説明

電子レンジ調理用バッグ

【課題】簡易に閉鎖可能で、急激な内圧上昇によるバッグの破裂を防止し、加熱調理後も使用者が安全に持てる底ガゼット型の電子レンジ調理用バッグを提供する。
【解決手段】両側縁部30がシールされ、底ガゼットを有する電子レンジ調理用バッグ1であって、バッグ1の胴部10を形成する一対のフィルム10a、10bを有し、各フィルム10a、10bは、上蓋20と、上蓋20の下縁部に形成され、上蓋20を開閉するための折り線21とを有し、折り線21は、両側縁部30を始点と終点とし、下に凸に湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで調理可能な底ガゼット型のバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、これまで鍋やフライパンで行われていた煮物、蒸し物、炒め煮などの家庭調理が電子レンジを用いて行われるようになり、合成樹脂などのフィルムからなる袋を、電子レンジでの調理袋として利用することが提案されている。これらの袋の一つに、底ガゼットを有するスタンディングパウチ形状の電子レンジ調理用バッグ等がある。当該電子レンジ調理用バッグには、内部の蒸気を排出する手段が必要である。
【0003】
この種の底ガゼット型の電子レンジ調理用のバッグとして、特許文献1には、バッグの一部が紙材から構成され、紙のデッドホールド性を利用して折り曲げることで閉鎖できる電子レンジ用調理袋が記載されている。特許文献2には、ジッパー型ファスナーを用いて閉鎖できる電子レンジ加熱用袋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2688734号公報
【特許文献2】特許3802205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の電子レンジ用調理袋は、前後壁部の上部を一体に折り曲げて使用され(特許文献1の図6参照)、蒸気の排出は、折り曲げ部分の隙間と紙材自体の通気性を用いて行われている。この場合、突沸などで急激な内圧上昇が発生した際、簡単かつ迅速に内圧を逃がしてくれる安全弁となるような機構がないため、内圧を逃がしきれず、バッグが破裂し、内容物の飛散によって電子レンジ庫内が汚染される恐れがある。さらに、破裂の圧力が高い場合は電子レンジの扉が開き、高温の食材や調味液が電子レンジの外に放出されるため、仮に電子レンジの前に人が立っていると火傷の恐れもある。
【0006】
特許文献2の電子レンジ加熱用袋は、胴部ヒートシール部の一部を非シール部として蒸気排出を行うものである。このため、上記特許文献1の袋と同様に、突沸などで急激な内圧上昇が発生した際に、非シール部の通気口だけでは内圧を逃がしきれず、バッグが破裂し、内容物の飛散によって電子レンジ庫内が汚染される恐れがある。また、バッグの側縁部に蒸気の排出口を設けているので、電子レンジ加熱調理後に側縁部の排出口近傍を持つと火傷する恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、簡易に閉鎖可能で、万一の急激な内圧上昇によるバッグの破裂を防止し、加熱調理後も使用者が安全に持てる底ガゼット型の電子レンジ調理用バッグを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スタンディング形状のバッグの胴部の両フィルムの上部が湾曲に折れ曲がることにより、曲面の簡易上蓋を形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
具体的には、本発明は、
(1)両側縁部がシールされた、底ガゼット型の電子レンジ調理用バッグであって、前記バッグの胴部を形成する一対のフィルムを有し、前記各フィルムは、上蓋と、前記上蓋の下縁部に形成され、前記上蓋を開閉するための折り線とを有し、前記折り線は、前記両側縁部の間に形成され、下に凸に湾曲している、電子レンジ調理用バッグである。また、
(2)前記折り線は、前記両側縁部を始点と終点とし、前記折れ線と前記側縁部の交点部分には、通気口が設けられている、(1)に記載の電子レンジ調理用バッグである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子レンジ調理用バッグは、簡易に閉鎖可能で、調理後には使用者が安全に持ち運びでき、急激な内圧上昇が起こっても、バッグの破裂を防止できる。さらに、本発明の電子レンジ調理用バッグは、加熱調理時に電子レンジ庫内を汚染することなく蒸気の対流を促進でき、かつ優れた自立安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態にかかる電子レンジ調理用バッグの正視図である。
【図2】電子レンジ調理用バッグの斜視図である。
【図3】片側の上蓋を閉じた状態の電子レンジ調理用バッグの斜視図である。
【図4】スリット状の通気口を有する電子レンジ調理用バッグの斜視図である。
【図5】スリット状の通気口を有する電子レンジ調理用バッグの正視図である。
【図6】穴状の通気口を有する電子レンジ調理用バッグの斜視図である。
【図7】他の種類の底ガゼット型の電子レンジ調理用バッグの正視図である。
【図8】他の種類の底ガゼット型の電子レンジ調理用バッグの斜視図である。
【図9】他の種類の底ガゼット型の電子レンジ調理用バッグの側面図である。
【図10】持ち手を有する電子レンジ調理用バッグの正視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る電子レンジ調理用バッグ1の正視図であり、図2は、上蓋を閉めた状態の電子レンジ調理用バッグ1の斜視図である。
【0013】
電子レンジ調理用バッグ1は、電子レンジ調理時にバッグから調味液が漏れ、庫内汚染を防止するために、スタンディング形状として使用する底ガゼット型のものである。底ガゼット型のバッグは、袋の底部にいわゆるまちを設けて自立性を付与したバッグである。このいわゆるまちの部分が、底ガゼットと称されている。
【0014】
電子レンジ調理用バッグ1は、例えば前後一対のフィルム10a、10bからなる胴部10と、底ガゼットを形成する底部11を有している。胴部10の各フィルム10a、10bは、上蓋20と、上蓋20の下端部に形成され、上蓋20を開閉するための折り線21を有している。
【0015】
上蓋20は、略船底型形状を有し、上に凸に湾曲した円弧状の上縁部と、下に凸に湾曲した円弧状の下縁部を有している。折り線21は、上蓋20の下縁部に沿って胴部10の両側縁部30に亘り形成され、下に凸に湾曲している。これらのフィルム10a、10bの2枚の上蓋20を、図3に示すようにそれぞれ折り線21から順に内側に折り曲げ倒すことにより、胴部10の上部開口が閉鎖される。
【0016】
図1に示すように胴部10の両側縁部30は、ヒートシールによりシールされている(サイドシール部30)。上記折り線21は、両サイドシール部30を始点及び終点としている。
【0017】
底部11は、上蓋20と同様に略船底型形状を有し、前後のフィルム10a、10bの間に設置され、例えば前後の両縁部が、各フィルム10a、10bの中央より下寄りの位置に接続されている。底部11は、図1に示すように中央を上側に山折りにして折りたたむことができ、また図2に示すように船底型形状の曲面状に開き、バッグ1の底を形成できる。底部11の両側縁部のフィルム10a、10bも、胴部10の両側縁部と同様に、ヒートシールされ、互いに接合されて、サイドシール部30を形成している。フィルム10a、10bの底部11よりも下側は、下端が水平の脚部31となり、バッグ1を安定して立てることができる。
【0018】
本実施の形態によれば、電子レンジ調理用バッグ1が、上蓋20と、折り線21を有するため、2枚の上蓋20を折り線21から内側に倒すことにより、簡単にバッグ1内を閉鎖できる。また、上蓋20を閉めた状態で電子レンジ調理を行うと、余剰な蒸気を上蓋20の隙間から排出することができ、蒸気の対流が促進され、食材の均一加熱や蒸らし効果を与えることができる。
【0019】
また、電子レンジ加熱調理中に食材や調味液の液はねによる庫内汚染を防止し、さらに、急激な内圧上昇が起こった場合、折り曲げただけの上蓋20は容易に開くため、安全弁として、内圧を逃がすことができる。このため、万一の場合でも袋が破裂することなく、内容物の飛散も最小限に抑制することができる。その結果、非常に簡易な構造で、調理特性と使用者の安全性を両立することができる。
【0020】
また、蒸気が上蓋20の隙間から逃げるので、バッグ1の側部を持つことができ、加熱調理後のバッグ1を持ち運びやすくなる。
【0021】
さらに、湾曲した折り線21を折って上蓋20を閉めるため、上蓋20においても前後の幅が厚くなり、底ガゼット型のバッグそのものが立体的に安定しやすくなる効果も得られ、底ガゼット型のバッグの自立安定性を高めることができる。
【0022】
なお、折り線21は、胴部10のフィルム10a、10bが合成プラスチックからなる場合、ヒートシールや破線状の切り込み、いわゆるミシン目によって作成でき、紙材や合成フィルムがラミネートされた紙材の場合は、折り筋によって形成することができる。また、胴部10がシリコーンゴム等のエラストマーからなる場合、厚みの厚薄による折れ線21を形成することができる。また、折り線21は、棒状の部材を湾曲状にフィルム10a、10bに接着したり、下縁部が湾曲に作られた上蓋20そのものをフィルム10a、10bに接着することでも実現できる。このとき、前述の棒状の部材がエラストマーで形成された場合、棒状のエラストマーが収縮する力を利用して、食材や調味液をバッグに入れる際、袋の口の開きやすさを達成する効果も得ることができる。
【0023】
電子レンジ調理用バッグ1は、上蓋20に蒸気排出を行う通気口を備えていてもよい。図4及び図5に示すように通気口50は、上蓋20の両側縁部に切り欠きを形成して、直線状のスリット状に形成されていてもよいし、図6に示すように穴状に形成されていてもよく、排出したい蒸気の量によって適宜定めることができる。通気口50を形成することで、電子レンジでの加熱調理時の蒸気抜きを安定的に行うことができる。また、通気口50は、上蓋20の任意の位置に形成することができるが、より好ましい設置位置として、折り線21とサイドシール部30との交点部分に設けることができる。この場合、二枚の上蓋20にそれぞれ通気口を形成した場合のように通気口が、加熱調理中のバッグ1の膨らみ等により位置ずれすることがなく、蒸気排出を適正に行うことができる。
【0024】
以上の実施の形態において、図7〜図9に示すように底部11の各フィルム10a、10bのサイドシール部30同士が接合されておらず、底部11のフィルム10a、10bのサイドシール部30が180度開くようになっていてもよい。図1及び図2に示すような上げ底の底部11を形成することは、電子レンジ加熱において均一加熱という点で好ましく、図7〜図9のような、フラットな底部11に形成することが、スタンディングバッグの自立安定性の点から好ましい。
【0025】
本発明にかかる電子レンジ調理用バッグ1は、前述の通り、上蓋20の隙間や、通気口50から蒸気を排出するため、バッグ1の上方向に蒸気を排出する構造となる。このため、調理後に使用者は、両サイドシール部30を手で持つことが可能になるが、この際、サイドシール部30の少なくとも一部が幅7mm以上あることが好ましい。
【0026】
電子レンジ調理後は、食材の温度は約100℃近い温度となるため、伝熱により胴部10のフィルム10a、10bも同様な温度まで昇温される。この際、火傷することなく確実にバッグを持つためにはサイドシール部30が7mm以上の幅を有することが好ましい。7mm以上であれば、火傷の恐れや、持ち方によっては、うまく持てずに加熱されたバッグを落とす恐れもない。好ましいシール幅としては10mm以上20mm以下である。
【0027】
また、図10に示すように持ち手60として一部分だけサイドシール部30の幅を大きくして前記範囲に設定してもよく、内容積を有効に使用できるように適宜設計することができる。サイドシール部30を持ち手60として活用すると、上部に特別な持ち手を設ける必要がなく、ターンテーブル式の小さな電子レンジでも、回転が止まることなく、加熱むらの発生を抑制することができる。
【0028】
本発明にかかる電子レンジ調理用バッグには、樹脂としてポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂の熱可塑性樹脂の他、紙等を用いることができる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂からなるフィルム、ナイロン等のポリアミド系樹脂からなるフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂からなるフィルムなどの種々の樹脂からなるフィルムや紙を適宜選択、もしくは組み合わせて用いることができる。これらの組み合わせの中でも、シール層にポリプロピレン系樹脂フィルムを用い、外層にナイロンフィルムやポリエチレンテレフタレート系フィルムをラミネートした二層フィルムや三層フィルムがより好適に用いることができる。例えばポリエチレンテレフタレートフィルムとポリプロピレンフィルムの二層フィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンとポリプロピレンフィルムの三層フィルムやポリプロピレンと紙の二層フィルムなどが挙げられる。また、シリコーンゴムやポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリウレタン系等のエラストマーからも、本発明の電子レンジ調理用バッグを成形することができる。
【0029】
また、折れ曲げた時の上蓋20の安定性を高めるために、フィルムの剛性を適宜選択することができる。フィルムの剛性は、厚みと弾性率に依存するため、材質と厚みを適宜選択して用いることができ、好ましい厚みは30μm以上200μm以下である。30μm以上だと剛性が適度であり、曲面の上蓋20が安定性よく形成できる。また、200μm以下だと、袋全体が柔軟で、ハンドリング性が良好となる。より好ましい厚みは50μm以上150μm以下である。さらに好ましくは60μm以上120μm以下である。
【0030】
好ましいフィルムの弾性率の範囲は0.1GPa以上20GPa以下である。0.1GPa以上だと剛性が適度であり、曲面の上蓋20が安定性よく形成でき、20GPa以下だと、袋全体が柔軟で、ハンドリング性が良好となる。より好ましい弾性率の範囲は、1GPa以上10GPa以下、さらに好ましくは1.5GPa以上5GPa以下である。
【0031】
さらに、上蓋20の閉鎖性を高めるために、上蓋20への簡易ロック機構をもうけることもできる。このような方法として、簡易的にテープ留めすることもできるし、上蓋20に舌片を設け、折り線21上もしくは胴部10のフィルム10a、10bにスリットや通し紐のような差込口を設けることで、簡易ロックを形成することができる。
【0032】
本発明の電子レンジ調理用バッグは、公知の方法を用いて製造することができる。例えばフィルムから製袋する場合、ロール状のフィルムを繰り出し、半折した後に底部まちを折り込み、底部を船底状にヒートシールし、胴部10のフィルム10a、10b上部を上に凸の湾曲した形状にカットすると同時に、下に凸の形状に破線状に切りこみを入れることで、上蓋20を形成することができる。また、ロールからフィルムを引き出し、半折した後にフィルム内面同士が接着しないようにスペーサーを介して、折り線21をヒートシールで作成し、底部11を折り込んだ後に底部11を船底状にヒートシールし、胴部10のフィルム10a、10bの上部を上に凸の湾曲した形状にカッティングする工程を経て製袋することもできる。また、シリコーンゴム等のエラストマーを用いる場合、圧縮成形や射出成形等により袋形状に成形することができる。
【0033】
本発明にかかる電子レンジ調理用バッグは、前述したように加熱調理時には電子レンジ庫内を汚染することなく蒸気の対流を促進し、調理後には使用者が安全に持ち運びでき、万が一、急激な内圧上昇が起こっても、バッグの破裂を防止する効果を有すため、生鮮食材や加工食材の電子レンジ調理に好適に用いることができる。ここでいう生鮮食材とは、肉、魚、野菜等の生食材であり、加工食材とは生鮮食材を一度処理した食材、例えば、冷凍野菜や冷凍食品、煮る、焼く、揚げる、蒸す、炊く、炒める等の処理を行った食材をいい、これらの食材に適宜、調味液、調味料を加えて、電子レンジで調理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のバッグは、簡易的な上蓋を有しているため、調理時の蒸気の対流を促進することができ、かつ万一の内圧上昇時には安全機構として働くため、電子レンジ調理用のバッグとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 電子レンジ調理用バッグ
10 胴部
10a、10b フィルム
11 底部
20 上蓋
21 折り線
30 側縁部(サイドシール部)
31 脚部
50 通気口
60 持ち手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側縁部がシールされた、底ガゼット型の電子レンジ調理用バッグであって、
前記バッグの胴部を形成する一対のフィルムを有し、
前記各フィルムは、上蓋と、前記上蓋の下縁部に形成され、前記上蓋を開閉するための折り線とを有し、
前記折り線は、前記両側縁部を始点と終点とし、下に凸に湾曲している、電子レンジ調理用バッグ。
【請求項2】
前記折れ線と前記側縁部の交点部分には、通気口が設けられている、請求項1記載の電子レンジ調理用バッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−148501(P2011−148501A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8901(P2010−8901)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)