説明

電子キー及び電子キーシステム

【課題】特定車両のユーザが該車両のキーを所持した状態で該車両から離れた場所にいる場合であっても、他者に該車両を使用させることを可能にすることを目的とする。
【解決手段】電子キー1,2が、携帯通信端末3,4との間でキー情報を送受信することが可能な近距離無線通信機能を有している。送信者A側の電子キー1が有する特定車両6のキー情報を、近距離無線通信により送信者A側の携帯通信端末3で受信する。次に、送信者A側の携帯通信端末3によって受信者B側の携帯通信端末4にキー情報を送信する。そして、受信者B側の携帯通信端末4が受信したキー情報を、近距離無線通信により受信者B側の電子キー2に送信することで、該受信者B側の電子キー2を特定車両6のキーとして使用可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のキーとして用いられる電子キー及び電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のキーとして電子キーを用いる技術が開発されている。電子キーは、車両との間での無線通信によってドアの施解錠やエンジン始動等を行なう。
【0003】
特許文献1には、車両用の電子キーシステムにおいて、通常、電子キーとして用いられる携帯機の代わりに、携帯電話を電子キーとして用いる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−132085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特定車両のユーザが、該車両から離れた場所にいるときに、家族や友人等の他者に対して該車両の使用権限を与えたいケースがある。しかしながら、遠方にいるユーザが該車両のキーを所持している場合は、該キーを他者に貸し渡すことが困難であるため、他者に該車両を使用させることができないといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、特定車両のユーザが該車両のキーを所持した状態で該車両から離れた場所にいる場合であっても、他者に該車両を使用させることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子キーは、携帯通信端末との間でキー情報を送受信することが可能な近距離無線通信機能を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、特定車両のユーザが、該特定車両の電子キーのキー情報を近距離無線通信により自己が所持する携帯通信端末で受信することが可能となる。自己が所持する携帯通信端末で該キー情報を受信すれば、特定車両のユーザは、他者の携帯通信端末に該キー情報を送信することができる。さらに、本発明によれば、携帯通信端末によって特定車両の電子キーのキー情報を受信した他者が、該キー情報を近距離無線通信により自己が所持する電子キーに送信することが可能となる。自己が所持する電子キーに該キー情報を送信すれば、他者は、該電子キーを特定車両の電子キーとして使用することができる。
【0009】
本発明に係る電子キーシステムは、
送信者側及び受信者側の携帯通信端末と、
前記携帯通信端末との間でキー情報を送受信することが可能な近距離無線通信機能を有する、送信者側及び受信者側の電子キーと、
を含んで構成される電子キーシステムであって、
送信者側の電子キーが有する特定車両のキー情報を、近距離無線通信により送信者側の携帯通信端末で受信し、
送信者側の携帯通信端末によって、前記特定車両のキー情報を受信者側の携帯通信端末に送信し、
受信者側の携帯通信端末が受信した前記特定車両のキー情報を、近距離無線通信により
受信者側の電子キーに送信することで、該受信者側の電子キーを前記特定車両のキーとして使用可能にすることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、受信者(他者)が所持する電子キーを特定車両の電子キーとして使用することが可能となる。また、本発明に係るシステムは、従来の電子キーシステムを備えた車両及び従来の近距離無線通信機能を有する携帯通信端末を用いれば、電子キーに近距離無線通信機能を付加するのみで実現することができる。そのため、本発明に係るシステム用の新たな機器を車両に装備したり、本発明に係るシステム用の携帯通信端末を別途用意したりする必要がない。
【0011】
本発明に係るシステムは、送信者と特定車両とが所定距離以上離れているか否かを判別する判別手段と、該判別手段によって送信者と特定車両とが所定距離以上離れていないと判定された場合、受信者側の電子キーが特定車両のキーとして使用されるのを禁止するキー使用禁止手段と、をさらに備えてもよい。
【0012】
また、本発明に係るシステムは、事前に認証された受信者側の携帯通信端末以外への、送信者側の携帯通信端末からの特定車両のキー情報の送信を禁止する送信禁止手段をさらに備えてもよい。
【0013】
これらによれば、本発明に係るシステムのセキュリティ性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定車両のユーザが該車両のキーを所持した状態で該車両から離れた場所にいる場合であっても、他者に該車両を使用させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例に係る電子キーシステムの概略構成を説明するための図である。
【図2】実施例に係る電子キーの概略構成を示すブロック図である。
【図3】実施例に係る電子キーシステムの利用時に各機器において行なわれる動作を示すフローチャートである。
【図4】実施例に係る第一付加機能の制御フローを示すフローチャートである。
【図5】実施例に係る第二付加機能の制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
<実施例>
[電子キー及び電子キーシステムの概略構成]
図1は、本実施例に係る電子キーシステムの概略構成を説明するための図である。図2は、本実施例に係る電子キーの概略構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施例に係る電子キーシステムは、図1に示すように、ユーザAが所持する電子キー1及び携帯通信端末3と、ユーザBが所持する電子キー2及び携帯通信端末4とを含んで構成されている。
【0019】
携帯通信端末3,4は所謂携帯電話機である。携帯通信端末3,4はサーバ5を介して他の端末との間で電子メールの送受信が可能である。また、該携帯通信端末3,4は、NFC(Near Field Communication)機能を有している。該NFC機能は、Felica(登録商
標)やMIFARE(登録商標)といった非接触ICカード通信技術によって実現される。
【0020】
電子キー1,2は、車両との間でIDコード(本発明に係るキー情報に相当)の通信を行なうことにより、スマートエントリー・スタートシステムを実現する。本実施例に係る電子キー1,2は、図2に示すように、リクエスト信号受信部11、IDコード送信部12、NFC通信部13、及びマイコン14を備えている。
【0021】
リクエスト信号受信部11は、車両から発信されるリクエスト信号を受信すると、該リクエスト信号をマイコン14に入力する。マイコン14は、リクエスト信号が入力されると、IDコードをIDコード送信部12に出力する。IDコード送信部12は、マイコン14から出力されたIDコードを車両に送信する。送信されたIDコードが、車両に予め記憶されているIDコードと一致すると、ドアの施解錠やエンジン始動が実行又は許可される。
【0022】
NFC通信部13は、携帯通信端末3,4との間でNFCによる通信を行なう通信部である。NFC通信部13は、マイコン14からIDコードを取得し、該取得したIDコードをNFCによって携帯通信端末に送信することができる。また、NFC通信部13は、携帯通信端末からNFCによってIDコードを受信し、該受信したIDコードをマイコン14に入力することができる。
【0023】
[システムの利用方法]
本実施例に係る電子キーシステムの利用方法について図1、3に基づいて説明する。図3は、本実施例に係る電子キーシステムの利用時に各機器1〜4において行なわれる動作を示すフローチャートである。
【0024】
本実施例においては、各電子キー1,2には、元々、それぞれ別々の車両に対応したIDコードが記憶されている。つまり、電子キー1には、ユーザAが所有する車両(以下、特定車両と称する場合もある)6に対応したIDコードが記憶されており、電子キー2にはユーザBが所有する車両(即ち、特定車両6とは異なる車両)に対応したIDコードが記憶されている。従って、このままでは、ユーザBは、電子キー2を特定車両6のキーとして使用することはできない。そして、ここでは、ユーザAが、電子キー1を所持したまま特定車両6から遠く離れた場所にいるときに、ユーザBに特定車両6の使用を許可する場合を想定する。
【0025】
先ず、ユーザAは、自己が所持する電子キー1と携帯通信端末3との間でNFCにより特定車両6に対応したIDコードの送受信を行なう。これにより、電子キー1からIDコードが送信され(ステップS101)、携帯通信端末3によって該IDコードが受信される(ステップS102)。次に、ユーザAは、携帯通信端末3によって、ユーザBが所持する携帯通信端末4に電子メールによりIDコードを送信する(ステップS103)。
【0026】
携帯通信端末3から電子メールにより送信されたIDコードは、ユーザBが所持する携帯通信端末4に受信される(ステップS104)。そして、ユーザBは、自己が所持する携帯通信端末4と電子キー2との間でNFCにより該IDコードの送受信を行なう。これにより、携帯通信端末4からIDコードが送信され(ステップS105)、電子キー2によって該IDコードが受信される(ステップS106)。その結果、電子キー2を特定車両6のキーとして使用することが可能となる。
【0027】
[本実施例に係るシステムの効果]
本実施例に係る電子キーシステムによれば、ユーザAが電子キー1を所持したまま特定車両6から遠く離れた場所にいるときであっても、ユーザBに特定車両6を使用させるこ
とが可能となる。
【0028】
また、本実施例に係る電子キーシステムには、従来のスマートエントリー・スタートシステムを備えた車両および従来のNFC機能を有する携帯電話機を用いることができる。そのため、従来の電子キーに、携帯電話機との間でNFCを行うことができる機能を付加すれば、本実施例に係る電子キーシステムを実現することができる。そのため、本システム実現のためのコストの増加を抑制することができる。
【0029】
尚、上記においては、携帯通信端末と電子キーとの間のIDコードの通信はNFCを用いて行なうこととしたが、この通信には近距離無線通信であればどのような通信技術を用いてもよく、例えば、Bluetooth(登録商標)や無線LANといった通信技術を用いるこ
ともできる。
【0030】
本実施例においては、ユーザAが本発明に係る送信者に相当し、ユーザBが本発明に係る受信者に相当する。また、車両6が本発明に係る特定車両に相当する。
【0031】
[付加機能]
本実施例に係る電子キーシステムは、セキュリティ性向上のための付加機能をさらに備えてもよい。例えば、ユーザAと特定車両6とが所定距離より離れている場合にのみ、ユーザBの電子キー2を特定車両6のキーとして使用することを許可するようにしてもよい(以下、このような機能を第一付加機能と称する)。ここで、所定距離は、ユーザAが他者(ユーザB)に特定車両6を使用させようとした場合、本システムを利用する必要があると判断できる距離として予め定められる距離である。
【0032】
図4は、第一付加機能を車両6のスマートエントリー・スタートシステム用のECUによって実現した場合の制御フローを示すフローチャートである。本フローでは、先ず、車両6とユーザAとの間の距離Laが取得される(ステップS201)。該距離Laは、例えば、車両6と携帯通信端末3とについてのGPS情報に基づいて推定することができる。次に、取得された距離Laが所定距離La0以上であるか否かが判別される(ステップS202)。尚、車両6と電子キー1とが、これらの間での電波通信が可能な範囲内に存在しない場合に、車両6とユーザAとの間の距離Laが所定距離La0以上であると判定するようにしてもよい。
【0033】
そして、距離Laが所定距離La0以上であると判定された場合、車両6のECUによって、電子キー1以外のキーを該車両6のキーとして使用することが許可される(ステップS203)。一方、距離Laが所定距離La0より短いと判定された場合、車両6のECUによって、電子キー1以外のキーを該車両6のキーとして使用することが禁止される(ステップS204)。
【0034】
また、携帯通信端末間で事前に認証を行い、携帯通信端末3から他の端末に電子キー1のIDコードを送信する際に、事前に認証された端末以外への送信を禁止するようにしてもよい(以下、このような機能を第二付加機能と称する)。事前の認証は、例えば、携帯通信端末3に記憶された他の端末の電子メールアドレスに対して行なってもよい。
【0035】
図5は、第二付加機能を携帯通信端末3のMPUによって実現した場合の制御フローを示すフローチャートである。尚、本フローにおけるステップS102及びS103は、図3(b)に示すフローチャートと同様のステップである。
【0036】
本フローでは、先ず、電子キー1から送信されたIDコードが受信される(ステップS102)。次に、該IDコードの送信先の携帯通信端末が指定される(ステップS301
)。次に、指定された端末が事前に認証されたものであるか否かが判別される(ステップS302)。
【0037】
指定された端末が認証されたものであると判定された場合は、IDコードの送信が許可され(ステップS303)、該端末へのIDコードの送信が行なわれる(ステップS103)。一方、指定された端末が認証されていないものであると判定された場合は、IDコードの送信が禁止される(ステップS304)。この場合、指定された端末へのIDコードの送信は行なわれない。
【0038】
また、本実施例に係る電子キーシステムにおいては、電子キー1から特定車両6に対応したIDコードをユーザAの携帯通信端末3に送信する際、または、該IDコードをユーザAの携帯通信端末3から他の端末に送信する際に、該IDコードに使用時間や使用回数の制限を付加してもよい。これによっても、本実施例に係る電子キーシステムのセキュリティ性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1,2・・・電子キー
13・・NFC通信部
3,4・・・携帯通信端末(携帯電話機)
5・・・サーバ
6・・・車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯通信端末との間でキー情報を送受信することが可能な近距離無線通信機能を有する電子キー。
【請求項2】
送信者側及び受信者側の携帯通信端末と、
前記携帯通信端末との間でキー情報を送受信することが可能な近距離無線通信機能を有する、送信者側及び受信者側の電子キーと、
を含んで構成される電子キーシステムであって、
送信者側の電子キーが有する特定車両のキー情報を、近距離無線通信により送信者側の携帯通信端末で受信し、
送信者側の携帯通信端末によって、前記特定車両のキー情報を受信者側の携帯通信端末に送信し、
受信者側の携帯通信端末が受信した前記特定車両のキー情報を、近距離無線通信により受信者側の電子キーに送信することで、該受信者側の電子キーを前記特定車両のキーとして使用可能にする電子キーシステム。
【請求項3】
送信者と前記特定車両とが所定距離以上離れているか否かを判別する判別手段と、
該判別手段によって送信者と前記特定車両とが所定距離以上離れていないと判定された場合、受信者側の電子キーが前記特定車両のキーとして使用されるのを禁止するキー使用禁止手段と、
をさらに備えた請求項2に記載の電子キーシステム。
【請求項4】
事前に認証された受信者側の携帯通信端末以外への、送信者側の携帯通信端末からの前記特定車両のキー情報の送信を禁止する送信禁止手段をさらに備えた請求項2または3に記載の電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−41709(P2012−41709A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182875(P2010−182875)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】