説明

電子システム

【課題】マイコンが生成するPWMパルスの周波数精度を向上する「電子システム」を提供する。
【解決手段】サブマイコン21は、低精度発振子22が生成する動作クロックを、設定された分周比nで分周した周期を持つPWMパルスを出力する。高精度発振子12が生成する動作クロックで動作するメインマイコン11は、サブマイコン21が出力するPWMパルスの周期Tprを計測し、計測した周期Tprと現在サブマイコン21に設定されている分周比nとより、サブマイコン21の動作クロックの真の周期Tsrを算出する。そして、算出したサブマイコン21の動作クロックの真の周期Tsrより、PWMパルスの周期がPWMパルスの所望周期Tptに最も近くなる分周比nを求め、マイコン間通信を用いてサブマイコン21に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコン(マイクロコンピュータ)において行うPWM制御の精度を向上する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイコンにおいて、マイコンの動作クロックに基づいてPWM (pulse width modulation)パルスを生成し、PWMパルスによって駆動される被PWM制御デバイスに出力することにより、マイコンにおいてPWM制御を行う技術が知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-002248号公報
【特許文献2】特開2003-348852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、以上のようなPWM制御を行うマイコンの動作クロックを生成する発振子(クリスタル発振子やセラミック発振子やRC発振子)として、コスト上の要請等により、低精度の発振子(セラミック発振子やRC発振子)を用いる場合がある。
【0005】
そして、このようにマイコンの動作クロックを生成する発振子として精度が低い発振子を用いる場合、上述したマイコンにおけるPWM制御の技術によれば、当該マイコンの動作クロックに基づいてPWMパルスを生成するためPWMパルスの周波数精度も低くなってしまうという問題が生じる。
【0006】
また、予めPWMパルスの周波数を特定できないので、PWMパルス及びPWMパルスによって駆動されるデバイスの動作に起因するノイズ等に対するEMC対策を充分に行うことが困難となるという問題も生じる。
そこで、本発明は、低精度の発振子によってPWM制御を行うマイコンの動作クロックが生成される場合においても、当該マイコンにおいて動作クロックに基づいて生成されるPWMパルスの周波数精度を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、第1の発振子が生成した第1の動作クロックで動作する第1のマイコンと、前記第1の発振子よりも高精度な第2の発振子が生成した第2の動作クロックで動作する第2のマイコンと、PWMパルスによって駆動される被PWM制御デバイスとを備えた電子システムにおいて、前記第1のマイコンに、前記第1の動作クロックの周期を、n(但し、nは自然数)倍した周期を有する前記PWMパルスを生成して出力するPWM制御手段を設け、前記第2のマイコンに、前記第1のマイコンが出力するPWMパルスの周期を計測周期として計測する周期計測手段と、前記計測周期と前記PWMパルスの所望の周期との差が最小となるように、前記第1のマイコンに前記nの値を更新させるPWMパルス周期制御手段とを設けたものである。
【0008】
また、前記課題達成のために、本発明は、第1の発振子が生成した第1の動作クロックで動作する第1のマイコンと、前記第1の発振子よりも高精度な第2の発振子が生成した第2の動作クロックで動作する第2のマイコンと、PWMパルスによって駆動される被PWM制御デバイスとを備えた電子システムにおいて、前記第1のマイコンに、前記第1の動作クロックの周期を、n(但し、nは自然数)倍した周期を有する前記PWMパルスを生成して出力するPWM制御手段を設け、前記第2のマイコンに、前記第1のマイコンが出力するPWMパルスの周期を計測周期として計測し、計測した計測周期もしくはPWMパルスの所望の周期と前記計測周期との差を計測情報として前記第1のマイコンの前記PWM制御手段に通知する周期計測手段を設けたものである。但し、前記第1のマイコンの前記PWM制御手段は、通知された計測情報から求まる前記計測周期と前記PWMパルスの所望の周期との差が最小となるように、前記nの値を更新するものである。
【0009】
これらのような電子システムによれば、第1の発振子が生成した第1の動作クロックで動作する第1のマイコンが生成するPWMパルスの周期を、第1の発振子よりも高精度な第2の発振子が生成した第2の動作クロックで動作する第2のマイコンを用いて計測すると共に、当該計測結果に基づいてPWMパルスの周期を所望の周期に近づくように制御する。
【0010】
よって第1の発振子が低精度の発振子である場合にも、PWMパルスの周波数精度を向上することができる。
ここで、以上のような電子システムは、前記nを前記計測周期と現前記PWMパルスの所望の周期との差が最小となるように更新する代わりに、前記PWMパルスの所望の中心周期よりも所定時間大きい第1の周期と、前記所望の中心周期よりも前記所定時間小さい第2の周期とを交互に現用周期として用いつつ、前記nを、前記計測周期と現用周期との差が最小となるように更新するようにしてもよい。
【0011】
このようにすることにより、PWMパルスの周波数スペクトルを拡散し、PWMパルス及び被PWM制御デバイスの動作によって発生するノイズの実効的なピークを低く抑えることができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、低精度の発振子によってPWM制御を行うマイコンの動作クロックが生成される場合においても、当該マイコンにおいて動作クロックに基づいて生成されるPWMパルスの周波数精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る電子システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るPWM周期制御処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るPWM制御処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るPWM周期制御処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る電子システムの構成を示す。
図示するように、電子システムは、メインシステム1とサブシステム2とより構成される。
そして、メインシステム1は、高能力のマイコンであるメインマイコン11、メインマイコン11の動作クロックを生成する高精度発振子12、メインマイコン11によって制御されるメインシステムデバイス13とを有する。
一方、サブシステム2は、低能力のマイコンであるサブマイコン21、サブマイコン21の動作クロックを生成する低精度発振子22、サブマイコン21によって制御されるサブシステムデバイス23とを有する。
高精度発振子12は、クリスタル発振子であり、メインマイコン用の動作クロックとして、高精度の高速(たとえば、数百MHz)な動作クロックを生成し、低精度発振子22は、セラミック発振子やRC発振子などであって、サブマイコン用の動作クロックとして、高精度発振子12に比べ、低速(たとえば、10MHz)で低精度な動作クロックを生成する。
【0015】
また、メインマイコン11とサブマイコン21は、マイコン間通信が可能なようにシリアルチャネル等により接続されている。
ここで、メインシステム1は、制御に高能力を要する機能、たとえば、カーナビゲーションやAVプレイヤの機能を実現するシステムであり、たとえば、メインマイコン11は、カーナビゲーションやAVプレイヤの出力画像や出力音声の生成処理を行って、メインシステムデバイス13として設けられたディスプレイの表示やオーディオ出力装置のオーディオ出力を制御する。
【0016】
また、サブシステム2は、メインシステム1の機能以外の、制御に高能力を要さない機能を実現するシステムである。
そして、サブシステム2のサブシステムデバイス23には、PWMパルスによって動作がPWM制御される被PWM制御デバイス231、たとえば、ディスプレイのバックライトLEDのドライバや、DC/DCコンバータや、空調ファンドライバなどが含まれる。
次に、本実施形態に係る電子システムにおいて、被PWM制御デバイス231のPWM制御に係る部位として、サブマイコン21は、PWMパルスの周期を定義する分周比を格納する制御レジスタ211と、PWMパルスを生成するPWM制御ブロック212とを備えている。
【0017】
ここで、PWM制御ブロック212は、PWM周期(たとえば、周波数500KHzの周期2μS)に相当する動作クロック数がタイムアウトカウント値として設定されるPWM周期タイマと、PWMパルスのハイ期間の長さに相当する動作クロック数がタイムアウトカウント値として設定されるPWMデューティタイマとを備えている。
【0018】
そして、PWM周期タイマは、PWM周期タイマで低精度発振子22が生成する動作クロックを、PWM周期タイマのタイムアウトカウント値まで循環的に繰り返しカウントする。また、PWMデューティタイマは、PWMパルスがHとなった時点から、低精度発振子22が生成する動作クロックを、PWMデューティタイマのタイムアウトカウント値までカウントする。
【0019】
また、PWM制御ブロック212は、PWM周期タイマのカウント値がタイムアウトカウント値となる度に出力するPWMパルスのレベルをHとして、その後、PWMデューティタイマのカウント値がPWMデューティタイマのタイムアウトカウント値に達したならば、PWMパルスのレベルをLとする処理を繰り返すことにより、PWMパルスを生成し、被PWM制御デバイス231に出力する。
【0020】
結果、PWM制御ブロック212によって、PWM周期タイマにタイムアウトカウント値として設定された動作クロック数に相当する時間長を周期とし、PWMデューティタイマにタイムアウトカウント値として設定された動作クロック数に相当する時間長をレベルHの期間とするPWMパルスが生成され、被PWM制御デバイス231に出力されることとなる。
【0021】
換言すれば、PWM周期タイマにタイムアウトカウント値として設定する動作クロック数によってPWMパルスの周期は制御することができ、PWMデューティタイマにタイムアウトカウント値として設定する動作クロック数によってPWMパルスのデューティ比は制御することができる。
【0022】
一方、被PWM制御デバイス231のPWM制御に係る部位として、メインマイコン11は、インプットキャプチャタイマ111と、PWM周波数制御ブロック112とを備えている。
図1に示すように、メインマイコン11のインプットキャプチャデータ端子にはサブマイコン21が出力するPWMパルスが入力しており、インプットキャプチャタイマ111は、サブマイコン21が出力するPWMパルスのH/Lのレベルが変化する時刻を計測する。
【0023】
以下、このような構成において、メインマイコン11のPWM周波数制御ブロック112が行うPWM周波数制御処理と、サブマイコン21のPWM制御ブロック212が行うPWM制御処理とについて説明する。
なお、メインマイコン11のPWM周波数制御ブロック112が行うPWM周波数制御処理は、ソフトウエア処理であり、メインマイコン11が所定のプログラムを実行することにより実現される。また、サブマイコン21のPWM制御ブロック212が行うPWM制御処理も、ソフトウエア処理であり、サブマイコン21が所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0024】
まず、メインマイコン11のPWM周波数制御ブロック112が行うPWM周波数制御処理について説明する。
図2に、このPWM周波数制御処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、まず、予め設定されているサブマイコン21が出力するPWMパルスの所望周期Tptと、低精度発振子22が生成するサブマイコン21の動作クロックの仕様上の周期(仕様上の周波数の逆数)Tsvとより、サブマイコン21の動作クロックの周期が仕様上の周期Tsvに一致するとした場合の、PWMパルスの所望周期Tptに相当する、サブマイコン21の動作クロック数を分周比nとして算定し、マイコン間通信を用いてサブマイコン21の制御レジスタ211に設定する(ステップ202)。
【0025】
ここで、ステップ202で制御レジスタ211に設定する分周比は、PWMパルスの所望周期Tptとサブマイコン21の動作クロックの仕様上の周期Tsvとを用いて、Tpt/Tsvに最も近い自然数として求める。
そして、所定時間(たとえば、2ms)の経過を待って(ステップ204)、インプットキャプチャタイマ111が計測したサブマイコン21が出力するPWMパルスのH/Lのレベルの変化時刻より、PWMパルスの実際の周期Tprを計測する(ステップ206)。
【0026】
ここで、PWMパルスの実際の周期Tprは、PWMパルスの周期の所定数j(たとえば、j=1000)倍の時間長(PWMパルスのHレベルへの変化がj回出現する時間長)をインプットキャプチャタイマ111で計測し、これをjで除算して求めるようにしてもよい。
【0027】
そして、計測したPWMパルスの実際の周期Tprと、PWMパルスの所望周期Tptとの差の絶対値が許容誤差dより大きければ(ステップ208)、計測したPWMパルスの実際の周期Tprと、直前に制御レジスタ211に設定した分周比nとより、Tpr/nによって、低精度発振子22が実際に生成しているサブマイコン21の動作クロックの周期Tsrを算出する。そして、PWMパルスの所望周期Tptに相当する、周期Tsrの動作クロックの動作クロック数を分周比nとして算定し、マイコン間通信を用いてサブマイコン21の制御レジスタ211に設定する(ステップ210)。
【0028】
ここで、ステップ210で制御レジスタ211に設定する分周比nは、PWMパルスの所望周期Tptとサブマイコン21の実際の動作クロックの周期Tsrとを用いて、Tpt/Tsrに最も近い自然数として求める。また、許容誤差dは、算出したサブマイコン21の実際の動作クロックの周期Tsrを用いて、d=|Tsr/2|とする。
【0029】
そして、ステップ204からの処理に戻る。
一方、ステップ206で算出したPWMパルスの実際の周期Tsrと、PWMパルスの所望周期Tpとの差が許容誤差d以内である場合には(ステップ208)、そのままステップ204からの処理に戻る。
以上、メインマイコン11のPWM周波数制御ブロック112が行うPWM周波数制御処理について説明した。
次に、サブマイコン21のPWM制御ブロック212が行うPWM制御処理について説明する。
図3に、このPWM制御処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、まず、制御レジスタ211に設定されている分周比nを、PWM周期タイマのタイムアウトカウント値として設定する(ステップ302)。
ここで、上述のようにPWM周期タイマのタイムアウトカウント値に、低精度発振子22が生成している動作クロックの周期を乗じた時間長の周期にPWMパルスの周期は制御され、制御レジスタ211に設定されている分周比nは、
PWMパルスの所望周期Tpt/サブマイコン21の実際の動作クロックの周期Tsr
に最も近い自然数であるので、ステップ302のPWM周期タイマのタイムアウトカウント値の設定により、サブマイコン21が出力するPWMパルスの周期は、低精度発振子22が実際に生成している動作クロックを分周して生成可能な周期のうちの、PWMパルスの所望周期Tptに最も近い周期となる。
【0030】
そして、PWMパルスの所望のデューティ比K(K<1)を、制御レジスタ211に設定されている分周比nに乗じた値に最も近い自然数を、PWMデューティタイマにタイムアウトカウント値として設定する(ステップ304)。
ここで、所望デューティ比Kは、ユーザ操作や初期設定等より定まる被PWM制御デバイス231の駆動量に応じて求まる値となる。たとえば、被PWM制御デバイス231がディスプレイのバックライトLEDであれば、ユーザ操作により定まるバックライトLEDの明るさを実現するPWMパルスのデューティ比が所望デューティ比Kとなる。
【0031】
そして、以降は、所望デューティ比Kの変化の発生と(ステップ306)、制御レジスタ211に設定されている分周比nの更新の発生(ステップ308)とを監視し、所望デューティ比Kが変化したならばステップ304からの処理に戻り、制御レジスタ211に設定されている分周比nの更新が発生したならばステップ302からの処理に戻る。
【0032】
以上、サブマイコン21のPWM制御ブロック212が行うPWM制御処理について説明した。
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように、本実施形態によれば、低精度発振子22が生成した動作クロックで動作するサブマイコン21が生成するPWMパルスの周期を、低精度発振子22よりも高精度な構成度発振子が生成した動作クロックで動作するメインマイコン11を用いて計測すると共に、当該計測結果に基づいてPWMパルスの周期を所望の周期に制御することにより、サブマイコン21が出力するPWMパルスの周波数精度を向上することができる。
【0033】
ところで、以上の実施形態では、サブマイコン21が出力するPWMパルスの周期を決定する分周比nをメインマイコン11において算出してサブマイコン21に設定し、サブマイコン21において設定された分周比nに従って、PWMパルスの周期を制御するようにしたが、この分周比nの算出はサブマイコン21において行うようにしてもよい。
【0034】
すなわち、この場合には、メインマイコン11のPWM周波数制御ブロック112は、PWMパルスの実際の周期Tprを定期的に計測し、計測したPWMパルスの実際の周期Tpr、または、PWMパルスの所望周期Tptと計測したPWMパルスの実際の周期Tprとの差を、マイコン間通信を用いてサブマイコン21のPWM制御ブロック212に通知する。
【0035】
通知を受けたサブマイコン21のPWM制御ブロック212は、通知より求まるPWMパルスの実際の周期Tprと、現在、PWM周期タイマに設定されているタイムアウトカウント値nとより、Tpr/nによって、低精度発振子22が実際に生成しているサブマイコン21の動作クロックの周期Tsrを算出する。そして、Tpt/Tsrに最も近い自然数を算定し、PWM周期タイマに新たなタイムアウトカウント値nとして設定する。また、PWMパルスの所望のデューティ比K(K≦1)を、PWM周期タイマに設定したタイムアウトカウント値nに乗じた値に最も近い自然数を、PWMデューティタイマにタイムアウトカウント値として設定する
また、以上の実施形態においてメインマイコン11のPWM周波数制御ブロック112が行うPWM周波数制御処理は、図4に示すように行うようにしてもよい。
【0036】
すなわち、図示するように、PWM周波数制御処理では、まず、予め設定されているサブマイコン21が出力するPWMパルスの所望中心周期Tptと所定のシフト値Mとを加算した第1シフト周期Tpt+Mと、低精度発振子22が生成するサブマイコン21の動作クロックの仕様上の周期(仕様上の周波数の逆数)Tsvとより、サブマイコン21の動作クロックの周期が仕様上の周期Tsvに一致するとした場合の、周期Tpt+Mに相当する、サブマイコン21の動作クロック数を分周比nとして算定し、マイコン間通信を用いてサブマイコン21の制御レジスタ211に設定する(ステップ402)。
【0037】
ここで、シフト値Mは、たとえば、PWMパルスの所望中心周期Tptの5%とする。そして、ステップ402で制御レジスタ211に設定する分周比は、(Tpt+M)/Tsvに最も近い自然数として求める。
そして、所定時間(たとえば、2ms)の経過を待って(ステップ404)、インプットキャプチャタイマ111が計測したサブマイコン21が出力するPWMパルスのH/Lのレベルの変化時刻より、PWMパルスの実際の周期Tprを計測する(ステップ406)。
【0038】
そして、計測したPWMパルスの実際の周期Tprと、PWMパルスの所望中心周期Tptから上記したシフト値Mを減じた第2シフト周期=Tpt-Mとの差の絶対値が許容誤差dより大きくなければステップ412に進み、大きければステップ410に進む(ステップ408)。
【0039】
そして、ステップ410に進んだならば、計測したPWMパルスの実際の周期Tprと、直前に制御レジスタ211に設定した分周比nとより、Tpr/nによって、低精度発振子22が実際に生成しているサブマイコン21の動作クロックの周期Tsrを算出する。そして、第2シフト周期Tpt-Mに相当する、周期Tsrの動作クロックの動作クロック数を分周比nとして算定し、マイコン間通信を用いてサブマイコン21の制御レジスタ211に設定し、ステップ412に進む。
【0040】
ここで、ステップ410で制御レジスタ211に設定する分周比nは、(Tpt-M)/Tsrに最も近い自然数として求める。また、許容誤差dは、算出したサブマイコン21の実際の動作クロックの周期Tsrを用いて、d=|Tsr/2|とする。
そして、以上のようにしてステップ412に進んだならば、所定時間(たとえば、2ms)の経過を待ち、インプットキャプチャタイマ111が計測したサブマイコン21が出力するPWMパルスのH/Lのレベルの変化時刻より、PWMパルスの実際の周期Tprを計測する(ステップ414)。
【0041】
そして、計測したPWMパルスの実際の周期Tprと、第1シフト周期=Tpt+Mとの差の絶対値が許容誤差dより大きくなければステップ404に戻り、大きければステップ418に進む(ステップ416)。
そして、ステップ418に進んだならば、計測したPWMパルスの実際の周期Tprと、直前に制御レジスタ211に設定した分周比nとより、Tpr/nによって、低精度発振子22が実際に生成しているサブマイコン21の動作クロックの周期Tsrを算出する。そして、第1シフト周期Tpt+Mに相当する、周期Tsrの動作クロックの動作クロック数を分周比nとして算定し、マイコン間通信を用いてサブマイコン21の制御レジスタ211に設定し、ステップ404に戻る。
【0042】
ここで、ステップ418で制御レジスタ211に設定する分周比は、(Tpt+M)/Tsvに最も近い自然数として求める。
このようにPWM周波数制御処理を行うことにより、PWMパルスの周波数スペクトルを、1/(PWMパルスの所望中心周期Tpt+M)と、1/(PWMパルスの所望中心周期Tpt-M)に拡散することができ、PWMパルス及び被PWM制御デバイス231の動作によって発生するノイズの実効的なピークを低く抑えることができるようになる。なお、PWMパルスの周期は、PWMパルスの所望中心周期Tptを中心として僅かに変化するものであって、実効的にPWMパルスの周波数はPWMパルスの所望中心周波数(1/PWMパルスの所望中心周期Tpt)となるので、このようにPWMパルスの周期を第1シフト周期と第2シフト周期との間で変化させるようにしても、通常は、被PWM制御デバイス231の動作に支障が生じることはない。
【0043】
なお、このようにPWMパルスの周期を第1シフト周期と第2シフト周期との間で変化させる場合においても、メインマイコン11においては、PWMパルスの実際の周期Tprの計測と、PWMパルスの実際の周期Tpr、または、PWMパルスの所望中心周期Tptと計測したPWMパルスの実際の周期Tprとの差のサブマイコン21のPWM制御ブロック212への通知のみを行い、分周比nの算出は当該通知に基づいてサブマイコン21において行うようにしてよい。
【符号の説明】
【0044】
1…メインシステム、2…サブシステム、11…メインマイコン、12…高精度発振子、13…メインシステムデバイス、21…サブマイコン、22…低精度発振子、23…サブシステムデバイス、111…インプットキャプチャタイマ、112…PWM周波数制御ブロック、211…制御レジスタ、212…PWM制御ブロック、231…被PWM制御デバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発振子が生成した第1の動作クロックで動作する第1のマイコンと、
前記第1の発振子よりも高精度な第2の発振子が生成した第2の動作クロックで動作する第2のマイコンと、
PWMパルスによって駆動される被PWM制御デバイスとを備えた電子システムであって、
前記第1のマイコンは、前記第1の動作クロックの周期を、n(但し、nは自然数)倍した周期を有する前記PWMパルスを生成して出力するPWM制御手段を有し、
前記第2のマイコンは、
前記第1のマイコンが出力するPWMパルスの周期を計測周期として計測する周期計測手段と、
前記計測周期と前記PWMパルスの所望の周期との差が最小となるように、前記第1のマイコンに前記nの値を更新させるPWMパルス周期制御手段とを有することを特徴とする電子システム。
【請求項2】
第1の発振子が生成した第1の動作クロックで動作する第1のマイコンと、
前記第1の発振子よりも高精度な第2の発振子が生成した第2の動作クロックで動作する第2のマイコンと、
PWMパルスによって駆動される被PWM制御デバイスとを備えた電子システムであって、
前記第1のマイコンは、前記第1の動作クロックの周期を、n(但し、nは自然数)倍した周期を有する前記PWMパルスを生成して出力するPWM制御手段を有し、
前記第2のマイコンは、
前記第1のマイコンが出力するPWMパルスの周期を計測周期として計測し、計測した前記計測周期もしくはPWMパルスの所望の周期と前記計測周期との差を計測情報として前記第1のマイコンの前記PWM制御手段に通知する周期計測手段を有し、
前記第1のマイコンの前記PWM制御手段は、通知された計測情報から求まる前記計測周期と現前記PWMパルスの所望の周期との差が最小となるように、前記nの値を更新することを特徴とする電子システム。
【請求項3】
第1の発振子が生成した第1の動作クロックで動作する第1のマイコンと、
前記第1の発振子よりも高精度な第2の発振子が生成した第2の動作クロックで動作する第2のマイコンと、
PWMパルスによって駆動される被PWM制御デバイスとを備えた電子システムであって、
前記第1のマイコンは、前記第1の動作クロックの周期を、n(但し、nは自然数)倍した周期を有する前記PWMパルスを生成して出力するPWM制御手段を有し、
前記第2のマイコンは、
前記第1のマイコンが出力するPWMパルスの周期を計測周期として計測する周期計測手段と、
前記PWMパルスの所望の中心周期よりも所定時間大きい第1の周期と、前記所望の中心周期よりも前記所定時間小さい第2の周期とを交互に現用周期として用い、前記計測周期と前記現用周期との差が最小となるように、前記第1のマイコンに前記nの値を更新させるPWMパルス周期制御手段とを有することを特徴とする電子システム。
【請求項4】
第1の発振子が生成した第1の動作クロックで動作する第1のマイコンと、
前記第1の発振子よりも高精度な第2の発振子が生成した第2の動作クロックで動作する第2のマイコンと、
PWMパルスによって駆動される被PWM制御デバイスとを備えた電子システムであって、
前記第1のマイコンは、前記第1の動作クロックの周期を、n(但し、nは自然数)倍した周期を有する前記PWMパルスを生成して出力するPWM制御手段を有し、
前記第2のマイコンは、
前記第1のマイコンが出力するPWMパルスの周期を計測周期として計測し、計測した前記計測周期もしくはPWMパルスの所望の周期と前記計測周期との差を計測情報として前記第1のマイコンの前記PWM制御手段に通知する周期計測手段を有し、
前記第1のマイコンの前記PWM制御手段は、前記PWMパルスの所望の中心周期よりも所定時間大きい第1の周期と、前記所望の中心周期よりも前記所定時間小さい第2の周期とを交互に現用周期として用い、通知された計測情報から求まる前記計測周期と前記現用周期との差が最小となるように前記nの値を更新することを特徴とする電子システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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