説明

電子レンジ用紙製容器

【課題】従来の紙製容器は、電子レンジで長時間加熱すると、容器の底の部分即ち胴部材の下端と底部材の接合部の表面が焼け焦げるという課題があり、本発明はこの課題を解決し、該接合部の焼け焦げを防止する
【解決手段】胴部材10と底部材20とからなる紙製容器であって、底部材20の外周辺部を下方に屈曲して屈曲部26を形成し、この屈曲部26を挟んで胴部材10の下端部14を内側に折り込み、加熱圧着して接合部15を形成し、底部材20の底面部25を下方に凹ませてあり、上記底部材20にその外周から中心に向けて延びる直線状の溝24を等間隔に複数形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料や即席食品などの紙製容器であって、電子レンジで加熱調理することが可能な電子レンジ用紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙製容器は、胴部材と底部材とからなり、底部材の外周辺部を下方に屈曲して屈曲部を形成し、この屈曲部を挟んで胴部材の下端部を内側に折り込み、加熱圧着して接合部を形成し、底部材を上げ底に構成してある。そして、断熱性の紙製容器としては、上記紙製容器の胴部材の外側に断熱層を設けたものが知られている。また、上記紙製容器の胴部材の原紙の外面に、低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートし、加熱処理して上記熱可塑性合成樹脂フィルムを発泡させてある断熱性の紙製容器も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の紙製容器は上記の通りであり、口径108mm、全高110mmであって満杯容量が600ccの紙製容器に内容物を収納して電子レンジで長時間加熱すると、例えば、150〜350ccの水を500〜700Wの家庭用電子レンジで6分間、又は、150〜350ccの水を1700Wの業務用電子レンジで3分間加熱調理すると、紙製容器の底の部分、即ち胴部材の下端と底部材の接合部分が焼き焦げるという課題があった。また、この紙製容器は胴部材の原紙の外面に熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートしているため、容器を電子レンジで長時間加熱すると、上記熱可塑性合成樹脂フィルムが溶融して、容器の底が電子レンジの受け皿に融着するという課題もあった。また、胴部材の外面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートし、これを加熱発泡させた断熱容器では電子レンジでの加熱により二次発泡して、容器の底が火脹れ状態になるという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明の電子レンジ用紙製容器は、胴部材と底部材とからなる紙製容器であって、底部材の外周辺部を下方に屈曲して屈曲部を形成し、この屈曲部を挟んで胴部材の下端部を内側に折り込み、加熱圧着して接合部を形成し、底部材の底面部を下方に凹ませてある。
【0005】
上記胴部材及び底部材の原紙の外面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートし、この熱可塑性合成樹脂フィルムを加熱処理して発泡させてある。
また、上記接合部の表面にニトロセルロース系樹脂製インキを塗布してある。 同じく、上記接合部の表面にシリコン系離型剤を塗布してある。
さらに、上記低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムは低密度ポリエチレンフィルムである。
【0006】
上記底部材にその外周から中心に向けて延びる直線状の溝を等間隔に複数形成してある。
また、上記溝の長さを同じにしてある。
又は、上記溝の長さが違うものを交互に形成してある。
さらに、上記底部材が合成樹脂製成型品であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電子レンジ用紙製容器は、胴部材と底部材とからなる紙製容器であって、底部材の外周辺部を下方に屈曲して屈曲部を形成し、この屈曲部を挟んで胴部材の下端部を内側に折り込み、加熱圧着して接合部を形成し、底部材の底面部を下方に凹ませてあるから、この電子レンジ用紙製容器に内容物を収納して電子レンジで加熱調理した際に、電子レンジ用紙製容器の底の部分、即ち上記接合部が焼き焦げることを防ぐことができる効果がある。
【0008】
上記胴部材及び底部材の原紙の外面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートし、この熱可塑性合成樹脂フィルムを加熱処理して発泡させてあるから、優れた断熱効果を得ることができる効果がある。
【0009】
上記接合部の表面にニトロセルロース系樹脂製インキまたはシリコン系離型剤を塗布してあるから、電子レンジ用紙製容器に内容物を収納し、電子レンジで長時間加熱調理しても、胴部材の原紙にラミネートした熱可塑性合成樹脂フィルムが電子レンジの受け皿に融着することを防ぎ、電子レンジ用紙製容器を受け皿から容易に離すことができる。従って受け皿が汚れることなく通常に使用できる。また、上記インキが低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムの二次発泡を抑え、容器の底が火脹れ状態になることを防ぐことができる効果もある。
【0010】
上記低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムは低密度ポリエチレンフィルムであるから、原紙へのラミネート加工が容易であるとともに、発泡性に優れ、優れた断熱効果を得ることができる。
【0011】
上記底部材にその外周から中心に向けて延びる直線状の溝を等間隔に複数形成してあるから、底部材の屈曲部の構成が容易であり、この屈曲部の表面をきわめてよく整った形状にすることができる効果があるとともに、底部材の深しぼりができるので、電子レンジ用紙製容器をスタッキングした場合にブロッキングも防止できる。また、上記溝の長さを同じにしたり、上記溝の長さが違うものを交互に形成することにより、上記屈曲部の構成が容易で、屈曲部の表面をきわめてよく整った形状にすることができる効果が顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明紙製容器の一実施例を示した模式的断面図である。
【図2】図1とは別の実施例を示した模式的断面図である。
【図3】上記実施例とは別の実施例の要部を示した模式的拡大断面図である。
【図4】本発明紙製容器を構成する底部材の原紙の一実施例を示す平面図である。
【図5】図4とは別の実施例を示した底部材の原紙の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
図1及び図2は本発明電子レンジ用紙製容器の実施例を示した模式的断面図である。本発明電子レンジ用紙製容器1は胴部材10と底部材20とからなり、底部材20の外周辺部を下方に屈曲して屈曲部26を形成し、この屈曲部26を挟んで胴部材10の下端部14を内側に折り込み、加熱接着して接合部15を形成してある。そして本発明では、底部材20の底面部25を下方に凹ませてあることを特徴とする。この本発明の電子レンジ用紙製容器は従前公知の紙製容器と同じ構成を有し、上記の通り底部材20の底面部25を下方に凹ませてあることを特徴とする。従って、この底部材20は凹むように膨らみをもたせておくことが好ましく、圧搾空気または下からの吸引により、あるいは型押し作業によって下方に凹ませるか、予めの膨らみをもたせなくとも、型押しによって凹ませることもできる。
【0014】
図4及び図5に底部材の別の実施例が示してあり、この実施例では、底部材20にその外周から中心に向けて延びる直線状の溝24,24a,24bを等間隔に複数形成してある。従って、屈曲部26の構成が容易であり、屈曲部26の表面をきわめてよく整った形状にすることができる。この実施例では底部材の深しぼりができるので、電子レンジ用紙製容器をスタッキングした場合にブロッキングも防止できる。なお、底面部25を軽く下方に凹ませて、図2に示すように、ある程度湾曲した状態にしてもよい。
さらには、この底部材20を紙製にするのではなく、合成樹脂製成型品にしてもよい。
【0015】
以上のように構成した電子レンジ用紙製容器1に内容物を収納し、電子レンジで加熱調理する。例えば、口径108mm、全高110mmであって満杯容量が600ccの電子レンジ用紙製容器に150〜350ccの水を入れ、500Wの家庭用電子レンジで6分間、又は、1700Wの業務用電子レンジで3分間加熱調理する。電子レンジによる加熱調理で電子レンジ用紙製容器1の底の部分、即ち上記接合部15の焼き焦げを防ぐことができる。また、胴部材10の下端部14にニトロセルロース系樹脂製のインキあるいはシリコン系離型剤の何れか一方又は両方を塗布してあれば、即ち、上記接合部15の表面にニトロセルロース系樹脂製のインキあるいはシリコン系離型剤の何れか一方又は両方を塗布してあれば、電子レンジ用紙製容器1の底の電子レンジの受け皿への融着を防ぎ、加熱後に電子レンジ用紙製容器を受け皿から容易に離すことができる。従って受け皿が汚れることなく通常に使用できる。
【0016】
図3は上記実施例とは異なる実施例の要部の模式的拡大断面図である。本実施例では、原紙にラミネートする熱可塑性合成樹脂フィルムとして、ポリエチレンフィルムを用いる。本実施例の胴部材10の原紙11の外面に、加熱処理により発泡する低密度ポリエチレンフィルム12をラミネートし、この胴部材10の下端部14の表面にニトロセルロース系樹脂製のインキ又はシリコン系離型剤16を塗布してある。また、この胴部材10の原紙11の内面に、加熱処理しても発泡しない高密度ポリエチレンフィルム13をラミネートしてある。なお、原紙11の内面に中密度ポリエチレンフィルムをラミネートしてもよい。
底部材20の原紙21の外面に低密度ポリエチレンフィルム22をラミネートし、この原紙21の内面に中密度ポリエチレンフィルム23をラミネートしてある。
【0017】
胴部材10及び底部材20は上記の通りであり、底部材20の外周辺部を下方に屈曲して屈曲部26を形成し、この屈曲部26を挟んで胴部材10の下端部14を内側に折り込み、加熱接着して接合部15を形成してある。また、底部材20の底面部25を弛ませてあり、この電子レンジ用紙製容器1の上方からエアを吹きつけあるいは下方から吸引し、又は、型を押し込んで、底部材20の底面部25を下方に凹ませてある。
【0018】
胴部材10及び底部材20の原紙11,21の外面に低密度ポリエチレンフィルム12,22をラミネートし、この低密度ポリエチレンフィルム12,22を加熱処理して発泡させてある。但し、原紙11にラミネートした低密度ポリエチレンフィルム12上にインキ16を塗布した部分、及び、紙製容器1の接合部15は発泡が抑制されている。また、この加熱処理により、胴部材10及び底部材20の原紙11,21の内面をラミネートしたポリエチレンフィルム13,23が溶融し、胴部材10と底部材20とが融着している。
【0019】
以上のように構成した口径108mm、全高110mmであって満杯容量が600ccの電子レンジ用紙製容器1に例えば、150〜350ccの水を入れ、500Wの家庭用電子レンジで6分間、又は、1700Wの業務用電子レンジで3分間加熱調理する。電子レンジによる加熱調理で電子レンジ用紙製容器1の底の部分、即ち上記接合部15が焼き焦げることを防ぐことができ、また、胴部材10の下端部14にニトロセルロース系樹脂製のインキまたはシリコン系離型剤16を塗布したことにより、電子レンジ用紙製容器1の底が電子レンジの受け皿に融着することを防ぎ、電子レンジ用紙製容器を受け皿から容易に離すことができる。従って受け皿が汚れることなく通常に使用できる。また、胴部材10の下端部14に塗布したインキ16は低密度ポリエチレンフィルム12の二次発泡を抑え、紙製容器1の底が火脹れ状態になることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0020】
1 紙製容器
10 胴部材
11 胴部材10の原紙
12 低密度ポリエチレンフィルム
13 高密度ポリエチレンフィルム
14 胴部材10の下端部
15 接合部
16 インク
20 底部材
21 底部材20の原紙
22 低密度ポリエチレンフィルム
23 中密度ポリエチレンフィルム
24,24a,24b 溝
25 底面部
26 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部材と底部材とからなる紙製容器であって、底部材の外周辺部を下方に屈曲して屈曲部を形成し、この屈曲部を挟んで胴部材の下端部を内側に折り込み、加熱圧着して接合部を形成し、底部材の底面部を下方に凹ませてあり、上記底部材にその外周から中心に向けて延びる直線状の溝を等間隔に複数形成してある電子レンジ用紙製容器。
【請求項2】
上記溝の長さを同じにしてある上記請求項1記載の電子レンジ用紙製容器。
【請求項3】
上記溝の長さが違うものを交互に形成してある上記請求項1記載の電子レンジ用紙製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−202951(P2009−202951A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142839(P2009−142839)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【分割の表示】特願2000−274439(P2000−274439)の分割
【原出願日】平成12年9月11日(2000.9.11)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【出願人】(000177209)日本ストロー株式会社 (19)