説明

電子スチルカメラ

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
この発明は、被写体の像を、磁気ディスク等の記録媒体に記録する電子スチルカメラに関する。
〔従来の技術〕
第2図は、所謂1眼レフ方式の従来の電子スチルカメラの一例の構成を示すブロック図である。
同図において、1はレンズであり、被写体(図示せず)からの光を撮像素子2に入射させる。3はクイックリターンミラーであり、レンズ1からの光を反射し、ファイン5に入射させる。4はシフト機構であり、クイックリターンミラー3を駆動する。6はミラー3の後方に回動自在に取付けられたミラーであり、測光素子7に撮像光束の一部を入射させる。
レリーズスイッチ(図示せず)をオンしないとき、クイックリターンミラー3は図中実線で示された位置に配置される。これにより、レンズ1から入射された光がクイックリターンミラー3により反射され、ファインダ5に入射されるので、ファインダ5、クイックリターンミラー3、レンズ1を介して被写体をモニタすることができる。
また、このとき、ハーフミラーで構成されるクイックリターンミラー3を透過した光が、ミラー6で反射され、測光素子7に入射される。これにより、測光素子7の出力から絞りの絞り値やシャッタ速度の演算、色温度検出の演算(測光)等を行うことができる。
レリーズスイッチがオンされたとき、シフト機構4はクイックリターンミラー3をミラー6とともに、上方に(図中破線で示す位置に)移動させる。これにより、レンズ1からの光が撮像素子2に入射され、その出力を磁気ディスク等の記録媒体に記録することができる。
撮像完了後、クイックリターンミラー3は再び元の位置に戻される。
すなわち、クイックリターンミラー3は、レンズ1を通過した光を撮像素子2に導く光路と測光素子7に導く光路を形成し、撮像と色温度検出の動作に応じて、上記光路を切り換えるように構成されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
このように、従来の1眼レフ型電子スチルカメラは、レンズ1と撮像素子2の間に、クイックリターンミラー3を配置するようにしているので、レンズ1の後面と結像位置(撮像素子2が配置されている位置)との距離(バックフォーカス量)を大きくしなければならず、結果的に、レンズ1として大きなものを用いる必要があった。
また、クイックリターンミラー3の形状を小さくすることにより、バックフォーカス量をある程度小さくすることができるが、そうすると、ファインダ5へ入射される光量が減り、明るさが低下する。従って、クイックリターンミラー3の形状は余り小さくすることができない。
このようなことから、1眼レフ型の電子スチルカメラを小型化することが困難であった。
この発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、小型化が可能な電子スチルカメラを提供するものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、対物レンズと、前記対物レンズから導かれた光が入射されるファインダ光学系と、前記対物レンズから入射される光に基づいて被写体の像を撮像する撮像素子とを備える電子スチルカメラにおいて、光路分岐素子と、シフト機構と、演算手段とを設け、前記光路分岐素子は前記対物レンズから入射される光を前記ファインダ光学系に導く第1の光路と前記ファインダ光学系以外の所定箇所に導く第2の光路とを形成するように構成され、前記シフト機構は、前記撮像素子を、前記対物レンズと前記ファインダ光学系を結び前記第1の光路を含む光路内に位置させる撮像位置と、前記第2の光路内に位置させる非撮像位置との間でシフトさせるように構成され、前記演算手段は、前記非撮像位置にある前記撮像素子の出力から、色温度検出の演算を行うように構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記第2の光路内において測色用拡散光学素子が前記非撮像位置にある前記撮像素子の前方箇所に位置するように配設されており、前記側色用拡散光学素子は前記対物レンズを通過した光の一部を拡散した状態で前記撮像素子に導くように構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記演算手段は前記非撮像位置にある前記撮像素子の出力から、焦点検出の演算を行うように構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記第2の光路内において2つの合焦用セパレータレンズが前記非撮像位置にある前記撮像素子の前方箇所に位置するように配設されており、前記2つの合焦用セパレータレンズは前記対物レンズの異なる2つの領域を通過した光をそれぞれ前記撮像素子上の異なる位置に導く2つの光路を形成するように構成されていることを特徴とする。
〔作用〕
上記構成の電子スチルカメラにおいては、撮像素子が撮像位置と非撮像位置との間で移動される。そして、撮像素子が非撮像位置にあるときに撮像素子の出力から色温度検出の演算が行われ、撮像素子が撮像位置にあるときに撮影が行われる。
したがって、1つの撮像素子を非撮像位置と撮像位置との間で移動させることで色温度検出動作と撮像動作を行うため、撮像と色温度検出の動作に応じて光路を切り換えるクイックリターンミラーが不要となり、小型化が可能となる。また、1つの撮像素子を色温度検出動作と撮像動作に兼用するため、色温度検出のための専用の検出素子を他に設ける必要がなくなり、コストを低減することができる。
〔実施例〕
第1図は、この発明の電子スチルカメラの一実施例の構成を示すブロック図である。
同図において、11はレンズであり、被写体(図示せず)からの光を集光する。12は絞りであり、絞り駆動機構13により所定の絞り値に駆動される。14は撮像素子としてのCCDであり、レンズ11からの光が入射される。15は移動手段としてのシフト機構であり、撮像素子14を移動させる。
16はフィールドレンズ、17はミラー、19はリレーレンズ、20はミラー、21は再結像面、22はルーペレンズであり、これらにより、光学式ファインダ38が構成されている。
18はミラー(この実施例の場合ハーフミラー)17を透過した光が入射される測光素子であり、その出力は測光回路23に入力されている。
24はドライブ回路であり、CCD14を駆動し、その出力を処理回路25に供給させる。26は記録回路であり、処理回路25の出力を磁気ヘッド27に供給する。
28はヘッド移動機構であり、磁気ヘッド27を、磁気ディスク29の所定のトラックに移動させる。30はスピンドルモータであり、磁気ディスク29を回転させる。31は検出コイルであり、磁気ディスク29からPGパルスを検出し、出力する。32はスピンドルサーボ回路であり、スピンドルモータ30を制御する。
33は例えばマイクロコンピュータ等よりなるシステムコントローラであり、各回路、手段等を制御する。34は電源スイッチであり、電源をオン、オフするとき操作される。35はレリーズスイッチであり、撮像を行なうときオンされる。36はその他、所定の動作を行なうとき操作されるスイッチである。37は表示素子であり、撮像に必要な情報を表示する。
次に、その動作を、第3図のタイミングチャートを参照して説明する。
電源スイッチ34をオンすると、各回路、手段等に必要な電力が供給される。また、このとき、システムコントローラ33は、駆動機構13を駆動して、それまで閉じられていた絞り12を全開状態にさせる(第3図(a)、(c))。
勿論逆に、非使用時(電源オフ時)、絞り12を全開状態にしておき、使用時(電源オン時)、全閉状態にさせることも可能である。しかしながら、非使用時に全開状態にしておくと、メカシャッタが設けられていないので、CCD14に不用意に強い光が入射され、それが、劣化するおそれがある。そこで、実施例のように、非使用時には全閉状態にしておくのが好ましい。
また、このとき、CCD14は、第1図において実線で示す位置、すなわちレンズ11の撮像光束路外に配置されている。従って、レンズ11から入射した被写体の光は、フィールドレンズ16、ミラー17、リレーレンズ19、ミラー20を介して再結像面21に結像する。その結果、ルーペレンズ22を介してこの像をモニタすることができる。
さらに、フィールドレンズ16より出射された光の一部は、ミラー17を透過し、測光素子18に入射される。測光回路23は測光素子18の出力に露出量の演算に必要な処理を施した後、システムコントローラ33に出力する。システムコントローラ33は、入力されたデータから、絞り12の適正な絞り値Asと、CCD14の電子シャッタの動作時間Tsとを演算する(第3図(e))。
次に、レリーズスイッチ35がオンされると、システムコントローラ33は駆動機構13を介して絞り12を駆動し、演算された絞り値Asを設定させる(第3図(b)、(c))。さらに、システムコントローラ33はシフト機構15を制御し、それまでレンズ11の光束路の外に配置されていたCCD14を光束路内に移動させるとともに、スピンドルサーボ回路32を介してスピンドルモータ30を駆動し、磁気ディスク29を回転させる(第3図(d)、(f))。このとき、スピンドルサーボ回路32は、スピンドルモータ30より入力されるFGパルスと、検出コイル31より入力されるPGパルスを利用して、磁気ディスク29の回転数が一定になるようにスピンドルモータ30を制御する。
また、絞り12が適正値に設定されたとき、システムコントローラ33はドライブ回路24を介してCCD14を制御し、時間Tsの間、レンズ11からの光に対応した電荷を蓄積させる。すなわち、電子シャッタを時間Tsだけ動作させる(第3図(g))。
時間Tsが経過したとき、CCD14に蓄積された電荷は読み出され、処理回路25に入力される(第3図(h))。処理回路25で必要な処理がなされた映像信号は、記録回路26に入力され、FM変調される。このとき記録回路26にはゲートパルス(第3図(i))が入力されているので、FM変調信号を磁気ヘッド27に出力し、磁気ディスク29の1本のトラックに記録させる。
記録完了後、システムコントローラ33はヘッド移動機構28を制御し、磁気ヘッド27を1本内周のトラツクに移動させる。また、絞り12を全開状態にさせ、かつ、CCD14を光路外に退避させるとともに、磁気ディスク29の回転を中止させる(第3図(c)、(d)、(f))。
その後、次の撮影に備え、絞りAsと時間Tsが演算される(第3図(e))。
電源スイッチ34がオフされたとき、絞り12は閉じられ、測光も中止される(第3図(a)、(c)、(e))。
尚、CCD14はレンズ11による結像位置でシフトされるので、そのシフト量はクイックリターンミラーの場合に較べ小さくて済む。
第4図及び第5図は、光学ローパスフィルタを用いる場合の本発明の電子スチルカメラの一実施例の構成を示している。
第4図の実施例においては、光学ローパスフィルタ(水晶光学フィルタ)41が、レンズ11の光束路中に固定されており、第5図の実施例においては、光学ローパスフィルタ41が、CCD14と一体的に固定され、レンズ11の光軸と垂直な面内において、共に上下に移動されるようになっている。
第4図の実施例は、光学ローパスフィルタ41が固定されているので、シフト機構15の負荷が第5図の場合に較べ、軽くなる利点がある。
また、第4図の実施例は、光学ローパスフィルタ41を透過した光がそのまま光学式ファインダ38に入射されるので、光学ローパスフィルタ41を介して像を見ることになり、理論的には像が多重に見えることになるが、微視的な範囲における場合のことなので、実用的には殆んど問題はない。
これに対して、第5図の実施例は、CCD14に近接させることができるので、光学ローパスフィルタ41を、第4図R>図の場合に較べ小さくすることができる。また、非撮影時、光学ローパスフィルタ41が光束路外に配置されるので、光学式ファインダ38により、光学ローパスフィルタ41を介さずに被写体をモニタすることができる。
さらに、いずれの実施例においても、CCD14の前段に、光学ローパスフィルタ41を配置しているので、モアレの発生を防止することができる。
尚、CCD14、光学ローパスフィルタ41等の移動方向は、必ずしもレンズ11からの光の光軸と垂直な方向である必要はない。また、CCD14等は、レンズ11からの光をミラーで所定の方向に反射させ、その反射光路に対して進退させるようにすることもできる。
第6図及び第7図は、光学式ファインダ38の他の実施例を示している。
第6図の実施例においては、第1図の実施例におけるリレーレンズ19とミラー20に代え、ペンタプリズム42が用いられている。
これに対して、第7図の実施例においては、ミラー17とミラー20が省略され、光学式ファインダ38がレンズ11の光軸と同軸になるように直線的に形成されている。
第8図は、インターライン型CCDの構成を示している。
同図において、51は各画素を構成するフォトダイオード、52は垂直転送CCD、53は水平転送CCDである。また、54は掃き出しドレインである。
各画素を構成するフォトダイオード51に蓄積された電荷が不用な電荷であるとき、その電荷は、隣接する垂直転送CCD52に転送された後、掃き出しドレイン54に転送され、捨てさられる。これに対して、必要な電荷は、水平転送CCD53に転送され、さらにそこから読み出される。
CCD14として、このようなインターライン型CCDを用いる場合、第1図に破線で示すように、処理回路25とシステムコントローラ33の間に、A/D変換器58と画像メモリ59とを接続して、第9図のタイミングチャートに示すような動作を実行させることができる。
すなわち、電源スイッチ34をオンしたとき、絞り12が全閉状態から全開状態に移行する(第9図(a)、(c))。
その後、レリーズスイッチ35がオンされると(第9図(b))、磁気ディスク29が回転されるとともに(第9図R>図(f))、測光回路23の出力から、絞りAsと電子シャッタ時間Tsとが演算される(第9図(e))。そして、この演算が終了すると、CCD14がレンズ11の光束路外から光束路内に進入されるとともに、この演算結果に対応して絞り12が駆動される(第9図(c)、(d))。
さらに、垂直同期信号(第9図(g))に同期して、高速掃き出しパルスP1がCCD14に入力され、不用な電荷が垂直転送CCD52から掃き出しドレイン54に転送される。また、その直後に、1フィールド毎に発生されるパルスTG0により、それまで各画素のフォトダイオード51に蓄積されていた電荷が垂直転送CCD52に転送される。続いて、その次の1フィールド後のパルスTG0より時間Tsだけ前にパルスTG1が発生され、フォトダイオード51の電荷が垂直転送CCD52に転送される。これらの電荷は次の高速掃き出しパルスP2により不用電荷として掃き出しドレイン54に転送される(第9図(h))。このようにして、演算された時間Tsの間、各画素のフォトダイオード51に蓄積された電荷は、時間Tsの最後のパルスTG0により垂直転送CCD52に転送され、さらに、読み出しパルスQ1により、水平転送CCD53に転送され、電圧に変換され、処理回路25に入力される(第9図(h)、(i))。
この映像信号は処理回路25で処理された後、A/D変換器58でA/D変換され、画像メモリ59に記憶される。
システムコントローラ33は、画像メモリ59に記憶されたデータから、再度電子シャッタの動作時間Ts1を演算する。そして高速掃き出しパルスP3、P4により、不用な電荷が掃き出しドレイン54に出力されるとともに、この時間Ts1だけ再び電子シャッタが動作される(第9図(h))。
この時間Ts1が経過したとき、絞り12が一旦閉じられる(第9図(c))。これにより、CCD14に光が照射された状態で電荷の転送が行なわれ、光が漏れ込むといった所謂スメア現象の発生が防止される。
絞り12が閉じられ、スメアの発生を防止するのに充分な時間が経過したとき、読み出しパルスQ2によりCCD14から映像信号が読み出される。この映像は、時間Tsで実際に一旦蓄積した画像データから演算した時間Ts1だけ電子シャッタを動作させることにより得たものであるから、より正確に露出設定された映像になっている。そこで、この映像信号が磁気ディスク29に記録される(第9図R>図(j))。
この記録が完了したとき、磁気ディスク29の回転が中止されるとともに(第9図(f))、絞り12が全開状態にされる(第9図(c))。
さらに、電源スイッチ34がオフされたとき、絞り12は閉じられる(第9図(a)、(c))。
第10図は、この発明の電子スチルカメラの他の実施例の構成を示すブロック図であり、第1図における場合と対応する部分には同一の符号を付してある。
第10図において、61はビームスプリッタ(特許請求の範囲の光路分岐素子に相当)であり、CCD(特許請求の範囲の撮像素子に相当)14とともに、基板62に取り付けられている。ビームスプリッタ61は、レンズ(特許請求の範囲の対物レンズに相当)から入射される光を分割し、その透過光を光学式ファインダ(特許請求の範囲のファインダ光学部に相当)38に、その反射光を焦点検出用の光学ブロック63に、各々出射する。上記透過光は特許請求の範囲の第1の光路に相当しており、上記反射光は特許請求の範囲の第2の光路に相当している。
66、67は、テレスイッチとワイドスイッチであり、レンズ11に含まれるズームレンズを、ズーミング機構69を介して移動して、ズーミングを行なうとき操作される。68はオートフォーカス駆動機構であり、レンズ11を駆動して、フォーカス調整を行なう。
その他の構成は第1図における場合と同様である。
第11図及び第12図は、焦点検出用の光学ブロック63のより詳細な構成を示している。
同図に示すように、光学ブロック63には、フィールドレンズ71、ミラー72、マスク73及びセパレータレンズ74が収容されている。
基板62が第11図において下方に位置しているとき、ビームスプリッタ61が、レンズ11から入射される光の光束路内(光路内)に配置され、そこを透過した光が第1の光路を通過してファインダ38に入射される。
また、ビームスプリッタ61で反射された光が、フィールドレンズ71、ミラー72、マスク73、セパレータレンズ74を介して、すなわち第2の光路を通過してCCD14に入射されている。
第13図は、基板62を上下に移動させる機構の一実施例を示している。
同図において、81はシャフトであり、図示せぬシャーシ等に固定されている。82は基板62に固定されたラック、83はラック82に噛合するピニオンであり、パルスモータ84により回転される。
これらにより、シフト機構15が構成されている。
パルスモータ84にパルスを供給し、回転させると、ピニオン83が回転する。これにより、ラック82、従ってラック82が取付けられている基板62がシャフト81にガイドされて、上下に移動する。
すなわち、このシフト機構は、CCD14を、レンズ11から入射される光を光学式ファインダ38に導く第1の光路内に位置させる第1の位置(特許請求の範囲の撮像位置に相当)と、レンズ11から入射される光を前記光学式ファインダ38以外の箇所に導く第2の光路内に位置させる第2の位置(特許請求の範囲の非撮像位置に相当)との間でシフトさせるように構成されている。
ビームスプリッタ61をCCD14と独立に移動させることも可能であるが、この実施例のように、同一の基板62に両者を取り付け、基板62を移動させるようにした方が、シフト機構15が簡略化でき、小型に有利となる。
第14図は位相差式焦点検出用の光学ブロック63の焦点検出の原理を説明する展開平面図である。
被写体からの光はレンズ11により結像面91上で結像する。結像面91からの光はフィールドレンズ71を介して、マスク73に入射され、そこで、図中レンズ11の上半分を透過した光と、下半分を透過した光とに分割される。各々の光、すなわちレンズ11の異なる領域を通過した2つの光は、2つのセパレータレンズ74を介してCCD14の異なる位置に入射される。つまり、セパレータレンズ74はレンズ11の異なる領域を通過した2つの光をそれぞれCCD14上の異なる位置に導く2つの光路を形成するように構成されている。
この2つの光によるCCD14上の像は、焦点ずれの量と方向に対応して、各々反対の方向に移動する。従って、この2つの像の距離の差から、焦点ずれを検出することができる。
CCD14は2次元の(平面的な)撮像領域を有しているので、これを焦点検出に用いることにより、焦点検出の範囲を2次元的に拡大することができる。勿論このとき、他の方向の位相差を検出する光学系を付加する必要がある。
第15図は、このような構成の電子スチルカメラの外観を表わしている。
同図において、100は筐体であり、101は筐体100に対して開閉されるドアである。このドア101を開閉して筐体100の内部に磁気ディスク29を着脱することができる。
次に、第16図のタイミングチャートを参照して、その動作を説明する。
電源スイッチ34をオンすると、絞り12が全閉状態から全開状態に移行される(第16図(a)、(d))。
レリーズスイッチ35は2段のスイッチ35P、35Rにより構成されており、半押しの状態のときスイッチ35Pがオンし、全押しの状態のとき、さらにスイッチ35Rもオンする。
スイッチ35Pがオンされたとき、システムコントローラ33は、測光回路23の出力から絞りの絞り値Asと電子シャッタの動作時間Ts、さらに焦点検出のための電子シャッタの動作時間TF(TF1、TF2)を演算する(第16図(b)、(f))。
先ず焦点検出演算のため、垂直同期信号(第16図(h))に同期して、高速掃き出しパルスP1、P2により、不用な電荷が掃き出され、演算された時間TF1(絞り12が開放状態で適正な露出が得られる時間)だけ電荷が蓄積される(第16図(i))。この電荷は読み出しパルスQ1により読み出され、画像メモリ59に書き込まれる(第16図(i)、(j))。
画像メモリ59への書き込みが完了したとき、次のフィールドにおいて、システムコントローラ33は画像メモリ59からデータを読み出し、焦点検出の演算を行なう。そして、その演算結果に対応して、さらに次のフィールドにおいて、オートフォーカス駆動機構68を介してレンズ11を移動し、焦点調整を行なわせる(第16図(k)、(l))。
同様の動作が複数回繰り返される(第16図(i)乃至(l))。
このとき、電子シャッタの動作時間TF1、TF2は、一定であってもよいし、前述した場合と同様にして順次変化させるようにしてもよい。
次に、スイッチ35Rがオンされると、絞り12が絞り値Asに設定され、またパルスモータ84が駆動され、CCD14がレンズ11の光束路内に移動、配置されるとともに、スピンドルモータ30が回転される(第16図(c)乃至(g))。
そして前述した場合と同様に、先ず、電子シャッタが時間Tsだけ動作され、そのときの映像信号を基礎にして演算された時間TS1だけ、さらに動作される。そのときの映像信号が絞り12を閉じた状態で読み出され、磁気ディスク29に記録される(第16図(d)、(i)、(j)、(m))。
このように、CCD14の電荷蓄積時間が、焦点検出と撮像(絞りの絞り値と電子シャッタ速度)に対応して適正に制御されるので、光強度のダイナミックレンジが広がる。
電源スイッチ34がオフされたとき、絞り12は閉じられる(第16図(a)、(d))。
すなわち、CCD14が非撮像位置にあるときには、絞りが開放された状態で適正な露出が得られるように電子シャッタ時間が設定され、このときにCCD14の出力から焦点検出の演算が行われる。そして、CCD14が撮像位置にあるときには、絞りが適正な絞り値に設定され、電子シャッタ時間はこれに対応して適正な露出が得られるように設定される。
第17図は、ビームスプリッタ61の挿入位置が異なる他の実施例を示している。
この実施例においては、ビームスプリッタ61が、フィールドレンズ16と、リレーレンズ19との間に配置、固定されている。そして、CCD14だけが独立して移動するようになっている。
すなわち、CCD14がレンズ11の光束路内の位置(撮像位置)と、セパレータレンズ74の光束路内(レンズ11の光束路外)の位置(非撮像位置)との間で移動するようになっている。上記レンズ11の光束路はレンズ11と光学式ファインダを結ぶ光路であって、レンズ11から入射される光を光学式ファインダに導く第1の光路を含んでいる。一方、セパレータレンズ74の光束路は、レンズ11から入射される光がビームスプリッタ61によって反射され、フィールドレンズ71、ミラー72、マスク73、セパレータレンズ74に至る光路であって、第2の光路を形成している。すなわち、これら第1、第2の光路はビームスプリッタ61によって形成されている。
この実施例の場合、第10図の実施例に較べ、シフト機構15の負荷を軽くすることができる。
第18図は、CCD14の他の駆動機構の実施例を示している。
この実施例においては、CCD14が支点111を中心としてレンズ11の光束路内の位置(撮像位置)と、セパレータレンズ74の光束路内(レンズ11の光束路外)の位置(非撮像位置)との間で回動されるようになっている。上記レンズ11の光束路はレンズ11と光学式ファインダを結ぶ光路であって、レンズ11からの入射される光を光学式ファインダに導く第1の光路を含んでいる。一方、セパレータレンズ74の光束路は、レンズ11から入射される光がビームスプリッタ61によって反射され、マスク73、セパレータレンズ74に至る光路であって、第2の光路を形成している。すなわち、これら第1、第2の光路はビームスプリッタ61によって形成されている。
第19図乃至第22図は、測光素子18の配置の異なる実施例を示している。
第19図の実施例においては、測光素子18がミラー20の後方に配置されている。この場合、ミラー17を全反射ミラーで、またミラー20をハーフミラーで各々構成する必要がある。
第20図の実施例においては、測光素子18が、ミラー72の後方に配置されている。従って、この場合、ミラー72をハーフミラーで構成する必要がある。
第21図の実施例においては、セパレータレンズ74の下方に測光素子18が配置されている。
第22図の実施例においては、CCD14のパッケージ14Aに、測光素子18が取付けられている。
第23図(a)、(b)は、光学ブロック63に、測色用(色温度検出用)の拡散光学素子を付加した実施例の構成を示している。
この実施例においては、拡散光学素子131(特許請求の範囲の測色用拡散光学素子に相当)は、セパレータレンズ74の下方に配置されミラー72からの反射光の一部が入射されるようになっている。すなわち、第2の光路内において拡散光学素子131が非撮像位置にあるCCD14の前方箇所に位置するように配設されている。そして、この拡散光学素子131はレンズ11を通過した光の一部を拡散した状態でCCD14に導くように構成されている。このため、マスク73には、セパレータレンズ74の他、この拡散光学素子131に光を通過させるための孔も形成されている。
この場合、第24図(a)、(b)に示すように、CCD14は、測光時(測色時)、セパレータレンズ74からの光が入射される領域141と、拡散光学素子131からの光が入射される領域142とに区分して使用される。
拡散光学素子131は、セパレータレンズ74の入射領域141に影響を与えない範囲において、充分光を拡散させるのが好ましい。このため、セパレータレンズ74と拡散光学素子131の少なくとも一方向(例えば第24図(a)において紙面と平行な面内)の半径Rを略同一とすることができる。
また、拡散光学素子131はレンズ状とし、第25図に示すように、その内部に光を散乱する粒子を多数混在させるようにしたり、第26図に示すように、その表面に多数の凹凸(散乱面)を形成するようにして、形成することができる。
上述の構成によれば、CCD14が非撮像位置にシフトされたときに、拡散光学素子131で拡散された光をCCD14によって検出して色温度検出の演算(測色演算)を行うことができる。この測色演算は、第16図(n)に示すように、焦点検出演算と同じタイミングで行うことができる。
このとき、領域142の色成分(例えばR信号とB信号の比)を求め、ホワイトバランス値を演算し、処理回路25中の色信号のゲインをコントロールする。
このように、焦点検出用と色温度検出用の光学系を一体的にし、1個のCCD14で検出することにより、構成が簡素化される。
また、1つのCCD14を撮像位置と非撮像位置との間で移動させることで撮像動作と色温度検出動作を行うため、従来と違って、撮像と色温度検出の動作に応じて光路を切り換えるクイックリターンミラーが不要となり、小型化が可能となる。また、1つのCCD14を撮像動作と色温度検出動作に兼用するため、色温度検出のための専用の検出素子を他に設ける必要がなくなり、コストを低減することができる。
なお、上述した実施例では、1つのCCD14をさらに焦点検出動作にも兼用しているため、焦点検出のための専用の検出素子を他に設ける必要がなく、コスト低減の面でさらに有利である。
以上の実施例においては、磁気ヘッド27を記録手段として磁気ディスク29に映像信号を記録するようにしたが、例えば第27図に示すように、書込回路152を記録手段として、記録媒体とてのメモリカード151に映像信号を記録するようにすることもできる。このとき、A/D変換器58の出力を記憶し、書込回路152に出力する画像メモリ153は、少なくとも1フィールド又は1フレーム分のデータを記憶できる容量が必要となる。
〔発明の効果〕
以上のように、この発明の電子スチルカメラは、対物レンズと、前記対物レンズから導かれた光が入射されるファインダ光学系と、前記対物レンズから入射される光に基づいて被写体の像を撮像する撮像素子とを備える電子スチルカメラにおいて、光路分岐素子と、シフト機構と、演算手段とを設け、前記光路分岐素子は前記対物レンズから入射される光を前記ファインダ光学系に導く第1の光路と前記ファインダ光学系以外の所定箇所に導く第2の光路とを形成するように構成され、前記シフト機構は、前記撮像素子を、前記対物レンズと前記ファインダ光学系を結び前記第1の光路を含む光路内に位置させる撮像位置と、前記第2の光路内に位置させる非撮像位置との間でシフトさせるように構成され、前記演算手段は、前記非撮像位置にある前記撮像素子の出力から、色温度検出の演算を行うように構成されている。
このため、撮像素子が撮像位置と非撮像位置との間で移動される。そして、撮像素子が非撮像位置にあるときに撮像素子の出力から色温度検出の演算が行われ、撮像素子が撮像位置にあるときに撮影が行われる。
したがって、1つの撮像素子を非撮像位置と撮像位置との間で移動させることで色温度検出動作と撮像動作を行うため、撮像と色温度検出の動作に応じて光路を切り換えるクイックリターンミラーが不要となり、小型化が可能となる。また、1つの撮像素子を色温度検出動作と撮像動作に兼用するため、色温度検出のための専用の検出素子を他に設ける必要がなくなり、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の電子スチルカメラの一実施例の構成を示すブロック図、
第2図は従来の1眼レフ型電子スチルカメラの一例の構成を示すブロック図、
第3図は第1図の実施例の動作を説明するタイミングチャート、
第4図及び第5図は、光学ローパスフィルタを挿入する場合の実施例のブロック図、
第6図及び第7図は、光学式ファインダの他の実施例のブロック図、
第8図はインターライン型CCDの正面図、
第9図はインターライン型CCDを用いた場合の第1の実施例の動作を説明するタイミングチャート、
第10図はこの発明の電子スチルカメラの他の実施例の構成を示すブロック図、
第11図は焦点検出用光学ブロックの構成を示す側面図、
第12図は焦点検出用光学ブロックの構成を示す斜視図、
第13図は基板のシフト機構の一実施例の構成を示す斜視図、
第14図は位相差式焦点検出の原理を説明する展開平面図、
第15図は第10図の実施例の電子スチルカメラの外観を示す斜視図、
第16図は第10図の実施例の動作を説明するタイミングチャート、
第17図はビームスプリッタの挿入位置が異なる実施例の構成を示すブロック図、
第18図はCCDの駆動機構の他の実施例の構成を示すブロック図、
第19図乃至第22図は、測光素子の配置を説明する他の実施例の構成を示すブロック図、
第23図(a)、(b)は、光学ブロックに拡散光学素子を付加した場合の側面図と正面図、
第24図は拡散光学素子とCCDの動作を説明する側面図と正面図、
第25図及び第26図は、拡散光学素子の他の実施例の構成を示す側面図、
第27図はこの発明の電子スチルカメラのさらに他の実施例の構成を示すブロック図である。
1……レンズ
2……CCD
3……クイックリターンミラー
4……シフト機構
5……光学式ファインダ
11……レンズ
12……絞り
13……絞り駆動機構
14……CCD
15……シフト機構
16……フィールドレンズ
17……ミラー
18……測光素子
19……リレーレンズ
20……ミラー
21……再結像面
22……ルーペレンズ
23……測光回路
24……ドライブ回路
25……処理回路
26……記録回路
27……磁気ヘッド
28……ヘッド移動機構
29……磁気ディスク
30……スピンドルモータ
31……検出コイル
32……スピンドルサーボ回路
33……システムコントローラ
34……電源スイッチ
35……レリーズスイッチ
36……スイッチ
37……表示素子
38……光学式ファインダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】対物レンズと、前記対物レンズから導かれた光が入射されるファインダ光学系と、前記対物レンズから入射される光に基づいて被写体の像を撮像する撮像素子とを備える電子スチルカメラにおいて、光路分岐素子と、シフト機構と、演算手段とを設け、前記光路分岐素子は前記対物レンズから入射される光を前記ファインダ光学系に導く第1の光路と前記ファインダ光学系以外の所定箇所に導く第2の光路とを形成するように構成され、前記シフト機構は、前記撮像素子を、前記対物レンズと前記ファインダ光学系を結び前記第1の光路を含む光路内に位置させる撮像位置と、前記第2の光路内に位置させる非撮像位置との間でシフトさせるように構成され、前記演算手段は、前記非撮像位置にある前記撮像素子の出力から、色温度検出の演算を行うように構成されている、ことを特徴とする電子スチルカメラ。
【請求項2】前記第2の光路内において測色用拡散光学素子が前記非撮像位置にある前記撮像素子の前方箇所に位置するように配設されており、前記側色用拡散光学素子は前記対物レンズを通過した光の一部を拡散した状態で前記撮像素子に導くように構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子スチルカメラ。
【請求項3】前記演算手段は前記非撮像位置にある前記撮像素子の出力から、焦点検出の演算を行うように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の電子スチルカメラ。
【請求項4】前記第2の光路内において2つの合焦用セパレータレンズが前記非撮像位置にある前記撮像素子の前方箇所に位置するように配設されており、前記2つの合焦用セパレータレンズは前記対物レンズの異なる2つの領域を通過した光をそれぞれ前記撮像素子上の異なる位置に導く2つの光路を形成するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の電子スチルカメラ。

【第2図】
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【第1図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【第7図】
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【第20図】
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【第22図】
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【第8図】
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【第11図】
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【第14図】
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【第21図】
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【第25図】
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【第26図】
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【第9図】
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【第10図】
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【第12図】
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【第13図】
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【第15図】
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【第17図】
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【第18図】
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【第16図】
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【第19図】
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【第23図】
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【第24図】
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【第27図】
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【特許番号】第2886899号
【登録日】平成11年(1999)2月12日
【発行日】平成11年(1999)4月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−191988
【出願日】平成1年(1989)7月25日
【公開番号】特開平3−55979
【公開日】平成3年(1991)3月11日
【審査請求日】平成8年(1996)4月5日
【出願人】(999999999)旭光学工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭63−64013(JP,A)
【文献】特開 平1−94653(JP,A)