説明

電子ペーパー用カーボンブラック顔料とその分散体および製造方法。

【課題】電子ペーパー用の黒色微粒子として好適な表面改質カーボンブラック顔料、そのシリコーンオイル分散体、該カーボンブラック顔料の製造方法を提供すること。
【解決手段】カーボンブラック粒子表面の官能基を介してウレタン結合したジフェニルメタン基が、ポリシロキサン基と結合した表面改質カーボンブラックからなることを特徴とする電子ペーパー用カーボンブラック顔料。該カーボンブラック顔料が1〜20重量%の濃度でシリコーンオイルに分散した電子ペーパー用カーボンブラック分散体。カーボンブラック粒子表面の官能基と両末端にイソシアネート基を有するジフェニル化合物を非反応性の有機溶媒中で反応させて、カーボンブラック粒子表面にジフェニルメタン基をウレタン結合させ、次いで、シリコーンオイル中でポリシロキサンを結合させることを特徴とする電子ペーパー用カーボンブラック顔料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンオイルに対して優れた分散性を示し、電子ペーパー用の黒色原料として好適なカーボンブラック顔料、そのシリコーンオイル分散体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代ディスプレイとして有機ELや無機ELと共に表示媒体としての紙の長所を取り入れた電子ペーパーの開発研究が盛んに行われている。すなわち、電子ペーパーは従来のパネルディスプレイと比較して、軽量化やそのフレキシブル性から紙の利便性をそのまま保持したリライタブルディスプレイデバイスとして期待されている。また、低電圧で駆動可能であり、更に、電圧を印加して一度表示した画像は電力を消費することなくそのまま長時間保持することができるので、省エネ性にも優れている。
【0003】
電子ペーパーの画像表示方法としては電気化学反応を基本原理とする方法、着色微粒子を電気泳動させる方法、着色微粒子を磁気により泳動させる方法など、様々な方式が提案されており、中でも電気泳動により着色微粒子を移動して画像表示する方法は、画像表示の有望な方法の一つとして広く研究されている。
【0004】
例えば、マイクロカプセル系電気泳動方式による白黒画像表示は、マイクロカプセル内に泳動媒体としてシリコーンオイルなどの透明な絶縁性液体を封入し、シリコ−ンオイル中に白色微粒子である負に帯電した二酸化チタン微粒子と黒色微粒子である正に帯電したカーボンブラックを分散させて、透明な前面電極と背面電極間に電圧を印加することにより、帯電微粒子をそれぞれ逆の電位の方向に移動させて、白黒の画像表示を可能とするものである。
【0005】
図1(a)は前面透明電極に正の電位を、背面電極に負の電位を印加した場合の画像表示の原理を示した模式図で、負に帯電した白色の二酸化チタン微粒子は正の電位の前面透明電極側に移動し、正に帯電した黒色のカーボンブラック微粒子は負の電位の背面電極側に移動する。したがって、前面透明電極側から見ると負に帯電した二酸化チタン微粒子の白色が観察される。
【0006】
図1(a)において印加する電位を逆にすると、図1(b)に示すように、正に帯電したカーボンブラック黒色微粒子は前面透明電極側に移動し、二酸化チタン微粒子は背面電極側に移動するので、前面透明電極側からは黒色が観察されることになり、これらを組み合わせることで白黒の画像を表示することができる。
【0007】
したがって、画像表示の精度を高めるためには泳動媒体中に黒色微粒子であるカーボンブラックを良好な状態に分散させることが重要となる。水系分散体におけるカーボンブラックの分散性の向上については、近年インクジェットプリンター用などの用途を中心にして盛んに研究開発が行われている。
【0008】
しかし、マイクロカプセル系電気泳動方式ではマイクロカプセル内に封入する泳動媒体が電位により影響を受けると画像表示が乱れるため、無極性あるいは低極性の泳動媒体を使用する必要があり、シリコーンオイルが好適に使用されている。したがって、有極性媒体である水系分散体とは異なる見地からの検討が必要となる。
【0009】
特許文献1には複数の顔料粒子を懸濁流体に懸濁した電気泳動媒体であって、該顔料粒子は、重合体を該顔料粒子に化学的に結合させるかその周りに架橋させており、該重合体は、該顔料の1〜15重量%の量で存在している、電気泳動媒体が提案されている。
【0010】
特許文献1によれば、カーボンブラック粒子に化学的に結合されるかその周りに架橋された、カーボンブラックの1〜15重量%の重合体を有するカーボンブラック電気泳動媒体が開示されており、該重合体は、主鎖および複数の側鎖を含有し、該側鎖は、該主鎖から伸長しており、該側鎖の各々は、少なくとも約4個の炭素原子を含有するとするものである。
【特許文献1】特表2004−526210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、シリコーンオイル中で良好な分散性を示し、電子ペーパー用の黒色微粒子として用いられるカーボンブラック顔料について鋭意研究を行った結果、カーボンブラック表面をシリコーンオイルの構造に近似した反応性シリコーン成分を含有するポリマーと反応させて得られた表面改質カーボンブラックは、シリコーンオイル中で優れた分散性が付与されることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は電子ペーパー用の黒色微粒子として好適に用いることのできる表面を改質したカーボンブラック顔料、そのシリコーンオイル分散体、および該カーボンブラック顔料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明による電子ペーパー用カーボンブラック顔料は、カーボンブラック粒子表面の官能基を介してウレタン結合したジフェニルメタン基が、ポリシロキサン基と結合した表面改質カーボンブラックからなることを構成上の特徴とする。
【0014】
また、本発明の電子ペーパー用カーボンブラック分散体は、上記の電子ペーパー用カーボンブラック顔料が1〜20重量%の濃度で泳動媒体となるシリコーンオイルに分散したものである。
【0015】
また、本発明の電子ペーパー用カーボンブラック顔料の製造方法は、カーボンブラック粒子表面の官能基と両末端にイソシアネート基を有するジフェニル化合物を非反応性の有機溶媒中で反応させて、カーボンブラック粒子表面にジフェニルメタン基をウレタン結合させ、次いで、シリコーンオイル中でポリシロキサンを結合させることを構成上の特徴とする。
【0016】
また、上記の製造方法においてカーボンブラック粒子表面の官能基量はヒドロキシル基が0.14μeq/m以上、または、カルボキシル基が0.14μeq/m以上、もしくは、両官能基の和が0.14μeq/m以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のカーボンブラック顔料によれば、カーボンブラック粒子表面をシリコーンオイルの構造に近似した反応性シリコーン成分を含有するポリマーと反応させて表面改質したものであり、マイクロカプセル系電気泳動方式による電子ペーパーのマイクロカプセル内に封入するシリコーンオイルなどの無極性あるいは低極性の泳動媒体中において優れた分散性能を発揮する。したがって、電子ペーパー用の黒色微粒子として好適に用いることができ、更に本発明によれば、電子ペーパー用の泳動媒体として好適なシリコーンオイル分散体および該カーボンブラック顔料の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明で用いるカーボンブラックの種類には特に制限はなく、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどいずれも使用することができるが、好ましくは電子顕微鏡観察により測定される一次粒子径が0.01〜0.3μmのカーボンブラックが用いられる。一次粒子径が0.01μm未満のカーボンブラックでは粒子間に作用する凝集力が大きいために凝集し易くなり、一方、0.3μmを越える場合には表面改質した状態での自重が大きくなり、シリコーンオイル中で沈降し易くなる。
【0019】
本発明の表面改質カーボンブラックは、カーボンブラック粒子表面の官能基を介してウレタン結合したジフェニルメタン基が、ポリシロキサン基と結合した構造からなるものである。カーボンブラック粒子表面には、その生成プロセスあるいは酸化などの後処理により種々の官能基が存在するが、それらの官能基のうち本発明の表面改質カーボンブラックにはヒドロキシル基およびカルボキシル基の酸性官能基が大きく機能する。
【0020】
化1は、カーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基と、ジフェニルメタンがウレタン結合(OHOCN)し、更に、ウレタン結合を介してジフェニルメタン基がポリシロキサン基と結合したポリシロキサン系構造を有する、本発明の電子ペーパー用カーボンブラック顔料を構成する表面改質カーボンブラックを例示したものである。
【0021】
【化1】

【0022】
但し、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を、R〜R13は同一又は異なってアリール基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシル基をそれぞれ示し、a及びbは同一又は異なって0〜10の整数を、nは0〜200の整数をそれぞれ示す。
【0023】
すなわち、本発明の電子ペーパー用カーボンブラック顔料は、泳動媒体となるシリコーンオイルの構造に近い反応性シリコーンをカーボンブラック粒子表面に結合させて表面改質した点を特徴とし、シリコーンオイル中において優れた分散性が付与される。なお、ポリシロキサン系構造としては、ポリジメチルシロキサン基、部分アルキル基置換ポリジメチルシロキサン基、部分アリール基置換ポリジメチルシロキサン基、トリス(トリアルキルシロキシ)シリルプロピル基などのポリオルガノシロキサンを含有するものなどが例示される。
【0024】
そして、この表面改質カーボンブラックをシリコーンオイル中に1〜20重量%の濃度に分散したカーボンブラック分散体を、電気泳動方式による電子ペーパーのマイクロカプセル内に封入する泳動媒体とする。
【0025】
この表面改質カーボンブラックからなる本発明の電子ペーパー用カーボンブラック顔料は、カーボンブラック粒子表面の官能基と両末端にイソシアネート基を有するジフェニル化合物を、エステルやケトンなどの非反応性の有機溶媒中で反応させてカーボンブラック粒子表面にジフェニルメタン基をウレタン結合させ、次いで、シリコーンオイル中でポリシロキサンを結合させることにより製造される。
【0026】
また、カーボンブラック粒子表面の官能基としては、ヒドロキシル基やカルボキシル基が大きく機能するが、これらの官能基量としてはヒドロキシル基が0.14μeq/m以上、または、カルボキシル基が0.14μeq/m以上、もしくは、両官能基の和が0.14μeq/m以上であることが好ましい。これらの官能基量が0.14μeq/m未満の場合には、両末端にイソシアネート基を有するジフェニル化合物を均一に反応させてもその導入量が少ないために、ポリシロキサンを結合させた場合にも沈降する成分が多くなり、表面改質カーボンブラックをシリコーンオイル中に均一に分散させることが困難となる。
【0027】
なお、ヒドロキシル基量やカルボキシル基量は必要によりカーボンブラックを酸化処理することにより調整することができ、湿式酸化処理あるいは乾式酸化処理など公知の適宜な方法が適用される。
【0028】
本発明の電子ペーパー用カーボンブラック顔料の製造方法は、先ずカーボンブラック粒子表面にジフェニルメタン基をウレタン結合させるために、カーボンブラック粒子表面の官能基と両末端にイソシアネート基を有するジフェニル化合物をエステルやケトンなどの非反応性の有機溶媒中で反応させる。
【0029】
両末端にイソシアネート基を有するジフェニル化合物としては、パラフェニレンジイソシアネート、2−クロロ−1、4−フェニルジイソシアネート、2、4−トルエンジイソシアネート(TDI)、2、6−トルエンジイソシアネート、1、5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタン−4、4′−ジイソシアネート(MDI)、1、3−キシレン−4、6−ジイソシアネート、ジフェニルサルファイド−4、4′−ジイソシアネート、1、4−ナフタレンジイソシアネートなどが例示され、好ましくは、MDI、TDI、HDIが用いられる。
【0030】
この反応を化2に例示した。化2は、カーボンブラック粒子表面の官能基としてヒドロキシル基と、ジフェニル化合物としてメチルジフェニルジイソシアネートを反応させてカーボンブラック粒子表面にジフェニルメタン基をウレタン結合した場合である。
【0031】
【化2】

【0032】
両末端にイソシアネート基を有するジフェニル化合物とカーボンブラックとの反応は、両末端イソシアネート化合物を、イソシアネート化合物と非反応性の酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル化合物あるいはケトン類に溶解させ、カーボンブラックを加えて攪拌脱泡機で攪拌脱泡し、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、プロセスホモジナイザー、メディアミルなどで混合する。更に、25〜100℃の温度で適宜時間熱処理して、イソシアネート化合物をカーボンブラックに強固に結合させる。
【0033】
この場合に、未反応のイソシアネート化合物が残留すると、後に使用する反応性シリコーン同士およびカーボンブラック粒子同士の凝集結合が促進されるため、熱処理後の分散液を高速遠心分離機で処理して未反応のイソシアネート化合物を遠心除去する。
【0034】
このようにしてカーボンブラック粒子表面の官能基にジフェニルメタン基をウレタン結合させたのち、シリコーンオイル中でポリシロキサンを結合させることにより本発明の電子ペーパー用カーボンブラック顔料が製造される。
【0035】
すなわち、本発明の製造方法はシリコーン系ポリマーを結合させる際に直接結合させるものでなく、両末端にイソシアネート基を有するジフェニル化合物を用いてジフェニルメタン基をウレタン結合させ、この中間物質を介してカーボンブラック粒子表面の官能基と反応性シリコーンとを反応させてポリシロキサン基を結合させるものである。
【0036】
この反応を化3に例示した。化3は、化2に示したカーボンブラック粒子表面のヒドロキシル基とメチルジフェニルジイソシアネートとを反応させてジフェニルメタン基をウレタン結合させた後、ポリシロキサンを反応させて化1に示したウレタン結合を介してジフェニルメタン基がポリシロキサン基と結合したポリシロキサン系構造を有する表面改質カーボンブラックを製造する化学反応を示したものである。
【0037】
【化3】

【0038】
ポリシロキサン基を結合させるために使用する反応性シリコーンは、末端にアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基などの反応性官能基を有するポリシロキサンを用いるが、両末端に反応性官能基を有する反応性シリコーンは反応性が小さいので、片末端にのみ反応性官能基をもつものが好ましい。
【0039】
また、反応性シリコーンはシリコーンオイルの構造に近似した構造を有するものが好ましく、一般的なシリコーンオイルの構造はポリシロキサン構造であるため反応性シリコーンとしては、その骨格構造はポリシロキサン構造であることが好ましい。
【0040】
本発明の表面改質カーボンブラックは、その表面に結合したシリコーン系ポリマー鎖によりシリコーンオイル中に立体障害を伴って分散していることから、反応性シリコーンは分子量500〜30000のポリマーを使用することが好ましい。分子量500未満のポリマーはポリマー鎖による立体障害が小さく分散性が乏しくなり、一方30000を越えると表面改質カーボンブラックの自重により沈降し易くなる。
【0041】
ジフェニルメタン基をウレタン結合させたカーボンブラックと反応性シリコーンを混合し、攪拌脱泡機にて攪拌、脱泡した後、三本ロールミルやメディアミルなどを用いて十分に混練する。混練物をシリコーンオイルで希釈して超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、プロセスホモジナイザー、メディアミルなどにより攪拌して反応させたのち、加熱処理して残存有機溶媒を除去し、更にフィルターで大粒成分を除去して、表面改質カーボンブラック顔料のシリコーンオイル分散体が得られる。そして、シリコーンオイルを加えることで濃度調整を行い、カーボンブラック顔料が1〜20重量%の濃度でシリコーンオイルに分散した電子ペーパー用カーボンブラック分散体が得られる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0043】
実施例1
カーボンブラックに東海カーボン(株)製TB#7550Fを用い、過硫酸アンモニウムを酸化剤とした水溶液で液相酸化してヒドロキシル基0.74μeq/m、カルボキシル基4.8μeq/mのカーボンブラック試料を作製した。
【0044】
ジフェニルメタン−4、4′−ジイソシアネート(MDI)12.5gを15wt%の濃度に溶解させたメチルエチルケトン溶液に、不活性ジメチルポリシロキサン〔GE東芝シリコーン(株)製TSF451−1000〕150g、十分に乾燥したカーボンブラック試料75gを攪拌脱泡機に入れて攪拌2分、脱泡2分の前混練を行った後、三本ロールにて30分間混練した。次いで、混練物にジブチルチンジラウレート0.875gを10wt%の濃度に溶解させたシリコーンオイル〔信越化学工業(株)製KF96L−1cs〕溶液を添加し、更に30分間三本ロール〔(株)井上製作所製SR−4〕で混練した。この際、溶媒であるメチルエチルケトンは揮散するため、適宜メチルエチルケトンを追加した。
【0045】
この混練物にメチルエチルケトンを加えて全量を1リットルとし、超音波式ホモジナイザー〔(株)日本精機製作所製Ultrasonic Generator US〕により10分間、更に(株)東海製ナノマイザーTL−1500を用いて50〜150MPaの圧力で、イソシアネート化合物結合カーボンブラックを溶媒中に分散させた後、セパラブルフラスコにて60℃で2時間攪拌しながら加熱処理した。
【0046】
加熱処理後の分散液を3000rpmで3分間遠心分離処理し、遠心分離後の上澄み液を除去したのち、メチルエチルケトンを添加して再度遠心分離した。この操作を2回実施し、その後、遠心残さに対してシリコーンオイルを添加して遠心分離を2回実施した。
【0047】
上記遠心残さを3等分して、その一部と反応性シリコーン〔GE東芝シリコーン(株)製TSF4709〕16.25gとを混合し、三本ロールで30分間混練し、ジブチルチンジラウレート0.413gを10wt%の濃度に溶解させたシリコーンオイル溶液を添加し、更に30分三本ロールにて混練した。
【0048】
この混練物にシリコーンオイルを添加して全量を250gとした後、セパラブルフラスコにて60℃で4時間攪拌しながら加熱処理した。加熱処理後の分散体をナノマイザーを用いて、50〜150MPa掛けて更に機械的分散を行った。
【0049】
上記分散体を乾燥機にて80℃で1時間加熱処理し、その後ADVANTEC(株)製No.131濾紙を2回通過させ、最後に全量を再び250gになるようにシリコーンオイルを適量添加して、カーボンブラック濃度10wt%のシリコーンオイル分散カーボンブラック分散体1を製造した。
【0050】
実施例2
実施例1と同じカーボンブラックを用いてオゾンにより気相酸化して、ヒドロキシル基1.0μeq/m、カルボキシル基3.2μeq/mのカーボンブラック試料を作製した。
【0051】
このカーボンブラック試料を用いて、実施例1と同じ方法により、10wt%のシリコーンオイル分散カーボンブラック分散体2を製造した。
【0052】
実施例3
カーボンブラックにDegussa社製SpecialBlack4(ヒドロキシル基0.16μeq/m、カルボキシル基4.2μeq/m)を使用した他は、実施例1と同じ方法によりカーボンブラック分散体3を製造した。
【0053】
実施例4
実施例1において、酸化処理を施さないカーボンブラック(ヒドロキシル基0.13μeq/m、カルボキシル基0.37μeq/m)を用いた他は、実施例1と同じ方法によりカーボンブラック分散体4を製造した。
【0054】
比較例1
実施例1と同じ液相酸化したカーボンブラック(ヒドロキシル基0.74μeq/m、カルボキシル基4.8μeq/m)を試料として、このカーボンブラック試料25gと反応性シリコーン〔GE東芝シリコーン(株)製TSF4709〕16.25gとを混合し、三本ロールで30分間混練し、ジブチルチンジラウレート0.413gを10wt%の濃度に溶解させたシリコーンオイル溶液を添加し、更に30分三本ロールにて混練した。
【0055】
この混練物にシリコーンオイルを加えて全量を1リットルとし、超音波式ホモジナイザーにより10分間、更に(株)東海製ナノマイザーを用いて50〜150MPaの圧力を掛けて分散させたのち、セパラブルフラスコにて60℃で2時間攪拌しながら加熱処理した。
【0056】
加熱処理後の分散液を3000rpmで3分間遠心分離処理し、遠心分離後の上澄み液を除去したのち、シリコーンオイルを添加して遠心分離を2回実施した。この混練物にシリコーンオイルを添加して全量を250gとした後、ナノマイザーを用いて50〜150MPa掛けて更に機械的分散を行い、カーボンブラック濃度10wt%のシリコーンオイル分散カーボンブラック分散体5を製造した。
【0057】
これらの分散体について、Honeywell社製のMicrotrac法粒度分析計9340−UPA150を用いて分散体中のカーボンブラック凝集体の平均粒子径を測定し、また山一電機(株)製の振動式粘度計により分散体の粘度を測定した。測定結果の経時的変化を表1に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1から、実施例の分散体1〜3は分散体中のカーボンブラック粒子凝集体の平均粒子径が小さく、その経時的変化も少ないことが分かる。一方、比較例である分散体4〜5の平均粒子径は分散体1〜3に比べて極めて大きく、その経時的変化も大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1(a)】前面透明電極に正の電位を、背面電極に負の電位を印加した場合の画像表示の原理を示した模式図である。
【図1(b)】前面透明電極に負の電位を、背面電極に正の電位を印加した場合の画像表示の原理を示した模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック粒子表面の官能基を介してウレタン結合したジフェニルメタン基が、ポリシロキサン基と結合した表面改質カーボンブラックからなることを特徴とする電子ペーパー用カーボンブラック顔料。
【請求項2】
請求項1のカーボンブラック顔料が1〜20重量%の濃度でシリコーンオイルに分散した電子ペーパー用カーボンブラック分散体。
【請求項3】
カーボンブラック粒子表面の官能基と両末端にイソシアネート基を有するジフェニル化合物を非反応性の有機溶媒中で反応させて、カーボンブラック粒子表面にジフェニルメタン基をウレタン結合させ、次いで、シリコーンオイル中でポリシロキサンを結合させることを特徴とする電子ペーパー用カーボンブラック顔料の製造方法。
【請求項4】
カーボンブラック粒子表面の官能基がヒドロキシル基0.14μeq/m以上、またはカルボキシル基0.14μeq/m以上、もしくは両官能基の和が0.14μeq/m以上である請求項3の電子ペーパー用カーボンブラック顔料の製造方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【公開番号】特開2007−163638(P2007−163638A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357456(P2005−357456)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000219576)東海カーボン株式会社 (155)