説明

電子ペン用帳票

【課題】情報記入欄の裏側に均一な着色領域を形成することによって、電子ペン用帳票を透過した裏側のパターンの影響を排除する電子ペン用帳票を提供する。
【解決手段】少なくとも筆記部及び撮像部を備える電子ペンによって情報が記載される電子ペン用帳票であって、前記情報が記載される面には、少なくとも一部に、電子ペン読み取り専用のドットパターンが印刷され、前記ドットパターンが印刷された面の裏面の、少なくとも一部に、有色インキによってベタ状に印刷された領域が形成された電子ペン用帳票を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペン用帳票に関し、詳しくは、電子ペン用帳票の情報記入欄の裏側に均一な着色領域を形成した電子ペン用帳票に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、申込書、申請書などの各種書類を提出する場合、所定の印刷が施された申込用紙に申込者が筆記具で必要事項を記入して提出していた。
近年では、インターネットで取得した上述の帳票をプリントして、必要事項を記載して郵送で提出するものや、表示された帳票に直接データを入力して送信し、提出するものなど、書類の提出方法の選択肢が広がっている。
【0003】
しかしながら、申込対象者がすべて、上述のようにインターネットによって検索した帳票をプリントして使用したり、検索した帳票に画面上で直接データを入力して送信し、提出できるわけではない。特に、年配者やパーソナルコンピュータに不慣れな者にとっては、キーボードによる入力に対して先ず拒否反応を示す。
その結果、役所や金融機関などでは、結局、従来から行われているような紙の帳票に記載して提出する方法を主流にするか、複数の提出方法を取らざるを得なくなる。
近年、このような対象者に対して、便利な入力システムが提供されている。
それは、スウェーデンの「Anoto社」が開発したシステムで、アノトペンと呼ばれる電子ペン(以下、単に、電子ペンという)と所定のドットパターンが印刷された電子ペン専用用紙を使用するシステムである。
電子ペンは、通常の筆記部と、電子ペン専用用紙の記載面に印刷されたドットパターンを読み取るための撮像部と、Bluetooth,または、USB対応の通信部等を搭載している。
電子ペンは、記載者が電子ペン専用用紙上に電子ペンで文字などを記載すると、ペンの移動に伴って撮像部が電子ペン専用用紙上のドットパターンを読み取り、利用者が記載した文字などの入力データをテキストデータなどで取得する。
この入力データは、例えば、Bluetooth対応の通信ユニットにより、電子ペンから近くのパーソナルコンピュータや携帯電話などの通信端末に送信される。
キーボードを使用することに対して抵抗を感じる対象者でも、電子ペンを使用する前述のシステムは、前述の電子ペンがキーボードの役割を果たすために何の抵抗感を抱くことなく使用することができる。
一方、システムを提供する役所や金融機関などでは、電子ペンを使用したシステムによって送信された入力データは、パーソナルコンピュータなどから送信されたデータと同様に扱えるために、入力された情報の再入力を行う必要がなくなる。
【0004】
このような電子ペンを使用したシステムで、電子ペン専用用紙上の複数回記載する部分に透明な材料で保護層を形成する「電子ペン用帳票」が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−56357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の内容によれば、電子ペン専用用紙の一部に、透明性保護部材を設けることによって繰り返し記載される部分を保護しようというものであるが、本発明の電子ペン用帳票は、情報記入欄の裏側に均一な着色領域を形成することによって、電子ペン用帳票を透過した裏側のパターンの影響を排除する電子ペン用帳票を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の目的を達成するために、本発明の電子ペン用帳票の第一の態様は、少なくとも筆記部及び撮像部を備える電子ペンによって情報が記載される電子ペン用帳票であって、前記情報が記載される面には、少なくとも一部に、電子ペン読み取り専用のドットパターンが印刷され、前記ドットパターンが印刷された面の裏面の、少なくとも一部に、有色インキによってベタ状に印刷された領域が形成されたことを特徴とするものである。
【0008】
また、第二の態様は、第一の態様において、電子ペン読み取り専用のドットパターンは赤外領域では反射率が低いインキによって印刷され、有色インキによってベタ状に印刷された領域は赤外領域で反射率が高いインキによって印刷されたことを特徴とするものである。
【0009】
また、第三の態様は、第一,第二何れかの態様において、有色インキによってベタ状に印刷された領域の裏側は、情報記載欄であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
1)第一の態様のように、少なくとも筆記部及び撮像部を備える電子ペンによって情報が記載される電子ペン用帳票であって、前記情報が記載される面には、少なくとも一部に、電子ペン読み取り専用のドットパターンが印刷され、前記ドットパターンが印刷された面の裏面の、少なくとも一部に、有色インキによってベタ状に印刷された領域が形成されたことによって、機材の厚さを薄くすることができ、嵩張らない、低コストの電子ペン用帳票として利用できる。
2)また、第二の態様のように、第一の態様において、電子ペン読み取り専用のドットパターンは赤外領域では反射率が低いインキによって印刷され、有色インキによってベタ状に印刷された領域は赤外領域で反射率が高いインキによって印刷されたことによって、それぞれ印刷の際に使用するインキ量を低減することができる。
3)また、第三の態様のように、第一,第二何れかの態様において、有色インキによってベタ状に印刷された領域の裏側は、情報記載欄であることによって、情報記載面の裏側に使用するインキ量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の電子ペン用帳票について説明する。
図1は、電子ペンと本発明の電子ペン用帳票の一例について説明するための図,図2は、本発明の電子ペン用帳票の一例について説明するための図,図3は、本発明の電子ペン用帳票の効果の一例について説明するための図,図4は、電子ペンの一例について説明するための図,図5は、電子ペン読み取り専用のドットパターンについて説明するための図,である。
【0012】
図1を参照して、電子ペンと、本発明の電子ペン用帳票の一例について説明する。
この項では、電子ペンを使用した、前述の「Anoto社」のシステムとはどのようなシステムなのか併せて説明する。
電子ペン用帳票2は、電子ペン1によって情報が記載される情報記載欄211、または、情報記載面に、電子ペン読み取り専用のドットパターン2100が印刷された帳票である。
電子ペン用帳票の情報記載面に印刷された前記ドットパターンは、情報記載面全面に印刷されたり、情報記載欄だけに印刷される。
本発明の電子ペン用帳票は、(図2で説明するように)上述の電子ペン用帳票の裏側全面、または、情報記載欄の裏側に相当する部分に、印刷インキでベタ状の領域を形成している。
また、電子ペン用帳票の情報記載面には、帳票の名称、例えば、「申込書」や、注意文言,情報記入欄の項目名,地紋,その他デザインなどが印刷されている。
【0013】
電子ペン1に使用される光源は赤外線領域の光源である場合が多く、電子ペン読み取り専用のドットパターンは赤外領域では反射率が低いインキによって印刷され、ドットパターンが印刷されている面の、注意文言,情報記入欄の項目名,地紋,その他デザインなどは、赤外領域で反射率が高いインキによって印刷される。
【0014】
ここで、図1を一部参照して、電子ペンと電子ペン専用用紙を使用する入力システムについて説明する。
電子ペン1は、通常の筆記部と、電子ペン用帳票2の情報記載面に印刷されたドットパターン2100を読み取るための撮像部(図示せず)と、通信部(図示せず)等を搭載している。
電子ペン1は、記載者が電子ペン用帳票上に電子ペンで文字などを記載すると、ペンの移動に伴って電子ペンに内蔵された撮像部が、ドットパターン2100によって表示されたストローク座標情報(以下、単に、座標データという)を読み取り、通信部が、接続された通信端末(図示せず)に読み取った座標情報を送信する。
通信端末が受信した前記座標情報は、ネット上で接続された電子ペンシステム管理サーバ(図示せず)に送信される。電子ペンシステム管理サーバでテキストデータに変換された前記座標データは、利用者側のサーバや、前記通信端末に返信される。
通信端末内に電子ペンシステム管理サーバ機能が内蔵されている場合は、電子ペンシステム管理サーバ機能によってテキストデータに変換される。
【0015】
先ず、図4を参照して、電子ペン1について説明する。
電子ペン1は、インクカートリッジ108を伴った筆記部106,ドットパターンを読み取るデジタルカメラによる撮像部105,デジタルカメラで読み取られた筆記情報(ドットパターンの座標情報)を記憶する記憶部103,携帯通信端末に座標情報を送信する通信部102,これらの機能を制御する制御部104,電子ペン用の圧力センサ107,図示しないが電源部,で構成され、これらを電子ペン1の筐体101の内部に搭載している。
電子ペン1は、電子ペン専用用紙に印刷されたドットパターン情報を撮像部105で読み取って記憶部103で記憶し、図示しないが、電子ペンのユニークな識別情報などと共に通信部102から携帯通信端末2に送信する。
通信部102は、USB(Universal Serial Bus)対応、または、Bluetooth対応となっている。
また、電子ペン1の筐体101に組み込まれた筆記部106は、単なる筆記具として使用することもできるようになっている。
【0016】
筆記部106は、筆記情報を可視状態で記載部に残す役割の他に、デジタルカメラによる撮像部105と、ドットパターン印刷面との距離を一定にする役割を担っている。
筆記部106が電子ペン筐体101に装着されたときに、インクカートリッジ108側の先端が、電子ペン筐体101に取り付けられた電子ペン用の圧力センサ107に接触するようになっている。
この圧力センサ107は、情報の記載が開始されることを制御部104に伝える機能と、筆圧の強弱を認識する機能を備えている。
また、インクカートリッジ108の残量を確認する場合、または、インクを充填する場合は、例えば、筆記部106を電子ペン筐体101の先端から引き抜いてインクの残量確認、または、インクの充填を行う。
【0017】
図5を参照して、電子ペン用帳票に印刷された電子ペン専用のドットパターンについて説明する。
図に示す縦横の仮想線は、説明し易くするために記載しており、実際には印刷されていない。
電子ペン専用のドットパターンの各ドットは、0.3mm間隔で形成された直角に交わる縦横の仮想線の交点近傍に、それぞれ異なる4方向の何れかに配置され、形成されている。
前述の「Anoto社」のシステムでは、36個のドット(約4mm2の内側に印刷されたドット群)を1単位情報として扱っている。
【0018】
電子ペンで、電子ペン用帳票に文字等を記載すると、ペン先がどの位置をなぞっているか、その近傍に印刷されたドットパターンの座標情報を読み取って、ペン先が移動した単位情報の軌跡を電子ペンの記憶部に記憶するようになっている。
電子ペン用帳票の所定部を電子ペンでマークをすると、電子ペン用帳票に記載した前記座標情報を電子ペンから通信端末の送信するようになっている。
「Anoto社」のシステムでは、一つのアプリケーションには、同一のドットパターンが利用されないように管理される。
【0019】
前述の電子ペンシステム管理サーバについて説明する。
電子ペンシステム管理サーバは、多くの場合、PLSサーバと、ASHサーバに分けられて使用される。
通信端末から送信された座標情報は、まず、PLS(Paper Look−up Service)と呼ばれる電子ペンシステム管理サーバに送信される。
PLSサーバは、受信したドットパターンの座標情報から、使用されているアプリケーションを割り出して、そのアプリケーション支援を行うASH(Application Service Handler)サーバのURL(Uniform Resource Locator)と座標情報を通信端末に送信する。
【0020】
前述の通信端末について説明する。
通信端末は、例えば、キーボードなどの入力手段,インターネットに接続されて入力情報を送受信する送受信手段,ディスプレイなどの表示手段,入力情報や読み込んだ情報を保存する保存手段とを有する携帯電話,PDA(Personal Digital Assistance),パーソナルコンピュータのような装置である。
通信端末は、前述のように、電子ペン1から送信された情報を電子ペンシステム管理サーバに送信し、テキストデータなどに変換された情報として受信し、利用する。
【0021】
図2を参照して、本発明の電子ペン用帳票の一例について説明する。
図2において、a図は、電子ペン用帳票2(「申込書」)の情報記載面(ドットパターン印刷面),b図は、有色インキで全面ベタ状に印刷されたa図の裏面,c図は、情報記載面の裏面領域にだけ有色インキでベタ状に印刷されたa図の裏面,を示している。
図2では、a図の例は、情報記載面21に情報記載欄211が5箇所設けられ、全面にドットパターンが印刷されているが、5箇所の情報記載欄211だけにドットパターンが印刷されてもよい。
【0022】
前述のように、a図の情報記載面21には、全面に赤外線吸収インキでドットパターンが印刷され、5箇所の情報記載欄211の枠の内側には、それ以外のインキで印刷された印刷部は設けられていない。
また、b図に示すa図の裏面22は、白,銀を含む有色のインキで印刷されている。
情報記載面21から赤外領域の光が当てられた時に、電子ペン用帳票の基材(多くの場合、紙)を透過して読み込まれた背後パターンがドットパターンの読み取りに悪影響を及ぼさなけければよいようになっている。
c図の、ベタ状に印刷された領域221についても、b図で説明したと同様、電子ペン用帳票の基材(多くの場合、紙)を透過して読み込まれた背後パターンがドットパターンの読み取りに悪影響を及ぼさなけければよいのである。
【0023】
図3を参照して、本発明の電子ペン用帳票の裏面に印刷されたベタ状パターンの効果の一例について説明する。
図3に示す電子ペン用帳票2は、図2で説明したa図の変形例で、情報記載面の5箇所の情報記載欄211だけにドットパターンが印刷された例である。
電子ペン用帳票2に情報を記載する際に、下敷き3を敷いて情報を記載したとする。
その場合、情報記載欄211以外の部分を見れば判るように、下敷きに形成されている斜線模様は、電子ペン用帳票2の基材を透過して電子ペンの撮像部で撮影されてしまう。
しかしながら、情報記載欄211の裏面が、全面ベタ状パターンで印刷され、赤外波長域の光を反射するようになっていれば下敷きに形成されている斜線模様の影響を受けることがない。
図2のb図に示すベタ状パターンが全面にわたっている場合でも、上述の部分的に形成された場合と同様、容易にその効果を推測することができる。
【0024】
(実施例)
電子ペン用帳票の基材として64gm2の上質紙を使用した。
情報記載面のドットパターンは、赤外領域(波長900nm)に吸収域を有する市販インキ(グレイ)を使用した。
市販されている紫外線硬化型のプロセスインキでグレイ色を作成し、電子ペン用帳票の情報記載面の裏面の一部にベタ状のパターンを、印刷インキの厚さが乾燥状態で2μmになるように印刷した。
上記によって作成した電子ペン用帳票の裏側に新聞紙を敷いて、ドットパターン印刷面に電子ペンによって文字を記載したが、情報記載面の裏面の一部にベタ状のパターンを印刷した部分は、電子ペンで記載した文字通りテキストデータに変換された。
一方、ベタ状のパターンが印刷されていない部分に電子ペンで記載した文字は、一部正しくテキストデータに変換されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
情報記載媒体として紙の両面が使用できず、コスト面で制限がある電子ペン専用用紙に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】電子ペンと本発明の電子ペン用帳票の一例について説明するための図である。
【図2】本発明の電子ペン用帳票の一例について説明するための図である。
【図3】本発明の電子ペン用帳票の裏面に印刷されたベタ状パターンの効果の一例について説明するための図である。
【図4】電子ペンの一例について説明するための図である。
【図5】電子ペン読み取り専用のドットパターンについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0027】
1 電子ペン
2 電子ペン用帳票
3 下敷き
21 情報記載面
22 裏面
101 筐体
102 通信部
103 記憶部
104 制御部
105 撮像部
106 筆記部
107 圧力センサ
108 インクカートリッジ
211 情報記載欄
221 ベタ状に印刷された領域
2100 ドットパターンの一例


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも筆記部及び撮像部を備える電子ペンによって情報が記載される電子ペン用帳票であって、
前記情報が記載される面には、少なくとも一部に、電子ペン読み取り専用のドットパターンが印刷され、
前記ドットパターンが印刷された面の裏面の、少なくとも一部に、有色インキによってベタ状に印刷された領域が形成されたことを特徴とする電子ペン用帳票。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ペン用帳票において、
電子ペン読み取り専用のドットパターンは赤外領域では反射率が低いインキによって印刷され、
有色インキによってベタ状に印刷された領域は、赤外領域で反射率が高いインキによって印刷されたことを特徴とする電子ペン用帳票。
【請求項3】
請求項1〜2何れか一項に記載の電子ペン用帳票において、
有色インキによってベタ状に印刷された領域の裏側は、情報記載欄であることを特徴とする電子ペン用帳票。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−230108(P2007−230108A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55644(P2006−55644)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】