電子キー
【課題】非常時に使用されるメカニカルキーを具備するとともに、小型化や薄型化が実現できる電子キーを提供すること。
【解決手段】車両に設けられた通信制御装置にIDコードを含む電波を送信することで、当該IDコードが正規のものである場合に車両20に設けられた外部機器の制御が許可されるようにした通信回路部16と、該通信回路部16に直流電流を供給する電池11bを具備した電子キー1である。電子キー1は、通信回路部16及び電池11bを収容するケース本体1aと、該ケース本体1aに対してスライド自在に支持されるとともに略平板状に形成され、且つ、当該ケース本体を閉塞する時には、前記電池を前記ケース本体内に略密封するようにしたスライドカバー1bとをさらに具備している。スライドカバー1bは、8個の有底穴1h,…の配置パターンをもって照合用コードとするメカニカルキーとして機能する。
【解決手段】車両に設けられた通信制御装置にIDコードを含む電波を送信することで、当該IDコードが正規のものである場合に車両20に設けられた外部機器の制御が許可されるようにした通信回路部16と、該通信回路部16に直流電流を供給する電池11bを具備した電子キー1である。電子キー1は、通信回路部16及び電池11bを収容するケース本体1aと、該ケース本体1aに対してスライド自在に支持されるとともに略平板状に形成され、且つ、当該ケース本体を閉塞する時には、前記電池を前記ケース本体内に略密封するようにしたスライドカバー1bとをさらに具備している。スライドカバー1bは、8個の有底穴1h,…の配置パターンをもって照合用コードとするメカニカルキーとして機能する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物との無線通信を介して同対象物に設けられた外部機器の制御を許可させるための電子キーに関し、詳しくは、対象物と無線通信を行う通信回路部又は電池をケース本体内に略密封させるスライドカバーを具備した電子キーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両(対象物)においては、そのセキュリティレベル(安全性)のさらなる改善とともに車両のユーザの利便性の向上が強く求められている。このため、従来、ユーザが所持する携帯型の電子キー(携帯機)と、車両に設けられた通信制御装置との間で双方向の無線通信を行い、該無線通信によるID照合が成立したことを条件として、ドア錠の施解錠操作を許可したり、エンジンの始動を可能な状態としたりする電子キーシステムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このため、ユーザは、メカニカルキー等を用いた手動操作によることなく前記通信制御装置を用いて車載機器(外部機器)を自動制御することができて利便性が向上し、しかも電磁的なID照合が車両制御の開始要件となるため、車両のセキュリティレベルが高められる。
【0004】
このような電子キーを用いることで、ユーザは、平常時は、車両の通信制御装置を介して車載機器を自動制御することができる。ところが、通常電池で駆動される電子キーに電池切れが生じたり、車両のバッテリー(車載電源)が上がったりした非常時には、電子キーによる電磁的なID照合が使用できなくなる。そこで、そうした非常時に備え、車両のドアに設けた錠前装置に挿し込むことで当該車両とのID照合が機械的に行われ、同車両に設けられたドア施解錠装置等の車載機器の制御が許可される非常用のメカニカルキーを電子キーに具備させることが必須となっている。
【0005】
このような非常用のメカニカルキーを有する電子キーにおいて、次のような構造のものが知られている(例えば、特許文献2を参照)。即ち、図5(a)に示すように、当該電子キー10は、非常用のメカニカルキー100と、前記通信制御装置にID照合のためのIDコード(認証用コード)を含む電波を送信する通信回路部16及び電池(ボタン電池)11bを収容する略直方体状のケース本体10aと、該ケース本体10aに対してスライド自在に支持され、平面視略矩形状且つ側面視L字状とされたスライドカバー10bとを具備している。このスライドカバー10bは、ケース本体10aに対して、一対の案内レール10c,10c及び該案内レール10c,10cを摺動案内する一対の案内溝10d,10dを介してスライド自在に支持されている。そして、同スライドカバー10bによる前記ケース本体10aの閉塞時(図5(b)参照)には、該スライドカバー10bは、前記電池11bを前記ケース本体10a内に略密封させる。尚、前記通信回路部16には、図示しないアンテナ及び制御用マイコン(電子キー側マイコン)が設けられている。
【0006】
尚、図5(a)に示す電子キー10においては、前記メカニカルキー100の長尺の金属部分100mは、前記ケース本体10aに設けられ、略直方体状のスペース(空隙)を形成する収納部100aに収納されるように構成されている。
【0007】
また、前記ケース本体10aには、有底円筒状の電池収容部10jが設けられており、該電池収容部10jには前記電池11bが前記通信回路部16に設けられた電極10wに接触するように収容される。また、ケース本体10aには、電池収容部10jを閉塞し、前記電池11bを当該電池収容部10jに密閉させる電池蓋1gが設けられている。そして、該電池蓋1gは、電池収容部10jの外周縁に設けられたリング状凹部10kに着接した状態で、ケース本体10aに対し、4個(複数個)のビスb,…を介して着脱可能に取り付けられる。さらに、ケース本体10aと電池蓋1gとの間には、シール部材(Oリング)1sが配設されており、前記ビスb,…をケース本体1aに着座したナットn,…に締め付けるに伴い、電池蓋1gにより圧縮変形され、当該ケース本体10aと電池蓋1gとの間をシールするように構成されている。
【0008】
また、前記メカニカルキー100の樹脂製の把持部100nには、貫通孔100hが設けられている。そして、このメカニカルキー100は、その金属部分100mがケース本体10aの前記収納部100aに収納(挿入)されたときに、その把持部100nの貫通孔100hに対して、スライドカバー10bの表面から出没自在に設けられた係合フック10fが挿入(係合)されることで、同ケース本体10aに対して抜け止めされる。尚、該係合フック10fは、スライドカバー10bに設けられ、同係合フック10fの抜け止めを解除するべくユーザの手指等によって操作される操作レバー10eと連動するようにされている。この操作レバー10eは、スライドカバー10bに設けられ、図示しないばね部材(弾性部材)を介して図5(a)において右方向に付勢されている。そして、前記係合フック10fは、この操作レバー10eを介してケース本体10aの表面から外方向(図5(a)において右方向)に向けて付勢されている。
【0009】
この電子キー10は、図5(b)に示すように、前記ケース本体10a、スライドカバー10b及びメカニカルキー100が互いに組み付けられると、組み付け完了の状態となり、通常は、この状態で車両のユーザによって所持され、使用される。尚、図5(b)に示すように、電子キー10の厚さ(図5(a)において上下方向の距離)をY[mm]とする。
【特許文献1】特開2007−142886号公報
【特許文献2】特開2004−258315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような電子キーにおいては、前記メカニカルキー100が占有する空間(メカニカルキー100の収納スペース)を必ず設ける必要性があり、これにより電子キー10の設計上の自由度が阻害され、当該電子キー10の小型化や薄型化の妨げとなっている。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、非常時に使用されるメカニカルキーを具備するとともに、小型化や薄型化が実現できる電子キーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、対象物に設けられた通信制御装置に認証用コードを含む電波を送信することで、当該認証用コードが正規のものである場合に前記対象物に設けられた外部機器の制御が許可されるようにした通信回路部と、該通信回路部に直流電流を供給する電池を具備し、前記通信回路部及び電池を収容するケース本体と、該ケース本体に対してスライド自在に支持されるとともに略平板状に形成され、且つ、当該ケース本体を閉塞する時には、前記電池を前記ケース本体内に略密封するようにしたスライドカバーをさらに具備した電子キーであって、前記スライドカバーには、複数個の有底穴が凹設され、同スライドカバーは、当該有底穴の配置パターンをもって照合用コードとするメカニカルキーとして機能すること、を要旨とする。
【0013】
同構成によれば、スライドカバーがメカニカルキーの機能を兼ねるようになるため、従来、ケース本体内において、メカニカルキーを収容するために必要であったスペースが不要となり、電子キーの設計上の自由度が増大し、同電子キーの小型化が図れるようになる。しかも、メカニカルキーとしてのスライドカバーは、ある程度の奥行きを確保することが必要となるキー溝ではなく、同スライドカバーに凹設された複数個の有底穴の配置パターンをもって照合用コードとしている。このため、スライドカバーは、非常用のメカニカルキーとしての機能を十分に確保しながら、その薄型化を実現することができるようになる。そして、このようなスライドカバーの薄型化は、ひいては、電子キー全体の薄型化に貢献するようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーにおいて、前記スライドカバーは、同スライドカバーによる前記ケース本体の閉塞時には、前記電池を前記ケース本体内に略密封するとともに、同スライドカバーによる前記ケース本体の開放時には、前記電池の取り出し及び交換を可能としたこと、を要旨とする。
【0015】
同構成によれば、メカニカルキーとしてのスライドカバーは、ケース本体に対してスライド移動することで、ケース本体を開放させることができる。しかもスライドカバーは、同ケース本体から取り外すことで電池の取り出し及び交換が行える電池蓋の機能も備えるようになる。これにより、スライドカバーをスライド移動させることのみで、電池の取り出し及び交換が簡単に行えるようになる。そしてこの結果、電子キーの使用部材において、機能の集約化が達成されるとともに、使用部材点数の削減とそれに伴うコストダウンが図れるようになる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電子キーにおいて、前記複数個の有底穴は、前記スライドカバーにおいて前記電池と対面する面側に凹設されていること、を要旨とする。
【0017】
同構成によれば、複数個の有底穴は、スライドカバーにおいて電池と対面する面側、即ち、ケース本体の内部側に設けられている。このため、スライドカバーによるケース本体の閉塞時には、複数個の有底穴の配置パターンによって形成される照合用コードが外部から視認し難くなり、見栄えの余り芳しくない有底穴がスライドカバーによって隠蔽される。これにより、電子キーの意匠性が高められるとともに、スライドカバーの不正な複製が困難となってセキュリティ性が向上するようにもなる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記スライドカバーは、非導電性の樹脂材料によって形成されていること、を要旨とする。
【0019】
同構成によれば、メカニカルキーとしてのスライドカバーが非導電性の樹脂材料によって形成されているので、例えば、射出成形等の樹脂成形法によって容易に形成できるとともに、電子キーの軽量化が図れるようになる。しかも、ケース本体に収容され、外部と無線通信を行う通信回路部がスライドカバーによって電磁的に遮蔽される虞がなく、外部との良好な無線通信が確保されるようになる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記スライドカバーは、前記ケース本体を閉塞する時には、スナップフィット機構によって前記ケース本体に係合固定されること、を要旨とする。
【0021】
同構成によれば、メカニカルキーとしてのスライドカバーは、ケース本体の閉塞時には、スナップフィット機構によってケース本体に係合固定される。このため、スライドカバーをケース本体に対して簡単且つ確実に固定することができるようになるとともにケース本体からの取り外しも容易に行えるようになる。また、ケース本体に、例えば、係合フックやそれに連動させる操作レバー等からなる係合機構、及び該係合機構のためのスペースを設ける必要性が解消し、使用部材点数の削減、及び、組み立ての容易化、並びに、ケース本体の省スペース化が図れるようになる。これにより、さらなる電子キーの小型化と薄型化に寄与させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電子キーによれば、非常時に使用されるメカニカルキーを具備するとともに、小型化や薄型化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
本実施形態の電子キー1は、図1に示す電子キーシステム3に使用されるものである。この電子キーシステム3は、車両(四輪自動車)20のユーザが所持する電子キー1と、車両20に設けられた通信制御装置2との間で双方向の無線通信を行い、該無線通信が成立したことを条件として、ドア錠の施解錠操作を許可したり、エンジンの始動を可能な状態としたりするものである。尚、本実施形態では、通信制御装置2は、車両20に搭載された車載電源21bから直流電流が供給されて駆動され、通信回路部16は、電池11bから直流電流が供給されて駆動されるようになっている。
【0024】
前記通信制御装置2に設けられた車両側マイコン21(のメモリ21aに格納された制御用プログラム)は、該装置2に設けられた車両側送信回路23及びアンテナ23aを介して、予め設定された送信要求信号としてのリクエスト信号(電波)を車両周辺や車両室内に送信して同リクエスト信号の送信エリアを形成する。
【0025】
そして、当該送信エリアに前記電子キー1が進入すると、同電子キー1に設けられた電子キー側マイコン11(のメモリ11aに格納された制御用プログラム)は、アンテナ13a及び電子キー側受信回路13を介して当該リクエスト信号を受信する。そして、同マイコン11は、そのリクエスト信号に応答し、メモリ11aに記憶されたIDコード(認証用コード)を含むIDコード信号(電波)を電子キー側送信回路12及びアンテナ12aを介して通信制御装置2に送信する。尚、本実施形態では、前記電子キー側マイコン11、電子キー側送信回路12及び電子キー側受信回路13(それぞれアンテナ12a及びアンテナ13aを含む。)により通信回路部16が構成されている。
【0026】
そして、前記通信制御装置2は、このIDコード信号を該装置2に設けられたアンテナ22a及び車両側受信回路22を介して受信すると、前記車両側マイコン21がそのメモリ21aに記憶されたIDコードと前記IDコード信号に含まれるIDコードとの照合を行う。そして、当該電子キーシステム3は、それらIDコード同士が一致したこと(電子キー1が送信したIDコードが正規のものであること)を条件として電子キー1と通信制御装置2との間で無線通信によるID照合が成立したものとする。そして、同電子キーシステム3は、車両20のドア施解錠装置25によってドア錠を施解錠可能な状態としたり、エンジン制御装置26を介してエンジン27を始動可能な状態としたりする。即ち、電子キーシステム3では、電子キー1が送信したIDコードが正規のものである場合に、同車両20に設けられた車載機器としての前記ドア施解錠装置25及びエンジン制御装置26の制御が許可される。
【0027】
尚、本実施形態の電子キー1において、前記電子キー側マイコン11には、車両20のドア施解錠装置25によるドア錠の施解錠制御を行うためのドア施錠スイッチ14及びドア解錠スイッチ15が電気的に接続されている。即ち、電子キー1が送信したIDコードが正規のものである場合において、ドア施錠スイッチ14を押圧操作すれば、前記車両側マイコン21を介してドア施解錠装置25が制御され、車両20のドア錠がロック(施錠)される。また、この場合、ドア解錠スイッチ15を押圧操作すれば、前記車両側マイコン21を介してドア施解錠装置25が制御され、車両20のドア錠がアンロック(解錠)される。
【0028】
本実施形態の電子キー1は、電池切れ(電池11bの消耗)が生じたり、さらに車両20の車載電源21bが上がったりした非常時には、正常に作動しなくなる。このため、同電子キー1には、このような非常時に備え、次のような非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1b(図2(a)及び図2(b)参照)が設けられている。即ち、同電子キー1には、車両20のドアに設けられ、前記車両側マイコン21に電気的に接続された錠前装置24に挿し込むことで、当該車両側マイコン21によって当該車両20とのID照合が機械的に行われる。そして、これにより前記ドア施解錠装置25によるドア錠の施解錠制御が許可され、車両20のドアの施解錠操作が可能となるスライドカバー1bが設けられている。
【0029】
詳しくは、図2(a)に示すように、本実施形態の電子キー1は、前記通信制御装置2にID照合のためのIDコード(認証用コード)を含む電波を送信する通信回路部16及び電池11bを収容する略直方体状且つ樹脂製のケース本体1aと、該ケース本体1aに対してスライド自在に支持された前記スライドカバー1bとを具備している。詳しくは、該スライドカバー1bは、全体として樹脂材料を用いて、略平板状、平面視略矩形状、且つ側面視L字状とされている。そして、同スライドカバー1bは、ケース本体1aに対して、同スライドカバー1bに設けた一対の案内レール1c,1c、及び同ケース本体1aに設けられ、該案内レール1c,1cを摺動案内する一対の案内溝1d,1dを介してスライド自在に支持されている。尚、この一対の案内レール1c,1cの各先端は、図2(a)に示すように、相対向するように小さく鉤(かぎ)状に屈曲している。そして、該一対の鉤状凸部1u,1uと前記案内溝1d,1dに設けた一対の鉤状凹部1v,1vとが互いに摺動嵌合しあうことで、スライドカバー1bが同案内溝1d,1dの軌道から脱落しないように構成されている。
【0030】
そして、スライドカバー1bによる前記ケース本体1aの閉塞時(図2(b)参照)には、該スライドカバー1bは、スナップフィット機構によって、当該ケース本体1aに係合固定される。即ち、スライドカバー1bの垂下部1rの両側面端部にそれぞれ凸設された一対の係合凸部1p,1pが、前記ケース本体1aの内側の両側面端部にそれぞれ凹設された一対の係合凹部1q,1qに係合することによって当該ケース本体1aに係合固定される。そしてこのとき、スライドカバー1bによって、前記電池11bが前記ケース本体1a内に略密封される。尚、前記通信回路部16には、図1に示すアンテナ12a,13a及び電子キー側マイコン11が設けられている。尚、スライドカバー1bの表面は意匠面を構成しており、図2(a)及び図2(b)に示すスライドカバー1bでは、‘ELECTRIC KEY’(「電子キー」の意味)なる英字が印刷(表示)されている。
【0031】
また、前記ケース本体1aには、有底円筒状の電池収容部1jが設けられており、該電池収容部1jには前記電池(ボタン電池)11bが前記通信回路部16に設けられた電極1wに接触した状態で収容されている。この電子キー1では、スライドカバー1bをスライド移動させ、前記ケース本体1aを開放することで、前記電池11bの電池収容部1jからの取り出し及び交換が可能に構成されている。即ち、本実施形態では、スライドカバー1bが、背景技術で説明した電池蓋1g(図5(a)参照)の機能も備えていることになる。さらに、図2(a)に示すように、ケース本体1aとスライドカバー1bとの間には、シール部材1sが配設されている。そして、該シール部材1sは、スライドカバー1bによるケース本体1aの閉塞時に、同スライドカバー1bにより圧縮変形され、当該ケース本体1aとスライドカバー1bとの間をシールするように構成されている。なお、本実施形態では、該シール部材1sには、ゴム製のOリングを用いている。
【0032】
本実施形態の電子キー1は、図2(b)に示すように、前記ケース本体1a及びスライドカバー1bが互いに組み付けられると、組み付け完了の状態となり、通常は、この状態で車両20のユーザによって所持され、使用される。尚、図2(b)に示すように、電子キー1の厚さをX[mm]とする。
【0033】
また、図2(c)に示すように、前記電子キー10の裏面(スライドカバー10bと反対側の面)には、車両20のドア施解錠装置25によるドア錠の施解錠制御を行うためのドア施錠スイッチ14及びドア解錠スイッチ15が押圧操作可能に配設されている。
【0034】
本実施形態において、図2(a)、図3(a)及び図3(b)に示すように、非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bは、その裏面、即ち前記電池11bと対面する面側において、平面視略円形の有底穴1h,…が8個(複数個)凹設(形成)されている。そして、該電子キー1は、該有底穴1h,…の配置パターンを、スライドカバー1bを前記錠前装置24の所定箇所に挿し込むことで車両20とのID照合が機械的に実行される照合用コードとしている。このようにスライドカバー1bは、ある程度の奥行きを確保することが必要となるキー溝ではなく、同スライドカバー1bに凹設された複数個の有底穴1h,…の配置パターンをもって照合用コードとしているので、非常用のメカニカルキーとしての機能を十分に確保しながら、その薄型化を図ることができる。
【0035】
そして、電子キー1に電池切れが生じたり、車両20のバッテリー(車載電源21b)が上がったりした非常時には、スライドカバー1bの先端部(有底穴1h,…が形成された領域を含む部分)を錠前装置24の所定箇所に挿し込むことで前記ID照合が機械的に実行される。そして、車両20においては、車両側マイコン21によって、当該照合用コードと、車両20に固有に設定された照合用コードとの同一性が判断される。そして、両照合用コードが一致したことを条件として、前記ドア施解錠装置25によりドア錠の施解錠制御が許可され、車両20のドアの施解錠操作及び開閉操作が可能となる。
【0036】
尚、本実施形態において、前記錠前装置24によるスライドカバー1bの機械的なID認証は、前記スライドカバー1bの有底穴1h,…と当該錠前装置24の所定位置に可動に設けられた複数個のピンタンブラ(図示せず)との協働(互いの係止・非係止関係)によって実現される。
【0037】
本実施形態の電子キー1によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)スライドカバー1bが非常用のメカニカルキーの機能を兼ねるようになるため、図5(a)に示すように、従来、ケース本体10a内において、メカニカルキー100を収容するために必要であったスペースが不要となり、電子キー1の設計上の自由度が増大し、同電子キー1の小型化が図れるようになる。しかも、メカニカルキーとしてのスライドカバー1bは、ある程度の奥行き(溝の深さ)を確保することが必要となるキー溝ではなく、同スライドカバー1bに凹設された8個の有底穴1h,…の配置パターンをもって照合用コードとしている。このため、スライドカバー1bは、非常用のメカニカルキーとしての機能を十分に確保しながら、その薄型化が図られ、これにより電子キー1全体の薄型化が実現されるようにもなる。具体的には、図5(b)に示す背景技術の電子キー10の厚さY[mm]に対して、図2(b)に示す本発明の電子キー1の厚さX[mm]は、メカニカルキー100が削減(省略)された分、厚さが薄くなり、X[mm]<Y[mm]の関係になる。
【0038】
(2)非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bは、ケース本体1aに対してスライド移動することで、ケース本体1aを開放させることができる。しかもスライドカバー1bは、同ケース本体1aから取り外すことで電池11bの取り出し及び交換が行える電池蓋1g(図5(a)参照)の機能も備えるようになる。これにより、スライドカバー1bをスライド移動させることのみで、電池11bの取り出し及び交換が簡単に行えるようになる。そしてこの結果、電子キー1の使用部材において、機能の集約化が達成されるとともに、使用部材点数の削減とそれに伴うコストダウンが図れるようになる。
【0039】
(3)複数個の有底穴は、スライドカバー1bにおいて電池11bと対面する面側、即ち、ケース本体1aの内部側に設けられている。このため、スライドカバー1bによるケース本体1aの閉塞時には、8個の有底穴1h,…の配置パターンによって形成される照合用コードが外部から視認し難くなり、見栄えの余り芳しくない有底穴1h,…がスライドカバー1bによって隠蔽される。これにより、電子キー1の意匠性が高められるとともに、スライドカバー1bの不正な複製が困難となってセキュリティ性が向上するようにもなる。
【0040】
(4)非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bが非導電性の樹脂材料によって形成されているので、例えば、射出成形等の樹脂成形法によって容易に形成できるとともに、電子キー1の軽量化が図れるようになる。しかも、ケース本体1aに収容され、外部と無線通信を行う通信回路部16がスライドカバー1bによって電磁的に遮蔽される虞がなく、外部との良好な無線通信が確保されるようになる。
【0041】
(5)非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bは、ケース本体1aの閉塞時には、前記一対の係合凸部1p,1pが一対の係合凹部1q,1qに係合することによるスナップフィット機構によってケース本体1aに係合固定される。このため、スライドカバー1bをケース本体1aに対して簡単且つ確実に固定することができるようになるとともにケース本体1aからの取り外しも容易に行えるようになる。また、図5(a)において、ケース本体1aに、例えば、係合フック10fやそれに連動させる操作レバー10eからなる係合機構、及び該係合機構のためのスペースを設ける必要性が解消し、使用部材点数の削減、及び、組み立ての容易化、並びに、ケース本体1aの省スペース化が図れるようになる。これにより、さらなる電子キー1の小型化と薄型化に寄与させることができる。
【0042】
尚、上記実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記実施形態では、非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bに複数形成された有底穴1h,…の配置パターンをもって当該スライドカバー1bの照合用コードとした。しかしこれに限られず、該有底穴1h,…の代わりに、スライドカバー1bに形成した緩やかな凹みを用い、該凹みの配置パターンをもって当該スライドカバー1bの照合用コードとすることもできる。
【0043】
・上記実施形態では、非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bに8個形成された有底穴1h,…の配置パターンをもって当該スライドカバー1bの照合用コードとした。しかしこれに限られず、錠前装置24に挿し込むことで車両20とのID照合が機械的に行われる限り、有底穴1h,…に加え、さらに凹凸の線条や突起を照合用コードとすることも可能である。
【0044】
・上記実施形態では、電子キー1が適用される対象物を移動体である車両(四輪自動車)とした。しかしこれに限られず、例えば、電子キー1が適用される対象物を同じ移動体である二輪自動車や、不動産である住宅とすることも勿論可能である。
【0045】
・上記実施形態では、通信回路部16による無線通信を妨害しないように、スライドカバー1bは非導電性の樹脂材料により形成した。しかしこれに限られず、通信回路部16による無線通信を妨害しない限り、当該スライドカバー1bは、例えば、アルミニウム等の導電性の金属材料によって形成されていてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、ケース本体1aにおいて、電子キー1は、スライドカバー1bをケース本体1aに対してスライド移動させ、同ケース本体1aを開放することのみで、電池11b(電池収容部1j)を外部に露出させるように構成し、これにより電池11bの取り出し及び交換が行えるようにした。しかしこれに限られず、図4に示すように、電池11bを収容する部分には、スライドカバー1bによってケース本体10aを開放した場合でも、さらに電池11bを外部から覆うように、当該スライドカバー10bとは別に電池蓋1gを設けることも可能である。図4に示す電子キー1では、電池蓋1gは、ケース本体10aに対し、電池収容部1jの外周縁に設けられたリング状凹部1kに着接した状態で、4個(複数個)のビスb,…を介して着脱可能に取り付けられる。さらに、ケース本体10aと電池蓋1gとの間には、シール部材(Oリング)1sが配設されており、前記ビスb,…をケース本体10aに着座したナットn,…に締め付けるに伴い、電池蓋1gにより圧縮変形され、当該ケース本体10aと電池蓋1gとの間をシールするように構成されている。尚、図4に示す電池蓋1gを使用した形態であっても、スライドカバー10bがケース本体10aを閉塞した状態(図2(b)参照)では、該スライドカバー10bによって電池11bがケース本体10a内に略密封される(即ち、密封がより完全になされる)ことには何ら変わるところがない。
【0047】
・上記実施形態では、電子キー1のケース本体1a及びスライドカバー1bは、記通信回路部16による無線通信を妨害しないように、いずれも非導電性の樹脂材料を用いて形成した。しかしこれに限られず、前記通信回路部16による無線通信を妨害しないようにする限り、当該ケース本体1a及びスライドカバー1bの一部に、導電性を備え、且つ堅牢性の高いアルミニウムやクロム合金等の金属材料を適宜に用いることも可能である。これにより、電子キー1の意匠性や堅牢性をさらに高めることができるようになる。
【0048】
・上記実施形態では、非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bに複数形成された有底穴1h,…の配置パターンをもって当該スライドカバー1bの照合用コードとした。しかし、これに代えて、錠前装置24に挿し込むことで車両20とのID照合が機械的に行われる限り、スライドカバー1bに複数形成された貫通孔の配置パターンをもってスライドカバー1bの照合用コードとすることも可能である。尚、この場合、各貫通孔が外部から視認できないように、例えば、各貫通孔を外部から隠蔽する隠蔽用シールをスライドカバー1bに対して剥離可能に貼着することが好ましい。
【0049】
・上記実施形態では、スライドカバー1bに8個の有底穴1h,…を凹設したが、該有底穴1h,…の配置パターンが照合用コードとしての機能を充足する限り、7個以下であっても、9個以上であっても勿論よい。
【0050】
さらに、前記した実施形態および変形例より把握できる技術的思想について以下に記載する。
○請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記スライドカバーの一部は、導電性の金属材料によって形成され、前記複数個の有底穴は、当該金属材料部分に形成されている電子キー。
【0051】
同構成によれば、複数個の有底穴が、スライドカバーの一部の金属材料部に形成されているので、照合用コードを構成する複数個の有底穴が、堅牢性の高い金属材料に形成されるようになる。これにより、スライドカバーをメカニカルキーとして使用する場合に、対象物のドアに設けた錠前装置において、照合用コードを通じた機械的なID照合がさらに確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る電子キーシステムの電気的構成を示すブロック図。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係る電子キーの分解斜視図(I〜IVは部分拡大図を示す)、(b)は、同電子キーの組み立て完成状態を示す斜視図、(c)は、同電子キーを裏面から観た平面図。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る電子キーのスライドカバーを表面から観た平面図、(b)(i)は、同スライドカバーを裏面から観た平面図、(b)(ii)は、(b)(i)のA−A線断面図(Vは同断面の部分拡大図を示す)。
【図4】本発明の変形例に係る電子キーシステムの分解斜視図。
【図5】(a)は、従来例の電子キーの分解斜視図、(b)は、同電子キーの組み立て完成状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0053】
1,10…電子キー、2…通信制御装置、3…電子キーシステム、20…車両。
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物との無線通信を介して同対象物に設けられた外部機器の制御を許可させるための電子キーに関し、詳しくは、対象物と無線通信を行う通信回路部又は電池をケース本体内に略密封させるスライドカバーを具備した電子キーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両(対象物)においては、そのセキュリティレベル(安全性)のさらなる改善とともに車両のユーザの利便性の向上が強く求められている。このため、従来、ユーザが所持する携帯型の電子キー(携帯機)と、車両に設けられた通信制御装置との間で双方向の無線通信を行い、該無線通信によるID照合が成立したことを条件として、ドア錠の施解錠操作を許可したり、エンジンの始動を可能な状態としたりする電子キーシステムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このため、ユーザは、メカニカルキー等を用いた手動操作によることなく前記通信制御装置を用いて車載機器(外部機器)を自動制御することができて利便性が向上し、しかも電磁的なID照合が車両制御の開始要件となるため、車両のセキュリティレベルが高められる。
【0004】
このような電子キーを用いることで、ユーザは、平常時は、車両の通信制御装置を介して車載機器を自動制御することができる。ところが、通常電池で駆動される電子キーに電池切れが生じたり、車両のバッテリー(車載電源)が上がったりした非常時には、電子キーによる電磁的なID照合が使用できなくなる。そこで、そうした非常時に備え、車両のドアに設けた錠前装置に挿し込むことで当該車両とのID照合が機械的に行われ、同車両に設けられたドア施解錠装置等の車載機器の制御が許可される非常用のメカニカルキーを電子キーに具備させることが必須となっている。
【0005】
このような非常用のメカニカルキーを有する電子キーにおいて、次のような構造のものが知られている(例えば、特許文献2を参照)。即ち、図5(a)に示すように、当該電子キー10は、非常用のメカニカルキー100と、前記通信制御装置にID照合のためのIDコード(認証用コード)を含む電波を送信する通信回路部16及び電池(ボタン電池)11bを収容する略直方体状のケース本体10aと、該ケース本体10aに対してスライド自在に支持され、平面視略矩形状且つ側面視L字状とされたスライドカバー10bとを具備している。このスライドカバー10bは、ケース本体10aに対して、一対の案内レール10c,10c及び該案内レール10c,10cを摺動案内する一対の案内溝10d,10dを介してスライド自在に支持されている。そして、同スライドカバー10bによる前記ケース本体10aの閉塞時(図5(b)参照)には、該スライドカバー10bは、前記電池11bを前記ケース本体10a内に略密封させる。尚、前記通信回路部16には、図示しないアンテナ及び制御用マイコン(電子キー側マイコン)が設けられている。
【0006】
尚、図5(a)に示す電子キー10においては、前記メカニカルキー100の長尺の金属部分100mは、前記ケース本体10aに設けられ、略直方体状のスペース(空隙)を形成する収納部100aに収納されるように構成されている。
【0007】
また、前記ケース本体10aには、有底円筒状の電池収容部10jが設けられており、該電池収容部10jには前記電池11bが前記通信回路部16に設けられた電極10wに接触するように収容される。また、ケース本体10aには、電池収容部10jを閉塞し、前記電池11bを当該電池収容部10jに密閉させる電池蓋1gが設けられている。そして、該電池蓋1gは、電池収容部10jの外周縁に設けられたリング状凹部10kに着接した状態で、ケース本体10aに対し、4個(複数個)のビスb,…を介して着脱可能に取り付けられる。さらに、ケース本体10aと電池蓋1gとの間には、シール部材(Oリング)1sが配設されており、前記ビスb,…をケース本体1aに着座したナットn,…に締め付けるに伴い、電池蓋1gにより圧縮変形され、当該ケース本体10aと電池蓋1gとの間をシールするように構成されている。
【0008】
また、前記メカニカルキー100の樹脂製の把持部100nには、貫通孔100hが設けられている。そして、このメカニカルキー100は、その金属部分100mがケース本体10aの前記収納部100aに収納(挿入)されたときに、その把持部100nの貫通孔100hに対して、スライドカバー10bの表面から出没自在に設けられた係合フック10fが挿入(係合)されることで、同ケース本体10aに対して抜け止めされる。尚、該係合フック10fは、スライドカバー10bに設けられ、同係合フック10fの抜け止めを解除するべくユーザの手指等によって操作される操作レバー10eと連動するようにされている。この操作レバー10eは、スライドカバー10bに設けられ、図示しないばね部材(弾性部材)を介して図5(a)において右方向に付勢されている。そして、前記係合フック10fは、この操作レバー10eを介してケース本体10aの表面から外方向(図5(a)において右方向)に向けて付勢されている。
【0009】
この電子キー10は、図5(b)に示すように、前記ケース本体10a、スライドカバー10b及びメカニカルキー100が互いに組み付けられると、組み付け完了の状態となり、通常は、この状態で車両のユーザによって所持され、使用される。尚、図5(b)に示すように、電子キー10の厚さ(図5(a)において上下方向の距離)をY[mm]とする。
【特許文献1】特開2007−142886号公報
【特許文献2】特開2004−258315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような電子キーにおいては、前記メカニカルキー100が占有する空間(メカニカルキー100の収納スペース)を必ず設ける必要性があり、これにより電子キー10の設計上の自由度が阻害され、当該電子キー10の小型化や薄型化の妨げとなっている。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、非常時に使用されるメカニカルキーを具備するとともに、小型化や薄型化が実現できる電子キーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、対象物に設けられた通信制御装置に認証用コードを含む電波を送信することで、当該認証用コードが正規のものである場合に前記対象物に設けられた外部機器の制御が許可されるようにした通信回路部と、該通信回路部に直流電流を供給する電池を具備し、前記通信回路部及び電池を収容するケース本体と、該ケース本体に対してスライド自在に支持されるとともに略平板状に形成され、且つ、当該ケース本体を閉塞する時には、前記電池を前記ケース本体内に略密封するようにしたスライドカバーをさらに具備した電子キーであって、前記スライドカバーには、複数個の有底穴が凹設され、同スライドカバーは、当該有底穴の配置パターンをもって照合用コードとするメカニカルキーとして機能すること、を要旨とする。
【0013】
同構成によれば、スライドカバーがメカニカルキーの機能を兼ねるようになるため、従来、ケース本体内において、メカニカルキーを収容するために必要であったスペースが不要となり、電子キーの設計上の自由度が増大し、同電子キーの小型化が図れるようになる。しかも、メカニカルキーとしてのスライドカバーは、ある程度の奥行きを確保することが必要となるキー溝ではなく、同スライドカバーに凹設された複数個の有底穴の配置パターンをもって照合用コードとしている。このため、スライドカバーは、非常用のメカニカルキーとしての機能を十分に確保しながら、その薄型化を実現することができるようになる。そして、このようなスライドカバーの薄型化は、ひいては、電子キー全体の薄型化に貢献するようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーにおいて、前記スライドカバーは、同スライドカバーによる前記ケース本体の閉塞時には、前記電池を前記ケース本体内に略密封するとともに、同スライドカバーによる前記ケース本体の開放時には、前記電池の取り出し及び交換を可能としたこと、を要旨とする。
【0015】
同構成によれば、メカニカルキーとしてのスライドカバーは、ケース本体に対してスライド移動することで、ケース本体を開放させることができる。しかもスライドカバーは、同ケース本体から取り外すことで電池の取り出し及び交換が行える電池蓋の機能も備えるようになる。これにより、スライドカバーをスライド移動させることのみで、電池の取り出し及び交換が簡単に行えるようになる。そしてこの結果、電子キーの使用部材において、機能の集約化が達成されるとともに、使用部材点数の削減とそれに伴うコストダウンが図れるようになる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電子キーにおいて、前記複数個の有底穴は、前記スライドカバーにおいて前記電池と対面する面側に凹設されていること、を要旨とする。
【0017】
同構成によれば、複数個の有底穴は、スライドカバーにおいて電池と対面する面側、即ち、ケース本体の内部側に設けられている。このため、スライドカバーによるケース本体の閉塞時には、複数個の有底穴の配置パターンによって形成される照合用コードが外部から視認し難くなり、見栄えの余り芳しくない有底穴がスライドカバーによって隠蔽される。これにより、電子キーの意匠性が高められるとともに、スライドカバーの不正な複製が困難となってセキュリティ性が向上するようにもなる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記スライドカバーは、非導電性の樹脂材料によって形成されていること、を要旨とする。
【0019】
同構成によれば、メカニカルキーとしてのスライドカバーが非導電性の樹脂材料によって形成されているので、例えば、射出成形等の樹脂成形法によって容易に形成できるとともに、電子キーの軽量化が図れるようになる。しかも、ケース本体に収容され、外部と無線通信を行う通信回路部がスライドカバーによって電磁的に遮蔽される虞がなく、外部との良好な無線通信が確保されるようになる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記スライドカバーは、前記ケース本体を閉塞する時には、スナップフィット機構によって前記ケース本体に係合固定されること、を要旨とする。
【0021】
同構成によれば、メカニカルキーとしてのスライドカバーは、ケース本体の閉塞時には、スナップフィット機構によってケース本体に係合固定される。このため、スライドカバーをケース本体に対して簡単且つ確実に固定することができるようになるとともにケース本体からの取り外しも容易に行えるようになる。また、ケース本体に、例えば、係合フックやそれに連動させる操作レバー等からなる係合機構、及び該係合機構のためのスペースを設ける必要性が解消し、使用部材点数の削減、及び、組み立ての容易化、並びに、ケース本体の省スペース化が図れるようになる。これにより、さらなる電子キーの小型化と薄型化に寄与させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電子キーによれば、非常時に使用されるメカニカルキーを具備するとともに、小型化や薄型化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
本実施形態の電子キー1は、図1に示す電子キーシステム3に使用されるものである。この電子キーシステム3は、車両(四輪自動車)20のユーザが所持する電子キー1と、車両20に設けられた通信制御装置2との間で双方向の無線通信を行い、該無線通信が成立したことを条件として、ドア錠の施解錠操作を許可したり、エンジンの始動を可能な状態としたりするものである。尚、本実施形態では、通信制御装置2は、車両20に搭載された車載電源21bから直流電流が供給されて駆動され、通信回路部16は、電池11bから直流電流が供給されて駆動されるようになっている。
【0024】
前記通信制御装置2に設けられた車両側マイコン21(のメモリ21aに格納された制御用プログラム)は、該装置2に設けられた車両側送信回路23及びアンテナ23aを介して、予め設定された送信要求信号としてのリクエスト信号(電波)を車両周辺や車両室内に送信して同リクエスト信号の送信エリアを形成する。
【0025】
そして、当該送信エリアに前記電子キー1が進入すると、同電子キー1に設けられた電子キー側マイコン11(のメモリ11aに格納された制御用プログラム)は、アンテナ13a及び電子キー側受信回路13を介して当該リクエスト信号を受信する。そして、同マイコン11は、そのリクエスト信号に応答し、メモリ11aに記憶されたIDコード(認証用コード)を含むIDコード信号(電波)を電子キー側送信回路12及びアンテナ12aを介して通信制御装置2に送信する。尚、本実施形態では、前記電子キー側マイコン11、電子キー側送信回路12及び電子キー側受信回路13(それぞれアンテナ12a及びアンテナ13aを含む。)により通信回路部16が構成されている。
【0026】
そして、前記通信制御装置2は、このIDコード信号を該装置2に設けられたアンテナ22a及び車両側受信回路22を介して受信すると、前記車両側マイコン21がそのメモリ21aに記憶されたIDコードと前記IDコード信号に含まれるIDコードとの照合を行う。そして、当該電子キーシステム3は、それらIDコード同士が一致したこと(電子キー1が送信したIDコードが正規のものであること)を条件として電子キー1と通信制御装置2との間で無線通信によるID照合が成立したものとする。そして、同電子キーシステム3は、車両20のドア施解錠装置25によってドア錠を施解錠可能な状態としたり、エンジン制御装置26を介してエンジン27を始動可能な状態としたりする。即ち、電子キーシステム3では、電子キー1が送信したIDコードが正規のものである場合に、同車両20に設けられた車載機器としての前記ドア施解錠装置25及びエンジン制御装置26の制御が許可される。
【0027】
尚、本実施形態の電子キー1において、前記電子キー側マイコン11には、車両20のドア施解錠装置25によるドア錠の施解錠制御を行うためのドア施錠スイッチ14及びドア解錠スイッチ15が電気的に接続されている。即ち、電子キー1が送信したIDコードが正規のものである場合において、ドア施錠スイッチ14を押圧操作すれば、前記車両側マイコン21を介してドア施解錠装置25が制御され、車両20のドア錠がロック(施錠)される。また、この場合、ドア解錠スイッチ15を押圧操作すれば、前記車両側マイコン21を介してドア施解錠装置25が制御され、車両20のドア錠がアンロック(解錠)される。
【0028】
本実施形態の電子キー1は、電池切れ(電池11bの消耗)が生じたり、さらに車両20の車載電源21bが上がったりした非常時には、正常に作動しなくなる。このため、同電子キー1には、このような非常時に備え、次のような非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1b(図2(a)及び図2(b)参照)が設けられている。即ち、同電子キー1には、車両20のドアに設けられ、前記車両側マイコン21に電気的に接続された錠前装置24に挿し込むことで、当該車両側マイコン21によって当該車両20とのID照合が機械的に行われる。そして、これにより前記ドア施解錠装置25によるドア錠の施解錠制御が許可され、車両20のドアの施解錠操作が可能となるスライドカバー1bが設けられている。
【0029】
詳しくは、図2(a)に示すように、本実施形態の電子キー1は、前記通信制御装置2にID照合のためのIDコード(認証用コード)を含む電波を送信する通信回路部16及び電池11bを収容する略直方体状且つ樹脂製のケース本体1aと、該ケース本体1aに対してスライド自在に支持された前記スライドカバー1bとを具備している。詳しくは、該スライドカバー1bは、全体として樹脂材料を用いて、略平板状、平面視略矩形状、且つ側面視L字状とされている。そして、同スライドカバー1bは、ケース本体1aに対して、同スライドカバー1bに設けた一対の案内レール1c,1c、及び同ケース本体1aに設けられ、該案内レール1c,1cを摺動案内する一対の案内溝1d,1dを介してスライド自在に支持されている。尚、この一対の案内レール1c,1cの各先端は、図2(a)に示すように、相対向するように小さく鉤(かぎ)状に屈曲している。そして、該一対の鉤状凸部1u,1uと前記案内溝1d,1dに設けた一対の鉤状凹部1v,1vとが互いに摺動嵌合しあうことで、スライドカバー1bが同案内溝1d,1dの軌道から脱落しないように構成されている。
【0030】
そして、スライドカバー1bによる前記ケース本体1aの閉塞時(図2(b)参照)には、該スライドカバー1bは、スナップフィット機構によって、当該ケース本体1aに係合固定される。即ち、スライドカバー1bの垂下部1rの両側面端部にそれぞれ凸設された一対の係合凸部1p,1pが、前記ケース本体1aの内側の両側面端部にそれぞれ凹設された一対の係合凹部1q,1qに係合することによって当該ケース本体1aに係合固定される。そしてこのとき、スライドカバー1bによって、前記電池11bが前記ケース本体1a内に略密封される。尚、前記通信回路部16には、図1に示すアンテナ12a,13a及び電子キー側マイコン11が設けられている。尚、スライドカバー1bの表面は意匠面を構成しており、図2(a)及び図2(b)に示すスライドカバー1bでは、‘ELECTRIC KEY’(「電子キー」の意味)なる英字が印刷(表示)されている。
【0031】
また、前記ケース本体1aには、有底円筒状の電池収容部1jが設けられており、該電池収容部1jには前記電池(ボタン電池)11bが前記通信回路部16に設けられた電極1wに接触した状態で収容されている。この電子キー1では、スライドカバー1bをスライド移動させ、前記ケース本体1aを開放することで、前記電池11bの電池収容部1jからの取り出し及び交換が可能に構成されている。即ち、本実施形態では、スライドカバー1bが、背景技術で説明した電池蓋1g(図5(a)参照)の機能も備えていることになる。さらに、図2(a)に示すように、ケース本体1aとスライドカバー1bとの間には、シール部材1sが配設されている。そして、該シール部材1sは、スライドカバー1bによるケース本体1aの閉塞時に、同スライドカバー1bにより圧縮変形され、当該ケース本体1aとスライドカバー1bとの間をシールするように構成されている。なお、本実施形態では、該シール部材1sには、ゴム製のOリングを用いている。
【0032】
本実施形態の電子キー1は、図2(b)に示すように、前記ケース本体1a及びスライドカバー1bが互いに組み付けられると、組み付け完了の状態となり、通常は、この状態で車両20のユーザによって所持され、使用される。尚、図2(b)に示すように、電子キー1の厚さをX[mm]とする。
【0033】
また、図2(c)に示すように、前記電子キー10の裏面(スライドカバー10bと反対側の面)には、車両20のドア施解錠装置25によるドア錠の施解錠制御を行うためのドア施錠スイッチ14及びドア解錠スイッチ15が押圧操作可能に配設されている。
【0034】
本実施形態において、図2(a)、図3(a)及び図3(b)に示すように、非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bは、その裏面、即ち前記電池11bと対面する面側において、平面視略円形の有底穴1h,…が8個(複数個)凹設(形成)されている。そして、該電子キー1は、該有底穴1h,…の配置パターンを、スライドカバー1bを前記錠前装置24の所定箇所に挿し込むことで車両20とのID照合が機械的に実行される照合用コードとしている。このようにスライドカバー1bは、ある程度の奥行きを確保することが必要となるキー溝ではなく、同スライドカバー1bに凹設された複数個の有底穴1h,…の配置パターンをもって照合用コードとしているので、非常用のメカニカルキーとしての機能を十分に確保しながら、その薄型化を図ることができる。
【0035】
そして、電子キー1に電池切れが生じたり、車両20のバッテリー(車載電源21b)が上がったりした非常時には、スライドカバー1bの先端部(有底穴1h,…が形成された領域を含む部分)を錠前装置24の所定箇所に挿し込むことで前記ID照合が機械的に実行される。そして、車両20においては、車両側マイコン21によって、当該照合用コードと、車両20に固有に設定された照合用コードとの同一性が判断される。そして、両照合用コードが一致したことを条件として、前記ドア施解錠装置25によりドア錠の施解錠制御が許可され、車両20のドアの施解錠操作及び開閉操作が可能となる。
【0036】
尚、本実施形態において、前記錠前装置24によるスライドカバー1bの機械的なID認証は、前記スライドカバー1bの有底穴1h,…と当該錠前装置24の所定位置に可動に設けられた複数個のピンタンブラ(図示せず)との協働(互いの係止・非係止関係)によって実現される。
【0037】
本実施形態の電子キー1によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)スライドカバー1bが非常用のメカニカルキーの機能を兼ねるようになるため、図5(a)に示すように、従来、ケース本体10a内において、メカニカルキー100を収容するために必要であったスペースが不要となり、電子キー1の設計上の自由度が増大し、同電子キー1の小型化が図れるようになる。しかも、メカニカルキーとしてのスライドカバー1bは、ある程度の奥行き(溝の深さ)を確保することが必要となるキー溝ではなく、同スライドカバー1bに凹設された8個の有底穴1h,…の配置パターンをもって照合用コードとしている。このため、スライドカバー1bは、非常用のメカニカルキーとしての機能を十分に確保しながら、その薄型化が図られ、これにより電子キー1全体の薄型化が実現されるようにもなる。具体的には、図5(b)に示す背景技術の電子キー10の厚さY[mm]に対して、図2(b)に示す本発明の電子キー1の厚さX[mm]は、メカニカルキー100が削減(省略)された分、厚さが薄くなり、X[mm]<Y[mm]の関係になる。
【0038】
(2)非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bは、ケース本体1aに対してスライド移動することで、ケース本体1aを開放させることができる。しかもスライドカバー1bは、同ケース本体1aから取り外すことで電池11bの取り出し及び交換が行える電池蓋1g(図5(a)参照)の機能も備えるようになる。これにより、スライドカバー1bをスライド移動させることのみで、電池11bの取り出し及び交換が簡単に行えるようになる。そしてこの結果、電子キー1の使用部材において、機能の集約化が達成されるとともに、使用部材点数の削減とそれに伴うコストダウンが図れるようになる。
【0039】
(3)複数個の有底穴は、スライドカバー1bにおいて電池11bと対面する面側、即ち、ケース本体1aの内部側に設けられている。このため、スライドカバー1bによるケース本体1aの閉塞時には、8個の有底穴1h,…の配置パターンによって形成される照合用コードが外部から視認し難くなり、見栄えの余り芳しくない有底穴1h,…がスライドカバー1bによって隠蔽される。これにより、電子キー1の意匠性が高められるとともに、スライドカバー1bの不正な複製が困難となってセキュリティ性が向上するようにもなる。
【0040】
(4)非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bが非導電性の樹脂材料によって形成されているので、例えば、射出成形等の樹脂成形法によって容易に形成できるとともに、電子キー1の軽量化が図れるようになる。しかも、ケース本体1aに収容され、外部と無線通信を行う通信回路部16がスライドカバー1bによって電磁的に遮蔽される虞がなく、外部との良好な無線通信が確保されるようになる。
【0041】
(5)非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bは、ケース本体1aの閉塞時には、前記一対の係合凸部1p,1pが一対の係合凹部1q,1qに係合することによるスナップフィット機構によってケース本体1aに係合固定される。このため、スライドカバー1bをケース本体1aに対して簡単且つ確実に固定することができるようになるとともにケース本体1aからの取り外しも容易に行えるようになる。また、図5(a)において、ケース本体1aに、例えば、係合フック10fやそれに連動させる操作レバー10eからなる係合機構、及び該係合機構のためのスペースを設ける必要性が解消し、使用部材点数の削減、及び、組み立ての容易化、並びに、ケース本体1aの省スペース化が図れるようになる。これにより、さらなる電子キー1の小型化と薄型化に寄与させることができる。
【0042】
尚、上記実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記実施形態では、非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bに複数形成された有底穴1h,…の配置パターンをもって当該スライドカバー1bの照合用コードとした。しかしこれに限られず、該有底穴1h,…の代わりに、スライドカバー1bに形成した緩やかな凹みを用い、該凹みの配置パターンをもって当該スライドカバー1bの照合用コードとすることもできる。
【0043】
・上記実施形態では、非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bに8個形成された有底穴1h,…の配置パターンをもって当該スライドカバー1bの照合用コードとした。しかしこれに限られず、錠前装置24に挿し込むことで車両20とのID照合が機械的に行われる限り、有底穴1h,…に加え、さらに凹凸の線条や突起を照合用コードとすることも可能である。
【0044】
・上記実施形態では、電子キー1が適用される対象物を移動体である車両(四輪自動車)とした。しかしこれに限られず、例えば、電子キー1が適用される対象物を同じ移動体である二輪自動車や、不動産である住宅とすることも勿論可能である。
【0045】
・上記実施形態では、通信回路部16による無線通信を妨害しないように、スライドカバー1bは非導電性の樹脂材料により形成した。しかしこれに限られず、通信回路部16による無線通信を妨害しない限り、当該スライドカバー1bは、例えば、アルミニウム等の導電性の金属材料によって形成されていてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、ケース本体1aにおいて、電子キー1は、スライドカバー1bをケース本体1aに対してスライド移動させ、同ケース本体1aを開放することのみで、電池11b(電池収容部1j)を外部に露出させるように構成し、これにより電池11bの取り出し及び交換が行えるようにした。しかしこれに限られず、図4に示すように、電池11bを収容する部分には、スライドカバー1bによってケース本体10aを開放した場合でも、さらに電池11bを外部から覆うように、当該スライドカバー10bとは別に電池蓋1gを設けることも可能である。図4に示す電子キー1では、電池蓋1gは、ケース本体10aに対し、電池収容部1jの外周縁に設けられたリング状凹部1kに着接した状態で、4個(複数個)のビスb,…を介して着脱可能に取り付けられる。さらに、ケース本体10aと電池蓋1gとの間には、シール部材(Oリング)1sが配設されており、前記ビスb,…をケース本体10aに着座したナットn,…に締め付けるに伴い、電池蓋1gにより圧縮変形され、当該ケース本体10aと電池蓋1gとの間をシールするように構成されている。尚、図4に示す電池蓋1gを使用した形態であっても、スライドカバー10bがケース本体10aを閉塞した状態(図2(b)参照)では、該スライドカバー10bによって電池11bがケース本体10a内に略密封される(即ち、密封がより完全になされる)ことには何ら変わるところがない。
【0047】
・上記実施形態では、電子キー1のケース本体1a及びスライドカバー1bは、記通信回路部16による無線通信を妨害しないように、いずれも非導電性の樹脂材料を用いて形成した。しかしこれに限られず、前記通信回路部16による無線通信を妨害しないようにする限り、当該ケース本体1a及びスライドカバー1bの一部に、導電性を備え、且つ堅牢性の高いアルミニウムやクロム合金等の金属材料を適宜に用いることも可能である。これにより、電子キー1の意匠性や堅牢性をさらに高めることができるようになる。
【0048】
・上記実施形態では、非常用のメカニカルキーとしてのスライドカバー1bに複数形成された有底穴1h,…の配置パターンをもって当該スライドカバー1bの照合用コードとした。しかし、これに代えて、錠前装置24に挿し込むことで車両20とのID照合が機械的に行われる限り、スライドカバー1bに複数形成された貫通孔の配置パターンをもってスライドカバー1bの照合用コードとすることも可能である。尚、この場合、各貫通孔が外部から視認できないように、例えば、各貫通孔を外部から隠蔽する隠蔽用シールをスライドカバー1bに対して剥離可能に貼着することが好ましい。
【0049】
・上記実施形態では、スライドカバー1bに8個の有底穴1h,…を凹設したが、該有底穴1h,…の配置パターンが照合用コードとしての機能を充足する限り、7個以下であっても、9個以上であっても勿論よい。
【0050】
さらに、前記した実施形態および変形例より把握できる技術的思想について以下に記載する。
○請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、前記スライドカバーの一部は、導電性の金属材料によって形成され、前記複数個の有底穴は、当該金属材料部分に形成されている電子キー。
【0051】
同構成によれば、複数個の有底穴が、スライドカバーの一部の金属材料部に形成されているので、照合用コードを構成する複数個の有底穴が、堅牢性の高い金属材料に形成されるようになる。これにより、スライドカバーをメカニカルキーとして使用する場合に、対象物のドアに設けた錠前装置において、照合用コードを通じた機械的なID照合がさらに確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る電子キーシステムの電気的構成を示すブロック図。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係る電子キーの分解斜視図(I〜IVは部分拡大図を示す)、(b)は、同電子キーの組み立て完成状態を示す斜視図、(c)は、同電子キーを裏面から観た平面図。
【図3】(a)は、本発明の実施形態に係る電子キーのスライドカバーを表面から観た平面図、(b)(i)は、同スライドカバーを裏面から観た平面図、(b)(ii)は、(b)(i)のA−A線断面図(Vは同断面の部分拡大図を示す)。
【図4】本発明の変形例に係る電子キーシステムの分解斜視図。
【図5】(a)は、従来例の電子キーの分解斜視図、(b)は、同電子キーの組み立て完成状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0053】
1,10…電子キー、2…通信制御装置、3…電子キーシステム、20…車両。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に設けられた通信制御装置に認証用コードを含む電波を送信することで、当該認証用コードが正規のものである場合に前記対象物に設けられた外部機器の制御が許可されるようにした通信回路部と、該通信回路部に供給する電池を具備し、
前記通信回路部及び電池を収容するケース本体と、該ケース本体に対してスライド自在に支持されるとともに略平板状に形成され、且つ、当該ケース本体を閉塞する時には、前記電池を前記ケース本体内に略密封するようにしたスライドカバーとをさらに具備した電子キーであって、
前記スライドカバーには、複数個の有底穴が凹設され、同スライドカバーは、当該有底穴の配置パターンをもって照合用コードとするメカニカルキーとして機能することを特徴とする電子キー。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーにおいて、
前記スライドカバーは、同スライドカバーによる前記ケース本体の閉塞時には、前記電池を前記ケース本体内に略密封するとともに、同スライドカバーによる前記ケース本体の開放時には、前記電池の取り出し及び交換を可能とした電子キー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子キーにおいて、
前記複数個の有底穴は、前記スライドカバーにおいて前記電池と対面する面側に凹設されている電子キー。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、
前記スライドカバーは、非導電性の樹脂材料によって形成されている電子キー。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、
前記スライドカバーは、前記ケース本体を閉塞する時には、スナップフィット機構によって前記ケース本体に係合固定される電子キー。
【請求項1】
対象物に設けられた通信制御装置に認証用コードを含む電波を送信することで、当該認証用コードが正規のものである場合に前記対象物に設けられた外部機器の制御が許可されるようにした通信回路部と、該通信回路部に供給する電池を具備し、
前記通信回路部及び電池を収容するケース本体と、該ケース本体に対してスライド自在に支持されるとともに略平板状に形成され、且つ、当該ケース本体を閉塞する時には、前記電池を前記ケース本体内に略密封するようにしたスライドカバーとをさらに具備した電子キーであって、
前記スライドカバーには、複数個の有底穴が凹設され、同スライドカバーは、当該有底穴の配置パターンをもって照合用コードとするメカニカルキーとして機能することを特徴とする電子キー。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーにおいて、
前記スライドカバーは、同スライドカバーによる前記ケース本体の閉塞時には、前記電池を前記ケース本体内に略密封するとともに、同スライドカバーによる前記ケース本体の開放時には、前記電池の取り出し及び交換を可能とした電子キー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電子キーにおいて、
前記複数個の有底穴は、前記スライドカバーにおいて前記電池と対面する面側に凹設されている電子キー。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、
前記スライドカバーは、非導電性の樹脂材料によって形成されている電子キー。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子キーにおいて、
前記スライドカバーは、前記ケース本体を閉塞する時には、スナップフィット機構によって前記ケース本体に係合固定される電子キー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2009−293247(P2009−293247A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146746(P2008−146746)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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