説明

電子レンジ調理用包材

【課題】本発明は、電子レンジを使用して食品を加熱料理するに当たって、焦げ目を被加熱物の全面ではなく所望の部分のみにつけることが可能な電子レンジ調理用包材を提供することを課題とする。また、電子レンジ加熱後に焦げ目部分の食材から容易に剥離することが可能な電子レンジ調理用包材を提供することを課題とする。
【解決手段】 融点がポリエチレンテレフタレートフイルムの融点の前後と高く、熱収縮率が小さい耐熱プラスチックフイルムの片面に、パターン状に金属蒸着薄膜を設ける、次に前記耐熱プラスチックフイルムの、もう一方の面に、紙などの基材を設け、積層体を得る。その積層体を一枚か二枚を用いて、食品を巻き、電子レンジにて加熱することにより、食品の片面か両面に、パターン状の褐色の適度の焦げ目を得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ調理用包材に関し、特に調理品表面に適度な焦げ目をつけることができる発熱体(サセプター)の機能をもつ電子レンジ用包材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子レンジによる加熱は、通常、マイクロ波による調理品内部の加熱であることから、調理品内部から発生する蒸気により水分が抜けることや、表面が冷えていることから、食感や食欲が損ねられたりすることも多く、また、そのままでは調理品の表面に焦げ目をつけることができない。
【0003】
このために、電子レンジで発熱させるサセプターを用いる方法があり、これにより、調理品にパリパリ感をもたせたり、ピザ、餃子や餅などの食品の表面に焦げ目をつけたりすることが可能である。
【0004】
この目的でのサセプターが、マイクロ波により発熱する原理は、通常の誘電加熱による食品内部の加熱とことなり、金属層に発生する渦電流のジュール熱で加熱するものである。
【0005】
アルミ箔のような金属箔では、マイクロ波を照射すると、反射したり、スパークしてしまうが、金属箔を薄くしていくとマイクロ波の一部を透過するようになる。このときに一部は薄い金属層で渦電流になり、この渦電流が電気抵抗を持つ金属層を流れることによりジュール熱が発生し、それに接触する食品を表面から加熱する。
【0006】
サセプターに利用できる金属とその酸化物は、アルミニウム、ステンレス、酸化インジュウムなどがあるが、コストと安全性の点でアルミニウムが一般的である。薄い金属層は、蒸着方式、スパッタリング方式、コーティング方式、煉込み方式などの周知の方法によって作ることができるが、コストと効果から真空蒸着方式によることが一般的である。
【0007】
サセプターとしては、特許文献1に提案されているように、ポリエステルフイルムにアルミニウムを真空蒸着して薄膜を形成し、蒸着面を紙と貼り合わせたシートが、一般的に用いられている、
【0008】
特許文献1には、食品のマイクロ波調理に使用する食品調理容器において、図4に示すように、所望の食品を支持するように適当な形状の構造体へと形成された基材物質(18)と、該基材物質の食品接触面に形成された保護層(16)と、該保護層(16)と前記基材物質(18)との間に配置された導電性元素金属の層(17)とを備えた食品調理容器で、前記金属層(17)は、マイクロ波放射に爆された時に加熱されて該容器内の食品を褐色にするように少なくとも約0.4オーム/平方インチの電気抵抗率を有するような厚さに形成されている食品調理容器が提案されている。
【0009】
特許文献2には、図5に示すように、アルミニウムなどの金属を蒸着してなり、マイクロ波吸収により発熱する金属層(21)と、この金属層(21)を覆う耐熱プラスチックフイルム層(20)とからなる発熱体(23)を紙などからなる基材(22)に設けて、前記発熱体(23)と基材(22)が一体となったシートを形成し、前記シートに多数のスリットを破線状にして、かつ、平行に隣接するスリットと交互になるように設けた電子レンジ調理用シートが提案されている。
【0010】
特許文献3には、サセプターのシートの基材側にライナー紙やエンボス紙などの断熱性
素材を貼り合わせ、かつ、シート全体に多数のスリットを破線状に設けた構成も提案されている。
【0011】
しかしながら、上記のようなサセプターを紙トレーや紙皿の底部、カートンの内面に貼り合せたり、筒状にして直接食品を包装するなどの形態で、ピザ、餃子、ハンバーガー、餅などの電子レンジ加熱時の焦げ目付けに利用する場合には、全面に均一に発熱層が存在するため、食品全体が黒こげになったり、サセプターが食品に貼り付き、剥れなくなったり、剥がれても食品の表面がサセプターに取られて剥がされたり、サセプターが破れて食品に付いたままになるなどの問題があった。
【0012】
特に、特許文献2や特許文献3のように耐熱フイルム面と金属蒸着層面に、スリットを設けてある場合には、電子レンジ加熱後に、食品に貼り付いたサセプターを剥がそうとした時に、耐熱フイルム面のスリットの切れ目があるため、その切れ目をきっかけとしてより大きく耐熱フイルムが破れてしまい、サセプターが食品に付いたままになるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公昭60−15548号
【特許文献2】実公平4−42117号
【特許文献3】特開2001−19062号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来技術の問題を解決するためになされたものであり、電子レンジでの加熱料理に当たって、焦げ目を被加熱物の全面ではなく所望の部分のみにつけることが可能な電子レンジ調理用包材を提供することを課題とする。また、電子レンジ加熱後に焦げ目部分の食材から容易に剥離することが可能な電子レンジ調理用包材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題に対して本発明者は、たとえ焦げ目を食材の全面に付けたい場合でも、電子レンジ加熱後に焦げ目部分の食材から容易に剥離できるために、従来耐熱プラスチックフイルムとして、用いられてきたポリエチレンテレフタレートと融点は同等か、多少低くても、高い温度での熱収縮率が小さいもので、フイルムの破断強度の強いもの、すなわち高温での離型性の優れるものを選択することで電子レンジ加熱後に焦げ目部分の食材から容易に剥離できることが可能な電子レンジ調理用包材を見出し、本発明に到達した。
【0016】
また、あらかじめ食材の焦げ目を付けたい領域に相当する部分のみにパターン状に発熱体を配置するか、焦げ目をつけたくない領域に相当する部分にのみパターン状に断熱性材料を設けることによって、簡便に焦げ目を被加熱物の全面ではなく所望の部分のみにつけることが可能な電子レンジ調理用包材ができることを見出し、本発明に到達した。
【0017】
また、焦げ目を被加熱物の全面ではなく所望の部分のみにつけることによって、電子レンジ加熱後に、焦げ目部分の食材から電子レンジ調理用包材を容易に剥離することができるという効果も同時に実現することも可能となる。
【0018】
第一の発明は、電子レンジ調理用包材であって、融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムの片面に、パターン状に形成された金属蒸着層、及び接着剤層、そして紙基材層を順次設けたことを特徴とするものである。
【0019】
第二の発明は、前記融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルム層がポリブチレンフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−4―メチルペンテン―1、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドのいずれかであることを特徴とする第一の発明に記載の電子レンジ調理用包材である。
【0020】
第三の発明は、電子レンジ調理用包材であって、融点が210℃以上で離型性および耐熱性が高いプラスチックフイルムの片面に、融点が250℃以上である耐熱性プラスチックフイルムを積層し、さらにその上に、パターン状に形成された金属蒸着層、及び接着剤層、そして紙基材層を順次設けたことを特徴とするものである。
【0021】
第四の発明は、前記融点が210℃以上で離型性および耐熱性が高いプラスチックフイルムが、ポリブチレンフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−4―メチルペンテン―1、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドのいずれかであることを特徴とする第三の発明に記載の電子レンジ調理用包材である。
【0022】
第五の発明は、前記融点が250℃以上である耐熱性プラスチックフイルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、芳香族ポリイミドのいずれかであることを特徴とする請求項3、請求項4のいずれかに記載の電子レンジ調理用包材。
【0023】
第六の発明は、前記金属蒸着層がアルミニウム蒸着層であり、その層厚が40オングストロウム以上であることを特徴とする第一の発明、第二の発明、第三の発明、第四の発明、第五の発明のいずれかに記載の電子レンジ調理用包材である。
【0024】
第七の発明は、前記金属蒸着層をパターン状に形成する方法として、パスター加工もしくはシーライト加工によることを特徴とする第一の発明、第二の発明、第三の発明、第四の発明、第五の発明、第六の発明のいずれかに記載の電子レンジ調理用包材である。
【0025】
第八の発明は、融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムの片面に、金属蒸着層、及び接着剤層、そして紙基材層を順次設ける、次に、前記融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムのもう一方の面上に、紙またはフイルムよりなる断熱性シートがパターン状にラミネートされていることを特徴とする電子レンジ調理用包材である。
【発明の効果】
【0026】
第一の発明は、融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムの片面に、パターン状に形成された金属蒸着層、及び接着剤層、そして紙基材層を順次設けた電子レンジ調理用包材を用いることによって、あらかじめ食材の焦げ目を付けたい領域に相当する部分のみにパターン状に発熱体を配置できるので、簡便に焦げ目を被加熱物の全面ではなく所望の部分のみにつけることが可能になるという効果を有するものである。
【0027】
また、第一の発明は、焦げ目を被加熱物の全面ではなく所望の部分のみにつけることによって、電子レンジ加熱後に、焦げ目部分の食材から電子レンジ調理用包材を容易に剥離することができるという効果も有するものである。
【0028】
第二の発明は、前記融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルム層が、ポリブチレンフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−4―メチルペンテン―1、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドのいずれかである電子レンジ調理用包材を用いることによって、焦げ目を被加熱物の全面でも、所望の部分のみにでもつけた後、すなわち、電子レンジ加熱後に、焦げ目部分の食材から電子レンジ調理用包材を容易に剥離することができるという効果も有するものである。
【0029】
第三の発明は、融点が210℃以上で離型性および耐熱性が高いプラスチックフイルムの片面に、融点が250℃以上である耐熱性プラスチックフイルムを積層し、さらにその上に、パターン状に形成された金属蒸着層、及び接着剤層、そして紙基材層を順次設けた電子レンジ調理用包材を用いることによって、前記発明よりも離型性が高まっているため、焦げ目を被加熱物の全面でも、所望の部分のみにでもつけた後、すなわち、電子レンジ加熱後に、焦げ目部分の食材から電子レンジ調理用包材を更に容易に剥離することができるという効果を有するものである。
【0030】
第四の発明は、前記融点が210℃以上で離型性および耐熱性が高いプラスチックフイルムが、ポリブチレンフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−4―メチルペンテン―1、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドのいずれかであることを特徴とする電子レンジ調理用包材を用いることによって、前記発明よりも離型性が高まっているため、焦げ目を被加熱物の全面でも、所望の部分のみにでもつけた後、すなわち、電子レンジ加熱後に、焦げ目部分の食材から電子レンジ調理用包材を更に容易に剥離することができるという効果を有するものである。
【0031】
第五の発明は、前記融点が250℃以上である耐熱性プラスチックフイルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、芳香族ポリイミドのいずれかであることを特徴とする電子レンジ調理用包材を用いることによって、前記第一の発明や第二の発明よりも離型性および耐熱性が高まっているため、焦げ目を被加熱物の全面でも、所望の部分のみにでもつけた後、すなわち、電子レンジ加熱後に、焦げ目部分の食材から電子レンジ調理用包材を更に容易に剥離することができるという効果を有するものである。
【0032】
第六の発明は、前記金属蒸着層がアルミニウム蒸着層であり、その層厚が40オングストロウム以上である電子レンジ調理用包材を用いることによって、焦げ目を被加熱物の所望の部分のみに、適度な褐色の焦げ目をつけることができるという効果を有するものである。
【0033】
第七の発明は、前記金属蒸着層をパターン状に形成する方法として、パスター加工もしくはシーライト加工によって作成した電子レンジ調理用包材を用いることによって、焦げ目を被加熱物の所望の部分のみに、適度な褐色の焦げ目をつけることができるという効果を有するものである。
【0034】
第七の発明におけるパスター加工もしくはシーライト加工は、後述するが、被蒸着体である耐熱プラスチックフイルムをパターン状に切断することなく、またスリットや孔を開けたりすることなく部分的に蒸着層をパターン化して設けることができるため、電子レンジで加熱後、部分蒸着された耐熱プラスチックフイルムを被加熱物より剥がす際、同フイルムが破断することを抑制するという効果も有するものである。
【0035】
パスター加工もしくはシーライト加工は、金属蒸着層をパターン状に形成する方法である。
【0036】
パスター加工とは、耐熱基材全面にまず蒸着層を設け、蒸着層の上に所望のパターン領域にのみ、非溶解性の被膜を設け、そして、被膜の無い金属蒸着層のみを腐食溶解させて
所望のパターン状の金属蒸着層を得るものである。
【0037】
シーライト加工とは、蒸着前に、耐熱基材の所望のパターン領域以外のみに、溶解性の被膜を設け、そして耐熱基材全面に蒸着層を設け、その後、不要領域の溶解性の被膜およびその上に付着している不要領域の金属蒸着層を洗浄除去することによって、所望のパターン領域にパターン状の金属蒸着層を得るものである。
【0038】
これらの加工は、全面に蒸着した耐熱フイルムを手や機械による切断や開孔などの作業に比べ、コストや能率の点で優れているという代替効果を有するものである。
【0039】
第八の発明は、融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムの片面に、金属蒸着層、及び接着剤層、そして紙基材層を順次設け、次に、前記融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムのもう一方の面上に、紙またはフイルムよりなる断熱性シートがパターン状にラミネートされていることを特徴とする電子レンジ調理用包材を用いることによって、焦げ目を被加熱物の所望の部分のみに、適度な褐色の焦げ目をつけることができるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1の(a)は第一の発明から第二の発明のいずれかに記載の電子レンジ調理用包材を構成する積層体の断面略図である。図1の(b)は本発明の短冊状パターン模様の一例を示す平面略図である。図1の(c)は本発明の短冊網目状パターン模様の一例を示す平面略図である。
【図2】図2の(a)は、第一の発明から第二の発明のいずれかに記載の電子レンジ調理用包材を一枚使用した場合の四角餅への焦げ目の一例の断面略図である。図2の(b)は第一の発明から第二の発明のいずれかに記載の電子レンジ調理用包材を二枚使用した場合の四角餅への焦げ目の一例の断面略図である。
【図3】図3の(a)は、第三の発明の電子レンジ調理用包材の断面略図である。図3の(b)は、第三の発明の電子レンジ調理用包材を一枚使用した場合の四角餅への焦げ目の一例の断面略図である。
【図4】図4の(a)は、第八の発明の電子レンジ調理用包材の断面略図である。図4の(b)は、第八の発明の電子レンジ調理用包材を一枚使用した場合の四角餅への焦げ目の一例の断面略図である。
【図5】図5の(a)は、特許文献1に係る発熱体を含むパッケージ物質の断面略図である。図5の(b)は、特許文献1に係る発熱体を含むパッケージ物質より形成した食品調理容器の断面略図である。
【図6】図6の(a)は、特許文献2に係る発熱体を含む電子レンジ調理用包材の断面略図である。図6の(b)は、特許文献2に係る発熱体と基体よりなるシートの全体にスリットを設けた平面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
第一の発明は、図1の(a)、(b)、(c)に示すように、食品に全面ではなく、パターン状に焦げ目模様(7)、(8)を付けることのできる電子レンジ調理用包材であって、融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルム(1)の片面に、パターン状に形成された金属蒸着層(2)、及び接着剤層(5)、そして紙基材層(4)を順次設けた積層体(6)を食品の上の載せるか、下に敷くか、もしくは前記積層体(6)を2枚用いて、食品の上と下から、包むようにして、電子レンジにて加熱することによって、図2の(a)、(b)に示すように、食品の上(表面)や下(裏面)にパターン状の焦げ目(10)を付けることができるものである。
【0042】
第二の発明は、耐熱性プラスチックフイルム層(1)として、前記融点が210℃以上
の樹脂よりなるフイルムを用いることで、電子レンジで加熱した後、食品にこびりつくことなく容易に剥がすことができるものである。
【0043】
前記融点が210℃以上の耐熱性プラスチックフイルムとしては、融点が230℃〜320℃であるポリ−4―メチルペンテン―1、融点が224℃〜230℃であるポリブチレンフタレート、融点が272℃であるポリエチレン−2,6−ナフタレート、そしてポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドなどの耐熱性プラスチックフイルムがあげられるが、融点が230℃〜320℃であるポリ−4―メチルペンテン―1は、高温での収縮率が低いので、剥離性にも優れており、好ましく使用できるものである。
【0044】
芳香族ポリイミドは、融点は観測できないが、炭化温度が約400℃で、耐熱性は高いものの、引張り破断強度が低く、電子レンジで加熱した場合、食品にこびりつくことはないが、若干脆化しており、強く引っ張って剥がすと破れてしまうので、本発明での使用には好ましくないものである。
【0045】
ポリエチレンテレフタレートは、融点が254℃と耐熱性は高いものの、熱収縮率が若干高いため、電子レンジ加熱後に、食品に貼り付いてしまうことが起こり易い、そのため金属蒸着層をポリエチレンテレフタレートフイルム全面に設けるのではなく、本発明のように、金属蒸着層を、柄パターン状に設けることで、パターン状発熱にできる、それにより、熱収縮を緩和、抑制できるので、電子レンジ加熱後に、サセプターが食品に貼り付いてしまうことが少ないので、本発明で用いることができるものである。
【0046】
第三の発明は、融点が210℃以上で離型性および耐熱性が高いプラスチックフイルムの片面に、融点が250℃以上である耐熱性プラスチックフイルムを積層し、さらにその上に、パターン状に形成された金属蒸着層、及び接着剤層、そして紙基材層を順次設けたことを特徴とする電子レンジ調理用包材であって、融点が210℃以上で離型性および耐熱性が高いプラスチックフイルムとしては、ポリブチレンフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−4―メチルペンテン―1、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドが、あげられるが、融点が230℃〜320℃であるポリ−4―メチルペンテン―1は、高温での収縮率が低いので、剥離性にも優れており、好ましく使用できるものである。
【0047】
前記融点が250℃以上である耐熱性プラスチックフイルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、芳香族ポリイミドがあげられるが、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートが10〜15μmの薄層で引張り強度、引裂き強度が高く、好ましく使用できるものである。
【0048】
本発明において使用する金属の種類としては、アルミニウム、ステンレスなどが使用されるが、コスト、安全性などの点からアルミニウムが好ましく使用できる、その蒸着薄膜の厚みはアルミニウム蒸着層の層厚は、40オングストロウム〜700オングストロウムの範囲が適しており、40オングストロウムより薄い場合、発熱量が不足気味となり、褐色の焦げ目が得にくくなる。
【0049】
アルミニウム蒸着層の層厚が700オングストロウムより厚い場合は、黒い焦げになったり、ときにはスパークすることもあるので、本発明での使用には好ましくないものである。
【0050】
アルミニウム蒸着層の形成方法は、公知の真空蒸着法、スパッタリング法などで形成する。前記金属蒸着薄膜層(5)が電子レンジ加熱の時に発熱する原理を以下に説明すると
、マイクロ波は、金属に当たると反射し、誘電損失の低い物質(ガラス、陶器、プラスチック)では透過し、誘電損失の高い物質(水、食品)には吸収されてその物質を加熱し、さらに、誘電損失の高い物質ほど表面で多くのマイクロ波が吸収される。積層体中にアルミニウムなどの金属箔がある場合は、マイクロ波照射時にマイクロ波が金属箔で反射してしまうが、積層体中に金属箔の代わりにアルミニウムなどの薄い金属蒸着薄膜層がある場合は、マイクロ波を照射すると一部が金属蒸着薄膜層を透過し、一部が金属蒸着薄膜層で渦電流に変わる。金属蒸着薄膜層は電気抵抗を持っているので、渦電流が流れることによりジュール熱が発生し、金属蒸着薄膜層が発熱する。この熱により、食品の表面に適度の褐色の焦げ目をつけることができるものである。
【0051】
本発明における接着層(5)は、接着性樹脂又はポリウレタン系接着剤からなっている。接着性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メチルメタアクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体等の樹脂が用いられ、ポリウレタン系接着剤としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを主剤とする2液硬化型ポリウレタン系接着剤であれば特に制限はなく、接着剤の塗布量は1〜5g/m(乾燥状態)程度が望ましい。
【0052】
第一の発明〜第四の発明における金属蒸着層は、耐熱プラスチックフイルムの片面にパターン状に形成されるものである、その形成方法としては、パスター加工もしくはシーライト加工による2通りある。
【0053】
パスター加工とは、耐熱基材全面にまず蒸着層を設け、蒸着層の上に所望のパターン領域にのみ、非溶解性の被膜を設ける、そして、被膜の無い金属蒸着層のみを腐食溶解させて所望のパターン状の金属蒸着層を得るものである。
【0054】
シーライト加工とは、蒸着前に、耐熱基材の所望のパターン領域以外のみに、溶解性の被膜を設ける、そして耐熱基材全面に蒸着層を設け、その後、不要領域の溶解性の被膜およびその上に付着している不要領域の金属蒸着層を洗浄除去することによって、所望のパターン領域にパターン状の金属蒸着層を得るものである。
【0055】
これらの加工は、全面に蒸着した耐熱フイルムを手や機械による切断や開孔などの作業に比べ、コストや能率の点で優れているという代替効果を有するものであり、パッケージ分野において、軟包装用フイルム、特に2軸延伸のポリエチレンテレフタレートフイルムに一般的に部分蒸着法として用いられている手法である。
【0056】
第五の発明は、前記融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムのもう一方の面上(金属蒸着面ではない)に、紙またはフイルムよりなる断熱性シートをパターン状にして、ラミネートして設けたものであり、電子レンジで加熱後、そのパターン状ラミネート物の付近の食品の表面には焦げ目ができないものである。
【0057】
前記紙またはフイルムよりなる断熱性シートとしては、多量の空気層を含むだライナー紙、や耐熱プラスチックフイルムで熱収縮性の低い、離型性の高いものが使用でき、ポリ−4―メチルペンテン―1樹脂フイルムが好ましく使用できる。
【0058】
以下に本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0059】
離型性および耐熱性の高い厚さ25μmのポリ−4―メチルペンテン―1樹脂フイルム(三井化学製TPXフイルム)の片面に、膜厚60オングストロウムのアルミニウム蒸着
を行った厚さ12μmポリエチレンテレフタレートフイルム(E5100:東洋紡)のフイルム面にウレタン接着剤(A525:武田薬品工業)を用いてドライラミネートして積層フイルムを作成した。
【0060】
次に、前記積層フイルムのアルミニウム蒸着面にグラビア印刷で透明ニスをパターン状に印刷して、酸性溶液でエッチングを行い、印刷部のみを残したパターン状の蒸着部を形成して本発明の電子レンジ調理用包材に用いる蒸着フイルムを作成した。
【0061】
次に前記蒸着フイルムの蒸着面に、坪量50g/mの中性紙(M中性紙:天満特殊製紙)をウレタン接着剤(A525:武田薬品工業)を用いてドライラミネートして電子レンジ調理用包材を作成した。
【0062】
次に、使用試験として、横5cm、縦10cmの切り餅に、上記電子レンジ調理用包材の離型性および耐熱性の高い厚さ25μmのポリ−4―メチルペンテン―1樹脂フイルムのフイルム面を重ねて、載置し、それを電子レンジの中に入れて、加熱条件は、600Wで3分間、加熱したところ、切り餅が、やや中央が膨らみ、前記電子レンジ調理用包材が、パラリと離れ落ちた、切り餅の表面には、上記パターン状の適度の褐色の焦げ目が付いていた。
【符号の説明】
【0063】
1、 第一の発明から第二の発明に係る耐熱性プラスチックフイルム
2、 パターン状に形成された金属蒸着層
3、 第一の発明から第二の発明に係るパターン状発熱体
4、 紙基材層
5、 接着剤層
6、 本発明の電子レンジ調理用包材を構成する積層体
7、 本発明の金属蒸着層の短冊状のパターン模様の一例
8、 本発明の金属蒸着層の格子状のパターン模様の他の一例
9、 四角餅
10、 焦げ目
11、 紙又はフイルム
12、 全面金属蒸着層
13、 第五の発明の発熱体
14、 第五の発明の電子レンジ調理用包材を構成する積層体
15、 第五の発明の焦げ目
16、 保護層
17、 導電性元素金属
18、 基材物質
19、 発熱体
20、 耐熱プラスチックフイルム
21、 マイクロ波吸収により発熱する金属層
22、 基材
23、 特許文献2の電子レンジ調理用シート
30、 第三の発明から第五の発明に係るパターン状発熱体
31、 第三の発明から第五の発明に係る電子レンジ調理用包材を構成する積層体
32、 第三の発明から第五の発明に係る前記融点が210℃以上で離型性および耐熱性が高いプラスチックフイルム
33、 第三の発明から第五の発明に係る前記融点が250℃以上である耐熱性プラスチックフイルム耐熱性プラスチックフイルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムの片面に、パターン状に形成された金属蒸着層、及び接着剤層、そして紙基材層を順次設けたことを特徴とする電子レンジ調理用包材。
【請求項2】
前記融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムが、ポリブチレンフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−4―メチルペンテン―1、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ調理用包材。
【請求項3】
融点が210℃以上で離型性および耐熱性が高いプラスチックフイルムの片面に、融点が250℃以上である耐熱性プラスチックフイルムを積層し、さらにその上に、パターン状に形成された金属蒸着層、及び接着剤層、そして紙基材層を順次設けたことを特徴とする電子レンジ調理用包材。
【請求項4】
前記融点が210℃以上で離型性および耐熱性が高いプラスチックフイルムが、ポリブチレンフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−4―メチルペンテン―1、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミドのいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の電子レンジ調理用包材。
【請求項5】
前記融点が250℃以上である耐熱性プラスチックフイルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、芳香族ポリイミドのいずれかであることを特徴とする請求項3、請求項4のいずれかに記載の電子レンジ調理用包材。
【請求項6】
前記金属蒸着層がアルミニウム蒸着層であり、その層厚が40オングストロウム以上であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5のいずれかに記載の電子レンジ調理用包材。
【請求項7】
前記金属蒸着層をパターン状に形成する方法として、パスター加工もしくはシーライト加工によることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6のいずれかに記載の電子レンジ調理用包材。
【請求項8】
融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムの片面に、金属蒸着層、及び接着剤層、そして紙基材層を順次設け、前記融点が210℃以上である耐熱性プラスチックフイルムのもう一方の面上に、紙またはフイルムよりなる断熱性シートがパターン状にラミネートされていることを特徴とする電子レンジ調理用包材。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−166821(P2012−166821A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29582(P2011−29582)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】