説明

電子ビーム測長装置及び測長方法

【課題】測定対象の汚染を適切に防ぐことができ、また、測長処理にかかる時間を短縮することができる電子ビーム測長装置及び測長方法を提供する。
【解決手段】電子ビームを発生する電子銃16と、電子ビームを偏向する偏向器26と、測長対象12を載置可能なステージ14部と、電子ビームに起因して飛散する電子を検出する検出器36と、測長対象内の所定の測長部分が存在すべき設計位置を特定する設計位置情報を記憶する記憶部50と、設計位置情報に基づいて、偏向器26により所定の測長部分が存在すべき設計位置に電子ビームが照射されるように電子ビームを走査し、電子ビームが走査されている際に、検出器36により逐次検出される電子の変化状況に基づいて、測長部分の長さを測る測長制御部58とを有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームを用いて、測長対象内の所定の部分を測長する電子ビーム測長装置及び測長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、従来、所定の測長対象を光学顕微鏡によって観測し、観測像に基づいて、測長対象内の所定の部分の長さを測長する光学式測長装置が知られている。この光学式測長装置において、例えば、GMR(Giant Magneto Resistive:巨大磁気抵抗効果)ヘッド素子を測長対象とする場合がある。
【0003】
図1は、GMRヘッド素子の一例の概略構成図である。GMRヘッド素子は、図1に示すように、磁気記録媒体に情報を記録する書き込み用磁極200と、磁気記録媒体に記録された情報を読み取る読み取りセンサ206と、上部シールド層202と、下部シールド層204とを有する。GMRヘッド素子を測長対象とする場合には、書き込み用磁極200の幅の長さや、読み取りセンサ206の幅の長さや、書き込み用磁極200と読み取りセンサ206との相対位置に関する長さ等が計測される。
【0004】
近年、GMRヘッド素子における磁極等が微細化されており、光学式測長装置では、測長できないようになってきている。そこで、電子ビームを利用して測長を行う電子ビーム測長装置が注目されている。
【0005】
図2は、従来の電子ビーム測長装置におけるファインアライメント、測長及びフォーカス解析を説明する図である。ここで、ファインアライメントとは、電子ビームが所定の測長対象に適切に照射されるように調整することをいう。
【0006】
従来の電子ビーム測長装置においては、図2(a)に示すように、測長対象に対して、予め設定されている複数位置(図では、525の位置)のそれぞれにおいて、複数回(図では64回)ずつ電子ビームを走査させ、この際に検出される2次電子の像や、一の位置において電子ビームを走査させることにより検出される2次電子量及び反射電子量の変化状況、いわゆるラインプロファイルに基づいて、ファインアライメントや所定の部分の測長を行っている。
【0007】
また、従来の電子ビーム測長装置においては、図2(b)に示すように、測長対象に対するフォーカス位置を複数(図では、4回)調整させ、調整したそれぞれの測長対象に対するフォーカス位置において、測長対象に対して予め設定されている複数位置(図では、525の位置)で、複数回(図では64回)ずつ電子ビームを走査させ、各測長対象に対するフォーカス位置において検出される各2次電子像のコントラストに基づいて、フォーカスを解析している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子ビーム測長装置にたいしては、測長対象の所定の部分を高精度且つ迅速に測長することが要請されている。また、電子ビームが測長対象に照射されると測長対象を汚してしまう恐れがあり、測長対象にできるだけ汚れが発生しないようにすることが要請されている。そこで、本発明は、上記の課題を解決することのできる電子ビーム測長装置及び測長方法を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の形態に係る電子ビーム測長装置は、電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する電子ビーム測長装置であって、電子ビームを発生する電子銃と、電子ビームを偏向する偏向部と、測長対象を載置可能な測長対象保持部と、電子ビームに起因して飛散する電子を検出する検出器と、測長対象内の所定の測長部分が存在すべき設計位置を特定する設計位置情報を記憶する記憶部と、設計位置情報に基づいて、偏向部により前記所定の測長部分が存在すべき設計位置に電子ビームが照射されるように電子ビームを走査する測長走査制御部と、走査制御部により電子ビームが走査されている際に、検出器により逐次検出される電子の変化状況に基づいて、測長部分の長さを測る測長部とを有することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第2の形態に係る電子ビーム測長装置は、電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する電子ビーム測長装置であって、電子ビームを発生する電子銃と、電子ビームを偏向する偏向部と、測長対象を載置可能な測長対象保持部と、電子ビームに起因して飛散する電子を検出する検出器と、測長対象内の所定の部分が存在すべき設計位置に関する設計位置情報を記憶する記憶部と、設計位置情報に基づいて、所定の部分が存在すべき設計位置の少なくとも2ヶ所以上において電子ビームが照射されるように電子ビームを走査するアライメント走査制御部と、アライメント走査制御部により電子ビームが走査された際に検出部から検出される電子の変化状況に基づいて、偏向部により測長対象に対する電子ビームの走査位置、又は、走査方向の少なくとも一方を調整するアライメント部と、偏向部により所定の測長部分に電子ビームが照射されるように電子ビームを走査する測長走査制御部と、測長走査制御部により電子ビームが走査されている際に、検出器により逐次検出される電子の変化状況に基づいて、測長部分の長さを測る測長部とを有することを特徴とする。
【0011】
測長対象は、部分の中に、同一直線上に並ぶ直線部分を有し、アライメント走査制御部は、直線部分に略垂直に電子ビームを2カ所以上走査し、アライメント部は、直線部分に略平行な方向に電子ビームが走査されるように偏向部を調整し、測長走査制御部は、調整された偏向部により所定の測長部分に電子ビームが照射されるように前記電子ビームを走査するようにしてもよい。記憶部は、設計位置情報として、直線部分と測長部分との直線部分に略垂直な方向についての相対位置を記憶し、測長走査制御部は、設計位置情報に基づいて、電子ビームを走査するようにしてもよい。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第3の形態に係る電子ビーム測長装置は、電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する電子ビーム測長装置であって、電子ビームを発生する電子銃と、電子ビームを所定の焦点位置に結ぶ電子レンズと、電子ビームを偏向する偏向部と、測長対象を載置可能な測長対象保持部と、電子ビームに起因して飛散する電子を検出する検出器と、測長対象内の所定の部分が存在すべき設計位置に関する設計位置情報を記憶する記憶部と、設計位置情報に基づいて、偏向部により電子ビームを走査する焦点検出走査制御部と、測長対象の位置と電子レンズの焦点位置との相対位置を複数調整し、相対位置のそれぞれにおいて、焦点検出走査制御部により電子ビームを走査させることにより検出器から逐次検出される電子の変化状況に基づいて、電子レンズの焦点位置を測長対象に合わせる合焦制御部と、電子レンズの焦点位置を測長対象に合わせた後において、測長対象の所定の測長部分に電子ビームが照射されるように電子ビームを走査する測長走査制御部と、測長走査制御部により電子ビームが走査されている際に、検出器により逐次検出される電子の変化状況に基づいて、測長部分の長さを測定する測長部とを有することを特徴とする。
【0013】
測長対象保持部は、測長対象を移動することができ、合焦制御部は、測長対象保持部を電子レンズの光軸と平行な方向に移動させることにより電子レンズの焦点位置を測長対象に合わせるようにしてもよい。電子レンズは、焦点位置を調整可能であり合焦制御部は、電子レンズの焦点位置を移動させることにより電子レンズの焦点位置を測長対象に合わせることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第4の形態に係る測長方法は、電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する測長方法であって、測長対象内の所定の測長部分が存在すべき設計位置を特定する設計位置情報に基づいて、所定の測長部分が存在すべき設計位置に前記電子ビームが照射されるように電子ビームを走査する測長走査ステップと、測長走査テップで電子ビームが走査されている際に、逐次検出される電子の変化状況に基づいて、測長部分の長さを測る測長ステップとを有することを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の第5の形態に係る測長方法は、電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する測長方法であって、測長対象内の所定の部分が存在すべき設計位置を特定する設計位置情報に基づいて、所定の部分が存在すべき設計位置の少なくとも2ヶ所以上において電子ビームが照射されるように電子ビームを走査するアライメント走査ステップと、アライメント走査ステップで電子ビームが走査された際に検出される電子の変化状況に基づいて、測長対象に対する電子ビームの走査状況を調整するアライメントステップと、所定の測長部分に電子ビームが照射されるように電子ビームを走査する測長走査ステップと、測長走査ステップで電子ビームが走査されている際に、逐次検出される電子の変化状況に基づいて、測長部分の長さを測る測長ステップとを有することを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の第6の形態に係る測長方法は、電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する測長方法であって、電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する測長方法であって、測長対象の位置と電子レンズの焦点位置との相対位置を変化させつつ、相対位置のそれぞれにおいて、測長対象内の所定の部分が存在すべき設計位置に関する設計位置情報に基づいて、電子ビームを走査する焦点検出走査ステップと、焦点検出ステップで電子ビームが走査させることにより逐次検出される前記電子の変化状況に基づいて、電子レンズの焦点位置を測長対象に合わせる合焦ステップと、合焦ステップで、電子レンズの焦点位置を測長対象に合わせた後において、測長対象の所定の測長部分に電子ビームが照射されるように電子ビームを走査する測長走査ステップと、測長走査ステップで電子ビームが走査されている際に、逐次検出される電子の変化状況に基づいて、測長部分の長さを測定する測長ステップとを有することを特徴とする。なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションも又発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】GMRヘッド素子の一例の概略構成図である。
【図2】従来の電子ビーム測長装置におけるファインアライメント、測長及びフォーカス解析を説明する図である。
【図3】本発明の1実施形態に係る電子ビーム測長装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の1実施形態に係る電子ビーム測長装置における動作を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の1実施形態に係る電子ビーム測長装置におけるファインアライメント、測長及びフォーカス解析を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。図1は、本発明の第1実施形態に係る電子ビーム測長装置の構成を示す図である。本電子ビーム測長装置は、例えば、測長対象の一例としてのGMRヘッド素子の所定の部分を測長する電子ビーム測長装置である。なお、図中に示すようにX、Y、及びZ軸をとるものとする。
【0019】
ここで、測長対象としては、例えば、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large‐Scale Integrated circuit)のような能動素子から成る半導体部品のみならず、受動素子、各種センサー等の部品であってもよく、更に、これら部品を結合して一つのパッケージに収めた部品や、これら部品をプリント基板に装着して所定の機能を実現したブレッドボード等の部品であってもよい。また、GMRヘッド素子のように磁界によって破損する恐れのある部品であってもよい。
【0020】
電子ビーム測長装置100は、電子ビーム鏡筒102と、真空チャンバ104と、アンプ38と、アナログ・デジタル変換器(A/D変換器)40と、記憶部50と、制御部52と、分析電圧印加部42と、受付部70と、キーボード72と、マウス74と、表示装置76とを有する。電子ビーム鏡筒102は、電子銃16と、電子レンズ18と、偏向板20と、チョッピングアパーチャ22と、電子レンズ24と、偏向部の一例としての偏向器26と、非点補正レンズ28と、対物レンズ30と、エネルギーフィルタ34と、検出器36とを有する。ここで、電子レンズ18と、偏向板20と、電子レンズ24と、偏向器26と、非点補正レンズ28と、レンズ30とのそれぞれは、磁界又は電界のいずれを利用するものであってもよい。本実施形態では、GMRヘッド素子のような磁界によって破損する部品を測長対象としているので、レンズ30と、電子レンズ18と、偏向板20と、電子レンズ24と、偏向器26と、非点補正レンズ28とのそれぞれは、電界を利用するものが好ましい。
【0021】
真空チャンバ104は、測長対象保持部の一例としてのステージ14と、光学顕微鏡48とを有する。ステージ14は、測長対象12を着脱可能に保持する。ステージ14は、真空チャンバ104内においてX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動できるようになっている。本実施形態では、ステージ14は、測長対象12を複数有する試料基板を着脱可能に保持する。ここで、試料基板とは、本実施形態では、複数の測長対象12が形成されたウェハから切り出された、複数の測長対象12を有するいわゆるバー(BAR)である。光学顕微鏡48は、観察視野内の像を取り込んで制御部52に入力する。本実施形態では、光学顕微鏡48は、グローバルアライメントを行う際において、観察視野内の像を取り込んで制御部52に入力する。
【0022】
電子ビーム測長装置において、電子銃16から電子ビームEBが照射される。電子銃16から照射された電子ビームEBは、電子レンズ18により所定の調整が行われ、成形アパーチャ22が有する開口により所定の形状に成形される。
【0023】
偏向器26は、電子ビームEBを偏向して、当該電子ビームが照射される位置を変更する。非点補正レンズ28は、電子ビームEBに発生する非点収差を補正する。電子ビームEBが測長対象12又は基準基板13に照射されることにより発生する2次電子は、エネルギーフィルタ34を介して検出器36により逐次検出される。検出器36は、検出した2次電子の量(2次電子量)をアンプ38に入力する。
【0024】
アンプ38は、入力された2次電子量を増幅してA/D変換器40に入力する。A/D変換器40は、アンプ38から入力された2次電子量をデジタル信号に変換して、制御部52に入力する。分析電圧印加部42は、制御部52の制御に基づいて、エネルギーフィルタ34に分析電圧を印加する。
【0025】
記憶部50は、電子ビームの走査における時間と長さとの対応関係、例えば、走査における時間から長さを検出するためのを記憶する。また、記憶部50は、測長対象12内の部分の設計位置を特定する設計位置情報を記憶する。本実施形態では、記憶部50は、設計対象12内に形成された書き込み用磁極、読み取りセンサ、上部シールド層、及び下部シールド層の設計位置を特定する設計位置情報、具体的には、例えば、書き込み用磁極の幅や、読み取りセンサの幅や、書き込み用磁極と読み取りセンサとの相対位置、下部シールド層と書き込み用磁極との下部シールド層に垂直な方向の相対位置等を記憶する。
【0026】
制御部52は、アライメント走査制御部及びアライメント部の一例としてのアライメント制御部54と、焦点検出走査制御部及び合焦制御部の一例としてのフォーカス制御部56と、測長走査制御部及び測長部の一例としての測長制御部58と、表示制御部60と、ステージ制御部62とを有する。アライメント制御部54は、光学顕微鏡48から入力された像に基づいて、測長対象12を電子銃16による電子ビームを照射可能な範囲に移動させることができるように、各種調整、すなわち、グローバルアライメントを行う。本実施形態では、バーにおける各測長対象12の位置をステージ14の座標系に合わせる調整を行う。
【0027】
また、アライメント制御部54は、その後、電子レンズ系18、24、30のフォーカス調整が行われた後に、ローカルアライメント(ファインアライメント)を行う。すなわち、アライメント制御部54は、設計位置情報に基づいて、所定の部分が存在すべき設計位置の少なくとも2ヶ所以上において電子ビームが照射されるように電子ビームを走査する。本実施形態では、アライメント制御部54は、測長対象12内の一直線上に並ぶ直線部分の一例としての下部シールド層の2ヵ所にほぼ垂直に電子ビームを照射する。
【0028】
また、アライメント制御部54は、検出器36から検出される2次電子の変化状況に基づいて、所定の基準に対するX軸方向のずれ量、Y軸方向のずれ量、回転量等を検出し、当該ずれ量等に基づいて、電子ビームの走査状況、例えば、走査方向、走査位置等の調整を行う。本実施形態では、アライメント制御部54は、2ヵ所において電子ビームを照射することにより検出器36から検出される2次電子の変化状況に基づいて、下部シールド層の2点を検出し、当該2点を結ぶ線と電子ビームの走査方向が平行になるように、偏向器26による偏向の調整を行う。
【0029】
フォーカス制御部56は、グローバルアライメントした後に、ステージ制御部62により、電子ビームを照射可能な所定の位置にくるように測長対象12を移動させる。フォーカス制御部56は、ステージ制御部62によりステージ14の高さを変えることにより、測長対象12の位置と電子レンズ系18、24、30の焦点位置との相対位置をかえる。また、フォーカス制御部58は、ステージ14のそれぞれの高さ位置において、設計位置情報に基づいて電子ビームを走査させることにより検出器36から逐次検出される2次電子の変化状況を検出する。本実施形態では、フォーカス制御部56は、設計位置情報に基づいて、例えば書き込み用磁極や、下部シールド層等の部分の1ヵ所又は数ヵ所に電子ビームが照射されるように走査する。ここで、長さが比較的長い部分に、設計位置に基づいて電子ビームを照射するようにすると、ほとんどの場合において当該部分に電子ビームが照射されることになるので好ましい。
【0030】
また、フォーカス制御部56は、逐次検出された複数の電子の変化状況に基づいて、電子レンズ系18、24、30の焦点が測長対象12に合っている際における測長対象12のZ軸における位置を検出する。本実施形態では、複数の2次電子量の変化状況の中で、2次電子の変化のたち上がりが最も鋭い2次電子量の変化状況を検出した場合における測長対象12の位置をレンズ系18、24、30の焦点が合っている位置として検出する。また、フォーカス制御部56は、電子レンズ系18、24、30の焦点が測定対象12に合うように、ステージ制御部62に測定対象12のZ軸方向の高さを調整させる。
【0031】
測長制御部58は、ローカルアライメント終了後に、設計位置情報に基づいて、偏向器26により測長対象12の測長部分が存在すべき設計位置又は設計位置の近傍の少なくとも一方に電子ビームが照射されるように電子ビームを走査する。本実施形態においては、測長制御部58は、ローカルアライメントにより検出した下部シールド層の2点を結ぶ直線から記憶部50に記憶された下部シールド層と書き込み磁極との下部シールド層に垂直な方向の相対位置だけずれた位置に電子ビームが照射されるように電子ビームを走査する。これによって、適切に書き込み磁極に電子ビームを照射することができる。
【0032】
また、測長制御部58は、電子ビームを走査している際に、検出器36により逐次検出される電子の変化状況に基づいて、測長対象12の所定の測長部分に電子ビームが照射されている時間を検出し、記憶部50に記憶されている対応関係に基づいて、当該検出した時間に対応する長さを検出する。本実施形態では、これによって、書き込み磁極における下部シールド層と平行な方向の幅を検出することができる。
【0033】
表示制御部60は、測長制御部58により検出された測長対象の部分の長さを表示装置76に表示させる。ステージ制御部62は、ステージ14をX−Y変面内において移動させる。例えば、ステージ制御部62は、ステージ14に載置された測長対象12が光学顕微鏡48の観察視野内に位置するようにステージ14を移動させる。また、ステージ制御部62は、測長対象12が電子ビームが照射されるようにステージ14を移動させる。また、ステージ制御部62は、ステージ14をZ軸方向に移動させる。受付部70は、キーボード72またはマウス74によるユーザからの指示を受け付ける。
【0034】
図4は、本発明の1実施形態に係る電子ビーム測長装置における動作を説明するフローチャートである。電子ビーム測長装置において、ステージ制御部62が、ステージ14に載置された測長対象12が光学顕微鏡48の観察視野内に位置するようにステージ14を移動させる。次いで、光学顕微鏡48が観察視野内の測長対象12の像を取り込んで制御部52に入力する。アライメント制御部54は、光学顕微鏡48から入力された測長対象12の像に基づいて、測長対象12を電子銃16による電子ビームを照射可能な範囲に移動させることができるように、グローバルアライメントを行う(ステップS100)。
【0035】
次いで、フォーカス制御部56が、ステージ制御部62により、電子ビームを照射可能な所定の位置にくるように測長対象12を移動させ、ステージ制御部62によりステージ14の高さを変えることにより、測長対象12の位置と、電子レンズ系18、24、30の焦点位置との相対位置をかえる。これとともに、フォーカス制御部58は、ステージ14のそれぞれの高さ位置において、設計位置情報に基づいて、例えば書き込み用磁極や、下部シールド層等の1ヵ所又は数ヵ所に電子ビームが照射されるように走査する(ステップS102)。
【0036】
そして、フォーカス制御部56は、逐次検出された複数の電子の変化状況に基づいて、電子レンズ系18、24、30の焦点が測長対象12に合っている際における測長対象12のZ軸における位置を検出し、ステージ制御部62により測定対象12のZ軸方向の高さを当該位置に調整させる(ステップS104)。
【0037】
次いで、アライメント制御部54が、設計位置情報に基づいて、測長対象12内の一直線上に並ぶ直線部分の一例としての下部シールド層の2ヵ所にほぼ垂直に電子ビームを走査し(ステップS106)、2ヵ所において電子ビームを照射することにより検出器36から検出される2次電子の変化状況に基づいて、下部シールド層の2点を検出し、当該2点を結ぶ線と電子ビームの走査方向が平行になるように、偏向器26による偏向の調整を行う(ステップS108)。
【0038】
次いで、測長制御部58は、ローカルアライメントにより検出した下部シールド層の2点を結ぶ直線から、記憶部50に記憶された下部シールド層と書き込み磁極との下部シールド層に垂直な方向の相対位置だけずれた位置に電子ビームが照射されるように電子ビームを走査する(ステップS110)。そして、電子ビームを走査している際に、検出器36により逐次検出される電子の変化状況に基づいて、測長対象12の書き込み磁極に電子ビームが照射されている時間を検出し、記憶部50に記憶されている対応関係に基づいて、当該検出した時間に対応する長さを検出する(ステップS112)。
【0039】
図5は、本発明の1実施形態に係る電子ビーム測長装置におけるファインアライメント、測長及びフォーカス解析を説明する図である。本実施形態に係る電子ビーム測長装置によると、図5(a)に示すように、ファインアライメント及び測長を行う場合においては、例えば、3ヵ所において電子ビームを走査することにより、所定の測長部分の長さを検出することができる。したがって、従来に比して、測長対象12に照射する電子ビームの量を抑えることができ、測長対象が汚染されることを適切に防ぐことができる。また、測長に係る時間を抑えることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る電子ビーム測長装置によると、図5(b)に示すように、フォーカスを解析する場合には、測長対象12に対する電子レンズ系18、24、30の焦点位置を変えたそれぞれにおいて、測長対象12内の所定の部分の1ヵ所に電子ビームを走査することにより、検出電子レンズ系18、24、30の焦点位置を測長対象12の位置に合わせることができる。したがって、従来に比して、測長対象12に照射する電子ビームの量を抑えることができ、測長対象12が汚染されることを適切に防ぐことができる。また、フォーカス解析に係る時間を抑えることができる。
【0041】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記の実施形態では、ステージ14をZ軸方向に動かして測長対象12の位置と電子レンズ系18、24、30等の焦点位置との相対位置を調整するようにしていたが、本発明はこれ限られず、電子レンズ系18、24、30自体のレンズ特性を調整して、測長対象の位置と、電子レンズ系18、24、30等の焦点位置との相対位置を調整するようにしてもよい。また、上記実施形態では、測長対象12の直線部分の2ヵ所を通過するように略平行に電子ビームを走査するようにして、電子ビームの測長方向を調整するようにしていたが、本発明はこれに限られず、電子ビームを測長対象12の所定の部分の2ヵ所を通過するように走査するようにしてもよい。
【0042】
また、上記の実施形態では、検出器36で測長対象12に電子ビームが照射されることにより発生する2次電子を検出し、当該2次電子量の変化状況に基づいてようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、検出器36を、測長対象12によって電子ビームが反射した反射電子を検出するようにし、当該反射電子量の変化状況に基づいて、測長、アライメント及びフォーカスの調整を行うようにしてもよく、要は、電子ビームに起因して飛散する電子を検出するようにし、当該電子量の変化状況に基づいて、測長、アライメント及びフォーカスの調整を行えばよい。
【0043】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0044】
上記説明から明らかなように、本発明によれば、測定対象が汚染されることを適切に防ぐことができる。また、本発明によれば、処理時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0045】
12 測長対象、14 ステージ、16 電子銃、18 電子レンズ、20 偏向板、22 成形アパーチャ、24 電子レンズ、26 偏向器、28 非点補正レンズ、30 対物レンズ、34 エネルギーフィルタ、36 検出器、38 アンプ、40 A/D変換器、42 分析電圧印加部、44 変位計、46 ハーフミラー、48 光学顕微鏡、50 記憶部、52 制御部、54 アライメント制御部、56 フォーカス制御部、58 測長制御部、60 表示制御部、62 ステージ制御部、70 受付部、72 キーボード、74 マウス、76 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する電子ビーム測長装置であって、
前記電子ビームを発生する電子銃と、
前記電子ビームを偏向する偏向部と、
前記測長対象を載置可能な測長対象保持部と、
前記電子ビームに起因して飛散する電子を検出する検出器と、
前記測長対象内の所定の測長部分が存在すべき設計位置を特定する設計位置情報を記憶する記憶部と、
前記設計位置情報に基づいて、前記偏向部により前記所定の測長部分が存在すべき前記設計位置に前記電子ビームが照射されるように前記電子ビームを走査する測長走査制御部と、
前記走査制御部により前記電子ビームが走査されている際に、前記検出器により逐次検出される電子の変化状況に基づいて、前記測長部分の長さを測る測長部と
を有することを特徴とする電子ビーム測長装置。
【請求項2】
電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する電子ビーム測長装置であって、
前記電子ビームを発生する電子銃と、
前記電子ビームを偏向する偏向部と、
前記測長対象を載置可能な測長対象保持部と、
前記電子ビームに起因して飛散する電子を検出する検出器と、
前記測長対象内の所定の部分が存在すべき設計位置に関する設計位置情報を記憶する記憶部と、
前記設計位置情報に基づいて、前記所定の部分が存在すべき前記設計位置の少なくとも2ヶ所以上において前記電子ビームが照射されるように前記電子ビームを走査するアライメント走査制御部と、
前記アライメント走査制御部により前記電子ビームが走査された際に前記検出部から検出される電子の変化状況に基づいて、前記偏向部により前記測長対象に対する前記電子ビームの走査状況を調整するアライメント部と、
前記偏向部により前記所定の前記測長部分に前記電子ビームが照射されるように前記電子ビームを走査する測長走査制御部と、
前記測長走査制御部により前記電子ビームが走査されている際に、前記検出器により逐次検出される電子の変化状況に基づいて、前記測長部分の長さを測る測長部と
を有することを特徴とする電子ビーム測長装置。
【請求項3】
前記測長対象は、前記部分の中に、同一直線上に並ぶ直線部分を有し、
前記アライメント走査制御部は、前記直線部分に略垂直に電子ビームが2カ所以上照射されるように走査し、
前記アライメント部は、前記直線部分に略平行な方向に前記電子ビームが走査されるように前記偏向部を調整し、
前記測長走査制御部は、調整された前記偏向部により前記所定の前記測長部分に前記電子ビームが照射されるように前記電子ビームを走査する
ことを特徴とする請求項2に記載の電子ビーム測長装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記設計位置情報として、前記直線部分と前記測長部分との前記直線部分に略垂直な方向についての相対位置を記憶し、
前記測長走査制御部は、前記設計位置情報に基づいて、前記電子ビームを走査する
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ビーム測長装置。
【請求項5】
電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する電子ビーム測長装置であって、
前記電子ビームを発生する電子銃と、
前記電子ビームを所定の焦点位置に結ぶ電子レンズと、
前記電子ビームを偏向する偏向部と、
前記測長対象を載置可能な測長対象保持部と、
前記電子ビームに起因して飛散する電子を検出する検出器と、
前記測長対象内の所定の部分が存在すべき設計位置に関する設計位置情報を記憶する記憶部と、
前記設計位置情報に基づいて、前記偏向部により前記電子ビームを走査する焦点検出走査制御部と、
前記測長対象の位置と前記電子レンズの焦点位置との相対位置を変化させつつ、前記相対位置のそれぞれにおいて、前記焦点検出走査制御部により前記電子ビームを走査させることにより前記検出器から逐次検出される前記電子の変化状況に基づいて、前記電子レンズの焦点位置を前記測長対象に合わせる合焦制御部と、
前記電子レンズの焦点位置を前記測長対象に合わせた後において、前記測長対象の所定の測長部分に前記電子ビームが照射されるように前記電子ビームを走査する測長走査制御部と、
前記測長走査制御部により前記電子ビームが走査されている際に、前記検出器により逐次検出される電子の変化状況に基づいて、前記測長部分の長さを測定する測長部と
を有することを特徴とする電子ビーム測長装置。
【請求項6】
前記測長対象保持部は、前記測長対象を移動することができ、
前記合焦制御部は、前記測長対象保持部を前記電子レンズの光軸と平行な方向に移動させることにより前記電子レンズの前記焦点位置を前記測長対象に合わせる
ことを特徴とする請求項5に記載の電子ビーム測長装置。
【請求項7】
前記電子レンズは、前記焦点位置を調整可能であり
前記合焦制御部は、前記電子レンズの前記焦点位置を移動させることにより前記電子レンズの前記焦点位置を前記測長対象に合わせる
ことを特徴とする請求項5に記載の電子ビーム測長装置。
【請求項8】
電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する測長方法であって、
前記測長対象内の所定の測長部分が存在すべき設計位置を特定する前記設計位置情報に基づいて、所定の前記測長部分が存在すべき前記設計位置に前記電子ビームが照射されるように前記電子ビームを走査する測長走査ステップと、
前記測長走査テップで前記電子ビームが走査されている際に、逐次検出される電子の変化状況に基づいて、測長部分の長さを測る測長ステップと
を有することを特徴とする測長方法。
【請求項9】
電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する測長方法であって、
前記測長対象内の所定の部分が存在すべき設計位置を特定する前記設計位置情報に基づいて、前記所定の部分が存在すべき前記設計位置の少なくとも2ヶ所以上において前記電子ビームが照射されるように前記電子ビームを走査するアライメント走査ステップと、
前記アライメント走査ステップで前記電子ビームが走査された際に検出される電子の変化状況に基づいて、前記測長対象に対する前記電子ビームの走査状況を調整するアライメントステップと、
前記所定の前記測長部分に前記電子ビームが照射されるように前記電子ビームを走査する測長走査ステップと、
前記測長走査ステップで前記電子ビームが走査されている際に、逐次検出される電子の変化状況に基づいて、前記測長部分の長さを測る測長ステップと
を有することを特徴とする測長方法。
【請求項10】
電子ビームを用いて、測長対象内の所定の測長部分を測長する測長方法であって、
前記測長対象の位置と電子レンズの焦点位置との相対位置を変化させつつ、前記相対位置のそれぞれにおいて、前記測長対象内の所定の部分が存在すべき設計位置に関する設計位置情報に基づいて、前記電子ビームを走査する焦点検出走査ステップと、
前記焦点検出ステップで前記電子ビームが走査させることにより逐次検出される前記電子の変化状況に基づいて、前記電子レンズの焦点位置を前記測長対象に合わせる合焦ステップと、
前記合焦ステップで、前記電子レンズの焦点位置を前記測長対象に合わせた後において、前記測長対象の所定の測長部分に前記電子ビームが照射されるように前記電子ビームを走査する測長走査ステップと、
前記測長走査ステップで前記電子ビームが走査されている際に、逐次検出される電子の変化状況に基づいて、前記測長部分の長さを測定する測長ステップと
を有することを特徴とする測長方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−85419(P2010−85419A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12108(P2010−12108)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【分割の表示】特願2000−123921(P2000−123921)の分割
【原出願日】平成12年4月25日(2000.4.25)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】