説明

電子レンジ用包装体

【課題】包装袋の膨張によってより確実に箱体を開封することのできる電子レンジ用包装体を提供することである。
【解決手段】相互に対向する前面11及び裏面12と前面11及び裏面12の縁に連なる側面13a、13b、13c、13dとを有し、前面11に開放可能な開封部15が設けられた箱体10と、蒸気抜き部21a、21b、21cが形成され、蒸気抜き部21a、21b、21cが開封部15に対向するように箱体10に収められた包装袋20とを有し、電子レンジによる加熱時における包装袋20の内圧上昇に伴う膨張によって箱体10に形成された開封部15が開放され得るようにした電子レンジ用包装体であって、箱体10の前面に形成された開封部15は、非開封部との境界16から所定方向に開放するものであって、前記所定方向に延びる前面11の中心線に対して非対称に形成されている構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気抜き部が形成されて電子レンジでの加熱が可能となるパウチ等の包装袋が箱体に収められた構造となる電子レンジ用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気抜き部が設けられて電子レンジでの加熱が可能となる食品用のパウチ(包装袋)が化粧箱(箱体)に納められた構造となる電子レンジ用包装体が提案されている(特許文献1参照)。この電子レンジ用包装体の化粧箱には加熱時のパウチの膨張によって開放可能な開封部が形成され、蒸気抜き部が前記開封部に対向するようにパウチが前記化粧箱に収められている。
【0003】
このような電子レンジ用包装体によれば、パウチの収められた化粧箱を開封部の形成された面を上方に向けた状態で電子レンジにセットし、該電子レンジによる加熱動作によってパウチが膨張すると、そのパウチの膨張によって化粧箱の開封部が自動的に開放されるようになるので、化粧箱からわざわざパウチを取り出すことなく、電子レンジにて加熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−51562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の電子レンジ用包装体では、電子レンジ内で加熱される包装袋の膨張力によって箱体の開封部が確実に開放されることが重要である。本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、包装袋の膨張によってより確実に箱体を開封することのできる電子レンジ用包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子レンジ用箱入り包装袋は、相互に対向する前面及び裏面と当該前面及び裏面の縁に連なる側面とを有し、前記前面に開放可能な開封部が設けられた箱体と、蒸気抜き部が形成され、該蒸気抜き部が前記開封部に対向するように前記箱体に収められた包装袋とを有し、電子レンジによる加熱時における前記包装袋の内圧上昇に伴う膨張によって前記箱体に形成された開封部が開放され得るようにした電子レンジ用包装体であって、前記箱体の前面に形成された前記開封部は、非開封部との境界から所定方向に開放するものであって、前記所定方向に延びる前記前面の中心線に対して非対称に形成されている構成となる。
【0007】
このような構成により、電子レンジ用包装体を電子レンジによって加熱すると、包装袋が膨張して箱体の前面に設けられた開封部を押し上げることにより、該開封部が徐々に盛り上がり、それにつれて、箱体の前面の開封部以外の非開封部や側面も変形していく。そして、前記開封部が前面の中心線に対して非対称に形成されることから、盛り上がる開封部は、非開封部との境界から前面の中心線に対して不均等に開放され始める。開封部の部分的な開放により、開放が遅れた側の非開封部や側面の変形が緩和され、その変形が緩和された分、前記開封部の盛り上がりによる力がその開放の遅れた側の開封部の非開封部との境界からの開放に有効に働いて、当該開封部がその境界から一気に開放され得るようになる。
【0008】
本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記開封部は、前記境界の部分が切れることにより開放されるものであり、前記前面の中心線の一方側の前記境界の部分は、前記中心線の他方側の前記境界の部分より切れ易くなっている構成とすることができる。
【0009】
このような構成により、包装袋の膨張によって箱体の前面で盛り上がる開封部が、非開放部との境界の切れ易い部分からより早く開放し始めるようになるので、非開封部や側面の変形の緩和が助長されて、前記開封部の盛り上がりによる力がその開放の遅れた側における開封部の非開封部との境界からの開放にさらに有効に働き得るようになる。
【0010】
また、本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記境界には、切込み線が連なった切込み線列が形成され、前記前面の中心線の一方側の切込み線列における切込み線の間隔と、前記中心線の他方側の前記切込み線列における切込み線の間隔とが異なるように構成することができる。
【0011】
このような構成により、間隔のより狭い切込み線列からより早く切れていくようになるので、包装袋の膨張によって箱体の前面で盛り上がる開封部が、非開放部との境界の前記間隔のより狭い切込み線列の部分からより早く開放し始め得る。
【0012】
また、本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記箱体は、前記前面及び前記裏面が矩形形状であるとともに、相互に対向する第1側面及び第2側面、及び相互に対向する第3側面及び第4側面の4つの側面を有する扁平直方体形状であり、前記箱体の前面に形成された前記開封部は、非開封部との境界から前記第1側面の側の方向に開放するものであって、前記前面の中心線に対して非対称に形成されている構成とすることができる。
【0013】
このような構成により、電子レンジ用包装体を電子レンジによって加熱すると、膨張する包装袋が収められた扁平直方体形状の箱体において、盛り上がる前面の開封部が、非開封部との境界から該前面の中心線に対して不均等に開放され始め、開放が遅れた側の非開封部や側面の変形が緩和される。その変形が緩和された分、前記開封部の盛り上がりによる力がその開放の遅れた側の開封部の非開封部との境界からの開放に有効に働いて、当該開封部がその境界線から第1側面側に一気に開放され得るようになる。
【0014】
更に、本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記境界は、前記中心線の一方側に当該中心線に直交する方向に対して前記第1側面の側に傾くように形成された第1傾斜部分と、前記中心線の他方側に当該中心線に直交する方向に対して前記第1側面の側に傾くように形成された第2傾斜部分とを有し、前記第1傾斜部分の傾きの程度と前記第2傾斜部分の傾きの程度とが異なるように構成することができる。
【0015】
このような構成により、箱体の前面に形成された開封部が非開封部との境界から第1側面の側の方向に開放する際に、該開封部の非開封部との境界の第1傾斜部分及び第2傾斜部分のうち、傾きの大きな、即ち、第1側面に対する角度が大きい傾斜部分からより早く開封され得る。
【0016】
また、本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記開封部は、前記境界の部分が切れることにより開放されるものであり、前記第1傾斜部分の傾きの程度は、前記第2傾斜部分の傾きの程度より小さく、前記第1傾斜線部分より前記第2傾斜線部分のほうが切れ易い構造となる構成とすることができる。
【0017】
このような構成により、その傾きの程度及び切れ易さの点から、開封部は、非開封部との境界の第1傾斜部分より早く第2傾斜部分から開放され得る。
【0018】
また、本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記境界には、切込み線が連なった切込み線列が形成され、前記第2傾斜部分の切込み線列における切込み線の間隔は、前記第1傾斜部分の切込み線列における切込み線の間隔より狭い構成とすることができる。
【0019】
このような構成により、開封部は、非開封部の境界の間隔の狭い切込み線列の形成された第2傾斜部分からより早く開放され得る。
【0020】
更に、本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記第3側面及び前記第4側面のうち、前記境界の前記1傾斜部分の形成された側の側面と、前記裏面とが糊付け面を介して接合されることにより、前記箱体が形成されている構成とすることができる。
【0021】
このような構成により、第2傾斜部分からの開放より遅く開放され得る第1傾斜部分に近い第3側面及び第4側面のいずれかが、糊付け面によって補強がなされた状態になっているので、開封部が第2傾斜部分から開放された直後に、当該開封部の盛り上がりによる力が、その補強された側面(第3側面または第4側面)に近い第1傾斜部分の切断により有効に働き得るようになる。その結果、開封部が第1側面の側の方向により確実に開放できるようになる。
【0022】
更に、本発明に係る電子レンジ用包装体において、前記境界は、前記前面から前記第1傾斜部分に続いて前記第3側面に形成されて該第3側面、前記第1側面及び前記裏面が交わる角部に至る第1延長部分と、前記前面から前記第2傾斜部分に続いて前記第4側面に形成されて該第4側面、前記第1側面及び前記裏面が交わる角部に至る第2延長部とを有する構成とするこができる。
【0023】
このような構成により、開封部が非開封部との境界から第1側面に向けて開放される際に、前面から第3側面に続いて形成される第1延長部及び前面から第4側面に続いて形成される第2延長部からも開放されていくので、箱体がより大きく開放され、加熱によって膨張した包装袋が容易に露出できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る電子レンジ用包装体によれば、電子レンジによる加熱時の包装袋の膨張によって、箱体の前面に形成された開封部が、盛り上がって非開封部との境界から前記前面の中心線に対して不均等に開放され始め、その開封部の部分的な開放により、開放が遅れた側の非開封部や側面の変形が緩和され、その変形が緩和された分、前記開封部の盛り上がりによる力がその開放の遅れた側の開封部の非開封部との境界からの開放に有効に働いて、当該開封部がその境界線から一気に開放され得るようになる。その結果、包装袋の膨張によってより確実に箱体を開封することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電子レンジ用包装体の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す電子レンジ用包装体に用いられる箱体の展開図である。
【図3】箱体に形成された開封部の詳細構造を示す部分拡大展開図である。
【図4A】箱体内に納められたパウチ(包装袋)の膨張しつつある状態を示す断面図である。
【図4B】パウチ(包装体)の膨張した状態を示す斜視図である。
【図5】電子レンジにて加熱した際に、箱体前面の開封部が開放されてパウチが露出した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0027】
本発明の実施の一形態に係る電子レンジ用包装体は、図1及び図2に示すように構成される。なお、図1は、電子レンジ用包装体の外観を示す斜視図であり、図2は、電子レンジ用包装体に用いられる箱体の展開図である。
【0028】
図1において、この電子レンジ用包装体に用いられる箱体(化粧箱)10は、紙製(例えば、コートボール紙310g/m2等)であって、相互に対向する矩形形状の前面11及び裏面12と、前面11及び裏面12の各縁に連なる上側面13a、横側面13b、下側面13c及び横側面13dの4つの側面とから形成されている。そして、図1には表れていないが、箱体10には、プラスチック製シートにて形成され、食品等の内容物が充填された所謂平袋タイプの電子レンジ用のパウチ20(包装袋)が収められている(後述する図4A、図4B参照)。
【0029】
箱体10は、図2に示す展開紙から組み立てられる。この展開紙は、矩形形状(長方形状)の前面11及び裏面12、短冊形状の上側面13a、一方の横側面13b、下側面13c、他方の横側面13d、及び糊代(糊付け面)14aa、14ab、14ac、14b、14ca、14cb、14ccからなっている。この展開紙を折り曲げ接着することで、図1に示すように、相互に対向する前面11、裏面12と、相互に対向する上側面13a(第1側面)、下側面13c(第2側面)及び相互に対向する2つの横側面13b(第3側面)、13d(第4側面)の4つの側面とによって扁平直方体形状となる箱体10が形成される。具体的には、糊代14ab、14acを上側面13aの裏側に接着し、糊代14cb、14ccを下側面13cの裏側に接着することにより、前面11の縁に連なる上側面13a、下側面13c及び2つの横側面13b、13dが接合される。また、糊代14aa、14caを上側面13a、下側面13cの裏側に接着することにより、裏面12が上側面13a及び下側面13cに接合され、更に、横側面13bの長辺縁から突出する糊代14bを裏面12の裏側に接着することにより、裏面12が横側面13bに接合される。なお、糊代14bを裏面12の長辺縁から突出するように形成して、横側面13bの裏側に接着するようにしてもよい。
【0030】
また、図1とともに図2を参照するに、箱体10の前面11から両横側面13b、13dにかけて、開放可能な開封部15が形成されている。開封部15の非開封部との境界16には切込み線が連なった切込み線列が形成されており、この切込み線列の非切込み部分が連鎖的に切れることによって開封部15がその境界16から上側面13aの方向に開放する。開封部15は、その開放する方向に延びる前面11の中心線Lcに対して非対称な形状となっている。開封部15の非開封部との境界16は、図2に示すように、前面11における中心線Lcの横側面13b側にその中心線Lcに直交する方向に対して上側面13aの側に傾くように形成された第1傾斜部16aと、前記中心線Lcの他方の横側面13d側にその中心線Lcに直交する方向に対して上側面13aの側に傾くように形成された第2傾斜部16bと、第1傾斜部16aの中心線Lc側の端部と第2傾斜部16bの中心線Lc側の端部との間に当該中心線Lcに直交するように延びる水平部16cと、前面11から第1傾斜部16aに続いて横側面13bに形成されて該横側面13b、上側面13a及び裏面12が交わる角部に至る第1延長部16dと、前面11から第2傾斜部16bに続いて他方の横側面13dに形成されて該横側面13d、上側面13a及び裏面12が交わる角部に至る第2延長部16eとを含む。第1傾斜部16aの傾きの程度は、第2傾斜部16bの傾きの程度より小さい。即ち、第2傾斜部16bが、第1傾斜部分16aよりも上側面13aに対する角度が大きい。また、第1傾斜部16a及び第2傾斜部16bをこのような構成にした結果、水平部16cは中心線Lcより横側面13d側がやや長く非対称になっている。
【0031】
前述したように、開封部15の非開封部との境界16(第1傾斜部16a、第2傾斜部16b、水平部16c、第1延長部16d、第2延長部16e)には、切込み線が連なった切込み線列が形成されているが、図3に拡大して示すように、境界16の第1傾斜部16aに形成された切込み線列における各切込み線Scut1の間隔Δ1(非切込み部分の長さ)は、第2傾斜部16bに形成された切込み線列における各切込み線Scut2の間隔Δ2(非切込み部分の長さ)より大きい。第2傾斜部16bの部分は、第1傾斜部16aの部分と比較して、その切込み線列の傾きが大きいということで、前面11の中心線Lcに沿った開封部15を開放させるための力に対して切れ易く、更に、その切込み線Scut2の間隔Δ2が小さいということでも切れ易いものとなっている。
【0032】
なお、第1傾斜部16a及び第2傾斜部16bの傾斜角度は、例えば、30度〜60度の範囲で、その差は、2度〜10度の範囲で設定することができ、具体的には、第1傾斜部16aの角度が41度、第2傾斜部の傾斜角度を47度に設定した。また、第1傾斜部16aに形成される各切込み線Scut1の間隔Δ1及び第2傾斜部16bに形成される各切込み線Scut2の間隔Δ2は、0.5〜2.0mmの範囲で、その差は、0.2〜1.0mmの範囲で設定することができ、具体的には、Δ1を1.5mm、Δ2を1.0mmに設定した。更に、水平部16cの中心は、前面11の中心線Lcより横側面13dの方向に、横幅の2%〜10%だけ偏らせることができ、具体的には、水平部16cの中心は、前記中心線Lcより横側面13dの方向に約5mm(横幅130mmの約3.7%)だけ偏らせた。
【0033】
箱体10に収められた平袋タイプのパウチ20は、図4A、図4B及び図5に示すように、縁部に蒸気抜き部21a、21b、21cが並んで形成されている。各蒸気抜き部21a、21b、21cは、例えば、特開2002−249176号公報に記載されるように、孔(弱化部)の周りがシールされた構造となって、パウチ20の内圧が限界を超えると、その蒸気抜き部21a、21b、21c(孔)から蒸気が噴出するようになっている。なお、蒸気抜き部21a、21b、21cの構造としては、上述したものに限らず、パウチ20の縁辺シール部の所定部位を、狭幅とする、内側に突出させる、易剥離性フィルムを挟んでシールするなどして、パウチ10の内圧が上昇した際に前記所定部位のシールが優先的に剥離するようにしたもの、マイクロ波の照射で発熱する発熱体をフィルム材(シート)に貼り付け、該フィルム材が溶融、もしくはシール強度が低下して蒸気が抜けるようにしたものなど、公知のものを適用することができる。
【0034】
パウチ20は、蒸気抜き部21a、21b、21cが前面に形成された開封部15に対向するように箱体10に収められている。また、このパウチ20は、開封部15に対応した部位に内圧上昇によって裏面12側に突出する折返し部22が形成されている。この折返し部22は、パウチ20が膨張した際に突出するようになっており、その詳細な構造は、特開2006−62672号公報に記載されている。
【0035】
このように箱体10に収められたパウチ20の内容物を電子レンジにて加熱する場合、パウチ20の収められた箱体10をそのまま前面11を上方に向けて電子レンジにセットし、電子レンジを起動させる。電子レンジによってパウチ20内の内容物が加熱されて水蒸気を発生すると、その水蒸気によってパウチ20の内圧が上昇し、それに伴ってパウチ20が図4A及び図4Bに示すように膨張する。膨張するパウチ20によって箱体20の前面11が外方に押し上げられ、特に、パウチ20の折返し部22が拡張することによって、前面11の開封部15が徐々に盛り上がる。そして、開封部15の盛り上がりとともに開封部15以外の非開封部や横側面13b、13dも変形していく。
【0036】
開封部15が盛り上がることによって、非開封部との境界16(第1傾斜部16a、第2傾斜部16b、水平部16c、第1延長部16d、第2延長部16e)に形成された切込み線列の部分が切れ、パウチ20の更なる膨張によって、図5に示すように、前面11から両横側面13b、13dにかけての開封部15がその境界16から上側面13aの方向に開放される。そして、開封部15が開放してできた開口部18からパウチ20の蒸気抜き部21a、21b、21cの形成された部分が露出する。この状態で、パウチ20の内圧が限界を超えると、蒸気抜き部21a、21b、21cから蒸気が噴出し、パウチ20の内圧が過度に上昇することなく、パウチ20の内容物が加熱調理される。
【0037】
前述したパウチ20の膨張による開封部15の開放の動作について更に詳細に説明する。
【0038】
開封部15を前面11の中心線Lcに対して非対称に形成して当該中心線Lcの両側における開放のし易さ(切込み線列の部分の切れ易さ)のバランスを崩すことによって、開封部15がより確実に開放されるようになった。これは、開封部15が次のようにして開放されるからであると考えられる。
【0039】
開封部15が前面11の中心線Lcに対して非対称となっていることから、盛り上がる開封部15は、非開封部との境界16から前記中心線Lcに対して不均等に開放され始める。具体的には、開封部15の非開封部との境界16における水平部16cに形成された切込み線列の部分に続いて第2傾斜部16bに形成された切込み線列の部分が、第1傾斜部16aに形成された切込み線列の部分よりも早く切れ始める。このように開封部15の境界16における第2傾斜部16b側の部分的な開放により、開放の遅れた第1傾斜部16a側の非開封部や横側面13bの変形が緩和される。そして、その変形が緩和された分、開封部15の盛り上がりによる力が開放の遅れた側の開封部15の第1傾斜部16aからの開放に有効に働いて、その第1傾斜部16aに形成された切込み部列の部分から一気に開放されるようになる。特に、第2傾斜部分16bからの開放より遅く開放される第1傾斜部分16aに近い横側面13bが、裏面14に接着される糊代14bによって補強がなされた状態になっているので、開封部15が第2傾斜部分16bから開放された直後に、当該開封部15の盛り上がりによる力が、その補強されて変形し難い横側面13bに近い第1傾斜部分16に形成された切込み線列の切断により有効に働き得るようになる。その結果、開封部15が上側面13aの方向により確実に開放できるようになる。
【0040】
上述したように、本発明の実施の形態に係る電子レンジ用包装体によれば、電子レンジによる加熱時のパウチ20の膨張によって、箱体10の前面11から両横側面13b、13dにかけて形成された開封部15が、盛り上がって非開封部との境界16からより確実に開放することができるようになる。また、開封部15が非開封部との境界16から上側面13aに向けて開放される際に、前面11から一方の横側面13bに続いて形成される第1延長部16d及び前面11から他方の横側面13dに続いて形成される第2延長部16eからも開放されていくので、箱体10がより大きく開放され、加熱によって膨張したパウチ20が容易に露出できるようになる。
【0041】
なお、箱体10の前面11から両横側面13b、13dにかけての境界線16に切込み線列を形成することにより、開放可能となる開封部15に代えて、2009−51562号公報に記載されるように、箱体10の前面11に形成される開口を覆う蓋体を開封部として設けることも可能である。この場合、蓋体の縁が非開封部との境界となる。
【0042】
また、前述した実施の形態においては、箱体10における開封部15の前面11の部分での形状は、台形であったが、略三角形や山形等の他の形状とすることもできる。また、その開封部15の形状は、左右の傾斜が同じ対称な台形を横側面13側に平行移動させた形状であってもよい。更に、非対称の要素(平行移動、左右の傾斜を変える、あるいは、切込み間隔を変えるなど)は、1つであっても複数の組み合わせであってもよい。更に、特開2009−051562に記載されるものと同様に、分岐部に蒸気抜き部を設けたパウチも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上、説明したように、本発明に係る電子レンジ用包装体は、包装袋の膨張によってより確実に箱体を開封することができるという効果を有し、蒸気抜き部が形成されて電子レンジでの加熱が可能となるパウチ等の包装袋が箱体に収められた構造となる電子レンジ用包装体として有用である。
【符号の説明】
【0044】
10 箱体
11 前面
12 裏面
13a 上側面(第1側面)
13b 横側面(第3側面)
13c 下側面(第2側面)
13d 横側面(第4側面)
14aa、14ab、14ac 糊代
14b 糊代
14ca、14cb、14cc 糊代
15 開封部
16 境界
16a 第1傾斜部
16b 第2傾斜部
16c 水平部
16d 第1延長部
16e 第2延長部
18 開口部
20 パウチ(包装袋)
21a、21b、21c 蒸気抜き部
22 折返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する前面及び裏面と当該前面及び裏面の縁に連なる側面とを有し、前記前面に開放可能な開封部が設けられた箱体と、蒸気抜き部が形成され、該蒸気抜き部が前記開封部に対向するように前記箱体に収められた包装袋とを有し、電子レンジによる加熱時における前記包装袋の内圧上昇に伴う膨張によって前記箱体に形成された開封部が開放され得るようにした電子レンジ用包装体であって、
前記箱体の前面に形成された前記開封部は、非開封部との境界から所定方向に開放するものであって、前記所定方向に延びる前記前面の中心線に対して非対称に形成されている電子レンジ用包装体。
【請求項2】
前記開封部は、前記境界の部分が切れることにより開放されるものであり、
前記前面の中心線の一方側の前記境界の部分は、前記中心線の他方側の前記境界の部分より切れ易くなっている請求項1記載の電子レンジ用包装体。
【請求項3】
前記境界には、切込み線が連なった切込み線列が形成され、
前記前面の中心線の一方側の切込み線列における切込み線の間隔と、前記中心線の他方側の前記切込み線列における切込み線の間隔とが異なる請求項2記載の電子レンジ用包装体。
【請求項4】
前記箱体は、前記前面及び前記裏面が矩形形状であるとともに、相互に対向する第1側面及び第2側面、及び相互に対向する第3側面及び第4側面の4つの側面を有する扁平直方体形状であり、
前記箱体の前面に形成された前記開封部は、非開封部との境界から前記第1側面の側の方向に開放するものであって、前記前面の中心線に対して非対称に形成されている請求項1記載の電子レンジ用包装体。
【請求項5】
前記境界は、前記中心線の一方側に該中心線に直交する方向に対して前記第1側面の側に傾くように形成された第1傾斜部分と、前記中心線の他方側に該中心線に直交する方向に対して前記第1側面の側に傾くように形成された第2傾斜部分とを有し、
前記第1傾斜部分の傾きの程度と前記第2傾斜部分の傾きの程度とが異なる請求項4記載の電子レンジ用包装体。
【請求項6】
前記開封部は、前記境界の部分が切れることにより開放されるものであり、
前記第1傾斜部分の傾きの程度は、前記第2傾斜部分の傾きの程度より小さく、
前記第1傾斜線部分より前記第2傾斜線部分のほうが切れ易い構造となる請求項5記載の電子レンジ用包装体。
【請求項7】
前記境界には、切込み線が連なった切込み線列が形成され、
前記第2傾斜部分の切込み線列における切込み線の間隔は、前記第1傾斜部分の切込み線列における切込み線の間隔より狭い請求項6記載の電子レンジ用包装体。
【請求項8】
前記第3側面及び前記第4側面のうち、前記境界の前記1傾斜部分の形成された側の側面と、前記裏面とが糊付け面を介して接合されることにより、前記箱体が形成されている請求項6または7記載の電子レンジ用包装体。
【請求項9】
前記境界は、前記前面から前記第1傾斜部分に続いて前記第3側面に形成されて該第3側面、前記第1側面及び前記裏面が交わる角部に至る第1延長部分と、前記前面から前記第2傾斜部分に続いて前記第4側面に形成されて該第4側面、前記第1側面及び前記裏面が交わる角部に至る第2延長部とを有する請求項4乃至8のいずれかに記載の電子レンジ用包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−168316(P2011−168316A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34818(P2010−34818)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)