説明

電子デバイス、有機電界発光素子、有機EL表示装置および有機EL照明

【課題】 湿式成膜法で形成された電荷輸送性化合物及び電子受容性化合物を含む電荷輸送層及び電荷輸送層を有する電子デバイスにおいて、電子受容性化合物の隣接する層への拡散を低減させること。
【解決手段】 電荷輸送性化合物及び電子受容性化合物を含む第一の電荷輸送層及び第一の電荷輸送層に隣接して、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーを架橋して形成された第二の電荷輸送層を有する電子デバイスにおいて、第一の電荷輸送層及び第二の電荷輸送層はいずれも湿式成膜法で形成された層であり、第一の電荷輸送層に含まれる電荷輸送性化合物のイオン化ポテンシャルIp(1)及び第二の電荷輸送層を形成する架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーのイオン化ポテンシャルIp(2)が下記式(X)を満たすことを特徴とする電子デバイス。
Ip(2)≧ Ip(1) + 0.10eV ・・・(X)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子、有機太陽電池等として使用される電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子などの電子デバイスは、一対の電極の間に、電荷輸送層を有し、電極からの電荷の注入により、種々の機能を示す。特に、有機電界発光素子では、通常、一対の電極の間に複数の電荷輸送層を有し、電極から注入される正孔と電子とが再結合することで発光する。有機電界発光素子は、既に小型のディスプレイとして使用されており、これを大型のディスプレイに応用する技術が種々開発されている。
【0003】
従来の有機電界発光素子は、蒸着法により電荷輸送層を積層する技術が主流であったが、大型のディスプレイへ適用するために、湿式成膜法で電荷輸送層を積層する技術が求められている。
例えば、特許文献1には、芳香族アミン系ポリマーからなる電荷輸送性化合物と電子受容性化合物を含有する正孔注入層および燐光発光材料を含有する発光層を湿式成膜法で積層した有機電界発光素子が記載されている。しかしながら、このように複数の層が湿式成膜法で形成された有機電界発光素子は、十分な発光効率が得られないという問題点があった。
【0004】
湿式成膜法で各層を積層すると、積層される一方の層の材料が、隣接する他の層へと拡散することがある。この材料の拡散が、十分な発光効率が得られない理由の1つと考えられ、上記芳香族アミン系ポリマーからなる電荷輸送性化合物と電子受容性化合物を含有する正孔注入層を有する有機電界発光素子の場合、電子受容性化合物が隣接する層へと拡散し、十分な発光効率が得られていないものと推測された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−257409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、湿式成膜法で形成された電荷輸送性化合物および電子受容性化合物を含む電荷輸送層、およびこれに隣接して湿式成膜法で形成された電荷輸送層を有する電子デバイスにおいて、該電子受容性化合物の隣接する層への拡散を低減させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、鋭意検討した結果、湿式成膜法で形成された電荷輸送性化合物および電子受容性化合物を含む第一の電荷輸送層および第一の電荷輸送層に隣接して、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーを架橋して形成された第二の電荷輸送層を有する電子デバイスを用いて、第一の電荷輸送層に含有される電荷輸送性化合物と第二の電荷輸送層を形成する電荷輸送性ポリマーのイオン化ポテンシャルを、ある特定の関係とすることにより、電子受容性化合物が隣接する層へ拡散することを低減出来ることがわかり本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、一対の電極間に、電荷輸送性化合物および電子受容性化合物を含む第一の電荷輸送層および第一の電荷輸送層に隣接して、架橋性基を有する電荷輸送性ポ
リマーを架橋して形成された第二の電荷輸送層を有する電子デバイスにおいて、
第一の電荷輸送層および第二の電荷輸送層は、いずれも湿式成膜法で形成された層であり、第一の電荷輸送層に含まれる電荷輸送性化合物のイオン化ポテンシャルIp(1)
および第二の電荷輸送層を形成する架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーのイオン化ポテンシャルIp(2)が、下記式(X)を満たすことを特徴とする電子デバイスに存する。
Ip(2)≧ Ip(1) + 0.10eV ・・・(X)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子受容性化合物が隣接する層へ拡散することを低減できる。この低減により、例えば、有機電界発光素子においては、発光効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
本発明は、一対の電極間に、電荷輸送性化合物および電子受容性化合物を含む第一の電荷輸送層および第一の電荷輸送層に隣接して、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーを架橋して形成された第二の電荷輸送層を有する電子デバイスにおいて、第一の電荷輸送層および第二の電荷輸送層は、いずれも湿式成膜法で形成された層であり、第一の電荷輸送層に含まれる電荷輸送性化合物のイオン化ポテンシャルIp(1)および第二の電荷輸送層を形成する架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーのイオン化ポテンシャルIp(2)が、下記式(X)を満たすことを特徴とする電子デバイスに関する。下記式(X)を満たすことにより、その理由は明らかではないが、第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散を低減することができる。
Ip(2)≧ Ip(1) + 0.10eV ・・・(X)
尚、本発明において、電子デバイスとは、外部から供給されたエネルギーを、他のエネルギー及び/又は有効な仕事に変換する機能を持つ構造体のことであり、主たる機能を発現する部分が有機物により構成されているものが好ましい。
つまり、電子受容性化合物の隣接層への拡散が抑制されることで、拡散した電子受容性化合物による励起状態の失活、あるいは電荷のトラップなどが抑制され高性能な電子デバイスを得ることができる。
【0012】
電子デバイスの例としては、有機電界発光素子、有機トランジスタ、有機太陽電池素子、有機発光トランジスタ、有機磁性デバイス、有機ダイオード、有機アクチュエーター(モーター等)、有機センサー(圧力、温度、湿度センサー等)等の有機電子デバイスが挙げられる。本発明の電子デバイスは、有機電界発光素子として用いられることが好ましい。
【0013】
1.第一の電荷輸送層
本発明において、第一の電荷輸送層は、電荷輸送性化合物および電子受容性化合物を含む層である。
本発明において、電荷輸送性化合物とは、電荷輸送の機能を有する化合物であり、好ましくは、正孔輸送の機能を有する正孔輸送性化合物である。
電荷輸送性化合物は、モノマー(単一の分子量を有する化合物)であっても、オリゴマー(繰返し単位を有する低分子量重合体)であっても、ポリマー(繰返し単位を有する高分子量重合体)であってもよい。成膜性に優れる、あるいは熱耐性に優れる点で、 電荷輸送性化合物はオリゴマーやポリマーのような繰返し単位を有する重合体であることが好ましい。
【0014】
電荷輸送性化合物が、モノマーである場合、分子量は、通常5000以下、好ましくは2500以下であり、また好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上である。分子量がこの上限を超えると、不純物の高分子量化によって精製が困難となる場合があり、また分子量がこの下限を下回ると、ガラス転移温度および、融点、気化温度などが低下するため、耐熱性が著しく損なわれる場合がある。
【0015】
電荷輸送性化合物が、オリゴマーまたはポリマーである場合、その重量平均分子量は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下であり、また通常1,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは5,000以上である。分子量がこの上限を超えると、不純物の高分子量化によって精製が困難となる恐れがあり、また分子量がこの下限を下回ると、成膜性が低下する恐れがあり、ガラス転移温度、融点および気化温度が低下するため、耐熱性が著しく損なわれる恐れがある。
【0016】
電荷輸送性化合物が、オリゴマーまたはポリマーである場合、その分散度Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、通常3.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下であり、好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.2以上である。分散度がこの上限を上回ると精製が困難となる、溶剤溶解性が低下する、成膜性が低下するといった不具合の恐れがある。
【0017】
尚、本発明における重量平均分子量(及び数平均分子量)はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量(及び数平均分子量)が算出される。
【0018】
本発明における電荷輸送性化合物の具体例としては、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体誘導体などが挙げられる。
本発明において、電荷輸送性化合物は、熱的安定性、成膜性、電気化学的安定性および電荷輸送性に優れる点で、トリアリールアミン誘導体、すなわち、トリアリールアミン骨格を部分構造として有する化合物であることが好ましく、特にトリアリールアミン骨格を部分構造として有する高分子化合物であることが好ましい。
【0019】
トリアリールアミン骨格を部分構造として有する高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体が挙げられる。
【0020】
【化1】

【0021】
(式(I)中、Ar〜Arは、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Yは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar〜Arのうち、同一のN原子に結合する二
つの基は互いに結合して環を形成してもよい。)
連結基群:
【0022】
【化2】

【0023】
(上記各式中、Ar〜Ar16は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。RおよびRは、各々独立して、水素原子または任意の置換基を表す。)
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基としては、溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基がさらに好ましい。
【0024】
Ar〜Ar16の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが好ましい。
およびRが任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基などが挙げられる。
【0025】
式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。また、式(I)で表される繰り返し単位を有する重合体は、式(I)で表される繰り返し単位からなる重合体であることが特に好ましい。
本発明において、電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の電荷輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物のことである。電子受容性化合物は、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上である化合物がさらに好ましい。
【0026】
このような電子受容性化合物としては、例えば、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、オニウム塩、アリールアミンとルイス酸との塩などが挙げられる。
電子受容性化合物の具体例を以下に記載する。
アリールアミンとハロゲン化金属との塩としては、例えば、下記式(III)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化3】

【0028】
式(III) において、Xはハロゲン原子を示し、環A,B及びCは、各々独立して、置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
式(III) で表される電子受容性化合物の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。
【0029】
【化4】

【0030】
また、トリアリールホウ素化合物としては、例えば、トリ(パーフルオロアリール)ボラン化合物が挙げられる。その代表的な例を、略称とともに以下に記す。
【0031】
【化5】

【0032】
また、その他の電子受容性化合物としては、例えば、以下に例示する化合物が挙げられる。
【0033】
【化6】

【0034】
電子受容性化合物としては、特に、オニウム塩が好ましく、中でも有機オニウム塩が好ましい。有機オニウム塩の例としては、有機ヨードニウム塩、有機スルホニル塩などが挙げられる。中でも、強い酸化力と高い溶解性とを両立する点から、下記式で表される有機オニウム塩が好ましい。
【0035】
【化7】

【0036】
上記式(I−1)〜(I−3)中、R11、R21及びR31は、各々独立に、A1〜A3と炭素原子で結合する有機基を表わす。R12、R22、R23及びR32〜R34は、各々独立に、任意の基を表わす。R11〜R34のうち隣接する2以上の基が、互いに結合して環を形成していてもよい。
1〜A3は何れも周期表第3周期以降の元素であって、A1は長周期型周期表の第17
族に属する元素を表わし、A2は長周期型周期表の第16族に属する元素を表わし、A3は長周期型周期表の第15族に属する元素を表わす。
1n1-〜Z3n3-は、各々独立に、対アニオンを表わす。
n1〜n3は、各々独立に、対アニオンのイオン価を表わす。
【0037】
11、R21及びR31としては、A1〜A3との結合部分に炭素原子を有する有機基であれば、本発明の趣旨に反しない限り、その種類は特に制限されない。R11、R21及びR31の好ましい例としては、正電荷を非局在化させる点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられる。中でも、正電荷を非局在化させるとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
【0038】
12、R22、R23及びR32〜R34の種類は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されない。R12、R22、R23及びR32〜R34の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、水酸基、チオール基、シリル基等が挙げられる。
【0039】
以上、R11、R21及びR31、R12、R22、R23及びR32〜R34として例示した基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に他の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、上記R11、R21及びR31、R12、R22、R23及びR32〜R34としてそれぞれ例示した基の他、ハロゲン原子、チオシアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0040】
式(I−1)〜(I−3)中、A1〜A3は、何れも周期表第3周期以降(第3〜第6周期)の元素であって、A1は、長周期型周期表の第17族に属する元素を表わし、A2は、第16族に属する元素を表わし、A3は、第15族に属する元素を表わす。中でも、電子
受容性及び入手容易性の観点から、周期表の第5周期以前(第3〜第5周期)の元素が好ましい。即ち、A1としてはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子のうち何れかが好ましく、
2としてはテルル原子、セレン原子、硫黄原子のうち何れかが好ましく、A3としてはアンチモン原子、ヒ素原子、リン原子のうち何れかが好ましい。
【0041】
特に、電子受容性、化合物の安定性の面から、式(I−1)におけるA1が臭素原子又
はヨウ素原子である化合物、又は、式(I−2)におけるA2がセレン原子又は硫黄原子
である化合物が好ましく、中でも、式(I−1)におけるA1がヨウ素原子である化合物
が最も好ましい。
式(I−1)〜(I−3)中、Z1n1-〜Z3n3-は、各々独立に、対アニオンを表わす。対アニオンの種類は特に制限されず、単原子イオンであっても錯イオンであってもよい。但し、対アニオンのサイズが大きいほど負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、単原子イオンよりも錯イオンの方が好ましい。
【0042】
n1〜n3は、各々独立に、対アニオンZ1n1-〜Z3n3-のイオン価に相当する任意の正の整数である。n1〜n3の値は特に制限されないが、何れも1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
1n1-〜Z3n3-の具体例としては、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ホウ酸イオン、イソシアン酸イオン、水硫化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサクロロアンチモン酸イオン;酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン;メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;メトキシイオン、t−ブトキシイオン等のアルコキシイオンなどが挙げられる。
【0043】
特に、対アニオンZ1n1-〜Z3n3-としては、化合物の安定性、溶剤への溶解性の点で、下記式(I−4)〜(I−6)で表わされる錯イオンが好ましい。
【0044】
【化8】

【0045】
式(I−4)及び(I−6)中、E1及びE3は、各々独立に、長周期型周期表の第13族に属する元素を表わす。中でもホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点から、ホウ素原子が好ましい。
式(I−5)中、E2は、長周期型周期表の第15族に属する元素を表わす。中でもリ
ン原子、ヒ素原子、アンチモン原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さ、毒性の点から、リン原子が好ましい。
【0046】
式(I−4)及び(I−5)中、XおよびXは、各々独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表わし、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点からフッ素原子、塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが最も好ましい。
式(I−6)中、Ar61〜Ar64は、各々独立に、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。Ar61〜Ar64として例示した芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に別の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されず、任意の置換基が適用可能であるが、電子吸引性の基であることが好ましい。
【0047】
以下に式(I−4)〜(I−6)で表わされる錯イオンの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【化9】

【0049】
有機オニウム塩の中でも、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラートが特に好ましい。
第一の電荷輸送層中において、電荷輸送性化合物にする電子受容性化合物の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常100重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0050】
第一の電荷輸送層中において、電荷輸送性化合物の含有量は、通常20重量%以上、好ましくは50重量%以上、通常99重量%以下、好ましくは90重量%以下である。尚、第一の電荷輸送層には、電荷輸送性化合物が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
第一の電荷輸送層中において、電子受容性化合物の含有量は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、通常80重量%以下、好ましくは50重量%以下である。尚、第一の電荷輸送層には、電子受容性化合物が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
【0051】
本発明の効果を著しく損なわない限り、第一の電荷輸送層は、上述の電荷輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、レベリング剤、消泡剤などの塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0052】
第一の電荷輸送層を湿式成膜法により形成するには、第一の電荷輸送層を構成する電荷輸送性化合物、電子受容性化合物、および必要に応じてその他の成分を適切な溶剤と混合して成膜用の組成物(第一の電荷輸送層形成用組成物)を調製し、この第一の電荷輸送層形成用組成物を湿式成膜法を用いて成膜し、乾燥することにより第一の電荷輸送層を形成する。
【0053】
第一の電荷輸送層形成用組成物における、電荷輸送性化合物の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。尚、第一の電荷輸送層形成用組成物には、電荷輸送性化合物が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
第一の電荷輸送層形成用組成物における、電子受容性化合物の含有量は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。尚、第一の電荷輸送層形成用組成物には、電子受容性化合物が2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
【0054】
第一の電荷輸送層形成用組成物において、電荷輸送性化合物に対する電子受容性化合物の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常100重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
尚、本発明において、湿式成膜法とは、溶剤を含有する組成物を用いて成膜する方法をいう。例えば,本発明における湿式成膜法として、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷等が挙げられるが、パターニングのし易さという点で、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法、インクジェット法、又はフレキソ印刷法が好ましい。
【0055】
第一の電荷輸送層形成用組成物に用いられる溶剤は、電荷輸送性化合物、および電子受容性化合物双方を溶解するものが好ましく、それぞれを通常0.1重量%、好ましくは0.5重量%、さらに好ましくは1.0重量%以上溶解する溶剤である。
溶剤の沸点は、通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
【0056】
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシ
ベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
【0057】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
【0058】
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。
【0059】
第一の電荷輸送層形成用組成物は、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、レベリング剤、消泡剤などの塗布性改良剤などが挙げられる。
例えば、レベリング剤の例としては、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。レベリング剤は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。第一の電荷輸送層形成用組成物中におけるレベリング剤の含有率は、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、また、通常1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の範囲である。レベリング剤の含有率が低すぎるとレベリング不良となる場合があり、高すぎると膜の電荷輸送性を阻害する場合がある。
【0060】
また、例えば、消泡剤の例としては、シリコンオイル、脂肪酸エステル、リン酸エステルなどが挙げられる。消泡剤は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。第一の電荷輸送層形成用組成物中における消泡剤の含有率は、通常0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、また、通常1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の範囲である。消泡剤の含有率が低すぎると消泡効果が十分でない場合があり、高すぎると膜の電荷輸送性を阻害する場合がある。
【0061】
以上の様にして調製された第一の電荷輸送層形成用組成物を用いて、湿式成膜法により、成膜する。成膜は、基板上に行ってもよいし、基板上に形成された電極上に行ってもよいし、他の電荷輸送層などの層上に行ってもよい。有機電界発光素子に用いる場合、第一の電荷輸送層は正孔注入層に適用することが好ましい。
成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましい。
【0062】
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
成膜後、通常加熱等により第一の電荷輸送層形成用組成物の膜(塗布膜)を乾燥させる。この乾燥工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブンおよびホットプレートが好ましい。
【0063】
乾燥工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、第一の電荷輸送
層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、第一の電荷輸送層形成用組成物に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、乾燥工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
【0064】
乾燥工程において、塗布膜の十分な不溶化が起こるのであれば、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常3時間以下である。加熱は2回に分けて行ってもよい。
尚、第一の電荷輸送層は、電荷輸送性化合物として、第二の電荷輸送層に用いられるような架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーを用いてもよく、その場合は、電子受容性化合物を必ず含有させること以外は、第二の電荷輸送層と同様に形成されるが、本発明においては、上記詳述してきたとおり、第一の電荷輸送層の形成に、架橋性基を有する化合物ではない電荷輸送性化合物を用いる場合に好適である。
第一の電荷輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
【0065】
2.第二の電荷輸送層
第二の電荷輸送層は、第一の電荷輸送層に隣接して形成される層である。第一の電荷輸送層と第二の電荷輸送層の形成順序は、特に限定されるものではないが、好ましくは第一の電荷輸送層上に第二の電荷輸送層が形成される。
【0066】
第二の電荷輸送層は、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーを架橋して形成された層である。
本発明において、電荷輸送性ポリマーとは電荷輸送性、好ましくは正孔輸送性を有する構造を有する繰り返し単位を1以上有する重合体のことをいう。この重合体は、異なる2種類以上の繰返し単位を有していてもよい。
【0067】
電荷輸送性ポリマーの具体例としては、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体誘導体などを部分構造として有する重合体が挙げられる。中でも電荷輸送性ポリマーとしては、トリアリールアミン誘導体、すなわち、トリアリールアミン骨格を部分構造として有する重合体であることが好ましい。また、さらに、この重合体は、フルオレン骨格(フルオレン環)を主鎖または側鎖に有することがさらに好ましい。
【0068】
電荷輸送性ポリマーは、1以上の架橋性基を有する。重合体を構成する繰り返し単位中に架橋性基を1以上有することが好ましいが、重合体を構成する繰り返し単位の全てが架橋性基を有する必要はなく、架橋性基を有する繰り返し単位と架橋性基を有さない繰り返し単位とから構成される重合体であってもよい。また、架橋性基を有する位置は、重合体の繰り返し単位中にあってもよく、重合体の末端であってもよい。
【0069】
ここで、本発明における架橋性基とは、近傍に位置する他の分子の同一又は異なる基と反応(架橋反応)して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。例えば、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、あるいは、増感剤などの他分子からエネルギーを受け取ることにより、近傍に位置する他の分子の同一又は異なる基と反応して新規な化学結合を生成する基が挙げられる。
【0070】
架橋性基としては、制限されるものではないが、不飽和二重結合、環状エーテル、ベンゾシクロブテン等を含む基が好ましい。
中でも、架橋性基としては、架橋性基が新規な化学結合を生成することにより形成された膜が、不溶化し易いという点から、下記架橋性基群Aから選ばれる基が好ましい。
架橋性基群A:
【0071】
【化10】

【0072】
(上記式中、R91〜R95は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。Ar91は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
とりわけ、架橋性基としては、電気化学的耐久性に優れるという点から、下記架橋性基群A’から選ばれる基であることが好ましい。
架橋性基群A’:
【0073】
【化11】

【0074】
上記架橋性基群A、架橋性基群A’に記載の基は、2価の連結基を介して重合体の繰り返し単位の主鎖に連結していることが好ましい。2価の連結基としては、−O−基、−C(=O)−基、−CH−基(置換基を有していてもよい)から選ばれる基を任意の順で1以上30以下連結してなる基が挙げられる。
本発明の電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下であり、また通常1,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは5,000以上である。
上記範囲内であると、精製が容易であり、また成膜性が良好で、ガラス転移温度、融点及び気化温度が高く耐熱性に優れる点で好ましい。
【0075】
本発明における電荷輸送性ポリマーの分散度Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、通常3.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下であり、好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.1以上、特に好ましくは1.2以上である。分散度が上記範囲内であると、精製が容易であり、溶剤に対する溶解性及び成膜性が良好である点で好ましい。
【0076】
本発明における架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーの具体例を以下に示すが、本発明
はこれらに限定されるものではない。
【0077】
【化12】

【0078】
【化13】

【0079】
【化14】

【0080】
第二の電荷輸送層を湿式成膜法により形成するには、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーおよび必要に応じて添加される材料を適切な溶剤と混合して成膜用の組成物(第二の電荷輸送層形成用組成物)を調製し、この第二の電荷輸送層形成用組成物を前述の湿式成膜法を用いて成膜、架橋、乾燥することにより第二の電荷輸送層を形成する。
第二の電荷輸送層形成用組成物における、電荷輸送性ポリマーの含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下である。尚、第二の電荷輸送層形成用組成物には、電荷輸送性ポリマーが2種以上含まれていてもよく、その場合は2種以上の合計が上記範囲となることが好ましい。
【0081】
第二の電荷輸送層形成用組成物に用いられる溶剤は、上記第一の電荷輸送層形成用組成物に用いられる溶剤と同様であり、好ましいものもまた同様である。
第二の電荷輸送層形成用組成物は、必要に応じて、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマー以外に架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤および重合促
進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
【0082】
また、第二の電荷輸送層形成用組成物は、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含んでいてもよい。
成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましくい。
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
【0083】
成膜後、加熱および/又は活性エネルギー線の照射により、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーを架橋反応させる。これにより、または必要に応じて乾燥等を行うことにより、第二の電荷輸送層を得る。
加熱による場合、加熱の手法は特に限定されないが、条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下に成膜された層を加熱する。加熱時間としては、通常10秒以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、形成された層を有する基板をホットプレート上にのせたり、オーブン内で加熱したりするなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
【0084】
活性エネルギー線の照射による場合、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。また、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
【0085】
加熱および/又は活性エネルギー線の照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
上記加熱および/又は活性エネルギー線の照射の後、乾燥を行ってもよい。乾燥の条件等は、第一の電荷輸送層の乾燥(乾燥工程)と同様である。
このようにして形成される第二の電荷輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0086】
3.イオン化ポテンシャル
本発明は、第一の電荷輸送層に含まれる電荷輸送性化合物のイオン化ポテンシャルIp(1)および第二の電荷輸送層を形成する架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーのイオン化ポテンシャルIp(2)が、下記式(X)を満たすことを特徴とする。
Ip(2)≧ Ip(1) + 0.10eV ・・・(X)
ここで、イオン化ポテンシャルの測定方法について説明する。
【0087】
光電子収量分光法(PYS)によりイオン化ポテンシャルの測定を行う。該測定は、Optel社製PCR−101を用いて行うことが好ましいが、同等の測定を行えるものであれば限定されるものではない。
具体的には、第一の電荷輸送層に含まれる電荷輸送性化合物または第二の電荷輸送層を形成する架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーを適当な溶剤に溶解してサンプル用塗布液を調製する。溶剤は限定されるものではなく、上記第一の電荷輸送層形成用組成物に用いる溶剤として例示したものが使用できるが、好ましくは、実際に第一の電荷輸送層または第二の電荷輸送層を形成する際に用いる溶剤である。
【0088】
サンプル用塗布液の濃度は、特に限定されるものではないが、成膜および乾燥後、50nmの膜厚が形成される濃度であればよい。
調製されたサンプル用塗布液を、25mmx37.5mmのITOが形成された基板上に成膜する。成膜は、第一の電荷輸送層の成膜工程に記載した方法と同様に行うことが好ましい。
【0089】
成膜後、乾燥させることにより、50nmの膜厚の測定用サンプルを得る。乾燥もまた、第一の電荷輸送層の乾燥工程に記載した方法と同様に行うことが好ましい。
この測定用サンプルを測定装置(Optel社製PCR−101)の測定室内の基板ホルダーにセットし、測定室の扉を閉じる。ターボ分子ポンプによって測定室を10−1Pa以下まで排気する。サンプルには、−50Vの電圧を与え、重水素ランプからの励起光を単色化してサンプルへ入射し、微少電流計によって励起によってサンプルから放出される光電子を検出する。単色化された励起光のエネルギーと光電子の検出量のプロットからイオン化ポテンシャルを決定する。
【0090】
本発明において、第一の電荷輸送層に含まれる電荷輸送性化合物のイオン化ポテンシャルは通常4.50eV以上、好ましくは4.70eV以上、より好ましくは4.90eV以上、また、通常6.00eV以下、好ましくは5.80eV以下、さらに好ましくは5.50eV以下である。
上記範囲内であると、第一の電荷輸送層から第二の電荷輸送層への電荷の注入性が良好であり、また第二の電荷輸送層と反対側の第一の電荷輸送層に隣接する層から第一の電荷輸送層への電荷の注入性が良好であるため好ましい。
【0091】
本発明において、第二の電荷輸送層を形成する架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーのイオン化ポテンシャルは通常4.50eV以上、好ましくは4.70eV以上、より好ましくは4.90eV以上、また、通常6.00eV以下、好ましくは5.80eV以下、さらに好ましくは5.70eV以下である。
また、第一の電荷輸送層に含まれる電荷輸送性化合物および第二の電荷輸送層を形成する電荷輸送性ポリマーが、それぞれ2種以上含まれる場合には、いずれか一方ずつが上記式(X)を満たせばよいが、全ての第一の電荷輸送層に含まれる電荷輸送性化合物および第二の電荷輸送層を形成する電荷輸送性ポリマーが任意の組み合わせで、上記式(X)を満たすことが好ましい。
【0092】
尚、本発明において、第二の電荷輸送層を形成する架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーの架橋後のイオン化ポテンシャルは、通常架橋前の電荷輸送性ポリマーと同等であり、通常4.50eV以上、好ましくは4.70eV以上、より好ましくは4.90eV以上、また、通常6.00eV以下、好ましくは5.80eV以下、さらに好ましくは5.70eV以下である。
【0093】
上記範囲内であると、第二の電荷輸送層上の隣接層への電荷の注入性が良好であり、また第一の電荷輸送層からの電荷の注入性が良好であるため好ましい。
4.電子デバイス
本発明が適用される電子デバイスの例としては、上記の通り、有機電界発光素子、有機トランジスタ、有機太陽電池素子、有機発光トランジスタ、有機磁性デバイス、有機ダイオード、有機アクチュエーター(モーター等)、有機センサー(圧力、温度、湿度センサー等)等の有機電子デバイスが挙げられる。
【0094】
本発明は、これらの中でも有機電界発光素子に適用することが好ましい。有機電界発光素子に適用される場合、第一の電荷輸送層および第二の電荷輸送層は、一対の電極(通常
、陽極と陰極)間に有される層として用いられ、いずれの層に用いてもよいが、第一の電荷輸送層は正孔注入層、第二の電荷輸送層は正孔輸送層として用いられることが好ましい。
【0095】
以下、本発明の電子デバイスとして有機電界発光素子を例にとって説明する。
5.有機電界発光素子
以下に、本発明の有機電界発光素子の層構成およびその一般的形成方法等について、図1を参照にして説明する。
図1は本発明にかかる有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
尚、図1に示す素子の場合、正孔注入層が第一の電荷輸送層、正孔輸送層が第二の電荷輸送層に相当する。また、本発明における電荷輸送層は、通常電極(陽極)と発光層との間に含まれる層である。
【0096】
(基板)
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
【0097】
(陽極)
陽極2は発光層側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
【0098】
陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
【0099】
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。この場合、陽極2の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。また、さらには、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
【0100】
陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、
アルゴンプラズマ処理したりすることは好ましい。
(正孔注入層)
正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。本発明では、正孔注入層が第一の電荷輸送層であることが好ましい。第一の電荷輸送層である場合には、上述の1.第一の電荷輸送層に記載の方法で形成される。
【0101】
以下、正孔注入層が第一の電荷輸送層ではない場合、例えば真空蒸着法により正孔注入層が形成される場合について説明する。
真空蒸着法により正孔注入層を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(例えば第一の電荷輸送層の構成材料である電荷輸送性化合物や電子受容性化合物)の1種または2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極2上に正孔注入層を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。
【0102】
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
【0103】
正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
(正孔輸送層)
正孔輸送層は、正孔注入層がある場合には正孔注入層の上に、正孔注入層が無い場合には陽極の上に形成することができる。また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
【0104】
正孔輸送層を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
【0105】
本発明では、正孔輸送層が第二の電荷輸送層であることが好ましい。第二の電荷輸送層である場合には、上述の2.第二の電荷輸送層に記載の方法で形成される。
以下、正孔輸送層が第二の電荷輸送層ではない場合、例えば、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーを用いない場合や、真空蒸着法により正孔輸送層が形成される場合について説明する。
【0106】
このような正孔輸送層の材料としては、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料であればよく、例えば、前述の第一の電荷輸送層に用いられる電荷輸送性化合物(正孔輸送性化合物)として例示したものが挙げられる。また、4,4'−ビス[N−(
1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表わされる2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234
681号公報)、4,4',4''−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニル
アミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Sy
nth.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体などが挙げられる。また、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等の正孔輸送性化合物が挙げられる。
【0107】
湿式成膜法で正孔輸送層を形成する場合は、上記第一の電荷輸送層の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記第一の電荷輸送層形成用組成物に用いたものと同様である。また、成膜条件、加熱乾燥条件等も第一の電荷輸送層の形成の場合と同様である。
【0108】
真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合、その成膜条件等は上記正孔注入層の形成の場合と同様である。
正孔輸送層は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
【0109】
(発光層)
正孔注入層の上、または正孔輸送層を設けた場合には正孔輸送層の上には発光層が設けられる。発光層は、電界を与えられた電極間において、陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
本発明の電子デバイスが有機電界発光素子に適用される場合、第二の電荷輸送層に隣接して発光層が形成されることが好ましい。
【0110】
<発光層の材料>
発光層は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。発光材料については特に限定はなく、所望の発光波長で発光し、発光効率が良好である物質を用いればよい。更に、発光層5は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。なお、湿式成膜法で発光層を形成する場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。
【0111】
(発光材料)
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。また、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
【0112】
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
以下、発光材料のうち蛍光発光材料(蛍光色素)の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例
示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、クリセン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0113】
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
【0114】
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
【0115】
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0116】
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
【0117】
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
【0118】
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層5における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、通常35重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0119】
(正孔輸送性化合物)
発光層5には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の第一の電荷輸送層における電荷輸送性化合物として例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence, 1997年, Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications, 1996年, pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals, 1997年, Vol.91,pp.209)等が挙げられる。
【0120】
なお、発光層において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
発光層における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0121】
(電子輸送性化合物)
発光層には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層5において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0122】
発光層における電子輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。電子輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
【0123】
<発光層の形成>
湿式成膜法により発光層を形成する場合は、上記材料を適切な溶剤に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを用いて成膜することにより形成する。
発光層を湿式成膜法で形成するための発光層形成用組成物に含有させる発光層用溶剤としては、発光層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。発光層用溶剤の好適な例は、上記第一の電荷輸送層形成用組成物で説明した溶剤と同様である。
【0124】
発光層5を形成するための発光層形成用組成物に対する発光層用溶剤の比率は、本発明
の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下、である。なお、発光層用溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
また、発光層形成用組成物中の発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物等の固形分濃度としては、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下である。この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると膜に欠陥が生じる可能性がある。
【0125】
発光層形成用組成物を湿式成膜後、得られた塗膜を乾燥し、溶剤を除去することにより、発光層が形成される。具体的には、上記第一の電荷輸送層の形成において記載した方法と同様である。湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。
発光層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。発光層5の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
【0126】
(正孔阻止層)
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。
【0127】
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
【0128】
なお、正孔阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、真空蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
【0129】
(電子輸送層)
発光層5と後述の電子注入層の間に、電子輸送層を設けてもよい。
電子輸送層は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。
【0130】
電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極または電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
【0131】
なお、電子輸送層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子輸送層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、真空蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
【0132】
(電子注入層)
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率よく発光層へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
【0133】
例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(
Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された層(0.1〜5nm)を用いることも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices,1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
【0134】
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
【0135】
なお、電子注入層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子注入層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
(陰極)
陰極は、発光層側の層(電子注入層または発光層など)に電子を注入する役割を果たすものである。
【0136】
陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
【0137】
なお、陰極の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
陰極の膜厚は、通常、陽極と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0138】
(その他の層)
本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
【0139】
<電子阻止層>
有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
電子阻止層は、正孔注入層または正孔輸送層と発光層との間に設けられ、発光層から移動してくる電子が正孔注入層に到達するのを阻止することで、発光層内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層内に閉じこめる役割と、正孔注入層から注入された正孔を効率よく発光層の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光発光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。
【0140】
電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明においては、発光層5を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット)等が挙げられる。
【0141】
なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
電子阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
【0142】
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
【0143】
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V25)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
【0144】
更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。
【0145】
本発明の有機電界発光素子は、有機EL表示装置や有機EL照明に使用される。本発明により得られる有機電界発光素子は、例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社,平成16年8月20日発行,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で有機EL表示装置や有機EL照明を形成することができる。
【実施例】
【0146】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<イオン化ポテンシャルの測定>
以下実施例で用いる電荷輸送性化合物P1およびP2、並びに架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーH1、H2、H3およびH4のイオン化ポテンシャルを測定した。
【0147】
電荷輸送性化合物P1およびP2、並びに架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーH1、H2、H3およびH4をそれぞれ溶剤としてトルエンに溶解してサンプル用塗布液を調製した。サンプル用塗布液の濃度は、1.0重量%とした。
調製されたサンプル用塗布液を、25mmx37.5mm(厚さ0.7mm)のITOが形成されたガラス基板上にスピンコート法により成膜した。成膜後、トルエンを染み込ませた綿棒を用いて不用部分を拭き取った後、ホットプレート上で、減圧下(0.1MPa)、130℃で1時間乾燥させることにより、50nmの膜厚の測定用サンプルを得た。
【0148】
この測定用サンプルを測定装置(Optel社製PCR−101)の測定室内の基板ホルダーにセットし、測定室の扉を閉じた。ターボ分子ポンプによって測定室を10−1Pa以下まで排気した。サンプルには、−50Vの電圧を与え、重水素ランプからの励起光を単色化してサンプルへ入射し、微少電流計によって励起によってサンプルから放出される光電子を検出した。単色化された励起光のエネルギーと光電子の検出量のプロットからイオン化ポテンシャルを決定した。
測定されたイオン化ポテンシャルを表1に示す。
【0149】
(実施例1)
(第一の電荷輸送層表面おける電子受容性化合物量の測定)
37.5mm×25mm(厚さ0.7mm)サイズの、ITOが形成されたガラス基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
【0150】
このガラス基板上に、第一の電荷輸送層を、以下の手順で湿式成膜法により形成した。即ち、下記式に示す電荷輸送性化合物P1(重量平均分子量:29400)、下記式に示す電子受容性化合物A1および溶剤として安息香酸エチルを含有する第一の電荷輸送層形成用組成物を調製した。組成物中、電荷輸送性化合物P1は2.0重量%、電子受容性化合物A1は0.8重量%とした。
【0151】
尚、電荷輸送性化合物P1のイオン化ポテンシャルは、5.45eVであった。
該組成物を、スピナ回転数1500rpm、スピナ回転時間30秒、大気中にて、上記基板上にスピンコート法により成膜した。成膜後、大気中、230℃で3時間、クリーンオーブンにより加熱乾燥させた。これにより、膜厚30nmの均一な薄膜(第一の電荷輸送層)が形成された。
【0152】
【化15】

【0153】
上記のようにして、第一の電荷輸送層が形成された基板に対して、ULVAC−PHI社製の走査型X線光電子分光装置QUANTUM2000を用いてXPS測定を行うことにより、第一の電荷輸送層の表面分析を行った。
まず、該基板の中央部10mm四方程度を裁断して切り出し、1〜2mmφの穴の開いたモリブデン製マスクによって試料ホルダーにセットした。測定用のX線源として、モノクロメータを通したAlのKα線(エネルギー:1486.6eV)を用い、加速電圧は16kV、出力は34Wとした。
【0154】
得られたXPS測定結果について、ULVAC−PHI社製multipak ver8.0を用いて解析を行った。炭素とフッ素の最も強いピークの面積を感度補正係数で除することで、炭素とフッ素の原子数に比例した量(F/C)を求めた。その結果、F/Cは0.169と算出された。
この測定により観測されたフッ素は、第一の電荷輸送層中に含まれる電子受容性化合物A1由来のフッ素である。従って、この測定により第一の電荷輸送層の表面に存在する電子受容性化合物A1の存在量を得ることが出来た。
【0155】
(実施例2)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
実施例1と同様にして、第一の電荷輸送層までを形成した。
続いて、第一の電荷輸送層上に、第二の電荷輸送層を、以下の手順で湿式成膜法により形成した。
【0156】
下記式に示す架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーH1(重量平均分子量:72000)および溶剤としてトルエンを含有する第二の電荷輸送層形成用組成物を調製した。組成
物中における、電荷輸送性ポリマーH1の濃度は、0.4重量%であった。
尚、電荷輸送性ポリマーH1のイオン化ポテンシャルは、5.71eVであった。すなわち、この第二の電荷輸送層までが形成された基板は、Ip(1)が5.45eVであり、Ip(2)が5.71eVであることから、本発明における式(X)を満たす。
【0157】
該組成物を、スピナ回転数1500rpm、スピナ回転時間30秒、窒素中にて、上記第一の電荷輸送層が形成された基板上にスピンコート法により成膜した。成膜後、窒素中、230℃で1時間、ホットプレートにより加熱して、架橋、乾燥させた。これにより、第二の電荷輸送層が形成され、第一の電荷輸送層と合わせて、50nmの均一な薄膜が形成された。
【0158】
【化16】

【0159】
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.003と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの1.5%と少量であった。第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が少ないことがわかった。結果を表1に示す。
【0160】
(実施例3)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
第二の電荷輸送層の形成に際し、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーとして、下記式に示す電荷輸送性ポリマーH2を用いた他は、実施例2と同様にして第二の電荷輸送層までが形成された基板を作製した。
【0161】
尚、電荷輸送性ポリマーH2のイオン化ポテンシャルは、5.56eV(重量平均分子量:330000)であった。すなわち、この第二の電荷輸送層までが形成された基板は、Ip(1)が5.45eVであり、Ip(2)が5.56eVであることから、本発明における式(X)を満たす。
【0162】
【化17】

【0163】
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.004と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの2.2%と少量であった。第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が少ないことがわかった。結果を表1に示す。
【0164】
(比較例1)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
第二の電荷輸送層の形成に際し、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーとして、下記式に示す電荷輸送性ポリマーH3(重量平均分子量:95000)を用いた他は、実施例2と同様にして第二の電荷輸送層までが形成された基板を作製した。
【0165】
尚、電荷輸送性ポリマーH3のイオン化ポテンシャルは、5.44eVであった。すなわち、この第二の電荷輸送層までが形成された基板は、Ip(1)が5.45eVであり、Ip(2)が5.44eVであることから、本発明における式(X)を満たさない。
【0166】
【化18】

【0167】
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.017と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの10.2%であり、実施例2、3と比較して多かった。実施例2、3と比較して、第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が多いことがわかった。結果を表1に示す。
【0168】
(比較例2)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
第二の電荷輸送層の形成に際し、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーとして、下記式に示す電荷輸送性ポリマーH4(重量平均分子量:38000)を用いた他は、実施例2と同様にして第二の電荷輸送層までが形成された基板を作製した。
【0169】
尚、電荷輸送性ポリマーH4のイオン化ポテンシャルは、5.28eVであった。すなわち、この第二の電荷輸送層までが形成された基板は、Ip(1)が5.45eVであり、Ip(2)が5.28eVであることから、本発明における式(X)を満たさない。
【0170】
【化19】

【0171】
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.030と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの17.6%であり、実施例2、3と比較して多かった。実施例2、3と比較して、第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が多いことがわかった。結果を表1に示す。
【0172】
【表1】

【0173】
表1の結果より、本発明の式(X)満たす第一の電荷輸送層と第二の電荷輸送層の積層構造は、第一の電荷輸送層に含まれる電子受容性化合物の第二の電荷輸送層への拡散が抑制されていることが分かった。
(実施例4)
(第一の電荷輸送層表面おける電子受容性化合物量の測定)
実施例1において、電荷輸送性化合物P1を下記の構造式に示す化合物P2にしたほかは、実施例1と同様にして第一の電荷輸送層を形成した。組成物中、電荷輸送性化合物P2は2.0重量%、電子受容性化合物A1は0.4重量%とした。
【0174】
【化20】

【0175】
上記のようにして、第一の電荷輸送層が形成された基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行った。その結果、F/Cは0.059と算出された。
この測定により観測されたフッ素は、第一の電荷輸送層中に含まれる電子受容性化合物A1由来のフッ素である。従って、この測定により第一の電荷輸送層の表面に存在する電子受容性化合物A1の存在量を得ることが出来た。
【0176】
(実施例5)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
実施例4と同様にして、第一の電荷輸送層までを形成し、続いて、実施例2と同様にして第一の電荷輸送層上に、第二の電荷輸送層を形成した。
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.001と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの1.2%と少量であった。第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が少ないことがわかった。結果を表2に示す。
【0177】
(実施例6)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
実施例4と同様にして、第一の電荷輸送層までを形成し、続いて、実施例3と同様にして第一の電荷輸送層上に、第二の電荷輸送層を形成した。
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.001と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの1.2%と少量であった。第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が少ないことがわかった。結果を表2に示す。
【0178】
(実施例7)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
実施例4と同様にして、第一の電荷輸送層までを形成し、続いて、比較例1と同様にして第一の電荷輸送層上に、第二の電荷輸送層を形成した。
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.002と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの2.9%と少量であった。第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が少ないことがわかった。結果を表2に示す。
【0179】
(実施例8)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
実施例4と同様にして、第一の電荷輸送層までを形成し、続いて、比較例2と同様にし
て第一の電荷輸送層上に、第二の電荷輸送層を形成した。
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.004と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの6.7%と少量であった。第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が少ないことがわかった。結果を表2に示す。
【0180】
(実施例9)
(第一の電荷輸送層表面おける電子受容性化合物量の測定)
実施例1において、電荷輸送性化合物をH2、A1および溶剤として安息香酸エチルを含有する第一の電荷輸送層形成用組成物から第一の電荷輸送層を形成したほかは、実施例1と同様にして第一の電荷輸送層を形成した。組成物中、電荷輸送性化合物H2は2.0重量%、電子受容性化合物A1は0.4重量%とした。
上記のようにして、第一の電荷輸送層が形成された基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行った。その結果、F/Cは0.057と算出された。
この測定により観測されたフッ素は、第一の電荷輸送層中に含まれる電子受容性化合物A1由来のフッ素である。従って、この測定により第一の電荷輸送層の表面に存在する電子受容性化合物A1の存在量を得ることが出来た。
【0181】
(実施例10)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
実施例9と同様にして、第一の電荷輸送層までを形成し、続いて、実施例2と同様にして第一の電荷輸送層上に、第二の電荷輸送層を形成した。
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.007と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの12.0%と少量であった。第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が少ないことがわかった。結果を表3に示す。
【0182】
(比較例3)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
実施例9と同様にして、第一の電荷輸送層までを形成し、続いて、実施例3と同様にして第一の電荷輸送層上に、第二の電荷輸送層を形成した。
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.013と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの22.6%であり、実施例10と比較して多かった。実施例10と比較して、第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が多いことがわかった。結果を表3に示す。
【0183】
(比較例4)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
実施例9と同様にして、第一の電荷輸送層までを形成し、続いて、比較例1と同様にして第一の電荷輸送層上に、第二の電荷輸送層を形成した。
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.014と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの25.1%であり、実施例10と比較して多かった。実施例10と比較して、第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が多いことがわかった。結果を表3に示す。
【0184】
(比較例5)
(第二の電荷輸送層表面における電子受容性化合物量の測定)
実施例9と同様にして、第一の電荷輸送層までを形成し、続いて、比較例2と同様にして第一の電荷輸送層上に、第二の電荷輸送層を形成した。
第二の電荷輸送層までが形成された上記基板に対して、実施例1と同様にしてXPS測定を行うことにより第二の電荷輸送層の表面分析を行った。その結果、F/Cの値は0.022と算出された。これは第一の電荷輸送層表面で検出されたF/Cの38.8%であり、実施例10と比較して多かった。実施例10と比較して、第二の電荷輸送層への電子受容性化合物の拡散割合が多いことがわかった。結果を表3に示す。
【0185】
【表2】

【0186】
表2の結果より、本発明の式(X)満たす第一の電荷輸送層と第二の電荷輸送層の積層構造は、第一の電荷輸送層に含まれる電子受容性化合物の第二の電荷輸送層への拡散が抑制されていることが分かった。
【0187】
【表3】

【0188】
表3の結果より、本発明の式(X)満たす第一の電荷輸送層と第二の電荷輸送層の積層構造は、第一の電荷輸送層に含まれる電子受容性化合物の第二の電荷輸送層への拡散が抑制されていることが分かった。
【0189】
[有機電界発光素子の作製]
(実施例11)
図1に示す有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗
、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
この基板上に、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層を実施例2と同様にして形成した。ここで、第一の電荷輸送層は正孔注入層、第二の電荷輸送層は正孔輸送層として機能する。
正孔輸送層4までを成膜した基板を、窒素グローブボックスに連結された真空蒸着装置内に移し、装置内の真空度が3.0×10−4Pa以下になるまで排気した後、以下に示す有機化合物(C1)を蒸着速度1.0〜1.1Å/秒、および(D1)を0.05〜0.06Å/秒の範囲で制御し、真空蒸着法により膜厚40nmの発光層5を形成した。
【0190】
【化21】

【0191】
次に、BAlq(C2)を真空蒸着法によって積層し正孔阻止層6を得た。蒸着速度を0.7〜1.2Å/秒の範囲で制御し、発光層5の上に積層して膜厚10nmの膜の正孔阻止層6を形成した。
【0192】
【化22】

【0193】
続いて、Alq(C3)を加熱して蒸着を行い、電子輸送層7を成膜した蒸着速度は1.0〜1.5Å/秒の範囲で制御し、膜厚30nmの膜を正孔阻止層6の上に積層して電子輸送層7を形成した。発光層5から電子輸送層7までを形成する際の真空度は1.0〜3.0x10−4Paであった。
【0194】
【化23】

【0195】
ここで、電子輸送層7までの蒸着を行った素子を発光層5、正孔阻止層6、および電子輸送層7を蒸着したチャンバーに連結されたチャンバーへと真空中で搬送し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させた。
電子注入層8として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.1〜0.4Å/秒、真空度3.2〜6.7×10−4Paで制御し、0.5nmの膜厚で電子輸送層7の上に成膜した。次に、陰極9としてアルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.7〜5.3Å/秒、真空度2.8〜11.1×10−4Paで制御して膜厚80nmのアルミニウム層を形成した。以上の2層の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
引き続き、素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂(スリーボンド社製30Y−437)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。この素子の発光特性を表4に示す。
【0196】
(実施例12)
実施例11において、第一の電荷輸送層、および第二の電荷輸送層を実施例3と同様にして形成したほかは、実施例11と同様にして有機電界発光素子を作製した。この素子において、第一の電荷輸送層は正孔注入層、第二の電荷輸送層は正孔輸送層に相当する。
この素子の発光特性を表4に示す。
【0197】
(比較例6)
実施例11において、第一の電荷輸送層、および第二の電荷輸送層を比較例1と同様にして形成したほかは、実施例11と同様にして有機電界発光素子を作製した。この素子において、第一の電荷輸送層は正孔注入層、第二の電荷輸送層は正孔輸送層に相当する。
この素子の発光特性を表4に示す。
【0198】
【表4】

【0199】
表4より、本発明の式(X)を満たす第一の電荷輸送層と第二の電荷輸送層を有する有機電界発光素子は、発光効率が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0200】
1.基板
2.陽極
3.正孔注入層
4.正孔輸送層
5.発光層
6.正孔阻止層
7.電子輸送層
8.電子注入層
9.陰極
10.有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に、電荷輸送性化合物および電子受容性化合物を含む第一の電荷輸送層および第一の電荷輸送層に隣接して、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーを架橋して形成された第二の電荷輸送層を有する電子デバイスにおいて、
第一の電荷輸送層および第二の電荷輸送層は、いずれも湿式成膜法で形成された層であり、
第一の電荷輸送層に含まれる電荷輸送性化合物のイオン化ポテンシャルIp(1)
および第二の電荷輸送層を形成する架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーのイオン化ポテンシャルIp(2)が、下記式(X)を満たすことを特徴とする電子デバイス。
Ip(2)≧ Ip(1) + 0.10eV ・・・(X)
【請求項2】
第一の電荷輸送層に含まれる電荷輸送性化合物が、トリアリールアミン骨格を部分構造として有する化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
第一の電荷輸送層に含まれる電子受容性化合物が、オニウム塩であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
第二の電荷輸送層を形成する架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーが、トリアリールアミン骨格を部分構造として有する重合体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
有機電界発光素子として用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
第一の電荷輸送層が正孔注入層および第二の電荷輸送層が正孔輸送層であることを特徴とする、請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
請求項5または6に記載の電子デバイスを用いることを特徴とする、有機EL表示装置。
【請求項8】
請求項5または6に記載の電子デバイスを用いることを特徴とする、有機EL照明。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−67959(P2010−67959A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186604(P2009−186604)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】