説明

電子レンジ用容器

【課題】 電子レンジでの加熱後、容易に容器と蓋体とを開封できる電子レンジ用容器を提供することを目的とする。
【解決手段】 容器本体2に形成された開口部2aを封止する蓋体3を有する電子レンジ用容器1において、蓋体3は、電磁波の照射を受けて発熱する発熱体層33bと、容器本体2の開口部2aを形成する縁面23aと接する部分に設けられ、縁面23aと蓋体3とを接着させるとともに、発熱体層33bが発熱した熱によって溶融するシール層33cと、
発熱体層33bが発熱した熱によって容器本体2から蓋体3を剥離させる形状に変形する熱変形層33dとを有することを特徴とする電子レンジ用容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子レンジでの加熱が可能な食品包装用の容器であって、容器本体の開口部をヒートシール性を有する蓋体により封止する容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固形食品や液状食品などの内容物を収容する食品包装用容器でありながら、電子レンジにて内容物と共に加熱が可能な合成樹脂製の電子レンジ用容器が種々提案されている。この電子レンジ容器では、内容物を加熱するために照射されるマイクロ波を利用して、この容器と蓋体との接着面を剥離させ易くする技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トレーとクロージャーとを接着するヒートシール性樹脂層中に、フレーク状又は粉末状のマイクロ波相互作用性物質をブレンド、分散又は埋入させた食品用パッケージが開示されている。また、マイクロ波加熱の際に、マイクロ波相互作用性物質が発熱し、ヒートシール性樹脂層を溶融させることで剥離強度を低下させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−152679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電子レンジ用容器では、加熱後にしばらく放置された場合、マイクロ波相互作用性物質の発熱により溶融したヒートシール性樹脂層は、放熱により冷えて固まり、再び加熱前と同様の剥離強度に戻ってしまうおそれがあった。このように加熱後の放熱の程度により、剥離強度が変化するため改良の余地があった。
【0006】
この発明は、上記技術的課題に着目してなされたものであって、電子レンジでの加熱後、容易に容器と蓋体とを開封できる電子レンジ用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、容器本体に形成された開口部を封止する蓋体を有する電子レンジ用容器において、前記蓋体は、電磁波の照射を受けて発熱する発熱体層と、前記容器本体の開口部を形成する縁面と接する部分に設けられ、前記縁面と前記蓋体とを接着させるとともに、前記発熱体層が発熱した熱によって溶融するシール層と、前記発熱体層が発熱した熱によって前記容器本体から前記蓋体を剥離させる形状に変形する熱変形層とを有することを特徴とする電子レンジ用容器である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、前記蓋体は、発熱体層が発熱した熱によって前記シール層が溶融することに基づき前記容器本体との接着強度もしくは剥離強度を前記発熱体層の発熱前よりも低下させてから、前記熱変形層による形状変化が当該蓋体に係る形状変化として当該容器本体から剥離させる形状に現れる
ことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記熱変形層が、熱収縮性の樹脂製フィルムであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3の構成に加えて、前記熱収縮性の樹脂製フィルムは、90℃での熱収縮率が10〜50%であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかの構成に加えて、前記蓋体は、基材層を更に有し、前記基材層には、この一方の表面上に前記熱変形層が形成され、他方の表面上に前記発熱体層が形成され、前記発熱体層の表面上に前記シール層が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、電子レンジで加熱した際に、発熱体層が発熱することで、シール層が溶融してシール強度が低下するとともに、熱変形層が変形することによって、容器本体から蓋体の一部が剥がれるように変形させることができる。このため、その剥離変形後で、シール層が冷えて再び固まったとしても、すでに蓋体と容器本体とのシール部分の一部が剥がれているため、容易に電子レンジ用容器を開封することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、平板状を維持しようとするシール層に基づく接着力に影響されることなく、意図して熱変形層に係る形状変化を実現することができる。また、シール層が溶融してから熱変形層における形状変化が蓋体に係る形状変化に現れるため、熱変形層に係る形状変化をしようとする力を十分に蓋体に伝えることができ、この力に基づき容器本体と蓋体とを剥離させることが容易になる。さらに、発熱体層が発熱した熱をシール層および熱変形層が効果的に利用することができ、この発熱に基づく容器本体への損傷を低減することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、熱変形層が、熱収縮性の樹脂製フィルムであることにより、安価で簡単に熱変形層を形成することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、熱収縮性の樹脂製フィルムは、90℃での熱収縮率が10%以上50%以下であることにより、熱収縮率が比較的小さいので、発熱体層の発熱により、シール強度が低下した後に、熱収縮させることができ、十分に熱変形層を変形させることができる。すなわち、熱収縮率が10%より小さいと、蓋材が十分に変形しないおそれがあり、熱収縮率が50%より大きいと、シール強度が十分に低下する前に熱収縮が終了し、蓋材が十分に変形しないおそれがある。
【0016】
請求項5の発明によれば、基材層の表面に発熱体層および熱変形層を塗布させたり蒸着させたりすることができ、蓋体の製造が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、この発明に係る電子レンジ用容器の斜視図を模式的に示した図である。(b)は、電子レンジ用容器の側面断面図を模式的に示した図である。
【図2】この発明の蓋体の積層構造を模式的に示した図である。
【図3】(a)は、電子レンジにより発熱させられた蓋体が変形した状態を示した図である。(b)は、この蓋体が別の形状に変形した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明を具体例に基づいて説明する。この発明に係る電子レンジ用容器は、内容物を収容したままの状態で電子レンジでの加熱が可能であって、開口した形状に成形された容器本体と、この開口を封止して容器本体の形状に基づく空間を密封する蓋体とを備えている。発熱体層や接着層や熱変形層などの多層のシートすなわち積層構造で構成された複数のシートを含む蓋体が容器本体に接着されており、この電子レンジ用容器が、電子レンジ内において電磁波(例えば、マイクロ波)を照射されることで、蓋体が発熱して容器本体からの剥離および蓋体自体の変形をするものである。
【0019】
図1(a)は、この発明の一実施形態に係る電子レンジ用容器1を模式的に示した斜視図であり、図1(b)は、この断面図である。電子レンジ用容器1は、電子レンジでの加熱が可能な食品包装用の容器であって、内容物である食品を収容する食品用容器である容器本体2と、この容器本体2の開口部をヒートシール性の接着により封止する蓋体3とを有している。
【0020】
容器本体2は、蓋体3で封止された場合、固体状もしくは流体状食品である内容物を収容できる空間を有することができるような形状に成形されている。例えば、図1に例示するように、略直方体形状に成形され、その一面が開口した開口部2aを設け、この開口部2aから食品などの内容物を収容して蓋体3を封止し、蓋体3を開封するとこの開口部2aから食品を取り出すことができる形状に成形されている。
【0021】
容器本体2は、上面部分が開口したカップ形状の容器であり、円板状の底部21と、底部21の周縁部からテーパ状に拡径するように上方に延在する円筒状の胴部22と、胴部22上端により区画される開口部2aの周囲に形成され、かつ容器本体2の半径方向外方に延在する環状のフランジ部23を有している。また、容器本体2のフランジ部23上面にある接着面23aに、蓋体3のシール層33cがヒートシールなどにより溶着されることで、電子レンジ用容器1内を密封するように構成されている。なお、この容器本体2は、底部21が円板状形状であるものに限定されない。例えば、多角形の板状に形成された底部21であってもよく、すなわち底部21の周縁分から上方に拡径する胴部22も円筒状に限定されない。
【0022】
この容器本体2を形成する材料として、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、スチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂材料を使用する。これら熱可塑性樹脂材料を射出成形や圧空成形などにより成形した容器を、容器本体2として好適に使用することができる。
【0023】
なお、容器本体2は、電子レンジ内における電磁波が照射され、内容物が加熱されても変形し難く、かつ溶融しない材料により形成されていればよい。好ましくは、電磁波の照射により内容物が加熱されても変形せず、容器本体2の形状を維持できる材質によって作製されている容器本体2である。
【0024】
蓋体3は、容器本体2の開口部2aを封止する天板部分である天板部31と、この天板部3の周縁部31aからさらに外側の方向、すなわち容器2のフランジ部23から突出する方向に突出するように形成された摘み部32とを有する形状である。図1(a)に例示するように、容器本体2のフランジ部23よりも突出するように天板部31の周縁部31aが形成されている。このフランジ部23から、周縁部31aよりも突出するように摘み部32が形成されている。
【0025】
蓋体3は、基部として成形されたシートである基材層33aと、電磁波の照射を受けて発熱する発熱体層33bと、容器本体2の接触面23aと当接する接触部分に設けられる接着性を有するシール層33cと、発熱体層33bの発熱によって形状が変形するシートである熱変形層33dとを有する多層のシート材により積層構造に形成されている。
【0026】
この積層構造の一例として、蓋体3の断面図を図2に例示する。この積層構造では、蓋体3の基部である基材層33aを挟み込むようにして熱変形層33dと発熱体層33bとが、この基材部33aの上面部分と下面部分とに当接するように設けられている。さらに、この発熱体層33bを基材部33aと挟み込むようにしてシール層33cが発熱体層33bの下面と当接するように設けられている。
【0027】
また、天板部31に形成される積層構造が、天板部31全体において一様な積層に構成されていなくてもよい。すなわち、容器本体2のフランジ部23と接着する部分と、これと接着しない部分とにおいて、異なる積層構造を有するものであってもよい。例えば、フランジ部23と接着する部分における積層構造は図2に例示するものであり、フランジ部23と接着しない部分における積層構造は、シール層33cや発熱体層33bを有さない積層構造であってもよい。
【0028】
また積層構造において、各層の厚さを適宜変更して組み合わせて積層を構成するものであってもよい。例えば、図2に例示するように、蓋体2の外側表面部分を構成する熱変形層33dが最も厚く構成されている。また、この熱変形層33dに次いで厚く構成された基材層33aを有し、発熱体層33bが最も薄く構成されている。なお、各層の厚さはこれに限定されず、後述する各層の説明における厚さ範囲で組み合わせた積層構造を備えることができる。
【0029】
次に、蓋体3の積層構造を構成する各層について説明する。基材層33aは、蓋体3の基部となる平板状のフィルムにより形成されたシート部材であって、熱可塑性樹脂フィルムにより形成されている。この基材層33aは、電子レンジで加熱した際における内容物や発熱体層33bの発熱あるいは容器内圧の上昇によっても、破損しないように構成されている。
【0030】
例えば、基材層33aの熱可塑性樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂などにより形成されたフィルムが挙げられる。すなわち、これら樹脂フィルムの単層フィルムであっても、これら樹脂フィルムを適宜積層させた多層フィルムであってもよい。また、基材層33aの厚さは、10〜100μmとすることが好ましい。したがって、基材層33aは、熱可塑性樹脂の種類や、単層または多層の構造や、厚さを適宜設定することできる。
【0031】
発熱体層33bは、照射された電磁波のエネルギーを吸収することにより発熱する導電性の物質を含むものであり、薄膜状に形成されている。この発熱体層33bは、基材層33aに蒸着もしくは塗装され、発熱することによりシール層33cを溶融させ、かつ熱変形層33dを変形させるものである。
【0032】
この発熱体層33bの導電性物質として、例えば、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅などの金属や、これら金属の酸化物がある。すなわち、これら金属および酸化物から1種類を使用した薄膜、または2種類以上を混合した混合物を使用した薄膜とすることができる。また、これら金属および酸化物粒子を含むインクである導電性インクを薄膜状にした金属箔によって発熱体層33bが形成されてもよい。したがって、発熱体層33bは、基材層33aに蒸着もしくは塗装された薄膜であって、導電性物質を含むものである。なお、導電性物質の種類や混合比や厚さなどは適宜変更が可能である。
【0033】
例えば、アルミニウムのみを導電性物質に使用した薄膜や、アルミニウムと酸化アルミニウムとを混合した混合物を使用した薄膜を発熱体層33bとすることができる。この混合物において、アルミニウムと酸化アルミニウムとの混合比は、それらの質量比が4:1〜1:9となるものが好ましい。これらアルミニウムを使用することで、容易に取り扱えることで生産性を向上させ、かつ材料コストを低減させることができる。
【0034】
また、電子レンジにより電子レンジ用容器1が加熱された際、薄膜である発熱体層33bにおける発熱温度は、160〜300℃程度のものが好適に使用できる。すなわち、シール層33cに含まれる熱可塑性樹脂が溶融する融点よりも高い温度を発熱するように発熱体層33bが形成されている。
【0035】
さらに、膜状の発熱体層33bの厚さは、30〜100nmが好ましい。この範囲内に発熱体層33bの厚さを設定することで、電子レンジで電子レンジ用容器1が必要時間以上に加熱された場合であっても、発熱体層33bにひび割れが生じて発熱を停止または抑制させることができるので、容器本体2が発熱体層33bにより過剰に加熱されることを防止できる。
【0036】
シール層33cは、熱接着性すなわちヒートシール性を有する薄膜によって形成されるものであって、基材層33aと接着面23aとをヒートシールすることで、蓋体3と容器本体2とをヒートシールするものである。このシール層33cに係る薄膜は、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜により形成される。
【0037】
この塗膜は、熱可塑性樹脂の微粒子を溶媒に分散させた塗料を、基材層33aの一方の表面に塗布し、この塗布した塗料を加熱して焼き付けることで塗料中の樹脂が溶融させられることによって、薄膜状に形成される。なお、塗膜の形成方法が、これに限定させることはなく、基材層33aのいずれかの表面に薄膜状に形成されればよい。さらに、この発明に係るシール層33cは薄膜状に形成されればよく、ここで説明する塗膜により形成される場合に限定されない。
【0038】
このシール層33cの熱可塑性樹脂の融点は、130〜250℃の範囲とすることが好ましい。すなわち、このシール層33cは、ヒートシールなど、加熱処理によって樹脂を溶融させ、容器本体2の開口部2aを形成するフランジ部23に溶着される。したがって、発熱体層33bの発熱によって溶融するような融点を有する熱可塑性樹脂によりシール層33cが形成される。
【0039】
例えば、このシール層33cに含まれる熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、MXD6ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂などを使用する。
【0040】
また、このシール層33cにおける熱可塑性樹脂の微粒子を分散させる溶媒として、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、アジピン酸ジメチルなどの二塩基酸エステル系溶媒、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、水、あるいはこれらの溶媒混合物などの溶媒を使用する。
【0041】
シール層33cに含まれる熱可塑性樹脂の微粒子の平均粒子径は、10nm〜100μmの範囲内の粒径であることが好ましい。すなわち、このシール層33cは、塗装性を損なわない適度な低粘度を有し、均一な厚さに塗布でき薄膜状になる微粒子径を有する熱可塑性樹脂によって形成されている。したがって、電子レンジ用容器1の密封性を維持でき、内圧上昇時における破裂を防げる接着強度が維持できるような均一の厚さで薄膜状のシール層33cが形成されている。
【0042】
例えば、熱可塑性樹脂微粒子の平均粒子径が10nm未満の場合、塗料の粘度が高くなり過ぎて塗装性が悪<なるおそれがある。一方、この平均粒径が100μmを越える場合、均一な塗膜化が阻害されるおそれがある。これらの結果、電子レンジ用容器1の密封性が損われたり、この容器1の内圧上昇時に蓋体3の予期せぬ破裂が生じやすくなるおそれがある。
【0043】
さらに、このシール層33cの厚さは、1〜15μmの範囲に設定されることが好ましい。すなわち、シール層33cは、容器本体2と蓋体3とを密着させる接着強度と、蓋体3と容器本体2のフランジ部23とを剥離させる剥離強度とがバランスよく保たれた状態で電子レンジ用容器1を密封するような厚さに形成されている。
【0044】
例えば、シール層33cの厚さが1μm未満の場合、容器本体2との接着強度が十分に得られないおそれがある。一方、この厚さが15μmを越える場合、シール層33c側の熱可塑性樹脂の量が多くなるため、シール層33cと容器本体2とのそれぞれを構成する熱可塑性樹脂の高分子同士を結びつきやすくなる。これらにより、シール層33cと容器本体2との界面が溶け合って、剥離強度および接着強度を低下させにくくなるおそれがある。
【0045】
なお、シール層33cが蓋体3に含まれるものとして説明してきたが、容器本体2の接着面23aに塗膜されたものであってもよい。すなわち、容器本体2と蓋体3とが封止された状態において、蓋体3の形状を維持する表面部分と容器本体2の表面部分との間に形成されたシール層33cであればよい。したがって、熱可塑性樹脂の微粒子を溶媒に分散させた塗料を、容器本体2の接着面23aに塗布して、容器本体2と蓋体3とをヒートシールするものであってもよい。
【0046】
この熱変形層33dは、発熱体層33bが発熱した熱により変形するものであって、熱収縮性フィルムや形状記憶樹脂製フィルムなどによって形成されている。この熱収縮性フィルムは、延伸処理を行うことで熱収縮性を備えた樹脂製のフィルムである。すなわち、発熱体層33bが発熱した熱によって収縮するフィルムである。したがって、発熱体層33bが発熱した熱によりシール層33cが溶融したことによる接着強度もしくは剥離強度の低下が発熱前よりも進んだ状態において、この蓋体3を容器本体2から剥離させる形状に変化させるものが熱変形層33dである。なお、延伸処理は、一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、熱収縮した際に蓋体3が容器本体2のフランジ部23上に保持されるように、一軸延伸されたフィルムを用いることが好ましい。
【0047】
例えば、この熱収縮性フィルムを構成する樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂などの樹脂を使用する。なお、この実施形態では、一軸延伸したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを使用している。
【0048】
また、形状記憶樹脂製フィルムを構成する樹脂材料として、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリノルボルネン樹脂、トランスポリイソプレン樹脂、スチレンーブタジエン共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂などの形状記憶樹脂を使用する。
【0049】
例えば、この熱変形層33dに形状記憶樹脂製フィルムを用いる場合、発熱体層33bが発熱した熱が加えられたことにより変形する形状は、予めある程度任意に設定することができる。特に、図3(a)に例示するような蓋体3の周縁部31aが上方に反り返るような形状や、図3(b)に例示するような蓋体2の天板部31全体が波打つような形状などに変形するように予め設定されることが好ましい。なお、この熱変形層33dによる形状変化に基づく蓋体3の形状変化は、蓋体3全体が均一に変化するものであっても、蓋体3の一部分が変化するものであってもよい。例えば、収縮率の異なる複数のフィルムを積層させたり、蓋体3の一部分にのみ熱変形層33dを形成させたりすることができる。
【0050】
さらに、熱変形層33dの厚さは、20〜100μmの範囲にすることが好ましい。特に、40〜100μmの範囲であることが望ましい。この熱変形層33dは、発熱体層33bの発熱により伝導された熱によって、蓋体3が適度な収縮変形をするような厚さを有する。なお、熱変形層33dの厚さは、一枚のフィルムの厚さが、この範囲内であってもよく、もしくは複数のフィルムを積層させた厚さが、この範囲内であってもよい。
【0051】
また、発熱体層33bの発熱は、シール層33cと熱変形層33dに作用するものである。すなわち、電子レンジ用容器1の密封状態における熱変形層33dの形状はシール層33cと接着面23aとの接着により開口部2aを被覆する平板状である。したがって、発熱体層33bの発熱によりシール層33cの溶融が進行し容器本体2との剥離強度を低下させてから、熱収縮による形状の変化が現れる熱変形層33dとなるような厚さに設定される。
【0052】
例えば、熱変形層33dをこの範囲内の厚さにすることで、発熱体層33bの発熱による熱が熱変形層33d全体に伝わるのに、比較的時間が掛かるため、発熱によるシール層33cの溶融後に熱変形させることができ、熱変形層33dを十分に変形させることができる。
【0053】
この一軸延伸樹脂フィルムである熱変形層33dは、厚さと収縮率と温度によって、形状の変化の仕方が異なるものである。すなわち、熱変形層33dを構成する樹脂フィルムの収縮率や、その厚さに加え、電子レンジで加熱される際の加熱時間とその温度によって、熱変形層33dの形状変化の仕方が異なるものである。
【0054】
例えば、収縮率30%であり、厚さ24μmであるフィルムを一枚用いて熱変形層33dを形成したものを、第1熱変形層とする。また、このフィルムを3枚積層させて、すなわち厚さ72μmの熱変形層33dを形成したものを、第2熱変形層とする。
【0055】
ここで、第1熱変形層と第2熱変形層とをそれぞれ用いた蓋体3を、内容物として水を充填した容器本体2にヒートシールした電子レンジ用容器1を500wの電子レンジで30秒、90秒、180秒間の加熱をした場合と、1700wの電子レンジで10秒、30秒、50秒間の加熱をした場合で、第1熱変形層と第2熱変形層の変形の仕方が異なった。第1熱変形層は、500wの電子レンジで30秒間加熱しても変形せず、90秒および180秒間加熱して変形した。一方、第2熱変形層は、500wの電子レンジで30秒間加熱して変形した。
【0056】
また、1700wで加熱した場合、第1熱変形層は、10秒および30秒間の加熱では変形せず、50秒間加熱して変形した。他方、第2熱変形層は、10秒間の加熱で変形した。なお、樹脂フィルムの収縮率は、温度依存するため、所定の温度における収縮率ともいえる。例えば、80〜100℃での熱収縮率が5〜60%の樹脂フィルムを使用した熱変形層33dである。
【0057】
以上説明したように、この実施形態における電子レンジ用容器によれば、電子レンジ用容器1を電子レンジで加熱すると、発熱体層33bが電磁波を吸収して発熱し、その熱によってシール層33cを構成する熱可塑性樹脂が溶融する。これにより、シール層33cによる蓋体3と容器本体2との接着強度が低下すると共に、熱変形層33dが熱によって所定形状に変形することとなる。
【0058】
なお、上述で説明した電子レンジ用容器1は、この発明における一実施形態であって、この発明に係る電子レンジ用容器はこれに限定されるものではない。この発明を逸脱しない範囲内において、構成部材の材質の変更や、その形状の変更など適宜変更が可能である。例えば、熱変形層33dが熱によって蓋体3を容器本体2から剥離させるように変形するため、開封時の指掛け部となる摘み部32を形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…電子レンジ用容器、 2…容器本体、 3…蓋体、 2a…開口部、 21…底部、 22…胴部、 23…フランジ部、 31…天板部、31a…周縁部、 32…摘み部、 33a…基材層、 33b…発熱体層、 33c…シール層、 33d…熱変形層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に形成された開口部を封止する蓋体を有する電子レンジ用容器において、
前記蓋体は、
電磁波の照射を受けて発熱する発熱体層と、
前記容器本体の開口部を形成する縁面と接する部分に設けられ、前記縁面と前記蓋体とを接着させるとともに、前記発熱体層が発熱した熱によって溶融するシール層と、
前記発熱体層が発熱した熱によって前記容器本体から前記蓋体を剥離させる形状に変形する熱変形層と
を有することを特徴とする電子レンジ用容器。
【請求項2】
前記蓋体は、発熱体層が発熱した熱によって前記シール層が溶融することに基づき前記容器本体との接着強度もしくは剥離強度を前記発熱体層の発熱前よりも低下させてから、前記熱変形層による形状変化が当該蓋体に係る形状変化として当該容器本体から剥離させる形状に現れる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用容器。
【請求項3】
前記熱変形層が、熱収縮性の樹脂製フィルムである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ用容器。
【請求項4】
前記熱収縮性の樹脂製フィルムは、90℃での熱収縮率が10%以上50%以下である
ことを特徴とする請求項3に記載の電子レンジ用容器。
【請求項5】
前記蓋体は、基材層を更に有し、
前記基材層には、この一方の表面上に前記熱変形層が形成され、他方の表面上に前記発熱体層が形成され、
前記発熱体層の表面上に前記シール層が形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電子レンジ用容器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−43678(P2013−43678A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183005(P2011−183005)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】