説明

電子ビーム・システムを動作させる方法及びシステム

【課題】X線管の電子ビーム・システムが広い放出ダイナミック・レンジにおいて動作することを可能にする。
【解決手段】電子ビーム・システムを動作させる方法が提供される。さらにまた、提供される方法を具現化する電子ビーム・システム、X線管(300)及びCTシステムが記載される。この方法は、イメージング・システムのX線管(300)において電子ビームを発生するステップを含んでいる。加えて、イメージング・システムの特定のビューに対応する電流構成を識別する。識別された電流構成が所定の範囲内にある場合には、パルス幅変調を用いてイメージング・システムの特定のビューについて電子ビームの負荷サイクルを変調する。さらに、変調された電子ビームをターゲットへ向けて集束させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は一般的には、診断撮像に関し、さらに具体的には、広い放出ダイナミック・レンジにおいて電子ビーム・システムを動作させる方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
計算機式断層写真法(CT)は、臨床診断、工業用検査及び警備スクリーニングのような諸分野に広い応用を有する。幾つかのCTシステムが開発されており、例えば乳ガンを検出する、心血管疾患を診断する、CTフルオロスコピィを行なう、及び空港手荷物検査を行なう等のためのシステムがある。CTシステムは、高品質画像再構成のために広範囲の視角からの多数の投影画像を要求する。加えて、CTシステムはまた、患者線量を低減しつつ所望の撮像品質を依然達成するためにX線の電子ビーム強度を制御することを必要とする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このために、従来のCTシステムは、電子ビーム放出制御のために制御式フィラメント加熱を有するX線管のような装置を用いている。しかしながら、従来のフィラメント加熱は数十ミリ秒程度の緩慢な過程であり、従って数十マイクロ秒程度のようなさらに高速の電子ビーム放出制御が望まれる応用では利用が阻まれる。X線管はさらに、静電グリッド及び/又は磁気アセンブリのような制御手段を含んで電子ビーム電流を制御する場合がある。しかしながら、かかるX線管では電子ビーム電流の急激な変化のため、標的物体での電子ビームの位置決め及び集束を正しく行なうことができない。具体的には、電子ビーム強度の0%から100%までの電子ビーム電流の変調を行なうと、空間電荷力の変化のため電子の互いの間での反発が生ずる。この空間電荷力の変化はさらに、X線管における電子ビームの電磁式集束及び偏向に影響を与え、従って焦点スポット寸法に影響を与える。
【0004】
具体的には、約10ミリアンペア(mA)及び140キロボルト(kV)のような低電子ビーム電流によってX線管を動作させているときには、電磁力の強い影響のため電子ビームが過度に集束して、電子ビーム軌跡に収縮した「くびれ(waist)」を形成する。撮像時に電子ビームのこの狭隘化効果を反転させることは難題である。この狭隘化効果のため、低電子ビーム電流において標的位置への電子ビームの位置決め及び集束を正確に制御するX線管の能力が阻害され、従ってイメージング・システム性能を損なう。
【0005】
X線管の電子ビーム・システムが広い放出ダイナミック・レンジにおいて動作することを可能にする実効的な方法及びシステムを開発することが望ましい。具体的には、撮像要件に基づいて電子ビームを標的位置に正確に位置決めするように電子ビーム強度を制御する電子ビーム・システムが必要とされている。さらにまた、画質及びX線源の耐久性を保ちつつ堅牢なイメージング・システム性能を達成するように電子ビームの焦点及び位置を制御する方法及びシステムを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の手法の各観点によれば、電子ビーム・システムを動作させる方法が提供される。この方法は、イメージング・システムのX線管において電子ビームを発生するステップを含んでいる。加えて、イメージング・システムの特定のビューに対応する電流構成を識別する。識別された電流構成が所定の範囲内にある場合には、パルス幅変調を用いてイメージング・システムの特定のビューについて電子ビームの負荷サイクルを変調する。さらに、変調された電子ビームをターゲットへ向けて集束させる。
【0007】
本発明のシステムの各観点によれば、電子ビーム・システムが記載される。この電子ビーム・システムは、電子ビームを発生する放出器と、放出器に関して正のバイアス電圧又は負のバイアス電圧に保たれる少なくとも一つの電極とを含んでおり、電極は電子ビームの強度を制御する。さらに、この電子ビーム・システムは、少なくとも一つの電極に結合されている制御ユニットを含んでいる。具体的には、制御ユニットは、X線管の特定のビューに対応する電流構成を識別する。次いで、制御ユニットは、識別された電流構成が所定の範囲内にあるときには、パルス幅変調を用いてX線管の特定のビューについて電子ビームの負荷サイクルを変調する。
【0008】
本発明のシステムのもう一つの観点によれば、X線管が提供される。このX線管は電子ビーム・システムを含んでいる。電子ビーム・システムはさらに、電子ビームを発生する放出器と、放出器に関して正のバイアス電圧又は負のバイアス電圧に保たれる少なくとも一つの電極とを含んでおり、電極は電子ビームの強度を制御する。さらに、このX線管は、少なくとも一つの電極に結合されている制御ユニットを含んでいる。具体的には、制御ユニットは、X線管の特定のビューに対応する電流構成を識別する。次いで、制御ユニットは、識別された電流構成が所定の範囲内にあるときには、パルス幅変調を用いてX線管の特定のビューについて電子ビームの負荷サイクルを変調する。このX線管はまた、電子ビームによって衝突されるとX線を発生するターゲットを含んでいる。
【0009】
本発明のシステムのさらにもう一つの観点によれば、計算機式断層写真法システムが記載される。この計算機式断層写真法システムは、ガントリと、電子ビーム・システムを含むX線管とを含んでいる。電子ビーム・システムはさらに、電子ビームを発生する放出器と、放出器に関して正のバイアス電圧又は負のバイアス電圧に保たれる少なくとも一つの電極とを含んでおり、電極は電子ビームの強度を制御する。さらに、X線管は、少なくとも一つの電極及び抽出電極に結合されている制御ユニットを含んでいる。具体的には、制御ユニットは、X線管の特定のビューに対応する電流構成を識別する。次いで、制御ユニットは、識別された電流構成が所定の範囲内にあるときには、パルス幅変調を用いてX線管の特定のビューについて電子ビームの負荷サイクルを変調する。X線管はまた、電子ビームによって衝突されるとX線を発生するターゲットを含んでいる。この計算機式断層写真法システムはさらに、対象からの減弱後の電子ビームを検出する1又は複数の検出器素子を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の手法のこれらの特徴、観点及び利点、並びに他の特徴、観点及び利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むとさらに十分に理解されよう。図面全体にわたり、類似の参照符号は類似の部材を表わす。
【図1】CTシステムの見取り図である。
【図2】イメージング・システムのブロック概略図である。
【図3】本発明のシステムの各観点によるX線管の一例の図である。
【図4】本発明の手法の各観点による電子ビームの負荷サイクルを変調する波形の一例のグラフ図である。
【図5】図3に示すビーム制御ユニットの構成要素の一例の図である。
【図6】本発明の手法の各観点による電子ビーム・システムを動作させる方法の一例を示す流れ図である。
【図7】本発明の手法の各観点による異なる電流構成での電子ビーム・システムの動作モードの一例のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の記載は、電子入射器のような電子ビーム・システムを動作させるシステム及び方法について説明する。具体的には、本書で説明される幾つかの実施形態は、許容可能な焦点スポット品質を有しつつ広い放出ダイナミック・レンジにおいて電子入射器を実効的に動作させるシステム及び方法について記載する。以下の記載は二、三の実施形態を含むに過ぎないが、この電子ビーム・システムは他の様々なイメージング・システム及び応用において具現化されて、高画質及び最適化された線量制御を達成することができる。例として述べると、電子ビーム・システムは、ウェーネルト(Wehnelt)円筒又は電界電子放出器を用いたCTシステム、X線システム及び電子銃アセンブリに用いられ得る。本発明のシステムの様々な具現化形態を実施するのに適した環境の一例について、図1〜図2を参照して以下の各節で説明する。
【0012】
図1は、画像データを取得して処理するCTシステムの一例100を示す。一実施形態では、CTシステム100はガントリ102を含んでいる。ガントリ102はさらに、ガントリ102の反対側に配置されている検出器アレイ108へ向けてX線放射線のビーム106を投射する少なくとも一つのX線放射線源104を含んでいる。図1は単一のX線放射線源104を図示しているが、幾つかの実施形態では、多数の放射線源を用いて複数のX線ビームを投射して様々なビュー角度から画像データを取得することができる。
【0013】
さらに、図2は、本発明の手法の各観点に従って画像データを取得して処理する図1のCTシステム100と同様のイメージング・システム200を示す。但し、イメージング・システム200は1又は複数の構造的観点及び作用的観点においてCTシステム100とは異なっていてよい。例として述べると、イメージング・システム200の検出器アレイ108はさらに、患者又は手荷物のような対象204を通過する投射X線ビームを一括で感知して対応する投影データを取得する複数の検出器素子202を含み得る。
【0014】
典型的には、投影データを取得する走査時には、ガントリ102及びガントリ102に装着されている構成要素は回転中心206の周りを回転する。但し、対象204に対する投影角が時間の関数として変化するような幾つかの実施形態では、装着された構成要素が円の弧ではなく一般的な曲線に沿って移動してもよい。従って、ガントリ102の回転及びX線放射線源104の動作は、X線放射線源104の所望のビュー角度からの投影データを取得するようにイメージング・システム200の制御機構208によって制御され得る。一実施形態では、制御機構208は、X線放射線源104に電力信号及びタイミング信号を供給するX線制御器210と、ガントリ102の回転速度及び位置を制御するガントリ・モータ制御器212とを含み得る。制御機構208はまた、検出器素子202からのアナログ・データをサンプリングして、後の処理のためにこのアナログ・データをディジタル信号へ変換するデータ取得システム(DAS)214を含み得る。
【0015】
DAS214によってサンプリングされてディジタル化されたデータは、計算装置216に入力される。計算装置216はこのデータを、フレキシブル・ディスク・ドライブ、コンパクト・ディスク読み書き(CD−R/W)ドライブ、又はディジタル多用途ディスク(DVD)・ドライブのような記憶装置218に記憶させることができる。代替的には、画像再構成器228が、サンプリングされてディジタル化されたX線データをDAS214から受け取って高速再構成を実行してもよい。計算装置216はさらに、再構成画像を処理し且つ/又は記憶装置218に記憶させることができる。
【0016】
さらに、表示器220が計算装置216に結合されて連絡しており、操作者が対象の画像及び関連データを観測するのを可能にし得る。一実施形態では、計算装置216は、キーボード(図示されていない)を含み得るコンソール222を介して操作者から命令及び走査パラメータを受け取ることができる。計算装置216は、操作者が供給し且つ/又はシステムが定義した命令及びパラメータを用いて、DAS214、X線制御器210及びガントリ・モータ制御器212の1又は複数に制御信号及び情報を与える。加えて、計算装置216はまた、コンベヤ・システム制御器又はテーブル・モータ制御器224を動作させることができ、制御器224はコンベヤ・システム又は電動式テーブル226を制御する。テーブル・モータ制御器224は、対応する画像データを取得するように患者のような対象204をガントリ102において適当に配置するためにテーブル226を移動させることができる。
【0017】
対象204を撮像するのに用いられるX線放射線源104は典型的には、少なくとも陰極及び陽極を含むX線管である。現在、X線管は、陽極に入射してX線を発生するための電子ビームを発生する電子供給源を含んでいる。電子供給源は、X線フィラメントの電流構成を変化させ従ってフィラメントの放出温度を変化させることにより、電子ビーム電流の大きさを制御している。しかしながら、これらのX線管では、走査要件に基づいてビュー逐次に電子ビーム強度及び焦点スポット寸法を実効的に制御することができず、従って撮像の選択肢を限定している。本書で用いられる「ビュー」との用語は、特定のガントリ角度、又は投影X線画像における一つのフレームにおいて取得される投影画像を指す。さらに、本発明の手法の各観点によれば、X線放射線源104は、マイクロ秒電流制御及び広範囲の集束自在型放出を提供してX線画像を改善するX線管に対応し得る。最適放射線量を有しつつ所望の寸法及び品質の焦点スポットを発生するマイクロ秒電流制御を可能にするX線管の一例について、図3を参照して詳細に説明する。
【0018】
図3は、本発明の手法の各観点によるX線管の一例300を示す。X線管300は、図2に示すイメージング・システム200のようなイメージング・システムにおいて放射線源として用いられ得る。一実施形態では、X線管300は、真空壁304の内部に配設された入射器302を含んでいる。X線管300はまた、静止型又は回転式X線ターゲット(ターゲット306)となる陽極306を含んでいる。ターゲット306は入射器302と共に、管外被308の内部に配設されている。本発明の手法の各観点によれば、入射器302はさらに、入射器壁310の内部に封入されている1又は複数の構成要素を含み得る。例として述べると、1又は複数の構成要素は、放出器312の形態にあり電子ビーム314を放出する少なくとも一つの陰極を含み得る。具体的には、放出器312は、平坦な放出面、彎曲した放出面、又は他の任意の適当に成形された放出面を含んで、撮像要件に応じて電子ビーム314を放出することができる。
【0019】
さらに、一実施形態では、放出器312は、当該放出器312に結合されている電圧源316を用いて当該放出器312に大電流を流すことにより直接加熱される。この大電流は放出器312を加熱し、このようにして電子ビーム314の放出を生じさせる。代替的には、放出器312は、適当な加熱条件を与えられると電子を発生する熱イオン型電子供給源318を用いて間接的に加熱されてもよい。このために、熱イオン型電子供給源318は、高融点、高温での安定な電子放出、低仕事関数、又はこれらの組み合わせを有する材料を含み得る。従って、熱イオン型電子供給源318は、例えばフィラメント導線又は電圧源316を用いて熱イオン型電子供給源318に跨がって電流を流し且つ/又は電圧を印加することにより加熱され得る。次いで、加熱された熱イオン型電子供給源318は電子を発生し、これらの電子を一般に加熱用電子ビーム320と呼ぶ。放出器312は、加熱用電子ビーム320によって衝突されると電子ビーム314を発生する。
【0020】
放出器312によって発生される電子ビーム314は、集束電極324を用いてターゲット306へ向けて集束されてX線322を発生する。集束電極324は、放出器312に関して適当な電位例えば負の電位に保たれて、電子ビーム314を集束電極324から離隔させて、ターゲット306へ向けて集束させる。代替的には、集束電極324は、平行電子ビームを発生するために放出器312の電圧電位に等しい又は実質的に類似した電圧電位に保たれてもよい。
【0021】
さらに、入射器302はまた、電子ビーム314を制御し且つ/又はターゲット306へ向けて集束させる少なくとも一つの抽出電極326を含み得る。このために、X線管300は、抽出電極326を放出器312に関して正のバイアス電圧又は負のバイアス電圧に保つのに適当な電圧を供給するバイアス電圧電源328を含み得る。幾つかの実施形態では、抽出電極326はさらに、異なる電圧電位を有する複数の領域に分割されて、放出器312の異なる領域から電子ビーム314の集束及び/又はバイアス印加放出を実行することができる。
【0022】
本発明の手法の各観点によれば、抽出電極326及び/又は集束電極324を用いてX線管300の電子ビーム電流を制御することができる。このために、抽出電極326は集束電極324に関して正電圧にバイアス印加され、このようにして抽出電極326と集束電極324との間に電位差を生成する。抽出電極326と集束電極324との間の電位差は電場330を発生し、この電場330を用いて電子ビーム314の強度を制御することができる。
【0023】
具体的には、電場330は、放出器312から放出される電子をターゲット306へ向けて加速させる。一実施形態では、電場330が強くなるほど、放出器312からターゲット306へ向かう電子の加速は大きくなる。代替的には、電場330が弱くなるほど、放出器312からターゲット306へ向かう電子の加速は小さくなる。従って、例えばバイアス電圧電源328に結合される電圧タブ(図示されていない)を用いて抽出電極326の電圧電位(kV)を変化させることにより電場330の強さを調節して、電子ビーム強度を制御することができる。
【0024】
さらに、幾つかの実施形態では、入射器302とターゲット306との間に配設された磁気アセンブリ332が、電子ビーム314の追加制御を提供することができる。具体的には、磁気アセンブリ332は、電子ビーム314を成形する磁場をX線ターゲット306に生成することにより電子ビーム314の集束に影響を及ぼす1又は複数の多極磁石を含み得る。例として述べると、1又は複数の多極磁石は、1又は複数の四極磁石、1又は複数の二極磁石、又はこれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、1又は複数の多極磁石は、電子ビーム314を、当該電子ビーム314のエネルギ・レベルの関数としてターゲット306へ向けて偏向させ且つ/又は位置決めする磁場を発生する。このようにして発生される磁場はさらに、入射器302によって発生される広範囲の焦点スポット寸法について定常状態から30マイクロ秒未満の時間尺度まで制御可能であり得る。
【0025】
CTシステムのような撮像装置において入射器302を用いているときに、電子ビーム電流は、画質及び患者への線量を最適化するように、典型的には数十マイクロ秒程度で迅速に変更されなければならない。しかしながら、前述のように、電子ビーム電流及び電圧の急激な変化によって、特に所定の電流値の範囲内で動作しているときに入射器302での空間電荷効果及び電磁気集束に急激な変化が生じ得る。例として述べると、所定の範囲は約80kVにおいて約10mA〜約1500mAの電流値に対応し得る。約10mAのような所定の範囲内にある低電子ビーム電流において入射器302を動作させているときに、電場330及び磁気アセンブリ332によって発生される電磁力は、電子ビーム314の位置決め、並びに焦点スポット寸法及び品質に影響を与え得る。
【0026】
従って、一実施形態では、パルス幅変調(PWM)を用いて電子ビーム314の負荷サイクルを変調して、低電流での電子ビーム314の位置決め及び集束に対する電磁力の破壊的影響を回避する。本書で用いられる「負荷サイクル(duty cycle)」との用語は、特定のビュー時間に対する電子ビームの「入」時間の比を指す。
【0027】
典型的には、CTシステムの検出器は、X線信号の出力が特定のビュー時間にわたるX線積分に比例するように積分信号モードで動作する。例として述べると、X線管300の各々のビュー時間は約20マイクロ秒から約500マイクロ秒に対応し得る。さらに、特定のビュー時間にわたり電子ビーム強度を高速で切り換えることにより一連のパルスを発生することができる。従って、特定のビュー時間内での積分X線信号は、特定のビュー時間内に発生されるピークX線信号及び一連のパルスの負荷サイクルに比例する。現状で思量される構成では、X線管300の特定のビューの範囲内で発生される一連のパルスの負荷サイクルは、X線管300の特定のビューについて少なくとも所定のX線束を発生するように適応調整される。具体的には、一実施形態では、入射器302はPWMを用いて、X線管300の特定のビューの範囲内で発生される一連のパルスの負荷サイクルを変化させる。電子ビーム314の負荷サイクルを変調するために入射器302によって用いられ得るPWM方式の一例を図4に示す。
【0028】
図4は、本発明の手法の各観点による図2のCTシステム200のようなイメージング・システムの特定のビューに対応するPWM波形の一例402のグラフ図400を示す。このために、矩形PWMパルス波のパルス幅は、PWM波形402の平均値を変化させるように変調される。次いで、PWM波形402を用いて、例えばX線管300の特定のビューにおいて数回にわたり入及び切になるようにバイアス電圧電源328への電力を高速で切り換える。バイアス電圧電源328の変化によって抽出電極326に跨がる電圧が変化し、従って電子ビーム強度が変化する。このように、PWM波形402は特定のビュー時間にわたり発生される一連のパルスの負荷サイクルを変調して、イメージング・システムの1又は複数の構成要素へ情報を伝達すること又は入射器302に渡される電力の量を制御することの何れかを行なって電子ビーム強度を制御する。
【0029】
具体的には、高mA値及び低mA値において入射器302を動作させるためのPWM波形402の入時間の百分率を変化させることにより、イメージング・システムの特定のビューの範囲内でのmA等価値を変化させることができる。特定のビューの範囲内でのmA等価値と、高mA値及び低mA値動作のためのPWM波形402の入時間の百分率との間の関係の一例は下式のように定義され得る。
【0030】
等価mA=High_mA*P_high+Low_mA*P_low (1)
式中、High_mAは高放出器電流値であり、P_highは高mA値の百分率(時間)であり、Low_mAは低放出器電流値であり、P_lowは低mA値の百分率である。例として述べると、第一の動作モードでは、入射器302は1AのHigh_mA(放出器電流)を用いて、P_highを約10%(10%負荷サイクル)、P_low404を約90%としてPWM波形402を変調し、第二の動作モードにおいて生成される場合の約100mAの実質的に等価のmA406を発生することができる。
【0031】
第二の動作モードでは、入射器302は、100mAのHigh_mAを用いて、P_highを約100%、P_lowを約0%として波形404を変調し、電子ビームを発生することができる。しかしながら、発生される電子ビームが、入射器302の低mA動作時に一般に生ずる破壊的電磁力のため集束を失う場合がある。従って、入射器302は、高電流を用いる第一のモードにおいてX線管300を動作させ、負荷サイクル変調を用いて、第二の動作モードに対応する焦点スポット寸法、焦点スポット位置、焦点スポット品質、電子ビーム強度及び/又は位置を発生する。さらに、電子ビームの負荷サイクルを変化させるために特定のビュー時間の一部のみにわたって入射器302に電力を供給することにより、放射線の影響が減少し、またX線管300の寿命が延びる。
【0032】
図3の参照に戻り、一実施形態では、X線管300は、撮像要件に基づいて電子ビームの負荷サイクルを変化させるビーム制御ユニット334を含んでいる。このために、ビーム制御ユニット334は、例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、マイクロプロセッサ、特定応用向け集積回路(ASIC)、又は他の任意の適当な制御装置を含み得る。幾つかの実施形態では、ビーム制御ユニット334の代わりに、図2のイメージング・システム200のようなイメージング・システムに結合されている制御機構208、X線制御器210又は計算装置216のような制御用サブシステムがビーム制御ユニット334の1又は複数の作用を果たしてもよい。X線管300において所定の焦点スポット寸法、所定の焦点スポット位置及び/又は所定の線束を発生するように所定の電流値での電子ビーム314の負荷サイクルを変調するビーム制御ユニット334について、図5を参照してさらに詳細に説明する。
【0033】
図5は、図3のビーム制御ユニット334の構成要素の例を示すブロック図を示す。前述のように、ビーム制御ユニット334は、撮像時に近実時間で動的に及び/又は所定の走査手順に従って所定の電流値での電子ビーム314の負荷サイクルを変調する。従って、一実施形態では、ビーム制御ユニット334は、特定のビュー時間内に発生される一連のパルスの負荷サイクルを変化させるために、PWM発生器502、クロック回路504及び切り換えサブシステム506を含んでいる。一実施形態では、ビーム制御ユニット334は、電子ビーム314の強度を制御するように図3の抽出電極326に対応する電圧構成を変化させるために図3の電圧源316へディジタル制御信号を供給する。代替的には、ビーム制御ユニット334は、電子放出を一切行なわないように抽出電極326に負電圧を印加することもできる。
【0034】
幾つかの実施形態では、ビーム制御ユニット334はさらに、抽出電極326及び他のイメージング・システム構成要素にとって適当な動作設定を決定する処理サブシステム508及びメモリ510を含んでいる。代替的には、幾つかの実施形態では、ビーム制御ユニット334は、有線及び/又は無線の通信網、例えばインターネットを介して処理サブシステム508及びメモリ510に結合されて連絡して、動作設定を決定してもよい。例として述べると、ビーム制御ユニット334を図2のイメージング・システム200のようなイメージング・システムにおいて実装するときに、処理サブシステム508は図2の計算装置216に対応し、メモリ510は記憶装置218に対応し得る。具体的には、ビーム制御ユニット334は処理サブシステム508を用いて、少なくとも所定のX線束、所定の焦点スポット位置及び/又は所定の焦点スポット寸法を発生するように、X線管300の特定のビューを撮像するのに適当な動作設定を決定する。例として述べると、動作設定は、パルス幅、負荷サイクル、電子ビーム切り換え周波数、抽出電圧、バイアス電圧、磁石電流及び/又はイメージング・システムのガントリ角度を含み得る。
【0035】
さらに、本発明の手法の各観点によれば、ビーム制御ユニット334は、スカウト走査のような特定の走査手順を実行しているときにX線管300の特定のビューに対応する電流構成を識別する。本書で用いられる「電流構成(current configuration)」との用語は、放出器312と、X線管300の陽極となるターゲット306との間の電子ビーム電流(mA)の大きさ、及び/又は特定の撮像時間にわたるこの電子ビーム電流の全積分を指す。ビーム制御ユニット334は、例えば放出器312に近接して配設されている電流プローブ又はセンサ(図示されていない)を用いることにより、走査手順に用いられている電流構成を識別する。電流プローブは、X線管300の特定のビューに対応する電流構成を識別して、識別された電流構成を示す信号を電気導線(図示されていない)を介してビーム制御ユニット334まで返送することができる。一実施形態では、ビーム制御ユニット334はさらに、対象を撮像するための所定の焦点スポット寸法、所定の焦点スポット位置及び/又は所定のX線束を決定する。例として述べると、1250mA及び80kVにおいて患者を撮像しているときに、所定の焦点スポット寸法は6.8mm×2.1mmに対応し得る。
【0036】
幾つかの実施形態では、利用者が、所定のX線束、所定の焦点スポット位置及び/又は所定の焦点スポット寸法に対応する値を、ビーム制御ユニット334に結合されている入力装置(図示されていない)を介して供給することができる。他の幾つかの実施形態では、処理サブシステム508が、撮像に用いられる特定の走査手順に基づいて所定のX線束、所定の焦点スポット位置及び/又は所定の焦点スポット寸法を決定する。このために、メモリ510は、特定の走査手順と、入射器302の様々なビューに対応するX線束、焦点スポット特性及び/又は電流構成との間の相関を記憶しておくことができる。
【0037】
一実施形態では、識別された電流構成が所定の範囲(PWMレンジ)の外にある場合には、ビーム制御ユニット302は連続式集束方式を用いる。具体的には、ビーム制御ユニット334は、特定のビューを撮像しているときに、PWMレンジよりも高い電流値、例えば400mAよりも高い電流値では連続式集束方式を用いて、ターゲット306に入射する電子ビーム電流を直接調節する。幾つかの実施形態では、ビーム制御ユニット334は、電子ビーム314をマイクロ秒程度で入及び切に高速に切り換えることにより電子ビーム電流を調節して、特定のビューでの画像データ取得を調節する信号を送信する。幾つかの実施形態では、ビーム制御ユニット334は、例えば集束電極324に負電圧を印加し、抽出電極326に対応する電圧構成を変化させて電子ビーム電流を変化させ、且つ/又は抽出電極326に負電圧を印加して電子ビーム314を完全に切にすることにより、電子ビーム電流を調節する。
【0038】
しかしながら、識別された電流構成が所定の範囲内にある場合には、ビーム制御ユニット334は切り換えサブシステム506を用いてPWMモードを作動させる。ビーム制御ユニット334は一実施形態ではさらに、電子ビーム電流を約400mAのような所定の値に設定するように抽出電圧を構成することができる。加えて、ビーム制御ユニット334は、放出器312が所定の値を有する電子ビーム電流を発生することを可能にするのに適当な電圧を抽出電極326に跨がって印加するようにバイアス電圧電源328を構成する。
【0039】
さらに、ビーム制御ユニット334は、処理サブシステム508を用いて、抽出電圧を調節し従って電子ビーム電流を調節するPWM波形を発生するためにバイアス電圧電源328に適用されるべきパルス幅、切り換え周波数、及び負荷サイクルのような動作設定を決定する。具体的には、処理サブシステム508は、電子ビーム電流の所定の値に基づいて所定のX線束、所定の焦点スポット位置及び/又は所定の焦点スポット寸法を発生するように動作設定を決定する。加えて、処理サブシステム508はまた、電子ビーム314の正確な集束を保証するように、電子ビーム電流の所定の値に基づいて集束電極324及び/又は磁気アセンブリ332のような他のシステム構成要素の動作設定を決定することができる。
【0040】
従って、一実施形態では、PWM発生器502は、クロック回路504及び切り換えサブシステム506を用いて、所定の切り換え周波数を用いて電圧源316に印加されるべき適当なPWM波形を発生する。このために、切り換えサブシステム506は、少なくとも抽出電極326に跨がって時間の関数として適当な電圧値を印加する電圧源316及び/又はバイアス電圧電源328に結合されているトランジスタ、MOSFETスイッチ、又は他の任意の適当な装置のような各装置を含み得る。
【0041】
具体的には、PWM発生器502は、切り換えサブシステム506及びクロック回路504を用いて、処理サブシステム508によって決定されるパルス幅及び負荷サイクルを有するPWM波形を発生する。幾つかの実施形態では、PWM波形は、一定の周波数を保ちつつPWM波形のパルス幅を変化させるか、又は一定のパルス幅を保ちつつ与えられるパルスの数を変化させることにより、負荷サイクルを変化させる。代替的には、所定の負荷サイクルを達成するようにパルス幅及び周波数の両方を変化させることができる。他の幾つかの実施形態では、PWM波形はまた、パルスのサイクル時間、周波数、強度、位相及び数のような負荷サイクルに対応する1又は複数のパラメータを変化させることにより、負荷サイクルを変化させることができる。このように、ビーム制御ユニット334は、X線管300の特定のビューについて電子ビーム314の負荷サイクルを変調するように、発生されるPWM波形を用いて抽出電極326に供給される電圧を変化させる。
【0042】
次いで、変調された電子ビーム314を、ターゲット306に入射するように電磁力によって集束させて位置決めして、X線322を発生する。このようにして発生されるX線322は、高電流モードで動作しているときであっても、例えば入射器302の低電流動作に対応する所定のX線束を発生する。このように、負荷サイクル変調は、入射器302が広い電流ダイナミック・レンジを有することを要求することなく、入射器302が一つのビューの範囲内で広い等価X線束範囲を達成することを可能にする。高画質及び最適化された線量制御を達成しつつ電子銃が広範囲の変調電流において動作することを可能にするX線ビームの負荷サイクルを変調する方法の一例について図6〜図7を参照してさらに詳細に説明する。
【0043】
図6へ移ると、図3の入射器302のような電子ビーム・システムを動作させる方法の一例を示す流れ図600が示されている。この方法の例を、計算システム又はプロセッサに対するコンピュータ実行可能な命令という一般的な状況で説明することができる。一般的には、コンピュータ実行可能な命令は、特定の作用を果たす又は特定の抽象データ型を具現化するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、プロシージャ、モジュール及び関数等を含み得る。この方法の例はまた、最適化作用が通信網を介して結合されている遠隔の処理装置によって実行されるような分散計算環境でも実施され得る。分散計算環境では、コンピュータ実行可能な命令は、メモリ記憶装置を含めたローカル及びリモートの両方のコンピュータ記憶媒体に位置し得る。
【0044】
さらに、図6では、この方法の例を、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせにおいて具現化され得る一連の動作を表わす論理的な流れ図におけるブロックの集合として示している。これらの様々な動作は、この方法の例の電子ビーム発生、電流構成識別、変調及び集束の各段階時に全体的に実行される作用を説明するために各ブロックに示されている。ソフトウェアの文脈では、各ブロックは、1又は複数の処理サブシステムによって実行されると電子ビーム・システムの所載の動作を果たすコンピュータ命令を表わす。この方法の例が記載されている順序は制限として解釈されるべきでなく、任意の数の所載のブロックが任意の順序で組み合わされて本書に開示される方法の例又は等価の代替的な方法を具現化し得るものとする。加えて、個々のブロックは、本書に記載される主題の要旨及び範囲から逸脱することなくこの方法の例から削除され得る。議論の目的のために、この方法の例を図1〜図5の諸要素を参照して説明する。
【0045】
この方法の例は、図2のイメージング・システム200のようなイメージング・システムの図3の入射器302のような電子ビーム・システムが、集束自在の広いダイナミック・レンジにおいて動作するのを可能にすることを目的とする。従って、ステップ602では、電子入射器の放出器312のような放出器が電子ビームを発生する。一実施形態では、図3の放出器312に関して説明するように、放出器は直接又は間接的に加熱されて電子ビームを発生することができる。続いて、加熱用電子ビームは放出器に入射して、人体、手荷物、又は他の任意の適当な対象を撮像するのに用いられ得る電子ビームを発生する。
【0046】
さらに、ステップ604では、特定の走査手順を実行しているときのイメージング・システムの特定のビューに対応する電流構成を識別する。例として述べると、識別される電流構成は、イメージング・システムの特定のビューを走査するために放出器によって発生される電子ビーム電流の大きさに対応し得る。幾つかの実施形態では、利用者がイメージング・システムに結合されている入力装置を用いて電流構成を供給することができる。代替的には、処理ユニットが、実行されている特定の走査手順及び/又は撮像されている対象の特性に基づいてイメージング・システムの特定のビューに対応する電流構成を推測することができる。
【0047】
次いで、ステップ606において、識別された電流構成を電子ビーム電流に対応する所定の範囲の値に対して比較することができる。例として述べると、この所定の範囲は50mA〜400mAの電流値に対応し得る。一実施形態では、所定の範囲は、電子ビームが電磁力の影響のためかなり狭隘化し得るときの電流値の範囲に対応する。
【0048】
識別された電流構成が所定の範囲の外にある場合には、ステップ608において、ビーム制御ユニット334のような制御ユニットが、電子入射器を連続式集束モードで動作するように作動させる。具体的には、制御ユニットは連続式集束変調を用いて標的物体に入射する電子ビーム電流を調節する。従って、ステップ610では、処理ユニットは、連続式集束変調を用いて電子ビーム電流を変調するための電子入射器及び/又はイメージング・システムの他構成要素に対応する1又は複数の動作設定を決定する。例として述べると、処理ユニットは、所定の電子ビーム強度を達成する抽出電圧、抽出電極に跨がる電圧を変化させる切り換え周波数、及び/又は用いられている特定の走査手順に基づいてイメージング・システムの特定のビューを走査するガントリ角度を決定することができる。
【0049】
さらに、ステップ612では、制御ユニットは、所定の動作設定を用いて連続式集束変調を用いて電子ビーム電流を変調する。例として述べると、制御ユニットは、切り換えサブシステム506のような切り換えモジュールを用いて、約1マイクロ秒〜15マイクロ秒の区間から少なくとも約150ミリ秒の区間に抽出電極326に対応する電圧構成を変化させる。抽出電極326に対応する電圧構成の変化によって、マイクロ秒単位程度の区間で電子ビーム強度を変調し、このようにして電子ビームのマイクロ秒強度切り換えを達成する。
【0050】
ステップ606へ戻り、識別された電流構成が所定の範囲内にある場合には、ステップ614において、制御ユニットは切り換えモジュールを用いて電子入射器についてPWM動作モードを選択する。電子入射器のPWM動作モードについては、図6を参照して後の節でさらに詳細に説明する。
【0051】
さらに、ステップ616では、処理ユニットは、電子入射器及び/又はイメージング・システムの1若しくは複数の構成要素をPWMモードで動作させる1又は複数の動作設定を決定する。例として述べると、処理ユニットは、イメージング・システムの特定のビューと共に発生される一連のパルスのパルス幅、負荷サイクル、切り換え周波数及び/又は抽出電圧を決定することができる。具体的には、処理ユニットは、用いられている特定の走査手順の要件に基づいて所定のX線束、所定の焦点スポット位置及び/又は所定の焦点スポット寸法を発生するように動作設定を決定する。前述のように、所定の線束、所定の焦点スポット位置及び所定の焦点スポット寸法は、イメージング・システムに結合されている入力装置(図示されていない)を介して利用者によって供給されてもよい。代替的には、処理ユニットが、撮像に用いられる特定の走査手順及び電流構成に基づいて所定のX線束、所定の焦点スポット位置及び/又は所定の焦点スポット寸法を決定する。
【0052】
続いて、ステップ618では、制御ユニットは所定の動作設定を用いて、PWMを用いてイメージング・システムの特定のビューについて電子ビームの負荷サイクルを変調する。従って、一実施形態では、制御ユニットは切り換えモジュールを用いて、イメージング・システムの特定のビュー時間内に一連のパルスを発生するように電子入射器を入及び切に高速に切り換える。例として述べると、イメージング・システムの、各々のビュー時間は、約20マイクロ秒〜約500マイクロ秒に対応し得る。特定のビュー時間内に発生されるパルスの数は、一連のパルスの送信時間に基づいて変化し得る。
【0053】
前述のように、X線信号の出力は、特定のビュー時間内に発生されるピークX線信号及び一連のパルスの負荷サイクルに比例する。従って、一連のパルスの負荷サイクルは、図4に関して説明するようにPWMを用いて等価のX線信号を発生するように適応調整され得る。具体的には、等価のX線信号は、特定のビュー時間内に発生される最大X線信号、最小X線信号及び一連のパルスの負荷サイクルに基づいて決定され得る。従って、所定の電流構成において電子入射器を動作させるために、イメージング・システムは電子ビーム電流自体を変化させるのではなく、負荷サイクル変調を用いて等価のX線信号を発生する。具体的には、電子ビーム電流を直接変化させるのではなく電子ビームの負荷サイクルを変調して所定の線束を発生するようにすると、減少した切り換え電力を要求しつつ、イメージング・システムの撮像速度が高まる。
【0054】
続いて、ステップ620では、変調された電子ビームを電磁力によって集束させて位置決めしてターゲットに入射させ、X線を発生する。このようにして発生されるX線は、高電流モードで動作しているときであっても、電子入射器の低電流動作に対応する所定のX線束を発生する。このように、電子の負荷サイクル変調は、電子入射器が広い電流ダイナミック・レンジを有することを要求することなく、電子入射器が一つのビューの範囲内で広い等価X線束範囲を達成することを可能にする。具体的には、異なる電流構成の多数のモードで動作するイメージング・システムの能力が、当該イメージング・システムにとって利用可能な撮像の選択肢を大幅に拡大する。本発明の手法の各観点による多数のモードで電子入射器を動作させる方法について、図7を参照してさらに詳細に説明する。
【0055】
図7は、異なる電流構成での電子入射器の多数の動作モードを示すグラフ図700を示す。具体的には、図7は、イメージング・システムの特定のビューに対応する電流構成に基づく様々なモードでの電子入射器の動作の一例を示す。このために、イメージング・システムは、図6のステップ604に関して記載されている方法を用いて、イメージング・システムの特定のビューに対応する電流構成を識別する。続いて、図3のビーム制御ユニット334のような制御ユニットが、識別された電流構成に基づいて電子入射器の動作モードを選択する。
【0056】
一実施形態では、制御ユニットは、高電流構成を示す領域702における連続式集束モード及び低電流構成を示す領域704におけるPWMモードで動作するように電子入射器を構成する。図示の実施形態において例として述べると、高電流領域702は450mAと1250mAとの間の電流値に対応し、抽出電圧は約3500Vから7500Vである。さらに、低電流領域704は0mAと450mAとの間の電流値に対応し、抽出電圧は−1000Vと3500Vとの間にある。但し、低電流領域704及び高電流領域702は、本発明の要旨及び範囲から逸脱することなく他の値に対応し得る。また、一実施形態では、低電流領域704が200mA〜450mAに対応し、ビームは0mA〜200mAの間で連続動作において用いられてもよい。
【0057】
ステップ612に関して説明するように、高電流領域702で動作しているときに、電子入射器は連続式集束変調を用いて、マイクロ秒強度切り換えを用いて電子ビーム強度を調節する。具体的には、制御ユニットは切り換えモジュールを用いて、約1マイクロ秒〜15マイクロ秒の区間から少なくとも約150ミリ秒の区間に抽出電極に対応する電圧構成を変化させる。抽出電極に対応する電圧構成の変化によって、マイクロ秒単位程度の区間で電子ビーム強度を変調し、このようにしてデータ取得及びイメージング・システム性能を高める。
【0058】
代替的には、電子入射器は、低電流領域704において動作するためにPWMを用いて電子ビームの負荷サイクルを変調する。例として述べると、電子入射器は、当該電子入射器が約10mA〜50mAの電流構成及び静止型ガントリを用いるようなスカウト走査を実行しているときには低電流領域704で動作し得る。一実施形態では、低電流構成は、電流構成を例えば80kVにおいて約200mAとした5秒間にわたる利用者定義の走査手順に対応する。もう一つの実施形態では、低電流構成は、画質に損失を招かずに患者に投与される線量を減少させるために円周位置又は軸方向位置の関数として管電流を変調する走査モードに対応し得る。しかしながら、低電流領域704において連続式集束変調を用いて電子入射器を動作させると、電子ビームのかなりの狭隘化を招き、焦点の損失、従って画質の損失を招き得る。
【0059】
従って、一実施形態では、電子ビーム電流は、電子ビームが電磁力の過度の狭隘化効果を回避し得る約1Aのような所定の値に設定され得る。さらに、処理ユニットは、所定の電流の値に基づいて所定の線束、所定の焦点スポット位置及び/又は所定の焦点スポット寸法を発生し得るようにイメージング・システムの特定のビューについて適当な動作設定を決定することができる。前述のように、動作設定は、パルス幅、負荷サイクル、電子ビーム切り換え周波数、抽出電圧、磁石電流、バイアス電圧、及び/又はイメージング・システムのガントリ角度を含み得る。
【0060】
制御ユニットは、所定の動作設定を用いて、イメージング・システムの特定のビューの範囲内で発生される一連のパルスの負荷サイクルを変化させるのに適当なPWM波形を発生する。具体的には、制御ユニットはPWM波形を用いて、抽出電極に対応する電圧構成を変化させるために電圧源にディジタル制御信号を与え、このようにして電子ビームの負荷サイクルを制御する。代替的には、制御ユニットは、電子放出を一切行なわないように抽出電極に所定の負電圧を印加することもできる。図4に関して説明するように、制御ユニットは、低電流領域704において動作している電子入射器が1Aの放出器電流を10%負荷サイクルとして用いることを可能にするように抽出電圧を構成して、100mA及び100%負荷サイクルとして動作しているときに発生される線束と等価のX線束を発生することができる。
【0061】
このように、電子入射器は、イメージング・システムの特定のビューについて焦点スポット寸法、焦点スポット品質、電子ビーム強度及び/又は位置を保ちつつ高電流において電子入射器を動作させる負荷サイクル変調を用いる。加えて、撮像時に電子入射器を高電圧構成から低電圧構成に切り換えるときに電子ビームの負荷サイクルを適応調整すると、電子ビームの信号対雑音比が保存される。さらに、画像再構成時に所定の電子ビーム電流の値を引き続き用いて電子入射器の電圧構成の変化に対処し、変調された電子ビームを用いて堅牢で高品質の画像を形成することができる。
【0062】
このように、以上に開示されるシステム及び方法は、PWMを用いた電子ビーム電流、X線束及び焦点スポット寸法の生成の高速制御を組み合わせることにより電子ビーム・システムの電流変調範囲を大幅に拡張する。加えて、電子ビームの負荷サイクル変調は、電子ビーム・システムをマイクロ秒強度切り換え、並びに広範囲の変調mA及びエネルギと共に多数のモードにおいて動作させて、線量制御を最適化しつつ高品質撮像を達成することを可能にする。
【0063】
本発明のシステムの実施形態の各例はCTシステムの電子入射器に関して記載されているが、ウェーネルト円筒又は電界電子放出器を用いたX線システム及び電子銃アセンブリのような他の任意の適当な形式の撮像装置における請求される電子ビーム・システムの利用も思量される。
【0064】
本書では発明の幾つかの特徴のみを図示して説明したが、当業者には多くの改変及び変形が想到されよう。従って、特許請求の範囲は、発明の要旨に含まれるような全ての改変及び変形を網羅するものと理解されたい。
【符号の説明】
【0065】
100:CTシステム
102:ガントリ
104:放射線源
106:X線放射線
108:検出器アレイ
200:イメージング・システム
202:検出器素子
204:対象
206:回転中心
208:制御機構
210:X線制御器
212:ガントリ・モータ制御器
214:データ取得システム
216:計算装置
218:記憶装置
220:表示器
222:コンソール
224:コンベヤ・システム/テーブル・モータ制御器
226:コンベヤ・システム/テーブル
228:画像再構成器
300:X線管
302:入射器
304:真空壁
306:陽極/ターゲット
308:管外被
310:入射器壁
312:放出器
314:電子ビーム
316:電圧源
318:熱イオン型電子供給源
320:加熱用電子ビーム
322:X線
324:集束電極
326:抽出電極
328:バイアス電圧電源
330:電場
332:磁気アセンブリ
334:ビーム制御ユニット
400:イメージング・システムの特定のビューに対応するPWM波形の一例のグラフ図
402:PWM波形
404:P_low(低mA値の百分率)
406:等価mA
502:PWM発生器
504:クロック回路
506:切り換えサブシステム
508:処理サブシステム
510:メモリ
600:電子ビーム・システムを動作させる方法の一例を示す流れ図
700:異なる電流構成での電子入射器の多数の動作モードを示すグラフ図
702:高電流構成を示す領域
704:低電流構成を示す領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージング・システムのX線管において電子ビームを発生するステップと、
前記イメージング・システムの特定のビューに対応する電流構成を識別するステップと、
該識別された電流構成が所定の範囲内にあるときには、パルス幅変調を用いて前記イメージング・システムの前記特定のビューについて前記電子ビームの負荷サイクルを変調するステップと、
前記変調された電子ビームをターゲットへ向けて集束させるステップと
を備えた方法。
【請求項2】
前記イメージング・システムの前記特定のビューについて前記電子ビームの前記負荷サイクルを変調するステップは、少なくとも所定のX線束を発生するように前記負荷サイクルを適応調整することを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定のX線束、所定の焦点スポット寸法、所定の焦点スポット位置、又はこれらの組み合わせを生成するための前記X線管に対応する動作設定を決定するステップをさらに含んでおり、該動作設定は、パルス幅、負荷サイクル、周波数、磁石電流、バイアス電圧、抽出電圧、又はこれらの組み合わせを含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
X線管(300)用の電子ビーム・システムであって、
電子ビームを発生する放出器(312)と、
該放出器(312)に関して正のバイアス電圧又は負のバイアス電圧に保たれる少なくとも一つの電極(326)であって、前記電子ビームの強度を制御する少なくとも一つの電極(326)と、
該少なくとも一つの電極(326)に結合されている制御ユニット(334)であって、
前記X線管(300)の特定のビューに対応する電流構成を識別して、
該識別された電流構成が所定の範囲内にあるときには、パルス幅変調を用いて前記X線管(300)の前記特定のビューについて前記電子ビームの負荷サイクルを変調する制御ユニット(334)と
を備えた電子ビーム・システム。
【請求項5】
前記制御ユニット(334)は、少なくとも所定のX線束を発生するように前記X線管(300)の前記特定のビューについて前記電子ビームの前記負荷サイクルを変化させる、請求項4に記載の電子ビーム・システム。
【請求項6】
前記放出器(312)は、所定の電流値を有する電子ビームを発生するように構成されている、請求項4に記載の電子ビーム・システム。
【請求項7】
前記制御ユニット(334)は、前記識別された電流構成が前記所定の範囲の外にあるときには前記X線管(300)の前記特定のビューに対応する電子ビーム電流を変調するために連続式集束変調を選択する、請求項4に記載の電子ビーム・システム。
【請求項8】
前記放出器(312)の近傍に配設された少なくとも一つの集束電極(324)をさらに含んでおり、該少なくとも一つの集束電極(324)は前記電子ビームを集束させ、前記少なくとも一つの電極(326)は抽出電極である、請求項4に記載の電子ビーム・システム。
【請求項9】
電子ビーム・システムと、
制御ユニット(334)と、
電子ビームにより衝突されるとX線を発生するターゲットと
を備えたX線管(300)であって、前記電子ビーム・システムは、
電子ビームを発生する放出器(312)と、
前記電子ビームの強度を制御する少なくとも一つの電極(326)であって、前記放出器(312)に関して正のバイアス電圧又は負のバイアス電圧に保たれる少なくとも一つの電極(326)と
を含んでおり、前記制御ユニット(334)は、前記少なくとも一つの電極(326)に結合されており、
当該X線管(300)の特定のビューに対応する電流構成を識別して、
該識別された電流構成が所定の範囲内にあるときには、パルス幅変調を用いて当該X線管(300)の前記特定のビューについて前記電子ビームの負荷サイクルを変調する、
X線管(300)。
【請求項10】
ガントリ(102)と、
X線管(300)と、
対象からの減弱後の電子ビームを検出する1又は複数の検出器素子(202)と
を備えた計算機式断層写真法システム(100)であって、前記X線管(300)は、
電子ビーム・システムと、
制御ユニット(334)と、
電子ビームにより衝突されるとX線を発生するターゲット(306)と
を含んでおり、前記電子ビーム・システムは、
電子ビームを発生する放出器(312)と、
前記電子ビームの強度を制御する少なくとも一つの電極(326)であって、前記放出器(312)に関して正のバイアス電圧又は負のバイアス電圧に保たれる少なくとも一つの電極(326)と
を含んでおり、前記制御ユニット(334)は、前記少なくとも一つの電極(326)に結合されており、
当該計算機式断層写真法システムの特定のビューに対応する電流構成を識別して、
該識別された電流構成が所定の範囲内にあるときには、パルス幅変調を用いて当該計算機式断層写真法システムの前記特定のビューについて前記電子ビームの負荷サイクルを変調する、
計算機式断層写真法システム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−79695(P2012−79695A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213604(P2011−213604)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】