説明

電子キーシステムの携帯機

【課題】表示部の防水と表示画面の視認性向上とが可能な電子キーシステムの携帯機を提供する。
【解決手段】上部ケース10に形成された表示部用開口部13と、ケース内側に配置された防水カバー40と、防水カバー40と一体的に形成され、上部ケース10及び下部ケース20の双方に密着する外側Oリング部42と、防水カバー40に形成された表示部用開口部41と、表示部用開口部41、13を介して上部ケース10から露出する透明カバー50と、表示部用開口部41を囲んで防水カバー40と一体的に形成され、上部ケース10及び透明カバー50の双方に密着する内側Oリング部43と、下部ケース20、透明カバー50、防水カバー40及びOリング部42、43により形成される防水空間130と、防水空間130内に配置され、透明カバー50を介して情報を表示するLCDパネル70とを有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーシステムにおいて使用者に携帯される携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の電子キーシステムの携帯機が開示されている。この携帯機は、上部ケースと下部ケースとにより形成される内部空間内に、ノブ部材、シリコーン樹脂製の薄膜状の防水カバー、回路基板、電池ターミナル、電池ケース及びボタン電池等が上部からこの順に積み重ねられた配置構成を有している。この構成では、回路基板、電池ターミナル、電池ケース及びボタン電池等は、下部ケースと防水カバーとにより形成される防水空間内に配置されている。回路基板の上面には、防水カバーを介して伝達されるノブ部材からの押圧力によりオン状態及びオフ状態が切り替えられるスイッチと、携帯機の動作状態に基づいて点灯/消灯する発光ダイオード(LED)とが設けられている。LEDからの光は、防水カバーと上部ケースに形成された透明なLED窓部とを透過する。これにより携帯機の使用者は、LED窓部を介して視認されるLEDの点灯状態に基づいて、携帯機の動作状態を確認できるようになっている。
【特許文献1】特開2004−153526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年の電子キーシステムの携帯機には、より多くの情報を表示可能な液晶表示装置(LCD)を用いた表示画面が設けられる場合がある。この場合、上記構成と同様にLCDを防水空間内に配置したとすると、表示画面は防水カバーを介して視認されることになる。しかしながら、シリコーン樹脂製の防水カバーは、LEDの点灯/消灯を識別できる程度には光を透過させ得るものの、非透明(乳白色)であるため、表示画面の視認性が低下してしまうという問題が生じる。
【0004】
本発明の目的は、表示部を防水できるとともに表示画面の視認性を向上できる電子キーシステムの携帯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0006】
請求項1に記載の発明は、無線通信による識別コードの照合により特定の錠を電気的に施解錠可能な電子キーシステムの携帯機であって、分割成形された第1及び第2のケースを備えたケース体と、第1のケースに形成されたケース開口部と、ケース体の内側に配置され、防水性を備えた防水カバーと、防水カバーの外周部に防水カバーと一体的に形成され、少なくとも第2のケースに水密に密着する外側Oリング部と、防水カバーの外側Oリング部よりも内側に形成されたカバー開口部と、カバー開口部及びケース開口部を介して第1のケースから露出する透明カバーと、外側Oリング部よりも内側でカバー開口部の全周を囲んで防水カバーと一体的に形成され、少なくとも透明カバーに水密に密着する内側Oリング部と、少なくとも第2のケース、透明カバー、防水カバー、外側Oリング部及び内側Oリング部により形成される防水空間と、防水空間内に配置され、透明カバーを介して所定の情報を表示する表示部と、無線通信を行う無線通信回路部が実装され、防水空間内に配置された回路基板とを有することを特徴とする電子キーシステムの携帯機である。
【0007】
これにより、少なくとも第2のケース、透明カバー、防水カバー、外側Oリング部及び内側Oリング部により形成される防水空間内に表示部が配置されるため、表示部の防水が可能になる。また、表示部は透明カバーを介して表示を行うため、表示画面の視認性を向上できる。
【0008】
請求項2に記載の発明のように、内側Oリング部は、第1のケースと透明カバーとの間に平面固定されるようにしてもよい。
【0009】
請求項3に記載の発明は、透明カバーは、第1のケースに対して第1の組付け方向に組み付けられており、第1のケースは、第1の組付け方向にほぼ垂直に形成されて内側Oリング部に密着する環状の第1の内側Oリング圧縮面を有し、透明カバーは、第1の内側Oリング圧縮面にほぼ平行に形成されて内側Oリング部に密着する環状の第2の内側Oリング圧縮面を有することを特徴としている。
【0010】
これにより、透明カバーと第1のケースとを組み付けることによって内側Oリング部が透明カバー及び第1のケースの双方に密着するため、携帯機の製造工程を簡略化できる。
【0011】
請求項4に記載の発明のように、外側Oリング部は、第1のケースと第2のケースとの間に平面固定されるようにしてもよい。
【0012】
請求項5に記載の発明は、第2のケースは、第1のケースに対して第2の組付け方向に組み付けられており、第1のケースは、第2の組付け方向にほぼ垂直に形成されて外側Oリング部に密着する環状の第1の外側Oリング圧縮面を有し、第2のケースは、第1の外側Oリング圧縮面にほぼ平行に形成されて外側Oリング部に密着する環状の第2の外側Oリング圧縮面を有することを特徴としている。
【0013】
これにより、第1のケースと第2のケースとを組み付けることによって外側Oリング部が第1及び第2のケースの双方に密着するため、携帯機の製造工程を簡略化できる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、防水空間内に配置され、対向配置された2枚の板状部材を熱かしめにより一体化して形成された構造体をさらに有し、回路基板は、構造体の内部に配置されていることを特徴としている。
【0015】
これにより、無線通信回路部を容易に開けることができない構成にできるため、無線設備としての手続きが容易になる要件の一部を満たすことができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、防水空間内に配置され、対向配置された2枚の板状部材を熱かしめにより一体化して形成された構造体をさらに有し、回路基板は、構造体の内部に配置された第1の基板と、第1の基板に対して折畳み可能に接続されて構造体の外表面上に配置された第2の基板とを備え、第1の基板には無線通信回路部が実装され、第2の基板には、使用者の操作に基づいて所定の信号を出力する操作部が実装されていることを特徴としている。
【0017】
これにより、無線通信回路部を容易に開けることができない構成にできるため、無線設備としての手続きが容易になる要件の一部を満たすことができる。また、操作部を構造体の外部に配置された第2の基板に実装することにより、構造体の内部に収容された第1の基板には操作部以外の電子部品をより多く実装できるため、携帯機の高性能化や多機能化が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1乃至図3を用いて説明する。本実施形態の電子キーシステムは、車両に搭載された車載機と、使用者に携帯され、車載機との間で無線通信を行う携帯機とを有している。携帯機は車載機からの要求に応じて識別コードを無線送信し、車載機は携帯機から受信した識別コードと予め登録された識別コードとを照合し、照合結果に基づいて車両ドアの施解錠やエンジン始動許可等を行うようになっている。
【0019】
図1は、本実施形態における電子キーシステムの携帯機の構成を示す分解斜視図である。図2は、携帯機の表示部近傍の構成を示す部分断面図であり、図3は、図2に示す部分断面における上部ケース側の分解図である。図2及び図3では、携帯機の構成要素の一部を省略して示している。図1乃至図3に示すように、携帯機1は、分割成形された上部ケース10及び下部ケース20を備えた例えば樹脂製のケース体を有している。上部ケース10は、下部ケース20に対し、図中の上下方向に嵌合するようになっている。ケース体内部には、操作ノブ30、31、防水カバー40、透明カバー50、内部カバー60、LCDパネル(表示部)70、回路基板80、電池ホルダ90及びボタン型電池100、101が上部ケース10側から概ねこの順に積層されている。またケース体には、車両ドアの錠を機械的に施解錠できるエマージェンシーキー110が、例えばシーソ構造のロック機構によって着脱可能に保持されるようになっている。
【0020】
上部ケース10には、内側から嵌め込まれた操作ノブ30、31の表面をそれぞれ露出させる操作ノブ用開口部11、12と、内側から嵌め込まれた透明カバー50を露出させる表示部用開口部(ケース開口部)13とを有している。表示部用開口部13の開口端には、透明カバー50の係止爪54により係止される被係止部18が形成されている。また、上部ケース10の内側表面のうち表示部用開口部13外周部には、後述する内側Oリング部43に水密に密着される環状の内側Oリング圧縮面19が形成されている。内側Oリング圧縮面19は、上部ケース10及び透明カバー50の組付け方向(図中上下方向)にほぼ垂直に形成されている。さらに、上部ケース10の外周部には、下部ケース20に嵌合する枠状の嵌合突起120が形成されている。嵌合突起120の内周側には、後述する外側Oリング部42に水密に密着される環状の外側Oリング圧縮面121が形成されている。外側Oリング圧縮面121は、上部ケース10及び下部ケース20の組付け方向(図中上下方向)にほぼ垂直に形成されている。
【0021】
上部ケース10の表面には、化粧カバー14が例えば両面テープを用いて取り付けられている。化粧カバー14は例えば透明樹脂製であり、裏面側(上部ケース10側)に所定の裏印刷が施されている。化粧カバー14には、上部ケース10の操作ノブ用開口部11、12及び表示部用開口部13にそれぞれ対応する位置に、操作ノブ用開口部15、16及び表示部用開口部17が形成されている。表示部用開口部17は、後述する枠状部53や係止爪54等が化粧カバー14によって隠されるように、上部ケース10の表示部用開口部13よりもやや小さく形成されている。
【0022】
防水カバー40は、例えばシリコーンゴム製であり、防水性及び可撓性を備えている。防水カバー40は、内側から嵌め込まれた透明カバー50を露出させる表示部用開口部(カバー開口部)41を有している。また防水カバー40は、操作ノブ30、31に加えられた押圧力を回路基板80側に伝達するとともに、弾性力により操作ノブ30、31を外側(図中上方)に付勢するようになっている。
【0023】
防水カバー40の外周部の全周には、防水カバー40と一体成形された外側Oリング部42が形成されている。表示部用開口部41の周囲には、表示部用開口部41の全周を囲んで防水カバー40と一体成形された内側Oリング部43が形成されている。外側Oリング部42及び内側Oリング部43は、対向する2つの表面によって圧縮されることにより両表面に水密に密着するようになっている。
【0024】
透明カバー50は透明樹脂製であり、LCDパネル70の表面にほぼ平行なパネルカバー部51と、パネルカバー部51の外周部から下方(下部ケース20側)に枠状に突出する枠状部53と、枠状部53の突出端から外周側に延出して形成されたフランジ部52とを有している。パネルカバー部51の外周部には、上部ケース10の被係止部18に係止する係止爪54が複数箇所に設けられている。透明カバー50が上部ケース10に対して内側から組み付けられると、パネルカバー部51は、防水カバー40の表示部用開口部41と上部ケース10の表示部用開口部13とを介して上部ケース10から露出するようになっている。フランジ部52には、内側Oリング部43に水密に密着される環状の内側Oリング圧縮面55が形成されている。内側Oリング圧縮面55は、上部ケース10の内側Oリング圧縮面19にほぼ平行に形成され、内側Oリング圧縮面19との間で内側Oリング部43を平面固定するようになっている。
【0025】
内部カバー(板状部材)60は例えば樹脂製であり、概ね板状の形状を有している。内部カバー60は、後述するプッシュスイッチ81、82をそれぞれ露出させるスイッチ用開口部61、62と、LCDパネル70を露出させる表示部用開口部63とを有している。内部カバー60は、LCDパネル70を面内方向で位置決めして固定するとともに、回路基板80上の回路素子を保護するために設けられている。また内部カバー60の裏面側(回路基板80側)の外周部には、電池ホルダ90の挿入孔部92に挿入された後に熱かしめされる複数のピン64が突出して形成されている。
【0026】
LCDパネル70としては、例えば複数の画素がマトリクス状に配置され、画素毎に液晶を駆動することにより外光の反射率を画素毎に制御できるドットマトリクス方式の反射型LCDパネルが用いられている。LCDパネル70は、電極形成面同士が対向するように配置された一対の透明基板と、両透明基板間に封止された液晶とを有している。一方の透明基板の電極形成面のうち例えば一端辺には、複数の端子部が互いに並列して設けられている。各端子部は、回路基板80に実装された制御回路部に液晶接続用コネクタ71を介して接続されている。LCDパネル70は、制御回路部から入力される表示信号に基づいて、透明カバー50のパネルカバー部51を介して所定の情報を表示するようになっている。LCDパネル70と回路基板80との間には、平板状の固定台72が設けられている。固定台72は、LCDパネル70の厚み方向の位置を調節するとともに、LCDパネル70に対する衝撃を緩和する緩衝材として機能する。
【0027】
回路基板(リジット基板)80は、内部カバー60とほぼ同一の平面形状を有している。回路基板80には、制御回路部及び無線通信回路部を構成する回路素子や、プッシュスイッチ(操作部)81、82等を含む電子部品が実装されている。必要な実装面積の比較的大きい無線通信回路部のアンテナ83は回路基板80の裏面側(電池ホルダ90側)に実装され、プッシュスイッチ81、82等の他の電子部品の多くは回路基板80の表面側(LCDパネル70側)に実装されている。制御回路部は、各種の制御や演算を行う中央処理装置(CPU)と、固有の識別コードや各種の制御プログラム等が格納された読出し専用の記憶装置(ROM)と、任意の記憶領域においてデータの書込み及び読出しが可能な記憶装置(RAM)と、外部との信号の入出力を行う入出力ポートとを有している。プッシュスイッチ81、82は、回路基板80に固定された本体部と、本体部から上方に突出して防水カバー40に当接し、上方からの押圧力によって下方側に変位する可動片81a、82aとをそれぞれ有している。
【0028】
操作ノブ30が使用者により押釦されると、操作ノブ30に加えられた押圧力が防水カバー40を介してプッシュスイッチ81の可動片81aに伝達され、可動片81aが下方に変位する。これにより、可動片81aに設けられた可動接点と本体部に設けられた固定接点とが電気的に接続される。すなわち、プッシュスイッチ81はオン状態になって接点信号を制御回路部に出力する。同様に、操作ノブ31が使用者により押釦されると、プッシュスイッチ82はオン状態になって接点信号を制御回路部に出力する。制御回路部は、プッシュスイッチ81、82からの接点信号が入力されると、無線通信回路部を介して所定の機能信号を車載機側に無線送信するようになっている。
【0029】
使用者による操作ノブ30の押釦が停止されると、防水カバー40により与えられる付勢力によって操作ノブ30が上方に変位する。これにより、可動片81a、82aに対する押圧力も取り除かれ、可動片81aの可動接点と本体部の固定接点とが電気的に分離される。すなわち、プッシュスイッチ81はオフ状態になって接点信号の出力を停止する。同様に、使用者による操作ノブ31の押釦が停止されると、プッシュスイッチ82はオフ状態になって接点信号の出力を停止する。
【0030】
電池ホルダ(板状部材)90は例えば樹脂製であり、内部カバー60とほぼ同一の平面形状を備えた板状に形成されている。電池ホルダ90は、ボタン型電池100、101を下面側(下部ケース20側)から収容し、ボタン型電池100、101からの電力を回路基板80に実装された電子部品に供給するようになっている。また電池ホルダ90には、アンテナ83との機械的干渉を防ぐために開口されたアンテナ用開口部91が形成されている。アンテナ83の反実装面(下部ケース20側表面)と下部ケース20の内部底面との間には、アンテナ83に対する衝撃を緩和する緩衝部材93が設けられている。さらに電池ホルダ90には、内部カバー60の複数のピン64がそれぞれ挿入される複数の挿入孔部92が形成されている。ピン64は挿入孔部92に挿入された後に熱かしめされるため、内部カバー60と電池ホルダ90は、回路基板80を挟み、使用者が容易には分解できないように一体化するようになっている。本願明細書中では、内部カバー60と電池ホルダ90とが熱かしめによって一体化された構造体を便宜上「熱かしめ構造体」ともいう。
【0031】
下部ケース20は、上部ケース10の嵌合突起120に嵌合される嵌合溝21を外周部に有している。嵌合溝21の内周側には、外側Oリング部42に水密に密着される環状の外側Oリング圧縮面22が形成されている。外側Oリング圧縮面22は、上部ケース10の外側Oリング圧縮面121にほぼ平行に形成され、外側Oリング圧縮面121との間で外側Oリング部42を平面固定するようになっている。下部ケース20のうち少なくとも外側Oリング圧縮面22よりも内周側には、下部ケース20を貫通する開口部は形成されていない。
【0032】
本実施形態では、防水カバー40の外側Oリング部42は下部ケース20の外側Oリング圧縮面22に水密に密着しており、内側Oリング部43は透明カバー50の内側Oリング圧縮面55に水密に密着している。これによりケース体の内部には、下部ケース20、透明カバー50、防水カバー40、外側Oリング部42及び内側Oリング部43によって防水空間130が形成されるようになっている。LCDパネル70、回路基板80、ボタン型電池100、101等は、いずれも防水空間130内に配置されている。したがって本実施形態によれば、LCDパネル70を回路基板80やボタン型電池100、101等と共に防水できるようになっている。
【0033】
また本実施形態では、LCDパネル70が、透明樹脂で形成された透明カバー50のパネルカバー部51を介して表示を行うため、表示画面の視認性を向上できる。
【0034】
さらに本実施形態では、上部ケース10の内側Oリング圧縮面19と透明カバー50の内側Oリング圧縮面55とが、いずれも上部ケース10及び透明カバー50の組付け方向にほぼ垂直に形成されている。このため、防水カバー40を挟んで上部ケース10と透明カバー50とを組み付け、係止爪54を被係止部18に係止させることによって、内側Oリング圧縮面19と内側Oリング圧縮面55との双方に内側Oリング部43を密着させることができる。したがって、携帯機1の製造工程を簡略化できる。
【0035】
また本実施形態では、上部ケース10の外側Oリング圧縮面121と下部ケース20の外側Oリング圧縮面22とが、いずれも上部ケース10及び下部ケース20の組付け方向にほぼ垂直に形成されている。このため、防水カバー40を挟んで上部ケース10と下部ケース20とを組み付け、嵌合突起120を嵌合溝21に嵌合させることによって、外側Oリング圧縮面121と外側Oリング圧縮面22との双方に外側Oリング部42を密着させることができる。したがって、携帯機1の製造工程を簡略化できる。
【0036】
さらに本実施形態では、無線通信回路部が実装された回路基板80が、容易には分解できない熱かしめ構造体の内部に配置されるようになっている。これにより、無線通信回路部(高周波部及び変調部)を容易に開けることができない構成にできるため、日本国の電波法や他国法令等の規定に基づき無線設備としての手続きが容易になる要件の一部を満たすことができる。したがって、携帯機1の製造コストを低減できる。
【0037】
また本実施形態では、容易には分解できない構造体を熱かしめにより一体化しているため、携帯機1の部品点数の増加を抑制できるとともに製造工程を簡略化できる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4乃至図6を用いて説明する。図4は、本実施形態における携帯機2の構成を示す分解斜視図である。図4に示すように、携帯機2は、主に回路基板180及び内部カバー160の構成に特徴を有している。
【0039】
回路基板180は、柔軟性の比較的低い絶縁性基材を用いて形成された2枚のリジット基板181、182と、柔軟性の比較的高い絶縁性基材を用いて折曲げ可能に形成されたフレキシブル基板183とを有している。リジット基板181は、第1実施形態の回路基板80と概ね同様の形状を有し、熱かしめ構造体を構成する内部カバー160及び電池ホルダ90の間に挟まれている。リジット基板181の一端部には、フレキシブル基板183の一端部が接続されている。フレキシブル基板183の他端部には、リジット基板182の一端部が接続されている。すなわちリジット基板182は、熱かしめ構造体に対し、フレキシブル基板183を介して折畳み可能に接続されている。リジット基板182の図4中上方の表面には電子部品が実装されておらず、図4中下方の表面には、プッシュスイッチ81、82等の無線通信機能には直接寄与しない操作部を構成する電子部品のみが実装されている。
【0040】
内部カバー160には、第1実施形態の内部カバー60とは異なり、スイッチ用開口部61、62が形成されていない。内部カバー160の防水カバー40側表面(熱かしめ構造体の外表面)には、リジット基板182を保持可能な保持部190が形成されている。保持部190は、フレキシブル基板183が約180°折り曲げられることにより反転して折畳まれたリジット基板182を保持するようになっている。
【0041】
図5は、フレキシブル基板183を伸ばした状態での携帯機2の熱かしめ構造体200の構成を示す斜視図である。図6は、フレキシブル基板183を折り曲げてリジット基板182を保持部190に保持させた状態での熱かしめ構造体200の構成を示す斜視図である。図5及び図6に示すように、保持部190は、反転したリジット基板182の表面(非実装面)182aに当接する当接面190aと、リジット基板182のうちフレキシブル基板183に接続された端部以外の三方の端面を囲むように突出した枠状部191と、枠状部191の対向する2辺から内側に突出し、当接面190aに当接した状態のリジット基板182が浮き上がるのを阻止する爪部192とを有している。ここで、リジット基板182には、爪部192に対応する位置に切欠き部184が設けられている。
【0042】
図5に示した状態からリジット基板182を保持部190に保持させる際には、フレキシブル基板183を折り曲げてリジット基板182を熱かしめ構造体200に対して折り畳み、表面182aと当接面190aとを対向させる。そして、切欠き部184の位置と爪部192の位置とが対応するようにリジット基板182を保持部190の枠状部191内に嵌め込み、表面182aと当接面190aとを当接させる。その後、リジット基板182を枠状部191の2辺に沿って当接面190aに対して摺動させ、切欠き部184の位置を爪部192の位置からずらす。これにより、リジット基板182が保持部190から浮き上がるのが阻止され、リジット基板182は保持部190に保持される。リジット基板182が保持部190に保持されると、リジット基板182は熱かしめ構造体200の外部に露出し、プッシュスイッチ81、82は、操作ノブ30、31に加えられた押圧力が防水カバー40を介して伝達される位置に配置される。
【0043】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、LCDパネル70、回路基板180、ボタン型電池100、101等が防水空間130内に配置されている。したがって、LCDパネル70を回路基板180やボタン型電池100、101等と共に防水できるようになっている。また本実施形態では、第1実施形態と同様に、LCDパネル70は透明カバー50を介して表示を行うため、表示画面の視認性を向上できる。
【0044】
さらに本実施形態では、必要な実装面積の比較的大きいプッシュスイッチ81、82は熱かしめ構造体200の外部のリジット基板182に実装されている。したがって、熱かしめ構造体200内部のリジット基板181には、第1実施形態の回路基板80よりも多数の電子部品を実装できるため、携帯機2の高性能化や多機能化が容易になる。なお、プッシュスイッチ81、82等の操作部については、熱かしめ構造体200の外部に実装されていても、電波法等の規定に基づき無線設備としての手続きが容易になる要件に反することにはならない。
【0045】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、Oリング圧縮面19、22、55、121がOリング部42、43をそれぞれ平面固定するように形成されているが、Oリング圧縮面はOリング部を円筒面固定するように形成してもよい。
【0046】
また上記実施形態では、所定の情報を表示する表示部として反射型LCD表示パネルを用いた例を挙げたが、透過型LCDパネルと当該透過型LCDパネルを背面側から照明するバックライト装置とを用いてもよいし、有機EL表示パネルやFL表示パネル等の他の表示装置を用いてもよい。
【0047】
さらに上記実施形態では、無線通信回路部の実装された回路基板80やリジット基板181を収容する構造体は熱かしめにより一体化されているが、構造体は、容易に分解できないようになっていれば特殊ビス等を用いて一体化されていてもよい。
【0048】
また上記第2実施形態では、リジット基板181、182がフレキシブル基板183を介して折畳み可能に接続されているが、フレキシブル基板183に代えて、リジット基板181、182を折畳み可能に接続するコネクタを用いてもよい。
【0049】
さらに上記第2実施形態では、リジット基板182が保持部190によって保持されているが、リジット基板182を内部カバー160に固定できれば両面テープや熱かしめ等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態における電子キーシステムの携帯機の構成を示す分解斜視図である。
【図2】第1実施形態における電子キーシステムの携帯機の表示部近傍の構成を示す部分断面図である。
【図3】図2に示す部分断面における上部ケース側の分解図である。
【図4】第2実施形態における電子キーシステムの携帯機の構成を示す分解斜視図である。
【図5】フレキシブル基板を伸ばした状態での熱かしめ構造体の構成を示す斜視図である。
【図6】フレキシブル基板を曲げてリジット基板を保持部に保持させた状態での熱かしめ構造体の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1、2 携帯機
10 上部ケース
13 表示部用開口部(ケース開口部)
19、55 内側Oリング圧縮面
20 下部ケース
22、121 外側Oリング圧縮面
30、31 操作ノブ
40 防水カバー
41 表示部用開口部(カバー開口部)
42 外側Oリング部
43 内側Oリング部
50 透明カバー
60、160 内部カバー(板状部材)
70 LCDパネル(表示部)
80、180 回路基板
90 電池ホルダ(板状部材)
100、101 ボタン型電池
130 防水空間
181、182 リジット基板
183 フレキシブル基板
190 保持部
200 熱かしめ構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信による識別コードの照合により特定の錠を電気的に施解錠可能な電子キーシステムの携帯機であって、
分割成形された第1及び第2のケースを備えたケース体と、
前記第1のケースに形成されたケース開口部と、
前記ケース体の内側に配置され、防水性を備えた防水カバーと、
前記防水カバーの外周部に前記防水カバーと一体的に形成され、少なくとも前記第2のケースに水密に密着する外側Oリング部と、
前記防水カバーの前記外側Oリング部よりも内側に形成されたカバー開口部と、
前記カバー開口部及び前記ケース開口部を介して前記第1のケースから露出する透明カバーと、
前記外側Oリング部よりも内側で前記カバー開口部の全周を囲んで前記防水カバーと一体的に形成され、少なくとも前記透明カバーに水密に密着する内側Oリング部と、
少なくとも前記第2のケース、前記透明カバー、前記防水カバー、前記外側Oリング部及び前記内側Oリング部により形成される防水空間と、
前記防水空間内に配置され、前記透明カバーを介して所定の情報を表示する表示部と、
前記無線通信を行う無線通信回路部が実装され、前記防水空間内に配置された回路基板と
を有することを特徴とする電子キーシステムの携帯機。
【請求項2】
前記内側Oリング部は、前記第1のケースと前記透明カバーとの間に平面固定されていることを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステムの携帯機。
【請求項3】
前記透明カバーは、前記第1のケースに対して第1の組付け方向に組み付けられており、
前記第1のケースは、前記第1の組付け方向にほぼ垂直に形成されて前記内側Oリング部に密着する環状の第1の内側Oリング圧縮面を有し、
前記透明カバーは、前記第1の内側Oリング圧縮面にほぼ平行に形成されて前記内側Oリング部に密着する環状の第2の内側Oリング圧縮面を有することを特徴とする請求項2に記載の電子キーシステムの携帯機。
【請求項4】
前記外側Oリング部は、前記第1のケースと前記第2のケースとの間に平面固定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子キーシステムの携帯機。
【請求項5】
前記第2のケースは、前記第1のケースに対して第2の組付け方向に組み付けられており、
前記第1のケースは、前記第2の組付け方向にほぼ垂直に形成されて前記外側Oリング部に密着する環状の第1の外側Oリング圧縮面を有し、
前記第2のケースは、前記第1の外側Oリング圧縮面にほぼ平行に形成されて前記外側Oリング部に密着する環状の第2の外側Oリング圧縮面を有することを特徴とする請求項4に記載の電子キーシステムの携帯機。
【請求項6】
前記防水空間内に配置され、対向配置された2枚の板状部材を熱かしめにより一体化して形成された構造体をさらに有し、
前記回路基板は、前記構造体の内部に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子キーシステムの携帯機。
【請求項7】
前記防水空間内に配置され、対向配置された2枚の板状部材を熱かしめにより一体化して形成された構造体をさらに有し、
前記回路基板は、前記構造体の内部に配置された第1の基板と、前記第1の基板に対して折畳み可能に接続されて前記構造体の外表面上に配置された第2の基板とを備え、
前記第1の基板には前記無線通信回路部が実装され、
前記第2の基板には、使用者の操作に基づいて所定の信号を出力する操作部が実装されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子キーシステムの携帯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−215739(P2009−215739A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58421(P2008−58421)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】