説明

電子レンジ加熱容器およびこれに用いる中蓋およびこれに食品を収納した食品収納体

【課題】電子レンジ加熱容器において、容器の形状に依存することなく、立体的な部分加熱を実現可能とする。
【解決手段】電子レンジ加熱容器1の中蓋10を、アルミニウム箔層11と、その一面に積層した熱接着性樹脂層12と、その他面に積層した樹脂フィルム層13とから構成し、アルミニウム箔層11の中央には円形欠落部11aを形成し、熱接着性樹脂層12は、熱収縮性を有するものとして、欠落部11aに対応する位置に、円弧状切れ目12aを形成する。マイクロ波遮蔽性の容器本体20に収納したアイスクリームは、容器本体20の開口がアルミニウム箔層11を有する中蓋10で封緘されるため、開口からのマイクロ波も遮蔽されて、加熱がほぼ完全に防がれる。非加熱状態は容器1の形状に依存せず、容器1を種々の形状、大きさに設定可能である。加熱溶融した中蓋10上のチョコレートは、切れ目12aがカールすることで形成される開口から、アイスクリーム上に自動的にかけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで部分加熱するための容器およびそれに用いる中蓋およびそれに食品を収納した食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジで部分加熱をおこなうための容器は、古くから知られている。
例えば特許文献1には、弁当箱の内部を仕切りで複数の収納部に区画し、一部の収納部をアルミニウム箔で包被することにより、アルミニウム箔で包被した収納部内の食品の加熱を防ぎ、その他の収納部内の食品を加熱する技術が開示されている。
この技術は、弁当箱の中の平面的に区画された収納部の一部を非加熱とするものであるため、平面的(二次元的)な部分加熱は実現できても、立体的(三次元的)な部分加熱ができないという欠点を有する。
【0003】
そこで、特許文献2には、マイクロ波遮蔽性の容器本体と、容器本体の開口部近辺に支持されるマイクロ波透過性の中皿とから構成された容器が開示されている。
この容器の場合、容器本体がマイクロ波を遮蔽するため、中皿から下の部分、すなわち容器本体に直接収納された食品は殆ど加熱されることはないのに対し、マイクロ波透過性の中皿に載せた食品は加熱される。
そのため、容器の上下方向に、立体的に部分加熱が実現されている。
【0004】
また、この中皿の底には、貫通孔が設けられており、中皿上で加熱溶融した食品は、この貫通孔から非加熱食品上に滴り落ちるため、アイスクリームなどの冷たい食品に、温かいチョコレートソースをかけるといったことが可能となり、電子レンジによる加熱調理方法の幅が広がる。
【0005】
しかし、この特許文献2の容器では、電子レンジのマイクロ波が、容器の開口から中皿を透過して、中皿の下の部分へもある程度は侵入してくるため、容器本体に直接収納した食品も、加熱されることを防ぎえない。
とくに、開口部の面積が大きな容器や、高さの低い容器では、中皿より下の部分へのマイクロ波の侵入が顕著であるため、容器本体内の食品が無視し得ないほど加熱されてしまう。
そのため、容器の形状次第では、この技術は殆ど使用不能となり、無理に使用しても非加熱の効果が期待できない問題があった。
【特許文献1】特開平11−299524号公報
【特許文献2】特開2005−263319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の解決すべき課題は、電子レンジ加熱容器において、容器の形状に依存することなく、立体的な部分加熱を精度よく実現可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するため、本発明の電子レンジ加熱容器では、マイクロ波遮蔽性の容器本体の開口部近辺に被せる中蓋を、厚み方向に積層されたアルミニウム箔層と、熱収縮性を有する熱接着性樹脂層とを少なくとも有するものとしたのである。
そして、中蓋のアルミニウム箔層には、その平面視中央に欠落部を形成し、熱接着性樹脂層を、熱収縮性を有するものとして、そのアルミニウム箔層の欠落部に対応する位置に、切れ目を形成したのである。
【0008】
かかる中蓋を用いた電子レンジ加熱容器の、容器本体内に食品を収納し、中蓋の上に食品を載せ、電子レンジにかけると、中蓋上の食品は加熱され、容器本体内の食品は加熱されない。
とくに、容器本体内の食品は、周囲からのマイクロ波が容器本体により遮蔽されるのに加えて、開口からのマイクロ波がアルミニウム箔層を有する中蓋により遮蔽されるので、従来以上にその加熱が防がれる。
このように、中蓋の構造を工夫することにより、容器本体内の食品のほぼ完全な非加熱を実現しているので、非加熱状態は容器の形状に依存せず、それがために容器は種々の形状、大きさに設定可能である。
【0009】
また、この容器を電子レンジで加熱すると、中蓋の熱接着性樹脂層は収縮して、その切れ目がカールして中蓋に開口が形成される。
そのため、中蓋の上に熱融解性の食品を載せた場合、融解した食品が、容器本体内の非加熱食品の上に開口から滴り落ちることになり、冷たい食品の上に温かいソース等をかけた調理状態を電子レンジによる加熱だけで簡単に実現できる。
特に、この場合、中蓋の非加熱状態では、切れ目がカールしておらず、開口が形成されていないため、電子レンジによる加熱調理の前に、中蓋上の食品が容器本体内に落ち込み、加熱したい食品が非加熱となってしまうことを防ぐことが可能である。
【0010】
欠落部は、略円形とするのが、中蓋上の溶融した食品が流れ込みやすいため好ましく、この欠落部からマイクロ波が侵入して、容器本体内の食品を加熱しないように、欠落部の直径を、マイクロ波の波長120mmの約1/4である、30.5mm以下とするのが好ましい。
【0011】
熱接着性樹脂層の熱収縮率は、1%未満の場合には、カールを十分に生じる収縮力に乏しく、50%を超えると逆に収縮力が強くなりすぎ、蓋材にシワや亀裂が発生する虞があるため、1〜50%であるのが好ましい。
【0012】
また、前記中蓋を容器本体に被せる前に、その熱接着性樹脂層に、加熱により収縮力を付与し、前記切れ目により区画される部分をカールさせてもよい。
【0013】
この容器に食品を収納して食品収納体とする際には、中蓋の上に上蓋を被せると、中蓋に載せた食品が密封されるため、流通の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
電子レンジ加熱容器のマイクロ波遮蔽性容器本体に被せる中蓋を、アルミニウム箔からなる層を有するものとしたので、容器本体内にその開口からマイクロ波が侵入することが防がれ、容器本体内に収納した食品のほぼ完全な非加熱状態が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示す、実施形態の電子レンジ加熱容器1(以下、容器1と略す。)は、容器本体20と、容器本体20のフランジにヒートシールされたシート状の中蓋10と、容器本体20の開口に被せられたドーム状の上蓋30とからなる。
図示のように、このような容器1の、容器本体20内には、アイスクリームIが収納され、中蓋10の上には固形チョコレートCが載せられている。
【0016】
図2のように、容器1の中蓋10は、アルミニウム箔からなるアルミニウム箔層11の内面(容器本体20側の面)に、熱収縮性を有する熱接着性樹脂層12を積層し、外面(容器本体20と逆側の面)に樹脂フィルム層13を積層した三層構造をしており、その外形はタブ付き円形をなしている。
【0017】
図2のように、アルミニウム箔層11には、その平面視ほぼ中央に、平面視円形の欠落部11aが形成されている。
この欠落部11aの直径は、電子レンジのマイクロ波が欠落部11aを通過できないように、30.5mm以下となっており、より好ましい態様では、直径の下限は2.0mmとなっている。
また、中蓋10の周辺部にもドーナツ状に欠落部11bが形成されており、この欠落部11bは、中蓋10の端(樹脂フィルム又は熱接着性樹脂層12の端)から中蓋10径方向に2〜10mm程度内側にかけての範囲となっている。
このドーナツ状の欠落部11bは、電子レンジでの加熱時にスパークを防止する効果があり、より安全に電子レンジ内で加熱調理することができる。
なお、欠落部11aは、用途に応じてさらに複数設けることもでき、形状も必ずしも円形には限られない。
【0018】
上記円形の欠落部11aは、打ち抜き等により穿孔してもよく、アルミニウム箔と樹脂フィルムまたは熱接着性樹脂層12とを積層後、エッチング処理により形成してもよい。
具体的には、アルミニウム箔と樹脂フィルムまたは熱接着性樹脂層12とを積層後、アルミニウム箔にドーナツ状のレジスト皮膜処理を行い、非レジスト部分を酸またはアルカリのエッチング液により溶解除去し、その後、必要に応じて、レジスト皮膜を剥離すればよい。
ドーナツ状の欠落部11bも、アルミニウム箔の周辺部を前記同様のエッチング処理などにより欠落させればよい。
その他の方法としては、あらかじめドーナツ状に切り出したアルミニウム箔を用意し、樹脂フィルムまたは熱接着性樹脂層12と貼り合わせてもよい。
【0019】
アルミニウム箔の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、厚み5〜100μm程度の公知のアルミニウム箔を採用することができる。
材質は、JISlN30、lN70、3003、3004、8021、8079等から適宜選択することができ、その調質も硬質、半硬質、軟質から適宜選択することができる。
【0020】
図2のように、上記熱収縮性を有する熱接着性樹脂層12には、容器本体20の開口部の中心付近、すなわちアルミニウム箔層11の円形欠落部11aに対応する部分に、円弧状の貫通切れ目12aが施されている。
図1のように、中蓋10は、この熱接着性樹脂層12を容器本体20のフランジに対向させ、ここにヒートシールされている。
この切れ目12aは、円弧状のほか、屈曲線、曲線、または線分と曲線の組合せからなればどんな形状でもよいが、くの字状、コの字状、Vの字状、Uの字状、Hの字状、Xの字状、円弧、波型またはそれらの組合せからなるものが、後述する開口の形成が良好であるためより好ましい。
切れ込みの長さ(大きさ)は、所望の長さ(大きさ)とすればよいし、切れ目12aは、貫通切れ目12aに限られず、ハーフカットやミシン目状のものでもよい。
【0021】
このように、熱接着性樹脂層12には、アルミニウム箔層11の欠落部11aに対応する位置に、切れ目12aが施されているため、当該切れ目12aの部分が加熱されると、収縮力が生じてカールすることによって、中蓋10に開口が生じるようになっている。
【0022】
上記熱収縮性を有する熱接着性樹脂の種類としては、特に制限されるものではないが、例えば、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、スチレン、ポリエチレン、ポリエステル等から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。
熱収縮性樹脂の熱収縮率は、フィルム状の状態で1〜50%(120℃雰囲気30分保持後)であるのが望ましく、さらに好ましくは、熱収縮率が1.5〜30%であるのがよい。
無延伸フィルムの場合は、タテ(フィルム製造時の長手方向)とヨコ(フィルム製造時の幅方向)で収縮率が異なるが、少なくとも片方の熱収縮率を満足すれば良い。
好ましくはカール方向の熱収縮率が前記1〜50%(120℃雰囲気30分保持後)であるのがよい。
また、熱接着性樹脂層12は、熱収縮性を有するシーラントフィルムからなるのが好ましい。
なお、本発明においてフィルムの熱収縮率は次式によって算出される。
熱収縮率(%)={(加熱前のフィルムの長さ−加熱後のフィルムの長さ)/加熱前のフィルムの長さ}×100
加熱前の長さは、(室温中)100mmとし、120℃のオーブン中で30分保持後、フィルムをオーブンから取り出し、室温まで冷却後、フィルムの長さをスケール、コンパレーターなどで測ればよい。例えば加熱後の長さが90mmの場合、熱収縮率は10%となる。
その他の詳細はJIS C2318に準拠すればよい。
【0023】
図1および2のように、上記アルミニウム箔層11の外面に積層された、樹脂フィルム層13は、容器1を電子レンジにかけた際にアルミニウム箔がスパークするのを防止するためのものであり、その上にチョコレートCが載せられている。
図示のように、樹脂フィルム層13には、熱接着性樹脂層12の切れ目12aと対応する位置に、切れ目13aが形成されている。
【0024】
この樹脂フィルムは、厚み12〜250μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどのポリエステル系フィルム、ナイロン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合樹脂フィルム等から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これらのフィルムとしては、適宜、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルムを使用することができる。
【0025】
また、中蓋10には、さらに、印刷を施してもよく、遮光層、OP(オーバープリント)層、プライマー層、アンカーコート層、紙層等を必要に応じて積層してもよく、また防曇剤、滑剤、防滑剤、各種のコート剤をその表面にコーティングしてもよい。
【0026】
図1のように、上記容器本体20は、合成樹脂を成型した外容器22内に、アルミニウム箔を成型した内容器21を装填した二層構造となっている。
外容器22は、底壁と、底壁から広がって立ち上がる周壁と、周壁の上縁からほぼ水平に張り出すフランジ22aとを有し、内容器21は、底壁と、底壁から広がって立ち上がる周壁と、周壁の上縁に設けた縁巻き部21aを有している。
【0027】
ここで図1(a)のように、外容器22内に、内容器21を装填した状態で、内容器21の縁巻き部21aは、外容器22の開口から若干突出するように寸法が調整されている。
したがって、図1(b)のように、外容器22のフランジ22aに中蓋10がヒートシールされて、容器本体20の開口が封緘されると、内容器21の縁巻き部21aは、中蓋10の熱接着性樹脂層12に当接するとともに、底壁が撓むなどして、外容器22の内部に弾性的に押し込まれる。
そのため、図示のように、内容器21は、その縁巻き部21aが中蓋10に当接した状態で、中蓋10向きに付勢されている状態になるので、内容器21と中蓋10の間には、隙間がほとんど生じないようになっている。
【0028】
この容器本体20の内容器21は、アルミニウム箔からなるので容器本体20はマイクロ波を遮蔽して容器本体20内に収納したアイスクリームIが加熱されないようになっており、外容器22は合成樹脂からなるので、容器本体20が電子レンジによる加熱中にスパークしないようになっている。
とくに、上述のように、内容器21と中蓋10との間には、隙間がないので、このような境界部分から、容器1内にマイクロ波が侵入するのが防止されている。
【0029】
容器本体20としては、この他に、アルミニウム箔と樹脂フィルムを積層したラミネートフィルムをアルミニウム箔を内側に容器状に成形したもの、アルミニウム箔を容器状に成形後、樹脂または紙で被覆したものなどを採用することができる。
【0030】
また、図1のように、上記ドーム状の上蓋30は、中蓋10上に載せたチョコレートCが容器1を搬送中に落ちないように、封緘するためのものであり、適宜の合成樹脂により形成されている。
この他に、アルミニウム箔を2枚の樹脂フィルムでサンドイッチ状にラミネートした後、容器に成型したものや、アルミニウム箔と樹脂フィルムを積層後、アルミニウム箔を内側にしてフランジ付きの容器に成型し、さらにフランジの表面に樹脂をコーティングしたものを採用することもできる。
【0031】
この容器1を、上蓋30を取って、または取らずに電子レンジにかけると、図3のように、中蓋10上のチョコレートCは加熱されて溶融し、容器本体20内のアイスクリームIは、容器本体20と中蓋10とがマイクロ波をほぼ完全に遮蔽するため、加熱されない。
ここで、中蓋10が容器本体20開口からのマイクロ波をも遮蔽するため、容器本体20内の遮蔽状態がほぼ完全に維持される。
そして、図示のように、中蓋10の熱接着性樹脂層12の切れ目12a、および樹脂フィルム13の切れ目13aがカールして中蓋10に開口が形成されるため、この開口から溶融したチョコレートが滴り落ち、アイスクリームIの上に温かいチョコレートソースがかけられることになる。
このように、冷たい食材の上に温かい食材をかけた食品を、電子レンジによる加熱のみで簡単に作り出すことができ、またタブを持って中蓋10を開封するとそのまま喫食することができる。
また、容器本体20内のマイクロ波の遮蔽状態は、容器本体20の形状に依存しないため、容器本体20をいかなる形状、大きさにすることも可能である。
【0032】
この実施形態では、中蓋10をフラットなシート状にしたが、中蓋10の形状は特にこれに制限されるものではなく、平面的なもの、すり鉢状(逆円錐形)のもの、逆円錐台形状のもの、落し蓋形状のものなどが採用でき、また、所望によりその周辺部にフランジや、係合用凹条などを設けてもよい。
容器本体20の形状も、特に限定されず、中蓋10の形状に対応したものとすればよい。
【0033】
また、実施形態では、中蓋10の切れ目12a部分の加熱を容器1の電子レンジでの加熱と同時におこなっているが、勿論、当該切れ目12aの部分の加熱は、中蓋10を容器本体20にヒートシールするときに同時におこなってもよい。
ただし、実施形態のように、電子レンジの加熱時に中蓋10上のチョコレートCなどの食品が加熱されるに従って、その熱でカールが生じ、当該食品が開口から落下するようにすれば工程が簡略化される。
【0034】
容器1に収納する食品は、勿論アイスクリームI、チョコレートCに限られない。
たとえば、容器本体20に麺を収納し、中蓋10上にゼラチンで固めたスープを載せ、加熱してスープを溶かし、冷たい麺の上に温かいスープをかけるといったことも可能である。
【実施例】
【0035】
本発明の内容を一層明確にするため、以下のように、中蓋の構成を違えた実施例および比較例の容器(容器本体は同じ)を作製し、これらにつき、以下の評価方法に基づく実験を行なった。
実施例:外層基材/接着剤/アルミニウム箔/レジスト印刷/接着剤/熱収縮性樹脂
比較例1:外層基材/接着剤/アルミニウム箔/接着剤/熱収縮性樹脂
比較例2:中蓋なし
比較例3:外層基材/接着剤/熱収縮性樹脂
【0036】
(実施例)
外層基材として片面をコロナ処理した12μmPETフィルムを用い、接着剤として大日本インキ化学工業製 LX500を主剤として10部に対し、硬化剤として同社 KW75の1部を配合し、2液硬化型のウレタン系接着剤として用い、この接着剤を酢酸エチルで希釈した後、先程のPETフィルムのコロナ処理面に乾燥後重量として3.5g/m2となるようグラビア方式にて塗布、乾燥を行った。
60℃のヒートロールにて厚さ7μm lN30 軟質アルミニウム箔を貼り合わせ、40℃で3日間の養生を行った。
そして、このアルミニウム箔面にアルミニウム箔成型容器開口部よりも大きいφ90mmの円形で、中央部はφ30mmの非印刷部を設け、ドーナツ型にレジスト印刷を施した。その材料にエッチング処理を行い、レジスト印刷部以外のアルミニウム箔を除去した。そして、この基材のレジスト印刷側に先程と同様に接着剤を用いて、熱収縮性樹脂としてジェイフィルム製30μm XB−15FT(主成分:ポリプロピレンとポリスチレンとのブレンド樹脂フィルム、熱収縮率:タテ/ヨコ:19%/7% 120℃30分)の貼り合わせを行い、40℃で3日間の養生を行った。
この構成体を中蓋として、タブ付の外径φ100mmの略円板状になる様に金型で打ち抜いた。その中蓋の中央は、ドーナツ状のアルミニウム箔の平面視中心(アルミニウム箔の欠落部)にアルミニウム箔に接触しない様に、φ25mmの円弧状(略C字状)に切れ目を入れた。
実施形態の容器本体と同様に、アルミ成型カップの内容器(底面φ50mm、高さ35mm、開口部φ80mm)の縁巻き部が約1mm程度突出する様に、ポリプロピレン製の外容器(底面φ55mm、深さ34mm、開口部φ82mm、フランジ幅4mm)に装填し、中蓋の周縁部とポリプロピレン製容器のフランジとを200℃×80kg/カップ×1秒でヒートシールを行った。
この時、中蓋中央部にもヒートシール時の熱で熱収縮性樹脂に収縮力を付与し、切れ目で区画された部分をカールさせた。
なお、アルミ成型カップの縁巻き部は、ヒートシールの際に、中蓋の熱接着性樹脂層の下面に当接するとともに、ポリプロピレン製容器の内部に弾性的に押し込まれるため、中蓋と縁巻き部の間で隙間が生じにくくなっている。
【0037】
(比較例1)
中蓋にレジスト印刷・エッチング加工を施さない以外は、中蓋、容器本体とも実施例と同じ製造方法で容器を作製した。
(比較例2)
中蓋のない、実施例と同様の容器本体のみからなる容器を作製した。
(比較例3)
比較例1の中蓋の構成から、アルミニウム箔を抜いた中蓋と、実施例と同様の容器本体とから容器を作製した。
【0038】
(評価方法1)
容器本体(アルミカップ)に水100ccを入れ、中蓋の上に別途準備した樹脂フィルム製の小容器(容量約50ml)を載置し、当該小容器に水30ccを充填し、電子レンジ(松下電器産業製 NE−M620 100V)に装填し、600Wで60秒間加熱し、このときの容器本体内(非加熱部)の水および小容器内(加熱部)の水の温度上昇を測定した。
なお、比較例2には中蓋が無いので、割り箸で小容器を支えるようにした。
初期水温を27℃として、結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
(評価方法2)
容器本体(アルミカップ)にアイスクリーム50gを充填し、中蓋の上に10gの固形チョコレートを載せ、電子レンジ(松下電器産業製 NE−M620 100V)に装填し、600Wで60秒間加熱し、このときの状態を観察した。
結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
以上から、実施例では、中蓋が十分にカールすると共に、スパークの発生も無く、非加熱部の温度上昇が全く無かった。
これに対し、比較例1では、中蓋のカールが十分でなく、スパークが発生し、安全性に問題があった。
比較例2および比較例3では、非加熱部の水温が上昇し、非加熱効果が十分でないことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】食品を収納した電子レンジ加熱容器の、(a)は分解した状態の、(b)は組み合わせた状態の、それぞれ縦断面図
【図2】(a)は中蓋の平面図、(b)は(a)のB−B断面図
【図3】電子レンジ加熱容器を加熱した状態の、(a)は全体縦断面図、(b)は部分拡大縦断面図
【符号の説明】
【0044】
1 電子レンジ加熱容器
10 中蓋
11 アルミニウム箔層
11a 中央欠落部
11b 周辺欠落部
12 熱接着性樹脂層
12a 切れ目
13 樹脂フィルム層
13a 切れ目
20 容器本体
21 内容器
21a 縁巻き部
22 外容器
22a フランジ
30 上蓋
I アイスクリーム
C チョコレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に積層されたアルミニウム箔層11と、熱接着性樹脂層12とを少なくとも有する中蓋10であって、
前記アルミニウム箔層11には欠落部11aが形成され、前記熱接着性樹脂層12は、熱収縮性を有するものとし、この熱接着性樹脂層12の、前記アルミニウム箔層11の欠落部11aに対応する位置には、切れ目12aが形成された中蓋。
【請求項2】
上記アルミニウム箔層11の欠落部11aは、略円形でその直径が30.5mm以下である請求項1記載の中蓋。
【請求項3】
上記熱接着性樹脂層12の熱収縮率は、1〜50%である請求項1または2に記載の中蓋。
【請求項4】
上記熱接着性樹脂層12に、加熱により収縮力を付与し、上記切れ目12aにより区画される部分をカールさせた請求項1から3のいずれかに記載の中蓋。
【請求項5】
底壁と底壁の周縁から立ち上がる周壁とを有するマイクロ波遮蔽性の容器本体20と、この容器本体20の開口部近辺に被せられた請求項1から4のいずれかに記載の中蓋10とからなる電子レンジ加熱容器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子レンジ加熱容器の、容器本体20に非加熱用食品を収納し、中蓋10上に加熱用食品を載せ、さらにその上に上蓋30を被せてなる食品包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−12802(P2009−12802A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174977(P2007−174977)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】