説明

電子インレット付フィルム、電子インレットカートリッジ及び電子インレットの装着方法

【課題】電子インレットを安価かつ容易に被着体に貼り付けることができる電子インレット付フィルム、電子インレットカートリッジ及び電子インレットの装着方法を提供する。
【解決手段】 無線通信用のICチップ11と送受信アンテナ12とを備えた電子インレット10を格納する電子インレットカートリッジであって、少なくとも2個以上の電子インレット10を、粘着面が片面に形成されたキャリヤフィルム20の粘着面上に整列固定し、電子インレット10を接着固定したキャリヤフィルム20を少なくとも1層以上巻きつけた円芯30を筐体40に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップと送受信アンテナから構成される非接触式固体識別用電子インレットを用いた、被着体に容易に接着固定するのに好適な電子インレット付フィルム、電子インレットカートリッジ及び電子インレットの装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いる非接触式個体識別システムは、物のライフサイクル全体を管理するシステムとして、製造、物流、販売、リサイクルのすべての業態で注目されている。特にUHF波やマイクロ波を用いる電波方式のRFIDタグは、ICチップに外部アンテナを取り付けた構造で数メートルの通信距離が可能であるという特徴によって注目されており、現在、大量の商品の物流管理や製造物履歴管理等を目的にシステムの構築が進められている。
【0003】
周波数が2.45GHzのマイクロ波を利用した電波方式のRFIDタグとしては、例えば、株式会社日立製作所によって開発されたミューチップインレットが知られている。0.5mm以下の微小なICチップを送受信アンテナに実装したRFIDタグ製造の中間状態は電子インレットと呼ばれ、TCP(Tape Carrier Package)構造及びCOA(Chip on Aluminum)構造の電子インレットが開発されている。
【0004】
また、その他のインレット構造として、例えば、株式会社日立製作所の宇佐美により、外部電極が表裏面に1個ずつ形成されたICチップを励振スリット型ダイポールアンテナに実装する際に、アンテナによってICチップ2個の外部電極を挟み込む構造が開発されている(特許文献1参照)。
【0005】
いずれの構造においても、金属箔とベースフィルムを貼り合わせたフィルム基材をエッチング等によるアンテナ回路形成から、ICチップの実装までロールtoロール工法で一貫して製造することが可能であり、優れた生産性を実現することができる。
【特許文献1】特開2004−127230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
RFIDタグを用いた被接触式個体識別システムで大量の商品の製造、物流及び物品管理を実現するためには、安価かつ大量に製造された電子インレットを商品等の被着体に貼り付ける際に容易に効率よく行う必要がある。
【0007】
一方、被着体となる商品等は、その形状や、大きさ、表面の材質等が種々多様であるため、それらすべての被着体毎に電子インレットの自動貼り付け機を準備するのは困難であると予想される。また、電子インレットの貼り付け作業を行う場所についても、例えば個人で行っている生産現場等では、手作業で貼り付けることも予想される。
【0008】
しかしながら、ロールtoロール工法で製造された、連続した多数の電子インレットを手作業で分割しながら貼り付けたり、もしくは個別に分割済みの電子インレットを1個1個貼り付けていくのは手間がかかり、効率が悪い。
【0009】
本発明は、前記に鑑みてなされたものであり、電子インレットを安価かつ容易に被着体に貼り付けることができる電子インレット付フィルム、電子インレットカートリッジ及び電子インレットの装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
本発明に係る電子インレット付フィルムは、無線通信用のICチップと送受信アンテナとを備えた少なくとも2個以上の電子インレットを、粘着面が片面に形成されたキャリヤフィルムの前記粘着面上に整列固定したことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る電子インレット付フィルムは、無線通信用のICチップと送受信アンテナとを備えた少なくとも2個以上の電子インレットを、粘着性フィルムと前記粘着性フィルムを支持するベースフィルムからなる2層キャリヤフィルムの前記粘着性フィルム上に整列固定することが好ましい。
【0013】
本発明に係る電子インレット付フィルムは、無線通信用のICチップと送受信アンテナとを備えた少なくとも2個以上の電子インレットを、粘着性フィルムと前記粘着性フィルムを支持するベースフィルムからなる2層キャリヤフィルムの前記粘着性フィルムと前記ベースフィルムとの間に整列固定することが好ましい。
【0014】
キャリヤフィルムがロール状に少なくとも1層以上巻かれていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る電子インレット付フィルムは、ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に形成された複数個の送受信アンテナと、前記複数個の送受信アンテナ上に実装された複数個の無線通信用のICチップからなるロール状の電子インレットの前記ICチップが実装された面上に、粘着剤層が形成されていることが好ましい。
【0016】
粘着性フィルムまたは粘着剤層が脆性を有することが好ましい。
【0017】
粘着性フィルムが所定の位置で分割されていることが好ましい。
【0018】
キャリヤフィルムにミシン目が形成されていることが好ましい。
【0019】
電子インレットの長辺がロールの長辺に対し垂直になる様に前記電子インレットがロールの長辺に沿って1列に配置されることが好ましい。
【0020】
電子インレットの長辺がロールの長辺に対し平行になる様に前記電子インレットがロールの長辺に沿って1列に配置されることが好ましい。
【0021】
ロールの長辺に対し垂直な方向にも電子インレットが複数個配置されることが好ましい。
【0022】
複数個配置された電子インレットをロールの長辺に対し斜め方向にそれぞれほぼ等角度ずらして配置することが好ましい。
【0023】
ロールの長辺に対し垂直な方向に並んだ電子インレット間の間隔および/またはロールの長辺に対し平行な方向に並んだ電子インレット間の間隔がそれぞれほぼ等間隔であることが好ましい。
【0024】
電子インレットがロールの外側に位置するように巻かれることが好ましい。
【0025】
電子インレットがロールの内側に位置するように巻かれることが好ましい。
【0026】
本発明に係る電子インレットカートリッジは、電子インレット付フィルムと前記ロール状フィルムを筐体に固定する円芯部分が筐体に納められていることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る電子インレットカートリッジは、電子インレット付フィルムと、前記電子インレット付フィルムを巻き取るための第2の円芯部分とが筐体に納められていることが好ましい。
【0028】
電子インレットが対向する2つの面に第1及び第2の2つの外部電極を有するICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記送受信アンテナとを電気的に接続する導電材料とを備えた電子インレットであって、前記ICチップの一方の面に形成された第1の外部電極が前記スリットの近傍のアンテナ上に接続され、第1の外部電極と対向する面に形成された第2の外部電極が、前記導電材料を介して前記ICチップに対し前記スリットを挟んで対向する位置のアンテナ上に接続される構造を有することが好ましい。
【0029】
本発明に係る電子インレットの装着方法は、電子インレット付フィルムまたは電子インレットカートリッジを用いて前記電子インレットを被着体に貼り付けた後、前記ベースフィルムを前記被着体から引き離すことによって、前記粘着性フィルム及び前記電子インレットが前記ベースフィルムと分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の電子インレット付フィルム、電子インレットカートリッジ及び電子インレットの装着方法によれば、次のような効果を得ることができる。すなわち、電子インレットを粘着性キャリヤフィルム上に整列固定することによって、電子インレットを安価かつ容易に被着体に貼り付けることができる電子インレット付フィルム、電子インレットカートリッジ及び電子インレットの装着方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
本発明の電子インレット付フィルム、電子インレットカートリッジ及び電子インレットの装着方法は、無線通信用のICチップと送受信アンテナによって構成されている複数個の電子インレットと、それらを整列固定するための粘着性フィルム、粘着性フィルムを支持するベースフィルム、それらを巻き取るための円芯、筐体等から構成されている。
【0033】
図1に本実施形態の電子インレット付フィルムの一例であり、粘着性フィルム上に電子インレットを整列固定した状態の概略図を示す。図1(a)はICチップ11と送受信アンテナ12とから構成される電子インレット10を、片面に粘着剤が塗布された粘着性キャリヤフィルム20の粘着面上に整列固定した例である。電子インレット10の長手方向となる長辺、すなわち送受信アンテナ12の長辺が、ロールとなる粘着性キャリヤフィルム20の長手方向となる長辺に対し垂直となるように、この長辺を粘着性キャリヤフィルム20の幅方向と合わせ、電子インレット10を粘着性キャリヤフィルム20の長辺方向にほぼ等間隔に1列に配置した。これによって、フィルム長さに対する電子インレット10の数を多くすることができる。
【0034】
図1(b)は粘着性キャリヤフィルム20の長辺に対し垂直な方向に電子インレットを2列に配置した例である。電子インレット10の長辺が粘着性キャリヤフィルム20の長辺と垂直となるように、電子インレット10を粘着性キャリヤフィルム20の長辺方向にほぼ等間隔に配置したことは図1(a)と同様である。この例では、フィルムの長さに対する電子インレット10の数をさらに多くすることができる。
【0035】
図1(c)は電子インレット10の長辺が粘着性キャリヤフィルム20の長辺と平行となるように、電子インレット10を1列に粘着性キャリヤフィルム20の長辺方向にほぼ等間隔で整列固定した例である。この例では、電子インレット10を1個1個に分割する際に切断長さを小さくすることができるため、切断が容易である。
【0036】
図1(d)は粘着性キャリヤフィルム20の長辺に対し垂直な方向に電子インレットを4列に配置した例である。電子インレット10の長辺が粘着性キャリヤフィルム20の長辺と平行となるように、電子インレット10を粘着性キャリヤフィルム20の長辺方向にほぼ等間隔に配置したことは図1(c)と同様である。この例では、粘着性キャリヤフィルム20の長辺方向に電子インレット10の列数にスリット分割しながら各々の列の電子インレット10を1個1個に切断していくことにより、フィルム長さに対する電子インレット10の数を多くすることができ、かつ切断も容易である。
【0037】
図1(e)は電子インレット10の長辺方向を、片面に粘着剤が塗布された粘着性キャリヤフィルム20の長辺方向に対し斜め方向にそれぞれほぼ等角度になるように、この長辺方向にほぼ等間隔に配置した列を、粘着性キャリヤフィルム20の長辺方向に垂直な方向に2列に配置した例である。この例では、フィルムの面積に対する電子インレット10の数を多くすることができる。
【0038】
図2に電子インレット付フィルムの一例の断面外略図を示す。電子インレット10は片面に粘着剤が塗布された粘着性キャリヤフィルム20の粘着面上に整列固定されている。ここで、図中には電子インレット10のICチップ11は、送受信アンテナ12を挟んで粘着面とは反対側に固定されているが、電子インレット10の向きは上下反転していてもよい。すなわち、粘着面と送受信アンテナ12間にICチップ11を固定してもよい。本実施形態の電子インレット10を被着体に貼り付けた場合、電子インレット10を貼り付けた箇所の表面は粘着性を持たないベースフィルム面となり、他の物品等に接着させたくない場合に好適である。
【0039】
図3に電子インレット付フィルムの一例の断面外略図を示す。本実施形態では電子インレット10が、粘着性フィルム21と粘着性フィルム21を支持するベースフィルム22とから構成される粘着性2層キャリヤフィルム20の粘着性フィルム21面上に整列固定されている。本実施形態においても図中には電子インレット10のICチップ11が送受信アンテナ12を挟んで粘着面とは反対側に固定されているが、電子インレット10の向きは前述のように上下反転していてもよい。本実施形態において電子インレット10をベースフィルム22とともに被着体に貼り付けた場合、電子インレット10を貼り付けた箇所の表面は粘着性を持たないベースフィルム面となり、他の物品等に接着させたくない場合に好適である。また、ベースフィルム22から剥がして電子インレット10を被着体に貼り付けた場合、電子インレット10の表面は粘着性を持ち、その上にラベル等を貼る場合に好適である。
【0040】
図4に電子インレット付フィルムの一例の断面外略図を示す。本実施形態では電子インレット10が、粘着性フィルム21と粘着性フィルム21を支持するベースフィルム22とから構成される粘着性2層キャリヤフィルム20の、粘着性フィルム21とベースフィルム22の間に整列固定されている。本実施形態においても図中には電子インレット10のICチップ11が送受信アンテナ12を挟んで粘着面とは反対側に固定されているが、前述のように電子インレットの向きは上下反転していてもよい。本実施形態は電子インレット10と被着体が粘着性フィルム21を介して直接貼り付けられるため、強い接着力を必要とする場合に好適である。
【0041】
図5(a)に電子インレット付フィルムの一例の断面外略図を示す。本実施形態では電子インレット10がICチップ11と送受信アンテナ12と電子インレット10の製造工程において送受信アンテナ12を支持するためのベースフィルム13とから構成され、粘着性フィルム21がICチップ11及び送受信アンテナ12面に積層されている。
【0042】
図5(b)から(e)に電子インレット付フィルムの製造工程の概略を示す。図5(b)は送受信アンテナ12となる金属箔12aとベース基材13とを貼り合わせたロール状のフィルムである。次に図5(c)に示すように、金属箔12aをエッチング等の方法で所望の形状に加工し、送受信アンテナ12を形成する。次に図5(d)に示すように、送受信アンテナ12の上の所定の位置にICチップ11を実装し、ロール状に形成された多数の電子インレット10を作製する。次に図5(e)に示すように、電子インレット10のICチップ11実装面に粘着性フィルム21をラミネートする。以上の製造工程により、図5(a)に示した構成が得られる。ここで、電子インレット10上への粘着剤層の形成は液状接着剤の塗布及び乾燥にて行ってもよい。本実施形態によれば、個片化された電子インレット10を再度整列することなく、粘着性フィルム21上に整列した電子インレット10を得ることができ、優れた生産性を実現するのに好適である。
【0043】
図6に製造工程の一工程における断面外略図を示す。本実施形態では電子インレット10が、片面に粘着剤が塗布された粘着性キャリヤフィルム20の粘着面上に整列固定されており、電子インレット10を分割するためのミシン目50が形成されている。ここでキャリヤフィルム20は粘着性フィルムとベースフィルムとからなる2層粘着性キャリヤフィルムであってもよい。本実施形態によれば、はさみやカッターナイフを用いることなく、ミシン目25によって容易に電子インレット10を分割し、被着体に貼り付けることができる。また、ミシン目が形成されることにより、ロール状フィルムをスリット分割するのにも好適となる。
【0044】
図7に製造工程の一工程における概略図を示す。電子インレット10は片面に粘着剤が塗布された粘着性キャリヤフィルム20の粘着面上に整列固定されており、円芯30に巻かれている。ここでキャリヤフィルム20は粘着性フィルムとベースフィルムとからなる2層粘着性キャリヤフィルムであってもよい。いずれの場合も円芯30に層状に巻きつけられるため、キャリヤフィルム20の裏面は、粘着性フィルムとの離型性をもつことが好ましい。
【0045】
図8に電子インレットカートリッジの一例の概略図を示す。電子インレット10は片面に粘着剤が塗布された粘着性キャリヤフィルム20の粘着面上に整列固定されており、円芯30に巻かれている。円芯30はカートリッジの筺体40に固定されており、筺体40には切断刃41が取り付けられている。円芯390からキャリヤフィルム20を引き出し切断刃41で切断することで、はさみやカッターナイフを用いることなく、容易に電子インレット10を分割し、被着体に貼り付けることができる。
【0046】
この電子インレットカートリッジには、図2又は図3で示したテープ構造の電子インレット付フィルムを適用することができる。
【0047】
図9に電子インレットカートリッジの一例の概略図を示す。電子インレット10は粘着性フィルム21とベースフィルム22とからなる2層粘着性キャリヤフィルムの粘着性フィルム21上に整列固定されており、筐体42に固定された第1の円芯31に巻かれている。第1の円芯31から引き出されたキャリヤテープは円柱33で折り返され、筐体42に固定された第2の円芯32に巻き取られる。円柱部33を被着体に押し付け、筐体42を図中右方向に移動することによって粘着性フィルム21及び電子インレット10が被着体に貼り付けられる。ここで、粘着性フィルム21が脆性を有するか、もしくは粘着性フィルム21の所定の位置を分割しておくことが、ベースフィルム22と粘着性フィルム21及び電子インレット10とを容易に分離する上で好ましく、ベースフィルム22が粘着性フィルム21との離型性を有することがさらに好ましい。また、第1の円芯31と第2の円芯32は歯車で噛み合わせておけば、キャリヤフィルムの巻き出しと巻き取りが同期し、フィルムの弛み等が生ずることがなく好適である。
【0048】
この電子インレットカートリッジには、図3又は図4で示したテープ構造の電子インレット付フィルムを適用することができる。
【0049】
以上で説明したいずれの実施形態においても、個々の電子インレット10を等間隔に整列固定すれば、切断、貼り付け等を自動化する際にも効率が良く、好ましい。
【0050】
本発明は電子インレット付フィルム、電子インレットカートリッジ及び電子インレットの装着方法について特に制限されるものではないが、電子インレットを安価かつ効率よく生産できることが好ましい。図10にこれらの要求を満足し得る電子インレットの構造の一例を示す。
【0051】
図10(a)に本実施形態の電子インレットを上面から見た概略図を示す。本実施形態の電子インレット10はICチップ11と、送受信アンテナ12と、ICチップ11と送受信アンテナ12とを電気的に接続するための導体14とから構成されている。送受信アンテナ12と導体14はA部でICチップ11を挟み込む構造で接続されており、B部で送受信アンテナ12と導体14が接続されている。送受信アンテナ12には励振スリット12bが形成されており、この励振スリット12bの幅及び長さを調節することで送受信アンテナ12とICチップ11のインピーダンスを整合することが可能である。
【0052】
図10(b)に図10(a)のC−C’の断面外略図を示す。ICチップ11は表裏面に第1の外部電極11aと第2の外部電極11bとが形成されており、異方導電性接着剤15に含有される導電粒子15bを介して送受信アンテ12及び導体14と各々電気的に接続され、またマトリクス樹脂15aによって固定されている。
【0053】
励振スリット12bを用いてICチップ11とのインピーダンス整合をとる構造は良好な通信特性を得られるが、ICチップ11の2個の外部電極11a,11bを励振スリット12bを跨いだ位置に接続する必要があり、図11に示すような同一面内に外部電極11a,11bが形成された一般的なICチップ11を実装する構造では、安価な電子インレット10の実現を目的にチップサイズ11を縮小するほど高精度なスリット加工及び高精度な位置合わせが不可欠となり、生産性が低下する。一方、図10(b)に示したように送受信アンテナ12と導体14によってICチップ11の表裏面に形成された2個の外部電極11a,11bを挟み込んで接続する構造を用いれば、2個の外部電極11a,11bが励振スリット12bを跨ぐ必要がないことから、ICチップ11の小型化に対しても支障が生じず、ICチップ11と送受信アンテナ12bの高精度な位置合わせも不要となり、安価で高い生産性を実現するのに好適な構造である。
【0054】
図1から図10にて説明したように、電子インレットを粘着性キャリヤフィルム上に整列固定すれば、電子インレットを安価かつ容易に被着体に貼り付けることができる電子インレット付フィルム、電子インレットカートリッジ及び電子インレットの装着方法が実現できる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の好適な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
以下、図を用いて実施例1である電子インレットの作製から被着体への貼り付けまでの工程を説明する。実施例1は、図2又は図3に示した電子インレットに対応している。
【0057】
まず、本例で使用した電子インレットの作製工程を図12を用いて説明する。
【0058】
まず、表裏面に外部電極11a及び11bが形成されたICチップ11を準備した。(図12(a))
次に、アルミニウム箔とポリエチレンテレフタレートフィルム13を貼り合わせたロール状のフィルム基材を用意し、塩化鉄溶液を用いて所定の寸法に励振スリットをエッチング加工した送受信アンテナ12を作製した。(図12(b))
次に、送受信アンテナ12のICチップ11を実装する所定の位置に、マトリクス樹脂15aと導電性粒子15bとからなる異方導電性接着フィルム15(AC−2056T−45、日立化成工業(株)製)を仮接着した。(図12(c))
次に、送受信アンテナ12の異方導電性接着フィルム15上の所定の位置にICチップ11を仮固定した。(図12(d))
次に、アルミニウム箔16とポリエチレンテレフタレートフィルム17を貼り合わせた基材のアルミニウム箔面16の所定の位置に、マトリクス樹脂15aと導電性粒子15bとからなる異方導電性接着フィルム15(AC−2056T−45、日立化成工業(株)製)を仮接着し、異方導電性フィルム15面がICチップ11と対向する向きで重ね、さらにその上からICチップ11の厚みに等しい突起を形成した圧着ヘッド60を所定の位置に合わせた。(図12(e))
次に、圧着ヘッド60を降下し、温度180℃、荷重2Nの条件で20秒間圧着し、図12(f)に示す構造を得た。
【0059】
以上の工程でロール内に多数形成された電子インレット10を、幅3.5mm、長さ70mmの大きさで個片に切断し、片面に粘着剤が塗布された幅10mm、長さ20mの粘着性フィルムの粘着面上に、90mmの間隔で1列に並べ、図7に示すように円芯30に巻き取った。
【0060】
次に、この円芯30を図8に示すような、切断刃41がついた筐体40に固定し、電子インレットカートリッジとした。
【0061】
このカートリッジからテープ状の電子インレット10を引き出しながら、切断刃41で個片に切断し、図13に示すような被着体70への貼り付け作業を行った。
【0062】
本実施例によれば電子インレットの取扱い及び貼り付け作業を容易に効率よく行うことができた。
【0063】
<実施例2>
以下、実施例2を説明する。実施例2は、図3に示した電子インレットに対応している。
【0064】
まず、実施例1と同じ工程で、図12(f)に示す構造の電子インレット10が多数形成されたロールを作製した。
【0065】
次に、このロール内に多数形成された電子インレット10を、幅3.5mm、長さ70mmの大きさで個片に切断し、粘着性フィルムとの剥離処理が施されたベースフィルムと脆性を有する粘着性フィルムからなる幅10mm、長さ20mの粘着性テープの粘着性フィルム面上に90mmの間隔で1列に並べ、円芯に巻き取った。
【0066】
次に、図9に示すように、この円芯31を筐体42に固定された歯車を有する治具に取付け、同じく筐体42に固定された歯車を有する治具32に取り付けられたベースフィルムを巻き取るための円芯32にテープの先端を巻きつけ、電子インレットカートリッジとした。
【0067】
このカートリッジの円柱部33を被着体70に押し付け、カートリッジを図中右方向に移動することによって、電子インレット10の貼り付け箇所の表面が粘着性を持つ状態で、図14に示すように被着体70に電子インレット10を貼り付けた。この上に、所望の情報を文字にて表示したラベル80を貼り付けた。
【0068】
本実施例によれば電子インレット10の取扱い及び貼り付けと、電子インレット10上へのラベル80の貼り付け作業を容易に効率よく行うことができた。
【0069】
<実施例3>
以下、実施例3を説明する。実施例3は、図4に示した電子インレットに対応している。
【0070】
まず、図12(b)において、アルミニウム箔12との貼り付け面とは反対の面に粘着性フィルムとの剥離処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム13を貼り合わせたロール状のフィルム基材を用意した他は、実施例1と同じ工程で、図12(f)に示す構造の電子インレット10が多数形成されたロールを作製した。
【0071】
次に、このロールのインレット形成面上に、図5(e)に示すように、粘着性フィルムを貼り付けた。
【0072】
次に、このロールを電子インレット1列毎にスリット加工によって分割し、図7に示すように円芯30に巻き取った。
【0073】
次に、この円芯を図8に示すような、切断刃41がついた筐体40に固定し、電子インレットカートリッジとした。
【0074】
このカートリッジからテープ状の電子インレット10を引き出しながら、切断刃41で個片に切断し、図13に示すような被着体70への貼り付け作業を行った。
【0075】
本実施例によれば、個片化された電子インレット10を粘着性テープ上に再度整列させる工程を省略でき、かつ電子インレット10の取扱い及び貼り付け作業を容易に効率よく行うことができた。
【0076】
<実施例4>
以下、実施例4を説明する。実施例4は、図2又は図3に示した電子インレットに対応している。
【0077】
まず、図11に示す構造で、幅2.5mm、長さ70mmの大きさの電子インレット10を用意した。
【0078】
次に、これらの電子インレット10を粘着性フィルムとの剥離処理が施されたベースフィルムと脆性を有する粘着性フィルムからなる幅10mm、長さ20mの両面テープの粘着性フィルム面上に90mmの間隔で1列に並べ、円芯に巻き取った。
【0079】
次に、図9に示すように、この円芯31を筐体42に固定された歯車を有する治具に取付け、同じく筐体42に固定された歯車を有する治具32に取り付けられたベースフィルムを巻き取るための円芯32にテープの先端を巻きつけ、電子インレットカートリッジとした。
【0080】
図13は、この電子インレットカートリッジを用いた電子インレットによる被着体への貼り付けを示す図である。
【0081】
このカートリッジの円柱部33を被着体70に押し付け(図13(a))、カートリッジを図中右方向に移動することによって、電子インレット10の貼り付け箇所の表面が粘着性を持つ状態で、被着体70に電子インレット10を貼り付けた(図13(b))。
【0082】
本実施例によれば電子インレットの取扱い及び貼り付け作業を容易に効率よく行うことができた。
【0083】
<実施例5>
以下、実施例5を説明する。実施例5は、図3に示した電子インレットに対応している。
【0084】
まず、図11に示す構造で、幅2.5mm、長さ70mmの大きさの電子インレット10を用意した。
【0085】
次に、これらの電子インレット10を粘着性フィルムとの剥離処理が施されたベースフィルムと脆性を有する粘着性フィルムからなる幅10mm、長さ20mの両面テープの粘着性フィルム面上に90mmの間隔で1列に並べ、円芯に巻き取った。
【0086】
次に、図9に示すように、この円芯31を筐体42に固定された歯車を有する治具に取付け、同じく筐体42に固定された歯車を有する治具32に取り付けられたベースフィルムを巻き取るための円芯32にテープの先端を巻きつけ、電子インレットカートリッジとした。
【0087】
図13は、この電子インレットカートリッジを用いた電子インレットによる被着体への貼り付けを示す図である。
【0088】
このカートリッジの円柱部33を被着体70に押し付け(図13(a))、カートリッジを図中右方向に移動することによって、電子インレット10の貼り付け箇所の表面が粘着性を持つ状態で、被着体70に電子インレット10を貼り付けた(図13(b))。この上に、所望の情報を文字にて表示したラベル80を置き(図13(c))、このラベル80を電子インレット10及び被着体70に貼り付けた(図13(d))。
【0089】
本実施例によれば電子インレットの取扱い及び貼り付けと、電子インレット上へのラベルの貼り付け作業を容易に効率よく行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1a】電子インレット付フィルムの例を示す図である。
【図1b】電子インレット付フィルムの例を示す図である。
【図1c】電子インレット付フィルムの例を示す図である。
【図1d】電子インレット付フィルムの例を示す図である。
【図1e】電子インレット付フィルムの例を示す図である。
【図2】電子インレット付フィルムの一例を示す断面図である。
【図3】電子インレット付フィルムの一例を示す断面図である。
【図4】電子インレット付フィルムの一例を示す断面図である。
【図5】電子インレット付フィルムの一例を説明するための工程図である。
【図6】電子インレット付フィルムの製造工程の一工程を示す図である。
【図7】電子インレット付フィルムの製造工程の一工程を示す図である。
【図8】電子インレットカートリッジの一例を示す図である。
【図9】電子インレットカートリッジの一例を示す図である。
【図10】好適な電子インレットの構造を示す平面図であり、(b)は(a)のC−C’断面を示す図である。
【図11】一般的な電子インレットの構造を示す平面図であり、(b)は(a)のD−D’断面を示す図である。
【図12】好適な電子インレットの製造工程を説明するための図である。
【図13】電子インレットカートリッジを用いた電子インレットによる被着体への貼り付けを示す図である。
【符号の説明】
【0091】
10:電子インレット
11:ICチップ
11a:第1の外部電極
11b:第2の外部電極
12:送受信アンテナ
12a:金属箔
12b:励振スリット
13:送受信アンテナのベースフィルム
14:導体
15:異方導電性接着剤
15a:マトリクス樹脂
15b:導電粒子
16:金属箔
17:金属箔のベースフィルム
18:封止材
20:粘着性キャリヤフィルム
21:粘着性フィルム
22:ベースフィルム
30:円芯
31:第1の円芯
32:第2の円芯
33:円柱部
40:筐体
41:切断刃
42:筐体
50:ミシン目
60:圧着ヘッド
70:被着体
80:ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信用のICチップと送受信アンテナとを備えた少なくとも2個以上の電子インレットを、粘着面が片面に形成されたキャリヤフィルムの前記粘着面上に整列固定したことを特徴とする電子インレット付フィルム。
【請求項2】
無線通信用のICチップと送受信アンテナとを備えた少なくとも2個以上の電子インレットを、粘着性フィルムと前記粘着性フィルムを支持するベースフィルムからなる2層キャリヤフィルムの前記粘着性フィルム上に整列固定したことを特徴とする電子インレット付フィルム。
【請求項3】
無線通信用のICチップと送受信アンテナとを備えた少なくとも2個以上の電子インレットを、粘着性フィルムと前記粘着性フィルムを支持するベースフィルムからなる2層キャリヤフィルムの前記粘着性フィルムと前記ベースフィルムとの間に整列固定したことを特徴とする電子インレット付フィルム。
【請求項4】
キャリヤフィルムがロール状に少なくとも1層以上巻かれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の電子インレット付フィルム。
【請求項5】
ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に形成された複数個の送受信アンテナと、前記複数個の送受信アンテナ上に実装された複数個の無線通信用のICチップからなるロール状の電子インレットの前記ICチップが実装された面上に、粘着剤層が形成されていることを特徴とする電子インレット付フィルム。
【請求項6】
粘着性フィルムまたは粘着剤層が脆性を有する請求項1〜5のいずれかに記載の電子インレット付フィルム。
【請求項7】
粘着性フィルムが所定の位置で分割されている請求項1〜6のいずれかに記載の電子インレット付フィルム。
【請求項8】
キャリヤフィルムにミシン目が形成されている請求項1〜7のいずれかに記載の電子インレット付フィルム。
【請求項9】
電子インレットの長辺がロールの長辺に対し垂直になる様に前記電子インレットがロールの長辺に沿って1列に配置された請求項1〜8のいずれかに記載の電子インレット付フィルム。
【請求項10】
電子インレットの長辺がロールの長辺に対し平行になる様に前記電子インレットがロールの長辺に沿って1列に配置された請求項1〜8のいずれかに記載の電子インレット付フィルム。
【請求項11】
ロールの長辺に対し垂直な方向にも電子インレットが複数個配置された請求項9又は10記載の電子インレット付フィルム。
【請求項12】
複数個配置された電子インレットをロールの長辺に対し斜め方向にそれぞれほぼ等角度ずらして配置した請求項9記載の電子インレット付フィルム。
【請求項13】
ロールの長辺に対し垂直な方向に並んだ電子インレット間の間隔および/またはロールの長辺に対し平行な方向に並んだ電子インレット間の間隔がそれぞれほぼ等間隔である請求項9〜12のいずれか記載の電子インレット付フィルム。
【請求項14】
電子インレットがロールの外側に位置するように巻かれた請求項4〜13のいずれか記載の電子インレット付フィルム。
【請求項15】
電子インレットがロールの内側に位置するように巻かれた請求項4〜13のいずれか記載の電子インレット付フィルム。
【請求項16】
請求項14に記載の電子インレット付フィルムと前記ロール状フィルムを筐体に固定する円芯部分が筐体に納められていることを特徴とする電子インレットカートリッジ。
【請求項17】
請求項15に記載の電子インレット付フィルムと、前記電子インレット付フィルムを巻き取るための第2の円芯部分とが筐体に納められていることを特徴とする電子インレットカートリッジ。
【請求項18】
電子インレットが対向する2つの面に第1及び第2の2つの外部電極を有するICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記送受信アンテナとを電気的に接続する導電材料とを備えた電子インレットであって、前記ICチップの一方の面に形成された第1の外部電極が前記スリットの近傍のアンテナ上に接続され、第1の外部電極と対向する面に形成された第2の外部電極が、前記導電材料を介して前記ICチップに対し前記スリットを挟んで対向する位置のアンテナ上に接続される構造を有していることを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の電子インレットまたは電子インレットカートリッジ。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の電子インレット付フィルムまたは電子インレットカートリッジを用いて前記電子インレットを被着体に貼り付けた後、前記ベースフィルムを前記被着体から引き離すことによって、前記粘着性フィルム及び前記電子インレットが前記ベースフィルムと分離することを特徴とする電子インレットの装着方法。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図1d】
image rotate

【図1e】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2006−23911(P2006−23911A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200463(P2004−200463)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】