説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、電子キーの電池電圧の低下をより確実にユーザに認識させることにある。
【解決手段】電子キー2の電池26の電池電圧が通常状態であれば、ドアハンドルセンサ37への接触等を通じて、迅速に車両ドアの施解錠状態の切り替えが可能である。そして、電池26が低電圧状態となったときには、ドアハンドルセンサ37へ接触等をしても、即座に車両ドアの施解錠状態が切り替わることなく、遅延時間の経過を待って車両ドアの施解錠状態が切り替えられる。このように、操作に対する応答性、ひいては利便性をあえて低下させることで、より確実にユーザに電池電圧の低下を認識させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子キー及び車両間での無線通信を通じて車両ドアの施解錠又はエンジンの始動を可能とする電子キーシステムが知られている。この電子キーは内蔵される電池からの電力に基づき車両との間で通信を実行する。このため、電子キーが電池切れとなると、車両との間で通信が不能となる。このように通信が不能となる前に、車載ディスプレイやブザー等の警告手段を通じて電子キーに電池切れが近付いていることをユーザに知らせる構成が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−64272号公報
【特許文献2】実開平1−129459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示される構成では、ディスプレイやブザー等による警告にユーザが気が付かないおそれがある。また、たとえそれにユーザが気が付いたとしても、現在は問題なく車両ドアの施解錠等が可能であるため、さほど重要視されずに電池交換が行われないおそれがある。この場合には、最終的に電子キーの電池切れにより通信を通じた車両ドアの解錠やエンジンの始動ができなくなる。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子キーの電池電圧の低下をより確実にユーザに認識させることができる電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、内蔵される電池からの電力に基づき制御対象との間で無線通信を実行することで同制御対象の制御を可能とする電子キーを備えた電子キーシステムにおいて、前記制御対象の制御を実行する際に操作されるスイッチと、前記電池の電圧がしきい値未満である低電圧状態となったとき、前記スイッチの操作を通じた前記制御対象の制御を遅延時間だけ遅延させて実行する制御遅延手段と、を備えたことをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、電池の電圧がしきい値未満となったとき、スイッチの操作を通じた制御対象の制御の実行が遅延時間だけ遅延される。従って、この制御実行の遅延を通じて、ユーザはより確実に電子キーの電池電圧の低下を認識することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記電子キーは、前記制御対象から無線送信される要求信号を受信すると、前記電池の電圧に関する電池電圧情報を含む応答信号を送信し、前記制御対象は、前記スイッチ及び前記制御遅延手段を備え、前記制御遅延手段は、受信した前記応答信号に含まれる前記電池電圧情報に基づき前記低電圧状態である旨認識したとき、前記スイッチの操作を通じた前記制御対象の制御を前記遅延時間だけ遅延させて実行することをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、制御対象において受信した応答信号に含まれる電池電圧情報に基づき低電圧状態である旨認識されたとき、スイッチの操作を通じた制御が遅延時間だけ遅延される。このように、電子キー及び制御対象間で双方向通信が行われるシステムにおいても、制御の遅延を通じてユーザに電子キーの電池電圧の低下を認識させることができる。また、制御遅延手段が制御対象に設けられることで、高い携帯性が要求される電子キーをコンパクトに構成することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記電子キーは、前記スイッチを備えるとともに、同スイッチが操作されると、前記電池の電圧に関する電池電圧情報を含む制御要求信号を送信し、前記制御対象は、前記制御遅延手段を備え、前記制御遅延手段は、受信した前記制御要求信号に含まれる電池電圧情報に基づき前記低電圧状態である旨認識したとき、前記スイッチの操作を通じた前記制御対象の制御を前記遅延時間だけ遅延させて実行することをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、制御対象において受信した制御要求信号に含まれる電池電圧情報に基づき低電圧状態である旨認識したとき、スイッチの操作を通じた制御が遅延時間だけ遅延される。このように、電子キーから制御対象への単方向通信が行われるシステムにおいても制御の遅延を通じてユーザに電子キーの電池電圧の低下を認識させることができる。また、制御遅延手段が制御対象に設けられることで、高い携帯性が要求される電子キーをコンパクトに構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、電子キーの電池電圧の低下をより確実にユーザに認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態におけるキー操作フリーシステムの構成図。
【図2】第1の実施形態における通信エリアを示した車両の上面図。
【図3】第1の実施形態におけるスイッチの操作タイミングと、施解錠の実行タイミングとを示したタイミングチャート。
【図4】第2の実施形態におけるワイヤレスキーシステムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明を電子キーシステムの一種であるキー操作フリーシステムに具体化した第1の実施形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の車両には、電子キーシステムとしてキー操作を行うことなく車両の制御が可能となるキー操作フリーシステム1が搭載されている。キー操作フリーシステム1は、車両のユーザによって所持される電子キー2と、車両側に設けられる車載機3とを備える。そして、電子キー2及び車載機3間での双方向通信を通じて車両ドアの施解錠が可能となる。以下、本システムの構成について説明する。
【0016】
電子キー2は、受信アンテナ21と、受信回路22と、マイコン23と、送信回路24と、送信アンテナ25と、電池26とを備えている。
電池26は、電子キー2の各部に動作電力を供給する。また、本例では電池26は、ボタン型であって、充電不能な一次電池である。電池切れの場合には、新たな電池26と交換可能に構成される。
【0017】
受信アンテナ21は、車載機3から送信されてくる要求信号を受信する。受信回路22は、受信アンテナ21を通じて受信した要求信号を復調したうえでマイコン23に出力する。
【0018】
マイコン23は、不揮発性のメモリ23aを備えるとともに、そのメモリ23aには、当該電子キー2に対して個別に設定されたIDコードが記憶されている。マイコン23は、受信回路22から要求信号が入力されたとき、要求信号に応答するために、電子キー2のIDコードを含む応答信号を生成する。
【0019】
また、マイコン23は、電池26の電圧を検出する検出部23bを備える。そして、マイコン23は、検出部23bを通じて検出された電池電圧がしきい値以上の場合には電池電圧が通常状態である旨判断し、電池電圧がしきい値未満の場合には電池電圧が低下してきた低電圧状態である旨判断する。なお、電池26が低電圧状態となっても、即座に車載機3との通信を通じた車両ドアの施解錠が不可となるわけではなく、しばらくは電池交換を促す期間として車両ドアの施解錠が可能である。換言すると、そのような観点からしきい値は電子キーの最小動作電圧よりも高い値に設定されている。
【0020】
マイコン23は、電池26が通常状態及び低電圧状態の何れであるかを電池電圧情報として応答信号に含ませる。具体的には、応答信号に電池電圧情報のビットを付加して、そのビットを通常状態の場合にはビット0、低電圧状態の場合にはビット1とする。マイコン23は、生成した応答信号を送信回路24に出力する。
【0021】
送信回路24は、マイコン23から入力された応答信号を所定周波数(本実施形態では300MHz)の電波に変調する。送信アンテナ25は、送信回路24で変調された応答信号を無線送信する。
【0022】
車載機3は、送信回路31と、送信アンテナ32と、受信アンテナ33と、受信回路34と、車載制御装置35とを備えている。また、車載機3にはドアハンドルセンサ37と、ドアロックスイッチ38と、ドアロック装置39とが電気的に接続されている。
【0023】
車載制御装置35は、所定の周期で要求信号を生成し、それを送信回路31に出力する。送信回路31は、車載制御装置35から入力される要求信号を所定周波数(本実施形態では134KHz)の電波に変調する。送信アンテナ32は、送信回路31で変調された要求信号を無線送信する。
【0024】
図2に示すように、送信アンテナ32はドアアウトサイドハンドル36に内蔵される。そして、この送信アンテナ32から要求信号が車外においてドアアウトサイドハンドル36を中心とした半径約1mの領域内(通信エリアA)に送信される。この通信エリアA内に電子キー2が持ち込まれた状態で、通信エリアA内に要求信号が送信されると、その電子キー2は受信した要求信号に応じて応答信号を送信する。
【0025】
また、ドアアウトサイドハンドル36には、ユーザの接触を検出するドアハンドルセンサ37が設けられるとともに、押し操作可能にドアロックスイッチ38が設けられている。また、ドアロック装置39は、車載制御装置35からの指令に基づき、車両ドアの施解錠状態を切り替える。
【0026】
図1に示すように、車載制御装置35は、不揮発性のメモリ35aを備えるとともに、そのメモリ35aには電子キー2のIDコードと同一のIDコードが記憶されている。また、車載制御装置35は、後述する遅延時間を計測するタイマ35bを備える。
【0027】
受信アンテナ33は、電子キー2から送信されてくる応答信号を受信する。受信回路34は、受信アンテナ33を通じて受信した応答信号を復調したうえで車載制御装置35に出力する。
【0028】
車載制御装置35は、受信回路34から応答信号が入力されたとき、その信号に含まれているIDコードと、メモリ35aに記憶されるIDコードとの照合を行うとともに、その信号に含まれる電池電圧情報(正確にはビット0又は1)を通じて電池26が通常状態及び低電圧状態の何れであるかを認識する。
【0029】
車載制御装置35は、IDコードの照合が成立したとき、正規の電子キー2が通信エリアAに存在しているとして施解錠許可状態となる。この状態において、車載制御装置35はドアハンドルセンサ37を通じてドアアウトサイドハンドル36への接触を検出する。このとき、電池26が通常状態であれば、図3の左側に示すように即座に車両ドアを解錠する。一方、このとき、電池26が低電圧状態であれば、図3の右側に示すようにタイマ35bを通じて計測される遅延時間Tの経過を待って車両ドアを解錠する。
【0030】
同様にして、車載制御装置35は施解錠許可状態において、ドアロックスイッチ38が押し操作されると、電池26が通常状態であれば即座に車両ドアの施解錠状態を切り替える。一方、このとき、電池26が低電圧状態であればタイマ35bを通じて計測される遅延時間Tの経過を待って車両ドアの施解錠状態の切り替えを行う。
【0031】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)電子キー2の電池26の電圧が通常状態であれば、ドアハンドルセンサ37への接触等を通じて、迅速に車両ドアの施解錠状態の切り替えが可能である。そして、電池26が低電圧状態となったときには、ドアハンドルセンサ37へ接触等をしても、即座に車両ドアの施解錠状態が切り替わることなく、遅延時間Tの経過を待って車両ドアの施解錠状態が切り替えられる。このように、操作に対する応答性、ひいては利便性をあえて低下させることで、より確実にユーザに電池電圧の低下を認識させることができる。これは、アラームや表示等による電圧低下の通知に比べて、より強い電池交換の動機付けをユーザに与えるものである。
【0032】
(2)車載機3において、応答信号に含まれる電池電圧情報に基づき施解錠実行の遅延に係る処理が行われる。従って、この処理を電子キー2で行う必要がなく、比較的に高い携帯性が要求される電子キー2をコンパクトに構成することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の車両には、電子キーシステムとしてキー操作を通じて車両ドアの施解錠を行うワイヤレスキーシステムが搭載されている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0034】
図4に示すように、ワイヤレスキーシステム7においては、電子キー2を送信側として、車載機3を受信側とする単方向通信が行われる。従って、第1の実施形態と異なって、電子キー2は、受信アンテナ21及び受信回路22、車載機3は送信回路31及び送信アンテナ32が省略して構成されている。また、ドアハンドルセンサ37及びドアロックスイッチ38も省略して構成されている。
【0035】
電子キー2は、アンロックスイッチ41と、ロックスイッチ42とを備える。ロックスイッチ42及びアンロックスイッチ41はプッシュ式スイッチであるとともに、操作されるとその旨の操作信号がマイコン23に出力される。これにより、マイコン23においてロックスイッチ42又はアンロックスイッチ41が操作されたことが認識される。
【0036】
マイコン23は、ロックスイッチ42が操作されたとき自身のメモリ23aに記憶されるIDコードと、電池26の電池電圧情報とを含む施錠要求信号を生成し、それを送信回路24に出力する。また、アンロックスイッチ41が操作されたとき自身のメモリ23aに記憶されるIDコードと、電池26の電池電圧情報とを含む解錠要求信号を生成し、それを送信回路24に出力する。この電池電圧情報とは、第1の実施形態と同様に、電池26が通常状態及び低電圧状態の何れであるかを示す情報である。
【0037】
送信回路24は、マイコン23から入力された施錠要求信号又は解錠要求信号を所定周波数(本実施形態では300MHz)の電波に変調する。そして、送信アンテナ25は、送信回路24で変調された施錠要求信号又は解錠要求信号を無線送信する。
【0038】
一方、車載機3において、受信回路34は受信アンテナ33を介して電子キー2からの施錠要求信号又は解錠要求信号を受信すると、それを復調したうえで車載制御装置35に出力する。車載制御装置35は、受信回路34から施錠要求信号又は解錠要求信号が入力されたとき、その信号に含まれているIDコードと、メモリ35aに記憶されるIDコードとの照合を行うとともに、その信号に含まれる電池電圧情報を通じて電池26が通常状態及び低電圧状態の何れであるかを認識する。
【0039】
車載制御装置35は、施錠要求信号についてIDコードの照合が成立した場合であって、電池26が通常状態である旨認識すると、即座に車両ドアを施錠する。また、車載制御装置35は、施錠要求信号についてIDコードの照合が成立した場合であって、電池26が低電圧状態である旨認識すると、タイマ35bを通じて計測される遅延時間Tの経過を待って車両ドアを施錠する。
【0040】
これと同様に、車載制御装置35は、解錠要求信号についてIDコードの照合が成立した場合であって、電池26が通常状態である旨認識すると、即座に車両ドアを解錠する。また、車載制御装置35は、解錠要求信号についてIDコードの照合が成立した場合であって、電池26が低電圧状態である旨認識すると、タイマ35bを通じて計測される遅延時間Tの経過を待って車両ドアを解錠する。
【0041】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(3)電子キー2の電池26の電圧が通常状態であれば、アンロックスイッチ41又はロックスイッチ42の操作を通じて、迅速に車両ドアの解錠又は施錠が実行できる。そして、電池26が低電圧状態となった場合には、アンロックスイッチ41又はロックスイッチ42の操作後、遅延時間Tの経過を待って車両ドアの解錠又は施錠が実行される。このように、アンロックスイッチ41等の操作に対する応答性の低下を通じて、利便性をあえて低下させることで、より確実にユーザに電池電圧の低下を認識させることができる。これは、アラームや表示等による通知に比べて、ユーザにより強い電池交換の動機付けを与えるものである。
【0042】
(4)特に、ワイヤレスキーシステムにおいては、スイッチ操作を通じて遠隔制御できる点で、テレビ等におけるリモートコントローラと類似している。一般的に、コントローラのスイッチ操作に対するテレビ等の反応が悪くなると、電池交換が必要であるとユーザは認識する。このようなイメージのもと、電子キー2のアンロックスイッチ41等の操作に対する応答を遅らせることで、ユーザはそれが電池の消耗が原因であると感覚的に認識することができる。
【0043】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記各実施形態においては、車載機3が受信した信号に含まれる電池電圧情報に基づき、電池26が低電圧状態のとき車両ドアの施解錠の実行を遅延させていた。しかし、電池26が低電圧状態のとき、電子キー2からの信号の送信タイミングを遅延させてもよい。
【0044】
具体的には、第1の実施形態において、ドアハンドルセンサ37がユーザの接触を検出したとき、又はドアロックスイッチ38が操作されたときに、車載機3から要求信号が送信される構成を採用する。そして、マイコン23は、電池26が低電圧状態であるとき、要求信号を認識した後、遅延時間Tの経過を待って、応答信号を生成する。これにより、例えば、低電圧状態においてユーザがドアハンドルセンサ37に触れた場合、電子キー2は要求信号を受けても、即座に応答信号を返信せず、遅延時間Tの経過を待って応答信号を返信する。従って、結果的に施解錠状態の切り替え実行タイミングを遅延させることができる。
【0045】
第2の実施形態においては、マイコン23は、電池26が低電圧状態にあるときアンロックスイッチ41又はロックスイッチ42が操作されると、遅延時間Tの経過を待って解錠要求信号又は施錠要求信号を生成する。これによって、結果的に施解錠状態の切り替え実行タイミングを遅延させることができる。
【0046】
これら構成によれば、応答信号や施錠要求信号等に電池電圧情報を付加する必要がない。また、車載機3において制御実行の遅延に係る処理を省略することができる。従って、車載機3は、従来と同じ処理を行えばよいため、既存の電子キーシステムにおいて、本発明に係る電子キー2を車載機3に後から追加登録することで、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
【0047】
・上記各実施形態においては、遅延時間Tは一定であった。しかし、電池26の電圧の低下に応じて遅延時間Tが長く設定されてもよい。この場合には、低電圧状態におけるより詳細な電池電圧を電池電圧情報として応答信号等に付加する。車載機3は、低電圧状態において電池電圧が低くなるにつれて遅延時間Tを長く設定する。これにより、徐徐に応答性が低下することから、ユーザは制御遅延の原因が故障ではなく、電池電圧の低下にあることに気が付きやすくなる。
【0048】
・上記各実施形態においては、常に応答信号等に電池電圧情報が含まれていた。しかし、電池26が低電圧状態となったときにのみ、電池電圧情報を含ませてもよい。これにより、電池26の電圧が通常状態にあるとき、応答信号等に電池電圧情報を含ませる必要がない。
【0049】
・第1の実施形態におけるキー操作フリーシステムと、第2の実施形態におけるワイヤレスキーシステムとを備えた複合型電子キーシステムであってもよい。この場合には、何れのシステムを利用して車両ドアを施解錠したときであっても、電池26が低電圧状態にあれば、施解錠の実行が遅延される。
【0050】
・上記各実施形態における施解錠実行の遅延を通じた電池切れの警告に加えて、ディスプレイやブザー等の警告を併用してもよい。
・第1の実施形態においては、電子キー2の電池26が低電圧状態となったとき、車両ドアの施解錠の実行タイミングが遅延されていた。しかし、低電圧状態において、遅延される制御は、車両ドアに限らず、例えばエンジンの始動であってもよい。具体的には、車載機3は、車内における電子キー2との通信を通じてIDコードの照合が成立したとき、エンジン始動許可状態となる。車載機3は、この状態において、運転席近傍に設けられるエンジンスイッチが操作されると、電池26の電圧が通常状態であれば即座にエンジンを始動する。このとき、電池26が低電圧状態にあれば遅延時間Tの経過を待ってエンジンを始動する。これにより、エンジンの始動時においても、ユーザに電子キー2の電池電圧が低下していることを通知することができる。また、電気自動車やハイブリッド車では、走行可能状態とするタイミングを遅延させる。
【0051】
さらに、制御対象は、電子キー2との通信を通じてその制御が可能となるものであれば、上記に限らず、例えば、トランクの開閉を行うトランク装置や、スライドドアの開閉を行うスライドドア装置等であってもよい。この場合でも、電池26の低電圧状態においては、トランクやスライドドアの開閉タイミングが遅延される。また、制御対象は車両に限らず、建物用のドアロック装置であってもよい。
【0052】
・上記各実施形態においては、電池26は一次電池であったが、二次電池であってもよい。この場合であっても、ユーザは、制御実行の遅延を通じて電子キー2の充電が必要なことを認識できる。
【0053】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記制御対象は前記スイッチを備えるとともに、同スイッチが操作されたとき、前記電子キーの応答を要求する要求信号を送信し、前記電子キーから送信される応答信号を受信すると制御を実行し、前記電子キーは前記制御遅延手段を備え、前記制御遅延手段は、前記要求信号を受信すると、前記遅延時間の経過を待って前記応答信号を送信する電子キーシステム。
【0054】
同構成によれば、電子キーからの応答信号の送信タイミングを遅延させることで、制御対象における制御の実行タイミングが遅延される。本構成においては、応答信号に電池電圧情報を付加する必要がない。
【0055】
(ロ)請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記制御対象は、前記電子キーから送信された制御要求信号を受信したとき制御を実行し、前記電子キーは前記制御遅延手段及び前記スイッチを備え、前記制御遅延手段は、前記スイッチが操作されたとき、前記低電圧状態である旨認識すると、前記遅延時間の経過後に前記制御要求信号を送信し、前記低電圧状態でない旨認識すると、即座に前記制御要求信号を送信する電子キーシステム。
【0056】
同構成によれば、電子キーのスイッチ操作に基づく制御要求信号の送信タイミングを遅延させることで、制御対象における制御の実行タイミングが遅延される。本構成においては、制御要求信号に電池電圧情報を付加する必要がない。
【0057】
(ハ)請求項1〜4、上記項(イ)及び(ロ)の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記遅延時間は、前記低電圧状態において前記電池電圧が低下するにつれて長く設定される電子キーシステム
同構成によれば、電子キーの電池電圧が低下するにつれて遅延時間が長くなる。これにより、徐徐に応答性が低下することから、ユーザは制御遅延の原因が故障ではなく、電池電圧の低下にあることに気が付きやすくなる。
【符号の説明】
【0058】
1…キー操作フリーシステム、2…電子キー、3…車載機(制御対象)、7…ワイヤレスキーシステム、23…マイコン、26…電池、35…車載制御装置(制御遅延手段)、37…ドアハンドルセンサ(スイッチ)、38…ドアロックスイッチ(スイッチ)、39…ドアロック装置、41…アンロックスイッチ(スイッチ)、42…ロックスイッチ(スイッチ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵される電池からの電力に基づき制御対象との間で無線通信を実行することで同制御対象の制御を可能とする電子キーを備えた電子キーシステムにおいて、
前記制御対象の制御を実行する際に操作されるスイッチと、
前記電池の電圧がしきい値未満である低電圧状態となったとき、前記スイッチの操作を通じた前記制御対象の制御を遅延時間だけ遅延させて実行する制御遅延手段と、を備えた電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電子キーは、前記制御対象から無線送信される要求信号を受信すると、前記電池の電圧に関する電池電圧情報を含む応答信号を送信し、
前記制御対象は、前記スイッチ及び前記制御遅延手段を備え、
前記制御遅延手段は、受信した前記応答信号に含まれる前記電池電圧情報に基づき前記低電圧状態である旨認識したとき、前記スイッチの操作を通じた前記制御対象の制御を前記遅延時間だけ遅延させて実行する電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電子キーは、前記スイッチを備えるとともに、同スイッチが操作されると、前記電池の電圧に関する電池電圧情報を含む制御要求信号を送信し、
前記制御対象は、前記制御遅延手段を備え、
前記制御遅延手段は、受信した前記制御要求信号に含まれる電池電圧情報に基づき前記低電圧状態である旨認識したとき、前記スイッチの操作を通じた前記制御対象の制御を前記遅延時間だけ遅延させて実行する電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−188800(P2012−188800A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50379(P2011−50379)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】