説明

電子モジュールとその製造方法

【課題】外部振動や機械的衝撃に対して高い信頼性を確保した電子モジュールとその製造方法を提供する。
【解決手段】コア層1の上下面にビルドアップ層2b,2aを積層した多層基板20を用い、基板20の一部にコア層1を貫通した開口3に収納されたSAWフィルタ5を内蔵させ、上面のビルドアップ層2b上に形成した配線/回路パターン10aにSAWフィルタ5の端子5cおよび電子部品12a,12bを接続する。また、基板20の上面側のコア層1上に設けた配線/回路パターン6bにICチップ11a,11bを接続して搭載し、配線基板20の下面のビルドアップ層2aの表面に設置された放熱パターン9を有する。そして、基板20の上面から下面に貫通し、ICチップ11a,11bと放熱パターン9に達する熱伝達用のビアホール4を複数備え、ICチップ11a,11bを含む複数の電子部品が搭載された上面の全面を覆って補強板16を固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュールに係り、特に表面弾性波デバイスとICチップを抵抗器や容量などの他の電子部品とともに基板に搭載して一体化して機械的強度を向上させ、小型・低背化した電子モジュールとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末やカーナビ機器等の移動体通信端末の小型化、高機能化に伴い、搭載部品の小型・薄型化が求められている。このような小型・薄型化を実現するため、高周波回路部等の機能部を構成する電子デバイスを共通の支持基板にモジュール化して一体の部品とする傾向にある。この種の回路部のモジュール化では、特に当該回路部の機能部を構成する各種の電子デバイスの低背化が求められている。例えば、高周波回路部を構成する必須の電子デバイスとしては、表面弾性波素子(SAWフィルタ等のSAWデバイス)、およびこれらデバイスと共に各種の信号処理のための回路を構成するICチップを含む複数種類の電子部品がある。
【0003】
移動体通信端末等の機器の筐体に収容する各種の電子デバイスを搭載した電子モジュールは、共通の支持基板(以下、単に基板とも称する)に各種の電子デバイスを搭載し、これらを樹脂により一体化して構成される。なお、この種の従来技術を開示したものとしては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−321567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような移動体端末やカーナビ機器等は、その使用形態を考慮して外部振動や機械的衝撃に対して高い信頼性を確保しなければならない。共通基板に半田を用いた接続で上記SAWデバイスと共に、ICチップや抵抗部品あるいは容量部品およびインダクタンス部品など、複数種類の電子部品を基板上に搭載するだけでは、所要の信頼性を担保できず、筐体内スペースの利用も制限される。特に、SAWデバイスはデバイス内部にキャビティを保持する必要から、ICチップなどの部品に比べてより強固な接続を確保する必要がある。従来技術におけるモジュール化では、基板に形成した配線あるいは回路パターンに各電子部品を半田で接続し、これを樹脂にて一体にモールドするものが一般的である。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決することにあり、SAWデバイス、SAWデバイスと共に所定の機能を実現するICチップを含む複数種類の電子デバイスを搭載する基板に一体化する構成を採用することで、外部振動や機械的衝撃に対して高い信頼性を確保した電子モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、前記基板としてコア層の上面および下面にビルドアップ層を積層した多層基板を用い、前記基板の一部に前記コア層を貫通した開口に収納された前記SAWデバイスを内蔵させ、前記上面のビルドアップ層上に形成した配線/回路パターンに前記SAWデバイスの端子およびSAWデバイス、ICチップを除く電子部品を接続する。また、前記基板の一方の表面である前記上面側の前記コア層上に設けた配線/回路パターンに前記ICチップを接続して搭載し、前記配線基板の前記下面のビルドアップ層の表面に設置された放熱パターンを有する。そして、前記基板の前記ICチップを含む複数の電子部品が搭載された前記上面から前記下面に貫通し、前記ICチップと前記放熱パターンに達する熱伝達用のビアホールを複数備え、前記ICチップを含む複数の電子部品が搭載された前記上面の全面を覆って補強板を固定した。
【発明の効果】
【0008】
比較的背高で中空構造を有するSAWデバイスを基板のコア層に内蔵することで低背化が達成され、モジュール端子側に放熱パターンを設け、ICデバイス等の電子部品を搭載する側に補強版を固定することで小型化と機械的強度が向上したSAWデバイス内蔵の電子デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による電子モジュールの実施例1を説明する断面図である。
【図2】本発明による電子モジュールの製造方法の1実施例を説明する断面図である。
【図3】本発明による電子モジュールの製造方法の1実施例を図2に続いて説明する断面図である。
【図4】本発明による電子モジュールの製造方法の1実施例を図3に続いて説明する断面図である。
【図5】本発明による電子モジュールの製造方法の1実施例を図4に続いて説明する断面図である。
【図6】本発明による電子モジュールの製造方法の1実施例を図5に続いて説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。なお、ここでは、SAWデバイスとしてSAWフィルタを用いた例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明による電子モジュールの実施例1を説明する断面図である。本実施例では、基板20と、該基板にSAWフィルタ5、ICチップ11a、11b、抵抗や容量あるいはインダクタンスである電子部品12a、12bを搭載して一体化して電子モジュールを構成している。前記基板20は、コア層1の上面および下面にビルドアップ層2a、2bを積層した多層基板からなる。
【0012】
前記基板20の一部に、前記コア層1を貫通した開口3に収納された前記SAWフィルタ5を内蔵する。前記上面のビルドアップ層2aの上に形成した配線/回路パターン10aに前記SAWフィルタ5の端子5cおよびSAWフィルタとICチップを除く電子部品12a,12bを接続してある。
【0013】
また、前記基板20の一方の表面である前記上面側の前記コア層1上に設けた配線/回路パターン6bに前記ICチップ11a、11bを接続して搭載する。前記基板20の前記下面のビルドアップ層2aの表面に設置された放熱パターン9を備える。電子モジュールの端子8a,8bも放熱パターン9と同時に形成される。電子モジュールの端子8a,8bはコア層1に形成された配線/回路パターン6aに前記下面のビルドアップ層2aにレーザ光で開けた開口8cを通して接続されている。開口8cにはメッキが施されている。放熱パターン9と電子モジュールの端子8a,8bはホトリソグラフィー手法で同時に形成される。
【0014】
また、前記基板20の前記ICチップを含む複数の電子部品が搭載された前記上面から前記下面に貫通し、前記ICチップ11a、11bと前記放熱パターン9に達する熱伝達用のビアホール4を複数備える。ビアホール4には銅(Cu)を好適とする金属がメッキ処理で充填される。そして、前記ICチップを含む複数の電子部品が搭載された前記上面の全面を覆って補強板16が固定されている。補強板16は金属板であり、コバール(Co−Fe−Ni)を用いるのが好適である。補強板16は、基板20の側部を周回して設けた樹脂からなる周壁15とICチップ11a、11bに接着剤14a,14bで固定される。
【0015】
前記コア層1の上面および下面に積層されたビルドアップ層2a,2bにはプリプレグを用いる。プリプレグは炭素繊維等にポリイミド等の熱硬化性樹脂を含浸したもので、加熱により接着効果を奏する。
【0016】
なお、SAWフィルタ5は、圧電基板としての水晶基板の表面に櫛型電極(IDT)を有し、該櫛型電極の上部に中空領域を形成して樹脂蓋体5bで封止してある。この蓋体5bは、強度と温度特性の調整のため、雲母、石英ファイバー等の無機フィラーを混入した感光性樹脂をパターニングして形成される樹脂板で、この蓋体5bに外部接続端子5c,5cが設けられている。
【0017】
SAWフィルタ5は、その端子5c,5cをビルドアップ層2aにレーザ光で開けた開口7a、7bに施したメッキ層によって接続される。なお、符号5dは接着膜を示す。この接着膜5dはビルドアップ層2aであるプリプレグを加熱した際に溶融する樹脂成分でも、あるいはSAWフィルタ5に塗布した接着剤の何れでもよい。
【0018】
本実施例により、比較的背高で中空構造を有するSAWフィルタを基板のコア層に内蔵することで低背化が達成され、モジュール端子側に放熱パターンを設け、ICデバイス等の電子部品を搭載する側に配線/回路パターンの層と補強板を固定することで小型化と機械的強度が向上する。
【0019】
次に、上記した電子モジュールの製造方法について、図2乃至図6を参照して説明する。
【0020】
図2は、本発明による電子モジュールの製造方法の1実施例を説明する断面図である。図2において、アルミナを主成分とするセラミックスシートからなるコア層1の一部に所要の大きさで開口3を形成する。この開口3はSAWフィルタを収納する部分である。
【0021】
図3は、本発明による電子モジュールの製造方法の1実施例を説明する図2に続く断面図である。コア層1の下側面に下側配線/回路パターン6aを、上側面に上側配線/回路パターン6bを形成する。下側配線/回路パターン6aと上側配線/回路パターン6bはホトリソグラフィー手法を用いて形成されるが、導電性微粒子インクを用いたインクジェット直描、あるいはインクジェットで直描したパターンにメッキ処理を施して形成することもできる。
【0022】
下側配線/回路パターン6aと上側配線/回路パターン6bの形成後、コア層1に設けた開口3にSAWフィルタ5が収納される。このとき、SAWフィルタ5の下面に接着膜5dを塗布しておいてもよい。SAWフィルタ5は水晶基板の表面に櫛型電極(IDT)5aを形成し、櫛型電極5aの上部に中空領域(キャビティ)を確保して蓋体5bを用いて封止されている。SAWフィルタ5の端子5cは蓋体5bに形成されている。
【0023】
図4は、本発明による電子モジュールの製造方法の1実施例を説明する図3に続く断面図である。SAWフィルタ5を収納したコア層1の下面と上面にそれぞれビルドアップシ−ト2a、2bを積層固定する。下側ビルドアップシ−ト2a、上側ビルドアップシート2bには炭素繊維等にポリイミド等の熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグを用いる。
【0024】
次に、上側ビルドアップシート2bのSAWフィルタ5の端子5cに相当する部分にレーザ光を用いて開口7a,7bを形成する。開口7a,7bにはメッキを施して端子5cとの電気的導通をとる。このとき、下側ビルドアップシ−ト2aの端子部分にも同様の開口8c、8cを開け、同様にメッキを施す。
【0025】
次いで、ICチップ11a,11bの搭載部分で、下側ビルドアップシ−ト2aと上側ビルドアップシート2bおよびコア層1を貫通するビアホール4を形成する。このビアホール4はICチップ11a,11bの発熱を後述する放熱パターンに伝達する熱伝達用ビアホールである。
【0026】
上記工程で形成した開口8c、8cに接続する端子8a、8bと、熱伝達用ビアホール4に接合した放熱パターン9をホトリソグラフィー手法でパターニングして形成する。また、この工程では、抵抗、容量あるいはインダクタンスなどの受動的な電子部品を搭載する配線パターン10a,10bも同様にして形成する。
【0027】
図5は、本発明による電子モジュールの製造方法の1実施例を説明する図4に続く断面図である。図5に示した工程では、ICチップ11a,11b、電子部品12a,12bを所定の部分に搭載する。さらに、ICチップ11a,11bと基板20との隙間にアンダーフィル13を注入するのが好適である。
【0028】
図6は、本発明による電子モジュールの製造方法の1実施例を説明する図5に続く断面図である。図5の工程において全ての電子デバイスを搭載した後、基板20の周囲に樹脂からなる周壁15を形成する。周壁15を形成する樹脂は、加熱により接着効果を呈し、その後硬化する熱硬化性樹脂を用いる。このとき、ICチップ11a,11bの表面に接着膜14a,14bを塗布しておくのが望ましい。
【0029】
そして、周壁15とICチップ11a,11b、および電子部品12a,12bを覆って図1に示した金属板からなる補強板16を設置し、加熱して固着し、封止する。完成した電子モジュールは図1で説明したとおりである。
【0030】
本発明はこれに限定されるものではなく、上記の各実施例、特許請求の範囲に記述された構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1・・・コア層、2a,2b・・・ビルドアップシート、3・・・SAWフィルタ用開口、4・・・熱伝達用ビアホール、5・・・SAWフィルタ、9・・・放熱パターン、11a,11b・・・ICチップ、12a,12b・・・電子部品、13・・・アンダーフィル、15・・・周壁、16・・・補強板、20・・・基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板にSAWフィルタ、ICチップを含む電子部品を搭載して一体化した電子モジュールであって、
前記基板は、コア層の上面および下面にビルドアップ層を積層した多層基板からなり、
前記基板の一部に、前記コア層を貫通した開口に収納された前記SAWデバイスを有し、
前記上面のビルドアップ層上に形成した配線/回路パターンに前記SAWデバイスの端子およびSAWフィルタ、ICチップを除く電子部品を接続してなり、
前記基板の一方の表面である前記上面側の前記コア層上に設けた配線/回路パターンに前記ICチップを接続して搭載され、
前記配線基板は、その前記下面のビルドアップ層の表面に設置された放熱パターンを有し、
前記基板の前記ICチップを含む複数の電子部品が搭載された前記上面から前記下面に貫通し、前記ICチップと前記放熱パターンに達する熱伝達用のビアホールを複数備え、
前記ICチップを含む複数の電子部品が搭載された前記上面の全面を覆って補強板が固定されていることを特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
請求項1において、
前記コア層の上面および下面に積層された前記ビルドアップ層はプリプレグであることを特徴とする電子モジュール。
【請求項3】
請求項1において、
前記SAWデバイスは、圧電基板の表面に形成された櫛型電極を有し、該櫛型電極の上部に中空領域を形成する樹脂蓋体で封止され、該樹脂蓋体に外部接続端子が設けられていることを特徴とする電子モジュール。
【請求項4】
配線基板と、該配線基板にSAWデバイス、ICチップを含む電子部品を搭載して一体化した電子モジュールの製造方法であって、
前記SAWデバイス収納用の開口が形成され、一方の面および他方の面に配線/回路パターンが設けられたセラミックスシートからなるコア層の前記開口に、その端子が形成された面を前記一方の面側にして前記SAWデバイスを収納する工程と、
前記コア層の前記一方の面と前記他方の面とにそれぞれビルドアップシートを積層貼付して前記SAWデバイスを固定し、SAWデバイス内臓多層基板を形成する工程と、
前記SAWデバイスの端子部分が位置する前記一方の面側のビルドアップシートと、前記ICチップが搭載される部分の前記一方の面のビルドアップシートと前記コア層および前記他方の面のビルドアップシートを貫通する熱伝達用ビアホールを形成する工程と、
前記他方の面のビルドアップシートの表面に、前記熱伝達用ビアホールに接続する放熱パターンと電子モジュールの外部接続端子を形成する工程と、
前記一方の面の配線/回路パターンの前記ICチップが搭載される部分に、前記ICチップを、その端子を前記配線/回路パターンに接続して搭載する工程と、
前記一方の面の配線/回路パターンの前記他の電子部品が搭載される部分に所要の電子部品を搭載する工程と、
前記一方の面に搭載されたICチップを含む複数の電子部品を囲む周壁を設け、該周壁と前記ICチップに接着して前記電子部品を含む当該一方の面を覆って補強版を固着する工程を含むことを特徴とする電子モジュールの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記コア層の上面および下面に積層する前記ビルドアップ層としてプリプレグシートを用いることを特徴とする電子モジュールの製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記他方の面のビルドアップシートの表面に設ける前記放熱パターンと前記電子モジュールの外部接続端子を同一工程で形成することを特徴とする電子モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−93456(P2013−93456A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235025(P2011−235025)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】