説明

電子レンジ調理用の容器入り即席食品

【課題】
水を添加して電子レンジ調理して、湯切りすることなく喫食することができる焼きそば等の汁なしタイプの電子レンジ調理用の容器入り即席食品において、過剰な泡の発生がなくムラなく内部の乾燥食品を復元することができる即席食品を提供する。
【解決手段】
膨脹剤を用いることで、電子レンジ調理時の過剰な泡の発生を抑えて、ムラなく良好に電子レンジ調理することができる。また、膨脹剤としては、重曹、グルコノデルタラクトンの組合せが好ましく、乾燥野菜を含む乾燥具材も利用する場合には、ミョウバンも併用すること好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子レンジで調理する即席食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からの電子レンジ調理の発達に伴い、電子レンジで調理できる即席食品の種類が広がっている。焼きそばの様な汁無しの即席食品の分野もその一つであり、より簡便に喫食できる商品が求められている。焼きそばのような汁無しものは、汁を有するものとは異なり、電子レンジによって加熱調理した後に湯切りする手間を除くことが望ましい。
【0003】
この場合、汁なしものを湯切りせずに喫食可能とするには、加熱後に余分な水分を残すことができないため、添加する水の量を制限しつつ食品全体をムラなく加熱調理することが必要となる。
【0004】
このような問題に鑑み、ムラなく加熱調理する観点から可食用の発泡物質としてショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤を用いる方法が開示されている(特許文献1)。
しかし、乳化剤を使用した場合、泡立ちが激しく、内容物が容器から吹きこぼれる等の問題がある。また、発泡した泡が調理後に残存する場合もあり、喫食時の見かけ上でも改善の余地があった。
【0005】
また、同じく特許文献1には過剰な泡の発生を防止する観点から、容器の上部に消泡剤を塗布する方法も開示されているが、費用・手間がかかるという問題がある。
加えて、焼きそばや焼きうどんであるとキャベツなどの野菜の具材で乾燥状態のタイプを利用することが必要となる場合が多いが、乳化剤を用いた場合にはこれらの復元時においてシャキシャキ感が失われるという傾向があった。
【特許文献1】特開平3-114417
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは焼きそばや焼きうどんのようにいわゆる汁無しものに水を添加して電子レンジで加熱調理し、調理後に湯切りすることなくそのまま喫食できるタイプの即席食品において、ムラ無く復元できるとともに、調理時の吹き零れや泡の残存がなく、良好に喫食できるものを開発することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの鋭意研究の結果、電子レンジ調理する前の容器内に重曹等の膨脹剤を用いると電子レンジ調理時において過剰な泡の発生がなく無理なく復元性を得ることができることを見出した。また、重曹のみでは復元性は得られるものの食感において改良の余地があったため、酸性剤を併用したところ、食感においても望ましいものを得ることができることを見出した。
【0008】
特に、酸性剤について検討したところ、グルコノデルタラクトン等のいわゆる遅効性の酸性剤が復元に対して効果的であることを見出した。
加えて、キャベツ等の乾燥野菜を含む乾燥具材も使用する場合、復元時のシャキシャキ感を維持させるために酸性剤の一部としてミョウバンを含有させると良好な食感を呈することを見出した。
【0009】
また、乾燥食品に乾燥具材を併用する場合においては、使用する水の量が制限されていることから即席乾燥麺塊のような乾燥食品の上部に載置すると復元性が確保しにくい場合もあるため、復元性の観点から容器内に乾燥具材と膨脹剤を収納するスペースを確保する方法を見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の事項に関する。
項1.乾燥食品と膨脹剤が容器内に収納されており、該容器内に水又は湯を注加して、電子レンジで加熱調理し、加熱調理後に湯切りせずに喫食が可能となる電子レンジ調理用の容器入り即席食品であって、
水又は湯の注加後における液面が前記乾燥食品の上面よりも下方に位置する電子レンジ調理用の容器入り即席食品。
項2.前記乾燥食品が、即席乾燥麺塊又は即席乾燥米である請求項1に記載の容器入り即席食品。
項3.前記膨脹剤が重曹及びグルコノデルタラクトンを含有する請求項1又は2に記載の容器入り即席食品。
項4.前記即席食品がさらに乾燥野菜を収納するものであって、前記膨脹剤がさらにミョウバンを含有する請求項3に記載の容器入り即席食品。
項5.前記乾燥食品が即席乾燥麺塊であって、該即席乾燥麺塊の側面部と前記容器側面部により囲まれた領域を前記乾燥野菜及び膨脹剤を収納する部分とした請求項4に記載の容器入り即席食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の即席食品は、水を入れて電子レンジ調理加熱して喫食するタイプの商品であって、焼きそばや焼きうどんのような汁無しものについて、調理後の外観上優れており、また、復元においてムラなく電子レンジ調理することができる。また、乾燥野菜等の乾燥具材を含む場合においても当該乾燥具材についてもムラなく復元することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の内容について詳細に説明する。
【0013】
1.乾燥食品
本発明にいう乾燥食品とは、容器内に当該乾燥食品を収納し、水を加えて加熱調理後に当該乾燥食品が水分を吸収・復元し、喫食できるものであれば特に限定されない。すなわち、種々の食品が含まれるが、具体的には、麺関係の乾燥食品として油で揚げたフライ麺、あるいは熱風乾燥処理したα化麺のような即席乾燥麺塊が挙げられる。また、麺関係では中華麺のほか、うどん、そば、春雨あるいはフォーを乾燥したものも含む。また、米関係の乾燥食品として熱風乾燥処理したα化米(パフライス)や油揚げされたフライ米のような即席乾燥米が挙げられる。また、半乾燥麺あるいは半乾燥した米も含まれることはもちろんである。
【0014】
また、当該乾燥食品の形状は麺塊のような大きな塊である場合には、後述する電子レンジ調理容器の形状とも関係するが、電子レンジ調理時に加熱され発生した泡が接触し易いように厚みが比較的薄いものが好ましい。
具体的には、対象となる乾燥食品の種類にもよるが、例えば、フライ処理によって乾燥された即席油揚げ麺塊であれば、厚みとして概ね1〜5cm程度、好ましくは2〜3cm程度である。
【0015】
2.乾燥野菜
本発明の即席食品においては、上述の即席乾燥麺塊等の他に、乾燥野菜や乾燥肉等の乾燥具材を含むことができる。これらの乾燥具材は即席食品において汎用されているものである。乾燥具材には乾燥野菜も含まれることが多いが、本発明においては、膨脹剤の組成のうち酸性剤として、後述するミョウバンを含有させることで乾燥野菜の復元後の状態をいわゆるシャキシャキ感のある良好な状態にすることができる。対象となる野菜としてはキャベツ、ニンジン等の種々の野菜が含まれる。
【0016】
また、乾燥方法は熱風乾燥、凍結乾燥等種々の乾燥方法があるが、これらのいずれの乾燥方法であっても水分を付与して復元するタイプであれば本発明に利用できる。
これらの乾燥野菜を含む乾燥具材については、直接容器内に充填しておくことも可能であるが、内包装してから容器内に収納しておき、喫食者が電子レンジ調理する前に内包装を開封して容器内に入れるという方法も可能である。
【0017】
3.電子レンジ調理対応の容器
本発明の電子レンジ調理用の容器入り即席食品においては、水を添加してこれに膨脹剤によって加熱時に発泡させて、収納した乾燥食品と接触させて加熱するという手法を採用する。
このため、電子レンジに対応できる容器である必要がある。具体的な材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられるがこれらに限定されるものでない。また、加熱時に突沸を防止する観点から容器の一部にマイクロ波を吸収しない素材を用いてもよいことはもちろんである。
【0018】
次に、容器の形状については電子レンジ調理時における容器の形状が乾燥食品の加熱する際の効率性に影響する場合がある。すなわち、本発明での乾燥食品を収納する容器としては、底の浅い皿型の容器から底の深いカップ型の容器まで幅広く用いることができるが、電子レンジによる加熱の際の効率性や加熱分布の点から皿型の比較的深さの浅い容器が好ましい。
【0019】
具体的な形状については特に限定されないが、例えば、焼きそばタイプの即席食品であれば、例えば、使用する即席麺が直径14cm、厚さ2.5cm、重量100g程度の円形のものであると、容器の即席食品の収納部分の内径が14〜16cm程度、深さ3〜6cm程度のものが利用できる。また、皿型容器の場合そのフランジ部を大きく設けておくと、電子調理後の持ち運びに便利である。
【0020】
4.電子レンジ調理用の容器入り即席食品。
具体的な本発明を利用した電子レンジ調理用の容器入り即席食品の商品形態については焼きそばタイプのものとして、以下のような一例が挙げられる。
乾燥食品の収納に関しては、商品の輸送・販売においては、乾燥食品をそのまま、又は内包装したものを当該容器に収納しておき、その他の乾燥具材、ソースなども内包装して収納させておく。また、膨脹剤についても内包装し、同様に収納させておく。また、容器の上面を紙製等の蓋でシールしてから、外包装しておく。
【0021】
喫食時には、外包装を取り、蓋を開封し、容器内部に即席乾燥麺塊等の乾燥食品を収納した状態で膨脹剤、乾燥具材を内包装を開封し容器内に添加する。ここに水を一定量加えて、蓋をするか、あるいはしない状態で電子レンジ調理を行う。一定時間のレンジ調理後、内容物を混ぜて喫食可能となる。
【0022】
5.注加する水又は湯の量
本発明に係る即席食品は、当該乾燥食品に接触するように水又は湯が存在し、膨脹剤を含んだ状態で電子レンジ調理加熱することによって調理する。容器内に注加する水又は湯の量は加熱の対象とする乾燥食品やその含有水分量や種類によって異なるため適宜調整すればよい。例えば、焼きそばタイプの油揚げ即席麺(水分含量3%)100g程度に対して、これに乾燥具材(水分含量3〜10%程度)20g程度であれば、当該即席麺及び乾燥具材120gに対して180g〜190g程度が好適である。尚、本発明における水は常温水に限られるものではなく、温湯や冷水であってもよい。これらの水の温度を調整することで電子レンジ調理時間を変更することができる。
【0023】
また、本発明にかかる即席食品を実際の市場の商品として販売する場合、商品の購入者に厳密な量の水の注加を求めるのは困難である。そこで、本発明を利用することで水の注加量に多少差があっても、これに関係なく良好に復元、喫食できる即席食品を提供することができる。
【0024】
6.容器内における液面と乾燥食品の上面との位置関係
本発明においては、前記水又は湯の注入後の容器内における液面が前記乾燥食品の上面よりも下方に位置する。本発明はこのような乾燥食品の全体が水に浸漬されない場合において後述する膨脹剤の効果によって全体をムラなく復元することができるためである。
例えば、上面の半径14cm、厚み2.5cm、重量100g、水分3%程度の即席乾燥麺塊を収納できる直径15〜16cm程度の容器の場合には、復元後の喫食に適した水分含量とするために、概ね180〜190g程度の水を必要とするが、このような場合、水注入後の液面は底から1〜2cm程度になり、即席麺塊の上部は水面より露出した状態となる。本発明においてはこのような場合においても、膨脹剤の存在により加熱時に発生した泡で即席麺塊をムラなく復元することが可能となる。
【0025】
7.膨脹剤
(1)膨脹剤
膨脹剤とは、炭酸ガスを発生させて、蒸し菓子や焼き菓子をふっくらとさせるために使用するものである。電子レンジ調理時においては、乳化剤に比べて膨脹剤を用いると過剰な泡は発生することなく、また、発泡はするものの自然に消泡するため、泡による吹きこぼれや電子レンジ調理後の泡の残存を抑制することができる。また、膨脹剤による発泡は重曹と酸性剤の反応による炭酸ガスの発生による発泡であり、乳化剤による発泡とは原理が異なる。
【0026】
膨脹剤の含有量は、対象とする乾燥食品の厚み、体積や重量等にもよるが、例えば、通常の即席麺塊(上面の半径14cm、厚み2.5cm、重量100g)であれば、これに対して重曹及び酸性剤の膨脹剤の総量として0.7〜2.0g程度を使用するのが好適である。
尚、膨脹剤の配合においては、前述の重曹、酸性剤の他に、重曹と酸性剤の遮断剤としてのデキストリン等の他、食塩、MSG、油脂、色素、粉末スープ等を配合してもよいことはもちろんである。
【0027】
また、膨脹剤については、本即席食品の容器に直接収納せずに、内包装しておき、電子レンジ調理時に喫食者が開封して容器内に充填するというものでよい。また、このようにすることで保存期間中に加湿を避けることができるので重曹と酸性剤の誤った発泡を避けることが可能となる。
また、膨脹剤の添加方法としては、水を注加してから上部より添加する方法でもよいが、乾燥食品や乾燥具材の下部に添加してから水又は湯を注加する方が、発泡の効果を有効にする等の点から好ましい。
【0028】
(2)酸性剤
膨張剤のうち酸性剤については、種々のものを使用することができる。具体的には、グルコノデルタラクトン、フマル酸、酒石酸、フマル酸第一ナトリウム、L−酒石酸水素カリウム、第一リン酸カルシウム、第一リン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、アンモニウムミョウバン、ミョウバン等が挙げられる。但し、これらの酸性剤に限定されるものではない。
【0029】
尚、ミョウバンについては後述するように乾燥野菜の加熱復元に効果があるため含有することが望ましいが、味に対する影響の面からミョウバン以外の酸性剤も含有することが好ましい。また、本発明における乾燥食品の復元性の面及び即席食品を保存中における酸性剤と重曹との過誤の反応を防止する観点から遅効性の酸性剤を用いる方が好ましい。さらに、味に対する影響と遅効性の面からグルコノデルタラクトン(GDL)が好ましい。
酸性剤の含有量としては、その種類や前述の重曹とのバランスが問題となるが、例えば、GDLであれば、概ね、重曹の添加量に対して、後述する酸性剤のミョウバンを含めて1〜3倍程度の割合で配合するのが好ましい。
【0030】
(3)ミョウバン
本発明おいては、乾燥具材のうち、キャベツやニンジン等の乾燥野菜を使用する場合には、酸性剤の一種であるミョウバンを膨脹剤の一部として含有することが好ましい。ミョウバンを酸性剤として使用すると、電子レンジによる加熱調理後において、野菜本来のシャキシャキとした食感を維持できることができる。本発明で使用するミョウバンは、ミョウバン、焼きミョウバン、アンモニウムミョウバン、焼きアンモニウムミョウバン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。但し、味等の観点からミョウバン、焼ミョウバンが好ましく、かつ水との反応を抑制するため低水分のものが望ましい。
ミョウバンの酸性剤に占める含有量としては、他の酸性剤の種類にもよるが、例えば、GDLであれば、GDLに対して0.5〜1.5倍程度になるのが好ましい。
【0031】
8.電子レンジ調理
本発明の即席食品は、上述のように乾燥食品に水を注加し、当該水が膨脹剤を含んだ状態で電子レンジ調理する。電子レンジ調理時においては、容器上に蓋をすることもできる。蓋をすることで発泡中の水の外部へのはねを防止することができる。また、密閉性を高めるタイプを使用すれば、発生する蒸気によって効率的に乾燥食品の調理を行うことができる。尚、蓋は密閉するものではなくても軽く容器開口部を覆う程度のものでも構わない。さらに、蓋がない状態でも調理は可能である。
【0032】
電子レンジの加熱調理時間は乾燥食品の種類や添加する水の温度や量によっても変わるが、例えば、前述のように即席食品が焼きそばタイプであり、即席乾燥麺塊が油揚げ即席麺塊である場合には、麺塊が100g程度、乾燥具材が20g程度、水の添加量が180〜190g程度として、500Wで約6分、600Wで約5分30秒、800Wで約4分30秒、1000Wで約3分、1500Wで約2分30秒程度である。また、90℃以上のお湯の場合には、500Wで約4分、600Wで約3分30秒、800Wで約2分50秒、1000Wで約2分30秒、1500Wで約2分程度である。但し、喫食者の好みによってこれらの時間を調整することができるのはもちろんである。すなわち、水分を少なめにしたければ、調理時間を多少長くすればよい。また、水分を多目にするのであれば調理時間を多少短くすればよい。
【0033】
電子レンジ調理後における調理としては、例えば、焼きそばタイプであれば、即席乾燥麺塊と乾燥具材の電子レンジ調理後において液体又は粉末ソースを添加して、ソースと絡めてほぐしてから喫食することができる。また、即席乾燥麺塊自体に味を着味しておけば、ソースを添加せずに、ほぐしてそのまま喫食するという方法も可能である。
【0034】
9.乾燥野菜及び膨脹剤を収納する部分
前記即席麺塊を前記容器に収納した状態において、前記即席麺塊側面部と容器側面部により区画された領域に前記乾燥具材を収納する部分を設けることが好ましい。本発明においては、乾燥食品の上部が注入した水より露出しているため当該食品の上部に乾燥食品を載置すると、水との接触がないため当該乾燥具材の復元が十分でないことがある。そこで、収納する乾燥食品の側面部と容器側面部により囲まれた領域に前記乾燥具材を膨脹剤を収納することができる。このようにすると水の注入時において乾燥具材、膨脹剤と水との接触を無理なく行うことができるため、乾燥具材について、ムラなく復元することができる。
【0035】
具体的な態様については、例えば、即席麺塊と容器が略円形であると、図1.1-1に示すように即席乾燥麺塊の円形の形状一部が欠けた様な麺塊とすると欠けた部分に膨脹剤や乾燥具材を収納することができる。すなわち、図1.1-2の様に当該領域に膨脹剤を添加してから乾燥具材を収納して水を注入してレンジ調理することが可能となる。復元性が問題となる乾燥具材等を使用する場合にはこのようにすることで水や膨脹剤との接触を高めることで効率的に復元させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の即席食品は、水又は湯を注加し、電子レンジ調理するだけで良好な復元性を有し、湯切りすることなく喫食可能となるものである。これによって電子レンジ調理食品の選択の幅を広げ、広く食品産業に貢献することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本願発明の実施例を示すが、本願発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)膨脹剤の効果
使用した即席麺は小麦粉、でん粉、かん水を配合し、混練、切り出し(1.3mm程度)、蒸煮した後の即席麺を円形のリテーナーに収納し、植物油で150℃、2分揚げたものを調製した。フライ後の麺塊の大きさは、直径14cm、厚み2.5cm、重量100g、水分含量3重量%であった。
また、乾燥具材として、熱風乾燥処理したキャベツ8g(水分含量6重量%)、フリーズドライした豚肉2g(水分含量10重量%)、フリーズドライしたイカ2g(水分含量4重量%)を用いた。
【0039】
電子レンジ加熱用の容器は、全体がポリプロピレン性の皿型の容器を用いた。大きさとしては、開口部が直径16cm、深さ5cmの略円筒状であり、フランジ部を有し、該フランジ部が18.5cmの正方形となるものを用いた。
上記の即席麺、乾燥具材に加えて内包装された濃縮液体ソース(20g)及び表1に記載する内包装された膨脹剤を上記容器内に収納し、上部を紙及びポリエチレンテレフタレートの二層からなる蓋でフランジ部外周辺上でシールすることで完成された即席食品を用いた。尚、膨脹剤については重曹と酸性剤の遮断剤として一律にデキストリン0.8gを添加した。
【0040】
調理方法としては、即席食品の蓋を完全に剥がし、即席麺塊が電子レンジ調理容器に収納されている状態で、表1の各膨脹剤を容器内に添加し、その上に乾燥具材を入れた後に15℃の水180gを添加し、容器開口部の上部に剥がした蓋を置いて、電子レンジで500W6分間加熱調理することによって行った。電子レンジ調理後の容器の麺の復元状態を目視で確認し写真を撮影した後、液体ソースを添加してほぐして混合し、混合後の麺の復元状態を確認してから喫食して麺の食感を検査した。
尚、評価は熟練のパネラーによって行い。◎、〇、△、×、××の5段階で評価した。
それぞれの評価項目は以下の基準によって行った。
【0041】

結果を表1に示す。また、電子レンジ調理直後の写真を図2に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
図2の写真の2−1と2−2を比較すると、重曹等の膨脹剤を用いると麺の復元性が向上した(写真2−1の麺塊の表面に見られる白い部分が復元していない部分)。但し、具材の食感については、重曹のみでは柔らかくなりすぎている。麺及び具材の味についてもグルコノデルタラクトン(GDL)を加えたものの方が優れていた。
【0044】
(実施例2)グルコノデルタラクトン以外の酸性剤の効果
GDL以外の酸性剤の使用可能性について検討した。添加剤としてGDL以外のものとして、フマル酸、酒石酸、焼ミョウバンを用いた。その他の試験方法等は実施例1に示したものと同じである。結果を表2に示す。また、電子レンジ調理直後の写真を図3に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
酸性剤として遅効性のGDL以外のものとして、遅効性の焼ミョウバンや、速効性のフマル酸、酒石酸を行った。速効性のものは使用することは可能であるが、復元性等において僅かに難があった。低温での過誤の反応を避けるため、及び復元性等の面においても遅効性の方が好ましいと考えられる。また、味の面からはGDLが好ましい。
【0047】
(実施例3)膨脹剤の効果(乳化剤との比較)
膨脹剤と乳化剤の効果の比較について試験した。条件は実施例1に示したものと同じである。結果を表3に示す。また、電子レンジ調理直後の写真を図4に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
乳化剤の使用では、電子調理後の写真より調理中に発生した泡が吹きこぼれて具材の一部がフランジ部まで押し出された(図4の4-4、4-5)。また、キャベツについては、膨脹剤の場合に比べて乳化剤の場合やや柔らかいという問題が生じた。
【0050】
(実施例4)ミョウバンの効果
ミョウバンを添加することの効果を試験した。条件は実施例1に示したものと同じである。結果を表4に示す。また、電子レンジ調理直後の写真を図5に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
ミョウバンを使用することでシャキシャキしており、キャベツの食感が改良された。また
、味的にも酸味・苦味を感じない良好なものとなった。
【0053】
(実施例5)添加する水の量の変化に伴う膨脹剤の効果
注加する水の量が変化するとこれに伴って、どのように膨脹剤の効果が変化するかを調査した。添加した水の量及び膨脹剤以外の条件は、実施例1に示したものと同様である。結果を表5(a)と表5(b)に示す。また、電子レンジ調理直後の写真を図6(a)と図6(b)に示す。
【0054】
【表5(a)】

【0055】
【表5(b)】

【0056】
水の注加量の差異にもよるが、膨脹剤の添加によって麺の復元性が向上していることが判明した。また、注加する水の量を増やしていくと膨張剤を添加しないものでも復元性は向上していくが、やや水分が多すぎる状態となった。さらに、本発明を利用することで、注加する水の量が多少異なっていても幅広い範囲の水の注加量で良好な復元性と食感を維持できることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の即席食品の一例であって、容器内に即席乾燥麺塊を収納した場合 (1-1)とされに乾燥具材を収納した場合(1-2)の写真である。
【図2】実施例1の各試験区の電子レンジ調理直後の容器内部の写真である。
【図3】実施例2の各試験区の電子レンジ調理直後の容器内部の写真である。
【図4】実施例3の各試験区の電子レンジ調理直後の容器内部の写真である。
【図5】実施例4の各試験区の電子レンジ調理直後の容器内部の写真である。
【図6(a)】実施例5の試験区(比較例1-1〜実施例5-3)の電子レンジ調理直後の容器内部の写真である。
【図6(b)】実施例5の試験区(比較例5-4〜実施例5-6)の電子レンジ調理直後の容器内部の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥食品と膨脹剤が容器内に収納されており、該容器内に水又は湯を注加して、電子レンジで加熱調理し、加熱調理後に湯切りせずに喫食が可能となる電子レンジ調理用の容器入り即席食品であって、
水又は湯の注加後における液面が前記乾燥食品の上面よりも下方に位置する電子レンジ調理用の容器入り即席食品。
【請求項2】
前記乾燥食品が、即席乾燥麺塊又は即席乾燥米である請求項1に記載の容器入り即席食品。
【請求項3】
前記膨脹剤が重曹及びグルコノデルタラクトンを含有する請求項1又は2に記載の容器入り即席食品。
【請求項4】
前記即席食品がさらに乾燥野菜を収納するものであって、前記膨脹剤がさらにミョウバンを含有する請求項3に記載の容器入り即席食品。
【請求項5】
前記乾燥食品が即席乾燥麺塊であって、該乾燥麺塊の側面部と前記容器側面部により囲まれた領域を前記乾燥野菜及び膨脹剤を収納する部分とした請求項4に記載の容器入り即席食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【公開番号】特開2010−51296(P2010−51296A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222959(P2008−222959)
【出願日】平成20年8月30日(2008.8.30)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】