説明

電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置

【課題】ドアロックの動作方式をトリガ式とオート式との間で自由に選択可能とすることにより、ユーザの利便性を向上することができる電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置を提供する。
【解決手段】車両降車時、キー操作フリーシステム3のドアロック13の動作方式を、トリガ式からオート式に切り換える場合、車両1にてオート選択操作を行って降車する。オート選択操作は、ユーザが降車するとき、車両ドアを開状態としながら集中ドアロックスイッチ19をアンロック位置→ロック位置に切り換え、その後、車両ドアを閉じる操作である。車両1は、オート選択操作を検出すると、ドアロック13の動作方式を、通常時のトリガ式からオート式に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーと無線によりID照合を行ってドアロックを動作させる電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、車両からの通信を契機に狭域無線通信(通信距離:数m)により電子キーとID照合を行うキー操作フリーシステムが搭載されている(特許文献1等参照)。キー操作フリーシステムでは、車両からリクエスト信号を電子キーに送信し、このリクエスト信号により起動した電子キーが返信してきたID信号でID照合を行う。そして、車外に位置する電子キーとID照合(車外照合)が成立すれば、ドアロック施解錠が許可/実行され、車内に位置する電子キーとID照合(車内照合)が成立すれば、車内のエンジンスイッチの単なる押し操作のみでのエンジン始動が許可される。
【0003】
また、この種のキー操作フリーシステムでは、ドアロックの施解錠の動作方式が、車両における所定操作を契機として実行されるトリガ式のものもある。ドアロックの動作方式がトリガ式の場合、例えば車両ドアを施錠(ロック)するとき、ユーザは車両ドアのドアハンドルのトリガスイッチを押し操作する。車両は、ドアロック解錠時にトリガスイッチの操作を検出すると、リクエスト信号の送信を開始し、車外照合を実行する。そして、この車外照合が成立すれば、ドアロックが施錠される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−262915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ユーザが降車時に車両ドアをロックするとき、両手が荷物で塞がっていると、ドアハンドルのトリガスイッチを押し難い状況に陥る。よって、この場合、キー操作フリーシステムはトリガロック式でなく、車両から離れると自動で車両ドアが施錠するオートロック式が便利であるが、現状のキー操作フリーシステムでは、ドアロックの動作方式を、トリガク式とオート式との間で自由に切り換えることができない問題があった。なお、この問題は、車両ドアに限るものではなく、例えば住宅のドアなど他のドア類でも同様である。
【0006】
本発明の目的は、ドアロックの動作方式をトリガ式とオート式との間で自由に選択可能とすることにより、ユーザの利便性を向上することができる電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信対象からの通信を契機に無線通信により電子キーとID照合が可能であり、前記通信対象に設けたドアロック操作用のトリガ手段が操作されたとき、前記ID照合が成立することを条件にドアロックが動作するトリガ式と、前記トリガ手段を操作しなくとも前記ドアロックが自動で動作するオート式とのいずれかで、前記ドアロックを動作可能な電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置であって、前記ドアロックの動作方式を切り換える際にユーザに課される切り換え操作を監視する切換操作監視手段と、前記切換操作監視手段の監視結果を基に、前記ドアロックの動作方式を前記トリガ式又は前記オート式のどちらかに設定する動作方式設定手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
本発明の構成によれば、通信対象又は電子キーのいずれかで、ドアロックの動作方式を切り換える操作が実行されると、そのときの切り換え操作に基づき、ドアロックの動作方式がトリガ式又はオート式のいずれかに設定される。このため、ユーザにとっては、ドアロックの動作方式をトリガ式又はオート式の間で自由に選択することが可能となる。よって、ドアロックの動作方式を、ユーザのその時々の状態に合わせた最適な方式に設定可能となるので、ユーザの利便性がよくなる。
【0009】
本発明では、前記切り換え操作は、前記通信対象に設けられた通信対象側操作手段を用い、前記通信対象側で実行する操作であることを要旨とする。この構成によれば、例えばユーザが退室するとき、通信対象に設けられた通信対象側操作手段を操作してから退室するという一連の退室動作の中で、ドアロック動作方式の切り換えをスムーズに行うことが可能となる。
【0010】
本発明では、前記動作方式設定手段は、前記ドアロックの動作方式を前記トリガ式から前記オート式に切り換えることにより、ユーザが退室してドアを施錠するときのロック方式を、前記トリガ手段の操作を契機に前記ドアが施錠されるトリガロック式から、前記トリガ手段を操作しなくとも前記ドアが自動で施錠されるオートロック式に切り換えることを要旨とする。この構成によれば、例えばユーザが退室するとき、荷物等で両手が塞がる場合には、ドアロックの動作方式をオート式としておけば、退室時においてドアが自動で施錠されるので、退室時におけるユーザの利便性をよくすることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記ドアロックの動作方式は、通常時において前記トリガ式に設定され、前記動作方式設定手段は、前記切り換え操作があったことを確認すると、前記ドアロックの動作方式を通常の前記トリガ式から前記オート式に切り換えることを要旨とする。この構成によれば、通常時のドアロックの動作方式をトリガ式とするので、通常時のドアロックの施解錠を、ユーザの操作意志に準ずる動作としておける。このため、通常時において、ユーザの意図しないところでドアロックが勝手に解錠してしまうなどの状況が生じ難くなる。
【0012】
本発明では、前記ドアロックの動作方式が前記トリガ式から前記オート式に切り換えられたとき、当該オート式での前記ドアロックの操作の有効回数又は有効時間を設定する使用制限設定手段を備えたことを要旨とする。この構成によれば、ドアロックの動作方式をトリガ式からオート式に切り換えたとき、オート式の使用に制限を持たせるので、トリガ式への戻し忘れを生じ難くすることが可能となる。よって、トリガ式への戻し忘れを防止可能という点からも、ユーザの利便性がよいと言える。
【0013】
本発明では、前記使用制限設定手段は、前記ドアロックの動作方式が前記オート式に設定されたとき、当該オート式の使用を1回の動作のみ許可することを要旨とする。この構成によれば、ドアロックの動作方式のトリガ式への戻し忘れを、一層生じ難くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドアロックの動作方式をトリガ式とオート式との間で自由に選択可能とすることにより、ユーザの利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態の電子キーシステムのブロック図。
【図2】(a)〜(c)は、オート選択操作を示す手順図。
【図3】ドアロックの動作方式を設定する際に実行されるフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を車両に具体化した電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置の一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両1からの通信を契機に狭域無線通信(通信距離:数m)により電子キー2とID照合を行うキー操作フリーシステム3が搭載されている。キー操作フリーシステム3には、車外に位置する電子キー2とID照合が成立すると、乗降車する一連の操作過程の中で車両ドアが自動で施解錠されるエントリ機能がある。また、キー操作フリーシステム3には、車内に位置する電子キー2とID照合が成立すると、車内のプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ4を単に押し操作するのみでエンジン5を始動することが可能なエンジン始動機能がある。なお、車両1が通信対象に相当し、キー操作フリーシステム3が電子キーシステムに相当する。
【0017】
この場合、車両1には、電子キー2とのID照合を行う照合ECU6と、車載電装品の動作を管理するボディECU7と、エンジン5を制御するエンジンECU8とが設けられ、これらが車内バス9を通じて接続されている。照合ECU6のメモリには、車両1に登録された電子キー2のIDコードが記憶されている。照合ECU6には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を送信可能な車外送信機10と、車内にLF電波を送信可能な車内送信機11と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な車両受信機12とが接続されている。
【0018】
ボディECU7には、車両ドアの施解錠を切り換える機構部分としてドアロック13が接続されている。ドアロック13は、例えばモータやラッチ機構等を備えた機械部品であって、モータによる被係止部への係止部材の係止/非係止を切り換えることで、車両ドアの施解錠を切り換える。
【0019】
電子キー2が車外に位置するとき、照合ECU6は、車外送信機10からリクエスト信号Srqを断続的に送信し、車外においてスマート通信(車外スマート通信)を実行する。そして、リクエスト信号Srqの車外通信エリアに電子キー2が進入し、電子キー2がリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー2は起動し、スマート通信用のID信号Sidを送信する。ID信号Sidには、電子キー2に登録されたスマート通信用のキーIDが含まれている。照合ECU6は、リクエスト信号Srqの送信の後にID信号Sidを受信すると、車外においてスマート照合(車外スマート照合)を行い、この照合が成立すれば、ボディECU7によるドアロック13の施解錠動作を許可/実行させる。
【0020】
また、照合ECU6は、ドア開閉を検出するドアカーテシスイッチ14によってユーザの乗車を検出すると、それまでの車外送信機10に代えて車内送信機11からリクエスト信号Srqの送信し、車内においてスマート通信(車内スマート通信)を開始する。そして、車内で車外と同様のスマート照合(車内スマート照合)が行われ、この照合が成立すれば、エンジンスイッチ4よる車両1の電源遷移及びエンジン始動の操作が許可される。
【0021】
本例のキー操作フリーシステム3のドアロック13の動作方式には、車両1に設けられたドアロック動作用の操作機器が操作された際に、ドアロック13の施解錠が実行されるトリガ式がある。この場合、車両1の車外ドアハンドル15には、ユーザが車外ドアハンドル15をタッチしたことを検出するタッチセンサ16が設けられている。タッチセンサ16は、タッチ操作を検出すると、照合ECU6に検出信号(オン信号)を出力する。また、車外ドアハンドル15には、ドアロック13を施錠する際に操作する押し操作式のロックボタン17が設けられている。ロックボタン17は、押し操作されたとき、照合ECU6に検出信号(オン信号)を出力する。なお、タッチセンサ16及びロックボタン17がトリガ手段を構成する。
【0022】
車両ドアが施錠状態のとき、照合ECU6は、リクエスト信号Srqを車外に断続的に送信して、車外スマート照合の成立可否を逐次確認する。このとき、車外通信エリアに正規の電子キー2が進入すれば、車外スマート照合が成立する。そして、照合ECU6は、車両ドアが施錠状態下でタッチセンサ16からタッチ操作有りのオン信号を入力すると、車外スマート照合の成立を条件に、ボディECU7にドアロック13を解錠させる。つまり、車両ドアが施錠状態のとき、ユーザの手元に正規の電子キー2がある状態で車外ドアハンドル15に触れると、車両ドアが解錠される。
【0023】
一方、車両ドアが解錠状態のとき、照合ECU6は、ロックボタン17からボタン操作有りのオン信号を入力すると、車外スマート照合を開始する。そして、照合ECU6は、車両ドアが解錠状態下で車外スマート照合の成立を確認すると、ボディECU7にドアロック13を施錠させる。つまり、車両ドアが解錠状態のとき、ユーザの手元に正規の電子キー2がある状態で車外ドアハンドル15のロックボタン17が押されると、車両ドアが施錠される。
【0024】
また、本例のキー操作フリーシステム3のドアロック13の動作方式には、電子キー2を所持したユーザが車両1から近づいたり離れたりすることで、ドアロック13の施解錠が自動で実行されるオート式もある。この場合、照合ECU6は、車両ドアが施錠状態のとき、リクエスト信号Srqを車外に断続的に送信して、車外スマート照合の成立有無を監視する。そして、照合ECU6は、車両ドアが施錠状態のときに車外スマート照合が成立することを確認すると、ボディECU7にドアロック13を解錠させる。つまり、車両ドアが施錠状態のとき、正規の電子キー2を持ったユーザが車両1に近づくと、車両ドアが自動で解錠される。
【0025】
一方、照合ECU6は、ドアカーテシスイッチ14にてユーザの降車を検出すると、車外送信機10からリクエスト信号Srqの送信を開始して、車外スマート照合を実行する。そして、照合ECU6は、電子キー2が車外通信エリアから出て、成立状態にある車外スマート照合が成立しなくなると、ボディECU7にドアロック13を施錠させる。つまり、車両ドアが解錠状態のとき、正規の電子キー2を持ったユーザが車両1から離れると、車両ドアが自動で施錠される。
【0026】
本例のキー操作フリーシステム3には、ドアロック13の動作方式をトリガ式又はオート式のいずれかに設定するドアロック動作方式切換装置18が設けられている。本例のドアロック動作方式切換装置18は、降車時に車両1において所定のオート選択操作(切り換え操作)が実行されたとき、ドアロック13の動作方式を、それまでのトリガ式からオート式に切り換える。本例の場合、ドアロック13の動作方式は、通常時においてトリガ式に設定され、降車時にオート選択操作が実行されると、所定期間のみ(本例は1回の動作のみ)オート式に設定される。
【0027】
この場合、照合ECU6には、運転席において車内の各ドアのロック状態をまとめて切り換える際に操作する集中ドアロックスイッチ19が接続されている。集中ドアロックスイッチ19は、ロック位置とアンロック位置との2位置に操作可能であり、各位置に応じたスイッチ信号を出力する。集中ドアロックスイッチ19がロック位置のとき、車内の全てのドアが施錠され、集中ドアロックスイッチ19がアンロック位置のとき、車内の全てのドアが解錠される。なお、集中ドアロックスイッチ19が通信対象側操作手段に相当する。
【0028】
照合ECU6には、オート選択操作が実行されたか否かを監視するオート選択操作監視部20が設けられている。本例の場合、図2(a)〜(c)に示すように、オート選択操作は、ユーザ降車時において車両ドアを開状態にした後、集中ドアロックスイッチ19をアンロック位置からロック位置に切り換え、そのスイッチ位置で、車両ドアを閉じる操作となっている。このため、オート選択操作監視部20は、ドアカーテシスイッチ14からのドア開信号を入力している最中、集中ドアロックスイッチ19からロック信号を入力し、この状態下でドアカーテシスイッチ14からドア閉信号を入力すると、オート選択操作があったと認識する。なお、オート選択操作監視部20が切換操作監視手段に相当する。
【0029】
照合ECU6には、オート選択操作監視部20の監視結果を基に、ドアロック13の動作方式をトリガ式又はオート式のいずれかに設定するドアロック動作方式設定部21が設けられている。ドアロック動作方式設定部21は、オート選択操作監視部20がオート選択操作を確認したとき、ドアロック13の動作方式を、それまでのトリガ式からオート式に切り換える。なお、ドアロック動作方式設定部21が動作方式設定手段に相当する。
【0030】
また、本例のドアロック動作方式切換装置18は、ユーザ降車時においてオート選択操作を実行させ、ドアロック13の動作方式がオート式に切り換えられたとき、オート式の使用を1回のみ許可する。このため、本例のドアロック動作方式切換装置18は、車両ドアを施錠するときの直近の1回において、その動作方式を設定するものでもある。よって、本例のドアロック動作方式設定部21は、車両ドアの施錠動作を、ロックボタン17の操作を契機に車両ドアを施錠するトリガロック式から、ロックボタン17の操作がなくとも車両ドアを施錠するオートロック式に切り換えるものとも言える。
【0031】
そこで、照合ECU6には、ドアロック13の動作方式をトリガ式からオート式に切り換えた際、オート式の使用に制限を持たせるオート式使用制限部22が設けられている。本例のオート式使用制限部22は、オート式の動作を1回のみ許可する。このため、オート式でドアロック13が動作すると、その時点でドアロック13の動作方式が、オート式からトリガ式に戻される。なお、オート式使用制限部22が使用制限設定手段に相当する。
【0032】
次に、本例のドアロック動作方式切換装置18の動作を、図3のフローチャートを用いて説明する。図3のフローチャートは、車両ドアが開操作されたときに開始される。
ステップ101において、オート選択操作監視部20は、オート選択操作があったか否かを判定する。つまり、図2(a)〜(c)に示すように、ドア開操作後、集中ドアロックスイッチ19がロック位置に操作され、その後、ドア閉されたか否かを判定する。このとき、オート選択操作があれば、ステップ102に移行し、オート選択操作がなければ、ステップ103に移行する。
【0033】
ステップ102において、オート選択操作監視部20は、オート選択操作があった場合、例えば照合ECU6内のメモリにオート選択操作監視用のフラグを立てるなどして、オート選択操作を履歴有りとして保持する。
【0034】
また、ステップ103において、オート選択操作監視部20は、オート選択操作がない場合、例えば照合ECU6内のメモリにオート選択操作監視用のフラグを立てず、オート選択操作を履歴無しとして保持する。
【0035】
ステップ104において、ドアロック動作方式設定部21は、ドアカーテシスイッチ14からのスイッチ信号を基にドア閉を認識すると、車内スマート照合が成立しているか否かを判定する。つまり、ドアロック動作方式設定部21は、車両ドアが閉じられたとき、車内に電子キー2が置き忘れられていないか確認するために、車内スマート照合の成立可否を判定する。このとき、車内スマート照合が成立すれば、ステップ101に戻って、オート選択操作有り無しの判定を再実行する。一方、車内スマート照合が成立しなければ、ステップ105に移行する。
【0036】
ステップ105において、ドアロック動作方式設定部21は、オート選択操作の操作履歴有無を判定する。つまり、ドアロック動作方式設定部21は、照合ECU6内のメモリにオート選択操作監視用のフラグが立っているか否かを判定する。このとき、オート選択操作の操作履歴があれば、ステップ106に移行し、オート選択操作の操作履歴がなければ、ステップ107に移行する。
【0037】
ステップ106において、ドアロック動作方式設定部21は、オート選択操作の操作履歴がある場合、ドアロック13の動作方式をオート式に設定する。このため、ユーザが降車した際、ロックボタン17を操作しなくても、車両1から離れれば、ドアロック13が自動で施錠される。なお、オート式での施錠操作は、オート式使用制限部22にて1回のみ許可される。
【0038】
一方、ステップ107において、ドアロック動作方式設定部21は、オート選択操作の操作履歴がない場合、ドアロック13の動作方式をトリガ式に設定する。このため、ユーザが降車した際、ロックボタン17を操作すれば、車外スマート照合の成立が開始され、この車外スマート照合の成立を条件に、ドアロック13が施錠される。
【0039】
以上により、本例においては、ユーザが降車するとき、例えば両手に荷物を持つなどして両手が塞がる場合、車両ドアを開状態とした後、集中ドアロックスイッチ19をロック位置に操作して車両ドアを閉じれば、ドアロック13の動作方式を、それまでのトリガ式からオート式に切り換えることが可能となる。つまり、車両ドアの施錠動作を、ユーザにロックボタン17の操作を課すトリガロック式から、車両1から離れれば自動で車両ドアが施錠されるオートロック式に切り換えることが可能となる。
【0040】
よって、電子キー2を所持したユーザが車両1から離れればドアロック13が自動で施錠に切り換わるので、ユーザの両手が荷物で塞がっていてロックボタン17を押せない状況になっていても、ユーザは単に車両1から離れることで以て、ドアロック13を施錠に切り換えることが可能となる。このため、ユーザにとっては、両手が使えない状況のとき、わざわざロックボタン17を操作する必要がなくなるので、車両ドアを施錠するときの利便性がよくなると言える。なお、オート式でドアロック13が施錠された後は、ドアロック13の動作方式がオート式からトリガ式に戻る。
【0041】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)ユーザ降車時、オート選択操作が行われると、ドアロック13の動作方式がトリガ式からオート式に切り換わる。このため、ユーザにとっては、ドアロック13の動作方式を、トリガ式又はオート式の間で自由に選択することができる。よって、ドアロック13の動作方式を、ユーザのその時々の状態に合わせた最適な方式に設定することが可能となるので、ユーザの利便性をよくすることができる。
【0042】
(2)オート選択操作は、車両ドアを開操作し、車両ドアを開とした状態下で、車内に配置された集中ドアロックスイッチ19を操作し、その後、車両ドアを閉じる操作である。よって、ユーザが降車するとき、車両ドアを開けて車内の操作機器を操作して車両ドアを閉じるとう一連の降車動作の中で、ドアロック13の動作方式を切り換えることが可能となるので、ドアロック13の動作方式の切り換えを、スムーズな操作にて行うことができる。
【0043】
(3)ユーザ降車時にドアロック13の動作方式をトリガ式からオート式に切り換えれば、ユーザが降車するときのドアロック13の施錠方式が、トリガロック式からオートロック式に変わることになる。このため、ユーザが降車するとき、荷物等で両手が塞がる場合には、ドアロック13の施錠方式をオートロック式としておけば、ユーザが車両1から離れれば車両ドアが自動で施錠されるので、降車時におけるユーザの利便性を向上することができる。
【0044】
(4)ドアロック13の動作方式を通常時においてトリガ式としておき、オート選択操作があったときに、ドアロック13の動作方式を、使用制限を持つオート式に切り換える。このため、通常時において、ユーザの意図しないところでドアロックが勝手に動作(解錠)してしまうなどの状況を生じ難くすることができる。
【0045】
(5)ドアロック13の動作方式をトリガ式からオート式に切り換えたとき、オート式の動作には制限があるので、元のトリガ式への戻し忘れを生じ難くすることができる。
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
【0046】
・オート選択操作で車内の既存の操作機器を使用するとき、これは集中ドアロックスイッチ19に限定されない。例えば、運転席用のドアロックスイッチなど、他の操作機器を利用可能である。
【0047】
・オート選択操作は、車内の既存の操作機器を用いることに限定されず、例えばモード切り換え用の新たな専用スイッチを設けてもよい。
・オート選択操作は、車両ドアを開とした状態下で集中ドアロックスイッチ19を操作し、その後、車両ドアを閉じる操作に限定されない。例えば、車内の所定の操作機器を操作した状態下で車両ドアが開操作されたときなど、操作態様は適宜変更可能である。
【0048】
・オート選択操作は、車両1側で実行されることに限定されない。例えば、電子キー2による遠隔操作にて、ドアロック13の動作方式を切り換え可能としてもよい。
・オートロック式(オート式)は、降車したユーザの電子キー2との間で車外スマート照合が1回でも照合成立すれば、施錠が実行される方式でもよい。
【0049】
・オートロック式(オート式)は、仮に車外スマート照合が成立していなくても、降車したユーザにて車両ドアが閉じられた時点で、ドアロック13が自動で施錠される方式でもよい。
【0050】
・車両ドアは、一軸を支点に回る回転式に限定されず、例えば直線往復動するスライド式でもよい。
・オート式の動作に制限を持たせる場合、使用回数に限らず、例えば有効時間(有効期間)を設定してもよい。
【0051】
・トリガ式は、降車時において車両ドアが閉じられたとき、車外スマート照合が自動開始されるものでもよい。
・トリガ式は、ドアロック13を解錠するとき、電子キー2の有無を常時監視する方式に限定されない。例えば、タッチセンサ16がタッチ操作を検出したことを条件に、車外スマート照合が開始されるものでもよい。つまり、トリガ式は、ユーザによる所定操作を条件にドアロックの施解錠が行われる形式であればよい。
【0052】
・トリガ手段は、タッチセンサ16やロックボタン17に限らず、他の機器が応用可能である。
・トリガ手段は、タッチセンサ16とロックボタン17としたが、1つのボタンでロック/アンロック、又は1つのタッチセンサ16でロック/アンロックさせるものであってもよいし、またこれらに限定されない。
【0053】
・電子キーシステムは、キー操作フリーシステム3に限定されず、例えば近距離無線を用いた認証システムとしてもよい。また、電子キーシステムで使用する電波の周波数は、LFやUHFに限定されず、他の周波数を使用してもよい。さらに、電子キーシステムの電波は、往路と復路とで周波数が異なることに限定されず、同じとしてもよい。
【0054】
・電子キー2の車内外判定は、例えば運転席側と助手席側とにそれぞれ送信機を配置し、これら送信機からの電波に対する電子キー2の応答の組み合わせを見ることで行うものでもよい。
【0055】
・ドアロック動作方式切換装置18は、車両1に採用されることに限定されず、例えば住宅などの他の機器やシステムに応用可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0056】
(イ)請求項1〜6のいずれかにおいて、前記切り換え操作は、前記電子キーシステムに設けられた既存の操作手段である。この構成によれば、既存の操作手段を使用するので、装置構造の簡素化や部品コスト削減に寄与する。
【0057】
(ロ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記切り換え操作は、前記ドアが開状態のときに、前記通信対象に設けられた通信対象側操作手段を操作し、当該操作後、前記ドアを閉じる操作である。
【0058】
(ハ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)、(ロ)のいずれかにおいて、室内で前記電子キーと前記ID照合の成立可否を確認することにより、当該室内における前記電子キーの有無を判定し、前記電子キーが当該室内に存在しないことを一条件として前記ドアロックを施錠する。この構成によれば、電子キーの室内の置き忘れを生じ難くすることが可能となる。
【0059】
(二)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)〜(ハ)のいずれかにおいて、前記動作方式設定手段は、前記ドアロックの動作方式を前記オート式に設定した状況下で、前記トリガ手段が操作されたことを確認すると、前記ドアロックの動作方式を前記トリガ式に強制的に戻して、前記ドアロックを動作させる。この構成によれば、ドアロックの動作方式を、一旦設定したオート式から自由にトリガ式に戻すことが可能となる。
【0060】
(ホ)請求項1〜6、前記技術的思想(イ)〜(二)のいずれかにおいて、前記オート式は、前記トリガ手段を操作しなくとも、室外に位置する前記電子キーとの前記ID照合の成立可否を基に前記ドアロックが自動で動作する方式である。
【符号の説明】
【0061】
1…通信対象としての車両、2…電子キー、3…電子キーシステムとしてのキー操作フリーシステム、13…ドアロック、16…トリガ手段を構成するタッチセンサ、17…トリガ手段を構成するロックボタン、18…ドアロック動作方式切換装置、19…通信対象側操作手段としての集中ドアロックスイッチ、20…切換操作監視手段としてのオート選択操作監視部、21…動作方式設定手段としてのドアロック動作方式設定部、22…使用制限設定手段としてのオート式使用制限部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信対象からの通信を契機に無線通信により電子キーとID照合が可能であり、前記通信対象に設けたドアロック操作用のトリガ手段が操作されたとき、前記ID照合が成立することを条件にドアロックが動作するトリガ式と、前記トリガ手段を操作しなくとも前記ドアロックが自動で動作するオート式とのいずれかで、前記ドアロックを動作可能な電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置であって、
前記ドアロックの動作方式を切り換える際にユーザに課される切り換え操作を監視する切換操作監視手段と、
前記切換操作監視手段の監視結果を基に、前記ドアロックの動作方式を前記トリガ式又は前記オート式のどちらかに設定する動作方式設定手段と
を備えたことを特徴とする電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置。
【請求項2】
前記切り換え操作は、前記通信対象に設けられた通信対象側操作手段を用い、前記通信対象側で実行する操作である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置。
【請求項3】
前記動作方式設定手段は、前記ドアロックの動作方式を前記トリガ式から前記オート式に切り換えることにより、ユーザが退室してドアを施錠するときのロック方式を、前記トリガ手段の操作を契機に前記ドアが施錠されるトリガロック式から、前記トリガ手段を操作しなくとも前記ドアが自動で施錠されるオートロック式に切り換える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置。
【請求項4】
前記ドアロックの動作方式は、通常時において前記トリガ式に設定され、
前記動作方式設定手段は、前記切り換え操作があったことを確認すると、前記ドアロックの動作方式を通常の前記トリガ式から前記オート式に切り換える
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置。
【請求項5】
前記ドアロックの動作方式が前記トリガ式から前記オート式に切り換えられたとき、当該オート式での前記ドアロックの操作の有効回数又は有効時間を設定する使用制限設定手段を備えた
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置。
【請求項6】
前記使用制限設定手段は、前記ドアロックの動作方式が前記オート式に設定されたとき、当該オート式の使用を1回の動作のみ許可する
ことを特徴とする請求項5に記載の電子キーシステムのドアロック動作方式切換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−28922(P2013−28922A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164448(P2011−164448)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】