説明

電子キー登録システム

【課題】電子キーを紛失しても暗号鍵のセキュリティ性を確保することができ、紛失キーの代わりに新規キーを車両に追加登録可能とする場合でも、車両側のメモリを予め大きくとっておかずに済ますことができる電子キー登録システムを提供する。
【解決手段】車両1に登録された電子キー2を紛失したとき、紛失した電子キーの代わりに新規キーを車両1に登録する。このとき、ユーザは、車両1において登録開始操作を行う。登録開始判断部24は、車両1で登録開始操作があったことを確認すると、車両1をキー登録モードにする。そして、登録実行部25は、紛失キーのIDコードをそのまま使用しつつ、車両登録済みの暗号鍵の最大値に「1」を加算した値を、新規キーの暗号鍵として車両1に登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーのIDコードを車両に登録する電子キー登録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、電子キーからIDコードを車両に無線送信してキー照合を実行する電子キーシステムが搭載されている。この種の電子キーシステムでは、マスターキーのみならず複数のサブキーをユーザに配布するために、通常、複数の電子キーが車両に登録されている。
【0003】
ところで、電子キーシステムでは、例えば第三者が電波を傍受してIDコードを不正に読み取る可能性も否定できない。よって、このような電子キーシステムでは、無線通信に暗号通信を使用することが多い(例えば特許文献1等参照)。暗号通信は、送信するデータを暗号鍵に通して同データを暗号化して、相手側に送信するものである。暗号通信には、例えばチャレンジレスポンス認証がある。
【0004】
図8〜図11に示すように、複数のIDコードが登録された車両において、車両のメモリには、IDコードと暗号鍵とを対応付けて登録するための記憶領域81が設けられる。車両にIDコードを追加登録するときは、追加IDコードと、同IDコードで使用する暗号鍵とが対応付けられて、車両の記憶領域81に順番に登録されていく。
【0005】
また、暗号通信には、図8に示すように、車両に登録された各IDコードで同じ暗号鍵を使用する暗号通信(以降、鍵共通の暗号通信と言う)がある。この場合、記憶領域81には、全てのIDコードにおいて共通の暗号鍵Kcが登録される。
【0006】
しかし、鍵共通の暗号通信の場合、図9に示すように、ある1つの電子キー(図9ではID2)を紛失したときは、この紛失キーを使用できなくする必要があり、暗号鍵Kcを使用できなくする必要がある。しかし、この対処をとると、紛失していない電子キーも使用することができなるので、結果として、紛失していない電子キーと車両との暗号鍵Kcを全て新しいものに変更する作業が必要となる。よって、この変更作業が面倒に感じる。
【0007】
そこで、他の暗号通信として、図10に示すように、車両に登録された各電子キーに各々異なる暗号鍵K1〜K8を持たせた暗号通信(いわゆる、鍵非共通の暗号通信)を使用することも想定される。この場合、記憶領域81には、各IDコードにおいて各々異なる暗号鍵が登録されている。
【0008】
この非共通暗号鍵通信を使用すれば、仮に1つの電子キー(図11ではID2)を紛失したとしても、その紛失キーの暗号鍵K2は紛失キーでのみ有効な鍵であるので、他の電子キーの暗号鍵は継続使用しても何ら問題はない。よって、暗号鍵の不正解読に対するセキュリティ性を確保することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−49759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、非共通暗号鍵通信の場合、紛失した電子キーのID2及び暗号鍵K2は、永久に使用することができない。よって、車両で使用できる電子キーの本数が少なくなってしまう問題があった。また、この場合、使用可能な電子キーの本数を多くとろうとすると、その分だけ記憶領域81の容量を大きくとらざるを得ず、車両側で用意する記憶領域81が増加してしまう問題があった。
【0011】
本発明の目的は、電子キーを紛失しても暗号鍵のセキュリティ性を確保することができ、紛失キーの代わりに新規キーを車両に追加登録可能とする場合でも、車両側のメモリを予め大きくとっておかずに済ますことができる電子キー登録システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記問題点を解決するために、本発明では、車両に複数の電子キーのIDを登録することにより、1台の該車両に対し複数の電子キーを配布し、前記電子キーが前記車両と通信するとき、各々の電子キーごとに設定された暗号鍵を使用する鍵非共通の暗号通信にて通信を実行し、前記電子キーを紛失してしまったとき、この紛失キーの代わりに新規キーを登録することが可能な電子キー登録システムであって、前記車両に登録された前記電子キーを変更登録するキー登録モードに移行すべきか否かを判断する判断手段と、前記キー登録モードの際、消去対象の前記電子キーの記憶領域をそのまま使用しつつ、該領域の暗号鍵を新しいものに変更登録する登録手段とを備えたことを要旨とする。
【0013】
本発明の構成によれば、電子キーの紛失時に車両に新規キーを登録する際、新規キーの暗号鍵は、紛失キーで使用していた暗号鍵とは違う新しいものに変更登録される。このため、紛失キーから暗号鍵が不正解読されても、その暗号鍵は紛失キーでのみ使用可能なものであるので、車両に登録された他の電子キーの暗号鍵まで解読されたことにはならない。よって、暗号通信のセキュリティ性が確保される。また、新規キーの登録時、紛失キーが書き込まれていた記憶領域をそのまま使用して新規キーの暗号鍵を上書きするので、電子キーの追加登録のために記憶領域を予め大きくとっておく必要もない。
【0014】
本発明では、前記登録手段は、車両登録済みの鍵の最大値に設定値を加算した値を、新規暗号鍵として前記車両に登録することを要旨とする。この構成によれば、車両登録済みの鍵の最大値に設定値を加算するという簡素な処理によって、暗号鍵を新しいものに変更することが可能となる。
【0015】
本発明では、前記判断手段は、前記車両において登録開始操作があったことを検出すると、前記車両を前記キー登録モードにし、前記登録手段は、前記車両が前記キー登録モードになったとき、自ら暗号鍵の変更登録を実行することを要旨とする。この構成によれば、車両で所定の登録開始操作が実行されたとき、電子キー登録システムがキー登録モードに切り換わる。よって、ユーザによる所定操作があってシステムがキー登録モードに入るので、キー登録モードへの切り換えを精度よく行うことが可能となる。
【0016】
本発明では、前記判断手段は、前記車両と前記電子キーとがID照合の通信を行っている際、前記電子キーからの信号の中に未登録の暗号鍵があることを確認すると、前記車両を前記キー登録モードにし、前記登録手段は、前記車両が前記キー登録モードとなったとき、前記電子キーから受信した前記暗号鍵を基に、変更登録を実行することを要旨とする。この構成によれば、車両と電子キーとがID照合の通信を行っているとき、電子キー登録システムが自動でキー登録モードに切り換わって、新規暗号鍵が車両に登録される。よって、新規暗号鍵を車両に登録するとき、ユーザに特別な登録作業を課す必要がないので、利便性をよくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子キーを紛失しても暗号鍵のセキュリティ性を確保することができ、紛失キーの代わりに新規キーを車両に追加登録可能とする場合でも、車両側のメモリを予め大きくとっておかずに済ますことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の電子キー登録システムのブロック図。
【図2】(a),(b)はスマート照合の通信シーケンスを示すタイムチャート。
【図3】(a)は電子キーを紛失した様子を模式的に示す概略図、(b)は新規キーを発行してもらうときの概略図。
【図4】メモリ内に所定キーを紛失したときの態様を示す説明図。
【図5】メモリ内の紛失キーの記憶領域に新規暗号鍵を登録するときの説明図。
【図6】新規暗号鍵を車両に登録する際に実行されるフローチャート。
【図7】第2実施形態の新規暗号鍵を車両に登録する際に実行されるフローチャート。
【図8】従来の鍵共通の暗号通信のIDコード及び暗号鍵の登録態様を示す表。
【図9】メモリ内において所定キーを紛失したときの態様を示す説明図。
【図10】鍵非共通の暗号通信のIDコード及び暗号鍵の登録態様を示す表。
【図11】メモリ内において所定キーを紛失したときの態様を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した電子キー登録システムの第1実施形態を図1〜図6に従って説明する。
【0020】
図1に示すように、車両1には、車両1からの通信を契機として電子キー2とID(Identification)照合を行うキー操作フリーシステム3が設けられている。キー操作フリーシステム3は、実際のキー操作を行うことなくドア開閉の一連の操作の中でドアロックが自動で施解錠される乗降車機能と、車内に設置されたエンジンスイッチ4を単に押し操作するのみでエンジンを始動停止することが可能なエンジン始動停止機能とがある。
【0021】
この場合、車両1には、電子キー2との間でID照合を実行するキー照合装置5と、ドアロック動作を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらが車内バス8によって接続されている。キー照合装置5には、ID照合の動作を管理する照合ECU(Electronic Control Unit)9が設けられている。照合ECU9のメモリ10と電子キー2のメモリ11とには、電子キー2のIDコードが登録されている。
【0022】
本例の車両1には、マスターキーのみならず、複数(本例は8本)のサブキーが登録可能となっている。このため、照合ECU9のメモリ10には、車両1に登録可能なキー数のキー番号が割り振られ、各々のキー番号ごとにID照合に関係するデータの記憶領域が設けられている。本例の場合、キー番号が1〜8まで割り振られ、メモリ10にID1〜ID8まで8つのIDコードが登録されている。なお、ID1〜ID8は、メモリ10に予め登録されている。
【0023】
照合ECU9には、車外数mの範囲にLF(Low Frequency)帯の電波を送信可能な車外発信機12と、車内全域にLF電波を送信可能な車内発信機13と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な車両受信機14とが接続されている。車外発信機12及び車内発信機13は、電子キー2にID返信要求としてリクエスト信号Srqを断続的に送信して、スマート通信を実行する。
【0024】
また、車両1と電子キー2とのID照合は、IDコードの照合のみならず、認証のセキュリティ性を確保するために、暗号通信としてチャレンジレスポンス認証も同時に実行する。このため、照合ECU9のメモリ10と、電子キー2のメモリ11とには、チャレンジレスポンス認証用の暗号鍵が各々登録されている。
【0025】
本例のチャレンジレスポンス認証は、各電子キー2において暗号鍵が異なる鍵非共通の暗号通信となっている。よって、照合ECU9のメモリ10に登録された各IDコードには、IDごとに異なる暗号鍵が登録されている。本例の場合、ID1の暗号鍵がKc、ID2の暗号鍵がKc+1、ID3の暗号鍵がKc+2、ID4の暗号鍵がKc+3、ID5の暗号鍵がKc+4、ID6の暗号鍵がKc+5、ID7の暗号鍵がKc+6、ID8の暗号鍵がKc+7に設定されている。
【0026】
図2に示すように、照合ECU9は、車両駐車時、車外発信機12からウェイク信号15を断続的に送信させる。このとき、電子キー2がウェイク信号15を受信すると、車外スマート通信(車外通信)が開始される。電子キー2は、このウェイク信号15により起動すると、アック信号16をUHF電波により送信する。照合ECU9は、アック信号16を車両受信機14で受信すると、ビークルID信号17をLF電波により送信する。ビークルID信号17には、車両IDが含まれている。電子キー2は、ビークルID信号17を受信するとビークルID照合を行い、ビークルID照合が成立すれば、アック信号18をUHF電波により送信する。
【0027】
続いて、照合ECU9は、電子キー2とチャレンジレスポンス認証を実行するために、チャレンジ信号19をLF電波により送信する。チャレンジ信号19には、送信の度に毎回値が異なるチャレンジコードと、車両1の何番目の登録キーかを確認するキー番号とが含まれている。
【0028】
図2(a)に示すように、照合ECU9は、まずキー番号1を含むチャレンジ信号19aを送信する。このとき、電子キー2は、チャレンジ信号19aを受信すると、まずキー番号照合を行い、電子キー2がマスターキーであれば、キー番号1でキー番号照合が成立する。マスターキーは、キー番号1にてキー番号照合成立を確認すると、チャレンジコードを自身の暗号鍵Kcに通してレスポンスコードを生成し、このレスポンスコードとID1とを含むレスポンス信号20を、UHF電波により送信する。
【0029】
一方、図2(b)に示すように、電子キー2がサブキーであれば、最初にキー番号1を含むチャレンジ信号19aを受信しても、キー番号1ではキー番号照合成立を認識しないので、レスポンス応答を返さない。よって、照合ECU9は、キー番号1を含むチャレンジ信号19aを送信した後、一定時間内にレスポンス信号20を受信できないので、今度はキー番号2を含むチャレンジ信号19bを送信する。このとき、サブキーがキー番号2であれば、キー番号照合が成立する。よって、サブキーは、キー番号2にてキー番号照合が成立することを確認すると、チャレンジコードを自身の暗号鍵Kc+1に通してレスポンスコードを生成し、このレスポンスコードとID2とを含むレスポンス信号20を車両1に送信する。
【0030】
なお、照合ECU9は、キー番号を変えてチャレンジ信号19を再送信する動作を、電子キー2からレスポンス信号20を受信するまでキー番号順に繰り返し実行する。本例の照合ECU9は、キー番号1〜8までチャレンジ信号19を送信可能である。
【0031】
照合ECU9は、チャレンジ信号19を電子キー2に送信する際、自身が持つ暗号鍵にチャレンジコードを通して、自らもレスポンスコードを演算する。但し、照合ECU9は、レスポンス信号20を返信してきた電子キー2と同じ暗号鍵にてレスポンスコードを演算する。そして、照合ECU9は、電子キー2からレスポンス信号20を受信すると、レスポンスコード及びIDコードを照合する。照合ECU9は、レスポンス照合及びIDコード照合が共に成立することを確認すると、車外のスマート照合(車外照合)を成立とし、ドアロック装置6によるドアロック施解錠を許可又は実行させる。
【0032】
また、電子キー2が車内に位置するときには、車外発信機12に代えて車内発信機13からウェイク信号15が送信され、車内のスマート通信(車内通信)が実行される。このとき、照合ECU9は、車外照合と同様の手順で車内のスマート照合(車内照合)を実行し、各項目の照合が全て成立することを確認すると、車内照合を成立とし、エンジンスイッチ4による車両電源遷移操作及びエンジン始動操作を許可する。
【0033】
図1に示すように、キー操作フリーシステム3には、例えば電子キー2を紛失するなどしたときに、図3に示す紛失キー21に代えて新規キー22を車両1に追加登録可能とする電子キー登録システム23が設けられている。図4及び図5に示すように、本例の電子キー登録システム23は、消去対象の紛失キー21の代わりに新規キー22を車両1に登録するとき、車両登録済みの暗号鍵の最大値に「1」を加算した値を新規暗号鍵として、紛失キー21のIDコードの記憶領域に追加登録するものである。
【0034】
この場合、照合ECU9には、車両1に新規キー22を登録するキー登録作業を開始するか否かを判断する登録開始判断部24が設けられている。本例の場合、車両1において所定の登録開始操作が開始されたとき、キー登録作業が開始される。よって、登録開始判断部24は、登録開始操作を検出したとき、照合ECU9の動作状態をキー登録モードに移行させる。登録開始操作には、例えば車両機器(例えば、ドアハンドルやドアハンドルのロックボタン等)を所定順序及び回数で操作する例がある。なお、登録開始判断部24が登録手段に相当する。
【0035】
照合ECU9には、車両1がキー登録モードの際、紛失キー21のIDに新規暗号鍵を登録する登録実行部25が設けられている。新規キー22の登録は、車両1をキー登録モードに移行させた後、例えば車両機器を操作することで紛失キー21のキー番号(ID)を指定する。よって、登録実行部25は、紛失キー21のキー番号の指定を入力すると、車両登録済みの暗号鍵の最大値に「1」を加算した値を新規暗号鍵として、変更指定のあったキー番号の暗号鍵の記憶領域に上書きする。なお、登録実行部25が登録手段に相当する。
【0036】
次に、本例の電子キー登録システム23の動作を、図3〜図6を用いて説明する。
例えば、図3(a)に示すように、ID2及び暗号鍵Kc+1を有する電子キー2を紛失したとする。このとき、図3(b)に示すように、ユーザは例えばディーラ等に出向いて、紛失キー21の代わりの電子キー2として、新規キー22を発行してもらう。新規キー22には、紛失キー21と同じID2と、車両登録済みの暗号鍵の最大値Kc+7に「1」を加算した値の暗号鍵Kc+8とが登録されている。
【0037】
続いて、今度は車両1側のキー登録作業に移行する。以降の作業は、図6のフローチャートを用いて説明する。ステップ101において、登録開始判断部24は、登録開始操作があったか否かを判断する。このとき、登録開始操作があれば、ステップ102に移行して車両1の動作状態がキー登録モードに移行し、登録開始操作がなければ、ステップ101で待機する。
【0038】
ステップ102において、登録実行部25は、登録変更対象のキー番号(ID)を入力する。このとき、ユーザは、車両1をキー登録モードに変更後、登録変更したいキー番号(ここでは、キー番号2)を、車両機器を使用して車両1に入力する。よって、登録実行部25は、このときの入力情報から登録変更対象のキー番号を確認する。
【0039】
ステップ103において、登録実行部25は、車両登録済みの暗号鍵の最大値Kc+7に「1」を加算した値Kc+8を、ID2(紛失キー21)の新規暗号鍵としてメモリ10に登録する。これにより、紛失キー21の代わりに、新規キー22が車両1に登録される。
【0040】
以上により、本例においては、電子キー2の紛失時に紛失キー21の代わりに新規キー22を車両1に登録するとき、紛失キー21のIDコードはそのまま使用するとともに暗号鍵を変更する。このため、仮に紛失キー21から暗号鍵を不正解読されても、その暗号鍵は鍵変更以降使用できないものとなっているので、暗号通信のセキュリティ性が確保される。また、新規キー22を車両1に変更登録する際、消去対象の紛失キー21のIDコードはそのまま使用し、暗号鍵のみ上書きするので、IDコード及び暗号鍵を追加登録可能としても、メモリ10の記憶領域が最小限で済む。
【0041】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)紛失キー21の代わりに新規キー22を車両1に登録するとき、紛失キー21のIDコードはそのまま使用し、車両登録済みの暗号鍵の最大値に「1」を加算した値を、暗号鍵として車両1に登録する。よって、暗号鍵のセキュリティ性を確保することができるとともに、新規暗号鍵を車両1に追加登録可能とするにしても、メモリ10の記憶領域を予め大きくとっておかずに済ますことができる。
【0042】
(2)車両登録済みの鍵の最大値に「1」を加算した値を新規暗号鍵として車両1に登録するので、車両登録済みの鍵の最大値に単に1を加算するという簡素な処理によって、暗号鍵を新しいものに変更することができる。
【0043】
(3)車両1で所定の登録開始操作が実行されたとき、車両1がキー登録モードに切り換わる。よって、ユーザの切り換え意志があったときに車両1がキー登録モードに入るので、ユーザが意図しないところで車両1がキー登録モードに切り換わってしまうことを防止することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図7に従って説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態における車両1への新規キー22の登録方式を変更した実施例であり、他の基本的な構成は同じである。よって、第1実施形態と同一部分は同じ符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。なお、本例の場合も、ID2及び暗号鍵Kc+1の電子キー2を紛失した場合を例に挙げて説明する。
【0045】
ステップ201において、例えばディーラ等に出向いて、新規キー22を発行する。
ステップ202において、車両1が電子キー2とスマート照合を実行したとき、通信が確立した電子キー2の暗号鍵が、車両1に登録済みの暗号鍵か否かを確認する。つまり、登録開始判断部24は、スマート照合時、通信中の電子キー2のIDコードの暗号鍵が、車両1に登録された暗号鍵と一致するか否かを確認する。このとき、車両1に登録済みの電子キー2でスマート照合を実行すれば、暗号鍵が登録済みのものと一致するので、ステップ203に移行する。一方、新規キー22でスマート照合を実行すれば、暗号鍵は未登録であるので、登録済みの暗号鍵と一致せず、ステップ204に移行する。
【0046】
ステップ203において、車両1は、通常のスマート動作を実行する。よって、スマート照合が例えば車外照合であれば、車外照合が成立したとき、ドアロックの施解錠が許可又は実行される。
【0047】
ステップ204において、スマート照合時に電子キー2から取得した暗号鍵が新規暗号鍵か否かを確認する。このとき、登録開始判断部24は、取得した暗号鍵がメモリ10に未登録で、かつ新規暗号鍵が、車両登録済みの鍵の最大値に「1」を加算した鍵となっているかを確認する。ここで、取得した新規暗号鍵が正しくなければ、ステップ205に移行し、正しい正規暗号鍵であれば、ステップ206に移行する。
【0048】
ステップ205において、車両1は、キー登録モードに移行せず、処理を終了する。
ステップ206において、車両1は、キー登録モードに移行する。つまり、登録実行部25がキー登録作業を開始する。
【0049】
ステップ207において、登録実行部25は、車両登録済みの暗号鍵の最大値Kc+7に「1」を加算した値Kc+8を、ID2(紛失キー21)の新規暗号鍵としてメモリ10に登録する。これにより、紛失キー21の代わりに、新規キー22が車両1に登録される。
【0050】
以上により、本例においては、新規キー22が車両1とスマート照合を実行する通信課程で、新規キー22の暗号鍵が自動で車両1に登録される。このため、車両1に新規キー22の暗号鍵を登録するとき、車両1において特別な操作をユーザに課さなくて済むので、キー登録作業の利便性をよくすることが可能となる。
【0051】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態の(1),(2)に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(4)車両1と電子キー2とがスマート照合を行っているとき、通信が確立している電子キー2が新規キー22であれば、スマート通信の最中に、車両1が自動でキー登録モードに切り換わり、新規暗号鍵が車両1に登録される。よって、新規暗号鍵を車両1に登録するとき、ユーザに特別な登録作業を課す必要がないので、利便性をよくすることができる。
【0052】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・各実施形態において、鍵非共通の暗号通信は、チャレンジレスポンス認証に限らず、各電子キー2が各々個別の暗号鍵で車両1と認証を行うものであれば何でもよい。
【0053】
・各実施形態において、新規暗号鍵は、車両登録済みの暗号鍵に最大値「1」を加算した値に限定されない。要は、車両1にこれまで登録されたことのない暗号鍵であればよい。
【0054】
・各実施形態において、キー登録モードへの移行は、それぞれの実施形態に述べた例に限定されず、他の形式に適宜変更可能である。
・各実施形態において、紛失キーの記憶領域に新規キーのIDコードを新たに登録する際、IDコードをそのまま継続使用することに限定されず、新しいIDコードに書き換えてもよい。
【0055】
・各実施形態において、新規キー22の登録は、例えば専用のツールを使用した方式でもよい。
・各実施形態において、電子キーシステムは、キー操作フリーシステム3に限定されず、例えば電子キー2からの通信を契機にID照合を行うワイヤレスキーシステムとしてもよい。
【0056】
・各実施形態において、電子キーシステムで使用する周波数は、LFやUHFに限定されず、例えばHF(High Frequency)等の他の帯域を使用してもよい。
・各実施形態において、車両使用開始時は、例えばID1のみ登録されていて、以降、ユーザがID2〜ID8を、必定に応じて車両1に順次登録していくのでもよい。
【0057】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記車両と前記電子キーとにチャレンジレスポンス認証を実行させる認証実行手段を備え、前記暗号鍵は、前記チャレンジレスポンス認証で使用する暗号鍵である。この構成によれば、チャレンジレスポンス認証という不正解読に対する耐性の高い認証方式を使用することに加え、このチャレンジレスポンス認証の暗号鍵の不正解読に対するセキュリティ性を確保することが可能となる。よって、暗号通信のセキュリティ性確保に効果が高くなる。
【符号の説明】
【0058】
1…車両、2…電子キー、21…紛失キー、22…新規キー、23…電子キー登録システム、24…判断手段としての登録開始判断部、25…登録手段としての登録実行部、Kc〜Kc+8…暗号鍵。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に複数の電子キーのIDを登録することにより、1台の該車両に対し複数の電子キーを配布し、前記電子キーが前記車両と通信するとき、各々の電子キーごとに設定された暗号鍵を使用する鍵非共通の暗号通信にて通信を実行し、前記電子キーを紛失してしまったとき、この紛失キーの代わりに新規キーを登録することが可能な電子キー登録システムであって、
前記車両に登録された前記電子キーを変更登録するキー登録モードに移行すべきか否かを判断する判断手段と、
前記キー登録モードの際、消去対象の前記電子キーの記憶領域をそのまま使用しつつ、該領域の暗号鍵を新しいものに変更登録する登録手段と
を備えたことを特徴とする電子キー登録システム。
【請求項2】
前記登録手段は、車両登録済みの鍵の最大値に設定値を加算した値を、新規暗号鍵として前記車両に登録する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キー登録システム。
【請求項3】
前記判断手段は、前記車両において登録開始操作があったことを検出すると、前記車両を前記キー登録モードにし、前記登録手段は、前記車両が前記キー登録モードになったとき、自ら暗号鍵の変更登録を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子キー登録システム。
【請求項4】
前記判断手段は、前記車両と前記電子キーとがID照合の通信を行っている際、前記電子キーからの信号の中に未登録の暗号鍵があることを確認すると、前記車両を前記キー登録モードにし、前記登録手段は、前記車両が前記キー登録モードとなったとき、前記電子キーから受信した前記暗号鍵を基に、変更登録を実行する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子キー登録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−171472(P2012−171472A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34817(P2011−34817)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】