説明

電子メガネ用レンズおよび電子メガネ

【課題】レンズの内部に設けられて電気素子に電気エネルギーを良好に供給でき、しかも光透過率が良好な電子メガネ用レンズを提供することを目的とする。
【解決手段】レンズ(1)は、下基板(100)と上基板(200)の間に電気素子を内蔵して構成されている。下基板(100)には、電気素子のための下部電極パターン(105)が形成されている。上基板(200)には、電気素子のための上部電極パターン(205)が形成されている。下部電極パターン(105)と上部電極パターン(205)は、レンズ(1)のレンズ端部(302)において、レンズ端部(302)のレンズ厚み方向に互いが対向していないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子メガネにおけるレンズ部の電気素子の電気配線に関するものであり、特に電気接続の信頼性を向上させることのできる構造を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
電子メガネは、レンズ表面若しくはレンズ内部にエレクトロクロミック(EC)素子、液晶素子等の電気素子を形成し、これらの電気素子に電気エネルギーを供給することによりレンズの機能を変化させる電子メガネが提案されている。
【0003】
一例としてはEC素子を用いたものがある。
この例においては、EC素子を駆動させるための電極配線方法として、図43のレンズ断面に示す様に、基板レンズ601の上に下部ITO透明電極602、Ir/SnO層603、Ta層604、WO層605、上部ITO透明電極層606からなるEC素子607が形成されており、各電極層からの取り出し電極として2層構造のメッキ層608a,608bがレンズ外周部(ヤゲン(薬研)の斜面)に形成されており、それぞれ上部ITO透明電極層606、下部ITO透明電極層602と電気的に接触している。一方、メガネのフレームは図44に示されるよう電流通路を兼用する金属製の上部リム609a、下部リム609bから構成されている。上部リム609a、下部リム609bを結合する場合には薄いプラスティックシートなどの絶縁体を介して結合する。
【0004】
前記レンズとリムの結合及び制御部とEC素子607の結線においては、前記レンズ外周部に形成される電極608a,608bと、上部リム609a、下部リム609bがそれぞれ接触した状態とし、さらに上部リム609a、下部リム609b末端にて制御部からの端子を挟み込む形にてリムロック609a1によって締め込む方法が示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−138720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成では、レンズ外周部の電極である下部ITO透明電極602,上部ITO透明電極層606が、リムである上部リム609a、下部リム609bとの接触によってのみ導通を得ているため、例えばリムロック609a1を締め込むねじ(図示せず)が緩んだりした場合に導通不良が起こる。
【0007】
この導通不良を改善するには、ITO透明電極層の膜厚を厚くする必要があるが、蒸着などのドライプロセスでは膜厚を厚くすることが出来ない。そのため、ウェットプロセスを用いてITO透明電極層の形成を行う。ところが、ウェットプロセスでは、ITO粒子をインク溶媒に分散して塗布するため、ITO透明電極層の電気抵抗値が高くなり、レンズ内部の素子の動作特性を損なうという課題を有している。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電子メガネにおけるレンズ内部の素子の動作特性を損なうことなく、レンズ外部の電子回路との電気接続信頼性を高めた電子メガネを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子メガネ用レンズは、下基板と上基板の間に電気素子を内蔵したレンズであって、下基板には、前記電気素子のための下部電極パターンが形成され、上基板には、前記電気素子のための上部電極パターンが形成され、レンズ端部において前記下部電極パターンと前記上部電極パターンを、前記レンズ端部のレンズ厚み方向に互い違いに形成したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電子メガネ用レンズは、下基板と上基板の間に電気素子を内蔵したレンズであって、下基板には、前記電気素子のための下部電極パターンが形成され、上基板には、前記電気素子のための上部電極パターンが形成され、レンズ端部の付近には、前記下部電極パターンと接続する第1補助電極層と、前記上部電極パターンと接続する第2補助電極層が形成されており、前記第1の補助電極層と前記第2の補助電極層を、レンズ厚み方向に互い違いに形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この構成によると、電子メガネ用レンズは、レンズ端部において露出たレンズ部電極パッドが、ITOインクで形成された補助電極層とITOをスパッタリングした下部電極パターンとの積層によって形成された電極が形成されているため、電極パターンの電極としての体積抵抗率を比較的小さくでき、しかも光透過率が良好で目障りになるような事態を回避できる。
【0012】
また、メガネフレームは、配線部電極パッドがレンズのレンズ部電極パッドに対応した位置に配置された電気接続手段を有しており、前記配線部電極パッドと前記レンズのレンズ部電極パッドとの間に異方導電性ゴムが介在しているため、レンズ締結部の緩みや電気配線のずれによる断線と、漏電によるショート等電気的トラブルを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における電子メガネ要部の拡大図
【図2】同実施の形態における電子メガネ要部の拡大図
【図3】本発明の実施の形態2におけるザグリを形成した電子メガネ要部の拡大図
【図4】同実施の形態におけるザグリを形成した電子メガネ要部の拡大図
【図5】電子メガネの上面図と利用者の側から見た拡大図
【図6】本発明の実施の形態3における完成したレンズ1を分解して図示したイメージ図
【図7】同実施の形態における下基板の加工の工程を示す斜視図
【図8】同実施の形態における下基板の加工の工程を示す断面図
【図9】同実施の形態における上基板の加工の工程を示す斜視図
【図10】同実施の形態における上基板の加工の工程を示す断面図
【図11】同実施の形態におけるレンズを第1の補助電極層104を通る位置で切り欠いた拡大斜視図
【図12】同実施の形態におけるレンズを第1の補助電極層104を通る位置で切断した断面図
【図13】同実施の形態におけるレンズを第2の補助電極層204を通る位置で切り欠いた拡大斜視図
【図14】同実施の形態におけるレンズを第2の補助電極層204を通る位置で切断した断面図
【図15】同実施の形態におけるレンズをカットする位置を示す平面図
【図16】同実施の形態におけるカットしたレンズのレンズ端面を示す拡大斜視図
【図17】同実施の形態における要部の拡大図
【図18】同実施の形態におけるメガネフレームの概略図とその智の部分の拡大斜視図と構成図
【図19】同実施の形態におけるレンズがメガネフレームにセットされた状態の構成図
【図20】同実施の形態におけるレンズのレンズ端面に銀ペーストを付けた別の実施例の拡大斜視図
【図21】同実施の形態におけるレンズがメガネフレームにセットされた状態の別の実施例の構成図
【図22】本発明の実施の形態4における完成したレンズ1を分解して図示したイメージ図
【図23】同実施の形態における下基板の加工の工程を示す断面図
【図24】同実施の形態におけるレンズを第1の補助電極層104を通る位置で切り欠いた拡大斜視図
【図25】同実施の形態におけるレンズを第2の補助電極層204を通る位置で切断した断面図
【図26】本発明の実施の形態5における完成したレンズ1を分解して図示したイメージ図
【図27】同実施の形態における下基板の加工の工程を示す斜視図
【図28】同実施の形態における下基板の加工の工程を示す断面図
【図29】同実施の形態における上基板の加工の工程を示す斜視図
【図30】同実施の形態における上基板の加工の工程を示す断面図
【図31】同実施の形態におけるレンズを第1の凹部102を通る位置で切り欠いた拡大斜視図
【図32】同実施の形態におけるレンズを第1の凹部102を通る位置で切断した断面図
【図33】同実施の形態におけるレンズを第2の凹部202を通る位置で切り欠いた拡大斜視図
【図34】同実施の形態におけるレンズを第2の凹部202を通る位置で切断した断面図
【図35】同実施の形態におけるレンズをカットする位置を示す平面図
【図36】同実施の形態におけるカットしたレンズのレンズ端面を示す拡大斜視図
【図37】本発明の実施の形態6における完成したレンズ1を分解して図示したイメージ図
【図38】同実施の形態における下基板の加工の工程を示す断面図
【図39】同実施の形態におけるレンズを第1の凹部102を通る位置で切り欠いた拡大斜視図
【図40】同実施の形態におけるレンズを第2の凹部202を通る位置で切断した断面図
【図41】本発明の実施の形態7における完成したレンズ1を分解して図示したイメージ図
【図42】本発明の実施の形態8における完成したレンズ1を分解して図示したイメージ図
【図43】従来の電子メガネを示す図
【図44】従来の電子メガネを示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の電子メガネの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図5(a)(b)に電子メガネを示す。
【0015】
図1は図5(a)のA−A断面図で、本発明の第1の実施の形態におけるレンズ部電極パッドと配線部電極パッドの接続部断面を示す。
同様に図2は図5(b)のB−B断面図で、レンズ部電極パッドと配線部電極パッドの接続部のイメージ図を示す。
【0016】
本発明の電子メガネは、メガネフレーム11と、液晶やエレクトロクロミックなどの電気素子(図示せず)を有し前記メガネフレーム11のリム8にセットされたレンズ1と、メガネフレーム11の側に設けられレンズ1の前記電気素子を駆動するために電気信号を発生する制御部5と、メガネフレーム11の側に設けられ制御部5からの信号を伝達する電気接続手段4と、レンズ1とリム8の間に挟まれた異方導電性ゴム7と、リム8の上下のリムロック9,9を締め込むネジ10などから構成されている。
【0017】
なお、レンズ1はリム8の内側に形成されている溝8aに嵌め込まれており、レンズ1には、前記電気素子に電気信号を送る電極パターン2a,2bと、電極パターン2a,2bの端部で電極パターン2a,2bの接触面積を向上させるためのレンズ部電極パッド3a,3bがヤゲン(薬研)1aに形成されている。
【0018】
メガネフレーム11の側の電気接続手段4の一端部には、電極パッド6a,6bが形成されており、異方導電性ゴム7によってレンズ部電極パッド3a,3bと電極パッド6aと6bとの間が電気接続されている。
【0019】
電極パターン2a,2bはITOに代表される非常に薄い透明電極により形成されており、その電極パターン2a,2bはレンズ1の外周側壁部のヤゲン1aにて外部に露出されている。ここで電極パターン2a,2bの膜厚は10nm〜40nm程度しかなく、外部へ露出した電極パターン2a,2bは非常に細い10nm〜40nm程度の線幅のライン状である。そのために異方導電性ゴム7との電気接触がうまく行かない場合が有る。そのためこの実施の形態1では、レンズ1の外部に露出した電極パターン2a,2bに対して、銀ペーストやナノ粒子などを用い電極部を拡大するためにレンズ部電極パッド3a,3bをヤゲン1aの1つの平面上に形成している。
【0020】
このとき、電極パターン2a,2bは、レンズ厚み方向における間隔が前記電気素子の厚さにほぼ等しい数μm程度しかなく、レンズ部電極パッド3a,3bを電極パターン2a,2bに対し個別に形成するためには、レンズ端部において電極パターン2a,2bがレンズ厚み方向に重ならないようにしておく必要がある。
【0021】
電源やIC(集積回路)などから構成される制御部5から発生した電気信号は、フレキシブル基板などの電気接続手段4を介してレンズ部電極パッド3a,3bに対応した形状の配線部電極パッド6a,6bに伝達され、異方導電性ゴム7を挟んでレンズ部電極パッド3a,3bに伝達される。
【0022】
レンズ部電極パッド3a,3bと配線部電極パッド6a,6b間に設置される異方導電性ゴム7は、側壁面をシリコーンなどのゴム材料にてコートされた一般的な異方導電性ゴムを用いる。異方導電性ゴム7は、リムロック9をねじ10で締め込みレンズを取り付ける際、弾性体である異方導電性ゴム7が十分に圧縮(変形)し、導通部の露出する面が浮いた状態にならないようにその形状を設定する。
【0023】
このように電子メガネを構成することにより、リムロック9のネジ10による締め込みが多少緩んでも、異方導電性ゴム7の弾性変形があるため電気接続が完全に断線することも無く使用することが可能となる。
【0024】
また、レンズ部電極パッド3a,3bと配線部電極パッド6a,6bを異方導電性ゴム7の圧縮変形によりシールすることが可能となり、雨などに濡れてもショートすることなく使用することが可能となる。
【0025】
(実施の形態2)
レンズ1の外周部は、図2に示す様レンズ外周部にヤゲン1aといわれる山型の突起が形成され、メガネフレーム11の側のリム8の内周部には図2にも示した谷状の溝8aが形成されている。
【0026】
レンズ1のメガネフレームへの取り付けは、ヤゲン1aと溝8aを係合させて固定する方法が最も一般的で有る。しかしながらこの構造では、リムロック9をねじ10で締め込む際に異方導電性ゴム7と電気接続手段4に対し斜めに力が加わってしまうこととなり、それぞれが所定位置からずれてしまい組み立て(レンズ嵌め込み)や電気接続がうまく出来ないことがある。
【0027】
そこで、この実施の形態2では図3と図4に示すように構成することによって、組み立て時に異方導電性ゴム7と電気接続手段4に対し斜め方向の力が作用しないように改善されている。
【0028】
図3は、電子メガネのレンズ部電極パッドと配線部電極パッドの接続部断面のイメージ図で、図5(a)に示す上部から見た電子メガネのA−A断面に相当するものである。同様に図4は、電子メガネのレンズ部電極パッドと配線部電極パッドの接続部のイメージ図で、図5(b)に示す正面から見た電子メガネのB−B断面に相当するものである。
【0029】
図3と図4に示すように、レンズ1の側のレンズ部電極パッド3a,3bの周辺部には、異方導電性ゴム7用のレンズ側ザグリ1bが形成されている。さらに、メガネフレーム11の側には、リム8の内側の電気接続手段4が設置される部分にリム側ザグリ8bが形成されている。
【0030】
このように異方導電性ゴム7と電気接続手段4をそれぞれザグリ部1b,8bに設置することによって、リムロック9をネジ10で締め込んでも異方導電性ゴム7、電気接続手段4がずれにくく、安定して組み立てることが出来るようになり、電気配線のずれによる断線を防ぐことできる。
【0031】
さらに具体的には、レンズ側ザグリ1bとリム側ザグリ8bの形状を、リムロック9,9をネジ10で締め込む際にレンズ側ザグリ1b、リム側のザグリ8bそれぞれの底面に対し垂直方向に荷重がかかるように形成されており、この構成によると安定して組み立てることができ、電気配線のずれによる断線を防ぐことができる。
【0032】
上記の各実施の形態において、電気接続手段4は一端が制御部5に接続され、他端部の配線部電極パッド6a,6bがリム8の溝8aにおいてレンズ部電極パッド3a,3bに対向する部分に設置されるよう取り回しすればよく、例えばリムロック9やリム8の外周に電気接続手段4を設置するように構成することもできる。
【0033】
ここではさらに安定的に電気接続を達成するために、図1,図2,図3,図4に示すように電気接続手段4をリムロック9の間を通し、リム8の内側の溝8aまたはザグリ8bに設置することを例として挙げる。このように電気接続手段4をリムロック間に設置することにより、組み立て時の電気接続手段4の位置ずれを防ぎ、さらに電気接続手段4が外れにくい形とすることが可能である。
【0034】
具体的なリムロック9間への電気接続手段4の取り回しは、リムロック9自身で挟み込んで固定しても良いし、リムロック9に電気接続手段4の溝を形成しても良い。さらにはリムロック9に電気接続手段4の位置決めピンを設ける、またはねじ10を位置決めピンとして用いたり、溝を形成するものであれば、溝パターン自体を位置決め手段として用いれば電気接続手段4が位置ずれしにくく外れにくい構成とすることができる。
【0035】
さらに電気接続手段4をリムロック9の間に通すことによる付加的な効果としては、電気接続手段4が外部に露出しないため見た目にもすっきりしており、メガネ自体のデザイン性を乱すことが無い。
【0036】
なお、本実施の形態においては、制御部5の設置位置は限定しないが、メガネを構成するテンプルの内側や、よろいの部分に固定されるようにすれば良く、リムロックの近くであれば電気接続手段4を短くすることができる。
【0037】
(実施の形態3)
図6〜図19は電子メガネ用レンズ1の製造方法を示す。
図6は製造工程がわかりやすくするために、完成したレンズ1を分解して図示したイメージ図で、下基板100と上基板200の間に電気素子としての液晶300を内蔵している。400は下基板100と上基板200を張り合わせしている接着層である。
【0038】
図7と図8は下基板100の加工の工程を示している。
図7(a)では、図8(a)に示すように下基板100の上基板200との対向面101に、後に前記液晶400が配置される電気素子形成部103を形成する。
【0039】
図7(b)では、図8(b)に示すように表面が平滑な下基板100に導電性インクで部分的にコーティングして第1の補助電極層104を形成する。具体的には、導電性インクとしてのITOインクを使用する。ITOインクの物性は導電性粒子が分散しており、ITOスパッタリングで形成した導電膜の体積抵抗率6〜2×10−4Ω・cm程度に比べて体積抵抗率が2.4×10Ω・cm程度と大きい反面、ITOインクによる1μmの膜厚の分光透過率とスパッタによる膜厚30nmのITOの分光透過率はほぼ同じ値を示している。従って同じ膜厚における透明度はスパッタリングで形成したITO導電膜に比べITOインクで形成した導電膜のほうが優れている。ITOインクは1μmの膜厚であっても80%程度の透過率を得ることができる。ITOインクのコーティング方法は、インクジェット、ディスペンサーを用いれば良い。また、テープなどによりマスキングした状態にて必要な場所にスピンコートやディッピングすることによっても可能である。ITOインクで形成する第1の補助電極層104の膜厚は1μm以上あればよい。
【0040】
図7(c)では、図8(c)に示すように電気素子形成部103と第1の補助電極層104ならびに電気素子形成部103と第1の補助電極層104を接続する下部電極パターン105を形成する。具体的には、電気素子形成部103と第1の補助電極層104をつなぐマスクパターンを用いてITOスパッタリングを行う。下部電極パターン105の膜厚は10nm〜40nm程度である。
【0041】
図7(d)では、図8(d)に示すように電気素子形成部103と下部電極パターン105の上に下部絶縁層パターン106を形成する。具体的には、図7(c)でのITOスパッタ後、チャンバから下基板100を取り出すことなく(大気開放することなく)SiOを連続的にスパッタする。一つのチャンバ内に複数のターゲットがあるスパッタ装置であれば実施が可能で、特殊な装置ではない。
【0042】
図7(e)では、液晶300を注入する部分に配向膜107を塗布し、ラビング処理を行う。
図9と図10は上基板200の加工の工程を示している。
【0043】
図9(a)のように表面が平滑な上基板200に、図9(b)では、図10(b)に示すように導電性インクでコーティングして第2の補助電極層204を形成する。コーティング方法は、インクジェット、ディスペンサーを用いれば良い。また、テープなどによりマスキングした状態にて必要な場所にスピンコートやディッピングすることによっても可能である。第2の補助電極層204の膜厚は1μm以上あればよい。
【0044】
図9(c)では、図10(c)に示すように下基板100の側の電気素子形成部103に対応する部分203と第2の補助電極層204ならびに前記部分203と第2の補助電極層204を接続する上部電極パターン205を形成する。具体的には、前記部分203と第2の補助電極層204をつなぐマスクパターンを用いてITOスパッタリングを行う。上部電極パターン205の膜厚は10nm〜40nm程度である。
【0045】
図9(d)では、図10(d)に示すように上部電極パターン205の上に上部絶縁層パターン206を形成する。具体的には、図9(c)でのITOスパッタ後、チャンバ装置から上基板200を取り出すことなく(大気開放することなく)SiOを連続的にスパッタする。一つのチャンバ内に複数のターゲットがあるスパッタ装置であれば実施が可能で、特殊な装置ではない。
【0046】
図9(e)では、上部電極パターン205のうちの前記部分203の上の個所に配向膜207を塗布し、ラビング処理を行う。このようにして作製した下基板100の電気素子形成部103と前記上基板200との間に前記電気素子としての液晶300を挟んで下基板100と上基板200を接着層400によって貼り合わせる。具体的には、ディスペンサーやインクジェットなどにより液晶300を注入する。この液晶300の注入後、外周部分に接着剤(封止剤)を充填し、下基板100と上基板200を接着層400によって貼り合わせる。
【0047】
図11は貼り合わせた下基板100と上基板200を、第1の補助電極層104の端部と第2の補助電極層204を通る位置で切り欠いた拡大斜視図を示す。図12は図11の要部の拡大図である。図13は貼り合わせた下基板100と上基板200を、第2の補助電極層204を通る位置で切り欠いた拡大斜視図を示す。図14は図13の要部の拡大図である。
【0048】
このように張り合わせが完了した下基板100と上基板200を、前記メガネフレーム11のリムの形状に応じて図15に示すように第1の補助電極層104の端部と第2の補助電極層204の端部を通る切断線301でカットする。このカットによって、レンズ端部302に図16に示すように、第1の補助電極層104と下部電極パターン105との重ね合わせ部分の端面と、第2の補助電極層204と上部電極パターン205との重ね合わせ部分の端面とを露出させる。図17に示すように、下基板100の側では、第1の補助電極層104と下部電極パターン105の端面が露出している。上基板200の側では、第2の補助電極層204と上部電極パターン205の端面が露出している。
【0049】
この図16のレンズを用いて、図18と図19に示すようにしてメガネフレーム11にレンズ1がセットされた電子メガネを構成できる。
図18(a)に示すメガネフレーム11の智304の部分には、電気接続手段4としてのフレキシブル配線305a,305bが敷設されている。フレキシブル配線305a,305bの一端は前記制御部5に接続され、フレキシブル配線305a,305bの他端には配線部電極パッド306a,306bが形成されている。この配線部電極パッド306a,306bは図18(b)に示すようにメガネフレーム11のリム307の内部にセットされている。
【0050】
このリム307にレンズ1をセットする際には、配線部電極パッド306a,306bとレンズ1の側の第1の補助電極層104と下部電極パターン105、第2の補助電極層204と上部電極パターン205との間に、図19に示すように異方導電性ゴム308を介装した状態にして、ネジ10を締めてレンズ1をリム307で支持することによって、配線部電極パッド306aは異方導電性ゴム308を介してレンズ側の下部電極パターン105と確実に導通する。また、配線部電極パッド306bは異方導電性ゴム308を介してレンズ側の上部電極パターン205と確実に導通する。これは、第1の補助電極層104を下部電極パターン105上に形成しているため、異方導電性ゴム308との間の接触面積が増え、電気的導通が良くなるからである。第2の補助電極層204も同様の効果を与える。このようにして、前記制御部5から液晶300を駆動するに必要な電圧をレンズ1の下部電極パターン105と上部電極パターン205の間に印加することができる。
【0051】
下部電極パターン105の膜厚を厚くして第1の補助電極層104を設けない場合、上部電極パターン205の膜厚を厚くして第2の補助電極層204を設けない場合を、この実施の形態と比較すると、第1,第2の補助電極層104,204を設けなかった場合には、電極としての抵抗値は小さくできるけれども、電子メガネで重要である光の透過が低下するため、下部電極パターン105と上部電極パターン205を目視で容易に確認できるようになって目障りになる。これに対して実施の形態3のように下部電極パターン105の膜厚を薄くして第1の補助電極層104を重ね合わせて膜厚を厚くし、上部電極パターン205の膜厚を薄くして第2の補助電極層204を重ね合わせて膜厚を厚くすることによって、電極としての抵抗値を比較的小さくでき、しかも下部電極パターン105と上部電極パターン205が目障りになるような事態を回避することができるので、第1,第2の補助電極層104,204の重ね合わせ構造は非常に有効である。
【0052】
また、下基板100と上基板200に第1,第2の補助電極層104,204をコーティングしてから下部電極パターン105,上部電極パターン205を形成する工程を採用した場合には、下部電極パターン105,上部電極パターン205の上に、下部絶縁層パターン106,上部絶縁層パターン206を形成する工程を、前述のように、チャンバを大気開放して下基板100,上基板200を取り出すことなく連続的にスパッタして実施することができる。
【0053】
具体的には、下基板100と上基板200に下部電極パターン105,上部電極パターン205を形成してから第1,第2の補助電極層104,204をコーティングする後付け処理工程を採用した場合には、下部電極パターン105,上部電極パターン205をスパッタ形成して、スパッタ装置を大気開放して下基板100と上基板200を取り出しマスクパターンを変更してから下部絶縁層パターン106,上部絶縁層パターン206を形成することが必要になって、スパッタ装置の真空引きを二度も行うことになって加工プロセスが複雑になる。
【0054】
これに対してこの実施の形態3のように第1,第2の補助電極層104,204を下基板100と上基板200に先付け処理で形成した場合は、下基板100への下部電極パターン105の形成と下部絶縁層パターン106の形成をスパッタ装置を大気開放することなく実施でき、上基板200への上部電極パターン205の形成と上部絶縁層パターン206の形成をスパッタ装置を大気開放することなく実施できるため、加工プロセスの簡略化が可能である。
【0055】
さらに、図20と図21に示すように導電ペーストを第1の補助電極層104と第2の補助電極層204の上に付けると、接触面積が増えるので、さらに良い。つまり、図20に示すように露出した第1の補助電極層104と下部電極パターン105との重ね合わせ部分の端面と、第2の補助電極層204と上部電極パターン205との重ね合わせ部分の端面とにそれぞれ導電性ペーストとしての銀ペースト303a,303bを付着させる。レンズ端部302に形成された銀ペースト303aは、理想的には下部電極パターン105だけでなく第1の補助電極層104とも電気的に導通している。この実施の形態では、レンズ端部302に薄肉の下部電極パターン105が露出しているだけではなく、下部電極パターン105に比べて厚肉の第1の補助電極層104が露出しているため、レンズ端部302での下部電極パターン105の露出が不十分であっても、銀ペースト303aは厚肉の第1の補助電極層104を介して確実に下部電極パターン105と導通することができる。
【0056】
同様に、レンズ端部302に形成された銀ペースト303bは、理想的には上部電極パターン205だけでなく第2の補助電極層204とも電気的に導通している。この実施の形態では、レンズ端部302に薄肉の上部電極パターン205が露出しているだけではなく、上部電極パターン205に比べて厚肉の第2の補助電極層204が露出しているため、レンズ端部302での上部電極パターン205の露出が不十分であっても、銀ペースト303bは厚肉の第2の補助電極層204を介して確実に上部電極パターン205と導通することができる。
【0057】
(実施の形態4)
図22〜図25は本発明の実施の形態4を示す。
実施の形態3では、下基板100に第1の補助電極層104をコーティングしてから下部電極パターン105を形成し、また、上基板200に第2の補助電極層204をコーティングしてから上部電極パターン205を形成したが、この実施の形態4では、第1,第2の補助電極層104,204を後付けする点だけが異なっている。その他は実施の形態3と同じである。
【0058】
図22は製造工程がわかりやすくするために、完成したレンズ1を分解して図示したイメージ図である。
図23(a)では、下基板100の電気素子形成部103から下基板100の外周部の近傍の一部分に掛けて下部電極パターン105を形成する。
【0059】
図23(b)では、下部電極パターン105の端部の上にだけ導電性インクでコーティングして第1の補助電極層104を形成し、次に、電気素子形成部103の上と、下部電極パターン105から第1の補助電極層104の上に下部絶縁層パターン106を形成する。更に、図22に示すように下部絶縁層パターン106の上には電気素子形成部103の位置に対応して配向膜107を形成する。
【0060】
この場合の上基板200も図23(a)(b)と同様に形成する。つまり図22に示すように、下基板100の側の電気素子形成部103に対応する部分と、上基板200の外周部の近傍の一部分とに掛けて上部電極パターン205を形成し、上基板200の外周部の近傍の上部電極パターン205の上にだけ導電性インクでコーティングして第2の補助電極層204を形成する。そして上部絶縁層パターン206を形成する。さらに、配向膜207を形成する。
【0061】
そして、下部電極パターン105に第1の補助電極層104を後付けした下基板100と、上部電極パターン205に第2の補助電極層204を後付けした上基板200との間に、液晶300を挟んで接着層400によって図23(c)のように貼り合わせる。図24は貼り合わせた下基板100と上基板200を、第1の補助電極層104を通る位置で切り欠いた拡大斜視図を示す。図25は貼り合わせた下基板100と上基板200を、上部電極パターン205を通る位置で切り欠いた拡大断面図を示す。
【0062】
このように第1,第2の補助電極層104,204を後付けした場合であっても、図15に示したように切断線301でカットすることによって、実施の形態3と同様にレンズ1のレンズ端部302に、下基板100の側では、第1の補助電極層104と下部電極パターン105の端面が露出し、上基板200の側では、第2の補助電極層204と上部電極パターン205の端面が露出する。その他は実施の形態3と同じである。
【0063】
また、下部絶縁パターン106と上部絶縁パターン206は、全面に形成すれば良いため、マスクを用いずにスパッタにより下部絶縁パターン106と上部絶縁パターン206を形成できる。
【0064】
(実施の形態5)
実施の形態3では下基板100の平滑な表面に第1の補助電極層104を形成し、上基板200の平滑な表面に第2の補助電極層204を形成したが、この実施の形態5では、濡れ性の高いITOインクを使用した場合であっても正確に所定位置に第1,第2の補助電極層104,204をパターニングできるよう、図26に示すように下基板100の表面101に第1の凹部102を形成し、上基板200の表面201に第2の凹部202を形成している。
【0065】
図26〜図36は電子メガネ用レンズ1の製造方法を示す。
図26は製造工程がわかりやすくするために、完成したレンズ1を分解して図示したイメージ図で、下基板100と上基板200の間に電気素子としての液晶300を内蔵して
いる。400は下基板100と上基板200を張り合わせしている接着層である。
【0066】
図27と図28は下基板100の加工の工程を示している。
図27(a)では、図28(a)に示すように下基板100の上基板200との対向面101に第1の凹部102と後に前記液晶400が配置される電気素子形成部103を形成する。第1の凹部102は、下基板100を樹脂成形する型に凸部を形成しておき、この凸部を転写することによって形成する。成型後に加工しても形成できる。おおよその寸法は幅0.5mm〜2mm×長さ10mm〜20mm程度であればよい。第1の凹部102の深さは数10μm〜数100μm程度である。
【0067】
図27(b)では、図28(b)に示すように第1の凹部102に導電性インクでコーティングして第1の補助電極層104を形成する。第1の補助電極層104の膜厚は1μm以上あればよい。具体的には、第1の凹部102に導電性インクとしてのITOインクを充填する。コーティング方法は、インクジェット、ディスペンサーを用いれば良い。下基板100の表面101に形成された第1の凹部102の表面をITOインクでコーティングして第1の補助電極層104としているので、濡れ性の高いITOインクを使用した場合であっても下基板100の所定位置に第1の補助電極層104を正確にパターニングできる。
【0068】
また、第1の凹部102以外をテープなどによりマスキングした状態にてスピンコートやディッピングすることにより第1補助電極層104を形成することもできる。
図27(c)では、図28(c)に示すように電気素子形成部103と第1の補助電極層104ならびに、第1の補助電極層104の上を覆うように電気素子形成部103と第1の補助電極層104を接続する下部電極パターン105を形成する。具体的には、電気素子形成部103と第1の凹部102をつなぐマスクパターンを用いてITOスパッタリングを行う。下部電極パターン105の膜厚は10nm〜40nm程度である。
【0069】
図27(d)では、図28(d)に示すように電気素子形成部103と下部電極パターン105の上に下部絶縁層パターン106を形成する。具体的には、図27(c)でのITOスパッタ後、チャンバから下基板100を取り出すことなく(大気開放することなく)SiOを連続的にスパッタする。一つのチャンバ内に複数のターゲットがあるスパッタ装置であれば実施が可能で、特殊な装置ではない。
【0070】
図27(e)では、液晶300を注入する部分に配向膜107を塗布し、ラビング処理を行う。
図29と図30は上基板200の加工の工程を示している。
【0071】
図29(a)では、図30(a)に示すように上基板200の下基板100との対向面201に第2の凹部202を形成する。第2の凹部202は、上基板200を樹脂成形する型に凸部を形成しておき、この凸部を転写することによって形成する。成型後に加工しても形成できる。おおよその寸法は幅0.5mm〜2mm×長さ10mm〜20mm程度であればよい。第2の凹部202の深さは数10μm〜数100μm程度である。
【0072】
図29(b)では、図30(b)に示すように第2の凹部202に導電性インクでコーティングして第2の補助電極層204を形成する。第2の補助電極層204の膜厚は1μm以上あればよい。具体的には、第2の凹部202に導電性インクとしてのITOインクを充填する。コーティング方法は、インクジェット、ディスペンサーを用いれば良い。上基板200の表面201に形成された第2の凹部202の表面をITOインクでコーティングして第2の補助電極層204としているので、濡れ性の高いITOインクを使用した場合であっても上基板200の所定位置に第2の補助電極層204を正確にパターニングできる。
【0073】
また、第2の凹部202以外をテープなどによりマスキングした状態にてスピンコートやディッピングすることにより第2の補助電極層204を形成することによっても第2の補助電極層204を形成できる。
【0074】
図29(c)では、図30(c)に示すように下基板100の側の電気素子形成部103に対応する部分203と第2の補助電極層204ならびに、第2の補助電極層204の上を覆うように前記部分203と第2の補助電極層204を接続する上部電極パターン205を形成する。具体的には、前記部分203と第2の凹部202をつなぐマスクパターンを用いてITOスパッタリングを行う。上部電極パターン205の膜厚は10nm〜40nm程度である。
【0075】
図29(d)では、図30(d)に示すように上部電極パターン205の上に上部絶縁層パターン206を形成する。具体的には、図29(c)でのITOスパッタ後、チャンバ装置から上基板200を取り出すことなく(大気開放することなく)SiOを連続的にスパッタする。一つのチャンバ内に複数のターゲットがあるスパッタ装置であれば実施が可能で、特殊な装置ではない。
【0076】
図29(e)では、上部電極パターン205のうちの前記部分203の上の個所に配向膜207を塗布し、ラビング処理を行う。
このようにして作製した下基板100の電気素子形成部103と前記上基板200との間に前記電気素子としての液晶300を挟んで下基板100と上基板200を接着層400によって貼り合わせる。具体的には、ディスペンサーやインクジェットなどにより液晶300を注入する。この液晶300の注入後、外周部分に接着剤(封止剤)を充填し、下基板100と上基板200を接着層400によって貼り合わせる。
【0077】
図31は貼り合わせた下基板100と上基板200を、第1の凹部102を通る位置で切り欠いた拡大斜視図を示す。図32は図31の要部の拡大図である。図33は貼り合わせた下基板100と上基板200を、第2の凹部202を通る位置で切り欠いた拡大斜視図を示す。図34は図33の要部の拡大図である。
【0078】
このように張り合わせが完了した下基板100と上基板200を、前記メガネフレーム11のリム8の形状に応じて図15と同様に切断線301で下基板100と上基板200をカットする。このときには、第1,第2の凹部102,202に掛かる位置でカットして、レンズ端部302に図35に示すように第1,第2の凹部102,202の切断面を露出させる。この露出した第1,第2の凹部102,202の切断面には、図36に示すように、下基板100の側では、第1の補助電極層104と下部電極パターン105の端面が露出している。上基板200の側では、第2の補助電極層204と上部電極パターン205の端面が露出している。
【0079】
この図35のレンズを用いて、図18と図19に示すようにメガネフレーム11にレンズ1をセットすることで、電子メガネを構成することが出来る。
このようにして、前記制御部5から液晶300を駆動するに必要な電圧をレンズ1の下部電極パターン105と上部電極パターン205の間に印加することができる。
【0080】
また、第1,第2の凹部102,202に第1,第2の補助電極層104,204をコーティングしてから下部電極パターン105,上部電極パターン205を形成する工程を採用した場合には、下部電極パターン105,上部電極パターン205の上に、下部絶縁層パターン106,上部絶縁層パターン206を形成する工程を、前述のように、チャンバを大気開放して下基板100,上基板200を取り出すことなく連続的にスパッタして実施することができる。
【0081】
具体的には、第1,第2の凹部102,202に下部電極パターン105,上部電極パターン205を形成してから第1,第2の補助電極層104,204をコーティングする後付け処理工程を採用した場合には、第1,第2の凹部102,202に下部電極パターン105,上部電極パターン205をスパッタ形成して、スパッタ装置を大気開放して下基板100、上基板200を取り出しマスクパターンを変更してから下部絶縁層パターン106,上部絶縁層パターン206を形成する工法と、第1、第2の凹部102,202に下部電極パターン105上部電極パターン205をスパッタにより形成して、スパッタ装置を大気開放して下基板100、上基板200を取り出し第1の補助電極104、第2の補助電極204を形成した後に再びスパッタする工法がある。しかしながらいずれの工法においてもスパッタ装置の真空引きを二度行うことになって加工プロセスが複雑になる。
【0082】
これに対してこの実施の形態の第1,第2の補助電極層104,204の先付け処理では、下基板100への下部電極パターン105の形成と下部絶縁層パターン106の形成をスパッタ装置を大気開放することなく実施でき、上基板200への上部電極パターン205の形成と上部絶縁層パターン206の形成をスパッタ装置を大気開放することなく実施できるため、加工プロセスの簡略化が可能である。
【0083】
さらに、図20と図21に示した場合と同様に、導電ペーストとしての銀ペースト303a,303bを第1の補助電極層104と第2の補助電極層204の上に付着させると、接触面積が増えるので、さらに良い点については、先の各実施の形態と同じである。
【0084】
(実施の形態6)
実施の形態4では下基板100の平滑な表面に第1の補助電極層104を形成し、上基板200の平滑な表面に第2の補助電極層204を形成したが、この実施の形態6では、濡れ性の高いITOインクを使用した場合であっても正確に所定位置に第1,第2の補助電極層104,204をパターニングできるよう、図37に示すように下基板100の表面101に第1の凹部102を形成し、上基板200の表面201に第2の凹部202を形成している。
【0085】
図37〜図40は本発明の実施の形態6を示す。
実施の形態5では、第1の凹部102に第1の補助電極層104をコーティングしてから下部電極パターン105を形成し、また、第2の凹部202に第2の補助電極層204をコーティングしてから上部電極パターン205を形成したが、この実施の形態6では、第1,第2の補助電極層104,204を後付けする点だけが異なっている。その他は実施の形態5と同じである。
【0086】
図37は製造工程がわかりやすくするために、完成したレンズ1を分解して図示したイメージ図である。
図38(a)では、下基板100の電気素子形成部103から第1の凹部102に掛けて下部電極パターン105を形成する。
【0087】
図38(b)では、第1の凹部102をコーティングしている下部電極パターン105の上にだけ導電性インクでコーティングして第1の補助電極層104を形成し、さらに第1の補助電極層104の上と下部電極パターン105と電気素子形成部103とを覆うように下部絶縁層パターン106を形成する。下部絶縁層パターン106の上には電気素子形成部103の位置に対応して図37に示すように配向膜107を形成する。
【0088】
この場合の上基板200も図38(a)(b)と同様に形成する。つまり図37に示すように、下基板100の側の電気素子形成部103に対応する部分と第2の凹部202ならびにこの両者をつなぐ部分に上部電極パターン205を形成し、その後に、第2の凹部202をコーティングしている上部電極パターン205の上にだけ導電性インクでコーティングして第2の補助電極層204を形成し、さらに第2の補助電極層204の上と上部電極パターン205とを覆うように上部絶縁層パターン206を形成する。さらに、配向膜207を形成する。
【0089】
そして、第1の凹部102に下部電極パターン105に第1の補助電極層104を後付けした下基板100と、第2の凹部202に上部電極パターン205に第2の補助電極層204を後付けした上基板200との間に、液晶300を挟んで接着層400によって図38(c)のように貼り合わせる。図39は貼り合わせた下基板100と上基板200を、第1の凹部102を通る位置で切り欠いた拡大斜視図を示す。図40は貼り合わせた下基板100と上基板200を、第2の凹部202を通る位置で切り欠いた拡大断面図を示す。
【0090】
このように第1,第2の凹部102,202に第1,第2の補助電極層104,204を後付けした場合であっても、図35と同じように前記切断線301でカットすることによって、実施の形態5と同様にレンズ1のレンズ端部302に、下基板100の側では、第1の補助電極層104と下部電極パターン105の端面が露出し、上基板200の側では、第2の補助電極層204と上部電極パターン205の端面が露出する。その他は実施の形態5と同じである。
【0091】
この実施の形態6の場合には、第1の凹部102に設けた下部電極パターン105の窪みに第1の補助電極層104を形成し、第2の凹部202に設けた上部電極パターン205の窪みに第2の補助電極層204を形成しているので、濡れ性の高いITOインクを使用した場合であっても下基板100と上基板200の所定位置に第1,第2の補助電極層104,204を正確にパターニングできる。
【0092】
また、下部絶縁パターン106と上部絶縁パターン206は全面に形成すれば良いため、マスクを用いずにスパッタにより絶縁層を形成できる。
(実施の形態7)
実施の形態4では下基板100に第1の補助電極層104を形成してから下部絶縁層パターン106を形成し、上基板200に第2の補助電極層204を形成してから上部絶縁層パターン206を形成したが、下部絶縁層パターン106には孔106b(図41を参照)を形成し、上部絶縁層パターン206には孔206b(図41を参照)を形成するとともに、第1の補助電極層104よりも下部絶縁層パターン106を先に形成し、第2の補助電極層204よりも上部絶縁層パターン206を先に形成する点だけが異なっている。
【0093】
この実施の形態7では、下部電極パターン105の上に形成された下部絶縁層パターン106の孔106bに導電性インクを入れて下部電極パターン105の一部をコーティングするので、濡れ性の高いITOインクを使用した場合であっても正確に所定位置に第1の補助電極層104をパターニングできる。同様に、上部電極パターン205の上に形成された上部絶縁層パターン206の孔206bに導電性インクを入れて上部電極パターン205の一部をコーティングするので、濡れ性の高いITOインクを使用した場合であっても正確に所定位置に第2の補助電極層204をパターニングできる。その他は実施の形態4と同じである。
【0094】
(実施の形態8)
実施の形態6では下基板100に第1の補助電極層104を形成してから下部絶縁層パターン106を形成し、上基板200に第2の補助電極層204を形成してから上部絶縁層パターン206を形成したが、下部絶縁層パターン106には孔106b(図42を参照)を形成し、上部絶縁層パターン206には孔206b(図42を参照)を形成するとともに、第1の補助電極層104よりも下部絶縁層パターン106を先に形成し、第2の補助電極層204よりも上部絶縁層パターン206を先に形成する点だけが異なっている。
【0095】
この実施の形態8では、下部電極パターン105の上に形成された下部絶縁層パターン106の孔106bに導電性インクを入れて下部電極パターン105の一部をコーティングするので、濡れ性の高いITOインクを使用した場合であっても正確に所定位置に第1の補助電極層104をパターニングできる。同様に、上部電極パターン205の上に形成された上部絶縁層パターン206の孔206bに導電性インクを入れて上部電極パターン205の一部をコーティングするので、濡れ性の高いITOインクを使用した場合であっても正確に所定位置に第2の補助電極層204をパターニングできる。その他は実施の形態6と同じである。
【0096】
上記の実施の形態5,実施の形態6,実施の形態8では、第1,第2の凹部102,202を設けたため、濡れ性の高いインクを所定位置にパターニングすることができ、上下基板の貼り合わせ面へ導電性インクとしてのITOインクがはみ出さないようにできる。
【0097】
さらに、実施の形態3,実施の形態4,実施の形態7のように第1,第2の凹部102,202を設けずに下基板100,上基板200の面に直接にパターニングを行った場合には、導電性インクとしてのITOインクの膜厚のために上下基板の貼り合わせにおいてギャップが発生しレンズ1の歪みを発生させてしまうが、実施の形態5,実施の形態6,実施の形態8ではより歪みの少ない良好なレンズ1を作製できる。
【0098】
実施の形態5,実施の形態6,実施の形態8において、第1,第2の凹部102,202の断面形状が平面により構成される場合は、面と面の交わる直線部にインクが溜まりやすく、平面部分よりインク膜厚が厚い部分が形成されてしまう。このような液の溜まり易い部分においては、乾燥状態の相違からか導電性インクとしてのITOインク膜の表面に割れ(クラック)が発生しやすく、ITOインクにより形成される透明導電膜の抵抗値を増加させる要因となる。この問題を解決するために、実施の形態5,実施の形態6,実施の形態8の第1,第2の凹部102,202の断面形状を曲面に形成している。第1,第2の凹部102,202の断面形状を曲面に形成せずに面と面の接合で形成する場合には、面と面の交わる部分にはR加工を行うことによって、ほぼ同様の効果を期待できる。
【0099】
上記の実施の形態3〜実施の形態8では、透明の第1,第2の補助電極層104,204を導電性インクとしてのITOインクのコーティングによって形成し、透明の下部電極パターン105と上部電極パターン205をスパッタリングで形成したが、下部電極パターン105と上部電極パターン205の形成方法は、スパッタリング以外の蒸着方法であっても同様に実施できる。スパッタリング以外の蒸着方法としては、抵抗加熱蒸着,電子ビーム蒸着,分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy ),イオンメッキ(ion plating),イオンビームデポジションなどのPVD(Physical Vapor Deposition)や、熱CVD(thermal Chemical Vapor Deposition),プラズマCVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition),光CVD,エピタキシャルCVD,アトミックレイヤーCVDなどのCVDを挙げることができる。
【0100】
また、透明な第1,第2の補助電極層104,204、下部電極パターン105,上部電極パターン205の材料として、ITO(酸化インジウムスズ)の場合を例に挙げて説明したが、チタンを主成分としてインジウムを含まないニオブ添加二酸化チタン(Ti−xNbxO:TNO)、ZnOなどをITO代替透明電極材料として使用することもできる。
【0101】
上記の実施の形態3〜実施の形態8では、下部絶縁層パターン106と上部絶縁層パターン206が設けられていたが、接着層400の単独によって下部電極パターン105と上部電極パターン205との電気絶縁を維持することができる場合には、下部絶縁層パターン106と上部絶縁層パターン206の少なくとも一方を省くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明にかかる電子メガネは、電気回路の接続を確実に行い、その信頼性を向上するものであり、液晶素子、エレクトロクロミック素子などの電気素子が用いられるメガネ、サングラスなどに有用である。
【符号の説明】
【0103】
1 レンズ
1a ヤゲン
1b レンズ側ザグリ
2a,2b 電極パターン
3a,3b レンズ部電極パッド
4 電気接続手段
5 制御部
6a,6b 配線部電極パッド
7 異方導電性ゴム
8 リム
8a 溝
8b リム側ザグリ
9 リムロック
10 ねじ
11 メガネフレーム
100 下基板
101 下基板の上基板200との対向面
102 第1の凹部
103 電気素子形成部
104 第1の補助電極層
105 下部電極パターン
106 下部絶縁層パターン
106b 孔
107 配向膜
200 上基板
201 上基板の下基板100との対向面
202 第2の凹部
203 電気素子形成部に対応する部分
204 第2の補助電極層
205 上部電極パターン
206 上部絶縁層パターン
206b 孔
207 配向膜
300 液晶
301 切断線
302 レンズ端部
303a,303b 銀ペースト
304 メガネフレームの智
305a,305b フレキシブル配線
306a,306b 配線部電極パッド
307 リム
308 異方導電性ゴム
400 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下基板と上基板の間に電気素子を内蔵したレンズであって、
下基板には、前記電気素子のための下部電極パターンが形成され、
上基板には、前記電気素子のための上部電極パターンが形成され、
レンズ端部において前記下部電極パターンと前記上部電極パターンを、前記レンズ端部のレンズ厚み方向に互い違いに形成した
電子メガネ用レンズ。
【請求項2】
前記レンズ端部の付近には、
前記下部電極パターンと接続する第1の補助電極層と、前記上部電極パターンと接続する第2の補助電極層が形成されており、
前記第1の補助電極層と前記第2の補助電極層を、レンズ厚み方向に互い違いに形成した請求項1記載の電子メガネ用レンズ。
【請求項3】
前記下基板には前記電気素子のための電気素子形成部が設けられ、前記第1の補助電極層は前記電気素子形成部とは離れた位置に設けられている
請求項2記載の電子メガネ用レンズ。
【請求項4】
前記レンズ端部では、前記第1の補助電極層と前記第2の補助電極層が露出している
請求項3記載の電子メガネ用レンズ。
【請求項5】
前記第1の補助電極層は、前記下部電極パターンを経由して前記電気素子へ電圧を印加し、
前記第2の補助電極層は、前記上部電極パターンを経由して前記電気素子へ電圧を印加する
請求項4記載の電子メガネ用レンズ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子メガネ用レンズをメガネフレームにセットした電子メガネ。
【請求項7】
下基板と上基板の間に電気素子を内蔵したレンズであって、
下基板には、前記電気素子のための下部電極パターンが形成され、
上基板には、前記電気素子のための上部電極パターンが形成され、
レンズ端部の付近には、前記下部電極パターンと接続する第1補助電極層と、前記上部電極パターンと接続する第2補助電極層が形成されており、
前記第1の補助電極層と前記第2の補助電極層を、レンズ厚み方向に互い違いに形成した電子メガネ用レンズ。
【請求項8】
請求項7に記載の電子メガネ用レンズをメガネフレームにセットした
電子メガネ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−77029(P2013−77029A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−5026(P2013−5026)
【出願日】平成25年1月16日(2013.1.16)
【分割の表示】特願2009−546935(P2009−546935)の分割
【原出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】