説明

電子コンテンツ配信システム

【課題】 コミックのような画像と文字で構成される電子コンテンツを端末に配信するにあたり、小さな端末画面でも視認性を損なわぬよう文字を表現し、かつ、電子コンテンツの多言語展開にも好適な電子コンテンツ配信システムの提供を課題とする。
【解決手段】 表示画面の下部に文字領域35を設定し、文字列34をコマ31の領域外に表示することにより可読性のよい文字表示が可能となり、他言語の表示にも適す。さらに、吹き出しと文字列の対応のための番号を付すことにより、セリフの話者と順番を明示することが可能となる。また、コマ31の左右に文字領域を設けると、縦書きの文字列が適切に表示できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話のようなディスプレイを持つ携帯型端末にコミックなどの電子コンテンツを配信し再生するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を始めとして、PDAやゲーム機といった表示機能を備えた携帯型端末が広く普及している。このような端末の表示機能は、大サイズ、高精細、高精彩化が進み、これに伴い、携帯型端末で閲覧するための電子コンテンツも静止画や動画を取り混ぜ多様化の一途である。例えばコミックは、携帯型端末で閲覧するに適した電子コンテンツとして、従来の紙ベースの閲覧方法から離れ、電子コンテンツとしての編集、配信、閲覧の方法が種々模索されている。
【0003】
例えば特許文献1では、不特定多数の携帯端末と、データ通信網を介してコンテンツを端末に配信するサービス機関(サーバ)とで構成されるコミック提供サービスに関する技術を開示し、特許文献2、3では、コミックなど紙ベースの素材から、制約のある携帯端末の表示能力に合わせ、携帯端末用のコンテンツを編集あるいは表示する方法を開示している。さらに特許文献4では、例えば日本語で制作されたコミックから他言語版のコンテンツを制作する際の編集方法に関する技術を開示している。
【特許文献1】特開2001−188855号公報
【特許文献2】特開2007−164550号公報
【特許文献3】特開2007−249909号公報
【特許文献4】特開2008−217696号公報
【0004】
紙ベースで制作されたコミックから携帯端末用コンテンツを制作するにあたっては、携帯端末の表示能力の制約の中で原作者の意図をいかに再現するかが大きな課題であり、特に、上記の特許文献2〜4は、携帯端末用コンテンツの制作にあたり、携帯端末の表示能力を考慮して、視認性やストーリー性を損なわぬよう素材を加工および編集することを主要な課題としている。
【0005】
しかし上記のように紙ベースの素材から電子コンテンツを生成する制作過程では、視認性やストーリー性を確保するための一律の手法があるわけではなく、実際には制作担当者の判断や技能に依る要素が多くなり、制作には多大な労力を要している。例えば、コミック誌は、一般に、複数のコマからなるページ単位で構成されるが、これを携帯端末用の電子コンテンツに展開するには、携帯端末の表示サイズに合わせ一旦コマ単位に分解し、ストーリーに沿って再構成する必要がある。また吹き出しに収めるセリフ(文字情報)は、端末の解像度を考慮して、文字サイズの調整や、場合によってはセリフそのものを加工する必要が生じる。これらの操作は、作品の構成に応じて個々に行われ、各コマはセリフを含んだ一つの画像として再構成される。
さらに、文字を他言語に翻訳した電子コンテンツの制作では、文字配列の縦書き/横書きの問題が伴い、文字列を吹き出しに収めるのに苦慮するなど、視認性を確保しながらの制作はより複雑なものとなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明では、コミックのような画像と文字で構成される素材から電子コンテンツを制作し端末に配信するにあたり、セリフなどの文字列情報の表示位置を画像情報とは独立して制御することにより文字列情報の視認性を確保し、加えて、電子コンテンツの他言語展開にも好適な電子コンテンツ配信システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の電子コンテンツ配信システムは、
サーバから端末へネットワークを介して電子コンテンツを配信するシステムであって、
前記電子コンテンツは、静止画イメージ情報と文字列情報と属性情報とからなり、前記イメージ情報は、当該コンテンツのストーリーをなす要素画像を含み当該要素画像と文字列情報とは前記属性情報によって対応付けられ、
前記端末は、電子コンテンツを表示する表示部と、表示部を制御する表示制御部を備え、前記表示制御部によって表示部に表示された当該要素画像に対応する文字列を表示部の文字表示領域に表示することを特徴とする。
さらに、前記文字列情報は、複数の言語を備え、前記属性情報により所定の言語を選択可能としたことを特徴とする。
また、前記文字表示領域は、表示部の周辺部に設けられ、文字列のサイズが表示領域を超えるときはスクロールする、あるいは、前記表示領域は、要素画像の吹き出し部に設けられ、文字列のサイズが表示領域を超えるときはスクロールするようにしたことを特徴とする。また、前記文字表示領域に表示される文字列は、選択された言語に応じて、表示方向を縦表示、横表示に切り替え可能とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子コンテンツ配信システムによれば、静止画イメージ情報と文字情報が相互を関連付ける属性情報とともに配信され、端末では文字情報の表示位置や表示法を種々設定することが可能となるため、携帯型端末のような小サイズの表示機能であっても、視認性よく可読性の高い表示とすることができる。
特に、電子コミック等を、表示能力に制約のある携帯端末に表示するような場合に効果的である。さらに、文字情報の多言語展開にあたっては、言語に合わせ文字の縦組みまたは横組みの選択が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の電子コンテンツ配信システムの構成図である。電子コンテンツ配信システム1は、端末4、サーバ2、ネットワーク3で構成され、サーバ2に格納された電子コンテンツ10はネットワーク3を介して端末4に配信される。
【0010】
電子コンテンツ20は、静止画イメージ情報21、文字列情報22、属性情報23などからなり、これらは、通常、電子コンテンツ制作装置5のような制作手段で別途制作されるが、このように電子コンテンツ制作装置5で制作された電子コンテンツ20もネットワーク3を介してオンラインでサーバ2に格納することができる。
なお、端末4は、図1では、例として携帯電話の形態で表しているが、携帯電話に限らずPDAやゲーム端末のような、ネットワークに接続可能かつ表示機能を持つ携帯型端末であってもよい。端末4が携帯電話であるときは、ネットワーク3は通信キャリアが提供する携帯電話網となり、電子コンテンツ20は携帯電話網を使って端末4に配信される。
以下、端末4を携帯電話とした例で説明を続ける。
【0011】
図2は、端末4の様態を示したものである。
携帯電話10は、外観上は情報を表示するための表示部11と利用者の指示を入力するための操作部12からなり、その他、電話本来の働きのための音声入出力部13を持つ。
【0012】
図3は、端末4の機能ブロック図を、携帯電話を例に示したものである。
携帯電話10の表示部11は液晶などのディスプレイ素子を持ち、表示制御部101によって駆動/制御される。同様に、操作部12は入力制御部により、また音声入力部は音声制御部により、また外部との通信を担うアンテナ15は通信制御部に駆動、制御される。
制御部100は、CPUを持ち、CPUはメモリ部110に格納されたプログラムにしたがって動作し、バス120を介して上記の各制御部(101〜105)を駆動することにより携帯電話10の全体を制御する。
配信された電子コンテンツは、メモリ部110に一時的に格納され、操作部12からの指示を受けた制御部の働きにより呼び出され、表示制御部により可視情報として表示部11に表示される。
【0013】
図4は、電子コンテンツの元となる素材を示したもので、ここでは紙ベースで制作されたコミックの1ページを表している。
紙ベースのコミックの紙面30は、ストーリーを構成する複数のコマからなり、各コマはストーリーに沿ってページ内に配置される。図4内の各コマに付した(1)〜(4)は、ストーリーの展開にしたがったコマの順序を示し、説明の便宜上付したものである。
コマ31は「絵」の部分とセリフの部分からなり、セリフは吹き出し33の中に文字列で表現される。
【0014】
一般に、携帯型端末の表示画面は、面積、解像度などに制約が大きく、特に文字を含む電子コンテンツの制作においては文字の可読性を確保するための加工が必要となる。
よって、上記のような素材から電子コンテンツ20を制作するには、図1に示した電子コンテンツ制作装置5のような制作手段を用い、電子コンテンツの再生に適したデータ加工を施すのが一般的である。
【0015】
電子コンテンツ制作装置5による典型的な制作工程は以下のようになる。
1)紙面30をスキャナで読み、画像データとして取り込む
2)取り込んだ画像からコマ毎の画像を切り出し、以降、コマ単位で編集する
3)コマ31の画像を、「絵」の部分となる静止画と「文字」である文字画像に分ける
4)文字画像を参照して、コード化した文字列を制作する
多言語展開の場合は、ここで他言語の翻訳文字列も制作する
5)静止画および文字列を、端末の表示再現能力(解像度など)に合わせ調整する
6)静止画、文字列、属性情報(ページ、コマ番、セリフ順など)を紐付ける
【0016】
図5は、電子コンテンツ制作装置5の制作画面51の例であり、画面左側に素材を表示し、画面右側に素材を加工するための操作メニューを表している。
図5(a)は、ページ単位の制作の様子を示しており、制作画面51に1ページの紙面画像52の体裁を表示し、操作メニューより使用する処理機能を選択しながら制作を進める。同様に、図5(b)はコマ単位の制作の様子を表し、操作メニューには文字列情報の制作のための処理機能が配されている。
【0017】
この結果、制作された電子コンテンツは、図1に示すサーバ2に、静止画イメージ情報21、文字列情報22、および属性情報23としてそれぞれ関連付けられ格納される。
図6に、電子コンテンツ20の静止画イメージ情報21、文字列情報22、属性情報23を構成する要素の例を示す。
サーバ2に格納された電子コンテンツ20は、端末利用者が指定する番組や言語に応じてサーバ2から抽出され配信される。なお、電子コンテンツ20の配信にあたっては、閲覧に適しかつ普及度の高いHTML形式のようなデータ形式で配信する、などの方法が考えられる。
【0018】
図7(A)、(B)は、配信された電子コンテンツ20を閲覧する時の端末4の画面構成を示す図であり、ここでは携帯電話の表示画面を表している。
それぞれ、携帯電話10の表示部11に、1コマを表示した状態を示し、静止画32とセリフに対応する文字列34の関係を表している。
【0019】
図7(A)は、文字表示領域を縦長画面の下部に文字領域35として設定した場合の一例を示しており、文字列を字幕のごとくコマ31の領域外に表示する構成としている。文字列34は、文字領域35内で複数行に分けてもよい。また、吹き出し33と文字列34の対応のための番号を付すことにより、セリフの話者と順番を明示することもできる。
文字列34をコマ31の領域外に設定することは、セリフを横書きで表す他言語を表示する場合にも好都合である。
文字列が長く文字領域を超えるような場合は、文字列をスクロールさせながら表示することにより、可読性を損なうことのない、適切な文字サイズでの表現が可能となる。
【0020】
また、操作ボタン121を操作する毎にセリフを順に切り替えるなどの動作も可能となる。さらに文字列を音声合成などの音声に変換することにより、セリフを読み取るだけでなく、聞き取ることも可能となり、特に、多言語展開には有効な利用法となる。
【0021】
図7(B)は、表示部11を横長画面として使い、コマ31の左右に文字領域を設けた例である。このような構成では、縦書きの文字列に適するとともに、コマ内の話者とセリフの位置関係をより直感的に示すこともできる。
【0022】
図8(C)は、文字表示領域の表示位置をコマ31内に設定する例である。図8(C)に示すように、文字表示領域をスクロール文字領域36として設定し、限られた領域に、文字をスクロールさせて表示することにより、制約のある画面の中で、適切な位置に必要な文字数を表示することができる。さらに、文字領域35に他言語のセリフを併せて表示することもできる。
【0023】
さらに図8(D)のように、吹き出し33内の文字列を元の紙面の形態で残し、その近傍に他国語の文字列を重複して表示すること(オーバーレイ)も可能である。このとき、他国語の表示は、設定されたスクロール文字領域36の領域内で文字列をスクロール表示させることにより、限られた画面の中で視認性のよい表現とすることもできる。
また、コミックなどでは、効果音などを示す文字が吹き出しの領域外に置かれることも多いが、これらの文字の他国語表現も図8(D)に示すようなオーバーレイによる表示が可能となる。
【0024】
表示位置の選択、表示方法(スクロールなど)の選択、他言語の選択などの操作指示や設定は、携帯電話10が備える操作部12の操作ボタン121に所定の操作メニューを割り振ることにより容易に実現できる。
【0025】
図9に、文字列を表示する手順を示す。ここでは英文に翻訳した文字列を静止画にオーバーレイの形で表示する様子を示す。
文字画面92は翻訳した文字列の画面上の配置を示し、静止画画面93は、文字列を吹き出し中に残した静止画画像を示す。文字画面92と静止画画面93を合成して最終画面95を得る。プログラム91は、最終画面95の表示を制御するための記述(プログラム)である。なお、プログラム91は例としてHTML形式で記述されているが、記述の形式はHTMLに限られるものではない。このように画面を制御するプログラム91は、サーバ2で生成され、ネットワーク3を介して端末4に配信される。
【0026】
以上のように、本発明の電子コンテンツ配信システムによれば、配信された電子コンテンツを閲覧する際に、文字列の表現を視認性よく可読性の高いものとすることができる。特に、携帯型端末のような小サイズの表示部を持つ端末での閲覧には効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】電子コンテンツ配信システムの構成図
【図2】端末の外観図
【図3】端末の機能ブロック図
【図4】電子コンテンツの元となる紙面を表す図
【図5】電子コンテンツ制作装置の制作画面を示す図
【図6】電子コンテンツの構成要素を示す図
【図7】端末の画面構成を示す図(その1)
【図8】端末の画面構成を示す図(その2)
【図9】文字列を表示する手順を示す図
【符号の説明】
【0028】
1 端末
2 サーバ
3 ネットワーク
4 端末
5 電子コンテンツ制作装置
10 携帯電話
11 表示部
12 操作部
20 電子コンテンツ
21 静止画イメージ情報
22 文字列情報
23 属性情報
30 紙面
31 コマ
32 静止画
33 吹き出し
34 文字列
35 文字領域
51 制作画面
52 紙面画像
53 コマ
55 操作メニュー
91 プログラム
92 文字画面
93 静止画画面
95 最終画面
101 表示制御部
102 入力制御部
110 メモリ部
121 操作ボタン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバから端末へネットワークを介して電子コンテンツを配信するシステムにおいて、
前記電子コンテンツは、静止画イメージ情報と文字列情報と属性情報とからなり、前記イメージ情報は、当該コンテンツのストーリーをなす要素画像を含み当該要素画像と文字列情報とは前記属性情報によって対応付けられ、
前記端末は、電子コンテンツを表示する表示部と、表示部を制御する表示制御部を備え、前記表示制御部によって表示部に表示された当該要素画像に対応する文字列を表示部の文字表示領域に表示することを特徴とする電子コンテンツ配信システム。
【請求項2】
前記文字列情報は、複数の言語を備え、前記属性情報により所定の言語を選択可能としたことを特徴とする請求項1に記載の電子コンテンツ配信システム。
【請求項3】
前記文字表示領域は、表示部の周辺部に設けられ、文字列のサイズが表示領域を超えるときはスクロールするようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の電子コンテンツ配信システム。
【請求項4】
前記文字表示領域は、要素画像の吹き出し部に設けられ、文字列のサイズが表示領域を超えるときはスクロールするようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の電子コンテンツ配信システム。
【請求項5】
前記文字表示領域に表示される文字列を、選択された言語に応じて、表示方向を縦表示、横表示に切り替え可能としたことを特徴とする請求項3または4に記載の電子コンテンツ配信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−176429(P2010−176429A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18824(P2009−18824)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】