説明

電子カメラ

【構成】CPU48は、イメージセンサ16から出力された生画像データに基づいて適正BV値を算出し、算出された適正BV値に対応する座標を参照プログラム線図上で検出し、そして検出された座標に対応する絞り量,露光時間およびAGCゲインをドライバ18b,18cおよびAGC回路20に設定する。CPU48はまた、撮像面によって捉えられた被写界に適合する適合プログラム線図をイメージセンサ16から出力された生画像データに基づいて決定し、適正BV値に対応する座標を適合プログラム線図上で検出する。CPU48はさらに、検出された2つの座標が互いに一致すれば、参照プログラム線図を適合プログラム線図に変更する一方、検出された2つの座標が互いに一致しなければ参照プログラム線図の変更を制限する。
【効果】参照プログラム線図の変更に起因する画質の劣化が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子カメラに関し、特に撮像面で捉えられた被写界に適合する調整基準に沿って撮像条件を調整する、電子カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカメラの一例が、特許文献1に開示されている。この背景技術によれば、通常フレームレートとこれよりも低い低輝度用フレームレートとが、スルー画表示におけるフレームレートとして準備される。通常フレームレートは、画像データの輝度が高いとき、或いは構図が変更中のときに設定される。一方、低輝度用フレームレートは、画像データの輝度が低くかつ構図が固定されているときに設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−92047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、背景技術では、露出演算のために参照される基準がシーンに応じて変更されることはなく、撮像性能に限界がある。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、撮像性能を向上させることができる、電子カメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従う電子カメラ(10:実施例で相当する参照符号。以下同じ)は、被写界を捉える撮像面を有して被写界像を繰り返し出力する撮像手段(16)、参照調整基準に沿う適正パラメータ値を参照した撮像条件の調整処理を撮像手段から出力された被写界像に基づいて実行する調整手段(S17~S23)、撮像面によって捉えられた被写界に適合する適合調整基準を撮像手段から出力された被写界像に基づいて決定する決定手段(S71~S95, S27)、参照調整基準を決定手段によって決定された適合調整基準に変更する変更手段(S33)、および決定手段によって決定された適合調整基準に沿う適正パラメータ値と参照調整基準に沿う適正パラメータ値との相違が基準を上回るとき変更手段の変更処理を制限する制限手段(S29~S31)を備える、電子カメラ。
【0007】
好ましくは、参照調整基準および適合調整基準の各々は少なくとも絞り量と露光時間との関係を示すプログラム線図上で定義されたラインに相当する。
【0008】
好ましくは、決定手段は、複数の調整基準がそれぞれ割り当てられた複数のシーンの中から被写界に相当するシーンを判別する判別手段(S75, S83, S89)、および判別手段によって判別されたシーンに対応する調整基準を適合調整基準として選択する選択手段(S79, S87, S93, S95)を含む。
【0009】
或る局面では、撮像手段から出力された被写界像の画質を評価する評価手段(24, 26, 28)がさらに備えられ、判別手段は評価手段の評価結果を参照した第1シーン判別処理を実行する第1シーン判別手段(S75, S89)を含む。
【0010】
他の局面では、撮像面によって捉えられた被写界の動きを撮像手段から出力された被写界像に基づいて検出する検出手段(30)がさらに備えられ、判別手段は検出手段の検出結果を参照した第2シーン判別処理を実行する第2シーン判別手段(S83)を含む。
【0011】
好ましくは、調整手段は、参照調整基準に沿う適正パラメータ値を撮像手段から出力された被写界像に基づいて算出する算出手段(S17~S19)、および算出手段によって算出された適正パラメータ値を参照して撮像条件を調整する調整実行手段(S21~S23)を含む。
【0012】
好ましくは、参照調整基準を示す指標を撮像手段の撮像処理と並列して出力する出力手段(S81)がさらに備えられる。
【0013】
この発明に従う撮像制御プログラムは、被写界を捉える撮像面を有して被写界像を繰り返し出力する撮像手段(16)を備える電子カメラ(10)のプロセッサ(48)に、参照調整基準に沿う適正パラメータ値を参照した撮像条件の調整処理を撮像手段から出力された被写界像に基づいて実行する調整ステップ(S17~S23)、撮像面によって捉えられた被写界に適合する適合調整基準を撮像手段から出力された被写界像に基づいて決定する決定ステップ(S71~S95, S27)、参照調整基準を決定ステップによって決定された適合調整基準に変更する変更ステップ(S33)、および決定ステップによって決定された適合調整基準に沿う適正パラメータ値と参照調整基準に沿う適正パラメータ値との相違が基準を上回るとき変更ステップの変更処理を制限する制限ステップ(S29~S31)を実行させるための、撮像制御プログラムである。
【0014】
この発明に従う撮像制御方法は、被写界を捉える撮像面を有して被写界像を繰り返し出力する撮像手段(16)を備える電子カメラ(10)によって実行される撮像制御方法であって、参照調整基準に沿う適正パラメータ値を参照した撮像条件の調整処理を撮像手段から出力された被写界像に基づいて実行する調整ステップ(S17~S23)、撮像面によって捉えられた被写界に適合する適合調整基準を撮像手段から出力された被写界像に基づいて決定する決定ステップ(S71~S95, S27)、参照調整基準を決定ステップによって決定された適合調整基準に変更する変更ステップ(S33)、および決定ステップによって決定された適合調整基準に沿う適正パラメータ値と参照調整基準に沿う適正パラメータ値との相違が基準を上回るとき変更ステップの変更処理を制限する制限ステップ(S29~S31)を備える。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、被写界に適合する調整基準が参照調整基準として設定され、設定された参照調整基準に沿う適正パラメータ値を参照して撮像条件が調整される。ただし、被写界に適合する調整基準に沿う適正パラメータ値と参照調整基準に沿う適正パラメータ値との相違が基準を上回れば、参照調整基準の変更が制限される。これによって、調整基準の変更に起因する画質の劣化が抑制され、撮像性能が向上する。
【0016】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の基本的構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図3】図2実施例に適用される色フィルタの構成の一例を示す図解図である。
【図4】撮像面における切り出しエリアの割り当て状態の一例を示す図解図である。
【図5】撮像面における評価エリアの割り当て状態の一例を示す図解図である。
【図6】撮像面における動き検出ブロックの割り当て状態の一例を示す図解図である。
【図7】(A)は夜景シーンに対応するキャラクタの一例を示す図解図であり、(B)はアクションシーンに対応するキャラクタの一例を示す図解図であり、(C)は風景シーンに対応するキャラクタの一例を示す図解図であり、(D)はデフォルトシーンに対応するキャラクタの一例を示す図解図であり、
【図8】夜景シーンに対応するプログラム線図の一例を示すグラフである。
【図9】アクションシーンに対応するプログラム線図の一例を示すグラフである。
【図10】風景シーンに対応するプログラム線図の一例を示すグラフである。
【図11】デフォルトシーンに対応するプログラム線図の一例を示すグラフである。
【図12】図2実施例に適用されるCPUの動作の一部を示すフロー図である。
【図13】図2実施例に適用されるCPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
【図14】図2実施例に適用されるCPUの動作のその他の一部を示すフロー図である。
【図15】図2実施例に適用されるCPUの動作のさらにその他の一部を示すフロー図である。
【図16】図2実施例に適用されるCPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
【図17】図2実施例に適用されるCPUの動作のその他の一部を示すフロー図である。
【図18】図2実施例に適用されるCPUの動作のさらにその他の一部を示すフロー図である。
【図19】図2実施例に適用されるCPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
[基本的構成]
【0019】
図1を参照して、この発明の電子カメラは、基本的に次のように構成される。撮像手段1は、被写界を捉える撮像面を有して被写界像を繰り返し出力する。調整手段2は、参照調整基準に沿う適正パラメータ値を参照した撮像条件の調整処理を撮像手段1から出力された被写界像に基づいて実行する。決定手段3は、撮像面によって捉えられた被写界に適合する適合調整基準を撮像手段1から出力された被写界像に基づいて決定する。変更手段4は、参照調整基準を決定手段3によって決定された適合調整基準に変更する。制限手段5は、決定手段3によって決定された適合調整基準に沿う適正パラメータ値と参照調整基準に沿う適正パラメータ値との相違が基準を上回るとき変更手段4の変更処理を制限する。
【0020】
したがって、被写界に適合する調整基準が参照調整基準として設定され、設定された参照調整基準に沿う適正パラメータ値を参照して撮像条件が調整される。ただし、被写界に適合する調整基準に沿う適正パラメータ値と参照調整基準に沿う適正パラメータ値との相違が基準を上回れば、参照調整基準の変更が制限される。これによって、調整基準の変更に起因する画質の劣化が抑制され、撮像性能が向上する。
[実施例]
【0021】
図2を参照して、この実施例のディジタルビデオカメラ10は、ドライバ18aおよび18bによってそれぞれ駆動されるフォーカスレンズ12および絞りユニット14を含む。被写界の光学像は、これらの部材を通してイメージセンサ16の撮像面に照射される。
【0022】
撮像面には複数の受光素子(=画素)が2次元状に配置され、撮像面は図3に示す原色ベイヤ配列の色フィルタ16fによって覆われる。色フィルタ16fは、具体的には、R(Red)のフィルタ要素,G(Green)のフィルタ要素およびB(Blue)のフィルタ要素がモザイク状に配列されたフィルタに相当する。撮像面に配置された受光素子は色フィルタ16fを構成するフィルタ要素と1対1で対応し、各受光素子で生成される電荷の量はR,GまたはBの色に対応する光の強度を反映する。
【0023】
電源が投入されると、CPU48は、撮像タスクの下で動画取り込み処理を実行するべく、ドライバ18cを起動する。ドライバ18cは、周期的に発生する垂直同期信号Vsyncに応答して、撮像面を露光し、撮像面で生成された電荷をラスタ走査態様で読み出す。イメージセンサ16からは、被写界を表す生画像データが周期的に出力される。出力される生画像データは、各画素がR,GおよびBのいずれか1つの色情報を有する画像データに相当する。
【0024】
AGC回路20は、撮像装置16から出力された生画像データをCPU48によって設定されたAGCゲインを参照して増幅する。前処理回路22は、AGC回路20によって増幅された生画像データにディジタルクランプ,画素欠陥補正などの処理を施す。前処理を施された生画像データは、メモリ制御回路32を通してSDRAM34の生画像エリア34aに書き込まれる。
【0025】
図4を参照して、生画像エリア34aには、切り出しエリアCTが割り当てられる。後処理回路36は、メモリ制御回路32を通して生画像エリア34aにアクセスし、切り出しエリアCTに対応する生画像データを周期的に読み出す。読み出された生画像データは、後処理回路36において色分離,白バランス調整,エッジ/彩度強調,YUV変換などの処理を施される。
【0026】
生画像データはまず、色分離処理によって、各画素がR,GおよびBの全ての色情報を有するRGB形式の画像データに変換される。画像データの白バランスは白バランス調整処理によって調整され、画像データのエッジおよび/または彩度はエッジ/彩度強調処理によって強調され、そして画像データの形式はYUV変換処理によってYUV形式に変換される。こうして作成されたYUV形式の画像データは、メモリ制御回路32を通してSDRAM34のYUV画像エリア34bに書き込まれる。
【0027】
LCDドライバ38は、YUV画像エリア34bに格納された画像データを周期的に読み出し、読み出された画像データをLCDモニタ40の解像度に適合するように縮小し、そして縮小された画像データに基づいてLCDモニタ40を駆動する。この結果、被写界を表すリアルタイム動画像(スルー画像)がモニタ画面に表示される。
【0028】
図5を参照して、撮像面の中央には評価エリアEVAが割り当てられる。評価エリアEVAは水平方向および垂直方向の各々において16分割され、合計256個の分割エリアが評価エリアEVAを形成する。
【0029】
前処理回路22は、上述した処理に加えて、生画像データを簡易的にYデータに変換し、変換されたYデータを輝度評価回路24,AF評価回路26および動き検出回路30に与える。前処理回路22はまた、生画像データをRGB画像データ(初期ゲインに従って調整された白バランスを有するRGB画像データ)に簡易的に変換し、変換されたRGB画像データをAWB評価回路28に与える。
【0030】
輝度評価回路24は、与えられたYデータのうち評価エリアEVAに属するYデータを垂直同期信号Vsyncに応答して分割エリア毎に積分する。輝度評価回路24からは、256個の輝度評価値が垂直同期信号Vsyncに同期して出力される。CPU48は、こうして出力された輝度評価値を明るさ調整タスクの下で取り込み、取り込まれた輝度評価値に基づいて適正BV値(BV:Brightness value)を算出し、そして算出された適正BV値を定義する絞り量,露光時間およびAGCゲインをドライバ18b,18cおよびAGC回路20に設定する。この結果、スルー画像の明るさが適度に調整される。
【0031】
AF評価回路26は、与えられたYデータのうち評価エリアEVAに属するYデータの高周波成分を垂直同期信号Vsyncに応答して分割エリア毎に積分する。AF評価回路26からは、256個のAF評価値が垂直同期信号Vsyncに同期して出力される。CPU48は、こうして出力されたAF評価値をコンティニュアスAFタスクの下で取り込み、AF起動条件が満足されるときにAF処理を実行する。フォーカスレンズ12はドライバ18aによって合焦点に配置され、これによってスルー画像の鮮鋭度が継続的に向上する。
【0032】
AWB評価回路28は、与えられたRGB画像データを形成するRデータ,GデータおよびBデータの各々を、垂直同期信号Vsyncに応答して分割エリア毎に積分する。AWB評価回路28からは、R積分値,G積分値およびB積分値を各々が有する256個のAWB評価値が垂直同期信号Vsyncに同期して出力される。CPU48は、こうして出力されたAWB評価値をAWBタスクの下で取り込み、取り込まれたAWB評価値に基づいてAWB処理を実行する。後処理回路36において参照される白バランス調整ゲインはAWB処理によって適正値に調整され、これによってスルー画像の色調が適度に調整される。
【0033】
図6を参照して、撮像面には9つの動き検出ブロックMD1〜MD9が割り当てられる。動き検出ブロックMD1〜MD3は撮像面の上段に水平方向に並ぶように配置され、動き検出ブロックMD4〜MD6は撮像面の中段に水平方向に並ぶように配置され、動き検出ブロックMD7〜MD9は撮像面の下段に水平方向に並ぶように配置される。
【0034】
動き検出回路30は、動き検出ブロックMD1〜MD9にそれぞれ対応する9つの部分動きベクトルをYデータに基づいて検出する。検出された部分動きベクトルは、垂直同期信号Vsyncに同期して動き検出回路30から出力される。CPU48は、こうして出力された部分動きベクトルを手振れ補正タスクの下で取り込み、取り込まれた部分動きベクトルに基づいて手振れ補正処理を実行する。切り出しエリアCTは光軸に直交する方向における撮像面の動きが補償されるように移動し、これによって手振れに起因するスルー画像の振動が抑制される。
【0035】
キー入力装置50に向けて記録開始操作が行われると、CPU48は、動画記録を開始するべく、撮像タスクの下でI/F44に記録開始命令を与える。I/F44は、YUV画像エリア34bに格納された画像データをメモリ制御回路32を通して読み出し、読み出された画像データを記録媒体46に作成された動画ファイルに書き込む。キー入力装置50に向けて記録終了操作が行われると、CPU48は、動画記録を終了するべく撮像タスクの下で記録終了命令をI/F44に与える。I/F44は、画像データの読み出しを終了し、記録先の動画ファイルをクローズする。
【0036】
CPU48は、撮像タスクと並列するシーン判別タスクの下で、被写界が夜景シーン,アクションシーンおよび風景シーンのいずれに相当するかを周期的に判別する。夜景シーン判別および風景シーン判別は、輝度評価回路24から出力された輝度評価値に基づいて実行される。被写界が夜景シーンと判別されるとフラグFLGnightが“0”から“1”に更新され、被写界が風景シーンと判別されるとフラグFLGlndscpが“0”から“1”に更新される。また、アクションシーン判別は、動き検出回路30から出力された部分動きベクトルに基づいて実行される。被写界がアクションシーンと判別されると、フラグFLGactが“0”から“1”に更新される。
【0037】
フラグFLGnightが“1”であれば、フラグFLGlndscpおよびFLGactの状態に関係なく、夜景シーンが確定シーンとされる。また、フラグFLGnightが“0”でかつフラグFLGactが“1”であれば、フラグFLGlndscpの状態に関係なく、アクションシーンが確定シーンとされる。さらに、フラグFLGnightおよびFLGactが“0”でかつフラグFLGlndscpが“1”であれば、風景シーンが確定シーンとされる。また、フラグFLGnight,FLGactおよびFLGlndscpのいずれもが“0”であれば、デフォルトシーンが確定シーンとされる。
【0038】
CPU48は、こうして得られた確定シーンに対応するキャラクタの出力をグラフィックジェネレータ42に要求する。グラフィックジェネレータ42は要求に従うグラフィックデータをLCDドライバ38に与え、LCDドライバ38は与えられたグラフィックデータに基づいてLCDモニタ40を駆動する。
【0039】
この結果、確定シーンが夜景シーンであれば図7(A)に示すキャラクタがモニタ画面の右上に表示され、確定シーンがアクションシーンであれば図7(B)に示すキャラクタがモニタ画面の右上に表示される。また、確定シーンが風景シーンであれば図7(C)に示すキャラクタがモニタ画面の右上に表示され、確定シーンがデフォルトシーンであれば図7(D)に示すキャラクタがモニタ画面の右上に表示される。
【0040】
明るさ調整タスクの下での処理は、詳しくは以下に述べる要領で実行される。まず、絞り量,露光時間およびAGCゲインが初期化され、デフォルトシーン(=初期の確定シーン)に適合するプログラム線図が参照プログラム線図として指定される。垂直同期信号Vsyncが発生すると、輝度評価回路24から出力された輝度評価値に基づいて適正BV値が算出され、算出された適正BV値に対応する座標(A1,T1,G1)が参照プログラム線図から検出される。
【0041】
座標(A1,T1,G1)は、確定シーンが夜景シーンであるとき図8に示すプログラム線図に描かれた太線上で検出され、確定シーンがアクションシーンであるとき図9に示すプログラム線図に描かれた太線上で検出される。座標(A1,T1,G1)はまた、確定シーンが風景シーンであるとき図10に示すプログラム線図に描かれた太線上で検出され、確定シーンがデフォルトシーンであるとき図11に示すプログラム線図に描かれた太線上で検出される。
【0042】
たとえば、確定シーンが夜景シーンであり、算出された適正BV値が“3”であれば、(A1,T1,G1)=(3,7,7)が検出される。また、確定シーンがアクションシーンであり、算出された適正BV値が“8”であれば、(A1,T1,G1)=(3,9,4)を示す。
【0043】
ドライバ18b,18cおよびAGC回路20には、こうして検出された座標(A1,T1,G1)によって特定される絞り量,露光時間およびAGCゲインが設定される。確定シーンに変化が生じると、上述の要領で算出された適正BV値に対応する座標(A2,T2,G2)が、変化後の確定シーンに適合するプログラム線図つまり適合プログラム線図に描かれた太線上で検出される。
【0044】
適合プログラム線図から検出された座標(A2,T2,G2)は、参照プログラム線図から検出された座標(A1,T1,G1)と比較される。両者が一致すれば、参照プログラム線図は適合プログラム線図に変更される。これに対して、両者が一致しなければ、このような変更処理は制限ないし禁止される。
【0045】
たとえば、従前の確定シーンが風景シーンであり、変化後の確定シーンがアクションシーンである場合、参照プログラム線図の変更は、適正BV値が“1”,“7”〜“15”のいずれか1つを示すときに許可される一方、適正BV値が“2”〜“6”のいずれかを示すときに制限ないし禁止される。これによって、参照プログラム線図の変更に起因する画質の劣化(具体的には、絞り量の変更に起因する画像のちらつき)が回避される。
【0046】
CPU48は、図12に示す撮像タスク,図13〜図14に示す明るさ調整タスク,図15に示すコンティニュアスAFタスク,図16に示すAWBタスク,図17に示す手振れ補正タスク,および図18〜図19に示すシーン判別タスクを含む複数のタスクを並列的に処理する。なお、これらのタスクに対応する制御プログラムは、フラッシュメモリ(図示せず)に記憶される。
【0047】
図12を参照して、ステップS1では動画取り込み処理を実行する。これによって、スルー画像がLCDモニタ40に表示される。ステップS3では記録開始操作が行われたか否かを繰り返し判別し、判別結果がNOからYESに更新されるとステップS5に進む。ステップS5では、動画記録を開始するべく記録開始命令をI/F46に与える。I/F46は、YUV画像エリア34bに格納された画像データをメモリ制御回路32を通して読み出し、読み出された画像データを記録媒体48に作成された動画ファイルに書き込む。
【0048】
ステップS7では、記録終了操作が行われたか否かを判別する。判別結果がNOからYESに更新されるとステップS9に進み、動画記録を終了するべく記録終了命令をI/F46に与える。I/F46は、画像データの読み出しを終了し、記録先の動画ファイルをクローズする。ファイルクローズが完了すると、ステップS3に戻る。
【0049】
図13を参照して、ステップS11では撮像設定(=絞り量,露光時間,AGCゲイン)を初期化し、ステップS13ではデフォルトシーン用のプログラム線図を参照プログラム線図として指定する。ステップS15では垂直同期信号Vsyncが発生したか否かを判別し、判別結果がNOからYESに更新されると、輝度評価回路24から出力された輝度評価値をステップS17で取り込む。
【0050】
ステップS19では取り込まれた輝度評価値に基づいて適正BV値を算出し、ステップS21では算出された適正BV値に対応する座標(A1,T1,G1)を参照プログラム線図上で検出する。ステップS23では、検出された座標(A1,T1,G1)によって特定される絞り量,露光時間およびAGCゲインをドライバ18b,18cおよびAGC回路20に設定する。
【0051】
ステップS25では確定シーンが変化したか否かを判別し、判別結果がNOであればステップS15に戻る一方、判別結果がYESであれば変化後の確定シーンに適合するプログラム線図つまり適合プログラム線図をステップS27で特定する。ステップS29では、ステップS19で算出された適正BV値に対応する座標(A2,T2,G2)を適合プログラム線図上で検出する。
【0052】
ステップS31では、ステップS29で検出された座標(A2,T2,G2)がステップS21で検出された座標(A1,T1,G1)と一致するか否かを判別する。判別結果がNOであればステップS15に戻る一方、判別結果がYESであればステップS33に進む。ステップS33では、参照プログラム線図を適合プログラム線図に変更し、その後にステップS15に戻る。
【0053】
図15を参照して、ステップS41ではフォーカスレンズ12の位置を初期化し、ステップS43では垂直同期信号Vsyncが発生したか否かを判別する。判別結果がNOからYESに更新されると、AF評価回路26から出力されたAF評価値をステップS45で取り込む。ステップS47ではAF起動条件が満足されるか否かを取り込まれたAF評価値に基づいて判別し、判別結果がNOであればステップS43に戻る一方、判別結果がYESであればステップS49に進む。ステップS49では、フォーカスレンズ12を合焦点が存在する方向に移動させるべく、取り込まれたAF評価値に基づいてAF処理を実行する。AF処理が完了すると、ステップS43に戻る。
【0054】
図16を参照して、ステップS51では後処理回路36において参照される白バランス調整ゲインを初期化し、ステップS53では垂直同期信号Vsyncが発生したか否かを判別する。判別結果がNOからYESに更新されると、AWB評価回路28から出力されたAWB評価値をステップS55で取り込む。ステップS57では、白バランス調整ゲインを調整するべく、取り込まれたAWB評価値に基づいてAWB処理を実行する。AWB処理が完了すると、ステップS41に戻る。
【0055】
図17を参照して、ステップS61では切り出しエリアCTの位置を初期化し、ステップS63では垂直同期信号Vsyncが発生したか否かを判別する。判別結果がNOからYESに更新されると、動き検出回路30から出力された部分動きベクトルをステップS65で取り込む。ステップS67では、手振れに起因する撮像面の動きが補償される位置に切り出しエリアCTを移動させるべく、取り込まれた部分動きベクトルに基づいて手振れ補正処理を実行する。手振れ補正処理が完了すると、ステップS63に戻る。
【0056】
図18を参照して、ステップS71では、デフォルトシーンを確定シーンとし、フラグFLGnight,FLGactおよびFLGlndscpを“0”に設定する。ステップS73では垂直同期信号Vsyncが発生したか否かを判別し、判別結果がNOからYESに更新されるとステップS75で夜景シーン判別処理を実行する。この判別処理は明るさ調整タスクの下で取り込まれた輝度評価値に基づいて実行され、被写界が夜景シーンと判別されるとフラグFLGnightが“0”から“1”に更新される。
【0057】
ステップS77ではフラグFLGnightが“1”を示すか否かを判別し、判別結果がNOであればステップS83に進む一方、判別結果がYESであればステップS79に進む。ステップS79では夜景シーンを確定シーンとし、ステップS81では確定シーンに対応するキャラクタの出力をグラフィックジェネレータ42に要求する。確定シーンに対応するキャラクタは、スルー画上に多重表示される。ステップS81の処理が完了すると、ステップS71に戻る。
【0058】
ステップS83では、アクションシーン判別処理を実行する。この判別処理は手振れ補正タスクの下で取り込まれた部分動きベクトルに基づいて実行され、被写界がアクションシーンと判別されるとフラグFLGactが“0”から“1”に更新される。ステップS85ではフラグFLGactが“1”を示すか否かを判別し、判別結果がNOであればステップS89に進む一方、判別結果がYESであればステップS87でアクションシーンを確定シーンとしてからステップS81に進む。
【0059】
ステップS89では、風景シーン判別処理を実行する。この判別処理は明るさ調整タスクの下で取り込まれた輝度評価値に基づいて実行され、被写界が風景シーンと判別されるとフラグFLGlndscpが“0”から“1”に更新される。ステップS91ではフラグFLGlndscpが“1”を示すか否かを判別し、判別結果がNOであればステップS93でデフォルトシーンを確定シーンとする一方、判別結果がYESであればステップS95で風景シーンを確定シーンとする。ステップS93またはS95の処理が完了すると、ステップS81に進む。
【0060】
以上の説明から分かるように、CPU48は、イメージセンサ16から出力された生画像データに基づいて適正BV値を算出し(S17~S19)、算出された適正BV値に対応する座標(A1,T1,G1)を参照プログラム線図上で検出し、そして検出された座標(A1,T1,G1)に対応する絞り量,露光時間およびAGCゲインをドライバ18b,18cおよびAGC回路20に設定する(S21~S23)。CPU48はまた、撮像面によって捉えられた被写界に適合する適合プログラム線図をイメージセンサ16から出力された生画像データに基づいて決定し(S71~S95, S27)、適正BV値に対応する座標(A2,T2,G2)を適合プログラム線図上で検出する(S29)。検出された座標(A1,T1,G1)および(A2,T2,G2)が互いに一致すれば、つまり両座標の相違が基準以下であれば、CPU48は、参照プログラム線図を適合プログラム線図に変更する(S33)。これに対して、検出された座標(A1,T1,G1)および(A2,T2,G2)が互いに一致しなければ、つまり両座標の相違が基準を上回れば、CPU48は参照プログラム線図の変更を制限ないし禁止する(S31)。
【0061】
このように、被写界に適合するプログラム線図が参照プログラム線図として設定され、設定された参照プログラム線図上で検出された座標(A1,T1,G1)を参照して撮像条件が調整される。ただし、被写界に適合するプログラム線図上で検出された座標(A2,T2,G2)が座標(A1,T1,G1)と一致しなければ、参照プログラム線図の変更が制限ないし禁止される。これによって、参照プログラム線図の変更に起因する画質の劣化が抑制され、撮像性能が向上する。
【0062】
なお、この実施例では、座標(A1,T1,G1)および(A2,T2,G2)が互いに一致しないときに、両座標の相違が基準を上回るとみなして参照プログラム線図の変更を制限ないし禁止している。しかし、基準にある程度の幅を持たせ、両座標の相違がこの幅を下回る限り、参照プログラム線図の変更を許可するようにしてもよい。
【0063】
また、この実施例では、撮像条件を調整するためのパラメータとして絞り量,露光時間およびAGCゲインの3つを想定しているが、これに加えてエッジおよび/または彩度の強調度を想定するようにしてもよい。この場合、これらの強調度をプログラム線図に追加的に定義することで、参照プログラム線図の変更に起因するエッジおよび/または彩度の強調度の不連続な変化を回避することができる。
【0064】
ただし、座標(A1,T1,G1)および(A2,T2,G2)の相違に関わらずエッジおよび/または彩度の強調度を変更するようにしてもよく、この場合にはエッジおよび/または彩度の強調度をプログラム線図に追加的に定義する必要はない。
【符号の説明】
【0065】
10 …ディジタルビデオカメラ
16 …イメージセンサ
22 …前処理回路
24 …輝度評価回路
26 …AF評価回路
28 …AWB評価回路
30 …動き検出回路
36 …後処理回路
42 …グラフィックジェネレータ
46 …記録媒体
48 …CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写界を捉える撮像面を有して被写界像を繰り返し出力する撮像手段、
参照調整基準に沿う適正パラメータ値を参照した撮像条件の調整処理を前記撮像手段から出力された被写界像に基づいて実行する調整手段、
前記撮像面によって捉えられた被写界に適合する適合調整基準を前記撮像手段から出力された被写界像に基づいて決定する決定手段、
前記参照調整基準を前記決定手段によって決定された適合調整基準に変更する変更手段、および
前記決定手段によって決定された適合調整基準に沿う適正パラメータ値と前記参照調整基準に沿う適正パラメータ値との相違が基準を上回るとき前記変更手段の変更処理を制限する制限手段を備える、電子カメラ。
【請求項2】
前記参照調整基準および前記適合調整基準の各々は少なくとも絞り量と露光時間との関係を示すプログラム線図上で定義されたラインに相当する、請求項1記載の電子カメラ。
【請求項3】
前記決定手段は、複数の調整基準がそれぞれ割り当てられた複数のシーンの中から前記被写界に相当するシーンを判別する判別手段、および前記判別手段によって判別されたシーンに対応する調整基準を前記適合調整基準として選択する選択手段を含む、請求項1または2記載の電子カメラ。
【請求項4】
前記撮像手段から出力された被写界像の画質を評価する評価手段をさらに備え、
前記判別手段は前記評価手段の評価結果を参照した第1シーン判別処理を実行する第1シーン判別手段を含む、請求項3記載の電子カメラ。
【請求項5】
前記撮像面によって捉えられた被写界の動きを前記撮像手段から出力された被写界像に基づいて検出する検出手段をさらに備え、
前記判別手段は前記検出手段の検出結果を参照した第2シーン判別処理を実行する第2シーン判別手段を含む、請求項3または4記載の電子カメラ。
【請求項6】
前記調整手段は、前記参照調整基準に沿う適正パラメータ値を前記撮像手段から出力された被写界像に基づいて算出する算出手段、および前記算出手段によって算出された適正パラメータ値を参照して撮像条件を調整する調整実行手段を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の電子カメラ。
【請求項7】
前記参照調整基準を示す指標を前記撮像手段の撮像処理と並列して出力する出力手段をさらに備える、請求項1ないし6のいずれかに記載の電子カメラ。
【請求項8】
被写界を捉える撮像面を有して被写界像を繰り返し出力する撮像手段を備える電子カメラのプロセッサに、
参照調整基準に沿う適正パラメータ値を参照した撮像条件の調整処理を前記撮像手段から出力された被写界像に基づいて実行する調整ステップ、
前記撮像面によって捉えられた被写界に適合する適合調整基準を前記撮像手段から出力された被写界像に基づいて決定する決定ステップ、
前記参照調整基準を前記決定ステップによって決定された適合調整基準に変更する変更ステップ、および
前記決定ステップによって決定された適合調整基準に沿う適正パラメータ値と前記参照調整基準に沿う適正パラメータ値との相違が基準を上回るとき前記変更ステップの変更処理を制限する制限ステップを実行させるための、撮像制御プログラム。
【請求項9】
被写界を捉える撮像面を有して被写界像を繰り返し出力する撮像手段を備える電子カメラによって実行される撮像制御方法であって、
参照調整基準に沿う適正パラメータ値を参照した撮像条件の調整処理を前記撮像手段から出力された被写界像に基づいて実行する調整ステップ、
前記撮像面によって捉えられた被写界に適合する適合調整基準を前記撮像手段から出力された被写界像に基づいて決定する決定ステップ、
前記参照調整基準を前記決定ステップによって決定された適合調整基準に変更する変更ステップ、および
前記決定ステップによって決定された適合調整基準に沿う適正パラメータ値と前記参照調整基準に沿う適正パラメータ値との相違が基準を上回るとき前記変更ステップの変更処理を制限する制限ステップを備える、撮像制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−223129(P2011−223129A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87454(P2010−87454)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】