説明

電子キー及び電子キーシステム

【課題】電子キーが良好状態にないことをユーザに通知することができ、電子キーの利便性も確保することができる電子キー及び電子キーシステムを提供する。
【解決手段】電子キーは、車両からの通信を契機に車両との無線通信を開始するスマート通信と、自身からの通信を契機に車両との無線通信を開始するワイヤレス通信とのいずれかでID照合が可能であり、ID照合の成立を条件にドアロック及びエンジンの操作が可能となる。電子キーは、電池の電圧が所定値以下であるか否かを判定する電池電圧判定部と、ワイヤレス通信の実行時に操作される解錠ボタン又は施錠ボタンが操作されたことを検出するボタン操作検出部と、電池の電圧がお知らせ電圧以下であると判定した場合に、ワイヤレス通信を有効のままとするもスマート通信の受信動作を停止し、ボタン操作検出部が操作を検出した際に所定時間Tのみスマート通信の受信動作を再開するAFE動作制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信対象と相互通信することにより通信対象の機器の操作を可能とする電子キー、及び通信対象と電子キーとが相互通信することにより通信対象の機器の操作を可能とする電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のキーシステムにおいては、車両キーとしての電子キーからキーコードとしてIDコードを車両へ無線発信してID照合を実行させる電子キーシステムが種々の車種で採用されている。この電子キーシステムでは、車両の周囲にIDコードの返信要求としてLF帯の信号でリクエストの通信エリアを形成し、この通信エリアに電子キーが入り込んでリクエストを受け取ると、電子キーがIDコードをRF帯の信号で車両に返信する。そして、車両は、このIDコードを受信するとID照合を行い、ID照合が成立すれば、ドアロックの施解錠やエンジンの始動を許可又は実行する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電子キーシステムでは、車両からリクエストが定期的に発信され、車外において電子キーがリクエストを受信して、リクエストに応答する形で電子キーが返信したIDコードで車両がID照合(車外照合)を実行する。車両は、車外照合が成立した場合にはドアロックの施解錠を許可又は実行する。また、電子キーシステムでは、車内において電子キーがIDコードを受信して、リクエストに応答する形で電子キーが返信したIDコードで車両がID照合(車内照合)を実行する。車両は、車内照合が成立した場合にはエンジンの始動を許可又は実行する。
【0004】
上記の電子キーは、電池を電源として稼働しているため、使用年月(使用回数)の経過に伴って電池電圧が限界動作電圧付近に至ると、ID照合ができなくなる状況に陥る。なお、目安として電池は交換しないで1年以上使用可能である。そこで、このような電子キーの電池切れに備えて、電子キーにはメカニカルキーが収納され、電池切れ時のドアロック施解錠はメカニカルキーを使用することによって対応する。さらに、電子キーにはトランスポンダが内蔵され、電池切れ時のエンジン始動は電子キーを車内のコイルアンテナに近づけて、トランスポンダによるID照合(トラポン照合)を成立させることによって対応する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−185628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように電子キーにメカニカルキーやトランスポンダを搭載することで電子キーに電池切れ対策を施しておいても、電子キーが電池切れになる状況は稀である。このため、実際に電池切れになった際には、メカニカルキーやトランスポンダを使用すれば対処可能であるにも拘わらず、実際のところユーザは電子キーを所持していても車両を操作することができない状況に直面することで、困惑する状況に陥ってしまう現状があった。よって、電子キーが電池切れに陥る前に、電池交換を促す新たな技術が要望されていた。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子キーが良好状態にないことをユーザに通知することができ、電子キーの利便性も確保することができる電子キー及び電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、車両からの通信を契機に前記車両との無線通信を開始する第1通信と、自身からの通信を契機に前記車両との無線通信を開始する第2通信とのいずれかでID照合が可能であり、当該ID照合が成立することを条件に前記車両に設置された機器の操作が可能となる電子キーにおいて、電源を供給する電池の電圧が所定値以下であるか否かを判定する電池電圧判定手段と、前記電池電圧判定手段が前記所定値以下であると判定した場合に、前記第2通信を有効のままとするも、前記第1通信の受信動作を停止する受信停止手段と、前記第2通信の実行時に操作される操作手段が操作されたことを検出する操作検出手段と、前記操作検出手段が操作を検出した際に一定時間のみ前記第1通信の受信動作を再開する受信再開手段と、を備えることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、電池切れに陥る前に電池電圧が所定値以下となると、第1通信の受信動作を停止するので、受信動作による電池の消耗を抑制することが可能となるとともに、電子キーが良好ではない状態(例えば電池残量が著しく低下した状態)にあることをユーザに認識させることが可能となる。このとき、操作手段が操作された際に第1通信の受信動作が一定時間のみ許可されるので、例えば通常行為として行う第1通信は、時間制限はあるが実行可能である。よって、電子キーが良好状態でないことをユーザに認識させつつ、ユーザは通常通りの行為で、利便性を大きく損なうことなく車両を操作することが可能となる。また、ユーザに電池交換を促すことにもなるので、電子キーが電池切れに陥る状況も生じ難い。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーにおいて、前記受信停止手段は、無線信号を受信するアナログフロントエンドの動作を停止することをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、電子キーの中で消費電圧が比較的大きいアナログフロントエンドの動作を停止するので、電池の消耗を効率良く抑制することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーにおいて、前記機器は、ドアロック及びエンジンであって、前記操作手段は、前記ドアロックの施解錠操作を行うもので、前記一定時間は、前記エンジンの始動操作を可能とする前記ID照合を行うのに必要な時間であることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、電池電圧が所定値以下となると電子キーは無線信号を受信できず、ID照合が成立しないので、ユーザは電子キーを取り出して操作手段を操作することで無線信号を送信してドアロックの解錠又は施錠を行う。そして、電子キーは操作手段が操作されたことによって、エンジンの始動操作が行われるのに必要な時間だけ無線信号の受信が再開されるので、ID照合が成立し、エンジンの始動が可能となる。よって、ドアロックの操作を手動で行うことで電池切れが近いことを認識し、エンジンの始動は通常通り行うことが可能である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記電池電圧判定手段は、前記無線の受信、又は前記操作手段への操作があったことをトリガとして電池電圧の判定を行うことをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、無線の受信、又は操作手段への操作があった際に電池電圧の判定を行うので、電子キー自体が動作する直近の電池電圧を判定することが可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記車両に乗車してから所定時間経過後、又は前記車両から電池残量を確定するように発信される電池残量確定信号を受信した際に、電池電圧を検出し、前記電池電圧判定手段は、判定以前に検出した前記電池電圧に基づいて電池電圧の判定を行うことを要旨としている。
【0015】
同構成によれば、電子キーが第1通信や第2通信を行って、温度が平衡して安定した状態の電池電圧を検出することが可能となり、正確な電池電圧に基づいて電池切れをお知らせすることが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、車両からの通信を契機に前記車両と電子キーとが無線通信を開始する第1通信と、前記電子キーからの通信を契機に前記車両と前記電子キーとが無線通信を開始する第2通信とのいずれかでID照合が可能であり、当該ID照合が成立することを条件に前記車両に設置された機器の操作が可能となる電子キーシステムにおいて、電源を供給する電池の電圧が所定値以下であるか否かを判定する電池電圧判定手段と、前記電池電圧判定手段が前記所定値以下であると判定した場合に、前記第2通信を有効のままとするも、前記第1通信の受信動作を停止する受信停止手段と、前記第2通信の実行時に操作される操作手段が操作されたことを検出する操作検出手段と、前記操作検出手段が操作を検出した際に一定時間のみ前記第1通信の受信動作を再開する受信再開手段と、を前記電子キーに備えることをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、電池切れに陥る前に電池電圧が所定値以下となると第1通信の受信動作を停止するので、車両から送信される無線信号を受信する受信動作による電池の消耗を抑制することが可能となる。また、電子キーが良好ではない状態(例えば電池残量が著しく低下した状態)にあることをユーザに認識させることが可能となる。そして、操作手段が操作された際に第1通信の受信動作が一定時間のみ許可されるので、例えば通常行為として行う第1通信は、時間制限はあるが実行可能である。よって、電子キーが良好状態でないことをユーザに認識させつつ、ユーザは通常通りの行為で、利便性を大きく損なうことなく車両を操作することが可能となる。また、ユーザに電池交換を促すことにもなるので、電子キーが電池切れに陥る状況も生じ難い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子キーが良好状態にないことをユーザに通知することができ、電子キーの利便性も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】電子キーの電池電圧低下による動作変更を示す図。
【図3】電子キーの電池電圧による動作を示すフローチャート。
【図4】電子キーシステムの電池電圧測定を示すシーケンスチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を車両の電子キーシステムに具体化した一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
図1に示されるように、車両2には、例えば運転者が実際に車両キーを操作しなくてもドアロックの施解錠やエンジンの始動及び停止等の車両動作を行うことが可能な電子キーシステム3が搭載されている。電子キーシステム3は、キー固有のIDコードを無線通信で発信可能な電子キー1が車両キーとして使用され、車両2と狭域無線通信(通信範囲:数m)によりID照合を実行する。なお、車両2が通信対象に相当する。また、ドアロックやエンジンが機器に相当する。
【0021】
電子キーシステム3には、車両2からの通信を契機に双方向通信(スマート通信)を開始してID照合を行うキー操作フリーシステムがある。これを以下に説明すると、車両2には、電子キー1との間でID照合を行う照合ECU(Electronic Control Unit)21と、ドアロックの施解錠等を管理するメインボディECU31とが設けられている。照合ECU21には、車両2のドアに埋設されてLF(Low Frequency)帯の無線信号を車室外に発信可能な車室外LF発信機22と、車室内の車体等に埋設されてLF帯の無線信号を車室内に発信可能な車室内LF発信機23と、車室内の車体等に埋設されてUHF(Ultra High Frequency)帯の無線信号を受信可能なUHF受信機24とが接続されている。なお、スマート通信が第1通信に相当する。
【0022】
一方、電子キー1には、車両2との間で電子キーシステム3に準じた無線通信を行う際のコントロールユニットとして通信制御部11が設けられている。通信制御部11は、固有のキーコードとしてIDコードが記憶されたメモリ11aを備えている。通信制御部11には、外部で発信されたLF帯の無線信号を受信可能なLF受信部12と、通信制御部11の指令に従いUHF帯の無線信号を発信可能なUHF発信部14とが接続されている。
【0023】
照合ECU21は、車室外LF発信機22からリクエスト信号Srqを間欠的に発信させ、スマート通信の成立を試みる。電子キー1は、リクエスト信号SrqをLF受信部12で受信してスマート通信が確立すると、リクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ11aに登録されたIDコードを含ませたIDコード信号SidをUHF発信部14から返信する。照合ECU21は、電子キー1が返信するIDコード信号SidのIDコードと自身のメモリ21aに登録されたIDコードとを照らし合わせてID照合を行い、このID照合が成立することを確認すると、電子キー1が車室外に位置するとして、車室外照合成立として処理する。
【0024】
照合ECU21は、車室外照合が成立することを確認すると、ドアロックの施解錠を許可する。そして、この許可状態において、照合ECU21は、ロックセンサ25がタッチ操作された際には、メインボディECU31にドアロック装置34を駆動させてドアロックを施錠させる。一方、照合ECU21は、アンロックセンサ26がタッチ操作された際には、メインボディECU31にドアロック装置34を駆動させてドアロックを解錠させる。つまり、電子キー1を所持して車両2に近づいてアンロックセンサ26をタッチ操作するだけで、ドアロックが解錠される。
【0025】
ここで、ユーザが車両2から降りた際には、ロックセンサ25又はアンロックセンサ26がタッチ操作されたことをトリガとして、照合ECU21は、車室外LF発信機22からリクエスト信号Srqを間欠的に発信させ、スマート通信の成立を試みる。
【0026】
また、車両2には、照合ECU21のID照合成立結果を基に、エンジンの点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU32が設けられている。エンジンECU32は、車内LAN30を通じて照合ECU21等の各種ECUに接続されている。車両2の運転席には、車両2の電源状態(電源ポジション)を切り換える際に操作されるエンジンスイッチ33が設けられている。エンジンスイッチ33は、照合ECU21に接続されている。
【0027】
照合ECU21は、エンジンスイッチ33が押し操作されると、車室内LF発信機23からリクエスト信号Srqを発信させて、車室内におけるID照合を実行する。照合ECU21は、ID照合が成立することを確認すると、電子キー1が車室内に位置するとして、車室内照合を成立として処理する。
【0028】
照合ECU21は、車室内照合が成立することを確認すると、エンジンスイッチ33の操作を許可する。照合ECU21は、電子キー1が車室内に存在する場合に、エンジンスイッチ33が押し操作される度に電源状態をACCオン→IGオン→電源オフの順に繰り返し遷移させる。また、照合ECU21は、電子キー1が車室内に存在する場合に、エンジン停止時にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ33が操作されると、エンジンECU32にエンジンを始動させる。
【0029】
また、車両2には、電子キー1からの通信を契機に単方向通信(ワイヤレス通信)にてID照合を行うワイヤレスキーシステムが設けられている。電子キー1には、押しボタン式の車両2のドアロックを解錠させる解錠ボタン15と、ドアロックを施錠させる施錠ボタン16とが設けられている。解錠ボタン15及び施錠ボタン16は、通信制御部11に接続されている。なお、解錠ボタン15及び施錠ボタン16が操作手段に相当する。また、ワイヤレス通信が第2通信に相当する。
【0030】
通信制御部11は、解錠ボタン15が操作された際には、固有のIDコードと、解錠操作情報とが含まれた解錠信号SulをUHF発信部14から送信する。照合ECU21は、UHF受信機24でドアロックの解錠情報を含む解錠信号Sulを受信すると、自身のメモリ21aに登録されたIDコードと解錠信号SulのIDコードとを照らし合わせてID照合(ワイヤレス照合)を行う。そして、照合ECU21は、ID照合成立を確認すると、ドアロック装置34にドアロックの解錠指令を出力し、ドアロックを解錠させる。
【0031】
また、通信制御部11は、施錠ボタン16が操作された際には、固有のIDコードと、解錠操作情報とが含まれた施錠信号SlをUHF発信部14から送信する。照合ECU21は、UHF受信機24でドアロックの施錠情報を含む施錠信号Slを受信すると、自身のメモリ21aに登録されたIDコードと施錠信号SlのIDコードとを照らし合わせてID照合(ワイヤレス照合)を行う。そして、照合ECU21は、ID照合成立を確認すると、ドアロック装置34にドアロックの施錠指令を出力し、ドアロックを施錠させる。
【0032】
図2に示されるように、本実施例の電子キー1には、自身の電池17の電圧が所定値以下となると電池切れが近いことを知らせるお知らせ機能が設けられている。すなわち、電子キー1の電池電圧が動作停止電圧以下である、いわゆる電池切れの不動作領域では、電子キー1は不動作となる。そして、電子キー1の電池電圧が動作停止電圧よりも高めであって、ユーザに電池切れが近いことを知らせるお知らせ電圧以下であるお知らせ領域では、電子キー1は受信機能を停止する。電子キー1は、受信機能を停止することで、通常のスマート通信ができなくなる。
【0033】
詳しくは、電子キー1の通信制御部11には、電池17の電圧が所定値以下であるか否かを判定する電池電圧判定部11bと、LF受信部12に設けられるアナログフロントエンド(AFE:Analog Front End)13の動作を制御するAFE動作制御部11cと、ボタン操作を検出するボタン操作検出部11dと、時間をカウントするタイマ11eとが設けられている。なお、電池電圧判定部11bが電池電圧判定手段として機能する。AFE動作制御部11cが受信停止手段及び受信再開手段として機能する。また、ボタン操作検出部11dが操作検出手段として機能する。
【0034】
電池電圧判定部11bは、お知らせ電圧と現在の電池電圧とを比較して、現在の電池電圧がお知らせ電圧以下であるか否かを判定する。また、電池電圧判定部11bは、現在の電池電圧がお知らせ電圧以下である場合には、不動作電圧と現在の電池電圧とを比較して、現在の電池電圧が不動作電圧以下であるか否かを判定する。
【0035】
AFE動作制御部11cは、電池電圧判定部11bによって電池電圧が不動作電圧よりも高く、お知らせ電圧以下であると判定された場合には、AFE13の電源をオフする。つまり、電子キー1においてスマート通信の電波待ち受けが停止される。なお、AFE13の電源がオフされても、通信制御部11におけるワイヤレス通信の機能には電源が入っているため、ワイヤレス通信は問題なく実行可能となっている。そして、AFE動作制御部11cは、ボタン操作検出部11dがボタン操作を検出した場合には、AFE13の電源を一定時間として所定時間Tの間のみオンする。なお、この所定時間Tは、ドアロックをボタン操作によって解錠して、車両2に乗り込んで車室内照合を成立させるまでの時間に相当する。
【0036】
次に、電子キー1の電池電圧が低下した際の動作について図3を参照して説明する。
まず、電子キー1は、リクエスト信号Srqを受信した際、又はボタン15,16が操作された際に、電池電圧がお知らせ電圧以下であると判定されたことにより、AFE13が停止されているとする。このため、ユーザが車両2に近づいたとしても、車両2から発信されたリクエスト信号Srqを電子キー1が受信することはないので、スマート通信が成立せず、ドアロックを解錠することができない。そして、ユーザは、電子キー1をポケット等から取り出して、解錠ボタン15を操作する。すなわち、電子キー1に対してワイヤレス操作が行われる。
【0037】
図3に示されるように、通信制御部11は、ワイヤレス操作があると、通信動作を開始する。すなわち、ボタン操作検出部11dは、解錠ボタン15又は施錠ボタン16に対する操作を検出して、電池電圧判定部11bに電池電圧を判定させる。電池電圧判定部11bは、電池電圧がお知らせ電圧以下であるか否かを判定する(ステップS1)。通信制御部11は、電池電圧がお知らせ電圧より大きい場合(ステップS1:NO)には、電池17が交換されたとして、AFE13を起動する(ステップS6)。すなわち、AFE動作制御部11cは、AFE13の電源をオンする。つまり、通常モードに復帰し、リクエスト信号Srqを受信可能となる。
【0038】
一方、通信制御部11は、電池電圧がお知らせ電圧以下の場合(ステップS1:YES)には、電池電圧が不動作電圧より大きいか否かを判定する(ステップS2)。通信制御部11は、電池電圧が不動作電圧より小さい場合(ステップS2:NO)には、電池切れになったとして、不動作に設定する(ステップS7)。すなわち、通信制御部11は、電子キー1自体の動作を停止する。
【0039】
一方、通信制御部11は、電池電圧が不動作電圧より大きい場合(ステップS2:YES)には、一定時間のみ、AFE13を起動する(ステップS3)。すなわち、AFE動作制御部11cは、AFE13の電源をオンする。そして、通信制御部11は、所定時間Tが経過したか否かを判定する(ステップS4)。所定時間Tは、タイマ11eによってカウントする。
【0040】
ここで、通信制御部11は、電池電圧が不動作電圧より大きい場合(ステップS2:YES)には、AFE13を起動するとともに、解錠ボタン15への操作に応じて解錠信号SulをUHF発信部14から送信する。照合ECU21は、解錠信号SulをUHF受信機24で受信して、ワイヤレス照合が成立すると、ドアロック装置34にドアロックを解錠させる。ユーザは、ドアを開けて車室内に乗り込む。このとき、照合ECU21は、ユーザが乗り込んだことで、車室内にリクエスト信号Srqを送信する。電子キー1のAFE13は、一時的に起動されているので、このリクエスト信号Srqを受信する。そして、電子キー1は、リクエスト信号Srqに応答してIDコード信号Sidを返信する。これにより、照合ECU21は、車室内照合を行い、車室内照合が成立するので、エンジンの始動操作を許可する。よって、ユーザがエンジンスイッチ33を操作することでエンジンを始動することができる。
【0041】
通信制御部11は、所定時間Tが経過すると、AFE13を停止する(ステップS5)。すなわち、AFE動作制御部11cは、AFE13の電源をオフする。
さて、本実施例では、電子キー1の電池電圧がお知らせ電圧以下となると、AFE13を停止して、車両2からのリクエスト信号Srqを受信することができなくなるために、スマート通信ができなくなる。このため、ユーザは解錠ボタン15(施錠ボタン16)を操作してドアロックを解錠することとなり、電子キー1がいつもと違うことに気付くこととなる。また、電子キー1は、解錠ボタン15(施錠ボタン16)が操作されると、所定時間TだけAFE13を起動して、車室内照合は通常通り成立させることができる。このため、エンジン始動における利便性は低下させずに済む。よって、電子キー1の異常を認識させることで、電池交換を施すことができる。
【0042】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)電池切れに陥る前に電池電圧がお知らせ電圧以下となると、無線信号の受信を停止するので、受信動作による電池17の消耗を抑制することができるとともに、ユーザに電子キー1が通常の車外におけるスマート通信によるID照合ができないことを認識させることができる。そして、解錠ボタン15又は施錠ボタン16が操作された際に無線信号の受信を所定時間Tのみ再開するので、ユーザは電子キー1が良好状態でないことを認識しつつ、通常の車内におけるスマート通信ができるので、利便性を維持することができる。よって、ユーザに電子キー1の異常を認識させることで、電池切れに陥る前に電池交換を促すことができる。
【0043】
(2)電子キー1の中で消費電圧が比較的大きいアナログフロントエンド13の動作を停止するので、電池17の消耗を効率良く抑制することができる。
(3)電池電圧がお知らせ電圧以下となると電子キー1は無線信号を受信できず、ID照合が成立しないので、ユーザは必然的に電子キー1を取り出して解錠ボタン15又は施錠ボタン16を操作することで無線信号を送信してドアロックの解錠又は施錠を行う。そして、電子キー1は解錠ボタン15又は施錠ボタン16が操作されたことによって、エンジンの始動操作が行われるのに必要な時間だけ無線信号の受信が再開されるので、ID照合が成立し、エンジンの始動ができる。よって、ドアロックの操作を手動で行うことで電池切れが近いことを認識し、スマート通信によるエンジンの始動は通常通り行うことができる。
【0044】
(4)リクエスト信号Srqの受信、或いは解錠ボタン15又は施錠ボタン16への操作があった際に電池電圧の判定を行うので、電子キー1自体が動作する直近の電池電圧を判定することができる。
【0045】
(5)ユーザは、車両2に近づいてもスマート通信が成立しないためアンロックセンサ26にタッチ操作してもドアロックを解錠することができず、電子キー1を取り出して解錠ボタン15を操作することでドアロックを解錠することができる。そして、ドアを開けて車室内に乗り込むと、通常通りスマート通信が成立してエンジンスイッチ33を操作することでエンジンを始動することができる。すなわち、車室外においてはスマート通信ができず、ワイヤレス通信でドアロックを解錠して車室内に乗り込むと、車室内においてはスマート通信が成立する。よって、このような特徴的な状態(症状)であるので、ディーラ等で電子キー1の電池切れが近いことを容易に認識することができる。
【0046】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態において、ユーザが乗車してから所定時間経過したこと、又は電池残量確定信号を受信したことを条件に電子キー1の電池電圧を検出するようにしてもよい。例えば、エンジンの始動から所定時間経過後に電子キー1の電池電圧を検出するようにしてもよい。すなわち、図4に示されるように、車両2は、エンジンが始動される(ステップS11)と、エンジン始動から所定時間が経過したか否かを確認し、所定時間が経過する(ステップS12)と、電池残量確定命令信号を車室内LF発信機23から発信する(ステップS13)。電子キー1は、車両2から発信された電池残量確定命令信号をLF受信部12で受信すると、電池電圧を検出する(ステップS14)。そして、電子キー1は、検出した電池電圧から電池残量を確定して(ステップS15)、通信制御部11のメモリ11aに電池残量として電池電圧を記憶する(ステップS16)。このようにすれば、電子キー1がワイヤレス通信やスマート通信を行って、温度が平衡して安定した状態の電池電圧を検出することができ、正確な電池電圧に基づいて電池切れをお知らせすることができる。
【0047】
・上記実施形態では、リクエスト信号Srqの受信、或いは解錠ボタン15又は施錠ボタン16への操作があった際に電池電圧の判定を行ったが、電池電圧の判定を随時行ってもよい。
【0048】
・上記実施形態では、無線信号の受信を停止するためにAFE13を停止(電源オフ)したが、例えば受信自体を停止してもよい。すなわち、無線信号の受信に伴う処理を停止する。
【0049】
・上記実施形態において、電子キーシステム3で使用する無線信号の周波数は、必ずしもLFやUHFに限定されず、これら以外の周波数が使用可能である。また、車両2から電子キー1に無線信号を発信するときの周波数と、電子キー1から車両2に無線信号を返信するときの周波数とは、必ずしも異なるものに限定されず、これらを同じ周波数としてもよい。
【0050】
・上記構成において、LF発信機22,23の位置は任意に変更可能である。
・上記構成において、LF発信機22,23の数量は任意に変更可能である。
・上記実施形態では、ドアロックの施錠と解錠とに対応したロックセンサ25及びアンロックセンサ26を設けたが、1つのセンサのみ設けて、操作される度に施錠と解錠とを行ってもよい。
【0051】
・上記実施形態では、第1通信は、スマート通信に限定されず、例えば近距離無線通信でもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…電子キー、2…車両、3…電子キーシステム、11…通信制御部、11a…メモリ、11b…電池電圧判定手段としての電池電圧判定部、11c…受信停止手段及び受信再開手段としてのAFE動作制御部、11d…操作検出手段としてのボタン操作検出部、11e…タイマ、12…LF受信部、13…アナログフロントエンド(AFE)、14…UHF発信部、15…操作手段としての解錠ボタン、16…操作手段としての施錠ボタン、17…電池、21…照合ECU、22…車室外LF発信機、23…車室内LF発信機、24…UHF受信機、30…車内LAN、31…メインボディECU、32…エンジンECU、33…エンジンスイッチ、34…ドアロック装置、Sid…IDコード信号、Sl…施錠信号、Srq…リクエスト信号、Sul…解錠信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両からの通信を契機に前記車両との無線通信を開始する第1通信と、自身からの通信を契機に前記車両との無線通信を開始する第2通信とのいずれかでID照合が可能であり、当該ID照合が成立することを条件に前記車両に設置された機器の操作が可能となる電子キーにおいて、
電源を供給する電池の電圧が所定値以下であるか否かを判定する電池電圧判定手段と、
前記電池電圧判定手段が前記所定値以下であると判定した場合に、前記第2通信を有効のままとするも、前記第1通信の受信動作を停止する受信停止手段と、
前記第2通信の実行時に操作される操作手段が操作されたことを検出する操作検出手段と、
前記操作検出手段が操作を検出した際に一定時間のみ前記第1通信の受信動作を再開する受信再開手段と、を備える
ことを特徴とする電子キー。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーにおいて、
前記受信停止手段は、無線信号を受信するアナログフロントエンドの動作を停止する
ことを特徴とする電子キー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーにおいて、
前記機器は、ドアロック及びエンジンであって、
前記操作手段は、前記ドアロックの施解錠操作を行うもので、
前記一定時間は、前記エンジンの始動操作を可能とする前記ID照合を行うのに必要な時間である
ことを特徴とする電子キー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、
前記電池電圧判定手段は、前記無線の受信、又は前記操作手段への操作があったことをトリガとして電池電圧の判定を行う
ことを特徴とする電子キー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、
前記車両に乗車してから所定時間経過後、又は前記車両から電池残量を確定するように発信される電池残量確定信号を受信した際に、電池電圧を検出し、
前記電池電圧判定手段は、判定以前に検出した前記電池電圧に基づいて電池電圧の判定を行う
ことを特徴とする電子キー。
【請求項6】
車両からの通信を契機に前記車両と電子キーとが無線通信を開始する第1通信と、前記電子キーからの通信を契機に前記車両と前記電子キーとが無線通信を開始する第2通信とのいずれかでID照合が可能であり、当該ID照合が成立することを条件に前記車両に設置された機器の操作が可能となる電子キーシステムにおいて、
電源を供給する電池の電圧が所定値以下であるか否かを判定する電池電圧判定手段と、
前記電池電圧判定手段が前記所定値以下であると判定した場合に、前記第2通信を有効のままとするも、前記第1通信の受信動作を停止する受信停止手段と、
前記第2通信の実行時に操作される操作手段が操作されたことを検出する操作検出手段と、
前記操作検出手段が操作を検出した際に一定時間のみ前記第1通信の受信動作を再開する受信再開手段と、を前記電子キーに備える
ことを特徴とする電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−197576(P2012−197576A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61370(P2011−61370)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】