物粒子を安定に分散して置くのが難しくなってくる。即ち、長時間放置しておくと酸化物粒子の凝集が進み、透光性が低下してくる。したがって、安定な流体を得るためには、ポリオルガノシロキサン/酸化物のモル比を0.5以上にする必要がある。より好ましくは、ポリオルガノシロキサン/酸化物モル比が1.5以上15.0以下である。
【0042】
本発明の電場応答性ナノ複合流体において、0.5kV/mm以上の電場を印加すると、光遮断効果(光透過率の低下)が顕著に見られるようになる。印加する電場を大きくすれば、光遮断効果がより顕著になるが、30kV/mmを超えると絶縁破壊を起こして電場を印加出来ない場合がある。したがって、0.5〜30kV/mmの範囲で電場を印加するのがより好ましい。
【0043】
本発明の電場応答性ナノ複合流体を、2つの対向する透明電極間に配置することで調光素子とすることができる。特に、前記電極間幅を5〜500μmとするのが好ましい。前記電極間幅が、5μm未満では、電圧は小さくても高い電場を印加することができるが、光遮蔽が十分できない場合がある。一方、前記電極間幅が、500μmを超えると、十分な光遮蔽を得るための印加する電場を確保するためには高い電圧が必要となり、調光素子として現実的でない場合がある。
【0044】
前記透明電極としては、必要な電場を印加できれば特に限定するものではないが、例えば、ITO(インジウム−スズ酸化物)電極等の酸化物系透明電極、金や銀等の金属を薄く蒸着して透明性を確保した金属系電極、等が挙げられる。
【0045】
本発明の電場応答性ナノ複合流体は、電場印加を停止すると光の透過率が高くなり元の透過率に戻っていくが、電場印加を停止した後の透過率の上昇は、物理的な攪拌や流体の粘度を低くすることで、より容易に透過率が高くなって元の透過率の戻りやくすることができる。また、電場印加を停止した後、加熱することによっても元の透過率に戻りやすくすることができる。特に、電場印加を停止した後に、超音波を照射するとより効率的に元の透過率の戻りやすくできる。よって、上述の調光素子とする場合には、加熱機構や超音波照射機構を具備することができ、中でも超音波照射機構を有する調光素子とするのがより好ましい。前記超音波照射機構は、少なくとも、電場印加を停止した後に超音波を照射できるものである。超音波振動子を直接電場応答性ナノ複合流体に接触するようにして超音波を照射するようにしてもよい。または、超音波振動子を媒体を介して電場応答性ナノ複合流体に接触するようにして超音波を照射するようにしてもよい。例えば、超音波振動子を透明電極に接着して該電極を介して電場応答性ナノ複合流体に超音波を照射するようにしてもよい。
【0046】
次に、本発明の電場応答性ナノ複合流体の製造方法について述べる。
本発明の電場応答性ナノ複合流体は、酸化物を構成する金属元素の金属アルコキシドを前駆体として、前記前駆体から形成された酸化物の微粒子をオルガノポリシロキサンと反応させて調製することができる。具体的な手順の例は、以下のようである。金属アルコキシドを有機溶媒に溶解する。ここで、前記金属アルコキシドは、加熱還流する等によってダブルアルコキシド(複合アルコキシド)にするのが好ましい。また、前記有機溶媒は、金属アルコキシドを溶解できる溶媒であればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、エチレングリコール等アルコール類、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。また、前記有機溶媒は、脱水して使用するのが好ましい。
【0047】
前記有機溶媒に溶解した金属アルコキシドは、脱炭酸水を添加することによって加水分解され、酸化物のナノ粒子が形成される。前記脱炭酸水を添加後に、溶液を加熱還流することで酸化物のナノ粒子の結晶性及び粒径を制御できる。ここで、前記添加する脱炭酸水は、金属アルコキシドに対して10〜50当量(モル倍)が好ましい。10当量未満では、添加する脱炭酸水の割合が少なすぎて、金属アルコキシドの加水分解が十分起こらず酸化物の粒子が得られない場合がある。50当量を超えると、加水分解等の反応に関与しない余分な水分が多くなり過ぎて、この後、系内から残留水分を除去する工程での負担が大きくなったり、完全に水分を除去することができなくなったりする場合がある。
【0048】
前記のように加水分解して酸化物のナノ粒子を形成した溶液に、オルガノポリシロキサンを添加し、該溶液を加熱する。ここで、前記オルガノポリシロキサンは有機溶媒に溶解して添加してもよい。前記加熱後に、溶媒と残留水分を減圧除去することによって、本発明の電場応答性ナノ複合流体を作製することができる。前記オルガノポリシロキサンの添加、溶液を加熱、溶媒等の減圧除去過程で、ポリオルガノシロキサンと酸化物粒子とが化学結合を形成する。
【0049】
前記添加するオルガノポリシロキサンとしては、酸化物のナノ粒子と反応する官能基を有する。前記官能基は、オルガノポリシロキサン鎖の末端、鎖中、又は、末端と鎖中の両方に有するものである。前記官能基としては、−OH基、−NH2基、−COOH基、エポキシ基(−C(O)CH2)等が挙げられる。前記ポリオルガノシロキサンの添加量は、ポリオルガノシロキサン/酸化物モル比で0.5以上25.0以下である。ポリオルガノシロキサン/酸化物のモル比が、25.0を超えると十分な電場応答性が得られない。一方、ポリオルガノシロキサン/酸化物のモル比が0.5未満になると、安定な流体が得られない。より好ましくは、ポリオルガノシロキサン/酸化物モル比が1.5以上15.0以下である。
【0050】
ポリオルガノシロキサン/酸化物のモル比は、ポリオリガノシロキサンの平均分子量を酸化物の組成式当量モルで割った値である。前記ポリオルガノシロキサンの平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)法で測定して求められる質量平均分子量(Mw)である。前記酸化物の組成式当量モルは、例えば、BaTiO3の場合、Baの原子量137.327、Tiの原子量47.867、Oの原子量15.9994として計算すると、233.1922g/molとなる。
【0051】
また、前記官能基は、酸化物の組成式当量モルに対して、官能基/酸化物のモル比で1.0を超え10.0以下とするのがより好ましい。前記官能基の量は、ポリオルガノシロキサンの官能基当量又は水酸基価から算出できる。官能基当量(g/mol)は、官能基1mol当たりに結合している主骨格の質量を意味する。水酸基価は、試料1g中に含まれる−OH基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数である。官能基/酸化物のモル比が1.0以下では、上述の減圧で溶媒等除去する過程でゲル状の固体になって好ましくない場合がある。官能基/酸化物のモル比が10.0を超えると、電場を印加しても光透過率が変化しない流体が形成される場合がある。
【0052】
また、添加するポリオルガノシロキサンの量は、ポリオルガノシロキサンに有する官能基の量を酸化物の組成式に対して1.0当量超10.0当量以下になるような量にするのがより好ましい。1.0当量以下となるような量では、上述の減圧で溶媒等除去する過程でゲル状の固体になって好ましくない場合がある。10.0当量を超えるような量では、電場を印加しても光透過率が変化しない流体が形成される場合がある。
【0053】
また、前記添加するポリオルガノシロキサンに有する官能基としては、水酸基(−OH)であるのがより好ましい。水酸基を有するポリオルガノシロキサンと酸化物粒子とを反応させて化学結合を形成させた流体では、その理由は十分解明できていないが、電場応答性に優れており、電場を印加すると生ずる光遮断効果が効率よく現れる。前記のように形成される化学結合では、加熱や減圧の過程における副反応や副生成物が少なくなるためではないかと推測している。
【0054】
また、本発明の電場応答性ナノ複合流体に含有される酸化物の含有量は、3.0〜20質量%とするのがより好ましい。前記酸化物の含有量が3.0質量%未満では、十分な電場応答性が得られない場合がある。即ち、電場を印加しても、光透過率の変化が十分起こらない場合がある。一方、前記酸化物の含有量が20質量%を超えると、十分な透光性を有する流体とならない場合がある。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
BaTiO3の酸化物がポリオルガノシロキサン中に分散された電場応答性ナノ複合流体の作製手順を示す。
まず、フラスコ中にチタンイソプロポキシドTi(OiPr)4及び金属バリウムBaをモル比が1:1となるように秤量した。エタノール(EtOH)と2−エトキシエタノール(EGMEE)の混合溶媒(体積比で、EtOH:EGMEE=5:1)を0.075mol/Lとなるように、前記フラスコ内に加え、80℃で撹拌しながら18時間加熱還流を行った。これにより、前記Baは、アルコールと反応して金属アルコキシドを形成するとともに、BaとTiのダブルアルコキシドとなる。これを前駆体溶液とした。
以上の実験操作は、空気中の水分や二酸化炭素を避けるために、乾燥窒素雰囲気下で行った。
【0057】
前記前駆体溶液に、EtOHで希釈した脱炭酸水を滴下し、80℃、24時間還流することで加水分解を行い、BaTiO3ナノ粒子含有溶液を調製した。尚、加水分解に用いる水の量をBa−Tiダブルアルコキシドに対して30当量にした。
【0058】
次に、EtOHで希釈したオルガノポリシロキサンを前記BaTiO3ナノ粒子含有溶液に滴下し、80℃、20時間加熱還流した。その後、減圧留去によりアルコール等の溶媒を除去して、電場応答性ナノ複合流体を作製した。
【0059】
前記オルガノポリシロキサンは、2種類のポリジメチルシロキサンをそれぞれ使用した。カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]m(信越化学工業製、X−22−4039)及び片末端にカルビノール基を有するポリジメチルシロキサン(Me2SiO)nR"OH(チッソ製、FM−0411、平均分子量Mw1,000)である。添加したポリオルガノシロキサンの量を、官能基である−OH基の量をBaTiO3に対して、1当量となるような量にした場合には、減圧留去後にゲル状の固体となった。一方、添加したポリオルガノシロキサンの量を、官能基である−OH基の量をBaTiO3に対して、3当量となるような量にした場合には、高い透明性を有する流体となり、電場応答性ナノ複合流体とすることができた。
【0060】
前記作製した電場応答性ナノ複合流体中のBaTiO3の含有量は、9.0質量%とした。
図1に、X線回折図(XRD)を示す。上述のように調製したBaTiO3ナノ粒子含有溶液中のBaTiO3ナノ粒子は、図1(a)のようにペロブスカイト相の回折ピークのみが確認でき、結晶性のBaTiO3ナノ粒子が作製できていることが分かる。これらの回折ピークからシェラー式を用いて結晶子サイズを計算したところ、5.5nmであった。BaTiO3ナノ複合流体の回折図(図1(b))では、ペロブスカイト相の回折ピークと同時に低角側にブロードな回折ピークが現れている。前記ブロードな回折ピークは、図1(c)のポリオルガノシロキサンのみに現れる回折ピークと同じものであり、ポリオルガノシロキサンに起因するものである。
【0061】
図2に、赤外吸収スペクトルを示す。図2(a)は、原料としてポリオルガノシロキサンの赤外吸収スペクトルであり、3500cm-1付近に−OH基の伸縮振動に起因するブロードな吸収ピークが観察される。しかしながら、添加したポリオルガノシロキサンの量を、官能基である−OH基の量をBaTiO3に対して、1当量となるような量にした場合の赤外吸収ピーク(図2(b))では、前記のような−OH基による吸収ピークが消失しており、このことからポリオルガノシロキサンの−OH基がBaTiO3ナノ粒子と化学反応を起こしていることが分かる。また、添加したポリオルガノシロキサンの量を、官能基である−OH基の量をBaTiO3に対して、3当量となるような量にした場合の赤外吸収スペクトル(図2(c))では、−OH基による吸収ピークが現れており、BaTiO3ナノ粒子と化学反応していない、ポリオルガノシロキサンの−OH基が一部存在するためと考えられる。
【0062】
図3に、1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトルを示す。図3の(a)及び(b)ともに、0.08ppmに非常に強いシグナルが現れている。これは、ポリジメチルシロキサン主鎖のSi−CH3のプロトンに帰属される。さらに、0.51、1.64、3.42、3.52、3.70ppmに現れているシグナルは、Si−ROHのRに帰属されるものであり、化学シフト値や分裂、積分比などから、Si−CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH2−OHの構造を有していることが分かる。ポリオルガノシロキサンの1H−NMRスペクトル(図3(a))に見られる2.15及び1.91ppmのピークは−OH基に起因する。1.91ppmに見られたピークが、BaTiO3ナノ複合流体(図3(b))では消失しており、2.15ppmに見られたピークは、2.09ppmへシフトしている。これは、−OH基の一部がBaTiO3ナノ粒子と共有結合したり、配位結合したりしているためである。
【0063】
図4に、13C−NMRスペクトルを示す。ポリオルガノシロキサン(図4(a))とBaTiO3ナノ複合流体(図4(b))とでは、スペクトルに関してはほとんど変化が見られない。添加したポリオルガノシロキサンの量を、官能基である−OH基の量をBaTiO3に対して、1当量となるような量にした場合に得られたゲル状の固体(図4(c)の固体CP/MAS NMRスペクトル)は、ピークシフトやショルダーピークが現れており、これは、ポリオルガノシロキサンの−OH基がBaTiO3ナノ粒子と化学結合することで、化学的な環境が顕著に変化したためであると考えられる。
【0064】
図5に、BaTiO3ナノ複合流体のTEM写真を示す。TEM観察には、ヘキサンに少量のBaTiO3ナノ複合流体を分散させ、これを銅メッシュ上に滴下、乾燥させて行った。均一にBaTiO3ナノ粒子が分散されていることが確認できた。片末端にカルビノール基を有するポリジメチルシロキサン(Me2SiO)nR"OHを使用して作製されたBaTiO3ナノ複合流体(図5(a))では、平均粒径が5.9nmであった。カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用して作製されたBaTiO3ナノ複合流体(図5(b))では、平均粒径が5.75nmであった。
【0065】
電場応答性の評価については、前記電場応答性ナノ複合流体を用いて次のような調光素子を作製して評価した。
ITOをコートした2枚のガラスの間に、0.1mm厚さのポリイミドテープのスペーサを用いて電場応答性ナノ複合流体を挿入した(図6)。前記ITO電極から、DC又はAC電源(WF1973、エヌエフ回路設計ブロック社製)を用いて電場を印加した。光透過率は、可視紫外分光計を用いて測定した。
【0066】
図7に、その結果を示す。図7は、電場応答性ナノ複合流体の光透過率を示したものであり、4kV/mmの直流電場を印加した場合と直流電場を印加していない場合の光透過率を示している。片末端にカルビノール基を有するポリジメチルシロキサン(Me2SiO)nR"OHを使用して作製したBaTiO3ナノ複合流体(図7(a))では、直流電場を印加すると、明らかに光透過率が減少していることが分かる。光透過率は、電場強度の増加に伴い大きく減少した。吸収端近傍(385nm)において電場無しの場合では97%であった光透過率が、4kV/mmの直流電場を印加することで約75%へと減少した。
【0067】
カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用して作製したBaTiO3ナノ複合流体(図7(b))では、4kV/mmの電場印加で光透過率の大幅な減少を示しており、吸収端近傍(385nm)においては電場無しの場合では約88%であった透過率が、4kV/mmの直流電場を印加することで約47%に減少した。
以上のように、本発明の作用効果を確認した。
【0068】
次に、光透過率の時間依存性を図8に示す。
589nm(NaD線)の波長の光を、カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]m(a)及びカルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用して作製されたBaTiO3ナノ複合流体(b)にそれぞれ当て続けて透過率を時間に対してプロットしていき、測定開始から100秒後に4kV/mmの電場を印加し、測定開始から400秒後に電場印加を停止し、透過率変化の時間依存性を評価した(図8)。測定開始後の透過率を100%に設定し、測定時間は1200秒とした。図8(a)に示しているように、カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mでは、測定開始から終了まで透過率に変化がない。しかし、図8(b)に示しているように、カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用して作製されたBaTiO3ナノ複合流体では、電場を印加した瞬間に透過率が約80%まで急激に減少し、その後400秒での透過率である約62%まで徐々に減少し続けた。電場印加を停止すると、透過率が徐々に高くなり、電場停止後800秒には約95%の透過率になった。電場印加を停止した後の透過率の上昇は、物理的な攪拌や流体の粘度を低くすることで、より容易に透過率が高くなって元の透過率の戻りやくすることができる。さらに、電場印加停止後に電極を介して超音波を照射するとより効率的に元の透過率の戻りやすくでき、その時間を1/10にすることができた。流体の粘度を1/2に低くすることでは、元の透過率に戻る時間が1/3にできることを確認している。また、電場印加を停止した後、加温することによっても元の透過率に戻りやすくすることができ、40℃に加熱することで元の透過率に戻る時間が1/3にできることを確認した。
上記印加した電場は、直流電場であるが、交流電場を印加しても透過率が変化することを確認している。
【0069】
本発明の電場応答性ナノ複合流体は直流および交流電場に応答して、上述のように透過率の変化を示す。この挙動は、本流体の誘電特性に基づいているものと考えられる。そこで、参考として、誘電特性を評した。図9に誘電率の周波数依存性を、図10に誘電損失の周波数依存性を示す。図9より、BaTiO3ナノ粒子が分散されていないポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mの誘電率(a)に比較して、ポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用して作製したBaTiO3ナノ複合流体は、誘電率が上昇していることが分かる。これは、BaTiO3の高い誘電率を反映した結果である。以下に示すMaxwellの式により誘電体球がマトリックス中に分散している誘電体コンポジットの誘電率を表すことができる。
【数1】

ここで、εhyb.、εBT、εfluidは、それぞれBaTiO3ナノ複合流体、BaTiO3ナノ粒子、ポリジメチルシロキサンの誘電率であり、φBTはBaTiO3ナノ粒子の体積分率である。εBTを200と仮定し、εfluidは102−106Hzの測定値の平均をとって、3.26とした。φBTはBaTiO3ナノ粒子:ポリジメチルシロキサンのモル比と密度(BaTiO3ナノ粒子の密度:6.02g/cm3、ポリジメチルシロキサン:0.975g/cm3)から計算した。これらの値を上式に代入して得られたεhyb.は、3.76であり、103−106Hzでの実測値の平均である3.81の値とよい一致を示した。
【0070】
また、低周波数領域において誘電率が急激に上昇しており(図9(b))、同領域で誘電損失値が増大して誘電緩和が見られる(図10(b))。この誘電損失の増加は、BaTiO3ナノ複合流体中に分散しているBaTiO3ナノ粒子とポリジメチルシロキサンとの間の界面分極によるものと考えられる。界面分極はイオン分極や電子分極と比較すると応答が遅いため、この周波数領域では分極が周波数に追随できずに損失成分が増大したものと考えられる。
【0071】
(比較例1)
強誘電体でない酸化物として、TiO2ナノ粒子を用いた系についても作製した。TiO2ナノ粒子は、チタンイソプロポキシドTi(OiPr)4を加水分解して作製した。Ti(OiPr)4の急激な反応による沈殿形成を避けるために、配位子となるβ−ジケトンであって強いキレート配位が可能であるアセチルアセトンacacHを用いてTi(OiPr)4の安定化を図った。ここで、前記acacHは、次のようにして脱水して精製した。200℃で12時間乾燥させたモレキュラーシーブス5AをacacHに加えて、密封系で2日間放置して水分を吸収させた。その後、上澄みを別の容器に移し、硫酸ナトリウムを加えて12時間撹拌した。その後、さらに上澄みを採取し、乾燥窒素雰囲気下で蒸留することにより無水acacHを調製した。
【0072】
フラスコ中にTi(OiPr)4及びacacHをモル比で1:1となるように秤量した。EtOHを0.1mol/Lとなるように加え、室温で10分間撹拌し、前駆体溶液を調製した。以上の操作は、空気中の水分や二酸化炭素を避けるために、乾燥窒素雰囲気下で行った。
【0073】
前記前駆体溶液に、EtOHで希釈した蒸留水を投入し、濃硝酸を数滴添加した後、80℃、18時間還流することで加水分解反応を進行させ、TiO2ナノ粒子含有溶液を調製した。ここで、加水分解に用いた水の量は、Ti(OiPr)4に対して50当量とした。
【0074】
更に、EtOHで希釈したポリオルガノシロキサンを前記TiO2ナノ粒子含有溶液に滴下し、80℃、20時間還流した。その後、減圧留去によりアルコール等の溶媒を除去して、TiO2ナノ複合流体を作製した。
【0075】
前記添加したポリオルガノシロキサンの量は、官能基である−OH基の量をTiO2に対して、3当量となる量にした。また、ここで添加したポリオルガノシロキサンは、実施例1と同じものを用いた。カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mを使用した場合には、沈殿が生じるか、あるいは溶液が濁ってしまい、透明な流体は得られなかった。片末端にカルビノール基を有するポリジメチルシロキサン(Me2SiO)nR"OHを使用した場合には、透明なナノ複合流体が得られた。
【0076】
図11に、TiO2ナノ粒子含有溶液から溶媒を除去して測定した粉末X線回折図を示す。ブロードではあるが、結晶性の回折ピークが見られ、これらの回折ピークはアナターゼに帰属される。シェラー式から結晶子サイズを算出すると、2.5nmであった。
【0077】
図12に、赤外吸収スペクトルを示す。acacH(図12(a))に見られるC=O伸縮振動に起因する1620cm-1及びエノールに起因する1720cm-1の吸収ピークが、加水分解反応後の粉末には見られず、新たに1580、1530、1400cm-1付近に吸収ピークが現れた(図12(b))。これは、acacHがキレート配位したことにより生じる新たな吸収ピークである。ポリジメチルシロキサン(Me2SiO)nR"OHの原料(図12(c))では、3500cm-1付近に見られる−OH基に起因するブロードな吸収ピークが見られるが、TiO2ナノ複合流体(図12(d))では、吸収ピークの強度が弱くなっている。これは、前記ポリジメチルシロキサンの−OH基がTiO2ナノ粒子と化学結合していることによるものである。
【0078】
(比較例2)
固相法のBaTiO3の粒子(平均粒径20nm、100nm)を、実施例1と同様のポリオルガノシロキサンに分散させた。
前記BaTiO3の粒子は、BaCO3とTiO2とを混合した後、1000℃、1時間仮焼し、粉砕・分級して調製した。
【0079】
前記BaTiO3の粒子を、カルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]m及びカルビノール側鎖を有するポリジメチルシロキサン[Me2Si(R´OH)]mにそれぞれ分散して流体を作製した。これらの流体に、実施例1と同様の方法で4kV/mmを印加したが、どの流体も光透過率には変化は見られなかった。特に、100nmの平均粒径を用いて作製した流体は、透光性にも優れないものであった。
【0080】
(比較例3)
実施例1と同様の手順でBaTiO3ナノ粒子を調製し、ポリオルガノシロキサンとして官能基を有さないシリコーンオイル(両末端基がメチル基のポリジメチルシロキサン)を使用して流体を作製した。即ち、実施例1のBaTiO3ナノ粒子含有溶液中に、シリコーンオイルを添加し、実施例1と同じ手順で流体を調製した。この場合、ポリオルガノシロキサンには、BaTiO3ナノ粒子と反応して化学結合を形成する官能基を有さない。
ここで調製した流体に、実施例1と同様の方法で4kV/mmを印加したが、光透過率には変化は見られなかった。
【0081】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、BaTiO3以外の酸化物のナノ粒子を分散させた電場応答性ナノ複合流体を作製した。
【0082】
BaTiO3以外の酸化物としては、Ba(Ti,Zn)O3、(Ba,Sr)TiO3のBaTiO3固溶体、SBT(SrBi2Ta29)、及びBTO(Bi4Ti312)を分散させた。Ba(Ti,Zn)O3については、Ba源とTi源に関しては実施例1と同様にし、Zn源としては酢酸亜鉛を使用した。(Ba,Sr)TiO3については、Ba源とTi源に関しては実施例1と同様にし、Sr源としてはBa源と同様に金属Srから金属アルコキシドを形成させるとともに、Ba−Sr−Tiの複合アルコキシドとした。SBT(SrBi2Ta29)に関しては、Sr源としては金属Srから実施例1のBa源と同様の手順で金属アルコキシドとし、Bi源はビスマスイソプロポキシド、Ta源はタンタルエトキシドを使用し、Sr−Bi−Taの複合アルコキシドとした。BTO(Bi4Ti312)については、Bi源はビスマスイソプロポキシドとし、Ti源は実施例1と同様とした。
以上の各酸化物原料を使用して、それぞれ、Ba(Ti,Zn)O3ナノ複合流体、(Ba,Sr)TiO3ナノ複合流体、SBT(SrBi2Ta29)ナノ複合流体、BTO(Bi4Ti312)ナノ複合流体を作製した。
【0083】
これらのナノ複合流体について、実施例1と同様に、ポリオルガノシロキサンの−OH基が前記各ナノ粒子と化学結合していることを確認した。また、各酸化物粒子の粒径は、2〜19nmの範囲内であることも確認した。
【0084】
実施例1と同様の手順で、4kV/mmの電場を印加して光透過率を測定した。いずれのナノ複合流体も、電場を印加すると光透過率が低下することが分かり、電場応答性の調光作用を有することが分かった。また、電場印加停止後に超音波を照射すると元の透過率の戻る時間を1/10にすることができた。
【0085】
(実施例3)
実施例1と同様の手順でBaTiO3ナノ粒子を調製し、ポリオルガノシロキサンとして、両末端にSi−OHの水酸基(シラノール基)の官能基を有するポリジメチルシロキサン、両末端にSi−OHの水酸基(シラノール基)の官能基を有するポリジメチルジフェニルシロキサン、両末端にエポキシ基の官能基を有するポリジメチルシロキサン、側鎖にエポキシ基の官能基を有するポリジメチルシロキサンをそれぞれ使用して電場応答性ナノ複合流体を作製した。即ち、実施例1のBaTiO3ナノ粒子含有溶液中に、前記各オルガノシロキサンをそれぞれ添加し、実施例1と同じ手順で流体を調製した。前記シラノール基を有するポリジメチルシロキサンとポリジメチルジフェニルシロキサンは、前記シラノール基を介してBaTiO3ナノ粒子と配位結合している。また、前記エポキシ基を有するポリジメチルシロキサンは、エポキシ基が開環してできる水酸基がBaTiO3ナノ粒子と配位結合しているものである。
【0086】
実施例1と同様の手順で、4kV/mmの電場を印加して光透過率を測定した。いずれのナノ複合流体も、電場を印加すると光透過率が低下することが分かり、電場応答性の調光作用を有することが分かった。また、電場印加停止後に超音波を照射すると元の透過率の戻る時間を1/10にすることができた。
【0087】
(実施例4)
実施例1において行った電場応答性の評価に関し、ITOをコートした2枚のガラスの間に、0.1mm厚さのポリイミドテープのスペーサを用いて電場応答性ナノ複合流体を挿入した調光素子を作製したが、ここでは、スペーサの厚さを変えた調光素子を作製して評価した。3μm、5μm、50μm、500μm、600μmの各スペーサで、調光素子を作製した。5μm、50μm、及び500μmのスペーサで作製した調光素子は、0.5〜30kV/mmの電場を印加すると良好な光遮断効果(光透過率の低下)が得られた。また、電場印加停止後に超音波を照射すると元の透過率の戻る時間を1/10にすることができた。一方、3μmのスペーサで作製した調光素子は、前記電場を印加すると光透過率の低下は見られたが、光遮断効果は十分でなく、高い電場を印加すると絶縁破壊した。600μmのスペーサで作製した調光素子は、前記電場を印加すると光透過率の低下は見られたが、光遮断効果は十分でなく、高い電場を印加しても十分な光遮断効果は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の電場応答性ナノ複合流体及び調光素子は、光シャッター、ディスプレイ、調光窓等の光遮断や透過光量制御を必要とする分野に容易に低コストで利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサンの分散媒に強誘電性の酸化物粒子が分散した流体であって、前記酸化物粒子の粒径が2〜19nmであり、前記酸化物粒子とポリオルガノシロキサンとが化学結合していることを特徴とする電場応答性ナノ複合流体。
【請求項2】
前記化学結合が、M−O−R−Si結合(M:酸化物粒子を構成する金属イオンM、R:有機基)であることを特徴とする請求項1記載の電場応答性ナノ複合流体。
【請求項3】
前記化学結合が、ポリオルガノシロキサンに有する水酸基が酸化物粒子と反応して形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電場応答性ナノ複合流体。
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサンと酸化物粒子とが、ポリオルガノシロキサン/酸化物モル比で1.5以上15.0以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電場応答性ナノ複合流体。
【請求項5】
前記酸化物粒子が、BaTiO3又はその固溶系酸化物の粒子を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電場応答性ナノ複合流体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の電場応答性ナノ複合流体を、2つの対向する透明電極間に配置し、前記電極間幅が5〜500μmであることを特徴とする調光素子。
【請求項7】
電場印加を停止した後に、前記電場応答性ナノ複合体に超音波を照射できる超音波照射機構を有することを特徴とする請求項6に記載の調光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−58677(P2012−58677A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204512(P2010−204512)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2010年3月25日オンライン掲載(http://ir.nul.nagoya−u.ac.jp/dspace/handle/2237/14185)の名古屋大学博士学位論文「機能性チタン酸バリウム粒子/ポリマーハイブリッドの合成と評価」 2010年6月10日オンライン掲載(http://Onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.201001398/abstract)の論文「Synthesis of Transparent and Field−Responsive BaTiO▲3▼ Particle/Organosiloxane Hybrid Fluid」 日本ゾル−ゲル学会 第8回討論会講演予稿集 第59ページ、2010年7月29日発行
【出願人】(506367146)
【Fターム(参考)】