説明

電子ペーパ装置および情報表示システム

【課題】情報漏洩防止を確実にし、電源確保と管理が確実になり、しかもシステム構築を容易にする。
【解決手段】電子ペーパ装置10は、送電装置60から非接触電力伝送により電力が供給され、サーバ70から無線通信により表示データを受信し、受信した表示データで画像表示を更新し、表示更新後は表示電力を消費せずに表示状態を保持することができる、低消費電力かつコネクトレスな構成とし、給電エリア監視部23が非接触電力伝送による電力の給電エリアから離れたことを検知すると、消去処理部40は蓄電部22に僅かに蓄積した電力を使って表示画像および蓄積表示データを自己消去または、他の画像で上書きできるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパを情報表示手段とする電子ペーパ装置およびこの電子ペーパ装置を情報表示端末として利用する情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペーパは、紙のような薄さを有してデータの表示や消去を何回も繰り返し行える情報表示デバイスとして開発されており、液晶ディスプレイと比べ画面が見やすい、画面内容を変化させる時にだけ電力を消費するため消費電力も小さい、電源を切っても表示を維持できる、軽いなどの特長をもち、液晶ディスプレイを情報表示手段とするノートパソコンや、電子書籍、電子新聞、電子辞書などへの応用が検討され、さらには電子広告、電子ポスターなど、色々な装置、システムへの応用も提案されている。
【0003】
また、電子ペーパ装置やそれを利用したシステムに近い装置として、以下のような装置がある。
【0004】
(a)バッテリ動作可能な情報端末装置
(b)プロジェクタまたは、大画面ディスプレイ装置
(c)非接触電力伝送可能なディスプレイ装置
(d)電子ペーパを用いて情報表示する装置
以上のように、電子ペーパは、種々の分野で利用されようとしているが、利用形態によっては表示情報の漏洩、喪失、欠落を起こしたり、情報通信に機能障害を起こすことがあり、これら不都合を解消しようとする装置やシステムも提案されている(例えば、特許文献1,2,3,4,5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−039833
【特許文献2】特開2006−350190
【特許文献3】特開2008−203842
【特許文献4】特開2009−76994
【特許文献5】特許第4060331号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(1)特許文献1(特開2006−039833:画像管理システム)では、管理装置が表示記録媒体(電子ペーパ)の存在する通信エリアを監視して、エリア外に存在する表示記録媒体に対して消去信号を送信し、消去信号を受信した表示記録媒体は、コンテンツ画像を消去することになっている。
【0007】
このシステムでは、管理装置と表示記録媒体が無線にて通信できることが前提となっており、何らかの障害により消去信号の通信が途絶えた場合に、そのまま通信可能エリアから外れると、コンテンツ画像が消去されないまま保持されてしまい、情報漏洩を引き起こす恐れがある。
【0008】
(2)特許文献2(特開2006−350190:電子ペーパおよびセキュリティシステム)では、セキュリティの確保に、電源カートリッジを着脱式とし、外された場合、表示を消去するとしている。そのため、セキュリティの確保は使用者による電源カートリッジの着脱に依存しており、使用者が意図的かつ容易にセキュリティを破ることが可能となっている。また、省電力の観点においても、電子ペーパは電池式で、無電源の場合は表示が消えるものとしているため、消費電力面で問題が有る。
【0009】
(3)バッテリ動作可能な情報端末装置
バッテリを電源として搭載し、通信動作可能な情報端末装置の情報表示に電子ペーパを利用することが考えられる。この種の装置は、ケーブルレスを実現できるが、表示だけを目的とせずさまざまな機能を搭載する場合には消費電力面で問題が有る。
【0010】
また、装置内にハードディスク等の記憶媒体を持ち、外部記憶媒体との接続が可能等、受信したデータを保存し容易に情報を持ち出せるため情報漏洩の問題が有る。
【0011】
また、装置の機能にもよるが一般的に高価格製品であるため、例えば会議資料のように複数の人に配布するには設備導入コストや、電源コンセント確保、可搬性で問題が有る。
【0012】
(4)プロジェクタまたは大画面ディスプレイ装置
同時に複数の人が情報共有できる装置として、プロジェクタまたは、大画面ディスプレイ装置がある。例えば、会議室に1〜数台のプロジェクタやディスプレイを設置することで、出席者全員の情報共有が可能になるが、ペーパ(用紙)のように各自別々のページを参照したり、補足資料を参照したりすることができない。
【0013】
このような場合、要望に応じて再表示する、別途印刷資料を配布する、情報端末用の電子ファイルを配布する等しなければならず、会議進行への支障や、資料配布による非ペーパレス化(省資源化)、資料持ち出しによる情報漏洩で問題が有る。
【0014】
(5)特許文献3(特開2008−203842表示装置および回路)では、電子ペーパが電磁波から電力を得る非接触電力伝送可能なディスプレイ装置としている。また、特許文献4(特開2009−76994非接触データ転送装置)では非接触電力伝送に加えてデータも伝送可能としている。
【0015】
この種の装置は、家電や一般情報機器として非接触電力伝送可能なテレビや端末装置と同様に、電源コードや通信線の配線による混雑をなくすことができる。しかし、非接触電力伝送の効率が低いことにより、直接電源接続するよりも低消費化することが困難であり、省エネ面では逆効果であり問題が有る。また、給電が途絶えた場合、バッテリ等が無ければ表示を保持することができない。特に、プロジェクタまたは、大画面ディスプレイ装置に適用した場合には非接触伝送可能な電力量で問題がある。
【0016】
(6)電子ペーパを用いて情報表示する装置
電子書籍など、各種方式による電子ペーパを用いた装置がある。この装置では無電力にて表示を保持できる電子ペーパを使用することにより、表示更新時以外は表示用電源が不要で有ることから低消費化が可能となり、バッテリによる長時間動作が可能では有る。
【0017】
しかし、バッテリ消耗時は、交換または充電が必須で有るため、保守面での煩わしさが残る。常時電力を必要とする電子ペーパの場合は、更に、バッテリ交換または充電が頻繁となる。
【0018】
また、もともとの電子ペーパを用いた装置の目的は、ペーパ(用紙や書籍)の代わりであるため、多くは画面を保持し消去することは考えていない。数ページに渡り表示させたい場合、通信による内部記憶媒体へのデータ転送または、外部記憶媒体の接続が必要となり、データのコピーや、記憶媒体自身を持ち出すなど、情報漏洩の問題が有る。また、電源が無くとも表示を保持できるという利点が、逆に表示データをそのまま持ち出せるという点でも、情報漏洩の問題が有る。
【0019】
本発明の目的は、情報漏洩防止を確実にし、電源確保と管理が確実になり、しかもシステム構築を容易にした電子ペーパ装置および情報表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、前記の課題を解決するため、電子ペーパ装置は非接触電力伝送により電力が供給され、無線通信により表示データを受信し、受信した表示データで画像表示を更新し、表示更新後は表示電力を消費せずに表示状態を保持することができる、低消費電力かつコネクトレスな構成とし、非接触電力伝送による電力の給電エリアから離れたことを検知すると、僅かに蓄積した電力を使って表示画像および蓄積表示データを自己消去または、他の画像で上書きできるようにした電子ペーパ装置およびこの電子ペーパ装置を利用した情報表示システムとするもので、以下の構成を特徴とする。
【0021】
(電子ペーパ装置の発明)
(1)電子ペーパ部(50)と、非接触電力伝送送電装置(60)より無線伝送で電力を受電する非接触電力伝送部(20)と、サーバ(70)より無線通信により表示データを受信し、受信した表示データで前記電子ペーパ部に画像として表示し、前記送電装置から電力を受電する給電エリア外に移動したと認識したときに表示画像および記憶した表示データを消去する制御部(30)を備えたことを特徴とする。
【0022】
(2)上記(1)に記載の電子ペーパ装置において、前記非接触電力伝送部(20)は、前記非接触電力伝送装置(60)とは電磁誘導方式、電磁界共鳴方式、電波方式のいずれかの伝送方式で電力を受電し、この受電した電力を装置全体の電源として用いる蓄電部(22)を備えたことを特徴とする。
【0023】
(3)上記(1)または(2)に記載の電子ペーパ装置において、前記非接触電力伝送部(20)は、受電した電力量が指定したレベルを下回る場合に、前記非接触電力伝送送電装置からの給電エリア外に移動したことを認識する給電エリア監視部(23)を備えたことを特徴とする。
【0024】
(4)上記(1)〜(3)に記載の電子ペーパ装置において、前記蓄電部(22)は、電子ペーパ装置が給電エリア外に移動し受電できなくなった場合の電力として、受電した電力の一部を電気二重層キャパシタなどのコンデンサに蓄電する手段を備え、前記給電エリア監視部(23)は装置が給電エリア外に移動したと認識したときに前記コンデンサの蓄積電力を装置全体の電源として切り替える手段を備えたことを特徴とする。
【0025】
(5)上記(1)〜(4)に記載の電子ペーパ装置において、前記サーバ(70)から受信した表示データを、前記電子ペーパ部(50)の画像フォーマットに変化した後に画像表示させる書き込み処理部(34)と、所定の画像データで電子ペーパの表示画像を上書きする消去処理部(40)の両方を備えたことを特徴とする。
【0026】
(6)上記(1)〜(5)に記載の電子ペーパ装置において、前記電子ペーパ部(50)は、表示更新後は表示電力を消費せずに表示状態を保持できる電子ペーパを使用し、低消費化のために画像更新時に通電し、常時は無通電とする画像表示部(52)を備えたことを特徴とする。
【0027】
(7)上記(1)〜(6)に記載の電子ペーパ装置において、前記給電エリア監視部(23)が給電エリア外に移動したことを認識し、セキュリティレベル判定部(39)がメモリ部(32)に受信した表示データが情報の持ち出しを禁止するセキュリティレベルと判定した場合に、前記消去処理部(40)は所定の画像データによる上書きによって前記画像表示部(52)の画像を消去するとともに、前記メモリ部(32)の蓄積データを消去することを特徴とする。
【0028】
(8)上記(1)〜(7)に記載の電子ペーパ装置において、前記給電エリア監視部(23)は、電子ペーパ装置が前記給電エリア外に移動したことの認識に一定の時間の遅れを持たせることにより、給電エリアの内外の境界における感度を鈍らせることで、ある程度の可搬性が有り、ペーパ(用紙)の様な閲覧環境を提供することを特徴とする。
【0029】
(9)上記(1)〜(8)に記載の電子ペーパ装置において、前記電子ペーパ装置(10)は個々のセキュリティレベルが割り当てられ、このセキュリティレベル情報が前記表示データに付加され、前記セキュリティレベル判定部(39)は、前記セキュリティレベルに応じて前記表示画像および表示データの消去を行うか否かを判定することを特徴とする。
【0030】
(情報表示システムの発明)
(10)電子ペーパ装置(10)と、非接触電力伝送送電装置(60)およびサーバ(70)によってシステムを構築し、前記電子ペーパ装置(10)は、電子ペーパ部(50)と、前記非接触電力伝送送電装置(60)より無線伝送で電力を受電する非接触電力伝送部(20)と、前記サーバ(70)より無線通信により表示データを受信し、受信した表示データで前記電子ペーパ部に画像表示する制御部(30)で構成したことを特徴とする。
【0031】
(11)上記(10)に記載の情報表示システムにおいて、前記サーバ(70)のデータ管理コンピュータ(72)は、特定の電子ペーパ装置に対して表示データを送信するデータ管理手段と、複数の電子ペーパ装置に対して同一の表示データを一斉に送信するデータ管理手段のいずれかを備え、前記電子ペーパ装置はいずれかの送信手段の表示データでも受信できる手段を備えたことを特徴とする。
【0032】
(12)上記(10)または(11)に記載の情報表示システムにおいて、前記電子ペーパ装置(10)は、スイッチ部(35)の操作に基づき表示データ送信要求を前記サーバ(70)に送信し、前記サーバ(70)の前記データ管理コンピュータ(72)は該当する表示データを前記電子ペーパ装置(10)に送信することを特徴とする。
【0033】
(13)上記 (10)〜(12)に記載の情報表示システムにおいて、前記電子ペーパ装置(10)とサーバ(70)は、その間で無線通信される表示データおよび、表示データ送信要求を暗号化できる手段を備えたことを特徴とする。
【0034】
(14)上記(10)〜(13)に記載の情報表示システムにおいて、前記サーバ(70)から前記電子ペーパ装置(10)への表示データの通信は、近距離の小電力無線を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
以上のとおり、本発明によれば、電子ペーパ装置は非接触電力伝送により電力が供給され、無線通信により表示データを受信し、受信した表示データで画像表示を更新し、表示更新後は表示電力を消費せずに表示状態を保持することができる、低消費電力かつコネクトレスな構成とし、非接触電力伝送による電力の給電エリアから離れたことを検知すると、僅かに蓄積した電力を使って表示画像および蓄積表示データを自己消去または、他の画像で上書きできるようにしたため、情報漏洩防止を確実にし、電源確保と管理が確実になり、しかもシステム構築が容易になる。具体的には、
(1)非接触電力伝送による主な給電は、表示画像を更新する際の表示データ受信から表示更新までの間になり、無電力でも表示が保持できる電子ペーパを使用することで、待機状態においてほとんど電力を消費せず、省エネ効果が大きい。
【0036】
(2)非接触電力伝送による給電エリアから離れた場合、サーバに依存せずに、電子ペーパ装置が自動で表示画像および蓄積された表示データを消去または、他の画像で上書きする機能を有することで、情報の流出を制限できるため情報漏洩防止効果が大きい。なお、表示画像が消去されても、給電エリアに戻ることにより、再度サーバから表示データ受け取れるため再表示が可能である。
【0037】
(3)サーバから送信される表示データ量を制限することにより、電子ペーパ装置内に蓄積するデータ量を最小限にすることができ、情報漏洩のリスクを最小限に止めることができる。
【0038】
(4)非接触電力伝送により電力の供給を受け、給電が途絶えた場合は、電子ペーパ装置は、表示画像と表示データ消去に必要な電力と、給電エリア外に移動してから消去の動作に入るまでの時間分の電力を蓄電する機能を有すれば良いため、大容量の2次電池や充電回路が不要であり、電気二重層コンデンサなどを使用することで小型化、低価格、高寿命が実現できる。
【0039】
(5)非接触電力伝送により電力の供給を受け、表示データを無線にて受信することにより、電源コードや通信ケーブルの面倒な接続から解放されるため、給電エリア内においては、ペーパ(用紙)と同様な持ち運び性の有る閲覧環境となる。
【0040】
(6)非接触電力伝送の方式として、電磁誘導方式、電磁界共鳴方式、電波方式が有るが、電子ペーパ装置においては、どの方式を用いても良く、各方式により供給エリアの範囲が異なるため、可搬性と情報セキュリティ範囲の規模に応じて使い分けできる。
【0041】
(7)蓄電容量により、給電エリア外への移動から消去開始までの時間に、時間遅れを持たせることにより、電磁誘導方式のような給電可能距離の短い非接触電力伝送方式においても、ある程度の可搬性を持たせられるため、ペーパ(用紙)と同様な持ち運び性の有る閲覧環境となる。
【0042】
(8)無線通信方式の方式として、非接触電力伝送による給電エリア以上の通信距離かつ、他から傍受しにくい最小限のエリアで通信ができ、セキュアな通信が実現できればどの通信方式を用いても良い。本発明では、通信方式について言及せず、一般的な無線PANを用いることを前提としている。例えば、Bluetooth、ZigBee、UWB、ANTのような、近距離の小電力無線とした場合、情報セキュリティ範囲を狭め、省エネ効果も期待できる。
【0043】
(9)セキュリティ機能としての第一の目的は、給電エリア外に移動した装置の表示画像および表示データを消去し情報漏洩を防止することだが、重要度の低いデータに対しては、消去せずに、給電エリア外に移動したことを知らせる機能に止めることにより、セキュリティ機能の信頼性を高くかつ簡易化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】セキュリティ機能付き電子ペーパ装置とサーバによるシステム構成図。
【図2】セキュリティ機能付き電子ペーパ装置とサーバの詳細な構成図。
【図3】通信エリアと給電エリア外検出の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(1)電子ペーパ装置および情報表示システムの概略
図1は、非接触電力伝送によるセキュリティ機能付き電子ペーパ装置、およびこの電子ペーパ装置を使用した情報表示システムの構成を示す。電子ペーパ装置10(10a,10b,10c)は、非接触電力伝送部20と制御部30と電子ペーパ部50で構成する。情報表示システムは、多数の電子ペーパ装置10と、各電子ペーパ装置10に対して1対1もしくは1対Nの構成で無線給電伝送路80を通して非接触で電力伝送できる送電装置60(60a,60b,60c)と、各電子ペーパ装置10に対して1対1もしくは1対Nの構成で無線通信伝送路90を通して表示データを伝送できるサーバ70で構成する。
【0046】
(2)詳細な構成と情報表示動作の説明
図2に示すように、無線給電伝送路80は、非接触電力伝送の送電装置60内の非接触電力伝送送電部61から、セキュリティ機能付き電子ペーパ装置10内の非接触電力伝送受電部21へ供給される。非接触電力伝送の方式には、電磁誘導方式、電磁界共鳴方式、電波方式などが有り、本装置においてはどの方式を用いても良いが、各方式により、無線給電伝送路80の性能が異なる。セキュリティ強化を重視し給電エリアを狭める場合は、電磁誘導方式を使用することが好ましい。電磁誘導方式の現在の技術では、無線通信伝送路80は、およそ数センチメートル〜数十センチメートル以内である。
【0047】
サーバ70内の表示データ蓄積部71のデータは、データ管理コンピュータ72が、通信制御部73を通じ、無線通信伝送路90にてセキュリティ機能付き電子ペーパ装置10内の通信制御部31へ転送され、メモリ部32へ蓄積される。この無線通信伝送の方式として、無線通信伝送路90は、非接触電力伝送による給電エリア以上の通信距離かつ、他から傍受しにくい最小限のエリアで通信ができ、セキュアな通信が実現できるものとする。一般的には標準規格で定められた無線PANを用いることができ、特殊なものではない。例えば、Bluetooth、ZigBee、UWB、ANTのような、近距離の小電力無線や特小電力無線を利用することができる。また、サーバ70のデータ管理コンピュータ72は、特定の電子ペーパ装置に対して表示データを送信するデータ管理手段と、複数の電子ペーパ装置に対して同一の表示データを一斉に送信するデータ管理手段のいずれかを備え、電子ペーパ装置はいずれかの送信手段の表示データでも受信できるようにしておく。
【0048】
メモリ部32に蓄積された表示データは、画像変換部33にて電子ペーパ部50用の画像フオーマットをもつ画像データに変換された後に、書き込み処理部34により電子ペーパ部50に書き込まれる。このとき、表示電源供給部37により、電子ペーパ部50に電源も供給される。書き込まれた画像データは、ドライハ部51によりドライブされ、画像表示部52に表示される。
【0049】
メモリ部32より、全ての表示データが電子ペーパ部50へ書き込み完了すると、表示電源供給部37から供給される電源も切断される。電子ペーパ装置10内の画像表示部52には、無電力でも画像を保持できる電子ペーパを使用することで、画像表示切替えなどのとき以外は表示電源供給部37からの電源供給が不要となり、省電力効果をもたらす。
【0050】
セキュリティ機能付き電子ペーパ装置10側から表示データを要求する場合は、セキュリティ機能付き電子ペーパ装置10のスイッチ部35に入力機能を持たせ、表示データ送信要求部36がスイッチ入力の有無を判定し、スイッチ入力が有った場合は、通信制御部31を通じ、無線通信伝送路90にて、サーバ70内の通信制御部73へ転送され、データ管理コンピュータ72が表示データの転送要求を認識する。要求を受けたサーバ70は、前記手順と同様に、サーバ70内の表示データ71をセキュリティ機能付き電子ペーパ装置10へ転送する。なお、送信要求部36は、通信制御部31によって無線通信される表示データおよび、表示データ送信要求を暗号化できるようにするのが好ましい。また、送信要求する表示データ量を制限することにより、電子ペーパ装置内に蓄積するデータ量を最小限にし、情報漏洩のリスクを最小限に止めることができる。
【0051】
無線給電伝送路80経由で供給された無線電力は、セキュリティ機能付き電子ペーパ装置10の電源として使用されるとともに、蓄電部22に蓄電される。蓄電部22の電力は、セキュリティ機能により、電子ペーパ部50の画像表示部52に表示された画像の消去または書き換えと、メモリ部32のデータ消去の処理を行う際に最低限必要な電力を蓄積していれば良いため、電気二重層コンデンサやケミカルコンデンサなどのコンデンサを使用し、大容量の2次電池や特殊な充電回路は使用しない。
【0052】
給電エリア監視部23は、セキュリティ機能付き電子ペーパ装置10が、非接触電力伝送送電装置60から離れ、無線給電される電力レベルが低下し、給電不可能な状態になったことを検出すると、消去処理部40に対して給電エリア外であることを通知するとともに、セキュリティ機能付き電子ペーパ装置10の回路電源として、蓄電部22に蓄積された電力を供給する。この給電エリア監視部23は、装置が給電エリア外に移動したことの認識に一定の時間の遅れを持たせることにより、給電エリアの内外の境界における感度を鈍らせることで、ある程度の可搬性が有り、ペーパ(用紙)の様な閲覧環境を提供する。
【0053】
セキュリティ機能付き電子ペーパ装置10が無線給電伝送路80の給電エリア内と外の境界に有った場合、消去処理部40への通知が多発する場合がある。例えば、図3に示すように、電子ペーパ装置l0aが給電エリア80aに有る場合は問題ないが、電子ペーパ装置10bが給電エリア80bの近傍にあり、給電エリア80bを行き来するような場合である。このような場合、消去処理部40には、給電不可能な状態になって一定時間たってから、消去処理に入るように処理にヒステリシスを設ける。例えば、図3に示す、電子ペーパ装置10cが伝送路80の給電エリア80cからある程度離れると、消去処理が動作することになる。給電エリア80c内と外の境界に有った場合、LEDなどの警告表示部42により注意を促す。これにより、ある程度の可搬性のある、ペーパ(用紙)と同様な閲覧環境を提供する。
【0054】
消去処理部40が、給電エリア外に移動したことを認識すると、書き込み処理部34に対し、セキュリティレベルに応じた表示画像の消去要求を通知する。セキュリティレベルの最高レベルは、電子ベーハ部50の画像表示部52に表示された画像および、メモリ部32のデータ消去である。画像表示部52の画像消去は、一定のデータを電子ペーパ部50に書き込むか、固定画像データ部41の画像データで上書きする。この時の固定画像データは、使用者に対するメッセージ画像として良い。
【0055】
セキュリティレベルは、セキュリティレベル判定部39により判定される。判定要因は、セキュリティ機能付き電子ペーパ装置10個々に割り当てられたセキュリティレベルと、表示データ単位のセキュリティレベルで判定する。セキュリティ機能付き電子ペーパ装置10個々に割り当てられたセキュリティレベルは、大きくは情報の持ち出しを許可された装置と禁止された装置で分類する。
【0056】
表示データ単位のセキュリティレベルは、サーバ70より転送される表示データに付加され、セキュリティ機能付き電子ペーパ装置10へ転送され、セキュリティレベル判定部39で管理される。これらも、持ち出しを許可された表示データと禁止された表示データで分類する。電子ペーパ装置および表示データともに持ち出しが禁止されている場合、セキュリティレベルを最高レベルとみなす。セキュリティレベルが最低レベルの場合は、表示画像を消去せず、電力供給エリア外に出たことを通知するメッセージを通知する程度にしても良い。
【符号の説明】
【0057】
10:セキュリティ機能付き電子ペーパ装置
20:非接触電力伝送部
21:非接触電力伝送受電部
22:蓄電部
23:給電エリア監視部
30:制御部
31:通信制御部
32:メモリ部
33:画像変換部
34:書き込み処理部
35スイッチ部
36:表示データ送信要求部
37:表示電源供給部
38:装置ID
39:セキュリティレベル判定部
40:消去処理部
41:固定画像データ部
42:警告表示部
50:電子ペーパ部
51:ドライハ部
52:画像表示部
60:非接触電力伝送送電装置
61:非接触電力伝送送電部
70:サーバ
71:表示データ
72:データ管理コンビュータ
73:通信制御部
80:無線電力および給電エリア
90:無線通信および通信エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペーパ部(50)と、非接触電力伝送送電装置(60)より無線伝送で電力を受電する非接触電力伝送部(20)と、サーバ(70)より無線通信により表示データを受信し、受信した表示データで前記電子ペーパ部に画像として表示し、前記送電装置から電力を受電する給電エリア外に移動したと認識したときに表示画像および記憶した表示データを消去する制御部(30)を備えたことを特徴とする電子ペーパ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ペーパ装置において、前記非接触電力伝送部(20)は、前記非接触電力伝送装置(60)とは電磁誘導方式、電磁界共鳴方式、電波方式のいずれかの伝送方式で電力を受電し、この受電した電力を装置全体の電源として用いる蓄電部(22)を備えたことを特徴とする電子ペーパ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子ペーパ装置において、前記非接触電力伝送部(20)は、受電した電力量が指定したレベルを下回る場合に、前記非接触電力伝送送電装置からの給電エリア外に移動したことを認識する給電エリア監視部(23)を備えたことを特徴とする電子ペーパ装置。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の電子ペーパ装置において、前記蓄電部(22)は、電子ペーパ装置が給電エリア外に移動し受電できなくなった場合の電力として、受電した電力の一部を電気二重層コンデンサなどのコンデンサに蓄電する手段を備え、前記給電エリア監視部(23)は装置が給電エリア外に移動したと認識したときに前記コンデンサの蓄積電力を装置全体の電源として切り替える手段を備えたことを特徴とする電子ペーパ装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の電子ペーパ装置において、前記サーバ(70)から受信した表示データを、前記電子ペーパ部(50)の画像フォーマットに変化した後に画像表示させる書き込み処理部(34)と、所定の画像データで電子ペーパの表示画像を上書きする消去処理部(40)の両方を備えたことを特徴とする電子ペーパ装置。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の電子ペーパ装置において、前記電子ペーパ部(50)は、表示更新後は表示電力を消費せずに表示状態を保持できる電子ペーパを使用し、低消費化のために画像更新時に通電し、常時は無通電とする画像表示部(52)を備えたことを特徴とする電子ペーパ装置。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の電子ペーパ装置において、前記給電エリア監視部(23)が給電エリア外に移動したことを認識し、セキュリティレベル判定部(39)がメモリ部(32)に受信した表示データが情報の持ち出しを禁止するセキュリティレベルと判定した場合に、前記消去処理部(40)は所定の画像データによる上書きによって前記画像表示部(52)の画像を消去するとともに、前記メモリ部(32)の蓄積データを消去することを特徴とする電子ペーパ装置。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の電子ペーパ装置において、前記給電エリア監視部(23)は、電子ペーパ装置が前記給電エリア外に移動したことの認識に一定の時間の遅れを持たせることにより、給電エリアの内外の境界における感度を鈍らせることで、ある程度の可搬性が有り、ペーパ(用紙)の様な閲覧環境を提供することを特徴とする電子ペーパ装置。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の電子ペーパ装置において、前記電子ペーパ装置(10)は個々のセキュリティレベルが割り当てられ、このセキュリティレベル情報が前記表示データに付加され、前記セキュリティレベル判定部(39)は、前記セキュリティレベルに応じて前記表示画像および表示データの消去を行うか否かを判定することを特徴とする電子ペーパ装置。
【請求項10】
電子ペーパ装置(10)と、非接触電力伝送送電装置(60)およびサーバ(70)によってシステムを構築し、前記電子ペーパ装置(10)は、電子ペーパ部(50)と、前記非接触電力伝送送電装置(60)より無線伝送で電力を受電する非接触電力伝送部(20)と、前記サーバ(70)より無線通信により表示データを受信し、受信した表示データで前記電子ペーパ部に画像表示する制御部(30)で構成したことを特徴とする情報表示システム。
【請求項11】
請求項10に記載の情報表示システムにおいて、前記サーバ(70)のデータ管理コンピュータ(72)は、特定の電子ペーパ装置に対して表示データを送信するデータ管理手段と、複数の電子ペーパ装置に対して同一の表示データを一斉に送信するデータ管理手段のいずれかを備え、前記電子ペーパ装置はいずれかの送信手段の表示データでも受信できる手段を備えたことを特徴とする情報表示システム。
【請求項12】
請求項10または11に記載の情報表示システムにおいて、前記電子ペーパ装置(10)は、スイッチ部(35)の操作に基づき表示データ送信要求を前記サーバ(70)に送信し、前記サーバ(70)の前記データ管理コンピュータ(72)は該当する表示データを前記電子ペーパ装置(10)に送信することを特徴とする情報表示システム。
【請求項13】
請求項10〜12に記載の情報表示システムにおいて、前記電子ペーパ装置(10)とサーバ(70)は、その間で無線通信される表示データおよび、表示データ送信要求を暗号化できる手段を備えたことを特徴とする情報表示システム。
【請求項14】
請求項10〜13に記載の情報表示システムにおいて、前記サーバ(70)から前記電子ペーパ装置(10)への表示データの通信は、近距離の小電力無線を用いたことを特徴とする情報表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−50565(P2013−50565A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188195(P2011−188195)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(502002474)明電ソフトウエア株式会社 (12)
【Fターム(参考)】