説明

電子キー装置

【課題】認証時間を短縮することができ、携帯機の電力消費の抑制、機能の応答性、通信の信頼性を向上することができセキュリティ性が高い電子キー装置を得る。
【解決手段】車載機10は、認証を実施する場合、認証要求毎に変化するチャレンジデータを携帯機101に対して送信し、携帯機101は受信したチャレンジデータを携帯機にメモリされている固有のキーIDとXOR変換してレスポンスデータとして返信し、車載機10は受信したレスポンスデータを送信要求した携帯機101のキーIDとXOR変換し、認証要求時に送信したチャレンジデータと比較し、要求した携帯機を認証する。携帯機のIDを送信する必要が無くなるため、通信時間の高速化とセキュリティ性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電子キー装置に関し、特に、車両用の携帯機と車載機との通信により、IDコードを照合して、ドアやトランクの施開錠や、エンジン始動などを行なうための電子キー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドア施開錠やエンジン始動を行なう場合、使用者がキーを鍵穴に挿入して回転させて行なうものから、いわゆるFOBキーのように使用者のポケットまたはバッグに入れたまま、一切キーに触れることなく車載機とキー(携帯機)との間で無線通信を行ない、携帯機からのIDコードを車載機が記憶しているコードと照合し、合致した場合、ドアノブに取り付けられたセンサに触れるだけで車載機がドアを施開錠し、運転席に取り付けられたボタンを押すだけでエンジン始動ができる車両用電子キー装置があった。
【0003】
また、前記のような電子キー装置において、ドアノブに取り付けられたセンサに触れた場合、車載機からの照合を行なうための要求信号を無線により送信し、登録された携帯機が車両の周辺にあった場合、携帯機は固有のIDを含んだ応答信号を返信し、車載機は携帯機が応答した信号を照合してドアを施開錠するスマートキーレスエントリ機能や、または、携帯機に取り付けられたドア施開錠ボタンを押した場合、携帯機から施開錠信号を無線により送信し、車載機はその信号を照合して、登録されている携帯機と判断した場合、ドアを施開錠するリモートキーレスエントリ機能があった。
【0004】
従来のキーレスエントリシステムとして、例えば、特許文献1および2に記載のものがある。
【0005】
特許文献1に記載されているキーレスエントリシステムは、送信機から送信される固有のIDコードと操作スイッチに対する操作状況に応じた施開錠信号を受信・解析し、前記IDコードが、予め記憶しているIDと一致した場合に、ドアの施開錠を行う。
【0006】
特許文献2に記載されているキーレスエントリシステムは、携帯機から送信されるIDコードを受信して、携帯機が車室内と判定された場合に、車室外からの施錠を禁止し、閉じ込めを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−62343号公報
【特許文献2】特開2009−91841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2に記載されているキーレスエントリシステムは、いずれも、固有のIDコードを送信しなければならず、固有のIDコードを送信するための通信時間がかかり、そのために、応答が遅れ、かつ、電池の消耗が大きくなるという問題点があった。また、IDコードを送信するため、それを含む無線信号が傍受され、電子キーを複製される恐れがあるという問題点があった。
【0009】
この発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、携帯機のIDを送信しなくても、登録された携帯機か否かの判別が可能で、かつ、送信信号の送信時間が短くなるため、応答性を向上させ、電池寿命を延命することができるとともに、通信を傍受されても、信号の解読が困難で、電子キーを複製することが難しく、安全性の向上を図ることが可能な電子キー装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、車両に搭載された車載機と使用者が所持する携帯機とを備え、前記車載機と前記携帯機との間で通信を行うことにより、前記車載機が前記携帯機を認証した場合に、前記車両に搭載された制御機器を駆動させる電子キー装置であって、前記携帯機は、自機の固有識別コードであるキーID、および、自機の整理番号であるキーナンバーを記憶した携帯機側メモリと、前記車載機からの応答信号および認証信号を受信する携帯機側受信手段と、前記車載機に対する要求応答信号および認証応答信号を送信する携帯機側送信手段と、前記車載機から送信される前記要求信号を受信したときに、当該要求信号に対する要求応答信号を前記第2の送信手段を介して前記車載機に送信する要求応答手段と、前記要求応答信号送信後に、前記車載機から送信される前記認証信号を受信したときに、当該認証信号に含まれるキーナンバーと前記携帯機側メモリのキーナンバーとを比較し、それらが一致したときに、前記認証信号に含まれる乱数からなる第1の認証用データを前記メモリの前記キーIDと変換して第2の認証用データを生成し、当該第2の認証用データを含む認証応答信号を前記携帯機側送信手段を介して前記車載機に送信する携帯機側変換手段とを備え、前記車載機は、自機に登録した携帯機毎の固有識別コードであるキーID、および、自機に登録した携帯機毎の整理番号であるキーナンバーを記憶した車載機側メモリと、前記携帯機に対する要求信号および認証信号を送信する車載機側送信手段と、前記車載機からの要求応答信号および認証応答信号を受信する車載機側受信手段と、前記携帯機に送信した前記要求信号に対して当該携帯機から前記要求応答信号を受信したときに、乱数を発生して前記第1の認証用データを生成し、前記第1の認証用データおよび送信先の前記携帯機のキーナンバーを含む前記認証信号を前記車載機側送信手段を介して前記携帯機に送信する認証手段と、前記認証信号送信後に、前記携帯機から前記第2の認証用データを含む認証応答信号を受信したときに、前記認証信号に含まれる前記第2の認証用データを前記車載機側メモリの前記キーIDと変換して第3の認証用データを生成し、前記第1の認証用データと当該第3の認証用データとを比較し、それらが一致した場合に、認証成立と判定する車載機側変換手段と、前記認証成立したときに、前記車両に搭載された前記制御機器を駆動させる駆動手段とを備えた電子キー装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、車両に搭載された車載機と使用者が所持する携帯機とを備え、前記車載機と前記携帯機との間で通信を行うことにより、前記車載機が前記携帯機を認証した場合に、前記車両に搭載された制御機器を駆動させる電子キー装置であって、前記携帯機は、自機の固有識別コードであるキーID、および、自機の整理番号であるキーナンバーを記憶した携帯機側メモリと、前記車載機からの応答信号および認証信号を受信する携帯機側受信手段と、前記車載機に対する要求応答信号および認証応答信号を送信する携帯機側送信手段と、前記車載機から送信される前記要求信号を受信したときに、当該要求信号に対する要求応答信号を前記第2の送信手段を介して前記車載機に送信する要求応答手段と、前記要求応答信号送信後に、前記車載機から送信される前記認証信号を受信したときに、当該認証信号に含まれるキーナンバーと前記携帯機側メモリのキーナンバーとを比較し、それらが一致したときに、前記認証信号に含まれる乱数からなる第1の認証用データを前記メモリの前記キーIDと変換して第2の認証用データを生成し、当該第2の認証用データを含む認証応答信号を前記携帯機側送信手段を介して前記車載機に送信する携帯機側変換手段とを備え、前記車載機は、自機に登録した携帯機毎の固有識別コードであるキーID、および、自機に登録した携帯機毎の整理番号であるキーナンバーを記憶した車載機側メモリと、前記携帯機に対する要求信号および認証信号を送信する車載機側送信手段と、前記車載機からの要求応答信号および認証応答信号を受信する車載機側受信手段と、前記携帯機に送信した前記要求信号に対して当該携帯機から前記要求応答信号を受信したときに、乱数を発生して前記第1の認証用データを生成し、前記第1の認証用データおよび送信先の前記携帯機のキーナンバーを含む前記認証信号を前記車載機側送信手段を介して前記携帯機に送信する認証手段と、前記認証信号送信後に、前記携帯機から前記第2の認証用データを含む認証応答信号を受信したときに、前記認証信号に含まれる前記第2の認証用データを前記車載機側メモリの前記キーIDと変換して第3の認証用データを生成し、前記第1の認証用データと当該第3の認証用データとを比較し、それらが一致した場合に、認証成立と判定する車載機側変換手段と、前記認証成立したときに、前記車両に搭載された前記制御機器を駆動させる駆動手段とを備えた電子キー装置であるので、携帯機のIDを送信しなくても、登録された携帯機か否かの判別が可能で、かつ、送信信号の送信時間が短くなるため、応答性を向上させ、電池寿命を延命することができるとともに、通信を傍受されても、信号の解読が困難で、電子キーを複製することが難しく、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1,2に係る電子キー装置の全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1,2に係る電子キー装置の送信信号を説明する説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1,2に係る電子キー装置の時間的通信処理を説明するタイムチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1に係る電子キー装置の動作のフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態2に係る電子キー装置の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る電子キー装置について説明する。図1は、本装置の概念図を示し、10は、自動車等の車両の所定の場所に搭載された車載機であり、101,102は、使用者が携帯する携帯機A,Bである。この発明の電子キー装置は、車載機10と携帯機A,Bとから構成されている。
【0014】
車載機10は、第1の送信手段11と、第1のCPU12と、駆動手段15と、第1のメモリ16とを、内部に備えている。第1のCPU12には、第1の通信信号ID変換手段13が設けられている。図1においては、第1のCPU12が通信信号復号化手段14をさらに備えているように図示されているが、通信信号復号化手段14は後述の実施の形態2で用いる構成であるため、本実施の形態1においては特に設ける必要はない。また、第1のメモリ16には、起動指示コードとしてのWake Up ID 17と、携帯機101,102毎の固有のキーナンバー18A,18B(整理番号)と、同じく携帯機101,102毎の固有のキーID19A,19B(固有識別コード)と、送信時に時間差を設けるための携帯機101,102毎の遅延時間(または遅延時間を示すTMナンバー)(図示省略)とを記憶している。当該遅延時間とは、携帯機間で送信信号が衝突しないように、各携帯機ごとに予め設定された時間である。従って、車載機10は、送信信号送信後に、受信した応答信号の遅延時間を検出すれば、どの携帯機からの応答信号であるかを識別することができる。なお、図1においては、第1のメモリ16が、暗号キー20も記憶しているように図示されているが、これは、実施の形態2で用いる構成であるため、本実施の形態1においては特に記憶しておく必要はない。
【0015】
また、23は、車載機10に設けられた送信アンテナであり、第1の送信手段11に接続され、携帯機A,Bに要求信号および認証信号等を送信する。21は車両の制御機器である。また、22は、例えばドア施開錠装置やエンジン始動装置等の、車両に備えられたスイッチである。30は車載機10に設けられた受信機であり、31は受信機30に設けられ、携帯機101,102からの要求応答信号および認証応答信号等を受信するための受信アンテナである。
【0016】
一方、携帯機101,102は同一構成であるため、携帯機101についてのみ説明するので、携帯機102については当該説明を参照することとする。携帯機101は、送信アンテナ118を有する第2の送信手段110と、受信アンテナ119を有する受信IC111(IC:Integrated Circuit)と、第2のCPU116と、電池117とを備えている。
【0017】
第2のCPU116には、第2の通信信号ID変換手段112と、第2のメモリ114と、受信IC111を介して通信信号を受信する受信手段115とが設けられている。図1においては、第2のCPU116が、通信信号暗号化手段113も設けているように図示されているが、通信暗号化手段113は後述する実施の形態2で用いる構成であるため、本実施の形態1においては特に設ける必要はない。また、第2のメモリ114には、携帯機毎の固有のキーナンバーと、携帯機毎のキーIDと、送信時に携帯機間で時間差を設けるための携帯機毎の遅延時間を示すTMナンバー(図示省略)が記憶されている。なお、図1においては、第2のメモリ114が、暗号キーも記憶しているように図示されているが、これは、後述する実施の形態2で用いる構成であるため、本実施の形態1では特に記憶しておく必要はない。第2のCPU116は、認証応答時には、携帯機101,102毎にメモリ114に記憶されているキーIDにより、第2の通信信号ID変換手段112により、通信信号を変換する。
【0018】
また、受信IC111には、第2のCPU116を起動するための起動手段120が設けられ、また、Wake Up ID 121が予め登録されている。起動手段120は、車載機10からのWake Up ID 17を含んだ要求に対して、予め登録されたWake Up ID 121とWake Up ID 17とを照合し、それらが一致した場合に、第2のCPU116を起動する。
【0019】
本実施の形態1に係る電子キー装置の動作について、図1、図2、図3、図4を用いて以下に説明する。
【0020】
図2は、本実施の形態1における、車載機10から送信される要求信号200と認証信号201の一例と、携帯機101,102から送信される要求応答信号300と認証応答信号301の一例を示した図である。図2に示すように、車載機10からの要求信号200には、起動指示コードとしてのWake Up ID と、応答要求コードと、チャレンジデータと、CRCチェックコードとが含まれている。車載機10からの認証信号201には、起動指示コードとしてのWake Up ID と、認証要求キーナンバーと、チャレンジデータと、CRCチェックコードとが含まれている。また、携帯機101,102からの要求応答信号300(図3では、300A,300B)には、同期信号と、レスポンスデータとが含まれている。また、携帯機101,102からの認証応答信号301には、同期信号と、レスポンスデータと、CRCチェックコードとが含まれている。
【0021】
また、図3は、本実施の形態1における車載機10および携帯機101,102の送信信号の時間的通信処理を示したタイムチャートである。図3に示すように、車載機10が要求信号200を送信すると、それに応じて、携帯機101,102が要求応答信号300A,300Bを送信する。要求応答信号300A,300Bは互いに衝突しないように、第2のメモリ114に記憶されているTMナンバーに応じた遅延時間(Delay時間)を設けて送信される。次に、車載機10が認証信号201を送信すると、それに応じて、携帯機101,102が、認証応答信号301を送信する。
【0022】
図4は、本実施の形態1に係る電子キー装置の動作を示したフローチャートである。以下では、図1〜図4を用いて、動作について説明する。本実施の形態1に係る電子キー装置は、スマートキーレスエントリ機能を有している。なお、以下の説明においては、携帯機101と車載機10との動作について説明するが、携帯機102と車載機10との動作も同様であるため、それについては、下記の説明を参照することとする。
【0023】
本実施の形態1に係る電子キー装置は、まず、はじめに、使用者は、車に乗り込む際に、その車両に搭載された車載機10に登録された携帯機101を所持し、車両のドアノブ付近に取り付けられたタッチセンサ等のスイッチ22に触れる。これにより、車両に搭載された車載機10の第1のCPU12が起動され、当該CPU12により、使用者が車載機10に登録された携帯機を所持しているか否かを確認するために、要求信号200を、第1の送信手段11により、その車両付近に届くレベルで、例えば、125kHzをキャリア周波数とした無線信号で送信する。要求信号200は、図2に示した通りで、携帯機101を起動するための第1のメモリ16に記憶された起動指示コードとしてのWake Up ID 17と、応答要求を示す応答要求コードと、チャレンジデータと、CRCチェックコードとを含んでいる。なお、このときのチャレンジデータは、任意の値でよく、例えば、乱数等により生成してよい。
【0024】
これにより、使用者が所持する携帯機101は、受信IC111により、受信アンテナ119で、車載機10からの要求信号200を受信し、受信した要求信号200に含まれるWake Up ID 17が、予め受信IC111に登録されたWake Up ID 121と一致するかを判定し、一致した場合、起動手段120により、第2のCPU116を起動する。第2のCPU116は、受信した要求信号200に含まれる、例えば、CRCチェックコードを用いて、その信号の信頼性を判断し、正常な信号と判断した場合は、自身の応答信号300Aと他の携帯機102からの応答信号300Bとが衝突しないように、第2のメモリ114に記憶されているTMナンバーに応じた遅延時間を設けて(図3参照)、例えば、315MHzをキャリア周波数として送信速度8kbpsにて、第2の送信手段110にて、要求応答信号300Aを送信する。要求応答信号300Aの構成は、図2に示した要求応答信号300の通りで、同期信号と、当該信号が応答信号であることを示すレスポンスデータとを含んでいる。当該レスポンスデータは、要求信号200に含まれていたチャレンジデータと同じ値でよい。なお、通信に使用する周波数や通信速度は、上記の場合に限定させるものではなく、使用する機能や環境に応じて適宜設定すればよい。
【0025】
車載機10は、登録された携帯機101から送信される要求応答信号300Aを、受信アンテナ31および受信機30にて受信すると、第1のCPU12により、要求信号200の送信時刻を基点にして、携帯機101から受信した要求応答信号300Aの遅延時間401を検出し、当該検出値と第1のメモリ16に記憶された遅延時間とを比較して、それにより、どのキーナンバーの携帯機が応答したかを判断し、応答した携帯機101に対して、認証を実施する。
【0026】
すなわち、車載機10は、要求信号200に応答した携帯機101に対して、起動指示コードとしてのWake Up ID 17を含んだ、認証信号201を送信する。認証信号201は、図2に示すように、Wake Up ID 17の他に、認証要求する携帯機101のキーナンバー、携帯機101を認証するために車載機10が発生させた乱数であるチャレンジデータ、認証信号201の信頼性を判断するCRCチェックコードとを含んでいる。なお、チャレンジデータは例えば乱数から生成されるもので、以下の説明が分かりやすくなるために、ここでは具体的な例を挙げて、チャレンジデータを例えば「01 23 45」(16進数)とする。チャレンジデータは、このように、認証を実施する際に、毎回乱数から生成されるので、認証要求毎に変化し、セキュリティ性が向上できる。
【0027】
携帯機101は、第2のCPU116で、車載機10から送信された認証信号201に対して、CRCチェックコードにより当該認証信号201の信頼性を確認した結果、正しいと判断した場合は、次に、第2のメモリ114に記憶された自身のキーナンバーと認証信号201に含まれたキーナンバーとを比較し、それらのキーナンバーが一致している場合に、自身が認証信号201に対して要求された携帯機であると判定する。要求されたキーナンバーと自身のキーナンバーとが一致した場合、図4のステップS1にて、認証信号201のチャレンジデータ「01 23 45」(16進数)と、第2のメモリ114に記憶された携帯機101のキーIDである「55 AA 55」(16進数)を、第2の通信信号ID変換手段112で、XOR変換すると、得られた送信データは「54 89 10」(16進数)となる。なお、この変換により得られる送信データは、車載機101から認証信号201として送信されたチャレンジデータとは異なるデータである。携帯機101は、こうしてXOR変換により得られた送信データをレスポンスデータとし、当該レスポンスデータに、同期信号およびCRCチェックコードを付加して、認証応答信号301として、車載機10に対して送信する。
【0028】
車載機10は、認証応答信号301を受信すると、図4のステップS2で、第1のCPU12により、認証応答信号301のCRCチェックコードによる信頼性の判定を実施し、正常な信号と判断した場合は、ステップS3にて、受信したレスポンスデータ「54 89 10」(16進数)と、認証信号201を送信したときに指定した携帯機のキーID「55 AA 55」(16進数)を、第1の通信信号ID変換手段13にて、XOR変換し、変換データ「01 23 45」(16進数)を得る。次に、ステップS4にて、第1のCPU12により、認証信号201として先に送信したチャレンジデータと当該変換データとを比較して、一致した場合は、ステップS5にて、スイッチ22による制御を実行するために、駆動手段15により、制御機器21であるドアをアンロック駆動する。なお、ここではXOR変換を行うとして説明したが、その場合に限定されるものではなく、変換方法についてはXOR変換以外の他の変換方法を用いても良い。
【0029】
なお、図4のステップS2でCRC判定が不一致の場合や、ステップS4でチャレンジデータと比較した場合に不一致となった場合は、認証不成立として、制御を実行しないで終了する。
【0030】
このように、本実施の形態1による電子キー装置は、携帯機101,102は、キーIDを送信しないため、認証時間を短縮でき、応答性が良くなると同時に、携帯機101,102の電池117の寿命の延命も可能である。また、キーIDを送信しなくても、送信された信号に含まれるチャレンジデータをキーIDによって変換することで、キーIDの識別は可能となり、他の携帯機と誤って動作することはない。また、キーIDを送信しないため、無線による電波信号を傍受されても、キーIDが特定できないため、電子キーとしての携帯機の複製が困難であるという効果も得られる。さらに、キーIDを送信しないとともに、送信するチャレンジデータは、認証実施ごとに毎回生成するものなので、認証要求毎に変化し、高いセキュリティ性を実現することができる。
【0031】
実施の形態2.
次に、この発明の実施2の形態に係る電子キー装置について図1〜図3および図5を用いて説明する。本実施の形態2に係る電子キー装置は、基本的に上述の図1に示した実施の形態1の構成と同じであるが、本実施の形態2においては、携帯機101,102から車載機10に信号を送信する際に暗号化して送信する点が実施の形態1と異なる。従って、以下の3点が実施の形態1と異なる点である。
(1)携帯機101,102に通信信号暗号化手段113が設けられており、携帯機101,102側で、XOR変換によりデータを生成した後に、それを、通信信号暗号化手段113で暗号化してから、車載機10に送信する点。
(2)また、車載機10に通信信号復号化手段14が設けられており、車載機10側で、携帯機101,102から受信した暗号化信号を通信信号復号化手段14により復号する点。
(3)携帯機101,102側のメモリ114と、車載機10側のメモリ16とに、同じ暗号キー20が予め記憶されている点。
【0032】
他の構成および動作は基本的に実施の形態1と同じであるため、ここでは、その説明を省略し、以降の説明においては、実施の形態1と異なる点だけを説明する。
【0033】
図5は、本実施の形態2に係る電子キー装置の処理の手順を示したフローチャートを示している。ステップS11では、上述の実施の形態1で説明したステップS1と同じ処理(XOR変換)を行って送信データを生成し、次に、ステップS12で、生成した送信データを、第2のメモリ114に予め記憶されている暗号キーを用いて、通信信号暗号化手段113により、AES暗号化する。こうして暗号化した送信データに対してCRCチェックコードを付加して、認証応答信号301として、車載機10に対して送信する。
【0034】
車載機10は、認証応答信号301を、まず、ステップS13にて、第1のCPU12で、CRCチェックコードを用いたCRC判定により信頼性判断を実施し、正しいと判断した場合は、ステップS14にて、受信した認証応答信号301内の暗号化された送信データを、予め第1のメモリ16に記憶されている携帯機101,102の暗号キーと同じ暗号キー20を用いて、通信信号復号化手段14で、AES復号を実施する。ここでは、暗号化および復号化の方法としてAESとして説明したが、別の暗号方式および復号方式を用いてもよい。
【0035】
次に、ステップS15にて、復号した結果を、認証信号201を送信したときに指定した携帯機101,102のキーIDと、第1の通信信号ID変換手段13にて、XOR変換して変換データを得る。この処理は、図4のステップS3と同じである。
【0036】
次に、ステップS16にて、認証信号201として送信したチャレンジデータと当該変換データとを比較して、一致した場合は、ステップS17にて、スイッチ22による制御を実行するために、駆動手段15により、制御機器21であるドアをアンロック駆動する。
【0037】
ステップS13でCRC判定が不一致の場合や、ステップS16にてチャレンジデータと比較した場合に不一致となった場合は、認証不成立として制御を実行しないで終了する。
【0038】
以上により、本実施の形態2によれば、上述の実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態2においては、携帯機101,102が、通信信号を更に暗号化して送信するため、無線による電波信号を傍受されても、更に解読、複製が困難となるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明の電子キー装置は、自動車等の車両用のみならず、2輪車、船舶、および、航空機等の他のすべての車両に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 車載機、11 第1の送信手段、12 第1のCPU、13 第1の通信信号ID変換手段、14 通信信号復号化手段、15 駆動手段、16 第1のメモリ、17 Wake Up ID、18 キーナンバー、19 キーID、20 暗号キー、21 制御機器、22 スイッチ、23 送信アンテナ、30 受信機、31 受信アンテナ、101,102 携帯機、110 第2の送信手段、111 受信IC、112 第2の通信信号ID変換手段、113 通信信号暗号化手段、114 第2のメモリ、115 受信手段、116 第2のCPU、117 電池、118 送信アンテナ、119 受信アンテナ、120 起動手段、121 Wake Up ID。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載機と使用者が所持する携帯機とを備え、前記車載機と前記携帯機との間で通信を行うことにより、前記車載機が前記携帯機を認証した場合に、前記車両に搭載された制御機器を駆動させる電子キー装置であって、
前記携帯機は、
自機の固有識別コードであるキーID、および、自機の整理番号であるキーナンバーを記憶した携帯機側メモリと、
前記車載機からの応答信号および認証信号を受信する携帯機側受信手段と、
前記車載機に対する要求応答信号および認証応答信号を送信する携帯機側送信手段と、
前記車載機から送信される前記要求信号を受信したときに、当該要求信号に対する要求応答信号を前記第2の送信手段を介して前記車載機に送信する要求応答手段と、
前記要求応答信号送信後に、前記車載機から送信される前記認証信号を受信したときに、当該認証信号に含まれるキーナンバーと前記携帯機側メモリのキーナンバーとを比較し、それらが一致したときに、前記認証信号に含まれる乱数からなる第1の認証用データを前記メモリの前記キーIDと変換して第2の認証用データを生成し、当該第2の認証用データを含む認証応答信号を前記携帯機側送信手段を介して前記車載機に送信する携帯機側変換手段と
を備え、
前記車載機は、
自機に登録した携帯機毎の固有識別コードであるキーID、および、自機に登録した携帯機毎の整理番号であるキーナンバーを記憶した車載機側メモリと、
前記携帯機に対する要求信号および認証信号を送信する車載機側送信手段と、
前記車載機からの要求応答信号および認証応答信号を受信する車載機側受信手段と、
前記携帯機に送信した前記要求信号に対して当該携帯機から前記要求応答信号を受信したときに、乱数を発生して前記第1の認証用データを生成し、前記第1の認証用データおよび送信先の前記携帯機のキーナンバーを含む前記認証信号を前記車載機側送信手段を介して前記携帯機に送信する認証手段と、
前記認証信号送信後に、前記携帯機から前記第2の認証用データを含む認証応答信号を受信したときに、前記認証信号に含まれる前記第2の認証用データを前記車載機側メモリの前記キーIDと変換して第3の認証用データを生成し、前記第1の認証用データと当該第3の認証用データとを比較し、それらが一致した場合に、認証成立と判定する車載機側変換手段と、
前記認証成立したときに、前記車両に搭載された前記制御機器を駆動させる駆動手段と
を備えている
ことを特徴とする電子キー装置。
【請求項2】
前記携帯機側メモリおよび前記車載機側メモリが同一の暗号キーをさらに記憶しており、
前記携帯機は、暗号化手段をさらに備え、前記暗号キーを用いて前記認証応答信号を前記暗号化手段により暗号化して送信し、
前記車載機は、復号化手段をさらに備え、暗号化された前記認証応答信号を前記携帯機から受信したときに、前記暗号キーを用いて前記認証応答信号を前記復号化手段により復号する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−193499(P2012−193499A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56290(P2011−56290)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】