説明

電子ペーパーと、電子ペーパー記録システム及び書き込み装置

【課題】表示面側の凹凸が小さくて画像の視認性が高い電子ペーパーと、この電子ペーパーを備える電子ペーパー記録システム、及び、この電子ペーパーに対する画像の書き込み装置を提供する。
【解決手段】複数の第1の電極を有する第1の基板と、複数の第1の電極の各々に電圧を印加するための配線と、複数の第1の電極の各々と配線との間にそれぞれ設けられた複数の受光素子と、第1の基板と対向して配置されて第2の電極を有する第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に配置された電気泳動表示層と、第1の基板と第2の基板との間に配置されて、第2の基板に入射した光を対応する受光素子へ導く導光部と、を備え、複数の受光素子の各々は、導光部によって導かれた光を感知することによって、複数の第1の電極の各々と配線との間を導通状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパーと、電子ペーパー記録システム及び書き込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。即ち、特許文献1には、TFT(Thin Film Transistor)を用いずに画像を電気的に記録し、無電力で保持できる電子ペーパーが開示されている。
この電子ペーパーは、電子インク層と、この電子インク層の上面側に設けられた表面フィルムと、電子インク層の下面側に設けられた裏面フィルムと、電子インク層と表面フィルムとの間に介装された複数の画素電極と、電子インク層と裏面フィルムとの間に介装された共通電極とを有する。
【0003】
表面フィルムには複数の貫通孔が形成されており、この貫通孔内に複数の画素電極とそれぞれ電気的に接続された複数の上側スルーホール電極が設けられている。また、裏面フィルムには少なくとも1つの貫通孔が形成されており、この貫通孔内に共通電極と電気的に接続された下側スルーホール電極が設けられている。そして、上側スルーホール電極と下側スルーホール電極との間に電圧を印加することにより、マイクロカプセル内で黒色粒子群と白色粒子分とを反対方向に移動させることができる。これにより、所望の画像を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−99948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術では、表面フィルムの側(即ち、表示面側)に上側スルーホール電極(即ち、端子部)を設ける必要がある。この端子部はマイクロカプセルの上に位置する。このため、端子部によりマイクロカプセルが部分的に遮られてしまう。また、この端子部は表示面側へ突出しており、表示面に凹凸が生じている。このため、従来の技術では、表示面の反射率が低下して画像の視認性が損なわれてしまう可能性があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、表示面側の凹凸が小さくて画像の視認性が高い電子ペーパーと、この電子ペーパーを備える電子ペーパー記録システム、及び、この電子ペーパーに対する画像の書き込み装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電子ペーパーは、複数の第1の電極を有する第1の基板と、前記複数の第1の電極の各々に電圧を印加するための配線と、前記複数の第1の電極の各々と前記配線との間にそれぞれ設けられた複数の受光素子と、前記第1の基板と対向して配置されて第2の電極を有する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された電気泳動表示層と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されて、前記第2の基板に入射した光を対応する受光素子へ導く導光部と、を備え、前記複数の受光素子の各々は、前記導光部によって導かれた前記光を感知することによって、前記複数の第1の電極の各々と前記配線との間を導通状態にすることを特徴とする。
【0008】
このような構成であれば、第2の基板に入射した光(例えば、ペン入力装置やライン光源等の光照射装置から照射されて第2の基板に入射した収束光)は、導光部を透過して、光の入射位置に対応した受光素子に到達する。この受光素子が受光を感知すると、この受光素子に接続されている第1の電極と配線との間が導通状態(即ち、電気的に接続された状態)になる。これにより、配線と導通状態となっている第1の電極のみが、外部から電圧印加可能な状態となる。
【0009】
外部から電圧が印加されることにより、電気泳動表示層は、光の照射位置に対応する画素の表示を、TFT等の駆動回路を用いることなく切り替えることができる。また、電気泳動表示層は、切り替え後の画像を無電力(即ち、第1の電極に電圧が印加されていない状態)で保持することができる。従来の技術と比較して、スルーホール電極等の端子部は必要ない。このため、表示面側(即ち、第2の基板の電気泳動表示層と対向する面の反対側の面)の凹凸を小さくすることができ、電気泳動表示層に表示される画像の視認性を高めることができる。
【0010】
なお、本発明の「第1の電極」としては例えば後述する画素電極12が該当し、「第1の基板」としては例えば後述するバックプレーン10が該当する。「第2の電極」としては例えば後述する共通電極22が該当し、「第2の基板」としては例えば後述する対向基板20が該当する。「電気泳動表示層」としては、例えば、後述するEPD層が該当する。「導光部」としては、例えば、後述する隔壁部31又は支柱32が該当する。
【0011】
また、上記の電子ペーパーにおいて、前記複数の受光素子の各々は、前記複数の第1の電極の各々の周囲に配置されていることを特徴としてもよい。このような構成であれば、各画素の周囲に、各画素に対する電圧印加をオン、オフする受光素子が配置される。このため、光の入射位置と、この光の入射を受けて表示が切り替わる画素の位置とをほぼ一致させることができる。例えば、ユーザーが、収束光を照射するペン入力装置を用いて、第2の基板を介して電気泳動表示層に画像を書き込む場合に、その書き込み位置と、その書き込みに応じて画像が切り替わる位置とをほぼ一致させることができる。
【0012】
また、上記の電子ペーパーにおいて、前記電気泳動表示層は、前記第1の基板と前記第2の基板との間で複数の閉空間を区画する隔壁部と、前記閉空間に充填されて複数の電気泳動粒子を含む分散液と、を有し、前記隔壁部が前記導光部として機能することを特徴としてもよい。このような構成であれば、各画素の周囲に導光部と受光素子とが配置される。導光部と受光素子の配置位置が比較的広く確保されることから、受光の感度(即ち、画像の書き込みと消去の感度)を高めることができる。
【0013】
本発明の別の態様に係る電子ペーパー記録システムは、上記の電子ペーパーと、前記電子ペーパーに画像を書き込みする書き込み装置と、を含み、前記書き込み装置は、前記第1の基板が有する前記配線に電圧を印加する電圧印加装置と、前記受光素子が感知可能な光を前記第2の基板の側から前記電子ペーパーに照射する光照射装置と、を備えることを特徴とする。このような構成であれば、光照射装置が照射した光は第2の基板に入射し、導光部を透過して、光の入射位置に対応した受光素子に到達する。この受光素子が受光を感知すると、この受光素子に接続されている第1の電極と配線との間が導通状態になる。電圧印加装置は、配線と導通状態となっている第1の電極のみに電圧を印加する。
【0014】
これにより、電子ペーパーは、光の照射位置に対応する画素の表示を、TFT等の駆動回路を用いることなく切り替えることができる。また、電子ペーパーは、切り替え後の画像は、無電力で保持することができる。従来の技術と比較して、電子ペーパーに書き込みを行うために、電子ペーパーの表示面側に突出した端子部を設ける必要ない。このため、電子ペーパーは、表示面側の凹凸を小さくすることができ、表示面側において画像の視認性を高めることができる。また、書き込み装置は、表示面側の凹凸が小さくて画像の視認性が高い電子ペーパーに所望の画像を書き込むことができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様に係る書き込み装置は、上記の電子ペーパーに画像を書き込みする書き込み装置であって、前記第1の基板が有する前記配線に電圧を印加する電圧印加装置と、前記受光素子が感知可能な光を前記第2の基板の側から前記電子ペーパーに照射する光照射装置と、を備えることを特徴とする。このような構成であれば、表示面側の凹凸が小さくて画像の視認性が高い電子ペーパーに所望の画像を書き込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る電子ペーパー100の構成例を示す図。
【図2】実施形態に係る電子ペーパー100の書き込み時の状態を示す図。
【図3】EPD層30の第1の構成例を示す図。
【図4】EPD層30の第2の構成例を示す図。
【図5】EPD層30の第3の構成例を示す図。
【図6】実施形態に係る電子ペーパー記録システム200の構成例を示す図。
【図7】実施形態に係る書き込み装置250の構成例を示す図。
【図8】受光素子14の第1の構成例を示す図。
【図9】受光素子14の第2の構成例を示す図。
【図10】受光素子14の第3の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その重複する説明は省略する場合もある。
(1)電子ペーパー
(1.1)構成
図1は、本発明の実施形態に係る電子ペーパー100の構成例を示す断面図である。
図1に示す電子ペーパー100は電気泳動表示装置であり、例えば、バックプレーン10と、配線13と、複数の受光素子14と、バックプレーン10と対向して配置された対向基板20と、バックプレーン10と対向基板20との間に配置された隔壁型のEPD(Electrophoretic Display)層30と、対向基板20上(即ち、対向基板20のバックプレーン10と対向する面の反対側の面上)に配置された防湿シート40と、を備える。
【0018】
バックプレーン10は、例えば、基体11と、複数の画素電極12とを有する。基体11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の絶縁性の樹脂からなる。複数の画素電極12の各々は、基体11の一方の面(例えば、上面)に一定の間隔で形成されている。この例では、隔壁部により囲まれた一つの画素電極12が、一つの画素を構成している。なお、図3に示すように、画素電極12の平面視による形状(以下、平面形状)は正方形である。或いは、画素電極12の平面形状は、三角形若しくは五角以上の多角形、又は、円形であってもよい。配線13は、基体11の他方の面(例えば、下面)から上面に至るように形成されている。この配線13は、複数の画素電極12の各々に電圧を印加するために設けられている。
【0019】
複数の受光素子14の各々は、例えば、図8に示すようにフォトダイオード、又は、図9に示すようにフォトトランジスタで構成されている。フォトダイオードの構造はPN型でも、PIN型でもよい。この例では、少なくとも1つ以上の受光素子14が、1つの画素電極12と配線13との間に形成されている。また、複数の受光素子14の各々は、複数の画素電極12の各々の周囲に配置されている。例えば、図3に示すように、画素電極12の平面形状が正方形の場合、この正方形の直交する2辺に沿って(即ち、平面形状がL字となるように)受光素子14が配置されている。なお、図示しないが、バックプレーン10には、配線13に電圧を印加するための外部接続用端子部が設けられている。
【0020】
対向基板20は、基体21と、基体21の一方の面(例えば、下面)に形成された共通電極22とを有する。基体21は、例えば、可撓性を有する絶縁性の樹脂からなる。このような樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。共通電極22は、例えば、ITO、酸化亜鉛、金属微粒子、金属箔などの無機導電性物質や、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリチオフェンなどの有機導電性物質などからなる。なお、図示しないが、対向基板20には共通電極22に電圧を印加するための外部接続用端子部が設けられている。
【0021】
EPD層30は、隔壁部31と、分散液36と、を有する。隔壁部31は、バックプレーン10と対向基板20との間に配置されており、バックプレーン10と対向基板20との間で閉空間(即ち、セル)34を区画している。即ち、隔壁部31は、EPD層30を複数の表示領域に区画している。一例として、複数のセル34の各々に画素電極12が一つずつ配置されている。隔壁部31は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、又は、その他の材料で構成されている。また、後述するように、この隔壁部31は、例えば無色透明又は有色透明な材料で構成されている。分散液36は、隔壁部31で区画された複数のセル34の各々に充填されている。分散液36は、複数の電気泳動粒子37と、これら電気泳動粒子37を分散させた分散媒38と、を含む液体である。電気泳動粒子37は、例えば、正又は負に帯電している粒子である。この例では、電気泳動粒子37は、黒色粒子37Aと白色粒子37Bとを含み、黒色粒子37A又は白色粒子37Bの一方が正に、他方が負に帯電している。
【0022】
防湿シート40は、対向基板20の側(即ち、図1では上方の側)から電子ペーパー100内に水分が浸入することを防ぐためのものである。この防湿シート40は、例えば、アクリル樹脂やその他の樹脂が単層、又は、交互に積層された構造からなる。なお、EPD層30に表示される画像、文字、記号等は、例えば対向基板20の側から視認される。画像等が対向基板20の側から視認される場合は、対向基板20を構成している基体21及び共通電極22の各材料と、防湿シート40は、可視光を透過する有色透明又は無色透明の材料で構成されている必要がある。対向基板20とEPD層30及び防湿シート40を合せてフロントプレーン50と呼ぶ。
【0023】
上記の電子ペーパー100は、例えば、従来の紙等からなる記録紙と同様に、標準化された大きさ(A3、A4、A5等)で形成されている。
ところで、上記の電子ペーパー100では、隔壁部31は例えば無色透明(若しくは、有色透明)であり、対向基板20に入射した光をバックプレーン10側へ導く導光部としても機能する。そして、この隔壁部(即ち、導光部)31の直下に、上記の受光素子14が配置されている。即ち、複数の受光素子14の各々の真上に隔壁部31が配置されている。対向基板20の側から入射した光は、隔壁部31を透過して、その直下に位置する受光素子14に到達するようになっている。この受光素子14に到達した光が、受光素子14が感知できる光量、波長であれば、受光素子14は、その光を電気エネルギーに変換(即ち、光源変換)して光電流が生じる。
【0024】
例えば、受光素子14が図8に示したようなフォトダイオードである場合、光電流はアノードからカソードへ流れる。また、受光素子14が図9に示したようにフォトトランジスタである場合、光電流はベースに注入されて増幅され、コレクタ電流として流れる。何れの場合も、受光素子14は光電流の発生をトリガーとするスイッチング素子として機能する。受光素子14において光電流が発生し、そのスイッチがオンになることにより、配線13と画素電極12との間は導通状態になる。なお、受光素子14は、自然光(日常光)では反応しないように、感度設定がなされている。
(1.2)動作
【0025】
次に、上記の電子ペーパー100において、EPD層30に画像が書き込まれる際の動作を説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る電子ペーパー100の書き込み時の状態を示す断面図である。図2に示すように、この電子ペーパー100のEPD層30に対する画像の書き込みは、例えば、一方向に光を照射する光照射装置60を用いて行われる。この光照射装置60が照射する光(即ち、指向性を持つ光)は、受光素子14が反応する(即ち、感知する)光であり、例えば可視光をレンズを通して収束させた収束光、又は、可視光が増幅されたレーザー光である。また、この光は、可視光に限定されず、紫外線などの短波長の光、また赤外線のような長波長の光であってもよい。
【0026】
また、EPD層30に対して画像を書き込む際は、バックプレーン10の配線13に予め設定された大きさの電圧(例えば、+15V)を印加する。さらに、共通電極22に例えば0[V]を印加する。この電圧印加は、外部の電圧印加装置を用いて行う。
配線13に+15[V]の電圧が印加され、共通電極22に0[V]の電圧が印加されている状態で、光照射装置60を電子ペーパー100の上部に近づける。すると、光照射装置60が照射した光が防湿シート40を透過して対向基板20に入射し、隔壁部31を透過してその直下の受光素子14に到達する。受光素子14は、この光を光電変換して光電流が生じる。これにより、画素電極12と配線13との間が導通状態になり、画素電極12には+15[V]の電圧が印加される。
【0027】
画素電極12と共通電極22との間の電界により、例えば、正に帯電している黒色粒子37Aは共通基板の側へ泳動し、負に帯電している白色粒子37Bは画素電極12の側へ泳動する。その結果、電子ペーパー100を対向基板20の側からみると、EPD層30には黒色が表示される。この黒色の表示は、光照射装置60による書き込みを終了し、電子ペーパー100から電圧印加装置が外された後も、無電力で保持することができる。
【0028】
また、EPD層30に表示された画像を消去する場合は、例えば、配線13に0[V]を印加し、共通電極22に+15Vを印加する。この状態で、電子ペーパー100の全面に受光素子14が感知可能な光を照射する。これにより、EPD層30の各画素において、配線13と画素電極12とが導電状態となり、正に帯電している黒色粒子37Aは画素電極12の側へ泳動し、負に帯電している白色粒子37Bは共通電極22の側へ泳動する。その結果、電子ペーパー100を対向基板20の側からみると、EPD層30は全面に白色を表示した状態(つまり、白色無地の状態)となる。この白色無地の状態は、光照射装置60による書き込みを終了し、電子ペーパー100から電圧印加装置を外した後も、無電力で保持することができる。
【0029】
なお、図2に示した光照射装置60による光の照射範囲は、EPD層30に表示される画像の線の太さにおよそ比例する。このため、EPD層30に表示される線をユーザーが視認する場合は、光照射装置60による光の照射範囲をEPD層30の数〜十画素程度の大きさに設定しておくとよい。即ち、光照射装置60が光を照射している状態で電子ペーパー100上を相対的に移動すると、その移動の軌跡に沿った黒色の線がEPD層30に書き込まれる。ここで、光の照射範囲がEPD層30の数〜十画素程度の大きさであれば、EPD層30に書き込まれた線の幅も、光の照射範囲と同様に数〜十画素程度の大きさとなる。このため、ユーザーは、EPD層30に書き込まれた黒色の線を目視(即ち、肉眼で確認)することができる。
この黒色の線は、光照射装置60による書き込みを終了し、電子ペーパー100から電圧印加装置が外された後も、無電力で保持することができる。
【0030】
(1.3)変形例
本発明は、隔壁型ではないEPD層30を有する電子ペーパー100にも適用可能である。その場合は、例えば、バックプレーン10と対向基板20との間の空間を保持するために当該間に配置される複数本の支柱を導光部としてもよい。
例えば、図4に示すように、平面形状が矩形である画素電極12の角部に隣接するように複数本の支柱32の各々を配置する。これら複数本の支柱32は、例えば無色透明又は有色透明な材料で構成されている。また、これら複数本の支柱32の各々の直下に受光素子14を配置する。このような構成であっても、対向基板20の側から入射した光は、支柱32を透過して、その直下に位置する受光素子14に到達する。このため、図3に示した形態と同様に、EPD層30に対する画像の書き込みが可能である。
【0031】
また、本発明は、マイクロカプセル型のEPD層30にも適用可能である。ここで、マイクロカプセル型のEPD層30とは、例えば、図5に示すように、複数のマイクロカプセル33と、可視光を透過する透明なバインダー39とを有し、複数のマイクロカプセル33の各々の内部に分散液36が充填されているEPD層30のことである。このマイクロカプセル型のEPD層30では、図5に示すように、隣り合うマイクロカプセル33の隙間に支柱32を配置する。そして、この支柱32の直下に受光素子14を配置する。このような構成であっても、図3、図4に示した形態と同様に、マイクロカプセル型のEPD層30に対して画像の書き込みが可能である。
【0032】
また、本発明では、図10に示すように、受光素子14をフォトダイオードとダイオードとで構成してもよい。フォトダイオードとダイオードとを並列に接続し、この並列回路を受光素子14として、配線13と画素電極12との間に配置する。このような構成であれば、画素電極12にはダイオードを介して一定の電圧が印加される。このため、画素電極12に印加する電圧の調整可能な幅を大きくすることができる。
【0033】
(2)電子ペーパー記録システム
(2.1)構成
図6は、本発明の実施形態に係る電子ペーパー記録システム200の構成例を示す概念図である。図6に示すように、この電子ペーパー記録システム200は、上述した電子ペーパー100と、この電子ペーパー100に画像を書き込みする書き込み装置150と、を含む。また、書き込み装置150は、光照射装置160と、電圧印加装置70とを備える。
【0034】
光照射装置160は、図2に示した光照射装置60をユーザーが手に持ち易いようにペン状にしたものである。このペン状の光照射装置160は、その先端に光源161を有する。また、この光源161から照射される光は指向性を有し、その光の照射範囲は例えばEPD層30の数〜十画素程度の大きさとなっている。また、この光源161から照射される光は、受光素子14が感知できる光量、波長に設定されている。
【0035】
電圧印加装置70は、バックプレーン10が有する配線13に電圧(例えば、+15[V])を印加するものである。この電圧印加装置70は、クリップボード(即ち、書類を留める金具がついた筆記用の板)の形態を有する。電圧印加装置70のクリップ71が電子ペーパー100の端部をボード72に押し当てる。これにより、電子ペーパー100の対向基板20に設けられた外部接続用端子部はクリップ71に接続される。また、電子ペーパー100のバックプレーン10に設けられた外部接続用端子部はボード72に接続される。
【0036】
(2.2)動作
次に、図6に示した電子ペーパー記録システム200の動作例を説明する。まず始めに、この電圧印加装置70に電子ペーパー100を挟んで固定し、電圧印加装置70のクリップ71を対向基板20に設けられた外部接続用端子部に接続し、電圧印加装置70のボード72をバックプレーン10に設けられた外部接続用端子部に接続する。次に、クリップ71を例えば0[V]に設定し、ボードを+15[V]に設定する。これにより、配線13に+15[V]を印加することになり、共通電極22に0[V]を印加することになる。
【0037】
このような設定下で、ユーザーがペン状の光照射装置160を用いて電子ペーパー100上で任意の画像を描く。すると、その描画の軌跡に沿った黒色の線がEPD層30に書き込まれる。EPD層30に書き込まれる線の幅は、例えば数〜十画素程度の大きさであるため、ユーザーはEPD層30に書き込まれた黒色の線を目視することができる。この黒色の線は、光照射装置160による書き込みを終了し、電子ペーパー100から電圧印加装置70を外した後も、無電力で保持することができる。
【0038】
また、EPD層30に書き込まれた画像を消去する場合は、例えば、電子ペーパー100を電圧印加装置70で保持した状態で、クリップ71の電位を+15[V]に設定し、ボードの電位を0[V]に設定する。この状態で、電子ペーパー100の全面に受光素子14が感知可能な光を照射する。これにより、EPD層30の各画素において、正に帯電している黒色粒子37Aは画素電極12の側へ泳動し、負に帯電している白色粒子37Bは共通電極22の側へ泳動する。その結果、電子ペーパー100を対向基板20の側からみると、白色無地の状態となる。つまり、電子ペーパー100に書き込まれた画像が消去される。この白色無地の状態は、光照射装置160による書き込みを終了し、電子ペーパー100から電圧印加装置70を外した後も、無電力で保持することができる。
【0039】
(2.3)変形例
本発明において、書き込み装置はペン入力型に限定されるものではない。例えば、図7(a)及び(b)に示すように、書き込み装置はプリンター型であってもよい。図7(a)に示すように、このプリンター型の書き込み装置250では、プリンターの給紙口251から電子ペーパー100が送入され、プリンターの排紙口252から電子ペーパー100が送り出される。図7(b)に示すように、書き込み装置250の内部には、例えば、複数の光源が電子ペーパー100の幅方向に一列に並んだライン光源253と、電子ペーパー100に電圧を印加する電圧印加装置70とが設けられている。
このプリンター型の書き込み装置250では、電子ペーパー100の共通電極22に0[V]を印加し、配線13に+15[V]を印加する。この状態で、電子ペーパー100を給紙口251から排紙口252へ送り出して、ライン光源253の直下で選択的に光を照射する。これにより、電子ペーパー100に所望の画像を書き込むことができる。
【0040】
また、電子ペーパー100の共通電極22に+15[V]を印加し、配線13に0[V]を印加する。この状態で、電子ペーパー100を給紙口251から排紙口252へ送り出して、ライン光源253の直下で全面に光を照射する。これにより、電子ペーパー100を白色無地の状態とすることができる。つまり、電子ペーパー100に書き込まれた画像を消去することができる。
【0041】
(3)実施形態の効果
上記の実施形態によれば、光照射装置60が照射した光は対向基板20に入射し、隔壁部31(又は、支柱32)を透過して、隔壁部31の直下に位置する受光素子14に到達する。この受光素子14が光を感知すると、この受光素子14に接続されている画素電極12と配線13との間が導通状態になる。電圧印加装置70は、この配線13と導通状態となっている画素電極12のみに電圧を印加する。
【0042】
これにより、電子ペーパー100は、光の入射位置に対応する画素の表示を、TFT等の駆動回路を用いることなく切り替えることができる。また、電子ペーパー100は、切り替え後の画像を無電力で保持することができる。従来の技術と比較して、電子ペーパー100に書き込みを行うために、電子ペーパー100の表示面側に突出した端子部を設ける必要ない。このため、表示面側の凹凸を小さくすることができ、表示面側において画像の視認性を高めることができる。
【0043】
また、従来技術と比較して、電子ペーパー100は、画像が書き込まれる際に、書き込み位置を座標変換して表示位置に反映させるなどの、複雑なプロセスを要しない。画像の書き込みには光が用いられ、この光が書き込み位置の画素周辺の受光素子14に到達して、画素の表示が切り替えられる。このため、画像の書き換えを高速化することができる。
以上説明した電子ペーパー100は、シート状で薄く、軽く、用意に持ち運びすることができ、また、自在に湾曲させることができる。このため、電子ペーパー100は、配置位置や使用形態に関して自由度が高いフレキシブルなディスプレイ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 バックプレーン、11、21 基体、12 画素電極、13 配線、14 受光素子、20 対向基板、22 共通電極、30 EPD層、31 隔壁部、32 支柱、33 マイクロカプセル、36 分散液、37 電気泳動粒子、37A 黒色粒子、37B 白色粒子、38 分散媒、39 バインダー、40 防湿シート、50 フロントプレーン、60 光照射装置、70 電圧印加装置、71 クリップ、72 ボード、100 電子ペーパー、150 書き込み装置、160 光照射装置、161 光源、200 電子ペーパー記録システム、250 書き込み装置、251 給紙口、252 排紙口、253 ライン光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の電極を有する第1の基板と、
前記複数の第1の電極の各々に電圧を印加するための配線と、
前記複数の第1の電極の各々と前記配線との間にそれぞれ設けられた複数の受光素子と、
前記第1の基板と対向して配置されて第2の電極を有する第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された電気泳動表示層と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されて、前記第2の基板に入射した光を対応する受光素子へ導く導光部と、を備え、
前記複数の受光素子の各々は、前記導光部によって導かれた前記光を感知することによって、前記複数の第1の電極の各々と前記配線との間を導通状態にすることを特徴とする電子ペーパー。
【請求項2】
前記複数の受光素子の各々は、前記複数の第1の電極の各々の周囲に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子ペーパー。
【請求項3】
前記電気泳動表示層は、前記第1の基板と前記第2の基板との間で複数の閉空間を区画する隔壁部と、
前記閉空間に充填されて複数の電気泳動粒子を含む分散液と、を有し、
前記隔壁部が前記導光部として機能することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子ペーパー。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の電子ペーパーと、
前記電子ペーパーに画像を書き込みする書き込み装置と、を含み、
前記書き込み装置は、
前記第1の基板が有する前記配線に電圧を印加する電圧印加装置と、
前記受光素子が感知可能な光を前記第2の基板の側から前記電子ペーパーに照射する光照射装置と、を備えることを特徴とする電子ペーパー記録システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の電子ペーパーの前記電気泳動表示層に画像を書き込みする装置であって、
前記第1の基板が有する前記配線に電圧を印加する電圧印加装置と、
前記受光素子が感知可能な光を前記第2の基板の側から前記電子ペーパーに照射する光照射装置と、を備えることを特徴とする書き込み装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−50595(P2013−50595A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188723(P2011−188723)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】