説明

電子レンジ加熱用包装体、電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法及び揚げ物様食品の調理セット

【課題】本発明の目的は、電子レンジを用いて簡便に揚げ物様食品を調理することができる電子レンジ加熱用包装体、電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法及び揚げ物様食品の調理セットを提供することである。
【解決手段】本発明に係る電子レンジ加熱用包装体100は、食材収容部2と食材収容部の開口3とを備える袋体であり、電子レンジを用いて、揚げ物様食品を調理するための電子レンジ加熱用包装体であって、電子レンジ加熱用包装体が、蒸気抜き口を形成する手段40を有し、食材収容部を構成する側壁が、互いに向かい合う第1の側壁10と第2の側壁20とを有し、第1の側壁が、少なくとも、食材と接する側に不織布からなる第1の吸水吸油シート11と第1の吸水吸油シートの外側に第1の耐油シート12とを配置して形成した壁であり、第2の側壁が、少なくとも、食材と接する側に不織布からなる第2の吸水吸油シートを配置して形成した壁である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジを用いて、揚げ物様食品を調理するための電子レンジ加熱用包装体、電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法及び揚げ物様食品の調理セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品を密閉された袋に入れたまま電子レンジで加熱すると、加熱時に食品から発生する蒸気によって、袋が膨張し、破袋してしまう問題があった。これらの問題を解決する手段が提案されている。例えば、袋のシール部分の一部に通気性のある不織布を熱シールし、該不織布部分から前記蒸気を放出させる袋が提案されている(例えば、特許文献1又は2を参照。)。密閉した包装袋の一部に弱接着部を形成することで、電子レンジ加熱で発生する水蒸気によって、食材を加熱することができ、かつ、所定の圧力になると、弱接着部が開放して水蒸気を逃がすことで加熱後の食品の表面が湿るのを防止して、食感を損なうことのない容器が提案されている(例えば、特許文献3又は4を参照。)。また、蓋にひだ状の重層部を形成し、電子レンジ加熱すると、蓋が膨らむため、外観が面白く、かつ、開封しやすい電子レンジ調理容器が提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。
【0003】
電子レンジでの食品の加熱では、蒸気が冷却結露して発生した水分が、食品に付着して、食感を損ねるという問題があった。この問題を解決する手段が提案されている。例えば、不通気性で防水性のシート層を外層、吸水性繊維シート層を中間層及び透湿通気性かつ防水性メルトブローン不織布層を内層として積層し、メルトブローン不織布層が起毛状突起を有することで、電子レンジ加熱によって生ずる食品からの蒸気を中間層の吸水性繊維シート層に吸収させ、該吸水性繊維シートで吸収しきれなかった水分をメルトブローン不織布層の起毛状突起により形成された空間に保持することで包装材内側には結露を生じさせない電子レンジ加熱用食品包装材が開示されている(例えば、特許文献6を参照。)。また、油分及び水分の吸収に優れた層を形成して、加熱後の食材の食感を高めるためのシートが提案されている(例えば、特許文献7〜10を参照。)。
【0004】
さらに、吸油・吸水機能に加えて、プラスチックフィルム上に、ITO(酸化インジウムスズ)などのマイクロ波の照射を受けて発熱する物体の層を設けて、電子レンジ加熱で食品に焦げ目をつけることができる機能を有するシートが提案されている(例えば、特許文献11を参照。)。マイクロ波を吸収して、食品に熱を効率的に伝達できる材料としては、例えば、半導電性材料、強磁性材料、金属酸化物、希薄元素材料又は導電金属が例示されている(例えば、特許文献12を参照。)。
【0005】
電子レンジを用いて、生肉などの未加熱の食材を加熱調理する方法が提案されている。例えば、粘度が10Pa・d以下である調味液が充填された容器内に、澱粉及び/又は穀粉をまぶした生肉を投入して電子レンジで加熱調理する方法が開示されている(例えば、特許文献13を参照。)。有機酸と、熱硬化タンパク質と、食用油脂とを含む調味料を調製し、この調味料を生肉に塗布し、その後、未加熱のまま調味料を塗布した生肉を電子レンジで加熱する調理方法が開示されている(例えば、特許文献14を参照。)。また、電磁波を照射することで発熱する発熱体で被加熱物を挟んで、電子レンジ加熱することで、被加熱物の両面に焦げ目をつけることができる加熱補助部材が開示され、実施例として鯖の切り身の塩焼きを調理した例が開示されている(例えば、特許文献15を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−115168号公報
【特許文献2】特開平9−240754号公報
【特許文献3】実開昭62−159373号公報
【特許文献4】実開平5−16675号公報
【特許文献5】特開2006−315691号公報
【特許文献6】特開2001−199482号公報
【特許文献7】特開2001−348075号公報
【特許文献8】実開平5−82873号公報
【特許文献9】特開2009−131537号公報
【特許文献10】特開平9−123325号公報
【特許文献11】実開昭64−14330号公報
【特許文献12】特表平7−507442号公報
【特許文献13】特開2010−17136号公報
【特許文献14】特開2004−135646号公報
【特許文献15】特開2011−11044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フライ、唐揚げ、天ぷらなどの揚げ物は、夕食、お弁当など家庭で好まれるおかずの一つである。しかし、揚げ物の調理は、主に、食材に衣材をまぶす下ごしらえ工程と、下ごしらえした食材を高温に熱した多量の油中に投入して加熱調理する工程と、後片付けする工程とを含み、面倒と感じる要素が多く、また時間がかかるため、苦手意識を持つ人が多いのが現状である。そこで、油で揚げて調理したものと変わらないからっとした表面及び焦げ目を有する揚げ物様食品を、短時間で手軽に作れ、かつ、後片付けが簡単な作業性の高い調理方法が望まれている。
【0008】
特許文献1〜12は、既に調理又は半調理された食品を、加熱処理することを目的とするものであり、油で揚げて調理したものと変わらない食感を実現した揚げ物様食品を調理するのに適するとはいえない。特許文献13に記載の調理方法は、煮込み料理に適用される調理方法であり、揚げ物特有のからっとした表面を得ることはできない。特許文献14に記載の調理方法は、食品の表面に焼いたような焦げ目をつける調理方法であり、食品の表面に衣をつけて調理する揚げ物を得ることはできない。特許文献15に記載の加熱補助部材では、下ごしらえは、別容器又は調理台で行う必要があり、作業性の改善の余地がある。このように、これまで、下ごしらえから加熱調理までを一貫して調理可能な用具及び調理方法は、開示されていない。
【0009】
本発明の目的は、電子レンジを用いて、簡便に、かつ、油で揚げたものと同等に表面がからっとして、色目が良い仕上がり具合の揚げ物様食品を調理することができる電子レンジ加熱用包装体、電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法及び揚げ物様食品の調理セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子レンジ加熱用包装体は、食材収容部と該食材収容部の開口とを備える袋体であり、電子レンジを用いて、揚げ物様食品を調理するための電子レンジ加熱用包装体であって、該電子レンジ加熱用包装体が、蒸気抜き口を形成する手段を有し、前記食材収容部を構成する側壁が、互いに向かい合う第1の側壁と第2の側壁とを有し、前記第1の側壁が、少なくとも、食材と接する側に不織布からなる第1の吸水吸油シートと該第1の吸水吸油シートの外側に第1の耐油シートとを配置して形成した壁であり、前記第2の側壁が、少なくとも、食材と接する側に不織布からなる第2の吸水吸油シートを配置して形成した壁であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る電子レンジ加熱用包装体では、前記蒸気抜き口を形成する手段が、少なくとも前記第2の吸水吸油シートに形成された切込誘導線であり、前記蒸気抜き口が、前記切込誘導線を切り込むことで形成されるスリットであることが好ましい。水蒸気を効率的に蒸発させつつ、第2の吸水吸油シートが食材に接触して余分な水分及び油分を吸収しながら加熱するため焼きムラを少なくすることができる。
【0012】
本発明に係る電子レンジ加熱用包装体では、前記第2の側壁が、前記第2の吸水吸油シートの外側に第2の耐油シートを更に配置して形成した壁であり、前記第2の吸水吸油シートと前記第2の耐油シートとが別体であり、該第2の耐油シートが、前記第2の側壁の外周に沿って形成される切取り誘導線を有し、前記蒸気抜き口を形成する手段が、少なくとも前記第2の吸水吸油シートに形成されていることが好ましい。包装体の強度を向上でき、下ごしらえの作業をより安定して行うことができる。
【0013】
本発明に係る電子レンジ加熱用包装体では、前記第2の側壁が、前記第2の吸水吸油シートの外側に第2の耐油シートを更に配置して形成した壁であり、前記第2の吸水吸油シートと前記第2の耐油シートとが、接合されて一体であることが好ましい。包装体の強度を向上でき、下ごしらえの作業をより安定して行うことができる。また、電子レンジ加熱用包装体を安価に製造することができる。
【0014】
本発明に係る揚げ物様食品の調理セットは、本発明に係る電子レンジ加熱用包装体と、該電子レンジ加熱用包装体の食品収容部内に収容した衣材又は調味材料の少なくとも一方とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法は、食材と、衣材と、食用油とを含む調理材料を収容した、本発明に係る電子レンジ加熱用包装体に、前記蒸気抜き口を形成する手段によって、前記蒸気抜き口を形成する工程と、前記第2の側壁を上に向けて、電子レンジで加熱する工程とを順に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、電子レンジを用いて、簡便に、かつ、油で揚げたものと同等に表面がからっとして、色目が良い仕上がり具合の揚げ物様食品を調理することができる電子レンジ加熱用包装体、電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法及び揚げ物様食品の調理セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体を示す斜視図である。
【図2】図1のA1−A1破断面図である。
【図3】図1のA2−A2破断面図の変形例である。
【図4】第二実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体を示す斜視図である。
【図5】図4のA3−A3破断面図である。
【図6】第三実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体を示す斜視図である。
【図7】図6のB−B破断面図である。
【図8】電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0019】
図1は、第一実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体を示す斜視図である。図2は、図1のA1−A1破断面図である。第一実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体100は、食材収容部2と食材収容部2の開口3とを備える袋体であり、電子レンジを用いて、揚げ物様食品を調理するための電子レンジ加熱用包装体であって、電子レンジ加熱用包装体100が、蒸気抜き口を形成する手段40を有し、食材収容部2を構成する側壁が、互いに向かい合う第1の側壁10と第2の側壁20とを有し、第1の側壁10が、少なくとも、食材と接する側に不織布からなる第1の吸水吸油シート11と第1の吸水吸油シート11の外側に第1の耐油シート12とを配置して形成した壁であり、第2の側壁20が、少なくとも、食材と接する側に不織布からなる第2の吸水吸油シート21を配置して形成した壁である。
【0020】
第一実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体100は、図1及び図2に示すように、例えば、周辺に封鎖部5が形成された袋体である。袋体の形状は、特に限定されず、三方シール袋(図1に図示。)、二方シール袋若しくはピロー包装袋などの扁平袋、ガゼット袋若しくはスタンディングパウチなどの自立袋又はこれらの変形袋であり、自立性を有する点で、ガゼット袋又はスタンディングパウチなどの自立袋がより好ましい。
【0021】
食材収容部2は、袋体の内部空間である。食材収容部2を構成する側壁は、互いに向かい合う第1の側壁10と第2の側壁20とを有する。まず、電子レンジ加熱用包装体100が、三方シール袋、二方シール袋若しくはピロー包装袋などの扁平袋である形態について、食材収容部2を構成する側壁について説明する。電子レンジ加熱用包装体100が、図1に示すように三方シール袋である形態では、食材収容部2は、第1の側壁10と第2の側壁20とで構成され、それぞれ別体のシートを重ね合わせることで、互いに向かい合う第1の側壁10と第2の側壁20とを形成している。電子レンジ加熱用包装体100が、二方シール袋又はピロー包装袋である形態では、食材収容部2は、第1の側壁10と第2の側壁20とで構成されるが、一連のシートを略中央部又は両端縁で折り返して重ね合わせて扁平な筒状にする。このとき互いに向かい合う部分が、各々、第1の側壁10又は第2の側壁20となる。次に、電子レンジ加熱用包装体100が、ガゼット袋又はスタンディングパウチなどの自立袋である形態について、食材収容部2を構成する側壁について説明する。図3は、図1のA2−A2破断面図の変形例である。電子レンジ加熱用包装体100が、ガゼット袋又はスタンディングパウチである形態では、図3に示すように、食材収容部2は、第1の側壁10と、第2の側壁20と、第1の側壁10及び第2の側壁20の間に折り込まれたマチ側壁30とで構成され、それぞれ別体のシートを互いに向かい合わせに配置して、第1の側壁10と第2の側壁20とを形成しつつ、第1の側壁10と第2の側壁20との間にマチ側壁30を折り込んで配置する。または、一連のシートを略中央部で折り返して重ね合わせ、このとき互いに向かい合う部分を、各々、第1の側壁10又は第2の側壁20とし、折り返し部分を内側に折り込んで、当該織り込んだ部分をマチ側壁30とする。マチ側壁30は、第1の吸水吸油シート10又は第2の吸水吸油シート20と同様に不織布で形成することが好ましい。なお、電子レンジ加熱用包装体100が、図1に示すように扁平袋である場合には、マチ側壁30を省略する。第1の側壁10と第2の側壁20とは、図1又は図2で示すように、明確な境界を有している形態に限定されず、対向する壁面であれば第1の側壁10と第2の側壁20とすることができる。
【0022】
開口3は、袋体の周辺のうち、封鎖部5が形成されていない部分である。開口3は、食材を食材収容部2に収容する出入口となる。開口3には、ジッパーなどの閉鎖具を取り付けてもよい。
【0023】
第1の側壁10は、図2に示すように、少なくとも、第1の吸水吸油シート11と第1の耐油シート12とを有する。第1の吸水吸油シート11は、食材と接触する面であり、主に、食材から発生する余分な水分及び油分を吸収して、それらが食材に再度付着するのを防止する役割をもつ。第1の耐油シート12は、第1の吸水吸油シート11の外側に配置され、主に、電子レンジ加熱用包装体100の外部に油分が出て、調理台、電子レンジの庫内などが汚れるのを防止する役割をもつ。また、電子レンジ加熱用包装体100の物理的強度を保持する役割をもつ。
【0024】
第1の吸水吸油シート11は、吸水吸油性を有する不織布からなる。不織布に用いられる繊維は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、アクリルなどの合成繊維、レーヨンなどの半合成繊維、セルロース、パルプ、綿、絹、麻、羊毛などの天然繊維である。これらは、単独又は2種以上を併用することができる。この中で、耐熱性と吸油性の点で、セルロース、パルプ、ポリエステルがより好ましい。さらに、必要に応じてバインダーを配合してもよい。バインダーは、例えば、アクリロニトリル‐ブタジエン、スチレン‐ブタジエン、天然ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリビニルアルコールである。不織布の製造方法は、特に限定されず、例えば、エアレイド、スパンボンド、スパンレース、サーマルボンドである。第1の吸水吸油シート11は、材質若しくは製法の均一な単層の不織布とするか、又は材質若しくは製法の異なる2種以上の不織布を積層した積層体としてもよい。また、第1の吸水吸油シート11として、不織布にエンボス加工若しくは穿孔加工を施した形態又は不織布の表面に界面活性剤、撥水剤、撥油剤などをコーティングした形態を包含する。
【0025】
第1の吸水吸油シート11の目付は、60〜150g/mであることが好ましく、より好ましくは、70〜90g/mである。60g/m未満では、吸水吸油の効果が不足する場合がある。150g/mを超えると、コストの増大につながり、不経済である。
【0026】
第1の耐油シート12は、例えば、紙又は耐熱フィルムからなることが好ましい。耐油性を有する紙は、例えば、シリコン樹脂をコーティングした紙、プラスチックをコーティングした紙、プラスチックをラミネートした紙、グラシン紙などの高密度化した紙、パーチメント紙、硫酸紙、擬羊皮紙などの化学変性した紙、パラフィン紙などの薬品を含浸させた紙である。耐熱フィルムの材料は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミドである。これらの材料は、単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。また、耐熱フィルムは、単層とするか、又は積層としてもよい。本実施形態では、ヒートシール性を有する点で、耐熱フィルムであることが好ましく、ポリプロピレン製のフィルムがより好ましい。また、第1の耐油シート12には、エンボス加工を施してもよい。
【0027】
第1の耐油シート12の厚さは、特に限定されないが、50〜300μmであることが好ましく、より好ましくは、50〜100μmである。
【0028】
第1の側壁10は、図1及び図2では、食材と接する側に不織布からなる第1の吸水吸油シート11と第1の吸水吸油シート11の外側に第1の耐油シート12とを配置した形態を示したが、他の変形例として、食材と接する側に第1の吸水吸油シート11を配置した上で、第1の吸水吸油シート11及び第1の耐油シート12以外に、他のシート又は層を設ける形態(不図示)としてもよい。他のシート又は層を設ける位置は、例えば、第1の吸水吸油シート11と第1の耐油シート12との間若しくは第1の耐油シート12の外側又はその両方である。
【0029】
第1の側壁10は、図1及び図2では、第1の吸水吸油シート11と第1の耐油シート12とを接合して一体とした積層体である形態を示したが、他の変形例として、それぞれ独立した別体の第1の吸水吸油シート11と第1の耐油シート12とを単に重ね合わせて配置しただけの形態(不図示)、第1の吸水吸油シート11と第1の耐油シート12との全部又は一部を剥離可能に接合する形態(不図示)としてもよい。
【0030】
第2の側壁20は、図2に示すように、少なくとも、第2の吸水吸油シート21を有する。第2の吸水吸油シート21は、第1の吸水吸油シート11と同様に、吸水吸油性を有する不織布からなり、主に、食材から発生する余分な水分及び油分を吸収して、それらが食材に再度付着するのを防止する役割をもつ。その材質、製法又は構成は、第1の吸水吸油シート11で説明したとおりである。本実施形態では、第2の吸水吸油シート21は、第1の吸水吸油シート11と同一の構成とするか、又は異なる構成としてもよい。
【0031】
電子レンジ加熱用包装体100は、蒸気抜き口を形成する手段40を有する。蒸気抜き口を形成する手段40は、例えば、切込誘導線を設ける形態、周辺にIノッチ又はVノッチなどの切欠き(不図示)を設ける形態、周辺の一部に剥離し易い部分(不図示)を設ける形態、内圧が所定の圧力以上になると蒸気を放出するバルブ(不図示)を設ける形態である。この中で、切込誘導線を設ける形態又は周辺にIノッチ若しくはVノッチなどの切欠き(不図示)を設ける形態がより好ましく、切込誘導線を設ける形態が特に好ましい。Iノッチ又はVノッチなどの切欠きは、包装袋で一般的に採用されている開封手段であり、加工が容易である点で優れている。また、蒸気抜き口を形成する手段40が切込誘導線であると、蒸気抜き口を形成時に袋体から切り離される部分がなく、ゴミの発生をなくすことができる点で優れている。また、蒸気抜き口を壁面の全域にわたって形成することで、加熱時に発生する水蒸気を食材収容部2の全域にわたって、効率よく、かつ、均等に放出することができる。
【0032】
第1実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体100では、蒸気抜き口を形成する手段40が、少なくとも第2の吸水吸油シート21に形成された切込誘導線であり、蒸気抜き口が、切込誘導線を切り込むことで形成されるスリットであることが好ましい。蒸気抜き口が、切込誘導線を切り込むことで形成されるスリットであると、食材が第1の側壁10と第2の側壁20とで挟まれる状態となるため、前記した水蒸気を効率的、かつ、均等に放出する効果に加え、余分な水分又は油分を吸収して、焼きムラなく調理することができる効果を奏する。また、蒸気抜き口が、第2の側壁20の全部又は一部を切除して形成した開放状態であると、電子レンジ加熱時に油が飛散して電子レンジの庫内が汚れるおそれがあるところ、蒸気抜き口が、スリットであると、第2の吸水吸油シート21が食材上に接触するため、電子レンジ庫内に油が飛散することがない。そして、スリットから水分を適度に抜くことができるので、加熱調理後の食材の表面をからっとさせることができる。切込誘導線は、図1では、ミシン目である形態について示したが、これに限定されず、例えば、印刷した線、ハーフカットである。切込誘導線の形態は、例えば、I字状、X字状、コの字状である。図1に示すように、X字状であることがより好ましい。
【0033】
第一実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体100を作製する方法は、第1側壁10と第2側壁20とを重ね合わせ、開口3となる辺以外の周辺を封鎖する。その具体的な手順は、例えば、(1)第1の耐油シート12と、第1の吸水吸油シート11と、第2の吸水吸油シート21とを順に重ね合わせ、開口3となる辺以外の周辺を封鎖する方法、(2)2枚の不織布を重ね合わせるか、若しくは1枚の不織布を折り返して重ね合わせ、開口3となる辺以外の周辺を封鎖して袋状とした後、いずれかの側壁の外側に第1の耐油シート12を取り付ける方法、(3)第1の吸水吸油シート11と第1の耐油シート12とを接合して一体とした積層体を第1の側壁10とし、第1の吸水吸油シート11側に、第2の吸水吸油シート21を重ね合わせ、開口3となる辺以外の周辺を封鎖する方法である。(3)の方法によって、図1及び図2の形態を作製することができる。周辺を封鎖する封鎖部5を形成する方法は、特に限定されず、例えば、ヒートシールで封鎖する方法、接着剤を用いて封鎖する方法、周辺を折曲げて封鎖する方法である。この中で、ヒートシールで封鎖する方法がより好ましい。なお、本発明は、作製方法及びその手順に制限されない。
【0034】
次に、第一実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体100の変形形態について、第二実施形態及び第三実施形態を例にとって、説明する。第二実施形態又は第三実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体は、その基本的な構成を第一実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体100と同じくするため、ここでは、共通する点についての説明を省略し、相違する点について説明する。
【0035】
図4は、第二実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体を示す斜視図である。図5は、図4のA3−A3破断面図である。第二実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体150では、第2の側壁20が、第2の吸水吸油シート21の外側に第2の耐油シート22を更に配置して形成した壁であり、第2の吸水吸油シート21と第2の耐油シート22とが、接合されて一体であることが好ましい。この変形形態は、電子レンジ加熱用包装体の外側が耐油シートで覆われるため、電子レンジ加熱用包装体の外部に油分が出るのを防止することができ、食材などを収容した状態で保存又は流通するのに適している。また、電子レンジ加熱用包装体の物理的強度が向上するため、下ごしらえの作業をより安定して行うことができる。さらに、第1の吸水吸油シート11と第1の耐油シート12とを、第2の吸水吸油シート21及び第2の耐油シート22と同様に、積層体とすることで、第1の側壁10と第2の側壁20とを同一の材質とすることができるため、構造が簡素となり、製造コストを抑制することができる。
【0036】
第2の吸水吸油シート21と第2の耐油シート22とを接合する方法は、特に限定されないが、適宜公知の積層方法を用いることができる。公知の積層方法は、例えば、ドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法、ホットメルトラミネート法、ウェットラミネート法、サーマルラミネート法である。
【0037】
第二実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体150では、蒸気抜き口を形成する手段40は、第一実施形態で例示した形態とすることができるが、図5に示すように、蒸気抜き口を形成する手段40が、少なくとも第2の耐油シート22に形成された切込誘導線であり、蒸気抜き口が、切込誘導線を切り込むことで形成されるスリットであることがより好ましい。なお、蒸気抜き口を形成する手段40は、第2の耐油シート22だけに形成するか、又は第2の吸水吸油シート21に達していてもよい。
【0038】
図6は、第三実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体を示す斜視図である。図7は、図6のB−B破断面図である。第三実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体200では、第2の側壁20が、第2の吸水吸油シート21の外側に第2の耐油シート22を更に配置して形成した壁であり、第2の吸水吸油シート21と第2の耐油シート22とが別体であり、第2の耐油シート22が、第2の側壁20の外周に沿って形成される切取り誘導線50を有し、蒸気抜き口を形成する手段40が、少なくとも第2の吸水吸油シート21に形成されていることが好ましい。第三実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体200では、外側が耐油シートで覆われているため、電子レンジ加熱用包装体200の外部に油分が出るのを防止することができ、食材などを収容した状態で保存又は流通するのに適している。また、電子レンジ加熱用包装体200の物理的強度が向上するため、下ごしらえの作業をより安定して行うことができる。
【0039】
第三実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体200では、第2の吸水吸油シート21と第2の耐油シート22とは別体に形成されている。なお、本明細書において、別体に形成とは、それぞれ独立した第2の吸水吸油シート21と第2の耐油シート22とを単に重ね合わせて配置しただけで形成する形態、第2の吸水吸油シート21と第2の耐油シート22との全部又は一部を剥離可能に接合して形成する形態を包含する。第2の耐油シート22の材質又は構成は、第1の耐油シート12で説明したとおりである。本実施形態では、第2の耐油シート22は、第1の耐油シート12と同一の構成とするか、又は異なる構成としてもよい。蒸気抜き口を形成する手段40は、図6及び図7では、第2の吸水吸油シート21だけに形成した形態を示したが、他の変形例として、第2の吸水吸油シート21及び第2の耐油シート22に形成する形態(不図示)としてもよい。
【0040】
第2の耐油シート22は、第2の側壁20の外周に沿って形成される切取り誘導線50を有する。切取り誘導線50は、図6及び図7では、ミシン目である形態について示したが、これに限定されず、例えば、印刷した線、ハーフカットである。切取り誘導線50は、切取り誘導線50に沿って、第2の耐油シート22を切り取った時、第2の吸水吸油シート21に形成した蒸気抜き口を形成する手段40が露出するように形成することが好ましい。これによって、電子レンジ加熱時に、蒸気抜き口から蒸気を効率的に放出させて、加熱調理後の食材の表面をからっとさせることができる。
【0041】
第2の側壁20は、食材と接する側に第2の吸水吸油シート21を配置していれば、第2の吸水吸油シート21及び第2の耐油シート22以外に、他のシート又は層を設けてもよい。他のシート又は層を設ける位置は、第2の吸水吸油シート21と第2の耐油シート22との間若しくは第2の耐油シート22の外側又はその両方である。
【0042】
第三実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体200を作製する方法は、第1側壁10と第2側壁20とを重ね合わせ、開口3となる辺以外の周辺を封鎖する。その具体的な手段は、例えば、(1)第1の耐油シート12と、第1の吸水吸油シート11と、第2の吸水吸油シート21と、第2の耐油シート22とを順に重ね合わせ、開口3となる辺以外の周辺を封鎖する方法、(2)第1の吸水吸油シート11と第1の耐油シート12とを接合して一体とした積層体を第1の側壁10とし、第1の吸水吸油シート11側に、第2の吸水吸油シート21と第2の耐油シート22とを順に重ね合わせ、開口3となる辺以外の周辺を封鎖する方法、(3)2枚の不織布を重ね合わせるか、若しくは1枚の不織布を折り返して重ね合わせ、開口3となる辺以外の周辺を封鎖して袋(以降、当該袋を内袋ということもある。)を形成し、また、2枚の耐油シートを重ね合わせるか、若しくは1枚の耐油シートを折り返して重ね合わせ、開口3となる辺以外の周辺を封鎖して袋(以降、当該袋を外袋ということもある。)を形成し、外袋の中に内袋を内蔵させた二重袋とする方法である。この中で、第1の側壁10と第2の側壁20とを同一の材質とすることができ、構造が簡素となり、製造コストを抑制することができる点で、(3)の方法がより好ましい。(3)の方法である場合には、内袋及び外袋を同一の形状(相似形状)とするか又は異なる形状としてもよい。また、少なくとも外袋が、ガゼット袋又はスタンディングパウチなどの自立袋であることが好ましい。周辺を封鎖する方法は、特に限定されず、例えば、ヒートシールで封鎖する方法、接着剤を用いて封鎖する方法、周辺を折曲げて封鎖する方法である。この中で、ヒートシールで封鎖する方法がより好ましい。なお、本発明は、作製方法及びその手順に制限されない。
【0043】
第2の吸水吸油シート21と第2の耐油シート22とは別体に形成されているため、図6に示すように、切取り誘導線50に沿って第2の耐油シート22を切り取ると、第2の吸水吸油シート21が露出する。第2の吸水吸油シート21が露出することで、主たる水蒸気の放出口を蒸気抜き口とし、更に第2の吸水吸油シート21からも水蒸気が透過して放出されるため、食材収容部2内の余分な水分をより少なくすることができる。結果として、加熱調理後の食材の表面をからっとさせて、良好な食感とすることができる。
【0044】
次に、本実施形態に係る電子レンジ加熱調理用包装体100,150,200を使用して、電子レンジで揚げ物様食品を調理する方法について説明する。第一実施形態に係る電子レンジ加熱調理用包装体100、第二実施形態に係る加熱調理用包装体150又は第三実施形態に係る電子レンジ加熱調理用包装体200は、使用方法が共通するため、ここでは、第三実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体200を例にとって説明する。
【0045】
図8は、電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法を説明するための図である。本実施形態に係る電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法は、食材と、衣材と、食用油とを含む調理材料6を収容した、本実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体200に、蒸気抜き口を形成する手段40によって、蒸気抜き口4を形成する工程と、第2の側壁20を上に向けて、電子レンジで加熱する工程とを順に有する。
【0046】
食材は、図8では、鶏肉であるが、これに限定されず、例えば、牛肉、豚肉などの食肉、野菜、魚、穀類である。
【0047】
衣材は、特に限定されず、例えば、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、豆類澱粉、タピオカ澱粉又はこれらのα化澱粉、湿熱処理澱粉若しくは加工澱粉などの澱粉、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、大豆粉、そば粉、片栗粉、葛粉などの穀粉である。また、必要に応じて、パン粉、ベーキングパウダーなどを更に配合してもよい。また、衣材として、市販の唐揚げ粉を用いることができる。
【0048】
食用油は、特に限定されず、例えば、サラダ油、オリーブ油、菜種油、大豆油、コーン油、紅花油、胡麻油である。従来、揚げ物調理において、食用油は、食用油自体を高温として、その熱を食材へ伝達する媒体としての役割をもつため、少なくとも食材を浸漬できる量を使用する必要があった。本実施形態に係る調理方法では、食用油は、食材と衣材との密着力を高め、かつ、加熱時に食材の表面温度を高める役割をもつため、その配合量を少なくすることができる。その配合量は、食材の含水量、質量などによって適宜調整する事項であり、特に限定されない。例えば、鶏肉200gに対して、小さじ1であればよく、油の使用量を大幅に減らすことができる。
【0049】
調理材料6には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、食材、衣材及び食用油以外のその他の材料を配合してもよい。その他の材料は、例えば、塩若しくは胡椒などの調味材料である。
【0050】
本実施形態に係る電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法では、下ごしらえは、食材と、衣材と、食用油とを含む調理材料6を本実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体200に開口3から食材収容部2に収容し、開口3を封鎖する作業となる。この下ごしらえ工程は、スーパーマーケットのバックヤード又は惣菜販売店若しくはレストランなどの店舗キッチンなどの調理場で、調理者が行うか、又は予め食品加工工場などの工場で行い、調理場での作業を省略してもよい。開口3を封鎖する方法は、特に限定されず、例えば、ヒートシールで封鎖する方法、接着剤を用いて封鎖する方法、開口3に取り付けたジッパーなどの閉鎖具で封鎖する方法、周辺を折曲げて封鎖する方法(図8に図示。)である。電子レンジ加熱用包装体100,150,200を図3に示すように、開口3と対向する辺にマチ壁30を設けてガゼット袋又はスタンディングパウチなどの自立袋とすることで、下ごしらえ工程の作業性をより向上させることができる。
【0051】
本実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体100,150,200は、袋体であるため、食材と衣材と食用油とを袋に入れて振り混ぜるだけで、食材に衣材を均一にまぶすことができ、従来のバット又はボウルなどの調理器具を用いて食材に衣材をまぶす方法よりも作業効率の向上が図れる。さらに、調理器具を使用しないため、通常必要な後片付け作業を省略できる。
【0052】
図6に示した第三実施形態に係る電子レンジ加熱調理用包装体200では、下ごしらえ工程後、切取り誘導線50に沿って、第2の耐油シート22を切り取り、蒸気抜き口を形成する手段40としての切込誘導線を露出させる。第2の耐油シート22を切り取ることで、第2の吸水吸油シート21を露出させ、加熱中に発生する水蒸気が、蒸気抜き口からだけでなく、第2の吸水吸油シート21からも透過して放出されるため、食材収容部2内の水分を効率的に蒸発させて、加熱後の結露の発生を抑制することができる。そして、食材の表面に余分な水分が付着しないため、食材の表面をからっとした状態にすることができる。なお、第一実施形態に係る電子レンジ加熱調理用包装体100又は第二実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体150では、この第2の耐油シート22を切り取る工程を省略することができる。
【0053】
次に、蒸気抜き口を形成する手段40によって、蒸気抜き口4を形成する。例えば、蒸気抜き口を形成する手段40が、封鎖部5に設けたIノッチ若しくはVノッチなどの切欠き(不図示)である場合には、調理者は、切欠きから側面を開放し、蒸気抜き口を形成する。また、図6に示すように、蒸気抜き口を形成する手段40が、切込誘導線である場合には、調理者は、切込誘導線を、手又ははさみ若しくはナイフなどの道具を用いて、切込誘導線に沿って切断することで、図8に示すような蒸気抜き口4を形成する。また、第二実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体150では、第2の吸水吸油シート21と第2の耐油シート22とが一体に形成されているため、第2の耐油シート22を切断すると、第2の吸水吸油シート21も切断されて、蒸気抜き口4を形成する。
【0054】
調理材料6が収容された電子レンジ加熱調理用包装体200は、蒸気抜き口4を形成後は、第2側壁20側を上側に、第1側壁10側を下側にする。以降、上側の第2側壁20側を電子レンジ加熱調理用包装体100,150,200の上面といい、下側の第1側壁10側を電子レンジ加熱調理用包装体100,150,200の下面ということもある。さらに、上面と下面とを連結する面をマチということもある。
【0055】
電子レンジ加熱前には、加熱ムラを防止するために、食材が、食材収容部2内で他の食材と重ならないように均等に配置することが好ましい。蒸気抜き口を形成する手段40が切込誘導線であると、図8に示すように、蒸気抜き口4を上面に設けることができ、食材収容部2内を調理者が目視で確認し易く、食材の配置を容易に調整することができる。さらに、加熱時において、水蒸気の放出をより効率的にすることができる。また、電子レンジ加熱用包装体100,150,200を図3に示すように、開口3と対向する辺にマチ壁30を設けたガゼット袋又はスタンディングパウチなどの自立袋とすることで、特に、厚みのある食材に適した電子レンジ加熱用包装体100,150,200とすることができる。
【0056】
続けて、第2の側壁20を上側に向けて、電子レンジで加熱する。蒸気抜き口4は、スリットとすることで、適度に水蒸気を放出させつつ、図8に示すように、食材の上下面に第1の吸水吸油シート11と第2の吸水吸油シート21とが接触して、余分な水分及び油分を吸収しながら調理するため、上下での焼きムラを少なくすることができる。さらに、第2の吸水吸油シート21が、食材上を覆うため、加熱時に油分が飛散して電子レンジ庫内が汚れるのを防止することができる。
【0057】
調理後は、開口3又は蒸気抜き口4から食材を取り出し、食材を食器に移すか、又は電子レンジ加熱調理用包装体100,150,200のまま食器に載せてもよい。また、蒸気抜き口4がスリットである場合には、第2の吸水吸油シート21を切り開くことで、電子レンジ加熱調理用包装体100,150,200を上面が開放したトレーとして利用することができる。電子レンジ加熱調理用包装体100,150,200の下面には、第1の耐油シート12があるため、電子レンジ加熱調理用包装体100,150,200を食器に載せた場合には、食器に油分が付着しない。また、食器を用いなくても、食卓を汚すことがない。
【0058】
本実施形態に係る電子レンジ加熱調理用包装体100,150,200は袋体であるため、下ごしらえで従来使用していたバット、ボウルなどの調理器具を使用せずに、食材に均一に衣材を付着させることができ、後片付けの手間を減らすことができる。第1の側壁10が、第1の吸水吸油シート11の外側に第1の耐油シート12を有するため、調理台又は電子レンジの加熱台が汚れるのを防止することができる。食材の上下面に第1の吸水吸油シート10及び第2の吸水吸油シート20が接触するように配置することで、上下での焼きムラを少なくすることができ、更には油分が飛散して電子レンジ庫内が汚れるのを防止することができる。蒸気抜き口4を上面に設けることで、水蒸気を効率的に放出させて、加熱後の食材をからっとした表面にすることができる。
【0059】
本実施形態に係る揚げ物様食品の調理セットは、本実施形態に係る電子レンジ加熱用包装体100,150,200と、電子レンジ加熱用包装体100,150,200の食品収容部2内に収容した衣材又は調味材料の少なくとも一方とを備える。衣材又は調味材料の種類は、前記に例示したものを使用できる。これらは、調理する食品に応じて、適宜選択する事項であり、本発明は、衣材又は調味材料の種類に制限されない。本実施形態に係る調理セットは、衣材又は調味材料以外のその他の材料を収容してもよい。本実施形態に係る調理セットを用いると、調理者は食材及び食用油を用意するだけで、前記した調理方法に示すように、簡便に、食感が良く、見た目にもおいしそうな揚げ物様食品を調理することができる。
【実施例】
【0060】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
(袋体の作製)
縦辺25.0cm及び横辺16.0cmに切断した第1の耐油シートとして耐熱フィルム(ポリプロピレンフィルム、厚さ40μm)と、第1の吸水吸油シートとして不織布(パルプ繊維、目付80g/m)と、第2の吸水吸油シートとして不織布(パルプ繊維、目付80g/m)と、第2の耐油シートとして耐熱フィルム(ポリプロピレンフィルム、厚さ40μm)とを順に重ね合わせ、横辺のうち一辺を開口とし、他の周辺を折曲げ、接着剤で封鎖し、袋体を形成した。第2の吸水吸油シートには、予め、蒸気抜き口を形成する手段として、対角を結ぶようにX字にハーフカットの切込誘導線を施した。さらに、第2の耐油シートには、予め、第2の側壁の外周に沿ってミシン目の切取り誘導線を施した。
【0062】
(下ごしらえ)
袋体の第1の吸水吸油シートと第2の吸水吸油シートとの間に、食材として鶏肉200gを六等分に切断したものと、衣材として唐揚げ粉20gと、食用油としてサラダ油小さじ1とを収容した。開口を折曲げて封鎖した状態で、複数回、振り混ぜて、食材、衣材及び食用油を混合させた。
【0063】
(第2の耐油シートの切取り)
次に、切取り誘導線に沿って、第2の耐油シートを切り取り、第2の吸水吸油シートを露出させた。
【0064】
(蒸気抜き口の形成)
次に、第2の吸水吸油シート側を上に向けた状態で、切込誘導線に沿って切り込み、蒸気抜き口を形成した。
【0065】
(電子レンジ加熱)
次いで、鶏肉が重ならないように配置させ、蒸気抜き口(第2の吸水吸油シート側)を上に向けた状態で、電子レンジ(600W)で5分30秒間加熱した。
【0066】
得られた実施例1の鶏の唐揚げは、表面の衣がからっとして、色目が良く、見た目に美味しそうな仕上がり具合であった。さらに、衣は、さくっとした食感を有し、内部は、十分な肉汁が残り、柔らかい食感を有していた。また、調理後の調理台及び電子レンジ庫内に汚れがなく、従来の揚げ物調理と比較して、後片付けに手間がかからなかった。
【0067】
(実施例2)
(袋体の作製)
縦辺27.0cm及び横辺32.0cmに切断した耐油シートとしての耐熱フィルム(ポリプロピレンフィルム、厚さ40μm)と吸水吸油シートとしての不織布(パルプ繊維、目付80g/m)とを接合して一体とした積層体を中央部で折り返し、横辺のうち一辺を開口とし、他の周辺を折曲げ、接着剤で封鎖し、二方シール袋を形成した。向かい合う側壁のうち一方に、予め蒸気抜き口を形成する手段として、対角を結ぶようにX字にハーフカットの切込誘導線を施した。
【0068】
(下ごしらえ)
袋体の第1の吸水吸油シートと第2の吸水吸油シートとの間に、食材として鶏肉200gを六等分に切断したものと、衣材として唐揚げ粉20gと、食用油としてサラダ油小さじ1とを収容した。開口を折曲げて封鎖した状態で、複数回、振り混ぜて、食材、衣材及び食用油を混合させた。
【0069】
(蒸気抜き口の形成)
次に、切込誘導線を施した側の側壁を上に向けた状態で、切込誘導線に沿って切り込み、蒸気抜き口を形成した。
【0070】
(電子レンジ加熱)
次いで、鶏肉が重ならないように配置させ、蒸気抜き口を上に向けた状態で、電子レンジ(600W)で5分30秒間加熱した。
【0071】
得られた実施例2の鶏の唐揚げは、実施例1よりも表面に水分が多いものの、色目が良く、見た目に美味しそうな仕上がり具合であった。衣は、さくっとした食感を残しており、内部は、十分な肉汁が残り、柔らかい食感を有していた。
【0072】
(実施例3)
第2の吸水吸油シートに、蒸気抜き口を形成する手段として、切込誘導線に替えて、縦辺に形成したVノッチした以外は、実施例1と同様に袋体を作製した。なお、Vノッチは、縦辺上に形成した。形成位置は、縦辺と開口に対向する横辺とが交差する角から開口側に1cmずらした位置とした。次に、実施例1と同様に下ごしらえを行った。そして、Vノッチから、横辺に沿って切断し、開口と対向する辺を開放させて、蒸気抜き口を形成した。また、開口を開放して、蒸気抜き口とした。その後、実施例1と同様に、電子レンジ加熱を行った。
【0073】
得られた実施例3の鶏の唐揚げは、実施例1又は2よりも表面に水分が多いものの、表面の衣にベタツキが少なく、色目が良く、見た目に美味しそうな仕上がり具合であった。衣は、実施例1又は2よりも柔らかいものの、さくっとした食感を残しており、内部は、十分な肉汁が残り、柔らかい食感を有していた。
【0074】
(比較例1)
第2の吸水吸油シートに、蒸気抜き口を形成する手段を設けず、蒸気抜き口を形成せずに、開口を封鎖した状態で電子レンジ加熱を行った以外は、実施例1と同様に調理した。
【0075】
得られた比較例1の唐揚げは、加熱時に袋体が膨らみ、吸水吸油シートが食材と接触する面積が小さく、また、蒸気を放出できず、水分が蒸発しなかったため、表面に余分な水分及び油分が付着して、べちゃっとした仕上がりであった。
【0076】
(比較例2)
(下ごしらえ)
食材として鶏肉200gを六等分に切断したものをボウルに入れ、そこへ衣材として唐揚げ粉20gと、食用油としてサラダ油小さじ1とを入れて、菜箸で食材、衣材及び食用油を混合させた。
【0077】
(電子レンジ加熱)
次いで、縦辺27.0cm及び横辺16.0cmに切断した耐油シートとして耐熱フィルム(ポリプロピレンフィルム、厚さ40μm)の上に、吸水吸油シートとして不織布(パルプ繊維、目付80g/m)を重ね、吸水吸油シート上に、下ごしらえした鶏肉を重ならないように配置させ、電子レンジ(600W)で5分30秒間加熱した。
【0078】
得られた比較例2の唐揚げは、表面の衣がからっとして、色目が良く、見た目に美味しそうな仕上がり具合であった。しかし、下ごしらえで使用した調理器具の後片付けが必要であり、電子レンジ庫内には、油分が飛散していた。袋体としなかったため、実施例1よりも作業性に劣った。
【符号の説明】
【0079】
1 袋体
2 食材収容部
3 開口
4 蒸気抜き口
5 封鎖部
6 調理材料
10 第1の側壁
11 第1の吸水吸油シート
12 第1の耐油シート
20 第2の側壁
21 第2の吸水吸油シート
22 第2の耐油シート
30 マチ側壁
40 蒸気抜き口を形成する手段
50 切取り誘導線
100,150,200 電子レンジ加熱用包装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材収容部と該食材収容部の開口とを備える袋体であり、電子レンジを用いて、揚げ物様食品を調理するための電子レンジ加熱用包装体であって、
該電子レンジ加熱用包装体が、蒸気抜き口を形成する手段を有し、
前記食材収容部を構成する側壁が、互いに向かい合う第1の側壁と第2の側壁とを有し、
前記第1の側壁が、少なくとも、食材と接する側に不織布からなる第1の吸水吸油シートと該第1の吸水吸油シートの外側に第1の耐油シートとを配置して形成した壁であり、
前記第2の側壁が、少なくとも、食材と接する側に不織布からなる第2の吸水吸油シートを配置して形成した壁であることを特徴とする電子レンジ加熱用包装体。
【請求項2】
前記蒸気抜き口を形成する手段が、少なくとも前記第2の吸水吸油シートに形成された切込誘導線であり、
前記蒸気抜き口が、前記切込誘導線を切り込むことで形成されるスリットであることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用包装体。
【請求項3】
前記第2の側壁が、前記第2の吸水吸油シートの外側に第2の耐油シートを更に配置して形成した壁であり、
前記第2の吸水吸油シートと前記第2の耐油シートとが別体であり、
該第2の耐油シートが、前記第2の側壁の外周に沿って形成される切取り誘導線を有し、
前記蒸気抜き口を形成する手段が、少なくとも前記第2の吸水吸油シートに形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子レンジ加熱用包装体。
【請求項4】
前記第2の側壁が、前記第2の吸水吸油シートの外側に第2の耐油シートを更に配置して形成した壁であり、
前記第2の吸水吸油シートと前記第2の耐油シートとが、接合されて一体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子レンジ加熱用包装体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の電子レンジ加熱用包装体と、該電子レンジ加熱用包装体の食品収容部内に収容した衣材又は調味材料の少なくとも一方とを備えることを特徴とする揚げ物様食品の調理セット。
【請求項6】
食材と、衣材と、食用油とを含む調理材料を収容した、請求項1〜4のいずれか一つに記載の電子レンジ加熱用包装体に、前記蒸気抜き口を形成する手段によって、前記蒸気抜き口を形成する工程と、
前記第2の側壁を上に向けて、電子レンジで加熱する工程とを順に有することを特徴とする電子レンジを用いた揚げ物様食品の調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−192970(P2012−192970A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59842(P2011−59842)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】