説明

電子カセッテ用充電器

【課題】バッテリ収容体が装着される装着部内のコネクタに汚れが付着しにくい電子カセッテ用充電器を提供する。
【解決手段】充電器36は、バッテリパック28が挿抜自在に装着される装着部37を有する。充電器36の本体38の上面38aには、バッテリパック28が挿入される挿入口41が形成されている。装着部37は本体38の前面38c側に前傾しており、挿入口41の底面46は、前面38c側の一端が下端に、背面38d側の他端が上端となるように、水平方向に対して傾斜している。底面46の上端側には給電用のコネクタ51が配置されている。挿入口から、塵、埃、液体などが進入して底面46に落下しても下端側に流下するので、コネクタ51に汚れが付着しにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影用電子カセッテに用いられる電子カセッテ用充電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、放射線、例えばX線を利用したX線撮影に用いられるX線撮影用の電子カセッテが知られている(特許文献1)。電子カセッテは、被写体を透過したX線の照射を受けて、被写体の画像情報を表すX線画像を検出するX線画像検出装置であり、X線画像のデータをデジタルデータとして出力することが可能なX線画像検出器(FPD:Flat Panel Detector)を可搬型の筐体に収容したものである。
【0003】
電子カセッテは、被写体となる被検者を立位姿勢や臥位姿勢で撮影する据え置き型の撮影台に取り付けて使用される他、撮影台から取り外して撮影台では撮影しにくい部位(例えば肘や膝などの手足の関節)の撮影に用いられる他、撮影室までの移動が困難な被検者を病室の寝台に寝かせた状態で撮影したり、緊急時には車椅子に乗せた状態で撮影するなど、様々な態様で用いられる。
【0004】
特許文献1には、こうした電子カセッテの取り扱い性を向上するために、筐体に無線通信部と駆動用のバッテリを設けることで、通信用ケーブルや電源ケーブルを不要にしたワイヤレスタイプの電子カセッテが記載されている。電子カセッテのバッテリは充電可能なバッテリが使用され、容量を使い切ったバッテリは充電されて繰り返し使用される。
【0005】
特許文献1の図10には、電子カセッテ用の充電器が記載されており、充電器にはバッテリを内蔵する電子カセッテの筐体が挿抜自在に装着される装着部が設けられている。装着部の挿入口は、充電器の本体上面に形成されており上方に向いている。特許文献1に明示は無いが、装着部の内部は挿入口の奥に底面が設けられた袋状になっており、底面には、電子カセッテの内蔵バッテリと電気的に接続して内蔵バッテリに給電を行うためのコネクタが設けられているのが一般的である。電子カセッテが挿入口から挿入されると、電子カセッテのコネクタと充電器のコネクタが接続されて充電が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−276687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、充電器は挿入口から装着部内に塵や埃が進入しやすく、塵や埃が装着部の底面に溜まりやすい。底面にはコネクタが設けられているので、塵や埃がコネクタに付着して接触不良を起こすおそれがあるという問題が生じる。
【0008】
電子カセッテ用の充電器は、病院などの医療施設で用いられる医療機器であるため、塵や埃の他に、体液、血液、薬品といった液体が挿入口から進入する懸念もある。コネクタは電気部品であるため、液体の付着は塵や埃以上に回避する必要性が高いので、上記問題点を解決する対策が強く要望されていた。特許文献1には、こうした問題やその解決策については明示も示唆もない。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、バッテリ収容体が装着される装着部内のコネクタに汚れが付着しにくい電子カセッテ用充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子カセッテ用充電器は、放射線撮影用の電子カセッテのバッテリが収容されたバッテリ収容体が挿抜自在に装着される装着部を有する本体と、前記本体に形成され、前記バッテリ収容体を前記装着部に挿入するための挿入口と、前記挿入口の奥に設けられ、一端が上端に他端が下端になるように水平方向に対して傾斜した、前記装着部の底面と、
前記底面に前記下端との間に間隔を空けて配置され、前記バッテリ収容体が前記装着部に装着されたときに前記バッテリと電気的に接続して給電を行うためのコネクタとを備えていることが好ましい。
【0011】
前記コネクタは、前記底面の中央から前記上端までの範囲に配置されていることが好ましい。
【0012】
前記底面は、前記下端が前記本体の前面側に位置し、前記上端が前記本体の背面側に位置することが好ましい。また、前記装着部は、前記本体の前面側に傾斜していることが好ましい。
【0013】
前記挿入口は、前記底面と同じ方向に傾斜していることが好ましい。この場合、前記挿入口の傾斜角は、前記底面の傾斜角とほぼ同じでもよいし、前記底面の傾斜角よりも大きくてもよい。
【0014】
前記装着部は、前記本体の前面及び背面と対向して配置され、前記本体の前面側に傾斜した内壁面を有しており、前記前面及び背面は、前記内壁面と同じ方向に傾斜していることが好ましい。
【0015】
前記本体の下面はほぼ水平方向に延びており、前記下面と前記底面との間のスペースは、前記下端から前記上端に向けて広がっていることが好ましい。
【0016】
前記挿入口は、例えば前記本体の前後方向に延びる細長の長穴である。また、前記バッテリ収容体は、例えば平面形状が略矩形の平板状であり、前記装着部は、前記バッテリ収容体を収容するスロットタイプである。
【0017】
前記バッテリ収容体は、前記電子カセッテに着脱自在に取り付けられるバッテリパックでもよいし、前記バッテリが内蔵された前記電子カセッテでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、バッテリ収容体が装着される装着部の底面を水平方向に対して傾斜させ、底面に下端との間に間隔を空けてコネクタを配置したから、塵、埃などがコネクタよりも下端側に溜まるようになり、コネクタに汚れが付着しにくい電子カセッテ用の充電器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】X線撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】充電器の斜視図である。
【図3】バッテリパックが装着された状態の充電器の斜視図である。
【図4】装着部の説明図である。
【図5】バッテリパックの挿入角の説明図である。
【図6】挿入口が装着部の底面よりも傾斜した充電器の説明図である。
【図7】バッテリを内蔵した電子カセッテが装着可能な充電器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1において、X線撮影システム10は、X線発生装置11と、X線撮影装置12とからなる。X線発生装置11は、X線源13と、X線源13を制御する線源制御装置14と、照射スイッチ15とで構成される。X線源13は、X線を放射するX線管13aと、X線管13aが放射するX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)13bとを有する。
【0021】
X線管13aは、熱電子を放出するフィラメントからなる陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とを有している。照射野限定器13bは、例えば、X線を遮蔽する複数枚の鉛板を井桁状に配置し、X線を透過させる照射開口が中央に形成されたものであり、鉛板の位置を移動することで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。
【0022】
線源制御装置14は、X線源13に対して高電圧を供給する高電圧発生器と、X線源13が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧、単位時間当たりの照射量を決める管電流、およびX線の照射時間を制御する制御部とからなる。高電圧発生器は、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブルを通じてX線源13に駆動電力を供給する。管電圧、管電流、照射時間といった撮影条件は、線源制御装置14の操作パネルを通じて放射線技師などのオペレータにより手動で設定される他、X線撮影装置12から通信ケーブルを介して設定される。
【0023】
照射スイッチ15は、放射線技師によって操作され、線源制御装置14に信号ケーブルで接続されている。照射スイッチ15は二段階押しのスイッチであり、一段階押しでX線源13のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号を発生し、二段階押しでX線源13に照射を開始させるための照射開始信号を発生する。これらの信号は信号ケーブルを通じて線源制御装置14に入力される。
【0024】
線源制御装置14は、照射スイッチ15からの制御信号に基づいて、X線源13の動作を制御する。照射スイッチ15から照射開始信号を受けた場合、線源制御装置14は、X線源13への電力供給を開始するとともに、タイマを作動させてX線の照射時間の計測を開始する。そして、撮影条件で設定された照射時間が経過すると、X線の照射を停止させる。X線の照射時間は、撮影条件に応じて変化するが、静止画撮影の場合には、X線の最大照射時間が約500msec〜約2s程度の範囲に定められている場合が多く、照射時間はこの最大照射時間を上限として設定される。
【0025】
X線撮影装置12は、電子カセッテ21、撮影台22、撮影制御装置23、およびコンソール24から構成される。電子カセッテ21は、FPD26と、FPD26を収容する可搬型の筐体27とからなり、X線源13から照射されて被検者(被写体)Hを透過したX線を受けて被検者HのX線画像を検出する、可搬型の放射線画像検出装置である。電子カセッテ21は、偏平な平板状の筐体を有し、平面形状が略矩形であり、平面サイズはフイルムカセッテやIPカセッテと略同様の大きさである。
【0026】
撮影台22は、電子カセッテ21が着脱自在に取り付けられるスロットを有し、X線が入射する入射面がX線源13と対向する姿勢で電子カセッテ21を保持する。電子カセッテ21は、筐体27のサイズがフイルムカセッテやIPカセッテと略同様の大きさであるため、フイルムカセッテやIPカセッテ用の撮影台にも取り付け可能である。なお、撮影台22として、被検者Hを立位姿勢で撮影する立位撮影台を例示しているが、被検者Hを臥位姿勢で撮影する臥位撮影台でもよい。
【0027】
また、被検者Hの手や足など、電子カセッテ21を撮影台22に取り付けた状態で撮影しにくい撮影部位に対しては、電子カセッテ21は、撮影台22から取り外されて使用される。
【0028】
電子カセッテ21はワイヤレスタイプであり、撮影制御装置23と通信する通信部として通信ケーブルを使用した有線通信部の他に、電波や光(赤外線など)によって通信する無線通信部を備えている。また、電源ケーブルを使用した商用電源による駆動の他に、バッテリ駆動が可能である。このようなワイヤレスタイプの電子カセッテ21は、ケーブルの取り回しが不要になるため、取り扱い性がよい。
【0029】
撮影制御装置23は、有線方式や無線方式により電子カセッテ21と通信可能に接続されており、電子カセッテ21を制御する。具体的には、電子カセッテ21に対して撮影条件を送信して、FPD26の信号処理の処理条件(蓄積される信号電荷に応じた電圧を増幅するアンプのゲインなど)を設定させるとともに、X線源13の照射タイミングとFPD26の蓄積動作を同期させるための同期信号をX線発生装置11から受信して、これを電子カセッテ21に送信することにより、X線源13とFPD26の同期制御を行う。また、撮影制御装置23は、電子カセッテ21が出力する画像データを受信して、コンソール24に送信する。
【0030】
コンソール24は、患者の性別、年齢、撮影部位、撮影目的といった情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイに表示する。検査オーダは、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システムから入力される。あるいは、技師などのオペレータの手動により入力される。オペレータは、検査オーダの内容をディスプレイで確認し、その内容に応じた撮影条件をコンソール24の操作画面を通じて選択する。選択された撮影条件は、撮影制御装置23へ送信される。
【0031】
また、コンソール24は、撮影制御装置23に対して撮影条件を送信するとともに、撮影制御装置23から送信されるX線画像のデータに対して画像処理を施す。処理済みのX線画像は、コンソール24のディスプレイに表示される他、X線画像のデータは、コンソール24内のハードディスクやメモリや、コンソール24とネットワークで接続された画像蓄積サーバといったデータストレージデバイスに格納される。
【0032】
図2に示すように、電子カセッテ21の筐体27の背面には、バッテリパック28が着脱自在に取り付けられる取り付け部29が設けられている。バッテリパック28は、FPD26や通信部を駆動するための電力を供給するバッテリ31と、バッテリ31を収容する筐体32とからなるバッテリ収容体である。バッテリパック28の筐体32は、電子カセッテ21の偏平な筐体27に取り付けられるように薄型の平板状であり、平面形状は略矩形状をしている。
【0033】
バッテリ31は、充電が可能な二次電池である。バッテリパック28は、電子カセッテ21から取り外されて、電子カセッテ21用の充電器36に装着されて充電される。バッテリパック28は、充電器36からの給電を受けるためのコネクタ33を有している。コネクタ33は、筐体32の1つの角部に配置されている。コネクタ33の導通用の接点となる接続端子(図4の符号33a参照)は、長方形の筐体32の1つの短辺をなす側面から外部に露呈している。
【0034】
充電器36は、バッテリパック28が挿抜自在に装着される装着部37が設けられた箱形の本体38と、商用電源に接続するための電源ケーブル39とからなる。充電器36は、装着部37を3つ備えており、3枚のバッテリパック28を同時に充電可能である。装着部37は、平板状のバッテリパック28が挿入されるスロットタイプである。バッテリパック28は、コネクタ33が露呈される1つの短辺を下に向けた姿勢で装着部37に挿入される。
【0035】
図3に示すように、装着部37の挿入口41は、本体38の前後方向に延びる細長の長穴であり、本体38の上面38aに形成され上方に向けて開口している。挿入口41は、バッテリパック28の短辺に対応する長さを有する。3つの挿入口41は、長手軸が隣接するように配列されている。上面38aは、本体38の前面38c側が下端となり背面38d側が上端となるように水平方向に対して傾斜しており、上面38aが前面38c側に起き上がる方向に角度が付けられている。挿入口41は上面38aに形成されているので、挿入口41も上面38aの傾斜に倣って、長手方向の一端が上端に他端が下端になるように傾斜しており、上面38aと同じ方向に角度が付けられている。
【0036】
バッテリパック28は、挿入口41から挿入され、装着部37に下方部分が収容された状態で装着される。充電器36は、装着状態のバッテリパック28を保持した姿勢で自立可能である。挿入口41は上方に向いているため、バッテリパック28を充電器36に挿入する作業者は、バッテリパック28を挿入口41に落とし込むようにして充電器36に挿入することができるので挿入性がよい。
【0037】
また、挿入口41は、前面38c側に起き上がる方向に角度が付いているため、本体38の前面38cと対峙した作業者の方に向くので、挿入口41が見やすい。
【0038】
挿入口41の開口縁は、ラッパ状に開いており、バッテリパック28を挿入口41の奥に誘い込むためのガイド面となっている。各挿入口41の横には、バッテリパック28の向きを合わせるためのマーク42が設けられている。作業者はマーク42を確認することにより、マーク42とコネクタ33の位置が対応するように、バッテリパック28の前後方向の向きを合わせることができる。
【0039】
上面38aには、挿入口41の下端側(本体38の前面38c側)に、バッテリパック28の充電状態を表示するインジケータ43が設けられている。インジケータ43は、装着部37毎に設けられた、長さが異なる3本1組のランプからなり、充電が進むに連れて短い方から順にランプの点灯数を増やすことで、充電の進捗状態を段階的に表示する。
【0040】
図4に示すように、装着部37の内部には、挿入口41の奥に底面46が設けられている。底面46から挿入口41に向かって内壁面が立ち上がっており、内壁面と底面46とによって、装着部37の内周面が構成される。内壁面は底面46に対して略直交しており、図4に示すように、装着部37を側面視した場合の形状は、略矩形状のバッテリパック28の形状に合わせて略矩形状をしている。
【0041】
装着部37は、上面38a及び挿入口41の傾斜に合わせて、全体的に前面38c側に前傾しており、装着部37の内壁面のうち、底面46の上端及び下端から挿入口41に向けて立ち上がる、前後の各内壁面47も、本体38の前面38c側に向けて前傾している。装着部37が前傾していると、バッテリパック28を挿入口41に挿入するときの姿勢である挿入姿勢は、バッテリパック28の上部が作業者側に向くように寝かせた姿勢となるため、バッテリパック28の上部が作業者に近づきバッテリパック28を把持しやすい。このため、装着部37が前傾していない場合と比べて、挿入性がよい。
【0042】
また、装着部37が前傾していると、装着部37に装着されたときのバッテリパック28の姿勢である装着姿勢も前傾するので、装着状態において、バッテリパック28の上端部が前面38c側に向くため、取り出しやすい。
【0043】
前後の各内壁面47は、前面38c及び背面38dのそれぞれと対向しており、前面38c及び背面38dは、各内壁面47と同じ方向に傾斜している。前面38c及び背面38dは装着部37と同じ方向に傾斜しており、挿入口41とともに、装着部37に装着されるバッテリパック28の装着姿勢を表している。このため、バッテリパック28の装着姿勢が本体38の外観から推測しやすい。装着姿勢が推測できれば、挿入口41へのバッテリパック28の挿入姿勢も決めやすいため、バッテリパック28の挿入性がよい。
【0044】
なお、内壁面47と、前面38c及び背面38dは、同じ方向(前面38c側)に傾斜していれば、傾斜角に多少の違いがあってもおおよその装着姿勢を推測することは可能なので、両者の傾斜角は一致していなくてもよい。
【0045】
底面46は、バッテリパック28のコネクタ33が設けられた一辺が突き当たる突き当て面であり、底面46には、コネクタ33と接続するコネクタ51が設けられている。コネクタ51は、コネクタ33の接続端子33aと接触して電気的に導通する接続端子51aを有しており、接続端子51aは底面46から外部に露呈している。バッテリパック28が装着部37に装着されると、コネクタ33とコネクタ51が嵌合して接続端子33a、51aが接触し、充電器36とバッテリパック28が電気的に接続される。これにより充電器36によるバッテリ31の充電が開始される。
【0046】
装着部37が前面38c側に前傾しているため、底面46も、上面38a及び挿入口41と同様に、一端が上端に他端が下端になるように水平方向に対して傾斜しており、仮想線LHに対して傾斜角αが付けられている。底面46の下端は前面38c側に位置し、上端は背面側に位置する。底面46と、上面38a及び挿入口41はほぼ平行であり、上面38a及び挿入口41の傾斜角も、底面46の傾斜角αと同様である。
【0047】
コネクタ51は、底面36の下端との間に間隔を空けて配置されている。具体的には、底面46の中央から上端までの範囲である上端側に配置されている。これにより、コネクタ51の下流側には、コネクタ51側から流下した、塵、埃及び液体がたまるスペースが確保される。このため、挿入口41から、塵、埃及び液体が進入して底面46に向けて落下しても、塵、埃及び液体は重力の作用によってコネクタ51の下端側のスペースに流下するため、接続端子51aには汚れが付着しにくい。
【0048】
コネクタ51の上流側には、塵、埃及び液体が落下するスペースは少ない方がよいので、底面46の下端から上端までの全長のうち、上端から1/4程度の範囲内にコネクタ51が配置されているのが好ましい。上記スペースを少なくする観点からは、コネクタ51の位置は上端に近いほどよい。コネクタ51を上端に配置する場合には、コネクタ51の一部が底面46から立ち上がる内壁面に設けられていてもよい。
【0049】
底面46と下面38bとの間のスペースには、コネクタ51が装着されるコネクタ基板52や、電源ケーブル39と接続され、整流器やレギュレータなどからなる充電回路が形成されたメイン基板53などの電気部品が配置される。コネクタ基板52とメイン基板53はワイヤハーネスなどの配線によって接続される。
【0050】
下面38bはほぼ水平方向に延びているため、底面46を傾斜させたことにより、底面46と下面38bの間のスペースは、底面46の下端から上端に向けて広がっている。そのため、底面46の上端と下面38bとの間、すなわちコネクタ51の下方部分には広いスペースが生じる。コネクタ51を取り付ける場合、コネクタ51の下方にはコネクタ基板52を配置する収容スペースが必要となるので、コネクタ51の下方部分に広いスペースが生じることは部品レイアウト上も都合がよい。
【0051】
これは本体38の大型化の抑制にも寄与している。例えば、コネクタ51を底面46の下端側に配置すると、コネクタ基板52の収容スペースを確保するために、底面46と下面38bの間の隙間を大きくするなどの対処が必要になるが、コネクタ51を底面46の上端側に配置すれば、その必要がない。そのため、本体38の全高が抑制される。
【0052】
上記構成による作用について図5を参照しながら説明する。充電器36は、医療施設内において、X線源や撮影台が設置される撮影室、撮影室と隣接する操作室、装置保管室などに設置される。充電器36の挿入口41は上方を向いているため、挿入口41から装着部37の内部に塵、埃、液体が進入しやすい。また、バッテリパック28に付着した塵、埃、液体が装着時に装着部37内に進入することもある。
【0053】
しかし、傾斜した底面46において、下端との間に間隔を空けてコネクタ51が配置されているので、塵、埃及び液体は、重力の作用によってコネクタ51の下端側に流下するため、コネクタ51の接続端子51a付近には溜まりにくく、接続端子51aには汚れが付着しにくい。このため、汚れの付着や汚れに起因する腐食等を原因とする、コネクタ51の接触不良が防止される。
【0054】
電子カセッテ21のバッテリ31が残量切れとなった場合には、バッテリパック28が電子カセッテ21から取り外されて、充電器36に装着されて充電が行われる。バッテリパック28を充電器36に装着する場合には、図5に示すように、作業者は、本体38の前面38cと対峙して、バッテリパック28をコネクタ33が下向きになるように手Sで保持する。挿入口41は、前面38c側に起き上がるように傾斜しているため、前面38cと対峙する作業者の方に向くので、視認しやすい。
【0055】
作業者は、挿入口41の近傍にあるマーク42(図3参照)を確認して、マーク42の位置とコネクタ33の位置が合うように、バッテリパック28の前後の向きを合わせる。そして、装着部37の傾斜に合わせてバッテリパック28の挿入姿勢を決めて、バッテリパック28を挿入口41から挿入する。
【0056】
挿入口41と底面46はほぼ同じ向きに傾斜しており、また、本体38の前面38c及び背面38dも、装着部37の内壁面47と同じ向きに傾斜しているので、本体38の外観の形状からバッテリパック28の装着姿勢を推測しやすい。そのため、バッテリパック28の挿入姿勢を装着姿勢に合わせやすく、挿入性がよい。
【0057】
また、矩形状の物体のように複数の角部を持つ物体を開口に挿入する場合、まず最初に作業者から見て手前側の角部から開口に挿入する傾向があることが経験的に分かっている。バッテリパック28のような平板状の物体を挿入口41のような細長の開口に挿入する場合、特にその傾向は強い。図5に示すように、挿入口41と対向するバッテリパック28の下部の2つの角部28a、28bのうち、作業者から見て手前側の角部28aがまず最初に挿入口41に挿入される。角部28aを挿入口41に挿入するためには、バッテリパック28の挿入姿勢は、装着姿勢よりもさらにバッテリパック28の上部が作業者に向くように寝かせた姿勢になる。
【0058】
バッテリパック28の前後方向の向きは、コネクタ33がある方の角部28bが挿入口41の上端側に位置するように合わせられているため、作業者から見て手前側の角部28aにはコネクタ33は無い。
【0059】
角部28aから挿入口41に挿入すると、装着部37内において角部28aが最初に底面46と接近することになるので、角部28aが底面46に衝突するそれがある。バッテリパック28は比較的重いため、挿入時において、誤って勢いよく角部28aを底面46に衝突させてしまう場合もある。特に、細長の挿入口41を持つスロットタイプの装着部37の場合、挿入口41から底面46までの深さがわかりにくいため、そうした傾向が強い。しかし、そのような場合でも、角部28aにコネクタ33は設けられていないのでコネクタ33が衝突により損傷することはない。
【0060】
また、角部28aは手前側にあるため、衝突位置は底面46の下端側になる可能性が高い。しかし、充電器36のコネクタ51は、作業者から見て遠位側となる上端側(背面38d側)に設けられており、角部28aが衝突するおそれのある底面46の下端側にはコネクタ51は無い。そのため、角部28aが誤って底面46に衝突した場合でも、角部28aとコネクタ51が衝突することはなく、衝突によってコネクタ51が損傷することはない。
【0061】
また、底面46の傾斜と同じ方向に挿入口41も傾斜しているため、挿入口41の上端及び下端と、底面46の上端及び下端までのそれぞれの深さ(底面46から挿入口41までの高さ)が同じになっている。こうした構成も角部28aとコネクタ51の衝突を回避するのに役立つ。
【0062】
というのは、例えば底面46が傾斜しているのにも関わらず、挿入口41が傾斜せず水平方向に延びている場合を考えると、コネクタ51の無い底面46の下端側と比べて、コネクタ51が配置される上端側の深さが浅くなってしまう。挿入口41からコネクタ51までの深さが浅いと、挿入口41から最初に進入する角部28aが誤って浅い位置にあるコネクタ51と衝突する危険性も大きくなる。これに対して、本発明のように、底面46の傾斜と同じ方向に挿入口41が傾斜していれば、挿入口41からコネクタ51が位置する上端側までの深さが下端側とほぼ同じになるので、衝突の危険性を低減することができる。
【0063】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、挿入口41を底面46と同じ方向に傾斜させ、その傾斜角も底面46の傾斜角αとほぼ同じ傾斜角にした例で説明したが、図6に示す第2実施形態の充電器61のように、本体62の上面62a及び上面62aに形成される挿入口41の傾斜角β(水平方向に延びた仮想線LHに対する傾斜角)を底面46の傾斜角αよりも大きく、すなわち、α<βの関係にしてもよい。こうすると、挿入口41からコネクタ51が位置する上端側までの深さが下端側よりも深くなるため、コネクタ51と角部28aの衝突の危険性がより低減される。
【0064】
また、上述のとおり、挿入口41に挿入する際に、作業者はバッテリパック28の装着姿勢を挿入口41の傾斜などの本体62の外観から推測してバッテリパック28の挿入姿勢を決める。したがって、充電器61のように挿入口41の傾斜を大きくすれば、図4に示す第1実施形態と比較して、バッテリパック28の挿入姿勢は作業者側により寝かせた姿勢になる。
【0065】
バッテリパック28を寝かせるほど、バッテリパック28のコネクタ33が設けられた部分と、底面46のコネクタ51との間の間隔は離れる。間隔が離れれば、バッテリパック28を誤って勢いよく挿入口41に進入させてしまった場合でも、コネクタ33とコネクタ51の衝突の危険性は低減する。そのため、充電器61のように、底面46の傾斜よりも挿入口41の傾斜を大きくすることで、第1実施形態と比較して、コネクタ33とコネクタ51の衝突による損傷を防止することができる。
【0066】
なお、第2実施形態の充電器61において、第1実施形態との相違点は上面62aの傾斜角のみであるので、同一部分については同一符号を付して他の部分については説明を省略する。
【0067】
[第3実施形態]
上記第1及び第2実施形態では、電子カセッテ21から取り外されたバッテリパック28が装着される充電器を例に説明したが、図7に示す第3実施形態のように、バッテリ72を内蔵する電子カセッテ73が装着される装着部74を有する充電器71でもよい。電子カセッテ73には、筐体の1つの角部付近にコネクタ76が設けられている。電子カセッテ73が装着部74に装着されると、コネクタ76と装着部74内の充電器側のコネクタが電気的に接続される。充電器71は、充電器36及び充電器61とサイズが違うだけで、他の部分は同一であるので、他の部分については説明を省略する。
【0068】
なお、本発明の充電器は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0069】
上記実施形態においては、挿入口41を底面46と同じ方向に傾斜させた例で説明しているが、挿入口41は傾斜せずに水平方向に延びていてもよいし、底面46と逆方向に傾斜していてもよい。コネクタ51の接触不良を防止する効果は、傾斜した底面46の上端側にコネクタ51を配置したことにより得られる効果であり、挿入口41の傾斜の有無や傾斜の方向とは関係なく得られる効果である。
【0070】
また、上記実施形態では、挿入口41を本体38の上面38aに設けた例で説明したが、本体38の前面38cに設けてもよい。前面38cに、横向き(水平方向)に開口した挿入口41を形成しても挿入口41の奥の底面46が傾斜していれば、コネクタ51の接触不良を防止する効果は得られるからである。ただし、前面38cに挿入口41を設けた場合は、前面38cを背面38d側に傾斜させて挿入口41を上方に向くようにすることが好ましい。上方に向ければ上記実施形態のようにバッテリパック28を挿入し易いという効果が得られるからである。
【0071】
もちろん、上述のとおり、挿入口41を底面46と同じ方向に傾斜させることで、挿入口41の視認性が向上するなどの効果があるので、挿入口41と同じ方向に傾斜させておくことが好ましい。また、上記第2実施形態の充電器61では、挿入口41の傾斜角βが底面46の傾斜角αよりも大きい例(α<β)で説明しているが、挿入口41の傾斜方向は底面46と同じであれば挿入口41の視認性が向上するなどの効果はあるので、傾斜角βが傾斜角αよりも小さく(α>β)てもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、平面形状が略矩形である平板状のバッテリ収容体を例に説明したが、バッテリ収容体の形状は上記例に限定されず、例えば厚みのあるブロック形状でもよい。また、コネクタ33が設けられる辺などバッテリ収容体を構成する辺が円弧状の曲線で構成されていてもよい。挿入口41、底面46、内壁面47など装着部37の形状は、バッテリ収容体の形状に応じて決められる。また、挿入口41を本体の上面に形成した例で説明したが、挿入口41の一部が本体の前面や背面に回り込んでいてもよい。また、上面と、前面及び背面とは連続した曲面で構成されていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、コネクタ51が底面46の中央から上端までの範囲である上端側に配置される例を示したが、上流側に限らず、底面46の中央から下端までの範囲である下流側にコネクタ51を配置してもよい。傾斜した底面46の下端とコネクタ51との間に間隔さえ空いていれば、コネクタ51側から流下する、塵、埃、液体がたまるスペースが生じるので、接続端子51aに汚れが付着しにくいという効果は発揮されるからである。
【0074】
また、挿入口41に、バッテリパック28や電子カセッテ73などのバッテリ収容体が装着部37に装着されていない間、挿入口41を塞ぎ、塵、埃、液体の進入を防止するためのシャッタを設けてもよい。シャッタは、例えば挿入口41を塞ぐ閉じ位置にバネなどの弾性部材によって付勢されており、挿入口41に挿入されるバッテリ収容体によって押し開かれる。ただし、このようなシャッタを設けても、塵、埃、液体の進入を防ぐ程度の密閉性(気密性や水密性)を備えることは困難であるため、塵、埃、液体の進入を完全に阻止することはできない。そのため、シャッタを設ける場合でも、コネクタ51に対する汚れの付着をより防止するには、本発明のように底面46を傾斜させ上端側にコネクタを配置する必要性は高い。
【0075】
また、本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する電子カセッテのバッテリの充電器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
12 X線撮影装置
13 X線源
21、73 電子カセッテ
28 バッテリパック
31、72 バッテリ
33 コネクタ
33a 接続端子
36 充電器
37 装着部
38 本体
38a 上面
38b 下面
38c 前面
38d 背面
41 挿入口
46 底面
47 内壁面
51 コネクタ
51a 接続端子
52 コネクタ基板
53 メイン基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線撮影用の電子カセッテのバッテリが収容されたバッテリ収容体が挿抜自在に装着される装着部を有する本体と、
前記本体に形成され、前記バッテリ収容体を前記装着部に挿入するための挿入口と、
前記挿入口の奥に設けられ、一端が上端に他端が下端になるように水平方向に対して傾斜した、前記装着部の底面と、
前記底面に前記下端との間に間隔を空けて配置され、前記バッテリ収容体が前記装着部に装着されたときに前記バッテリと電気的に接続して給電を行うためのコネクタとを備えていることを特徴とする電子カセッテ用充電器。
【請求項2】
前記コネクタは、前記底面の中央から前記上端までの範囲に配置されていることを特徴とする請求項1記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項3】
前記底面は、前記下端が前記本体の前面側に位置し、前記上端が前記本体の背面側に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項4】
前記装着部は、前記本体の前面側に傾斜していることを特徴とする請求項3記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項5】
前記挿入口は、前記底面と同じ方向に傾斜していることを特徴とする請求項4記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項6】
前記挿入口の傾斜角は、前記底面の傾斜角とほぼ同じであることを特徴とする請求項5記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項7】
前記挿入口の傾斜角は、前記底面の傾斜角よりも大きいことを特徴とする請求項5記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項8】
前記装着部は、前記本体の前面及び背面と対向して配置され、前記本体の前面側に傾斜した内壁面を有しており、
前記前面及び背面は、前記内壁面と同じ方向に傾斜していることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項9】
前記本体の下面はほぼ水平方向に延びており、前記下面と前記底面との間のスペースは、前記下端から前記上端に向けて広がっていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項10】
前記挿入口は、前記本体の前後方向に延びる細長の長穴であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項11】
前記バッテリ収容体は平面形状が略矩形の平板状であり、
前記装着部は、前記バッテリ収容体を収容するスロットタイプであることを特徴とする請求項10記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項12】
前記バッテリ収容体は、前記電子カセッテに着脱自在に取り付けられるバッテリパックであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子カセッテ用充電器。
【請求項13】
前記バッテリ収容体は、前記バッテリが内蔵された前記電子カセッテであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子カセッテ用充電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−154852(P2012−154852A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15502(P2011−15502)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】