説明

電子デバイス用基板、電子デバイスおよび電子機器

【課題】優れたキャリア輸送能を有する電子デバイス用基板、かかる電子デバイス用基板を備え、優れた特性を発揮する電子デバイスおよび信頼性の高い電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の電子デバイス用基板1は、共役系の構造を有する有機半導体材料を主材料として構成される有機半導体層5と、金属原子を含有する電極3と、有機半導体層5と電極3との間に、これらの双方に接触するように設けられた中間層4とを有する電子デバイス用基板1であり、中間層4は、金属原子に配位する配位原子と、共役系の構造とを有する配位子を主成分として構成されているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス用基板、電子デバイスおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機半導体層と電極とを備え、これらのものがお互いに接触するように設けられた電子デバイス用基板を備える電子デバイスとして、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、単に「有機EL素子」という。)や、有機薄膜トランジスタ等がある。
これらのうち、有機EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子(半導体素子)としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。
【0003】
一般に、有機EL素子は、陰極と陽極との間に発光層を有する構成であり、陰極と陽極との間に電界を印加すると、発光層に陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。
そして、注入された電子と正孔とが発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際の励起エネルギーを光エネルギーとして放出することにより、発光層が発光する。
【0004】
このような有機EL素子において、有機EL素子の高効率化、すなわち、高い発光を得るためには、電子または正孔のキャリア輸送性の異なる有機半導体材料で構成される有機半導体層を、発光層と、陰極および/または陽極との間に積層する素子構造が有効であることが判っている。
そこで、キャリア輸送特性の異なる発光層と有機半導体層とを金属原子を含有する電極上に積層した電子デバイス用基板(積層体)を有する構成の有機EL素子について、様々な検討が行われているが、有機EL素子としての発光効率、発色の色純度またはパターン精度等の特性の向上が期待するほど得られていないのが実状であった(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このような問題点について、さらに検討が行われた結果、[1]有機半導体材料と金属原子とのキャリア輸送能の差が大きいこと、[2]有機半導体材料と金属原子との相互作用よりも有機半導体材料同士間の相互作用が大きいため有機半導体層と電極との密着性が十分に得られていないことに起因して、キャリアの受け渡しが円滑に行われないことが判ってきた。
【0006】
このような問題点を解決する方法として、銅フタロシアニンのような錯体を主成分とする正孔注入層を、陽極と正孔輸送層(有機半導体層)との間に形成して、キャリア輸送能を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、このような方法を用いた場合においても、錯体が陽極に対してほぼ垂直になるように配列して正孔注入層が形成されることに起因して、有機EL素子の特性の向上は、十分に得られていない。
このような問題は、有機薄膜トランジスタ等にも同様に生じることが懸念されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−255774号公報
【特許文献2】特開2002−151269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れたキャリア輸送能を有する電子デバイス用基板、かかる電子デバイス用基板を備え、優れた特性を発揮する電子デバイスおよび信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の電子デバイス用基板は、共役系の構造を有する有機半導体材料を主材料として構成される有機半導体層と、金属原子を含有する電極と、前記有機半導体層と前記電極との間に、これらの双方に接触するように設けられた中間層とを有する電子デバイス用基板であって、
前記中間層は、前記金属原子に配位する配位原子と、共役系の構造とを有する配位子を主成分として構成されていることを特徴とする。
これにより、キャリア輸送能の優れた電子デバイス用基板とすることができる。
【0010】
本発明の電子デバイス用基板では、前記配位子の総炭素数は、40以下であることが好ましい。
これにより、金属原子に配位子が配位する際に、隣接する配位子同士間での立体障害が大きくなるのを好適に防止することができる。その結果、配位子を金属原子に効率よく配位させることができる。
【0011】
本発明の電子デバイス用基板では、前記配位子は、前記金属原子に1つの配位原子が配位する単座配位子であることが好ましい。
単座配位子を選択することにより、配位子同士間での立体障害が大きくなるのをより好適に防止することができる。その結果、電極中の金属原子により効率よく配位子を配位させることができる。
【0012】
本発明の電子デバイス用基板では、前記単座配位子は、前記配位原子が前記共役系の構造中に含まれていることが好ましい。
これにより、配位原子が配位している金属原子を介して電極から注入されたキャリアを、より好適かつ円滑に共役系の構造中に取り込むことができる。その結果、共役系の構造を介した有機半導体層へのキャリアの注入も、より好適かつ円滑に行うことができる。
【0013】
本発明の電子デバイス用基板では、前記配位子は、前記金属原子に2つ以上の配位原子が配位する多座配位子であることが好ましい。
多座配位子を選択することにより、1つの金属原子に2つ以上の配位原子が配位することとなり、中間層中における配位子と金属原子との結び付きをより安定なものとすることができる。その結果、金属原子を介して注入されたキャリアを確実に共役系の構造側に移動させることができる。
【0014】
本発明の電子デバイス用基板では、前記多座配位子は、全ての前記配位原子が前記共役系の構造中に含まれていることが好ましい。
これにより、金属原子を介して電極から注入されたキャリアを、より好適かつ円滑に共役系の構造側に受け渡しすることができる。その結果、共役系の構造を介した有機半導体層へのキャリアの注入も、より好適かつ円滑に行うことができる。
【0015】
本発明の電子デバイス用基板では、前記多座配位子は、下記一般式(1)および(2)で表される化合物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【化1】

[これらの式中、Aは、それぞれ独立していて、水素原子、塩素原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基および炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
これにより、金属原子を介して電極から注入されたキャリアを、より好適かつ円滑に共役系の構造側に受け渡しすることができる。その結果、共役系の構造を介した有機半導体層へのキャリアの注入も、より好適かつ円滑に行うことができる。
【0016】
本発明の電子デバイス用基板では、前記直鎖アルキル基の炭素数は、2〜8であることが好ましい。
これにより、隣接する共役系の構造同士が接近し過ぎるのを好適に防止しつつ、金属原子に配位原子を確実に配位させることができる。その結果、配位原子を介して共役系の構造に注入されたキャリアを中間層の面方向に移動させることなく、確実に厚さ方向すなわち有機半導体層側に移動させることができる。
【0017】
本発明の電子デバイス用基板では、前記置換基Aは、それぞれが結合するピリジン環の3位または4位のいずれかに結合していることが好ましい。
これにより、2つの窒素原子を確実に金属原子に配位させることができる。
本発明の電子デバイス用基板では、前記多座配位子は、一部の前記配位原子が前記共役系の構造中に含まれていることが好ましい。
これにより、共役系の構造中に含まれている配位原子において、金属原子を介して電極から注入されたキャリアを、より好適かつ円滑に共役系の構造側に受け渡しすることができる。その結果、共役系の構造を介した有機半導体層へのキャリアの注入も、より好適かつ円滑に行うことができる。
【0018】
本発明の電子デバイス用基板では、前記多座配位子は、下記一般式(3)〜(9)で表される化合物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【化2】

[これらの式中、Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびセレン原子を表す。Yは、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基およびカルボキシ基を表す。Zは、水素原子、塩素原子および炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表す。]
これにより、共役系の構造中に含まれている配位原子において、金属原子を介して電極から注入されたキャリアを、より好適かつ円滑に共役系の構造側に受け渡しすることができる。その結果、共役系の構造を介した有機半導体層へのキャリアの注入も、より好適かつ円滑に行うことができる。
【0019】
本発明の電子デバイス用基板では、前記直鎖アルキル基の炭素数は、2〜8であることが好ましい。
これにより、隣接する共役系の構造同士が接近し過ぎるのを好適に防止しつつ、金属原子に配位原子を確実に配位させることができる。その結果、配位原子を介して共役系の構造に注入されたキャリアを中間層の面方向に移動させることなく、確実に厚さ方向すなわち有機半導体層側に移動させることができる。
【0020】
本発明の電子デバイス用基板では、前記一般式(3)、(8)および(9)で表される化合物において、前記置換基Zは、ベンゼン環の3位または4位のいずれかに結合していることが好ましい。
これにより、前記一般式(3)で表される化合物においては、置換基Yに含まれる配位原子と窒素原子とを確実に金属原子に配位させることができる。また、前記一般式(8)および(9)で表される化合物においては、置換基Yに含まれる配位原子と配位原子Xとを確実に金属原子に配位させることができる。
【0021】
本発明の電子デバイス用基板では、前記一般式(4)および(5)で表される化合物において、前記置換基Zは、芳香族複素環の3位または4位のいずれかに結合していることが好ましい。
これにより、前記一般式(4)で表される化合物においては、置換基Yに含まれる配位原子と配位原子Xとを確実に金属原子に配位させることができる。また、前記一般式(5)で表される化合物においては、置換基Yに含まれる配位原子と窒素原子とを確実に金属原子に配位させることができる。
【0022】
本発明の電子デバイス用基板では、前記一般式(6)および(7)で表される化合物において、前記置換基Zは、ベンゼン環の4位または5位のいずれかに結合していることが好ましい。
これにより、置換基Yに含まれる配位原子と配位原子Xとを確実に金属原子に配位させることができる。
【0023】
本発明の電子デバイス用基板では、前記単座配位子は、全ての前記配位原子が前記共役系の構造外に存在することが好ましい。
これにより、配位原子が共役系の構造外に存在する置換基中に含まれることとなる。その結果、この置換基が結合する共役系の構造中の原子を中心にして、配位原子を回動(移動)させることができる。これにより、金属原子の原子半径の大きさに応じて、配位原子同士の距離の大きさを調整することができ、金属原子に対して2つ以上の配位原子を確実に配位させることができる。
【0024】
本発明の電子デバイス用基板では、前記多座配位子は、下記一般式(10)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】

[この式中、Yは、それぞれ独立していて、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基およびカルボキシ基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、Zは、水素原子、塩素原子および炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表す。]
【0025】
これにより、配位原子が共役系の構造外に存在する置換基Y中に含まれることとなる。その結果、置換基Yが結合する共役系の構造中の原子を中心にして、配位原子を回動(移動)させることができる。これにより、金属原子の原子半径の大きさに応じて、配位原子同士の距離の大きさを調整することができ、金属原子に対して2つ以上の配位原子を確実に配位させることができる。
【0026】
本発明の電子デバイス用基板では、前記直鎖アルキル基の炭素数は、2〜8であることが好ましい。
これにより、隣接する共役系の構造同士が接近し過ぎるのを好適に防止しつつ、金属原子に配位原子を確実に配位させることができる。その結果、配位原子を介して共役系の構造に注入されたキャリアを中間層の面方向に移動させることなく、確実に厚さ方向すなわち有機半導体層側に移動させることができる。
【0027】
本発明の電子デバイス用基板では、前記一般式(10)で表される化合物において、前記置換基Zは、それぞれが結合するベンゼン環の3位または4位のいずれかに結合していることが好ましい。
これにより、置換基Yに含まれる配位原子を確実に金属原子に配位させることができる。
【0028】
本発明の電子デバイス用基板では、前記金属原子は、インジウムであることが好ましい。
金属原子としてインジウムを選択した場合、配位子としては、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物が好適に選択される。これにより、電極と中間層との密着性を向上させることができる。
【0029】
本発明の電子デバイス用基板では、前記有機半導体材料は、重合性基を有する低分子を、前記重合性基において重合させて高分子化させることにより得られたものであることが好ましい。
これにより、低分子が高分子化される際に、高分子が中間層の共役系の構造に絡まり付くように形成されることとなる。これにより、中間層と有機半導体層との密着性をより向上させることができる。
【0030】
本発明の電子デバイス用基板では、前記低分子は、下記一般式(A1)または下記一般式(A2)で表される化合物であることが好ましい。
【化4】

[式中、2つのRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。2つのXは、下記一般式(B1)〜下記一般式(B3)で表される置換基のうちのいずれかを示す。ただし、2つのXは、同種の置換基であるが、その炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。Yは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
【化5】

[式中、8つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。X、X、XおよびXは、下記一般式(B1)〜下記一般式(B3)で表される置換基のうちのいずれかを示す。ただし、これらX、X、XおよびXは、同種の置換基であるが、その炭素数は、同一であっても、異なっていてもよい。Yは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
【化6】

[これらの式中、nは、2〜8の整数を表す。nは、3〜8の整数を表し、mは、0〜3の整数を表す。Zは、水素原子またはメチル基を表し、Zは、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。]
かかる化合物を用いることにより、低分子が高分子化される際に、高分子が中間層の共役系の構造に絡まり付くように確実に形成することができる。その結果、中間層と有機半導体層との密着性を確実に向上させることができる。
【0031】
本発明の電子デバイスは、本発明の電子デバイス用基板を備えることを特徴とする。
これにより、優れたキャリア輸送能を有する電子デバイス用基板を備え、優れた特性を発揮する電子デバイスとすることができる。
本発明の電子デバイスでは、当該電子デバイスは、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
これにより、優れたキャリア輸送能を発揮する有機EL素子とすることができる。
本発明の電子機器は、本発明の電子デバイスを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明者は、上記問題点に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、共役系の構造を有する有機半導体材料を主材料として構成される有機半導体層と、金属原子を含有する電極との間で、キャリアの受け渡しを円滑に行うためには、これらの双方に接触するように中間層を設け、この中間層を、金属原子に配位する配位原子と、共役系の構造とを有する配位子を主成分として構成するのが良いとの考えに至った。
【0033】
中間層をかかる構成のものとすることにより、配位原子が金属原子に配位して、配位子が金属原子すなわち電極の表面に対して化学的に結合することとなる。これにより、中間層が電極に対して優れた密着性を有するものとなる。さらに、電極と中間層との界面付近におけるキャリア輸送能の大きさの差を小さくすることができる。
また、配位子は、共役系の構造を有することから、共役系の構造を有する有機半導体材料に対して優れた親和性を示すこととなる。これにより、中間層が有機半導体層に対しても優れた密着性を有するものとなる。さらに、これら同士がともに共役系の構造を有することから、これら同士間のキャリア輸送能の大きさの差をも小さくすることができる。
【0034】
そこで、電極から有機半導体層側にキャリア(正孔または電子)を移動させると、上述したような効果が相乗的に得られて、電極から中間層に注入されたキャリアが配位原子から共役系の構造へと順次受け渡されて、有機半導体層へと円滑に移動し得ることが判った。換言すれば、かかる構成の中間層を電極と有機半導体層との間に備える電子デバイス用基板が優れたキャリア輸送能を発揮することが判った。
【0035】
本発明は、かかる知見に基づいてなされるものであり、有機半導体層と、電極と、中間層とを備える電子デバイス用基板において、中間層は、配位原子と、共役系の構造とを有する配位子を主成分として構成されていることを特徴とする。
以下、本発明の電子デバイス用基板、電子デバイスおよび電子機器を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0036】
<電子デバイス用基板>
以下、本発明の電子デバイス用基板の好適な実施形態について説明する。
図1は、電子デバイス用基板の一例を示した縦断面図である。
図1に示す電子デバイス用基板1は、基板2と、基板2側から順次設けられた電極3と、中間層4と、有機半導体層5とを備えている。
【0037】
基板2は、絶縁性を示す材料で構成されていればよく、特に限定されるものではないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素のような各種ガラス材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような各種樹脂材料、各種低誘電率材料(いわゆる、low−K材)等で構成されたものを用いることができる。
【0038】
また、基板2は、電子デバイス用基板1を形成した後、除去(分離)されるものであってもよく、電子デバイス用基板1と一体的に使用されるものであってもよい。
電子デバイス用基板1において、電極3は、金属原子を含有し、キャリア(正孔または電子)を中間層4に注入するものである。
電極3の構成材料としては、金属原子を含有するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、インジウムティンオキサイド(ITO)、インジウムオキサイド(IO)、酸化スズ(SnO)、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)のような金属酸化物、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Sb、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rb、Cr、Mo、Ta、Au、Pt、Niのような金属材料、またはこれらを含む合金等の導電性材料で構成される。
なお、電極3は、これらの構成材料を適宜選択して、陽極、陰極および交流電極のいずれに適用されるものであっても良い。
【0039】
また、中間層4は、電極3と有機半導体層5との間に、これらの双方に接触するように設けられ、電極3から注入されたキャリアを有機半導体層5に再び注入する機能、すなわち、電極3から有機半導体層5に中間層4を介してキャリアを受け渡しする機能を有するものである。
この中間層4が、前述したように、配位原子と、共役系の構造とを有する配位子を主成分として構成されている。
以下、この配位子について、詳述する。
【0040】
配位子は、その総炭素数が40以下であるのが好ましく、4〜20程度であるのがより好ましい。これにより、配位子の分子構造が必要以上に大きくなるのを防止して、電極3の構成材料として含まれる金属原子にこのものが配位する際に、隣接する配位子同士間での立体障害が大きくなるのを好適に防止することができる。その結果、配位子を金属原子に効率よく配位させることができる。これにより、電極3と中間層4との密着性を確実に向上させることができるとともに、これら同士間のキャリア輸送能の大きさの差を確実に小さくすることができる。
【0041】
また、かかる範囲の総炭素数とすることにより、配位子同士間に適度な間隔(空間)を生じさせた状態で金属原子に配位させることができる。その結果、中間層4上に有機半導体層5を形成する際に、有機半導体材料をこの空間に入り込ませることができる。これにより、有機半導体材料と配位子とにそれぞれ含まれる共役系の構造同士の接触面積を確実に増大させることができ、中間層4と有機半導体層5との間のキャリアの受け渡しをより円滑に行うことができる。
【0042】
このような配位子は、金属原子に1つの配位原子が配位する単座配位子と、金属原子に2つ以上の配位原子が配位する多座配位子とに分類される。
配位子として、単座配位子を選択することにより、比較的低分子の配位子とすることができることから、単座配位子同士間での立体障害が大きくなるのをより好適に防止することができる。その結果、電極3中の金属原子により効率よくこのものが配位することとなる。
【0043】
単座配位子としては、特に限定されないが、例えば、1つの配位原子を有するものとして、ピリジン、キノリン、イソキノリン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[c]チオフェン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、フェノール、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルアミンおよびトリブチルフォスフィン等が挙げられる。
また、複数の配位原子(座位)を有するが、金属原子と配位原子とが1対1に配位するものとして、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、フタラジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール等が挙げられる。
【0044】
また、単座配位子において、配位原子の位置は、いかなる位置に存在するものであってもよいが、特に、共役系の構造中に含まれている構成のものが好ましい。これにより、配位原子が配位している金属原子を介して電極3から注入されたキャリアを、より好適かつ円滑に共役系の構造中に取り込むことができる。その結果、共役系の構造を介した有機半導体層5へのキャリアの注入も、より好適かつ円滑に行うことができる。
【0045】
前述した単座配位子のうち、かかる構成を有する単座配位子としては、例えば、1つの配位原子を有するものとして、ピリジン、キノリン、イソキノリン、チオフェンベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[c]チオフェン、およびフランベンゾフラン、イソベンゾフラン等が挙げられ、複数の座位を有するが、金属原子と配位原子とが1対1に配位するものとして、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、フタラジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール等が挙げられる。
【0046】
また、配位子として、多座配位子を選択することにより、1つの金属原子に2つ以上の配位原子が配位することとなり、中間層4中における配位子と金属原子との結び付きを、1つの配位原子が配位する場合と比較して、より安定なものとすることができる。その結果、金属原子を介して注入されたキャリアを確実に共役系の構造側に移動させることができる。
多座配位子としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)〜(10)で表される化合物等が挙げられる。
【0047】
【化7】

[これらの式中、Aは、それぞれ独立していて、水素原子、塩素原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基および炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびセレン原子を表す。Yは、それぞれ独立していて、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基およびカルボキシ基を表し、同一であっても、異なっていてもよく。Zは、水素原子、塩素原子および炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表す。]
【0048】
このような多座配位子においては、配位原子同士の間に結合する炭素原子が2〜4つ存在する構成となっている。多座配位子をかかる構造を有するものとすることにより、2つ以上の配位原子を配位金属に確実に配位させることができる。
また、多座配位子において、配位原子は、共役系の構造の中または外のいずれに位置するものであってもよく、特に限定されないが、それぞれの配位原子が存在する位置に応じて、以下のように分類することができる。
【0049】
すなわち、多座配位子において、[1]全ての配位原子が共役系の構造外に存在するもの、[2]一部の配位原子が共役系の構造中に含まれているもの、[3]全ての配位原子が共役系の構造中に含まれているものに分類することができる。
ここで、[1]全ての配位原子が共役系の構造外に存在するものを選択することにより、配位原子が共役系の構造外に存在する置換基中に含まれることとなる。その結果、この置換基が結合する共役系の構造中の原子を中心にして、配位原子を回動(移動)させることができる。これにより、金属原子の原子半径の大きさに応じて、配位原子同士の距離の大きさを調整することができ、金属原子に対して2つ以上の配位原子を確実に配位させることができる。 かかる構成の多座配位子としては、例えば、前記一般式(10)で表される化合物が好適に選択される。これにより、[1]の構成とすることにより得られる効果を確実に発揮させることができる。
【0050】
なお、前記一般式(10)で表される化合物において、置換基Zは、それぞれが結合するベンゼン環の3位または4位のいずれかに結合しているのが好ましい。置換基Zと置換基Yとの位置関係をかかる構成のものとすることにより、置換基Yに含まれる配位原子を確実に金属原子に配位させることができる。
この置換基Zの種類は、後述する中間層形成用材料を調製する際に用いる溶媒に対する溶解性を考慮して、適宜選択される。
【0051】
また、置換基Zとして、炭素数1〜10の直鎖アルキル基を選択した際には、その炭素数が、2〜8であるのが好ましく、4〜6であるのがより好ましい。ここで、電極3と中間層4との密着性を向上させるという観点から、配位子は、電極3に対して密に配位しているのが好ましいが、共役系の構造同士の相互作用が大きくなるのを防止すという観点から、ある程度、疎に配位しているのがより好ましい。そこで、かかる範囲の炭素数を有する置換基Zを選択することにより、隣接する共役系の構造同士が接近し過ぎるのを好適に防止しつつ、金属原子に配位原子を確実に配位させることができる。その結果、配位原子を介して共役系の構造に注入されたキャリアを中間層4の面方向に移動させることなく、確実に厚さ方向すなわち有機半導体層5側に移動させることができる。
【0052】
また、[2]一部の配位原子が共役系の構造中に含まれているものを選択することにより、共役系の構造中に含まれている配位原子において、金属原子を介して電極3から注入されたキャリアを、より好適かつ円滑に共役系の構造側に受け渡しすることができる。その結果、共役系の構造を介した有機半導体層5へのキャリアの注入も、より好適かつ円滑に行うことができる。
【0053】
かかる構成の多座配位子としては、例えば、前記一般式(3)〜(9)で表される化合物が好適に選択される。これにより、[2]の構成とすることにより得られる効果を確実に発揮させることができる。
なお、前記一般式(3)、(8)および(9)で表される化合物において、置換基Zは、ベンゼン環の3位または4位のいずれかに結合しているのが好ましい。これにより、前記一般式(3)で表される化合物においては、置換基Yに含まれる配位原子と窒素原子とを確実に金属原子に配位させることができる。また、前記一般式(8)および(9)で表される化合物においては、置換基Yに含まれる配位原子と配位原子Xとを確実に金属原子に配位させることができる。
【0054】
前記一般式(4)および(5)で表される化合物において、置換基Zは、芳香族複素環の3位または4位のいずれかに結合しているのが好ましい。これにより、前記一般式(4)で表される化合物においては、置換基Yに含まれる配位原子と配位原子Xとを確実に金属原子に配位させることができる。また、前記一般式(5)で表される化合物においては、置換基Yに含まれる配位原子と窒素原子とを確実に金属原子に配位させることができる。
【0055】
前記一般式(6)および(7)で表される化合物において、置換基Zは、ベンゼン環の4位または5位のいずれかに結合しているのが好ましい。これにより、置換基Yに含まれる配位原子と配位原子Xとを確実に金属原子に配位させることができる。
なお、前記一般式(3)〜(9)で表されるの化合物における置換基Zの種類は、後述する中間層形成用材料を調製する際に用いる溶媒に対する溶解性を考慮して、適宜選択される。
【0056】
また、置換基Zとして、炭素数1〜10の直鎖アルキル基を選択した際には、その炭素数が、2〜8であるのが好ましく、4〜6であるのがより好ましい。ここで、電極3と中間層4との密着性を向上させるという観点から、配位子は、電極3に対して密に配位しているのが好ましいが、共役系の構造同士の相互作用が大きくなるのを防止すという観点から、ある程度、疎に配位しているのがより好ましい。そこで、かかる範囲の炭素数を有する置換基Zを選択することにより、隣接する共役系の構造同士が接近し過ぎるのを好適に防止しつつ、金属原子に配位原子を確実に配位させることができる。その結果、配位原子を介して共役系の構造に注入されたキャリアを中間層4の面方向に移動させることなく、確実に厚さ方向すなわち有機半導体層5側に移動させることができる。
【0057】
さらに、[3]全ての配位原子が共役系の構造中に含まれているものを選択することにより、配位原子を共役系の構造中に含めることにより得られる効果をより好適に発揮させることができる。すなわち、[2]で説明したような効果をより確実に発揮させることができる。
かかる構成の多座配位子としては、例えば、前記一般式(1)および(2)で表される化合物が好適に選択される。これにより、[3]の構成とすることにより得られる効果を確実に発揮させることができる。
【0058】
なお、前記一般式(1)および(2)で表される化合物において、置換基Aは、それぞれが結合するピリジン環の3位または4位のいずれかに結合しているのが好ましい。これにより、2つの窒素原子(配位原子)を確実に金属原子に配位させることができる。
なお、前記一般式(1)または(2)で表されるの化合物における置換基Aの種類は、後述する中間層形成用材料を調製する際に用いる溶媒に対する溶解性を考慮して、適宜選択される。
【0059】
また、置換基Aとして、炭素数1〜10の直鎖アルキル基を選択した際には、その炭素数が、2〜8であるのが好ましく、4〜6であるのがより好ましい。ここで、電極3と中間層4との密着性を向上させるという観点から、配位子は、電極3に対して密に配位しているのが好ましいが、共役系の構造同士の相互作用が大きくなるのを防止すという観点から、ある程度、疎に配位しているのがより好ましい。そこで、かかる範囲の炭素数を有する置換基Zを選択することにより、隣接する共役系の構造同士が接近し過ぎるのを好適に防止しつつ、金属原子に配位原子を確実に配位させることができる。その結果、配位原子を介して共役系の構造に注入されたキャリアを中間層4の面方向に移動させることなく、確実に厚さ方向すなわち有機半導体層5側に移動させることができる。
【0060】
以上のように、配位子としては、各種ものが挙げられるが、後述する有機半導体材料中には、一般に、ベンゼン環、ピリジン環およびチオフェン環等の芳香族環のように共役系の結合が多い構造が含まれていることから、配位子が有する共役系の構造としても、このような構造を有しているのが好ましい。これにより、共役系の構造と有機半導体材料との一部が等しい構造を有するものとなり、これらのもの同士間の親和性をより向上させることができる。その結果、中間層4と有機半導体層5との間におけるキャリアの受け渡しがより円滑に行われることとなる。さらに、共役系の結合が多い構造は、特に優れたキャリア輸送能を有することから、中間層4中におけるキャリア輸送能の向上を図れるという利点も得られる。
【0061】
これらのことを考慮すると、配位子としては、多座配位子であり、かつ、共役系の構造に共役系の結合を多く含んでいるもの、すなわち、前記一般式(1)〜(10)で表されるものを選択するのが好ましい。
また、これらの配位子は、上述した電極3の各種構成材料に含まれる金属原子に配位することができるが、金属原子の特性、すなわち、原子半径やイオン化ポテンシャルの大きさ等に応じて、より好適なものが選択される。
【0062】
具体的には、電極3の構成材料としてITO、IO、IZO等が選択され金属原子としてインジウムが含まれる場合、配位子としては、共役系の構造中に芳香族環を2つ以上有し、かつ、少なくとも1つのピリジン骨格を有するもの、すなわち、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物が選択される。
また、電極3の構成材料としてCuを含むものを選択した場合、配位子としては、前記一般式(1)または(3)で表される化合物、電極3の構成材料としてAuを含むものを選択した場合、配位子としては、前記一般式(1)で表される化合物、電極3の構成材料としてCaまたはLiを含むものを選択した場合、配位子としては、前記一般式(3)で表される化合物がそれぞれ選択される。
【0063】
中間層4の厚さ(平均)は、選択する配位子の種類によっても若干異なるが、10nm以下であるのが好ましく、0.5〜2nm程度であるのがより好ましい。中間層4の厚さをかかる範囲とすることにより、その厚さ方向に対して1つの配位子が存在している層、すなわち、配位子の単分子膜を形成することができる。その結果、配位子を金属元素に配位させることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0064】
さて、有機半導体層5は、共役系の構造を有する有機半導体材料を主材料として構成されるものであり、有機半導体層5の機能に応じて、有機半導体材料が適宜選択される。
このような有機半導体材料としては、例えば、正孔を輸送する機能を有するもの(正孔輸送材料)、電子を輸送する機能を有するもの(電子輸送材料)および発光機能を有するもの(発光材料)等が挙げられる。
【0065】
具体的には、正孔輸送材料としては、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸のようなチオフェン/スチレンスルホン酸系化合物、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタンm−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、ポリチオフェン、ポリ(チオフェンビニレン)のようなチオフェン系化合物、ポリ(2,2’−チエニルピロール)、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。これらのものは、いずれも、高い正孔輸送能力を有している。
【0066】
電子輸送材料としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物(スターバースト系化合物)、ナフタレンのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセンのようなクリセン系化合物、ペリレンのようなペリレン系化合物、アントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、BBOTのようなチオフェン系化合物、ブタジエンのようなブタジエン系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、キノリンのようなキノリン系化合物、ビスチリルのようなビスチリル系化合物、ピラジン、ジスチリルピラジンのようなピラジン系化合物、キノキサリンのようなキノキサリン系化合物、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−パラ−ベンゾキノンのようなベンゾキノン系化合物、ナフトキノンのようなナフトキノン系化合物、アントラキノンのようなアントラキノン系化合物、オキサジアゾール、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、BMD、BND、BDD、BAPDのようなオキサジアゾール系化合物、トリアゾール、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、アントロンのようなアントロン系化合物、フルオレノン、1,3,8−トリニトロ−フルオレノン(TNF)のようなフルオレノン系化合物、ジフェノキノン、MBDQのようなジフェノキノン系化合物、スチルベンキノン、MBSQのようなスチルベンキノン系化合物、アントラキノジメタン系化合物、チオピランジオキシド系化合物、フルオレニリデンメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体のような各種金属錯体等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0067】
また、発光材料には、以下に示すような、各種低分子の発光材料、各種高分子の発光材料があり、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
なお、低分子の発光材料を用いることにより、緻密な発光層(有機半導体層5)が得られるため、発光層の発光効率が向上する。また、高分子の発光材料を用いることにより、比較的容易に溶剤へ溶解させることができるため、インクジェット印刷法等の各種塗布法による発光層の形成を容易に行うことができる。さらに、低分子の発光材料と高分子の発光材料とを組み合わせて用いることにより、低分子の発光材料および高分子の発光材料を用いる効果を併有すること、すなわち、緻密かつ発光効率に優れる発光層を、インクジェット印刷法等の各種塗布法により、容易に形成することができるという効果が得られる。
【0068】
低分子の発光材料としては、例えば、ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、(2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン)プラチナム(II)のような各種金属錯体等が挙げられる。
【0069】
高分子の発光材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物、ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物等が挙げられる。
【0070】
また、有機半導体材料としては、重合性基を有する低分子を、重合性基において重合させて高分子化させることにより得られたものであるのが好ましい。これにより、低分子が高分子化される際に、高分子が中間層4の共役系の構造に絡まり付くように形成されることとなる。これにより、中間層4と有機半導体層5との密着性をより向上させることができる。
【0071】
このような低分子としては、前述したような有機半導体材料のうち低分子のものに重合性基を導入したものを用いることができる。
具体的には、例えば、下記一般式(A1)または下記一般式(A2)で表される化合物が挙げられる。かかる化合物を用いることにより、低分子を高分子化させることにより得られる効果を確実に発揮させることができる。
なお、これらの化合物において、基Yの構造を適宜選択することにより、得られる高分子に対して、正孔輸送能、電子輸送能または発光能を選択的に付与することができることから、有機半導体材料として好適に用いることができる。
【0072】
【化8】

[式中、2つのRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。2つのXは、下記一般式(B1)〜下記一般式(B3)で表される置換基のうちのいずれかを示す。ただし、2つのXは、同種の置換基であるが、その炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。Yは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
【0073】
【化9】

[式中、8つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。X、X、XおよびXは、下記一般式(B1)〜下記一般式(B3)で表される置換基のうちのいずれかを示す。ただし、これらX、X、XおよびXは、同種の置換基であるが、その炭素数は、同一であっても、異なっていてもよい。Yは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
【0074】
【化10】

[これらの式中、nは、2〜8の整数を表す。nは、3〜8の整数を表し、mは、0〜3の整数を表す。Zは、水素原子またはメチル基を表し、Zは、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。]
【0075】
以下、これらの高分子の特徴について説明する。
これらの高分子(ポリマー)は、化合物(A1)または化合物(A2)(ジフェニルアミン誘導体)同士を、それぞれが有する重合性基において重合反応させて得られたもの、すなわち、重合性基以外の主骨格(ジフェニルアミン骨格)同士を、重合性基を反応させて得られた化学構造(以下、この化学構造を「連結構造」という。)により連結してなるものである。
【0076】
まず、化合物(A1)により得られた高分子について説明する。
ここで、化合物(A1)同士を、置換基Xにおいて重合反応させて得られた高分子では、連結構造を介して前記主骨格が繰り返して結合する構成、すなわち、主骨格が所定の距離を離間して繰り返し存在している構成となっていることから、隣接する主骨格同士の相互作用が低減する。
【0077】
また、前記主骨格は、共役系の構造を有し、その特有な電子雲の広がりにより、高分子における円滑なキャリア輸送に寄与する。
このようなことから、この高分子は、優れたキャリア輸送能を発揮し、かかる高分子を主材料として得られた有機半導体層5は、キャリア輸送能に優れたものとなる。
なお、このような高分子において、主骨格同士の離間距離が短くなり過ぎると、隣接する主骨格同士の相互作用が大きくなる傾向を示し、主骨格の離間距離が長くなり過ぎると、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しが困難となり、高分子のキャリア輸送能が低減する傾向を示す。
【0078】
かかる観点から、置換基Xの構造を設定するのが好ましく、置換基Xとして上記一般式(B1)または(B2)のものを選択した場合には、nが2〜8、特に3〜6の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましく、上記一般式(B3)のものを選択した場合には、nが3〜8、および、mが0〜3の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましく、特にnが4〜6、および、mが1または2の直鎖状の炭素−炭素結合のものが好ましい。
【0079】
かかる関係を満足するより、主骨格同士の距離を適度に保つことが可能となり、高分子中において、隣接する主骨格同士の相互作用をより確実に低減することができるとともに、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しがより確実に行われることから、高分子のキャリア輸送能が優れたものとなる。
ここで、置換基Xとして(B1)および(B2)のものを選択した場合には、その末端に、それぞれ、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が存在する。(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基は、高い反応性および結合安定性を有することから、比較的容易に置換基X同士を重合反応させて、鎖長の長い高分子を形成することができる。
【0080】
さらに、(メタ)アクリロイル基を用いて重合反応させることにより生じた連結構造中には、酸素原子と炭素原子との内に二重結合(π結合)が2つ存在することとなる。これにより、主骨格同士の距離が比較的長くなった場合においても、この2つのπ結合(共役系の結合)を介して、主骨格同士間におけるキャリアの受け渡しを確実に行うことができる。
【0081】
また、2つのπ結合と主骨格との間には直鎖状の炭素−炭素結合(アルキレン基)が存在することから、主骨格同士の相互作用の増強を防止することができる。
また、エポキシ基を用いて重合反応させることにより生じた連結構造中には、エーテル結合と、直鎖状の炭素−炭素結合(アルキレン基)とが存在することとなる。このような構造を有する連結構造中においては、電子の移動が抑制されることとなる。これにより、主骨格同士の距離が比較的短くなった場合においても、主骨格同士の相互作用が増強するのを防止または抑制することができる。
【0082】
なお、例えば、ベンゼン環のように、π結合の中でも共役系の結合が多い構造が存在すると、この構造を介して隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼすようになり、主骨格同士を離間することによる効果が相殺されてしまう。
ところで、置換基Xとして(B3)のものを選択した場合には、置換基Xが、上記一般式(B3)に示すように、その末端に官能基として、スチレン基に置換基Zを導入したスチレン誘導体基を有していることから、連結構造中には、ベンゼン環が存在することとなる。
【0083】
そのため、ベンゼン環と共役系の化学構造を有する主骨格とが接近しすぎる場合、例えば、ベンゼン環と主骨格とがエーテル結合により結合している場合や、nとmとの合計数が2の場合等では、このベンゼン環を介して隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼすようになる。
ところが、この高分子では、主骨格とこのベンゼン環との結合がnとmとの合計数が3以上、すなわち3つ以上のメチレン基とエーテル結合とを介して形成される。これにより、主骨格とベンゼン環との離間距離が好適な状態に保たれることとなる。その結果、隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼしあうのを好適に抑制または防止にすることができる。
【0084】
また、置換基Zは、水素原子、メチル基またはエチル基であるが、置換基Zは、nとmとの合計数、すなわちメチレン基の合計数に応じて選択するようにすればよい。
例えば、前記合計数が小さい場合には、置換基Zとしては、メチル基もしくはエチル基を選択するようにすればよい。ここで、メチル基とエチル基が電子供与性の置換基であることから、置換基Zとして、メチル基およびエチル基を選択することにより、電子を主骨格側に偏らせることができる。その結果、ベンゼン環を介して隣接する主骨格同士が相互作用を及ぼすようになるのを好適に防止することができる。
【0085】
また、2つの置換基Xは、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。これにより、隣接する主骨格同士の離間距離をほぼ一定とすることができる。その結果、この高分子中において電子密度に偏りが生じるのを好適に防止することができる。これにより、高分子のキャリア輸送能を向上させることができる。
また、置換基Xは、ベンゼン環の2位から6位のいかなる位置に結合してもよいが、特に、3位、4位または5位のうちのいずれかに結合しているのが好ましい。これにより、隣接する主骨格同士の結合を置換基Xを介して行うことの効果をより顕著に発揮させることができる。すなわち、隣接する主骨格同士をより確実に離間させることができる。
【0086】
次に、置換基Rは、炭素数2〜8の直鎖アルキル基であるが、特に、炭素数3〜6の直鎖アルキル基であるのが好ましい。その結果、この置換基Rによる立体障害により、隣接する高分子同士が接近しすぎるのを阻止して、これらの距離を適度に保つことができる。その結果、形成される層において、異なる高分子が有する主骨格同士の間での相互作用を確実に低減することができ、層のキャリア輸送能を優れたものにすることができる。
【0087】
また、2つの置換基Rは、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。これにより、形成される層において、隣接する高分子同士の距離をほぼ一定の間隔に保つことができる。その結果、層中の高分子の密度が一定なものとなる。
また、置換基Rは、ベンゼン環の2位から6位のいかなる位置に結合してもよいが、特に、4位に結合しているのが好ましい。これにより、置換基Rを導入することの効果をより顕著に発揮させることができる。すなわち、隣接する高分子同士が接近しすぎるのをより確実に阻止することができる。
【0088】
さらに、置換基Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、置換基Rは、置換基Rの炭素数に応じて選択するようにすればよい。すなわち、置換基Rの炭素数が大きい場合には、置換基Rとしては、水素原子を選択し、置換基Rの炭素数が小さい場合には、置換基Rとしては、メチル基もしくはエチル基を選択するようにすればよい。
【0089】
ここで、この化合物(A1)において、基(結合基)Yの化学構造を適宜設定することにより、高分子のキャリア輸送能の特性を変化させることができる。
これは、キャリア輸送に寄与する主骨格における電子雲の広がり(電子の分布状態)が変化することに伴って、高分子において、例えば、その価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等が変化することに起因すると考えられる。
【0090】
化合物(A1)では、基Yに置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または、置換もしくは無置換の複素環が少なくとも1つ含まれており、これらの芳香族炭化水素環および/または複素環の種類を適宜選択することにより、高分子におけるキャリア輸送能の特性を比較的容易に調整することができる。
例えば、基(結合基)Yとして、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環により構成されるものを選択することにより、得られる高分子を、正孔輸送能を発揮するものとすることができ、これらの高分子を正孔輸送材料として用いることができる。
具体的には、無置換の芳香族炭化水素環により構成される構造としては、例えば、下記化学式(C1)〜(C17)で表されるものが挙げられる。
【0091】
【化11】

【0092】
また、基Yの総炭素数は、6〜30であるのが好ましく、10〜25であるのがより好ましく、10〜20であるのがさらに好ましい。
さらに、基Yにおいて、芳香族炭化水素環の数は、1〜5であるのが好ましく、2〜5であるのがより好ましく、2または3であるのがさらに好ましい。
これらのことを考慮すると、化合物(A1)において、基Yとしては、前記化学式(C1)で表されるビフェニレン基またはその誘導体が特に好ましい構造である。
かかる基を選択することにより、高分子の正孔輸送能が優れたものとなり、形成される有機半導体層5は、正孔輸送能に優れたものとなる。
【0093】
次に、基(結合基)Yとして、置換もしくは無置換の複素環により構成されるものを選択することにより、得られる高分子におけるキャリア輸送能の特性をより容易に調整することができる。
このような複素環としては、特に、窒素、酸素、硫黄、セレンおよびテルルのうちの少なくとも1種のヘテロ原子を含有するものを選択するのが好ましい。かかる種類のヘテロ原子を含有する複素環を選択することにより、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等を変化させることが特に容易となる。
【0094】
また、複素環は、芳香族系および非芳香族系のいずれであってもよいが、芳香族系のものであるのが好ましい。これにより、主骨格の共役系の化学構造における電子密度の偏り、すなわち、π電子の局在化を好適に防止して、高分子のキャリア輸送能の低下を防止することができる。
基Yは、同一または異なる複素環を1〜5つ含むものが好ましく、1〜3つ含むものがより好ましい。基Yにこのような数の複素環が存在すれば、高分子の価電子帯および伝導帯のエネルギー準位やバンドギャップ(禁止帯幅)の大きさ等を十分に変化させることができる。
【0095】
また、基Yの総炭素数は、2〜75であるのが好ましく、2〜50であるのがより好ましい。基Yの総炭素数が多すぎると、置換基Xの種類によっては、化合物(A1)の溶媒に対する溶解度が低下する傾向を示すおそれがある。
また、基Yの総炭素数をかかる範囲内とすることにより、主骨格における平面性が保たれることから、高分子におけるキャリア輸送能が低下するのを確実に防止することができる。
これらのことを考慮すると、無置換の複素環により構成される構造としては、例えば、下記化学式(D1)〜(D17)で表されるものが特に好ましい構造である。
【0096】
【化12】

【0097】
【化13】

[これらの式中、各Qは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよい。各Qは、それぞれ独立して、SまたはOを表し、同一であっても、異なっていてもよい。Qは、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CH、CまたはPhを表す。)を表す。]
【0098】
さらに、基(結合基)Yとして、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環および置換もしくは無置換の複素環により構成されるものを選択することにより、前述したようなそれぞれの特性を相乗的に付与することができる。
このような基Yは、化合物(A1)中の各Nにそれぞれ、直接結合する芳香族炭化水素環と、これらの芳香族炭化水素環の間に存在する少なくとも1つの複素環とを含むものであるのが、特に好ましい。これにより、高分子中における電子密度に偏りが生じるのを確実に防止することができる。その結果、高分子のキャリア輸送能が均一なものとなる。
【0099】
このことを考慮すると、無置換の芳香族炭化水素環および無置換の複素環により構成される構造としては、例えば、下記化学式(E1)〜(E3)で表されるものが特に好ましい構造である。
【0100】
【化14】

[これらの式中、各Qは、それぞれ独立して、N−T、S、O、SeまたはTe(ただし、Tは、H、CHまたはPhを表す。)を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0101】
このように、基Yの化学構造を適宜設定することにより、例えば、基Yとして前記化学式(D2)、(D16)、(E1)および(E3)を選択して得られる高分子は、前記化学式(D17)を選択して得られる高分子に対して優れた正孔輸送能を発揮し、前記化学式(D8)および(E2)を選択して得られる高分子に対して特に優れた正孔輸送能を発揮するものとなる。
【0102】
これとは逆に、基Yとして前記化学式(D8)、(D17)および(E2)を選択して得られる高分子は、前記化学式(D2)および(D16)を選択して得られる高分子に対して優れた電子輸送能を発揮し、前記化学式(E1)および(E3)を選択して得られる高分子に対して特に優れた電子輸送能を発揮するものとなる。
また、発光材料として基Yとして前記化学式(D12)および(D14)等を選択して得られる高分子を用いることもできる。
また、基Yに含まれる無置換の芳香族炭化水素環や無置換の複素環には、主骨格における平面性が大きく阻害されないような置換基が導入されていてもよい。このような置換基としては、例えば、メチル基またはエチル基のような比較的炭素数の少ないアルキル基やハロゲン基等が挙げられる。
【0103】
次に、化合物(A2)により得られた高分子について説明する。
以下、化合物(A1)により得られた高分子との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
化合物(A1)では、置換基Xと置換基Rとをそれぞれ2つ有し、置換基Rを4つ有するのに対して、化合物(A2)では、置換基X2〜5を4つ有し、置換基Rを8つ有する点が異なりそれ以外は、化合物(A2)は、化合物(A1)と同様である。
【0104】
置換基X2〜5としては、前述した置換基Xと同様の構造を有するものが選択され、化合物(A2)では、この置換基X2〜5を4つ有することから、2次元的なネットワークが形成されやすくなる。
置換基Xと置換基Xとは、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。これにより、この置換基X2〜5(置換基Xまたは置換基X)の重合反応により連結される主骨格同士の離間距離のばらつきを小さくすることができる。すなわち、高分子中における主骨格同士の離間距離のばらつきを小さくすることができる。その結果、この高分子中の電子密度に偏りが生じるのを好適に防止できる。これにより、高分子のキャリア輸送能を向上させることができる。
【0105】
かかる観点から、置換基Xと置換基Xとも、ほぼ同一の炭素数のものであるのが好ましく、同一の炭素数のものであるのがより好ましい。これにより、前記効果がより向上し、高分子のキャリア輸送能をより向上させることができる。
さらには、置換基X、置換基X、置換基Xおよび置換基Xを、好ましくは、ほぼ同一の炭素数、より好ましくは、同一の炭素数とすることにより、前記効果が特に顕著に発揮される。また、主骨格から突出している置換基X2〜5の長さがほぼ同一(特に同一)となることから、置換基X2〜5による立体障害が生じる可能性を低減させることができる。これにより、置換基X2〜5同士の重合反応を確実に行うことができる。すなわち、高分子の形成を確実に行うことができる。その結果、高分子のキャリア輸送能をさらに向上させることができる。
【0106】
置換基Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、この置換基Rは、置換基X2〜5の炭素数に応じて選択するようにすればよい。例えば、置換基X2〜5の炭素数が大きい場合には、置換基Rとしては、水素原子を選択し、置換基X2〜5の炭素数が小さい場合には、置換基Rとしては、メチル基もしくはエチル基を選択するようにすればよい。
【0107】
ところで、置換基Xまたは置換基X2〜5(以下、これらを総称して「置換基X」という。)として、前記一般式(B1)〜前記一般式(B3)で表されるものに代えて、下記一般式(B4)で表されるものを選択することもできる。この場合、置換基Xにおいて重合反応させて高分子を得るには、置換基Xと置換基Xとの間に、化学式COClで表されるホスゲンおよび/またはその誘導体を介在させた状態で、重縮合反応させて下記一般式(B5)で表される化学構造を形成することにより行うことができる。
【0108】
【化15】

[これらの式中、各nは、それぞれ独立して、2〜8の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0109】
このような高分子は、前記一般式(B5)で表される化学構造、すなわち2つの直鎖状の炭素−炭素結合(アルキレン基)がカーボネート結合により連結する化学構造を介して前記主骨格が繰り返して存在する構成となっている。この化学構造の存在により、置換基Xとして、前記一般式(B1)〜前記一般式(B3)で表されるものを用いた場合と同様に、主骨格同士を所定の距離離間して存在させることができ、隣接する主骨格同士の相互作用が低減することとなる。
また、ホスゲンおよび/またはその誘導体としては、置換基Xの末端の水酸基と重縮合反応することにより、前記一般式(B5)で表される化学構造が形成されるものであれば、特に限定されないが、特に、ホスゲンおよび/または下記一般式(B6)で表される化合物を主成分とするものを用いるのが好ましい。
【0110】
【化16】

[式中、2つのZは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0111】
ここで、置換基X(水酸化アルキル基)とホスゲンおよび/またはその誘導体とが重縮合反応すると、副生成物が生成することとなる。このような重縮合反応において、ホスゲンおよび/または前記化合物(B6)を用いることにより、形成された有機半導体層5中から前記副生成物を比較的容易に除去することができる。これにより、有機半導体層5中において前記副生成物によりキャリア(正孔や電子)が捕捉されるのを確実に阻止することができる。その結果、有機半導体層5のキャリア輸送能が低減することを好適に防止することができる。
【0112】
さて、以上のような化合物(A1)または化合物(A2)から得られた高分子には、必要に応じて架橋剤が添加されていてもよい。
すなわち、化合物(A1)または化合物(A2)が備える置換基X同士の重合反応を架橋剤を介して行うようにしてもよい。
このような架橋剤としては、例えば、アクリル系架橋剤やジビニルベンゼンのようなビニル化合物およびエポキシ架橋剤等が挙げられる。
【0113】
ここで、置換基Xとして、前記一般式(B1)〜前記一般式(B3)で表されるものを選択する場合、置換基X同士の重合反応を架橋剤を介在させた状態で行うことは、特に有効である。これにより、置換基Xとして、その炭素数が比較的小さいもの、換言すれば、その鎖長が比較的短いものを選択した場合においても、主骨格同士の離間距離が小さくなりすぎるのを好適に防止することができる。その結果、主骨格同士の離間距離が適切な大きさに保たれて、主骨格同士の相互作用が増強するのを確実に防止することができる。
【0114】
置換基Xとして、前記一般式(B1)で表されるものを選択した場合、架橋剤としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート架橋剤、エポキシ(メタ)アクリレート架橋剤およびポリウレタン(メタ)アクリレート架橋剤等のアクリル系架橋剤のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。
なお、ポリエステル(メタ)アクリレート架橋剤としては、例えば、下記一般式(F1)〜(F3)で表される化合物が挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレート架橋剤としては、例えば、下記一般式(F4)〜(F8)で表される化合物が挙げられる。
ポリウレタン(メタ)アクリレート架橋剤としては、例えば、下記一般式(F9)で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【化17】

【0116】
【化18】

[これらの式中、nは、4500以下の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。nは、0〜1500の整数を表す。各nは、それぞれ独立して、1〜10の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。nは、1〜40の整数を表す。nは、1〜100の整数を表す。各Rは、それぞれ独立して、炭素数が1〜10のアルキレン基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Rは、炭素数が1〜100のアルキレン基を表す。各Aは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。各Aは、それぞれ独立して、ジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を除いた基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0117】
また、前記一般式(B2)で表されるものを選択した場合、架橋剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系エポキシ架橋剤、ビスフェノール型エポキシ架橋剤、グリシジルエステル系エポキシ架橋剤、脂環式系エポキシ架橋剤、ウレタン変性エポキシ架橋剤、ケイ素含有エポキシ架橋剤、多官能性フェノール系エポキシ架橋剤およびグリシジルアミン系エポキシ架橋剤等のエポキシ架橋剤のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0118】
なお、(メタ)アクリル酸エステル系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G1)で表される化合物が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G2)〜(G6)で表される化合物が挙げられる。
グリシジルエステル系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G7)〜(G8)で表される化合物が挙げられる。
脂環式系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G9)〜(G12)で表される化合物が挙げられる。
【0119】
ウレタン変性エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G13)で表される化合物が挙げられる。
ケイ素含有エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G14)で表される化合物が挙げられる。
多官能性フェノール系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G15)〜(G22)で表される化合物が挙げられる。
グリシジルアミン系エポキシ架橋剤としては、例えば、下記一般式(G23)〜(G25)で表される化合物が挙げられる。
【0120】
【化19】

【0121】
【化20】

【0122】
【化21】

【0123】
【化22】

[これらの式中、Aは、水素原子またはメチル基を表す。各nは、それぞれ独立して、0〜10の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。各nは、それぞれ独立して、1〜20の整数を表し、同一であっても、異なっていてもよい。n10は、1〜30の整数を表す。n11は、0〜8の整数を表す。Aは、ジイソシアネート化合物から2つのイソシアネート基を取り除いた基を表し、各Aは、それぞれ独立して、ジオール化合物から2つの水酸基を取り除いた基を表し、同一であっても異なっていてもよい。]
【0124】
さらに、前記一般式(B3)で表されるものを選択した場合、架橋剤としては、例えば、下記一般式(H1)で表されるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートやジビニルベンゼンのようなビニル化合物のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0125】
【化23】

[式中、n12は、5〜15の整数を表し、各Aは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【0126】
なお、本実施形態では、電子デバイス用基板1を電極3上に中間層4と有機半導体層5とが順次積層する積層体について説明したが、このようなものに限定されず、電極を、中間層と有機半導体層とで順次覆うような構成のものであってもよい。
このような電子デバイス用基板1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0127】
[1A]電極形成工程
まず、基板2を用意し、この基板2上に電極3を形成する。
電極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0128】
[2A]中間層形成工程
次に、電極3上に中間層4を形成する。
中間層4は、例えば、塗布法、浸漬法、真空蒸着法、スパッタリング法、電解メッキ法、浸漬メッキ法、電着法および無電解法メッキ等を用いて形成することができる。
これらの中でも、中間層4の形成には、塗布法を用いるのが好ましい。塗布法によれば、電極3に対して密着性の優れた中間層4を比較的容易かつ確実に形成することができる。
以下では、塗布法を用いて中間層4を形成する方法を代表に説明する。
【0129】
[2A−1] まず、前記工程[1A]で形成された電極3の表面すなわちこの表面に存在する金属原子をフッ素、塩素、臭素およびヨウ素等のハロゲンによりハロゲン化させる。
このハロゲン化は、各種方法を用いて行うことができるが、例えば、ハロゲンガス雰囲気下で、電極3を加熱することにより行うことができる。
【0130】
雰囲気中のハロゲンガスの濃度は、5〜70vol%程度であるのが好ましく、10〜30vol%程度であるのがより好ましい。
加熱温度は、80〜200℃程度であるのが好ましく、100〜150℃程度であるのがより好ましい。
加熱時間は、10〜120分程度であるのが好ましく、15〜30分程度であるのがより好ましい。
各種条件を上述したような範囲に設定することにより、電極3の表面を確実にハロゲン化させることができる。
【0131】
[2A−2] 次に、配位子を含有する液状の中間層形成用材料を電極3上に供給する。
電極3に中間層形成用材料を供給する方法としては、各種の方法を用いることができるが、例えば、インクジェット法、スピンコート法、液体ミスト化学体積法(LSMCD法)、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法のような塗布法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0132】
また、中間層形成用材料には、配位子を溶媒または分散媒に混合して調製した溶液または分散液を用いることができる。
溶媒または分散媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
中間層形成用材料における配位子の濃度は、配位子の種類により若干異なるが、例えば、0.01〜3.0wt%程度であるのが好ましく、0.5〜1.0wt%程度であるのがより好ましい。
【0133】
[2A−3] 次に、電極3上に中間層形成用材料が付着した状態で、電極3を加熱する。
これにより、ハロゲン化された金属原子からハロゲンが離脱して、中間層形成用材料に含まれる配位子を金属原子に配位させることができる。
加熱温度は、80〜250℃程度であるのが好ましく、100〜170℃程度であるのがより好ましい。
【0134】
加熱時間は、30〜180分程度であるのが好ましく、60〜90分程度であるのがより好ましい。
加熱の際の雰囲気は、特に限定されないが、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのような不活性ガス雰囲気であるのが好ましい。
各種条件を上述したような範囲に設定することにより、金属原子に配位子を確実に配位させることができる。
【0135】
[2A−4] 次に、中間層形成用材料に含まれる溶媒または分散媒を除去する。
これにより、金属原子に配位した配位子で構成される中間層4、すなわち、電極3に対して優れた密着性を発揮する中間層4を形成することができる。
溶媒または分散媒を除去する方法としては、例えば、加熱による方法、真空(減圧)乾燥、不活性ガスを吹き付ける方法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に、加熱による方法と、真空乾燥とを組み合わせた方法を用いるのが好ましい。
【0136】
これにより、配位子を金属原子から離脱することを好適に防止しつつ、中間層形成用材料から溶媒または分散媒を除去することができる。
加熱温度は、50〜200℃程度であるのが好ましく、80〜120℃程度であるのがより好ましい。
加熱時間は、10〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
雰囲気の圧力は、100Pa以下であるのが好ましく、10Pa以下であるのがより好ましい。
各種条件を上述したような範囲に設定することにより、中間層形成用材料から溶媒または分散媒を除去することができる。
【0137】
[2A−5] 次に、超純水、ジエチルエーテル、ヘプタンのような溶媒を用いて中間層4を洗浄する。これにより、中間層4中に残存するハロゲンを0.2ppm以下の検出塩素濃度まで除去することができる。
なお、この中間層4の洗浄は、中間層に対して超音波を付与した状態で行うのが好ましい。これにより、ハロゲンの除去をより確実に行うことができる。
【0138】
[3A]有機半導体層形成工程
次に、中間層4上に有機半導体層5を形成する。
[3A−1] まず、有機半導体材料またはその前駆体を含有する液状の有機半導体層形成用材料を中間層4上に塗布(供給)して、液状被膜(塗膜)を形成する。塗布法によれば、有機半導体層形成用材料を比較的容易に中間層4上に供給して、液状被膜を形成することができる。
【0139】
この塗布には、前記工程[2A−2]で説明したのと同様の方法を用いることができる。
また、有機半導体層形成用材料を調整する際に用いる溶媒または分散媒としても、前記工程[2A−2]で説明したのと同様のものを用いることができる。
また、有機半導体材料の前駆体として重合性基を有する低分子を用いる場合には、有機半導体層形成用材料に、重合開始剤を添加するのが好ましい。これにより、後工程[3A−3]において、加熱処理や光照射処理のような処理を施すことにより、低分子を高分子化させる際に、重合性基同士による重合反応を促進させることができる。
【0140】
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、光カチオン重合開始剤や光ラジカル重合開始剤のような光重合開始剤、熱重合開始剤および嫌気重合開始剤等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩系、芳香族ヨードニウム塩系、芳香族ジアゾニウム塩系、ピリジウム塩系および芳香族ホスホニウム塩系等のオニウム塩系の光カチオン重合開始剤や、鉄アレーン錯体およびスルホン酸エステル等の非イオン系の光カチオン重合開始剤を用いることができる。
【0141】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、ベンジケタール系、ミヒラーズケトン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ケトクマリン系、キサンテン系およびチオキサントン系等の光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
さらに、重合開始剤として光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始剤に適した増感剤を半導体層形成用材料に添加してもよい。
【0142】
[3A−2] 次に、中間層4上に供給された液状塗膜(有機半導体層形成用材料)から溶媒または分散媒を除去する。
これにより、有機半導体層形成用材料に有機半導体材料が含まれる場合には、中間層4上に有機半導体層5が形成される。
また、有機半導体層形成用材料に有機半導体材料の前駆体が含まれる場合には、中間層4上に有機半導体材料の前駆体により構成される層が形成される。
この分散媒を除去する方法としては、前記工程[2A−4]で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0143】
[3A−3] 次に、有機半導体層形成用材料に有機半導体材料の前駆体が含まれる場合には、前記工程[3A−2]で形成された層に対して所定の処理を施す。
これにより、前駆体として含まれる重合性基を有する低分子において、重合性基同士を重合させて、この低分子(前駆体)を高分子化させることができる。その結果、前駆体を有機半導体材料に変化させて、有機半導体層5を形成することができる。
【0144】
この所定の処理としては、各種の方法が用いられ、例えば、光照射する方法、加熱処理法、および嫌気処理法等が挙げられる。
また、有機半導体材料の前駆体に光照射する光としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線およびX線等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、紫外線を用いるのが特に好ましい。これにより、重合性基同士の重合反応を容易かつ確実に進行させることができる。
【0145】
<電子デバイス>
次に、本発明の電子デバイス用基板を備える本発明の電子デバイスを有機EL素子に適用した場合を一例として説明する。
すなわち、電子デバイス用基板が備える電極、中間層および有機半導体層を、それぞれ、有機EL素子が備える陽極、正孔注入層および正孔輸送層に適用した場合を一例として説明する。
【0146】
図2は、本発明の電子デバイスを適用した有機EL素子の一例を示した縦断面図である。
図2に示す有機EL素子10は、透明な基板2’と、基板2’上に設けられた陽極3’と、陽極3’上に設けられた正孔注入層4’と、正孔注入層4’上に設けられた正孔輸送層5’と、正孔輸送層5’上に設けられた発光層6と、発光層6上に設けられた電子輸送層7と、電子輸送層7上に設けられた陰極8と、各前記層3’、4’、5’、6、7、8を覆うように設けられた保護層9とを備えている。
【0147】
基板2’は、有機EL素子10の支持体となるものであり、この基板2’上に各前記層が形成されている。
基板2’の構成材料としては、前述した基板2の構成材料のうち、透光性を有し、光学特性が良好な材料が選択される。
具体的には、例えば、各種樹脂材料や、各種ガラス材料等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0148】
基板2’の厚さ(平均)は、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
陽極3’は、正孔注入層4’に正孔を注入する電極であり、本実施形態では、この陽極3’に前述した電極3が適用される。
また、この陽極3’は、発光層6からの発光を視認し得るように、実質的に透明(無色透明、有色透明、半透明)とされている。
【0149】
かかる観点から、陽極3’の構成材料(陽極材料)としては、仕事関数が大きく、導電性に優れ、また、透光性を有する材料を用いるのが好ましい。
このような陽極材料としては、前述した電極3の構成材料のうち、例えば、ITO、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0150】
陽極3’の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。陽極3’の厚さが薄すぎると、陽極3’としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極3’が厚過ぎると、陽極材料の種類等によっては、光の透過率が著しく低下し、実用に適さなくなるおそれがある。
【0151】
一方、陰極8は、電子輸送層7に電子を注入する電極である。
陰極8の構成材料(陰極材料)としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
このような陰極材料としては、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0152】
特に、陰極材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極材料として用いることにより、陰極8の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
陰極8の厚さ(平均)は、1nm〜1μm程度であるのが好ましく、100〜400nm程度であるのがより好ましい。陰極8の厚さが薄すぎると、陰極8としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陰極8が厚過ぎると、有機EL素子10の発光効率が低下するおそれがある。
【0153】
陽極3’と陰極8との間には、正孔注入層4’と、正孔輸送層5’と、発光層6と、電子輸送層7とがこの順で陽極3’側から設けられている。
正孔注入層4’は、陽極3’から注入された正孔を正孔輸送層5’に効率よく注入するために設けられたものである。
この正孔注入層4’に前述した中間層4が適用される。
【0154】
また、正孔輸送層5’は、陽極3’から注入された正孔を発光層6まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層5’に前述した有機半導体層5が適用される。この場合、有機半導体材料としては、前述したもののうち、正孔輸送能を有する正孔輸送材料が用いられる。
正孔輸送層5’の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。正孔輸送層5’の厚さが薄すぎると、ピンホールが生じるおそれがあり、一方、正孔輸送層5’が厚過ぎると、正孔輸送層5’の透過率が悪くなる原因となり、有機EL素子10の発光色の色度(色相)が変化してしまうおそれがある。
陽極3’と、正孔注入層4’と、正孔輸送層5’との構成を上述したようなもの、すなわち、本発明の電子デバイス用基板を適用することにより、これらの層同士間における正孔輸送能を優れたものにすることができる。その結果、有機EL素子10としての発光効率等の特性を好適に向上させることができる。
【0155】
電子輸送層7は、陰極8から注入された電子を発光層6まで輸送する機能を有するものである。
この電子輸送層7の構成材料としては、電子輸送能を有するものであればいかなるものであってもよく、例えば、有機半導体層5の構成材料で説明した電子輸送材料を用いることができる。
【0156】
電子輸送層7の厚さ(平均)は、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、20〜50nm程度であるのがより好ましい。電子輸送層7の厚さが薄すぎると、ピンホールが生じショートするおそれがあり、一方、電子輸送層7が厚過ぎると、抵抗値が高くなるおそれがある。
ここで、陽極3’と陰極8との間に通電(電圧を印加)すると、正孔注入層4’を介して正孔輸送層5’中を正孔が、また、電子輸送層7中を電子が移動し、発光層6において正孔と電子とが再結合する。そして、発光層6では、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。
【0157】
この発光層6の構成材料としては、電圧印加時に陽極3’側から正孔を、また、陰極5側から電子を注入することができ、正孔と電子が再結合する場を提供できるものであれば、いかなるものであってもよい。
このような発光層6の構成材料には、例えば、有機半導体層5の構成材料で説明した発光材料を用いることができる。
【0158】
発光層6の厚さ(平均)は、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。発光層6の厚さを前記範囲とすることにより、正孔と電子との再結合が効率よくなされ、発光層6の発光効率をより向上させることができる。
なお、本実施形態では、発光層6は、正孔輸送層5’および電子輸送層7と別個に設けられているが、正孔輸送層5’と発光層6とを兼ねた正孔輸送性発光層や、電子輸送層7と発光層6とを兼ねた電子輸送性発光層とすることもできる。この場合、正孔輸送性発光層の電子輸送層7との界面付近が、また、電子輸送性発光層の正孔輸送層5’との界面付近が、それぞれ、発光層6として機能する。
【0159】
また、正孔輸送性発光層を用いた場合には、正孔注入層から正孔輸送性発光層に注入された正孔が電子輸送層によって閉じこめられ、また、電子輸送性発光層を用いた場合には、陰極から電子輸送性発光層に注入された電子が電子輸送性発光層に閉じこめられるため、いずれも、正孔と電子との再結合効率を向上させることができるという利点がある。
保護層9は、有機EL素子10を構成する各層3’、4’、5’、6、7、8を覆うように設けられている。この保護層9は、有機EL素子10を構成する各層3’、4’、5’、6、7、8を気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。保護層9を設けることにより、有機EL素子10の信頼性の向上や、変質・劣化の防止等の効果が得られる。
【0160】
保護層9の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、保護層9の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、保護層9と各層3’、4’、5’、6、7、8との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
【0161】
なお、本実施形態では、電子デバイス用基板が備える電極、中間層および有機半導体層を、それぞれ、有機EL素子が備える陽極、正孔注入層および正孔輸送層に適用した場合について説明したが、このような場合に限定されず、電極および有機半導体層を、それぞれ、有機EL素子が備える陰極および電子輸送層に適用し、これらのもの同士の間に中間層(電子注入層)を形成するような構成のものであってもよい。
このような有機EL素子10は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0162】
[1B]陽極形成工程
まず、基板2を用意し、この基板2’上に陽極3’を形成する。
この陽極3’は、前記工程[1A]で説明したのと同様の方法により形成することができる。
[2B]正孔注入層形成工程
次に、陽極3’上に正孔注入層4’を形成する。
この正孔注入層4’は、前記工程[2A]で説明したのと同様の方法により形成することができる。
【0163】
[3B]正孔輸送層形成工程
次に、正孔注入層4’上に正孔輸送層5’を形成する。
この正孔輸送層5’は、前記工程[3A]で説明したのと同様の方法により形成することができる。
[4B]発光層形成工程
次に、正孔輸送層5’上に発光層6を形成する。
発光層6は、例えば、前述したような発光材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる発光層材料(発光層形成用材料)を、正孔輸送層5’上に塗布して形成することができる。
発光材料を溶解または分散させる溶媒または分散媒としては、前記工程[2A−2]で説明したのと同様の溶媒または分散媒を用いることができる。
また、発光層材料を、正孔輸送層5’上に塗布する方法としても、前記工程[2A−2]で説明したのと同様の塗布方法を用いることができる。
【0164】
[5B]電子輸送層形成工程
次に、発光層6上に電子輸送層7を形成する。
電子輸送層7は、発光層6と同様にして形成することができる。すなわち、電子輸送層7は、前述したような電子輸送材料を用いて、発光層6で説明したような方法により形成することができる。
【0165】
[6B]陰極形成工程
次に、電子輸送層7上に陰極5を形成する。
陰極5は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
[7B]保護層形成工程
次に、陽極3’、正孔注入層4’、正孔輸送層5’、発光層6、電子輸送層7および陰極8を覆うように、保護層9を形成する。
【0166】
保護層9は、例えば、前述したような材料で構成される箱状の保護カバーを、各種硬化性樹脂(接着剤)で接合すること等により形成する(設ける)ことができる。
硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、反応性硬化樹脂、嫌気性硬化樹脂のいずれも使用可能である。
以上のような工程を経て、有機EL素子10が製造される。
【0167】
この有機EL素子10は、例えばディスプレイ装置用として用いることができるが、その他にも光源等としても使用可能であり、種々の光学的用途等に用いることが可能である。
また、有機EL素子10をディスプレイ装置用に用いる場合、複数の有機EL素子10がディスプレイ装置に設けられるが、このようなディスプレイ装置は、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0168】
図3は、有機EL素子を複数備えるディスプレイ装置を示す縦断面図である。
図3に示すディスプレイ装置100は、基体20と、この基体20上に設けられた複数の有機EL素子10とで構成されている。
基体20は、基板21と、この基板21上に形成された回路部22とを有している。
回路部22は、基板21上に形成された、例えば酸化シリコン層からなる保護層23と、保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
【0169】
駆動用TFT24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部22上に、各駆動用TFT24に対応して、それぞれ、有機EL素子10が設けられている。また、隣接する有機EL素子10同士は、第1隔壁部31および第2隔壁部32により区画されている。
【0170】
本実施形態では、各有機EL素子10の陽極3’は、画素電極を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線27により電気的に接続されている。また、各有機EL素子10の陰極8は、共通電極とされている。
そして、各有機EL素子10を覆うように封止部材(図示せず)が基体20に接合され、各有機EL素子10が封止されている。
ディスプレイ装置100は、単色表示であってもよく、各有機EL素子10に用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
【0171】
<電子機器>
前述したような、有機EL素子10(ディスプレイ装置100)のような本発明の電子デバイスは、各種の電子機器に組み込むことができる。
図4は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0172】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述の有機EL素子10を備えている。
【0173】
図5は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述の有機EL素子10を備えている。
【0174】
図6は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0175】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述の有機EL素子10を備えている。
【0176】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0177】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0178】
なお、本発明の電子機器は、図4のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図5の携帯電話機、図6のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0179】
以上、本発明の電子デバイス用基板、電子デバイスおよび電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、本発明の電子デバイス用基板を備える本発明の電子デバイスは、上述した有機EL素子に適用することができる他、例えば、光電変換素子や薄膜トランジスタ等に適用することができる。
【実施例】
【0180】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.化合物の合成
まず、以下に示すような化合物(A)を用意した。
<化合物(A)>
6−(p−アミノフェニル)ヘキサノールを無水ジメチルホルムアミド中で、4−メトキシベンジルブロミドと水素化ナトリウムで処理し、ヒドロキシル基をベンジルエーテル基に変換し保護した。
【0181】
次に、その得られた化合物1molを酢酸150mLに溶解し、室温で無水酢酸を滴下後、撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、水洗後、乾燥した。
次に、その得られた物質0.37mol、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼン0.66mol、炭酸カリウム1.1mol、銅粉、ヨウ素を混合し、200℃で加熱した。放冷後、イソアミルアルコール130mL、純水50mL、水酸化カリウム0.73molを加え撹拌後、乾燥した。
【0182】
さらに、そこで得られた化合物130mmol、4,4’−ジヨードビフェニル62mmol、酢酸パラジウム1.3mmol、t−ブチルホスフィン5.2mmol、t−ブトキシナトリム260mmol、キシレン700mLを混合して、120℃で撹拌した。
その後、放冷し、結晶化した。
その得られた化合物を、Pd−C触媒下水素ガスで還元し、ベンジルエーテル基からヒドロキシル基へ変換し脱保護した。
【0183】
次に、その化合物100mmolとエピクロルヒドリン2000mmolを少量のテトラ−n−ブチルアンモニウム硫酸水素塩(相間移動触媒)を添加した50%水酸化ナトリウム水溶液中に加え、室温下で10時間攪拌した後、放冷し結晶化して化合物を得た。
そして、MS法、1H-NMR法、13C-NMR法、およびFT−IR法により、得られた化合物が下記化合物(A)であることを確認した。
【0184】
【化24】

【0185】
2.有機EL素子の製造
以下の各実施例および各比較例において、有機EL素子を5個ずつ製造した。
(実施例1A)
−1A− まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板上に、真空蒸着法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
【0186】
−2A− 次に、ITO電極を20vol%塩素雰囲気下、100℃×30分の条件で加熱して、ITO電極の表面を塩素化した。
−3A− 次に、表面が塩素化されたITO電極に、1,10−フェナントロリン(前記一般式(1)で表される化合物)の1.0wt%N,N−ジメチルホルムアミド溶液をスピンコート法により塗布した。
【0187】
−4A− 次に、暗所において、ITO電極をアルゴン雰囲気下、150℃×60分の条件で加熱して、ITO電極の表面の塩素を離脱させるとともに、この表面に1,10−フェナントロリンを配位させた。
−5A− 次に、100℃、10Paの条件で、N,N−ジメチルホルムアミド溶液を除去して乾燥させることにより、ITO電極上に1,10−フェナントロリンで構成される平均厚さ28nmの正孔注入層を形成した。
【0188】
−6A− 次に、ITO電極上に形成された正孔注入層を、超音波を付与しつつ、ジエチルエーテルで洗浄した後、さらに超純水で洗浄することにより、層中の塩素濃度を0.2ppm以下とした。
−7A− 次に、正孔注入層上に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)の2.0wt%キシレン溶液を、スピンコート法により塗布した後、乾燥して、平均厚さ50nmの正孔輸送層を形成した。
【0189】
−8A− 次に、正孔輸送層上に、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)(重量平均分子量200000)の1.7wt%キシレン溶液を、スピンコート法により塗布した後、乾燥して、平均厚さ50nmの発光層を形成した。
−9A− 次に、発光層上に、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールを真空蒸着し、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
−10A− 次に、電子輸送層上に、真空蒸着法により、平均厚さ300nmのAlLi電極(陰極)を形成した。
−11A− 次に、形成した各層を覆うように、ポリカーボネート製の保護カバーを被せ、紫外線硬化性樹脂により固定、封止して、有機EL素子を完成した。
【0190】
(実施例2A〜21A)
正孔注入層の形成に用いる配位子を表1に示すものとした以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
(実施例22A)
前記工程−7A−における正孔輸送層の形成を以下に示すようにした以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
【0191】
[正孔輸送層形成用材料の調製]
ジフェニルアミン誘導体として化合物(A)を用い、化合物(A)と光カチオン重合開始剤(住友スリーエム社製、「FC−508」)とを重量比で99:1の比率でジクロロエタンに溶解させて、正孔輸送層形成用材料を得た。
[正孔輸送層の形成]
まず、正孔注入層上に、前記正孔輸送層形成用材料を、スピンコート法により塗布し乾燥した。
その後、水銀ランプ(ウシオ電機社社製、「UM−452型式」)にフィルターを用いて、大気中で波長365nm、照射強度500mW/cmの紫外線を15秒間照射後、110℃で60分間加熱することにより、化合物(A)を重合反応させて高分子化することにより、平均厚さ50nmの正孔輸送層を形成した。
(実施例23A、24A)
正孔注入層の形成に用いる配位子を表1に示すものとした以外は、前記実施例22Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
【0192】
(比較例1A)
正孔注入層の形成を省略した以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
(比較例2A)
前記工程−2A−〜前記工程−6A−における正孔注入層の形成を、真空蒸着法により、銅フタロシアニンを供給することにより行った以外は、前記実施例1Aと同様にして、有機EL素子を製造した。
【0193】
(実施例1B)
−1B− まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板上に、真空蒸着法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
−2B− 次に、ITO電極上に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)の2.0wt%キシレン溶液を、スピンコート法により塗布した後、乾燥して、平均厚さ50nmの正孔輸送層を形成した。
【0194】
−3B− 次に、正孔輸送層上に、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)(重量平均分子量200000)の1.7wt%キシレン溶液を、スピンコート法により塗布した後、乾燥して、平均厚さ50nmの発光層を形成した。
−4B− また、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板上に、真空蒸着法により、平均厚さ300nmのAlLi電極(陰極)を形成した。
【0195】
−5B− 次に、AlLi電極を20vol%塩素雰囲気下、100℃×30分の条件で加熱して、AlLi電極の表面を塩素化した。
−6B− 次に、表面が塩素化されたAlLi電極に、1,10−フェナントロリン(前記一般式(1)で表される化合物)の1.0wt%N,N−ジメチルホルムアミド溶液をスピンコート法により塗布した。
【0196】
−7B− 次に、暗所において、AlLi電極をアルゴン雰囲気下、150℃×60分の条件で加熱して、AlLi電極の表面の塩素を離脱させるとともに、この表面に1,10−フェナントロリンを配位させた。
−8B− 次に、100℃、10Paの条件で、N,N−ジメチルホルムアミド溶液を除去して乾燥させることにより、AlLi電極上に1,10−フェナントロリンで構成される平均厚さ30nmの電子注入層を形成した。
【0197】
−9B− 次に、AlLi電極上に形成された電子注入層を、超音波を付与しつつ、ジエチルエーテルで洗浄した後、さらに超純水で洗浄することにより、層中の塩素濃度を0.2ppm以下とした。
−10B− 次に、電子注入層上に、(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)を真空蒸着し、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
【0198】
−11B− 次に、発光層と、電子輸送層とを対向させた状態で、1.5kgf/cmの条件で加圧しつつ、大気雰囲気中、温度80℃×時間50分で加熱処理を施すことにより、発光層と電子輸送層とを接合させた。
−12B− 次に、形成した各層の側面を覆うように、インクジェット法により、紫外線硬化性樹脂を供給した後、紫外線照射により硬化させることにより封止して有機EL素子を製造した。
【0199】
(実施例2B〜8B)
電子注入層の形成に用いる配位子を表2に示すものとした以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機EL素子を製造した。
(比較例1B)
電子注入層の形成を省略した以外は、前記実施例1Bと同様にして、有機EL素子を製造した。
【0200】
3.評価
各実施例および各比較例の有機EL素子について、それぞれ、発光輝度(cd/m)、最大発光効率(lm/W)を測定すると共に、発光輝度が初期値の半分になる時間(半減期)を測定した。
なお、発光輝度の測定は、ITO電極とAlLi電極との間に6Vの電圧を印加することで行った。
そして、比較例1Aで測定された各測定値(発光輝度、最大発光効率、半減期)を基準値として、実施例1A〜実施例24Aおよび比較例2Aで測定された各測定値を、それぞれ、以下の4段階の基準に従って評価した。
【0201】
◎:比較例1Aの測定値に対し、1.50倍以上である
○:比較例1Aの測定値に対し、1.25倍以上、1.50倍未満である
△:比較例1Aの測定値に対し、1.00倍以上、1.25倍未満である
×:比較例1Aの測定値に対し、0.75倍以上、1.00倍未満である
これらの評価結果を、それぞれ、以下の表1(A表)および表1(B表)に示す。
【0202】
【表1−A】

【0203】
【表1−B】

【0204】
表1(A表)および表1(B表)に示すように、各実施例の有機EL素子(本発明の電子デバイス用基板を備える有機EL素子)は、いずれも、各比較例の有機EL素子と比較して、発光輝度、最大発光効率および半減期ともに、優れた結果が得られた。
これにより、本発明の有機EL素子では、陽極と正孔注入層との界面および正孔輸送層と正孔注入層との界面における密着性が向上したため、これらの層中における正孔輸送能が好適に向上しているものと推察された。
【0205】
また、このような傾向は、実施例22A〜実施例24Aにおいてより顕著に認められた。これは、正孔輸送層が化合物(A)の高分子により構成されているため、正孔注入層と正孔輸送層との界面の密着性がより向上していることに起因すると推察された。
さらに、置換基Aまたは置換基Zとして、炭素数2−8の直鎖アルキル基を備える配位子を用いて製造した有機EL素子(実施例4A、5A、11A、12A、17Aおよび18A)において、最大発光効率と半減期とが改善される傾向を示した。これは、正孔注入層中において、直鎖アルキル基により共役系の構造同士の相互作用が低減されていることに起因すると推察された。
【0206】
なお、陽極の構成材料としてIZOを用い、正孔輸送層の構成材料としてN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)を用いた以外は、前記実施例1A〜前期実施例19Aと同様にして有機EL素子を製造した。これらの有機EL素子に対して、前記の評価方法と同様にして評価したが、前記と同様の結果が得られた。
さらに、比較例1Bで測定された各測定値(発光輝度、最大発光効率、半減期)を基準値として、実施例1B〜実施例8Bで測定された各測定値を、それぞれ、以下の4段階の基準に従って評価した。
【0207】
◎:比較例1Bの測定値に対し、1.50倍以上である
○:比較例1Bの測定値に対し、1.25倍以上、1.50倍未満である
△:比較例1Bの測定値に対し、1.00倍以上、1.25倍未満である
×:比較例1Bの測定値に対し、0.75倍以上、1.00倍未満である
これらの評価結果を、それぞれ、以下の表2に示す。
【0208】
【表2】

【0209】
表2に示すように、各実施例の有機EL素子(本発明の電子デバイス用基板を備える有機EL素子)は、いずれも、比較例の有機EL素子と比較して、発光輝度、最大発光効率および半減期ともに、優れた結果が得られた。
これにより、本発明の有機EL素子では、陰極と電子注入層との界面および電子輸送層と電子注入層との界面における密着性が向上したため、これらの層中における電子輸送能が好適に向上しているものと推察された。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】電子デバイス用基板の一例を示した縦断面図である。
【図2】本発明の電子デバイスを適用した有機EL素子の一例を示した縦断面図である。
【図3】有機EL素子を複数備えるディスプレイ装置を示す縦断面図である。
【図4】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0211】
1……電子デバイス用基板 10……有機EL素子 2、2’……基板 3……電極 3’……陽極 4……中間層 4’……正孔注入層 5……有機半導体層 5’……正孔輸送層 6……発光層 7……電子輸送層 8……陰極 9……保護層 100……ディスプレイ装置 20……基体 21……基板 22……回路部 23……保護層 24……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 25……第1層間絶縁層 26……第2層間絶縁層 27……配線 31……第1隔壁部 32……第2隔壁部 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役系の構造を有する有機半導体材料を主材料として構成される有機半導体層と、金属原子を含有する電極と、前記有機半導体層と前記電極との間に、これらの双方に接触するように設けられた中間層とを有する電子デバイス用基板であって、
前記中間層は、前記金属原子に配位する配位原子と、共役系の構造とを有する配位子を主成分として構成されていることを特徴とする電子デバイス用基板。
【請求項2】
前記配位子の総炭素数は、40以下である請求項1に記載の電子デバイス用基板。
【請求項3】
前記配位子は、前記金属原子に1つの配位原子が配位する単座配位子である請求項1または2に記載の電子デバイス用基板。
【請求項4】
前記単座配位子は、前記配位原子が前記共役系の構造中に含まれている請求項3に記載の電子デバイス用基板。
【請求項5】
前記配位子は、前記金属原子に2つ以上の配位原子が配位する多座配位子である請求項1または2に記載の電子デバイス用基板。
【請求項6】
前記多座配位子は、全ての前記配位原子が前記共役系の構造中に含まれている請求項5に記載の電子デバイス用基板。
【請求項7】
前記多座配位子は、下記一般式(1)および(2)で表される化合物のうちの少なくとも1種である請求項6に記載の電子デバイス用基板。
【化1】

[これらの式中、Aは、それぞれ独立していて、水素原子、塩素原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基および炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。]
【請求項8】
前記直鎖アルキル基の炭素数は、2〜8である請求項7に記載の電子デバイス用基板。
【請求項9】
前記置換基Aは、それぞれが結合するピリジン環の3位または4位のいずれかに結合している請求項7または8に記載の電子デバイス用基板。
【請求項10】
前記多座配位子は、一部の前記配位原子が前記共役系の構造中に含まれている請求項5に記載の電子デバイス用基板。
【請求項11】
前記多座配位子は、下記一般式(3)〜(9)で表される化合物のうちの少なくとも1種である請求項10に記載の電子デバイス用基板。
【化2】

[これらの式中、Xは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子およびセレン原子を表す。Yは、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基およびカルボキシ基を表す。Zは、水素原子、塩素原子および炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表す。]
【請求項12】
前記直鎖アルキル基の炭素数は、2〜8である請求項11に記載の電子デバイス用基板。
【請求項13】
前記一般式(3)、(8)および(9)で表される化合物において、前記置換基Zは、ベンゼン環の3位または4位のいずれかに結合している請求項11または12に記載の電子デバイス用基板。
【請求項14】
前記一般式(4)および(5)で表される化合物において、前記置換基Zは、芳香族複素環の3位または4位のいずれかに結合している請求項11または12に記載の電子デバイス用基板。
【請求項15】
前記一般式(6)および(7)で表される化合物において、前記置換基Zは、ベンゼン環の4位または5位のいずれかに結合している請求項11または12に記載の電子デバイス用基板。
【請求項16】
前記単座配位子は、全ての前記配位原子が前記共役系の構造外に存在する請求項5に記載の電子デバイス用基板。
【請求項17】
前記多座配位子は、下記一般式(10)で表される化合物である請求項16に記載の電子デバイス用基板。
【化3】

[この式中、Yは、それぞれ独立していて、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基およびカルボキシ基を表し、同一であっても、異なっていてもよく、Zは、水素原子、塩素原子および炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表す。]
【請求項18】
前記直鎖アルキル基の炭素数は、2〜8である請求項17に記載の電子デバイス用基板。
【請求項19】
前記一般式(10)で表される化合物において、前記置換基Zは、それぞれが結合するベンゼン環の3位または4位のいずれかに結合している請求項17または18に記載の電子デバイス用基板。
【請求項20】
前記金属原子は、インジウムである請求項1ないし19のいずれかに記載の電子デバイス用基板。
【請求項21】
前記有機半導体材料は、重合性基を有する低分子を、前記重合性基において重合させて高分子化させることにより得られたものである請求項1ないし20のいずれかに記載の電子デバイス用基板。
【請求項22】
前記低分子は、下記一般式(A1)または下記一般式(A2)で表される化合物である請求項21に記載の電子デバイス用基板。
【化4】

[式中、2つのRは、それぞれ独立して、炭素数2〜8の直鎖アルキル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。4つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。2つのXは、下記一般式(B1)〜下記一般式(B3)で表される置換基のうちのいずれかを示す。ただし、2つのXは、同種の置換基であるが、その炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。Yは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
【化5】

[式中、8つのRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。X、X、XおよびXは、下記一般式(B1)〜下記一般式(B3)で表される置換基のうちのいずれかを示す。ただし、これらX、X、XおよびXは、同種の置換基であるが、その炭素数は、同一であっても、異なっていてもよい。Yは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環、または、置換もしくは無置換の複素環を少なくとも1つ含む基を表す。]
【化6】

[これらの式中、nは、2〜8の整数を表す。nは、3〜8の整数を表し、mは、0〜3の整数を表す。Zは、水素原子またはメチル基を表し、Zは、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。]
【請求項23】
請求項1ないし22のいずれかに記載の電子デバイス用基板を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項24】
当該電子デバイスは、有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項23に記載の電子デバイス。
【請求項25】
請求項23または24に記載の電子デバイスを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−339328(P2006−339328A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160992(P2005−160992)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】