説明

電子レンジ加熱用包装袋

【課題】 本発明の目的は、内部に水分と油分や糖分を多く含む液状物と固形状物からなる食品等を収納して、業務用の高出力の電子レンジにて加熱調理され、部分的にマイクロ波が集中して包装袋が局部的に強く加熱されることがあっても、包装袋に穴があくことのない電子レンジ加熱用包装袋を提供することである。
【解決手段】 ポリブチレンテレフタレート系フィルムと熱接着性樹脂層が積層された積層体、ないしは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリブチレンテレフタレート系フィルムと熱接着性樹脂層が積層された積層体からなる電子レンジ加熱用包装袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収納して電子レンジにて加熱し内容物を調理する際に、袋が部分的に強く加熱されることがあっても、袋を構成する積層体が溶融して穴があくのを防止した電子レンジ加熱用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水分と油分や糖分を多く含む食品等の内容物を収納した状態でそのまま電子レンジにより加熱調理することができ、且つ加熱調理中に発生する蒸気により収容された食品を蒸らす効果を有するとともに内部の蒸気圧力により熱接着部を一部剥離させて蒸気を逃がすことのできる包装袋としては、耐屈曲ピンホール性、強度等を考慮して、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと2軸延伸ナイロンフィルムと未延伸ポリプロピレンフィルムを積層した3層構成からなる電子レンジ用包装袋(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開平10−2309784号
【0003】
しかしながら、上記の電子レンジ用包装袋のように、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと2軸延伸ナイロンフィルムと未延伸ポリプロピレンフィルムを積層した3層構成からなる包装袋の場合、2軸延伸ナイロンフィルムは耐屈曲ピンホール性は優れるが、水分を吸収しやすく耐熱性がよくないので、上記構成の包装袋の内部に水分と油分や糖分を多く含む液状物と固形状物からなる食品等を収納し、業務用の電子レンジのように高出力の電子レンジで加熱調理され、部分的にマイクロ波が集中し局部的に強く加熱された時に、水分を吸収しやすく耐熱性がよくない2軸延伸ナイロンフィルムから溶融が発生し、次いで、積層フィルムの全体が溶融して包装袋に穴があいてしまうという欠点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、内部に水分と油分や糖分を多く含む液状物と固形状物からなる食品等を収納して、業務用の高出力の電子レンジにて加熱調理する際に、部分的にマイクロ波が集中して包装袋が局部的に強く加熱されることがあっても、包装袋を構成する積層体が溶融して穴があくのを防止できる電子レンジ加熱用包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ポリブチレンテレフタレート系フィルムと熱接着性樹脂層が積層された積層体からなることを特徴とする電子レンジ加熱用包装袋である。
【0006】
上記の電子レンジ加熱用包装袋において、前記積層体が、ポリブチレンテレフタレート系フィルムの外面に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された構成からなる電子レンジ加熱用包装袋である。
【0007】
上記の電子レンジ加熱用包装袋において、周縁に熱接着部が形成されるとともに前記熱接着部に隣接して電子レンジ加熱時に発生する蒸気を自動的に排出する蒸気排出部が形成されている構成である。
【0008】
上記の電子レンジ加熱用包装袋において、前記ポリブチレンテレフタレート系フィルムが、引張弾性率(ISO 527)が100〜1000MPaとされた構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋とすることにより、ポリブチレンテレフタレート系フィルムは耐熱性、耐ピンホール性、耐水性に優れるとともに、水分を吸収しにくいフィルムであるので、本発明の電子レンジ加熱用包装袋に水分や油分や糖分を多く含み胡椒や挽き肉のように粒状のものを含む内容物を収納して、業務用の電子レンジのように高出力の電子レンジで加熱され、部分的にマイクロ波が集中して包装袋が局部的に強く加熱された場合でも、積層フィルムが水分を吸収しにくく且つ耐熱性が優れるので、積層体が部分的に溶融して包装袋に穴があくのを防止することができる。また、ポリブチレンテレフタレート系フィルムは耐屈曲ピンホール性が優れるので、包装袋のしわになった箇所にてピンホールが発生するのを防止することができる。
【0010】
請求項2記載の発明では、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは耐熱性及び強度が優れるので、より耐熱性、強度の優れた電子レンジ加熱用包装袋とすることができる。
【0011】
請求項3記載の発明では、内容物を収納した電子レンジ加熱用包装袋をそのまま電子レンジにて加熱した際に、内容物から発生する蒸気により包装袋が膨れ、内部の蒸気圧が高くなると周縁熱接着部に隣接して形成されている蒸気排出部から蒸気が自動的に外部に排出させることができるので、加熱調理時に包装袋が破裂することなく内容物を加熱調理することができる。
【0012】
請求項4記載の発明では、耐屈曲ピンホール性がより優れた電子レンジ加熱用包装袋とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を引用して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の電子レンジ加熱用包装袋の第1実施形態にて使用する積層体の構成を示す断面図、図2は本発明の電子レンジ加熱用包装袋の第2実施形態にて使用する積層体の構成を示す断面図、図3は本発明の積層体を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の1実施例を示す斜視図、図4は本発明の積層体を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の他の実施例を示す斜視図であって、2は周縁熱接着部、3は襞周縁熱接着部、4は蒸気排出用熱接着部、5は開口、6は切欠、10, 10' は積層体、11は2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、12はポリブチレンテレフタレート系フィルム、13は熱接着性樹脂層、14は接着層をそれぞれ表す。
【0014】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋に使用する第1実施形態の積層体10の構成は、図1に示すように、外面から順に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム11と接着層14とポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された構成からなる。第1実施形態の積層体にて包装袋を作製することにより、ポリブチレンテレフタレート系フィルムは耐熱性、耐屈曲ピンホール性、耐衝撃性に優れるとともに、水分を吸収しにくい低吸湿性であるため、この包装袋に水分や油分や糖分を多く含み、胡椒や挽き肉のように粒状のものを含む内容物を収納して、業務用の電子レンジのように高出力の電子レンジで加熱され、部分的にマイクロ波が集中して包装袋が局部的に強く加熱された場合でも、包装袋を構成する積層体に穴があくのを防止することができるとともに、包装袋のしわの部分にてピンホールが発生するのを防止することができる。
【0015】
本発明の電子レンジ加熱用包装袋に使用する第2実施形態の積層体10' の構成は、図2に示すように、外面から順にポリブチレンテレフタレート系フィルム12と接着層14と熱接着性樹脂層13が積層された構成からなる。第2実施形態の積層体を使用して作製される包装袋においても、第1実施形態の積層体を使用して作製される包装袋と同様に、上記の効果が得られる。
【0016】
本発明の第1、第2実施形態の積層体を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の1実施例は、図3に示すように、表裏2枚の積層体10,10'を重ね合わせて周縁を周縁熱接着部2にて熱接着して形成され、包装袋を構成する表裏いずれか一方の積層体10,10'に包装袋の長辺に直交方向に所定巾を有する襞部が形成され、襞部の長手方向の中央部に襞周縁熱接着部3から内方に突出する蒸気排出用熱接着部4が形成されるとともに蒸気排出用熱接着部4の内部に開口5が形成され、包装袋の周縁熱接着部2に開封用の切欠6が形成された構成である。
【0017】
本発明の第1、第2実施形態の積層体を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の他の実施例は、図4に示すように、表裏2枚の積層体10,10'を重ね合わせて周縁を周縁熱接着部2にて熱接着して形成され、包装袋の長辺の周縁熱接着部2に隣接して内方に突出する蒸気排出用熱接着部4が形成されるとともに蒸気排出用熱接着部4の内部に開口5が形成され、包装袋の周縁熱接着部2に開封用の切欠6が形成された構成である。
【0018】
図3、図4に示す電子レンジ加熱用包装袋に内容物を収納して、電子レンジで加熱することにより収納した内容物を調理することができるとともに、内容物を調理中に内部で発生した蒸気の圧力が高くなると、蒸気排出用熱接着部4が剥離し開口から自動的に蒸気を外部に排出できるので、包装袋が破裂することなく且つ内部に収納されている内容物が溢れだすことなく、内部に収納した内容物を調理することができる。
【0019】
本発明の第1、第2実施形態の積層体10,10'は、耐熱性、耐屈曲ピンホール性に優れるとともに水分を吸収しにくいポリブチレンテレフタレート系フィルムが積層された構成であるので、第1、第2実施形態の積層体10,10'を使用して作製される包装袋に、水分や油分や糖分を多く含み、胡椒や挽き肉のように粒状のものを含む内容物を収納して、業務用の電子レンジのように高出力の電子レンジで加熱され、部分的にマイクロ波が集中して包装袋が局部的に強く加熱された場合でも、包装袋に穴があくのを防止することができるものである。
【0020】
第1、第2実施形態の積層体において使用するポリブチレンテレフタレート系フィルムとしては、例えば、特開平2004−18742号公報に記載されているような、ポリエステル樹脂中にガラス転移点が−100〜20℃の、ポリブチレンテレフタレートとポリオキシアルキレングリコールのブロック共重合体であるポリエーテルエステルからなる低Tgポリマーを0.1〜5重量%島状に分散含有したポリエステルフィルムにおいて、フィルム中に島状に分散した低Tgポリマーの長径が0.3〜1.0μm、短径が1〜50nmである、2軸方向に3.0〜5.0倍延伸した2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムや、特開平2003−238783号公報に記載されているような、動的粘弾性法で測定したガラス転移温度0℃〜75℃である、実質的にテレフタル酸及び/またはそのエステル誘導体からなるジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール混合物、又はテレフタル酸及び/またはそのエステル誘導体を主成分とするジカルボン酸混合物と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール混合物との重縮合物である、共重合ポリブチレンテレフタレート系樹脂(a)、平均粒径が2μm〜20μmの無機フィラー(b)及び縮合リン酸エステル系化合物(c)を含有し、(a)、(b)及び(c)の合計量に対する(b)の含量が3〜35重量%、(c)の含量が5〜40重量%である共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムが使用できる。ポリブチレンテレフタレート系フィルムとして、引張弾性率(ISO 527)が100〜1000MPaであるフィルムを使用することにより、より柔軟性が優れ耐屈曲ピンホール性の優れる包装袋とすることができる。
【0021】
熱接着性樹脂層としては、未延伸ポリプロピレン(CPP)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ホリエチレン(HDPE)等の耐熱性の優れた樹脂が使用できる。積層体の構成としては、2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム/直鎖状低密度ポリエチレン、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム/未延伸ポリプロピレンフィルム、シリカ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム/未延伸ポリプロピレンフィルム等である。
【実施例1】
【0022】
厚さ12μmのシリカ蒸着2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム〔テックバリアTZ(三菱樹脂)〕と15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム〔ノバデュラン5505S(三菱エンジニアリングプラスチック)〕と60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを2液型ウレタン系接着剤にてドライラミネートして3層構成の積層体を作製し、この積層体を使用して図3に示す形状のパウチ(長さ170mm、幅120mm、襞高さ25mm)を作製し、このパウチにドミグラソースハンバーグを100g充填し、500W電子レンジで2分間加熱した結果、n=10で10袋とも穴あきは発生しなかった。
【実施例2】
【0023】
厚さ15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルム〔ノバデュラン5505S(三菱エンジニアリングプラスチック)〕と50μmの線状低密度ポリエチレンフィルムを2液型ウレタン系接着剤にてドライラミネートして2層構成の積層体を作製し、この積層体を使用して図4に示す形状のパウチ(長さ160mm、幅130mm)を作製し、このパウチにドミグラソースハンバーグを85g充填し、500W電子レンジで2分間加熱した結果、n=10で10袋とも穴あきは発生しなかった。
【0024】
〔比較例1〕 15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムの代わりに、15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを使用した以外は、実施例1と同様の方法でテストを行った結果、n=10で7袋で穴あきが発生した。
【0025】
〔比較例2〕 15μmの2軸延伸ポリブチレンテレフタレート系フィルムの代わりに、15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを使用する以外は、実施例2と同様の方法でテストを行った結果、n=10で10袋で穴あきが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の電子レンジ加熱用包装袋の第1実施形態にて使用する積層体の構成を示す断面図。
【図2】本発明の電子レンジ加熱用包装袋の第2実施形態にて使用する積層体の構成を示す断面図。
【図3】本発明の積層体を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の1実施例を示す斜視図。
【図4】本発明の積層体を使用して作製される電子レンジ加熱用包装袋の他の実施例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0027】
2 周縁熱接着部
3 襞部周縁熱接着部
4 蒸気排出用熱接着部
5 開口
6 切欠
10 10' 積層体
11 2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム
12 ポリブチレンテレフタレート系フィルム
13 熱接着性樹脂層
14 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート系フィルムと熱接着性樹脂層が積層された積層体からなることを特徴とする電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項2】
前記積層体が、ポリブチレンテレフタレート系フィルムの外面に2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された構成からなることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項3】
周縁に熱接着部が形成されるとともに前記熱接着部に隣接して電子レンジ加熱時に発生する蒸気を自動的に排出する蒸気排出部が形成されている構成からなることを特徴とする請求項1または2記載の電子レンジ加熱用包装袋。
【請求項4】
前記ポリブチレンテレフタレート系フィルムが、引張弾性率(ISO 527)が100〜1000MPaであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子レンジ加熱用包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−143223(P2006−143223A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331393(P2004−331393)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】